勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 中国経済ニュース時評

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    米国による対中貿易戦争の狙いは、できるだけ長期化させて、中国から生産拠点を移転させることにある。これによって、中国経済の担うサプライチェーンの役割を奪うという戦略である。米国が、ここまで露骨に「中国潰し」に動いている背景は、中国の際限ない技術窃取を防ぐ目的だ。米国の対中信頼度は、ゼロ同然に低下している。

     

    『ロイター』(10月29日付)は、「米中摩擦の影響に身構える企業、ゲームチェンジの兆し」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「米中貿易摩擦の決着が見えない中で、メーカー各社は米国向け輸出の生産拠点を中国から他地域に移し始めた。三菱電機が米国向けの放電加工機とレーザー加工機の生産を中国から名古屋に移管したほか、日本電産も一部生産を中国からメキシコに移管。パナソニックも車載関連機器の生産地を中国からタイやマレーシア、メキシコなどに移転することを検討している。三菱電機の皮籠石常務は移管の影響について「金額的な影響がまったくないわけではないが、全体としては吸収できるくらいの小さな金額だ」と述べ、影響は限られるとの認識を示した」

     

    中国にある生産拠点は、対米輸出で高い関税率をかけられる。これを回避するには、脱中国しかない。中国の世界におけるサプライチェーンのウエイトは大きい。米国は時間をかけてでも、そのウエイトを下げさせる強い意思を見せている。

     

    中国からの移管先では、「TPP11」(米国を除くTPP)の加盟国が多いことだ。TPP11は、来年1月中には発効の見通しが強くなった。意外にも、TPP11が脱中国の受け皿になっている。

     

    (2)「ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は11日の決算会見で「われわれは世界中で作って世界中で売る。当初は多少影響があるかもしれないが、他の国・地域で生産することも可能で十分対応できる」と先行きに自信を示した。米中貿易摩擦の影響を最小限に食い止めるべく、対応を進める日本企業。だが、日本電産の永守重信会長は、足もとの変化は米中貿易摩擦の影響だけではないと警鐘を鳴らしている。「世界全体のサプライチェーンが変わってきている。すべて米中貿易戦争のせいにしているが、私はそう思わない。まったく違う構造になっており、それを見誤るとチャンスを失う」」

     

    このパラグラフで注目すべきは、日本電産の永守重信会長発言である。「世界全体のサプライチェーンが変わってきている。すべて米中貿易戦争のせいにしているが、私はそう思わない。まったく違う構造になっており、それを見誤るとチャンスを失う」という点だ。日本電産の生産移管先は、メキシコである。メキシコは、米国・カナダとともにUSMCA(旧NAFTA)加盟国である。

     

    永守氏は、米国経済のさらなる発展を確信しているように見える。つまり、世界経済は先進国の発展と、新興国の停滞という構図になるにちがいない。その原動力は、第4次産業革命が先進国で発展して、新興国を置き去りにする。そういう見通しに立っているのだ。そうでなければ、中国からの生産拠点移転を決断するはずがない。日本電産の動きに注目する必要がある。


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    日中首脳会談が終わり、日中双方は「競争から協調へ」や「隣国同士として互いに脅威にならない」など三原則を確認し合った。ところが、これら三原則を脅かすような米中の軍事衝突が15年以内に太平洋で起こるとの発言が飛び出した。

     

    太平洋の軍事衝突といえば、舞台は台湾か尖閣諸島しかない。中国が、台湾を軍事解放するとなれば、おびただしい犠牲者が出る。中国は、世界的な批判を浴びるのは必至で、外交的に孤立する。こういうリスクに比べて、尖閣諸島であれば無人島である。中国はここを占領すれば、台湾を膝下に収めるほか艦船が直接、太平洋へ出られる。かねてからの宿願を達成し、米国を軍事的に威嚇可能になる。

     

    日中間で交わした「三原則」など、いざとなれば中国が言い放ったように「紙切れ」である。簡単に破られる。こういう不安定な中で、報じられた次の記事に注目したい。

     

    フランス『国際放送(RFI)』(10月25日付)は、「米中軍事衝突の可能性、非常に高い、元米軍司令官が発言」と題するニュースを報じた。『レコードチャイナ』(10月29日付)が、転載した。

     

    (1)「昨年まで米欧州陸軍の司令官を務めていたベン・ホッジス(BenHodges)氏は24日、太平洋地域で米国と中国の武力衝突が発生する可能性『非常に高い』と警鐘を鳴らした。記事によると、退役中将のホッジス氏は、ポーランドの首都ワルシャワで行われたワルシャワ安全保障フォーラムで、『避けられないわけではないが、今後15年の間に、太平洋地域においてわれわれと中国の間で軍事衝突が起きる可能性が非常に高い』と語った」

