勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 中国経済ニュース時評

    あじさいのたまご
       

    習近平氏は口を開けば、「中国式社会主義」と自画自賛している。だが、現在の長江一帯地域での停電騒ぎは、その自画自賛とほど遠いことを物語っている。異常気象による干ばつの責任は、「中国式社会主義」にないとしても、その対応を巡る当局の判断ミスは追及されるべきだ。市場経済であれば、こういう事態に対してもっとスマートな対応ができる筈だ。

     

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月27日付)は、「ぜい弱な中国の電力供給、猛暑に重なった政策ミス」と題する記事を掲載した。

     

    中国では今月、干ばつで多くの工場が閉鎖に追い込まれ、市民は暗闇の中での通勤を余儀なくされた。上海中心部の観光名所、外灘(バンド)からも明かりが消えた。

     

    (1)「干ばつによるエネルギー不足は、大きな被害を受けた四川省の地元当局者と電力会社幹部らの判断ミスによってさらに増幅されたことが明らかになった。『ウォール・ストリート・ジャーナル』(WSJ)が文書の内容を確認した。同省は7月、貯水池の水量を使い果たし、1年前を15%上回る水準まで他省への電力供給を増やしていた。当局者らは、通常は雨期に当たる8月に貯水池は再び満たされると見込んでいた」

     

    これまで、自然エネルギーの重要性が叫ばれてきた。今回の四川省の停電騒ぎは、異常気象により水力発電が機能しなかった典型例になった。改めて「ベースロード」電源確保の必要性を突きつけている。自然エネルギーは万能でなかったのだ。今後の異常気象頻発リスクを考えると、中国はサプライセンターとして危険地帯になった。

     


    (2)「
    今回の問題は、中国のエネルギーシステム自体のもろさと、気候変動に起因する異常気象に対するぜい弱さを露呈することになった。中国では、異例の猛暑に見舞われる中で、豊かになった市民による冷房需要が急増している。四川省は水力発電が盛んで、通常なら隣接する省に電力を融通することができる。だが、水力発電に頼るエネルギー供給は、干ばつによる影響をもろに受けやすい。同省には非常用の石炭火力発電所もあるが、フル稼働しても、不足分を補うことはできない

     

    中国産石炭は、有害物質が多く火力発電に向かない限界を抱えている。こうなると、ベースロード電源は原子力発電か水素発電に頼らざるを得まい。中国の、エネルギー問題は異常気象下において極めて深刻な事情を抱えていることを浮き彫りにしている。

     

    もともと中国は、異常気象には最も脆弱体質と指摘されてきた。中国北部の水源不足が原因で、地下水を恒常的にくみ上げすぎてきた。その結果、華北平原は熱波に耐えられないという科学データが提示されている。「呪われた大地」になっているのだ。

     


    (3)「四川省のエネルギー当局や電力取引所、国有電力配送会社である国家電網公司の子会社2社による内部報告書は、7月に警戒すべき兆しが出ていたにもかかわらず、当局者が干ばつ被害の深刻さを甘くみていたことを如実に物語っている。WSJがその内容を確認した。その結果、8月には4つの極めて大きな要因が一気に重なり、電力不足に陥ったと報告書の1つで指摘されている。具体的には、過去最高の気温と過去最大に上る電力需要、過去最少の降雨量、そして貯水池・水力発電所に流れる水量が過去最低となったことだ」

     

    四川省当局は、事前に干ばつ被害の大きいことを予告されていた。それを無視して、他省への電力販売契約をしたことが、停電騒ぎを大きくした理由だ。四川省が、財源不足を補うべく背に腹を変えられずに、電力販売契約したものと推測される。「貧すれば鈍する」というケースだ。

     


