勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 中国経済ニュース時評

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    韓国は8月24日で、中国と国交正常化して30年を迎える。朝鮮戦争では、北朝鮮とともに韓国を侵略した中国である。韓国は、この中国との国交正常化交渉で、ほぼ中国の出す条件を飲まされる形になった。韓国は、朝鮮戦争における中国の「罪業」を上げて、対抗すれば良かったであろうに、中国の前に出ると萎縮させられたのだ。

     

    韓国外交は、「その場限り」という印象が極めて強い。政権が変われば、前政権の外交的な約束を反故にするという悪弊である。外交方針に一貫性がないのだ。その最大の被害国は日本である。文政権は、功を焦って日韓関係を破綻させた。中国には、平身低頭するという矛楯した姿勢を見せたのだ。この韓国外交の底を流れるものは、「短期成果」を求めて動くという外交におけるタブーを実践していることだ。

     


    『中央日報』(8月22日付)は、「国交正常化30年 断交30年」と題するコラムを掲載した。筆者は、ユ・サンチョル中国研究所長である。

     

    今年3月に韓国内で出版された『台湾断交回顧(原題)』は、中国との国交正常化および台湾との断交過程を当時台湾で勤務していた韓国外交官の視線でリアルに描いている。36年の外交官生活を終えて2015年に引退したチョ喜庸(チョ・ヒヨン)元駐カナダ大使が著者だ。

    (1)「国交正常化30年を迎えた韓中関係が、楽観することはできないほど多くの問題に直面している現実において、韓国外交に大きく3つの教訓を投げかけている。第一に、韓国はよく時間の戦いに敗れるということだ。交渉は余裕を持って押したり引いたりしなければならないが、韓国はいつも決まった時間内に何かを成し遂げようとする。そして、このような立場を相手に悟られて、相手のペースに巻き込まれるのだ。30年前、韓中国交正常化交渉に乗り出した韓国代表団には、2つの目標があった」

     

    中韓国交正常化交渉で見せた韓国外交の特色の第一は、時間を焦ってしまい相手ペースに巻き込まれることだという。例外もある。日韓の正常化交渉は、韓国が粘りに粘ってマラソン交渉になった。日本から多額の資金を巻き上げる目的があったからだ。中国を恐れ、日本を舐めていた結果とも言えよう。

     


    (2)「1つは早期国交正常化、もう1つは盧泰愚(ノ・テウ)大統領の訪中成功だった。盧大統領が自ら国交正常化声明を発表すれば、より良かった。国交正常化した1992年は、事実上、盧大統領の任期の最終年だ。同年12月に大統領選挙があったためだ。一方、中国は「一つの中国」の原則を掲げた。これを認めなければ、これ以上の対話はないというような形だったという。結局、年内に国交正常化を実現させ、盧大統領の訪中まで実現しなければならなかった韓国外交は、中国の要求を相当部分受け入れ、相対的に大韓民国政府樹立後初めての国交正常化国である台湾に配慮できなかった」

     

    盧大統領は、自らの任期中に中韓国交正常化を実現するために中国へ妥協した。その一方で、台湾との友誼を踏みにじった。日本は、中国との国交回復の一方で、台湾との関係維持を図ったのだ。この辺りに、日本と韓国の違いが現れている。

     

    (3)「中国は韓国との国交正常化の事実を北朝鮮に7月15日に通知したが、韓国は断交3日前の8月21日になってから、その事実を台湾に公式通知した。それまで、中国との国交正常化について執拗に問い合わせる台湾に「新しい友人と付き合っても旧友は捨てない」「韓中国交正常化に関するタイムテーブルはない」などの曖昧な言葉でごまかし、台湾に「恩を忘れて義理を破った(忘恩負義)」という厳しい言葉を言われた。中国との早期国交正常化に執着し、台湾への配慮が疎かにならざるを得なかった結果だった」

     

    下線のように、韓国は台湾から「忘恩負義」という言葉を投げかけられた。その通りである。日本に対しても同様な態度である。国民性であろう。

     