     

    米国が、中国と15年以内という時間の区切りを付けたのは、中国の軍拡速度に基づいている。米国と同等の軍備を揃えて、戦いを挑むという想定であろう。ここで、注目すべきは、次のパラグラフにあるように、欧州は米国を支持してくれと要望している点だ。つまり、欧州は米国とともに中国と戦う意志表示を求めている。

     

    (2)「また、「米国は欧州の強力な後ろ盾を必要としている」と発言し、欧州に米国を支持するよう呼び掛けた。記事はホッジス氏について、2017年まで米欧州陸軍司令官を務め、現在は米ワシントンの政策研究機関、欧州政策分析センターで戦略研究の専門家として勤務していることを紹介した」

    米国は、すでに15年以内に中国と開戦する準備に入っているのだろう。新興国の常として、かつての日本がそうであったように、覇権国と戦うことに一種の「ヒロイズム」という抑えがたい気持ちがある。中国に台頭する民族主義者は、習近平氏を先頭に「意欲満々」だ。不幸な話だが、中国は米国へ戦争を仕掛けて「中華の時代」をテストするに違いない。





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    中国人は、海外の「爆買い」が代名詞だった。それも、今では昔話である。国内では、節約ムードが強まっている。バブル経済崩壊に加えて米中貿易戦争の影が、個人の財布の紐を締めさせている。散財から節約へ。消費パターンが大きく変わった。

     

    『人民網』(10月19日付)は、「安価な商品が人気、中国の消費ダウングレードは本当か」と題する記事を掲載した。記事では、なぜか節約ムードを否定している。

     

    ザーサイ、インスタントラーメン、白酒「二鍋頭」など安価な商品が人気を集め、最近は「消費ダウングレード」の声があちこちから聞こえ、消費が経済発展で果たす基本的役割に外部から疑いの目が向けられている。消費は本当にダウングレードしたのだろうか」と疑問を投げかけていたが、専門家の見方を紹介して否定して見せたのだ。

     

    (1)「中国国際貿易促進委員会研究院国際貿易研究部の趙萍(ジャオ・ピン)部長は、「人々の生活水準が絶えず向上するにつれ、消費が全体としてバージョンアップしている。これは大きな流れであるだけでなく、長期的な流れでもある。特に経済が安定成長を維持する発展段階、1人当たり平均可処分所得が持続的に増加する段階では、消費にダウングレードの動きが出る可能性はない。ダウングレードするという見方は実際には経済学の基本的法則に背いている。よって『消費ダウングレード』という説には理論的根拠も現実的な基盤もないため、こうした見方は成立しないだろう」と述べた」

     

    この記事では、中国経済が「上り坂」であると言い切っている。つまり、「1人当たり平均可処分所得が持続的に増加する段階では、消費にダウングレードの動きが出る可能性はない」と。だが、家計調査でみた18年19月の可処分所得は、前年同期比6.%増であり、前年同期の7.%と比べ鈍化している。節約志向が強まる客観的背景があるのだ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(10月29日付)は、「中国、節約志向じわり、コーヒー1杯にも」と題する記事を掲載した。

     

    (2)「上海市中心部にあるショッピングセンター(SC)の1階。高級ブランドショップが並んでいるが人影はまばらだ。平日ということもあるが、昼時で周囲は人であふれているのにSCの中は閑散としている。同じ階で唯一人が集まっている店舗が、驚くことにファミリーマートだ。飲食店が並ぶフロアの一角にある店舗では、8席のイートインコーナーが昼食を食べる人で埋まっており、レジの前には列もできている。イートインコーナーで食事をしていた会社員の向静さん(24)は「コンビニエンスストアの弁当は10元(約160円)くらいで食べられるからよく利用する」と話す」。

     

     コンビニのイートインコーナーで食事する人たちが増えているという。レストランに行かず、コンビニで済ますのは、明らかに節約志向の定着であろう。昼飯代が10元とは、これまでにない変化だ。

     

    (3)「1999年に進出した米スターバックスコーヒーは、中国人にとって憧れの外国ブランドとして象徴的な存在だ。その追い風もあり、現在は中国全土に約3400店を展開する。ただ最近はスタバの圧倒的なブランド力に陰りが見えるとともに、1杯のコーヒーに30元(約480円)払う「プチぜいたく」疲れも中国の消費者の間ではみられる。そんななか急速に店舗網を広げる地元チェーンがある。スタバに対して、コーヒー1杯20元前後と10元ほど安い。ただ、同チェーンの場合は同じ商品を2杯購入すれば、もう1杯が無料になるため、スタバよりも実際は1杯の価格が15元程度安くなる。上海市内で働く張春さん(26)は「同僚の分もまとめて注文すればスタバよりも安く、割引でお得感もある。味も十分満足している」という。張さんも以前は毎日のようにスタバを利用していたが、最近はコーヒー1杯に30元を払うのは高いと感じるようになったという」