    (4)「四川省のエネ当局によると、冷房使用で一般世帯の電力消費が7月に前年比で45%も増加している。四川省は8月に状況が悪化した場合に備えてエネルギーや水の使用をできる限り節約する措置は講じなかった。むしろ、水力発電量を前年比4%減の水準に維持するため、貯水池の水量を大きく減らした。文書によると、8月半ばまでには、四川省西部の貯水池の水位は使用可能な最低水準をわずか4%弱上回る程度にまで落ち込んだ。雨期に貯水池の水量を減らしておくことは一般的な慣例で、楽観する根拠もあった。中国気象庁は8月の気温は平均を上回るものの、四川省北部と北西部で歴史的な平均水準を最大20%上回る降雨量になるとの予報を出していたためだ。同省の送電会社の文書から分かった」

     

    中国気象庁も雨量の予測違いをした。四川省は、この予測に従いダムの水をほぼ空にして雨期に備えていた。中国水利省は、気象庁とは別に長期の水不足を予告している。四川省、この二つの上部機関の間で揺れ動いたのだ。気象庁にも責任の一半があるのだ。

     


    (5)「四川省は複数の省との間で電力供給の取り決めを結んでおり、7月には240億キロワット時の電力を他省に振り向けた。別の文書によると、猛暑や干ばつによる電力ひっ迫に見舞われていた四川省は同時に、近隣の陝西省 に緊急の電力供給を依頼していた。だが、熱波が中国中部や東部にも波及する中で、四川省が他省から支援を得ることもできなかった」

     

    干ばつは、四川省だけに起こった問題でない。周辺地域に起こっている。四川省が、電力不足に陥っても他省が救援できる余裕はなかった。

     

    (6)「8月を通して記録的な熱波と干ばつが中国を襲う中で、状況はさらに悪化。四川省の当局者は8月15日、産業向けの電力供給を6日間制限したが、専門家からはそれでも過度に楽観的だとの指摘が上がっていた。結局、状況は改善せず、20日には制限措置が延長された。天風証券では四川省の停電だけで、中国の鉱工業生産を最大で推定0.6ポイント押し下げると分析している」

     

    水利省は、発電できるまで水量が回復するには数ヶ月を要するとしている。だが、来年2月頃は渇水期を迎える。水力発電が満足にできるかどうか見通しは難しい。

     

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    不動産開発企業の資金繰り問題は、昨年7月から始まったが、もはや手遅れの感が強い。中央政府が、不動産開発企業への融資を要請しても一部の政府系金融機関では拒否の動きを見せているほど。貸付けても、必ず返済される見通しがないからだ。まさに、断末魔の状態へ落込んでいる。

     

    中国経済の長期的な健全性維持には、不動産市場が再生できるか、どうかにかかっている。習政権は現在、不動産高騰が国民生活の不平等をもたらした「元凶」という認識だ。もともと不動産バブルを煽ったのは習政権である。景気回復の切り札に不動産市場を利用してきたのだ。それにも関わらず、手のつけられないまでに不動産が暴騰したので、責任を不動産開発企業へ擦り付けようとしていることは疑いない。それゆえ、不動産開発企業へ冷淡に振舞ってきたにちがいない。習近平氏のやり口である。

     


    現状は、そういう責任の擦り付けの段階をはるかに超えている。中国経済の命運を左右する事態になっているのだ。不動産バブル崩壊による不良債権が、中国の経済活動を麻痺させるのである。この道は、すでに日本経済が経験済みである。中国リスクが高くなっているのだ。

     

    『ロイター』(8月25日付)は、「中国当局の不動産支援要請、一部政府系金融機関が拒否―関係筋」と題する記事を掲載した。

     

    中国政府は銀行業界に不動産業界支援を要請しているが、財務悪化を懸念する一部政府系金融機関が要請を拒んでいることが複数の関係者情報で分かった。

     