    (4)「ここで韓国が肝に銘じなければならない教訓は、中国との交渉ではできるだけ期限を持たない方が良いという点だ。1人の大統領の任期内に何かを成し遂げようと急ぐと、中国に多くの譲歩をせざるを得なくなる。中国は特に、愚公移山の国ではないか。常に時間は自分の味方だと考えているからなおさらだ」

     

    中国外交は、粘って来るのが特色だ。尖閣諸島へ見せるあの妄念を見ると、中国へは決して「甘い姿勢」を見せてならないというのが教訓である。

     


    (5)「2つ目の教訓は、中国に「韓国は押せば押される」という認識を植え付けたという点だ。中国は国交正常化に向けた韓国との最初の公式交渉過程で、韓国の中国に対する基本的な立場と態度を短期間で経験し、韓国をどのように扱うべきか、それなりのアプローチを確立できたということだ。韓国は国交正常化交渉の第2次予備会談の時、「一つの中国」の原則に関する中国側の立場をほぼ受け入れた。その後、ニンニク問題やTHAAD(高高度ミサイル防御)問題など紛争が起こるたびに、中国が見せる強硬な態度の背景に、もし過去の国交正常化当時、韓国は押せば押されるという認識を持つようになったためではないかという考えを拭えない」

     

    中国は、始皇帝以来の「合従連衡」という外交基本政策が受け継がれている。手練手管で相手国を滅ぼす「テクニック」は、紀元前400年から伝授されているものだ。

     




    (6)「3つ目に、韓国外交の慢性的な問題として、短期成果に対する執着だ。政権ごとに短期的な成果を出すために外交当局がしがみつき、大国および北朝鮮中心の外交をするため、その他の国々に対する配慮と投資を疎かにすることになる。特に、その都度、政界の短期的な計算に迎合し、わずか数年前の関係や約束を破って対外関係を処理することは、究極的に国益を害し、国威を傷つけることだとチョ元大使は言う。国交正常化30周年を祝いつつも、断交30周年の傷を振り返り、過去の良かったことと悪かったことを振り返り、未来発展の動力にしなければならない。

    文政権は、北朝鮮との交流強化を最大の外交目標にした。短期的に成果を上げて、歴史に名を残したかったにすぎない。個人の名声狙いだ。外交に、個人プレーがあってはならない例である。



    テイカカズラ
       


    所得上昇で人間意識は変わる

    個人へ踏込む共産主義の無謀

    中国建国100年は凶か吉か

    米国哲学とマルクスの勝負へ

     

    習近平氏は、国民の心について大きな見誤りをしている。経済成長を目指すあまり、全般的に規制を強化していることだ。経済的に豊かになっている国民には、それが「架せ」になっているのである。政治家として、国民の心を読めないのは最大の失策であろう。

     

    国民は、習近平氏に異議申立てが不可能である。仮に行なえば、「国家反逆罪」で拘束されることは間違いない。その恨みは堪っている。今年3~5月までの上海市の完全なロックダウンで、市民の悲痛な不平不満が夜間、高層マンションのベランダから雷鳴のように鳴り響いた。あれこそ、市民が精一杯の不平不満をぶちまけた瞬間である。

     


    習氏は、あのこだまする悲鳴を何と聞いただろうか。あれは、明日の中国への警鐘である。国民は、日々の不満を声に出せない代わりに、結婚しない、子どもを生まないという形で抗議しているのだ。2018年以降の中国の出生率は、急激に低下している。これこそ、習氏への本当の抗議なのだ。

     

    習氏は、この「声なき抗議」を見誤ると、自らが思い描いてきた「中華の夢」どころの話でなくなる。習氏の「国家主席」が、不名誉な形で閉じられる危険性すら抱えるのだ。中国が、それだけ厳しい岐路にあることを自覚しなければならないであろう。

     

