韓国は8月24日で、中国と国交正常化して30年を迎える。朝鮮戦争では、北朝鮮とともに韓国を侵略した中国である。韓国は、この中国との国交正常化交渉で、ほぼ中国の出す条件を飲まされる形になった。韓国は、朝鮮戦争における中国の「罪業」を上げて、対抗すれば良かったであろうに、中国の前に出ると萎縮させられたのだ。
韓国外交は、「その場限り」という印象が極めて強い。政権が変われば、前政権の外交的な約束を反故にするという悪弊である。外交方針に一貫性がないのだ。その最大の被害国は日本である。文政権は、功を焦って日韓関係を破綻させた。中国には、平身低頭するという矛楯した姿勢を見せたのだ。この韓国外交の底を流れるものは、「短期成果」を求めて動くという外交におけるタブーを実践していることだ。
『中央日報』(8月22日付)は、「国交正常化30年 断交30年」と題するコラムを掲載した。筆者は、ユ・サンチョル中国研究所長である。
今年3月に韓国内で出版された『台湾断交回顧(原題)』は、中国との国交正常化および台湾との断交過程を当時台湾で勤務していた韓国外交官の視線でリアルに描いている。36年の外交官生活を終えて2015年に引退したチョ喜庸(チョ・ヒヨン)元駐カナダ大使が著者だ。
(1)「国交正常化30年を迎えた韓中関係が、楽観することはできないほど多くの問題に直面している現実において、韓国外交に大きく3つの教訓を投げかけている。第一に、韓国はよく時間の戦いに敗れるということだ。交渉は余裕を持って押したり引いたりしなければならないが、韓国はいつも決まった時間内に何かを成し遂げようとする。そして、このような立場を相手に悟られて、相手のペースに巻き込まれるのだ。30年前、韓中国交正常化交渉に乗り出した韓国代表団には、2つの目標があった」
中韓国交正常化交渉で見せた韓国外交の特色の第一は、時間を焦ってしまい相手ペースに巻き込まれることだという。例外もある。日韓の正常化交渉は、韓国が粘りに粘ってマラソン交渉になった。日本から多額の資金を巻き上げる目的があったからだ。中国を恐れ、日本を舐めていた結果とも言えよう。
(2)「1つは早期国交正常化、もう1つは盧泰愚(ノ・テウ)大統領の訪中成功だった。盧大統領が自ら国交正常化声明を発表すれば、より良かった。国交正常化した1992年は、事実上、盧大統領の任期の最終年だ。同年12月に大統領選挙があったためだ。一方、中国は「一つの中国」の原則を掲げた。これを認めなければ、これ以上の対話はないというような形だったという。結局、年内に国交正常化を実現させ、盧大統領の訪中まで実現しなければならなかった韓国外交は、中国の要求を相当部分受け入れ、相対的に大韓民国政府樹立後初めての国交正常化国である台湾に配慮できなかった」
盧大統領は、自らの任期中に中韓国交正常化を実現するために中国へ妥協した。その一方で、台湾との友誼を踏みにじった。日本は、中国との国交回復の一方で、台湾との関係維持を図ったのだ。この辺りに、日本と韓国の違いが現れている。
(3)「中国は韓国との国交正常化の事実を北朝鮮に7月15日に通知したが、韓国は断交3日前の8月21日になってから、その事実を台湾に公式通知した。それまで、中国との国交正常化について執拗に問い合わせる台湾に「新しい友人と付き合っても旧友は捨てない」「韓中国交正常化に関するタイムテーブルはない」などの曖昧な言葉でごまかし、台湾に「恩を忘れて義理を破った(忘恩負義)」という厳しい言葉を言われた。中国との早期国交正常化に執着し、台湾への配慮が疎かにならざるを得なかった結果だった」
下線のように、韓国は台湾から「忘恩負義」という言葉を投げかけられた。その通りである。日本に対しても同様な態度である。国民性であろう。
(4)「ここで韓国が肝に銘じなければならない教訓は、中国との交渉ではできるだけ期限を持たない方が良いという点だ。1人の大統領の任期内に何かを成し遂げようと急ぐと、中国に多くの譲歩をせざるを得なくなる。中国は特に、愚公移山の国ではないか。常に時間は自分の味方だと考えているからなおさらだ」
中国外交は、粘って来るのが特色だ。尖閣諸島へ見せるあの妄念を見ると、中国へは決して「甘い姿勢」を見せてならないというのが教訓である。
(5)「2つ目の教訓は、中国に「韓国は押せば押される」という認識を植え付けたという点だ。中国は国交正常化に向けた韓国との最初の公式交渉過程で、韓国の中国に対する基本的な立場と態度を短期間で経験し、韓国をどのように扱うべきか、それなりのアプローチを確立できたということだ。韓国は国交正常化交渉の第2次予備会談の時、「一つの中国」の原則に関する中国側の立場をほぼ受け入れた。その後、ニンニク問題やTHAAD(高高度ミサイル防御)問題など紛争が起こるたびに、中国が見せる強硬な態度の背景に、もし過去の国交正常化当時、韓国は押せば押されるという認識を持つようになったためではないかという考えを拭えない」
中国は、始皇帝以来の「合従連衡」という外交基本政策が受け継がれている。手練手管で相手国を滅ぼす「テクニック」は、紀元前400年から伝授されているものだ。
(6)「3つ目に、韓国外交の慢性的な問題として、短期成果に対する執着だ。政権ごとに短期的な成果を出すために外交当局がしがみつき、大国および北朝鮮中心の外交をするため、その他の国々に対する配慮と投資を疎かにすることになる。特に、その都度、政界の短期的な計算に迎合し、わずか数年前の関係や約束を破って対外関係を処理することは、究極的に国益を害し、国威を傷つけることだとチョ元大使は言う。国交正常化30周年を祝いつつも、断交30周年の傷を振り返り、過去の良かったことと悪かったことを振り返り、未来発展の動力にしなければならない。
文政権は、北朝鮮との交流強化を最大の外交目標にした。短期的に成果を上げて、歴史に名を残したかったにすぎない。個人の名声狙いだ。外交に、個人プレーがあってはならない例である。