    (1)「銀行側が懸念するのは、政府の保証もないまま、資金繰り難の不動産企業に貸し付けて焦げ付くこと、またそうした信用リスクの高い融資を巡り当局から責任を問われる事態だ。ロイターは先週、関係筋情報として、中国銀行保険監督管理委員会(銀保監会)が不動産業界向け融資のシステミックリスクを評価するため、一部の国内・外国金融機関の融資内容を調査していると報じた。関係者によると、当局はここ数週間、非公開会議を複数回開き、銀行や証券会社などに不動産開発業者の資金調達を支援するよう促した。中国人民銀行(中央銀行)も政府系金融機関に、相対的に強靭な不動産開発業者の資金調達を支援するよう働きかけているが、今のところ具体的な指示は出していないという」

     

    当局は、一種の「行政指導」のような形で、不動開発企業への融資に圧力を掛けている。金融機関は万一、不良債権化した場合に当局が救済措置を保証しない限り、とても危険で融資できない事態なのだ。当局は、不良債権になったときの責任を回避したい。だから、金融機関への融資斡旋で終わっているにちがいない。

     

    (2)「国有銀行2行と政府系資産管理会社3社の関係者は、不動産業界を支援するよう規制当局から「窓口指導」を数回受けたものの、今年初めから不動産債券の保有高を減らしていると述べた。中国政府は2年前に債務削減政策を掲げており、融資拡大はモラルハザード(倫理の欠如)となる。そこで当局は今年、資金調達の正常化に向けて有力建設業者に国内での債券発行を促している。こうした債券発行で主な引き受け手になるのは銀行などの金融機関だ。だが、財務内容が比較的健全な不動産開発業者が発行する債券でも購入を見送るところもある。上海に本拠を置く政府系資産管理会社のクレジットアナリストは「満期までの変動に耐える余裕はない。帳簿がめちゃくちゃになる」と述べた」

     

    人民元建て社債では、「トリプルA」格付けの3年物でも、その利回りは国債と比較して、2006年以降で最も低い水準に放置されている。国債であれば、国の保証があるので元利金の支払いに懸念はない。だが、民間債券では「どうなるか分らない」という恐怖感が先立っている状態だ。

     

    ましてや、デフォルト(債務不履行)の多発している不動産開発企業の債券となると、人気は一段の離散は当然であろう。住宅の成約販売で、中国上位50社の不動産開発会社が保有する傘下企業で、今年に入り元建て債発行にこぎ着けたのは28社だけである。昨年の同じ時期と比べ38%少ないことをブルームバーグの集計データが示している。債券市場では、不動産開発企業は「鬼門」になっている。

     


    (3)「4大国有不良債権管理会社の一つである華融資産管理会社は、行き詰まった不動産プロジェクトを調査する任務を負っているが、黙認するケースが多いという。一部不動産開発業者は、業界安定化に向けた国の保証が必ずしも銀行融資の拡大につながらないことを認識しつつある。不動産開発業界関係者は、今や債券の発行は容易でないと述べた。買い手を見つけるのが難しく、投資家の多くが保有を減らそうとしているという。銀行も全ての発行者に対し十分な購入枠を持っていない可能性もあると指摘した」

     

    国有不良債権管理会社ですら、行き詰まった不動産プロジェクトの内容の悪さに呆れているほど。手が付けられないほどだが黙認しているというのだ。ここまで、「腐った資産内容」に落込んでいるのが、中国不動産開発企業である。

     

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    中国軍は、8月初めに台湾封鎖の大軍事演習を行なった。かねてからの準備を「披露」したものと見られている。米国では、すでにシンクタンクなどで図上演習によって米中両軍の「勝敗ゲーム」行なわれている。それによると、中国軍は台湾海峡130キロ(最短距離で)の長い兵站線をどのようにして維持するのか、これが最も大きな問題と指摘されている。

     

    米海軍大学による、「米中の台湾戦争」に関する研究報告でも、この兵站線の弱点が指摘されている。中国軍が、台湾海峡を渡る間に米海軍の攻撃で大きなダメージを受けるという結果になった。