    所得上昇で人間意識は変わる

    習氏は、「改革開放」40年間の経済的成果として、平均経済成長率9.7%を取り上げている。確かに、この間の経済成長は見事なものである。だが、国民は所得水準の上昇と共に、国民の価値観も変化していることに気付かなければならない。生活水準の上昇によって、人間の価値観が次のような形で「上昇過程」を歩み、最終的に「共産主義」を否定することになるはずだ。

     


    米国の心理学者マズローが提唱した「欲求5段階説」は、中国国民の意識変化を暗示している。つまり、習氏の国民生活への管理強化は拒否される段階まで来ている。前述の上海高層マンションにおける夜間の叫びは、ロックダウンという無慈悲な人間性否定への強烈な抗議なのだ。

     

    マズローの上げた「欲求5段階説」とは次のようなものである。

    1)生理的欲求  生きていくために必要な欲求

    2)安全欲求   安心安全な暮しへの欲求

    3)社会的欲求  友人や家庭、会社から受入れられたい欲求

    4)承認欲求   他者から尊敬されたい、認められたい欲求

    5)自己実現欲求 自分の世界観、人生観に基づいて「あるべき自分」になりたい欲求

     

    中国共産党が革命に成功したのは、国民の生活が1)生理的欲求と、2)安全欲求段階にあったからである。こういう革命成就の条件を吟味せず、マルクス・レーニン主義が不滅の真理と考えるのは異常である。マルクス主義が、なぜ欧州で実現せずロシアや中国で成功したか。ロシアや中国では、前記のマズローの説に立てば、1)や2)の段階という特殊条件によって、共産革命が培養されたに過ぎない。先進国で、共産主義政権が生まれないのは、それを必要とする状況にないことを証明している。

     


    中国は「改革開放」の成功によってその後、国民生活は5)の実現欲求に向かっている。習氏は、この段階で昨年7月のように「共同富裕論」を持出して、ITビジネスに大きな規制を加えた。インターネット・ゲームに時間と金を使うな、塾で学ぶな、という庶民の生活にタガをはめたのである。

     

    これは、どう見ても個人生活への大きな干渉である。所得水準が上がれば、今まで夢でしかなかったことをしたいもの。それが人情である。パンデミック前、中国人の海外旅行はすさまじい勢いであった。地球の至る所に、中国人はその足跡を残してきたのである。これは、イデオロギーとは関係なく人間としての基本的欲求である。

     

    個人へ踏込む共産主義の無謀

    習氏は「共同富裕論」を盾にして、国民生活へ「ノー」という御旗で割込んできた。中国国民の不平等原因が、IT関連ビジネス成長で所得を吸い上げ、国民を疲弊に追込んでいるという発想に基づく。住宅価格高騰によって、高額住宅ローン支払いを余儀なくさせた。その原因は、不動産開発企業の無軌道な成長結果によるものと断じたのである。こうして、不動産開発企業への融資締め出しが始まった。

     

    中国における所得分配不平等の原因は、租税制度の不平等性にある。税収の内訳は、直接税が3分の1,間接税が3分の2という大衆課税中心である。所得税や固定資産税(中国に正式には存在しない)の直接税負担が3分の1という富裕者優遇の租税制度である。

     

    共産主義を標榜する中国が、資本主義国をはるかに上回る「金持ち(共産党員)優遇」が実態だ。これを隠すために、付加価値の高いIT関連ビジネスを「悪者」に仕立てて、狙い撃ちしたのである。経済原則から言えば、完全に成長軌道を踏み外した政策である。中国経済が、減速必至論と見る裏にはこういう無謀な原理原則に反する政策も影響している。

     

    中国国民は、習近平氏に対してどのような無言の抵抗をしているのか。それは、既述のように子どもを生まないことである。出生率の低下が、必然的に中国の国力を引下げるからだ。そうなれば、中国共産党が永続できない運命を辿るのである。(つづく)

     

    次の記事もご参考に。

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    メルマガ384号 中国「台湾大演習」、戦争への意思表示 米軍に勝つ自信なく「短期決戦狙う」