     

    スタバで、コーヒー1杯30元払うよりも、地元のコーヒー・チエーン店で20元のコーヒーで我慢する。これまでの中国社会で見られなかった消費パターンである。これこそ、バブル経済崩壊後に見られる「節約ムード」だ。日本でも同じパターンを経験してきた。バブル経済崩壊後の津波が個人消費へ押し寄せていることを告げている。この上に、米中貿易戦争の重圧がのしかかってきた。中国経済に逃げ場はない。



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    米経済通信社「ブルームバーグ」の景況調査によれば、10月の先行指数は再び悪化の見通しが強まった。月末には、中国国家統計局からPMI(製造業購買担当者景気指数)が発表されるが、悪い結果を予想させる。

     

    9月のPMIは前月より0.5ポイント低い50.8だった。好不調の節目となる50は26カ月連続で上回ったものの、春節(旧正月)休暇の影響で統計がふれやすい13月を除くと16年9月以来2年ぶりの低水準だった。10のPMIがさらに悪化するとなれば50へ接近する事態も想像される。その場合、株価の受けるショックは大きいだろう。

     

    『ブルームバーグ』(10月29日付)は、「中国経済の減速、10月に再び悪化ー先行指標が示唆」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「米国との貿易摩擦が激化し中国の政策当局が企業支援策を強化した10月に、中国の経済成長は引き続き減速したことがブルームバーグ・エコノミクスの集計した業況と市場心理に関する先行指標に示されている。今年1012月(第4四半期)の中国経済の動向は注目を集める見通しで、政府が債務をさらに急増させることなく安定した成長ペースを維持できるかどうかが焦点となりそうだ。7-9月(第3四半期)の中国経済は減速したものの、貿易戦争の影響の多くはまだ指標に反映されていない」

     

    10月から、米中貿易戦争の影響が本格的に出てくる段階だ。それだけに、低調なPMIが発表されるとショックが大きく、10~12月のGDP成長率予想の引下げに拍車をかけるかも知れない。

     

    (2)「ブルームバーグのアジア担当チーフエコノミスト、舒暢氏は「経済状況は国内・国外の両面で軟化し続けていることが先行指標に示されている」と指摘。「景況感は極めて低調で、小規模の民間企業の間では特にそうだ。景気支援策は輸出や消費、投資という成長のあらゆる側面に拡大し続けると予想される」と述べた。

     

    中国企業の景況感は悪く、小規模の民間企業で顕著であるという。政府の景気支援策は、輸出・消費・投資などGDPを支える全項目に拡大するほど、緊急事態を迎えている。はっきり言えば、SOSの状態になっているようだ、

     

    (3)「10月の中国経済に関する最初の公式統計は31日午前に公表予定の製造業とサービス業の購買部担当者指数(PMI)だ。ブルームバーグの集計データによると、製造業PMIは若干低下すると見込まれているが、建設やサービス業を含む非製造業PMIは前月比横ばいが予想されている。国家統計局の製造業PMIは9月に7カ月ぶりの低水準を付けていた」

     

    中国政府は、こういう緊急事態の中で安倍訪中を迎えたわけで、日本経済への期待は一段と高まっているものと思われる。それゆえ、「安倍歓待」となったのであろう。



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    歴代の中国国家主席は、経済運営は首相に任せてきた。習氏は、この慣例を破って李首相から経済政策決定権を奪った。この結果、経済的な混乱の責任は、すべて習氏が負う羽目になっている。今回の米中貿易戦争は、もし李首相の指揮下で取り組んだとすれば、違う形になったであろう。習氏は、成功も失敗もすべて一人で背負い込む形になっている。

     

    『朝鮮日報』(10月28日付)は、「無能な国有企業を支援する中国」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙の崔有植(チェ・ユシク)中国専門記者である。

     

    (1)「2012年12月初め、中国共産党総書記に選出された習近平国家主席は、最初の視察先として、改革開放発祥の地である広東省深セン市を選んだ。深圳市の蓮華山公園にある鄧小平の銅像の献花し、「改革開放の道は正確だった」と宣言した。総書記選出直前には、代表的な政治改革派である胡耀邦元総書記の息子、胡徳平氏と会った。徹底した政治・経済改革を予告したかに見えた」