     


    『大紀元』(8月26日付)は、「中共の台湾侵攻は失敗する? 米報告書が致命的弱点を指摘」と題する記事を掲載した。

     

    緊張高まる台湾海峡。ペロシ米下院議長が訪台を実現させてから、中国共産党軍は近年まれに見る大規模軍事演習を行うなど、台湾海峡の動向は世界の注目を集めている。

     

    (1)「ここ十数年の中共軍の軍備増強ペースは非常に早く、周辺地域に圧力をかけ続けている。先述の大規模軍事演習をはじめ、日本もEEZ(排他的経済水域)内にミサイルが着弾し物議を醸した。そんな中、米海軍大学校の報告書が、この台湾侵攻において中国共産党軍(以後、中共軍)が抱える重大な弱点を指摘していた。報告書の執筆者は、元米陸軍中国軍事上級情報官ケビン・マッコーリー氏だ。この報告書は、中共軍の「全軍後勤學術研究中心」が2017年に出版した「内部」刊行物を参考にしている」

     

    戦争では当然、「敵軍」が存在する。中国の敵軍は、世界一の実力を持つ米海軍だ。近代戦を戦った経験のない中国軍が、百戦錬磨の米海軍とどのように戦うのか。しかも、米海軍は原子力潜水艦で攻撃体制を組む。これだけ考えただけで、中国軍は足がすくむ筈である。

     


    (2)「報告書は、中共軍は、自軍が大規模な台湾侵攻を成功させるには、兵站支援が重要な決定要因の1つだと捉えているが、それにも関わらず、台湾への大規模な水陸両用上陸を成功裏に支援するのに必要な兵站能力を、現在のところ保有していないと述べている。兵站とは、戦闘に関わる弾薬や食料など物資の配給や整備、衛生、施設の構築や維持などを意味する言葉で、いわゆる後方支援だ。兵站能力の高低は戦闘に大きく関わる。多くの人は軍事力の強弱を決定する要因として、兵力規模や強力な武器の所有について注目しがちだ。しかし相手と比べて兵数、装備が上回っているにも関わらず、兵站能力が低いことによって、思わぬ苦戦を強いられることも少なくない。これらの前例は兵站の重要性を物語っている」

     

    中国海軍はこの4月、2隻目となる強襲揚陸艦「075型」が就役した。強襲揚陸艦は、上陸作戦の際に大量の兵員や装備を輸送するのに欠かせない存在である。まだ、たったの2隻では、とても実戦を戦える状態ではない。この強襲揚陸艦も、台湾海峡で米海軍潜水艦部隊の攻撃対象になる。中国軍の兵站能力が、弱体とされる理由である。

     


    (3)「
    近いところでは、今年2月24日に開始されたウクライナ侵攻だ。侵攻前、ウクライナ軍は兵数、装備ともロシア軍とは比べ物にならないとして、ロシア軍優勢の見方が大勢だった。しかし蓋を開けてみると、思いの外、ロシア軍が苦戦したのは記憶に新しい。もともとロシア軍の兵站に対する考え方は比較的軽視されており、後方支援部隊の割合は戦闘部隊に対して1:1となっており、一般的な軍隊の比率2:3より後方支援部隊の割合が低くなっている。これはロシア軍の兵站に対する考え方で、短期間に敵軍を殲滅する思想を受け継いでいるためだ。そのため今回のように長期化すると、弾薬や物資が不足し、その結果、苦戦を強いられる」

     

    ロシア軍が、ウクライナ侵攻で苦戦している理由の一つは、兵站能力の低さと指摘されている。通常の軍隊は比率2:3の割合で、兵站能力のほうが大きくなっている。ロシア軍は、それが1:1である。こういうアンバランスな兵站能力の低さが、作戦を渋滞させている理由だ。中国軍の台湾侵攻では、兵站能力がまだ「ヨチヨチ歩き」状態である。130キロの台湾海峡を渡る力はないのだ。