    2022-07-25

    メルマガ380号 「危ない!」中国主席3選、軍需経済化へ 衰退は確実 台湾侵攻でト

     

     

     

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    変われば変わるものである。金融機関による不動産開発企業への融資は、「疫病神」扱いされている。不動産バブルの崩壊を裏づけるのだ。金融機関は、融資しても返済見通しが確実でなければ貸出を回避する。そこでついに、政府がマンション建築を続けられない企業だけを対象に「繋ぎ融資」することになった。綱わたりである。

     

    中国の社債市場は、12兆4000億ドル(約1655兆円)規模だが、信用度の落ちる企業の資金調達は難しくなっている。「トリプルA」格付けの人民元建て3年物社債の指標利回りは、国債との比較で2006年以降のデータで最も低い水準となっているほど。いつデフォルトになるか分らないほど疑心暗鬼に陥っている。こういう状況では、「札付き」の不動産開発企業へ資金が回るはずもないのだ。

     

    『ブルームバーグ』(8月21日付)は、「中国、困難に直面する不動産開発業者に特別融資提供へ」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国は住宅建設プロジェクトが買い手に確実に引き渡されるようにするため、政策銀行を通じて特別融資を提供する。債務危機と住宅販売の低迷に苦しむ不動産開発業界に新たな公的支援が実施される兆候がまた増えた住宅都市農村建設省、財政省、中国人民銀行(中央銀行)が発表した声明によると、特別融資の対象は引き渡しが困難になっているプロジェクトにのみ限定される。国営の新華社通信が19日伝えた」

     

    中国指導部は当初、マンションの「青田売り」で建物を引き渡していない物件について、地方政府が支援するように決定した。地方政府は、土地販売収入が住宅販売の不振で前年比3割も落込んでおり、とても不動産開発企業への資金融資できる余裕がなかったのであろう。ついに住宅都市農村建設省、財政省、中国人民銀行(中央銀行)が、「繋ぎ融資」に出ざるを得なくなった。公的融資しか道がないという最悪事態へ落込んでいる。

     


    不動産開発企業は、銀行融資も社債発行もすべて門を閉じられたという最悪事態に陥っている。このことは、不動産バブルの崩壊後遺症は、公的融資でしか解決できないことを暗示している。

     

    (2)「今回の動きは、苦境にある不動産業界に対し当局が財政支援を強化していることを示すものだ。中国では先月、ローンを組んで購入した住宅が未完成だとして住宅ローンの返済をボイコットする動きが急速に広がった。不動産業界の長引く低迷は中国経済成長にとって大きな重石だ。4~6月(第2四半期)の同国の国内総生産(GDP)伸び率は、湖北省武漢で最初に新型コロナウイルス感染が流行した2020年1~3月(第1四半期)以来の低い伸びとなった。エコノミストからは、今年通年の成長率が4%かそれを下回る水準になる可能性があるとの見方が出ている」

     

    中央政府は、これまで不動産バブルを利用してきた「受益者」である。地方政府の歳入の3割以上を土地販売収入で賄ってきたからだ。今や状況は一転した。政府が資金の面倒を見なければならない事態へ追込まれている。自業自得という面もあるのだ。

     


    不動産バブルの崩壊は直接、GDP成長率に響いてくる。GDPの約4分の1もの「寄与度」と他国の20%以下を大きく上回る状況にある。

     

    『ブルームバーグ』(8月19日付)は、「今年の中国経済見通し3.5%成長に下方修正―シティとムーディーズ」と題する記事を掲載した。

     

    シティグループとムーディーズ・インベスターズ・サービスは、2022年の中国経済成長率見通しを3.5%に引き下げた。7月の活動データが予想より悪く、成長を支える十分な支援策を期待できないことが理由だ。

     

    (3)「シティの余向栄氏らエコノミストは18日のリポートで、不動産市場低迷の長期化や、熱波とそれに関連する電力供給圧迫、新型コロナウイルスの新たなクラスター(感染者集団)で8月は回復が勢いを失っていると指摘。シティの従来予想は3.9%だった。ただ、比較対象となる1年前の水準が低く、79月(第3四半期)の成長率を押し上げる要因となる可能性があるとの見方も示し、同四半期の後半には政策支援が始まる公算も大きいことにも触れた」