     

    習氏は、国家主席への就任前後は、鄧小平の経済改革、市場主義などを高らかに宣言していた。その後、これを引っ込めて毛沢東路線へ切り替わった。主席に就任後、複雑な権力闘争を生き抜くには、「きれいごと」を言っていては駄目だという認識に変わったのだろう。権力保持が最大の目標になった。経済成長が、自らの権力保持の道具になった。過剰債務の累積は、この結果であろう。不動産バブルを利用したのだ。

     

    (2)「その期待は長続きしなかった。「中華民族の偉大な復興」をモットーに掲げたと思えば、インターネット検閲を含む徹底した思想統制で改革派の口を封じた。毛沢東に対する「領袖」「核心」といった称号に執着し、独裁権力の強化に走った。経済分野でも同様だった。任期中の経済ビジョンを示した2013年の第18期中央委員会第3回全体会議(三中全会)の決議には「市場が資源配分で決定的な役割を果たす」との文言が盛り込まれた。国有企業改革を加速し、民間企業の活力を高める意図と受け止められた。これもまた口先だけだった。国有企業の規模がさらに巨大化し、民間企業の資金で国有企業を支援する制度まで登場した」

     

    習氏が突然に、「中華民族の偉大な復興」を持出した理由は何か。誰も反対できないアドバルーンを上げて、権力保持に利用したはずである。一方、これを最大限に活用しているのが人民解放軍である。習氏は、軍隊を足下に引き寄せて権力基盤を固めたものの、これが新たな危機を招く要因になった。米国との対立激化である。軍隊という存在は、自律的に増殖するメカニズムを持っている。

     

    戦前の日本を見れば自明である。昭和に入ってからは軍部が独走し、満州を橋頭堡にした。これを足がかりに、中国全土へ戦線を拡大。最後は、太平洋戦争へと突入して自滅した。この日本の失敗の歴史を見れば、習氏は天皇の位置に立っている。人民解放軍を直属の軍隊である。だが、自らの権力基盤の軍隊は、習氏の指揮を離れて動き出す危険性と裏腹の関係になっている。日本の天皇に名を借りた軍隊が暴走を始めた経緯は、習氏のケースにも当てはまる。日本と同じリスクを抱えているのだ。

     

    (3)「習主席は絶対権力の確保に成功したが、中国はその代償を払っている。米中貿易戦争がその代表例だ。スターリン式独裁体制と強力な国家資本主義で米国を追い抜き、世界最大の経済大国になるという習主席のロードマップに米国がブレーキをかけたのだ。上海株式市場は年初来25%も下落。人民元も対ドルで8%以上下落した。中国経済を支える民間企業も揺らいでいる。習主席が就任して以降、中国の民間企業は、経済成長率が低下する一方で、賃金が年10%以上上昇するという二重苦に苦しんできた。

     

    習氏は、国家主席の任期を廃止して無期限にした。まさに、戦前の天皇の位置を手に入れている。これが、新たな危機を招くのだ。絶対権力と人民解放軍が一体化している現在、習氏は国民の手前、米国と妥協できないという「危機」である。現状の中国が、米国と五分に戦えるはずがない。中国に犠牲を強いるばかりであろう。日本が米国と開戦し、終戦の決断がなかなか付かず犠牲を大きくした原因は、絶対権力(天皇と軍部の一体化)の存在がしからしめたものだ。中国が、これから直面する危機は日本と同じ構図と見る。

     

    こうした背景において、中国の民営企業は国有企業の犠牲になっている。正規金融は、国有企業中心に行なわれ、民営企業は正規金融から閉出されている。やむなく非正規金融のシャドーバンキングに頼るという状態だ。これも、習氏の描く国有企業中心の産業構造がもたらした歪みである。戦時中の日本が、企業の統廃合を行なった背景が、現在の中国に当てはまるのだ。

     

    (4)「中国の79月期の経済成長率が6.5%まで低下し、中国危機論が再燃している。しかし、中国国内の専門家は、成長率低下よりも習近平政権の改革が後退していることを懸念する。革新能力も収益能力もない国有企業を代表選手としたところで、「中進国のわな」を乗り越えられるのかという指摘だ」

     

    「中進国の罠」とは、一人当たり名目GDPが1万~1万3000ドル程度に留まり、それ以上に成長できない現象を指す。米中貿易戦争が、中国をして「中進国の罠」に陥れるのでないか。現在、そういう懸念が国内で生まれているという。過剰債務という大きな罠に加えて米中貿易戦争が控えている。中国経済が、容易ならざる事態へ突入したことは疑いない。


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