     


    (4)「他にも報告書は、中共軍が海を渡って台湾に上陸する段階で、空中、海上、情報の3点において優位を保つ事の重要性に触れ、米国が介入した場合、60〜70%の制空権と制海権を確保してはじめて国境を越える部隊を十分に保護することができると述べている。侵攻の際、もし米軍が介入してきたら、中共軍は60〜70%の制空権と制海権を確保出来るだろうか? 米軍はイラク戦争など、いくつかの大規模な戦争を経験しており、軍事演習も頻繁になされ、練度も十分なのに対し、中共軍は軍事演習こそ頻繁に行われてはいるものの、その実力は未知数だ。制空権と制海権を確保できない中、上陸して橋頭堡を築けたとしても、物資弾薬が届かず、戦闘ができないようでは下手をすると部隊が全滅する憂き目にも遭いかねない

     

    中国軍は、台湾海峡で60~70%の制海権と制空権を取らなければ、台湾へ部隊を上陸させることはできないという。仮に、上陸できても台湾軍に掃討されてしまう運命だ。このように、一つ一つ戦術を積み上げていくと、「中国軍敗北」という結論になりそうだ。習近平氏にとって、自らの進退がかかる戦争だけに、一時の気迷いで開戦決定とはいかないのだ。 

     

    ムシトリナデシコ
       

    中国は、新築マンションが売れないだけでない。中古マンションも値下がりしている。住み替え計画は頓挫する一方、老後資金に備えて貸家にしてきたマンションも大幅な値下がりだ。日々の消費を切り詰めて貯蓄に励んでいる。こうして、消費は一段の低迷を来たしている。不動産バブル崩壊のもたらした「津波」が押し寄せている。

     

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月26日付)は、「住宅不況に苦しむ中国、多くの家計が支出抑制」と題する記事を掲載した。

     

    中国では、過去20年間の不動産ブームで多くの世帯がより豊かになったと感じていた。しかし市場環境が一変した現在、資産価値の減少を受けて支出を抑制している家計も多く、景気減速に拍車を掛けている。

     


    (1)「数十の都市で新築・中古住宅の平均価格が昨年9月以降下落しており、回復の兆しは見られない。多くの不動産開発業者がデフォルト(債務不履行)に陥り、建設を中断したため、売り上げが減少し、市場への信頼感が一段と失われている。中国の不動産所有者の多くは現在、住宅価格がさらに下落する可能性を懸念し、支出を抑え、貯蓄を殖やしている。市民の間で中国経済の先行きに対する自信が揺らいでいるのは、住宅市場の低迷だけが理由ではない。所得の伸びは鈍化し、インフレが高まっており、経済成長率は2年ぶりの低水準に減速している。16~24歳の若者の約5分の1は仕事に就いていない」

     

    中国では、家計資産の約70%が住宅である。これが値下がりすれば、家計支出に影響するのは当然。その現象が現在、中国経済の足を引っ張っている。住宅バブル華やかな頃と、真逆の事態が始まっている。

     

    (2)「住宅価格の下落により、万が一に備えて支出を減らすべき時期だとの考えが多くの世帯で強まっている。中国では家計資産に占める住宅の割合が約70%と、米国に比べて高い傾向にあることがこうした懸念を高めているかもしれない。米国では、住宅保有率がもっと低く、株式保有がより一般的だ。中国の小売売上高は今春に数カ月連続で減少した後、6月は前年同月比3.1%増、7月は同2.7%増にとどまり、伸び率は新型コロナ流行前の水準を大幅に下回った。中国の不動産価格がおおむね上昇していた2000年から2019年末までの間、小売売上高は月平均約12%増加していた。今年上半期のテレビ、冷蔵庫、エアコンなどの家電の売り上げは、前年同期から11%減少した

     