     

    シティは、7~9月期は従来の4.8%を3.9%に大きく引下げた。従来の予測が、高すぎたことは否めない。

     


    (4)「シティは現在、7~9月期の国内総生産(GDP)を前年同期比3.9%増と想定。従来見通しは4.8%増だった。10~12月(第4四半期)については5%増と、こちらも従来予測の5.3%増から引き下げた。ムーディーズは19日、中国政府がこれまでに発表したインフラ支出強化や減税、規制緩和などの支援措置は、成長率を政府の年間目標(5.5%前後)に押し上げるのに十分でないとの分析を示した。従来は年4.5%成長を予想していた」

     

    ムーディーズは、22年成長率見通しを従来の4.5%を3.5%へ引下げた。大手予測機関は、これで22年の成長率をほとんど3%台へ下方修正した。ノムラは、3%割れと厳しい見方である。

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    韓国外交には、凜としたプリンシプルが欠如すると指摘されている。韓国の政治制度は、西側諸国と同じ民主主義であるが、中国との外交関係では「経済第一」で外交プリンシプルを曖昧にしているのだ。中国は、この二股外交を熟知しているので、韓国を揺さぶっている。

     

    朝鮮は、中国に1000年単位の支配を受けてきたので、中国の恫喝に恐怖感を持っている。さらに、儒教という共通項も加わって、中国へは心情的に傾斜する面もあるのだろう。こうして、米国と同盟を結ぶ韓国が、米同盟国では唯一、「恐中・親中」という複雑な側面を持ち、西側諸国から異質の国という評価を受けているのだ。

     

    韓国外交で最も醜悪で、反日であったのは文政権である。一方、韓国歴代大統領の中で唯一、日本の本質を理解していたのは金大中氏だけだった。金氏は、軍事政権との対立時に日本を活動基盤にしていたこともあり、日本の真意を把握していた。他の大統領は、すべて「反日」を政治的な拠り所にした。現在のユン大統領は、幼少時に父親の日本留学で滞日経験があることから「反日」ではなさそうだ。金氏の「知日」は、小学校教師が日本人で親切にして貰ったことがきっかけである。

     


    『朝鮮日報』(8月21日付)は、「韓国は西側なのか、西側ではないのか」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のパリ特派員チョン・チョルファン記者である。

     

    先日、「韓国がどうして西側国なのか」という読者の質問を受け、この国のアイデンティティーについてあらためて考えることになった。過去9カ月間、欧州の国際政治アナリストと直接、間接に会って「韓国は本当に自らを西側国と考えているのか」というような質問を受けてきたところだった。

     

    (1)「現在、西側とは地理的な概念ではない。西欧の価値観や利益を共有し、その体制に属するということを意味する。かつては共産主義諸国が、現在では権威主義の独裁諸国が、その正反対に位置する。こうした点で、韓国は確実に西側の国だ。20世紀以降、政治・経済・文化の全ての面で西側世界の枠組みの中で成長した。国体は市場資本主義・自由民主主義・三権分立など西欧的価値に基づいている。米国と西側諸国が、およそ70年前に自国民15万人を犠牲にして守った国で、彼らとの交流・協力を通して世界10大経済強国へと成長した。今では西側を代表する先進8カ国(G8)候補にまで挙げられている」

     


    韓国が、朝鮮戦争による焼土の中から現在のGDP10位にまで発展できたのは、民主主義と市場経済システムによるもの。もう一つ、日本企業からの技術と資本の支援があったからだ。韓国では、こういう基盤に支えられていたという認識が希薄である。もっとはっきり言えば、普遍的な歴史認識が存在せず、感情論でしか歴史を読めないその「狭量さ」が目立つ。

     