    不動産バブル崩壊で、すべてが逆回転を始めている。本欄は、こういう事態の到来に警戒観を唱えてきたものだ。それが今、現実化しているに過ぎない。

     

    (3)「一方で、中国国民は貯蓄を殖やしている。上半期の銀行での貯蓄額は過去最高の10兆3300億元(約209兆円)と、前年同期の7兆4500億元を上回った。5月の消費者信頼感を表す指標は、中国の統計局が1991年に統計を取り始めて以降最低の水準に落ち込んだ」

     

    消費節約による個人貯蓄増は、中国経済全体の循環過程にマイナス影響を与えている。貯蓄は増えても銀行貸出が増えないのだ。要するに、「流動性のワナ」に陥っている。事態は深刻である。

     

    (4)「一部の人々にとっての問題は、住宅価格への信頼感が損なわれたことよりむしろ、市場が好調だったときに購入した資産を売却できないことだ。中国南西部にある人口70万人の貴州省凱里市のある住民は、息子が北京で家を買う資金を調達するため、自分が持っているいくつかのアパートを売ることを計画。しかし、地元の住宅価格はパンデミック(世界的大流行)が始まって以降20%も下落した。アパートを売ることができなかった。結局、北京の物件の頭金を払うために、自身の全貯蓄をはたき、親族から借金をして資金を集めた。そのため、日々の出費を抑えている。彼は「誰もが中国の住宅(購入)は確実な賭けだと考えていた。状況がこれほど急に変化するとは思っていなかった」と話した」

     

    中古住宅が値下がりしており、転売もままならなくなっている。これまでは、いつでも高値で売却できたので貸家需要が増え続けた。この現象が、住宅値下がりでストップした。不動産バブル崩壊とは、こういう事態を引き起こす。もともと、投機需要で支えられていただけに、投機が止まれば価格は急落するもの。一般の経済現象と同じことなのだ。

     


    (5)「四川省成都市の西南財経大学の研究者らが、2019年に発表した調査報告によると、中国では不動産価格が10%上昇すると、消費全体が約3%増えることが分かった。シーフェアラー・キャピタル・パートナーズで中国市場調査ディレクターを務めるニコラス・ボースト氏は、今年出した調査報告の中で、不動産市場の大きな調整を受けて、家計支出が抑制されるとの見通しを示した。同氏は、中国の家計は住宅市場のリスクにさらされている度合いが大きいためだ」

     

    下線部の指摘は、その通りであろう。資産価格の上昇は、消費行動を拡張型にする。資産価格の下落では、逆現象を招くのである。 

     

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    中国外交は、右往左往している。7月の日中外相会談は、中国が予定時刻の寸前にキャンセルする非常識な振る舞いをした。G7外相会議が、中国の台湾包囲演習への非難声明を出したことへの嫌がらせだ。ところが、中国外交担当トップの楊潔篪(ようけつち)共産党政治局員は8月17日、日本の秋葉剛男国家安全保障局長と中国・天津で会談したのである。

     

    本来ならば、外相会談をキャンセルした中国側が訪日して会談すべきである。日本の秋葉氏を呼びつけるのは非礼な行為なのだ。

     

    『大紀元』(8月25日付)は、「中国の専門家、対中包囲網に『日本を突破口に』 反日感情が足枷か」と題する記事を掲載した。

     

    秋葉剛男国家安全保障局長は817日、中国・天津で中国外交担当トップの楊潔篪(ようけつち)共産党政治局員と会談し、政府は「今後も対話を継続する方針を確認した」と発表した。9月下旬に迎える日中国交正常化50周年に向けて、双方が関係改善に乗り出すとみられる。ただ、中国側の目論見はそれだけではないようだ。

     

    (1)「中国のポータルサイト「網易」が23日に掲載した、中国人民大学国際関係学元教授で、独立系シンクタンク「國觀智庫」の儲殷研究員の評論記事は、今回の会談が中国の国家戦略にとって非常に重要だと述べ、米中対立が高まるなか「日本を突破口にする」狙いを明らかにした。同氏は、長い間、日中間に歴史問題などに由来する「構造的な対立」は根強く存在するが、これまで西側の対中包囲網を突き破るため、日本を利用していたと述べた。1989年の六四天安門事件後、各国は対中制裁を実施したが、いち早く制裁解除に動いたのは日本だった、と言及した」

     


    中国は、日米を「敵国」としている。日米を打倒して世界覇権を握る。こういう大構想に酔っているのだ。だから、日本に対して冷淡に振舞ったり、「ニーハオ」とニコニコ顔で接近するなど忙しい対応である。王毅外相は、日中外相会談をキャンセルしておきながら、今度は役者を変えての日中外交会談である。時間の無駄という印象を持つのだ。

     

    同盟国の少ない中国は本来、日本を邪険に扱ってはならないのだ。日本は、過去の日中戦争への贖罪の意味もあり、中国へは特別の感情を持っていた。だが、尖閣諸島を巡る中国の「ウソ主張」ですっかり嫌気がさし、世界一の「反中国」になっている。日本ほど、中国を嫌う国民はいないのだ。この現実を理解すべきである。日本に対しては、もっと神経細やかに対応すべきだ。

     


    (2)「同氏は、日本が信頼できる相手ではないが「最先端技術と外国投資を得て、西側の包囲網に風穴を開けるための重要な存在だ」と分析した。「日本との関係は現実的かつ重要な戦略的利益に関わる問題だ」と指摘し、(民族)感情に流されてはいけないと最近高まる反日感情を牽制した。中国と西側の緊張がますます高まっているとし、「日本企業を安心させ、日本からの投資を安定させ、最先端技術を日本から導入することは、中国にとって非常に重要な問題だ」と説明した」

     

    日本は、中国の覇権主義を世界で最初に気付いた国である。戦前から、中国研究では世界一の水準を誇ってきた。中国人の気付かない裏の裏まで、日本は研究し尽くしている。中国が何を狙っているか。すべて見通しているのだ。下線程度の認識で、日本を利用しようとしても無駄である。

     


    (3)「いっぽう、両国の高官による協議は「争議点を棚上げにし、良い雰囲気作りをする」には有効だが、「市民の民族感情とネット空間上の巨大な圧力に直面する」と述べ、日本との友好ムードが国民の反発を引き起こす懸念を示した。中国ではこのほど、浴衣を着用する若者が連行されたり、日本スタイルの夏祭りが中止になったりするなど、親日の風潮を徹底的に封殺しようとしている」

     

    下線の言分によって、日本は尖閣諸島の問題で鄧小平の口車に乗せられ大失敗した。こういうムード的話合いは、外交において下策中の下策になる。難問は、しっかり解決しておくべきなのだ。中国の策謀に乗せられると、利用されるだけである。中国は、あらゆる機会を利用して、世界覇権を狙っている国である。

     


    (4)「中国政府は六四天安門事件後、国内政治への不満をかわすため、反日教育を利用してきた。2012年、日本政府が尖閣諸島の国有化を宣言すると、中国政府は大規模な反日デモを容認し、国民の民族感情を煽り立ててきた。現在、国際社会では中国の脅威への警戒がかつてないレベルにまで達し、中国政府は局面打開に再び日本との関係を改善しようとしているが、国民の理解を得られなくなる恐れがある。反日教育が裏目に出る格好だ」

     

    天安門事件では、日本が中国を国際社会へ復帰させるパイロット役になった。中国は、そういう恩義を忘れて、日本に対して「軍国主義」など言いたい放題である。まともな感覚ではない。米国に対しても同じ振る舞いをしている。中国経済が、GDP2位になれた裏には、米国の資本と技術がどれだけ役に立ったか。そういう恩義には一切触れない国である。韓国の日本に対する態度と同一である。

     

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