    欧州が、韓国について「西側諸国かそうでないのか」という疑念を持つこと自体、韓国に普遍的な歴史認識が存在しないことの証明である。日本をことさら憎んで、韓国軍までが現場指揮官に自衛隊哨戒機へ無断でレーダー照射せよと命じている。こういう「西側諸国」が、存在するとは思えないであろう。韓国進歩派(民族主義)は、まさに「感情の塊」で理性の一片も見せない政治結社である。

     

    (2)「だが、韓国の国民はもちろん政治家たちも「韓国は西側の国」だという命題の前に首をかしげている。果ては、こうしたアイデンティティーをあいまいにすることが「国益」にかなうと考える人々もいる。「安米経中」のように、グレーゾーンで実利を得ようという浅薄な論理が賢明な知恵であるかのように受け入れられている。こうした思考方式がひそかに広まったことで、同盟国の議会代表を門前払いしておいて「国益のための選択」という詭弁が登場する。定見なく信頼をそぐばかりの行いを「国益」と装うことに慣れている」

     

    韓国は、歴史的に中国の支配を受けて来たことで、狡猾さを身に付けている。中国では、「上に政策あれば、下に対策あり」で必ず「抜け穴」探しをする。韓国も、この悪しき伝統が身に付いているのだ。「安米経中」は、その象徴的な事例だ。米中の双方から利益を得ようという「乞食根性」にも見える。

     


    (3)「韓国の対外政策が、他の西側諸国や同盟国に追従すべきだと言っているのではない。自分が立っている場所が明確であればこそ、自主的な外交が可能だということだ。自主を口実に右往左往する行いを繰り返したら、国際社会の信頼を失うばかりだ。そういう国の国益判断は、国家権力を握った特定勢力の利益にすぎないという認識を与える。欧州の対外政策当局者の多くが、韓国の対北・対中・対日政策を巡ってそうした疑いを持っている。「韓国の本当の考えは何か」とストレートに尋ねる人もいた」

     

    下線部は、韓国の弱点を見事に突いている。これが、欧州の見る「韓国観」であろう。文政権は民族主義集団であり、先鋭な労組と政治化した市民団体が支持基盤だ。政策はこれら支持層に迎合した。それが、「親中朝・反日」政策となって現れたものである。

     

    (4)「残念ながら、中国はこれをよく分かっており、利用している。アイデンティティーが弱く、植えても固められない国だから、なだめすかして操練すればいくらでも「中華世界」に従属させることができる-と見ているようだ。THAAD(高高度防衛ミサイル)問題を巡り、内政干渉にほかならない動きで韓国を追い詰め続けているのも、そうした「ガスライティング(誤情報を与えるなどして追い詰める心理的虐待)」の過程といえる」

     


    中国は、「弱者」韓国の心理状態を100%読んでいた。巧妙に韓国政権を追詰めたのである。中国は、日本と韓国に対する外交姿勢の違いを見せている。それは、日本が恫喝に応じないからだ。韓国は、米国という同盟国を持つのだからそれを信頼して、中国の脅迫に屈してはならない。

     


    (5)「アイデンティティー不足は、未成熟な人間の特徴だ。韓国も、今こそそうした段階から抜け出すべきではないだろうか。世界が新冷戦へと向かう中でどのような戦略を立てるにせよ、「西側の一員」だという自己認識は確実であるべきだ。イソップ童話の「ひきょうなコウモリ」の話のように、あいまいなアイデンティティーに溺れて右往左往しては、どちらからも捨てられることになる。国際社会でも例外ではない」

     

    下線部は、痛烈な自国批判である。その通りだと思う。アデンティー不足は、韓国の成立基盤が、北朝鮮と根本的に異なるという認識欠如に通じる。それが、韓国民族主義集団に見られる最大の弱点だ。

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    中国政府は18日、今年初めて全土に干ばつ警報を発令した。当局は、森林火災への対応に追われているほか、長江流域の激しい熱波から作物を守るために専門家チームを動員している。

     

    警戒水準は上から3番目の「黄色警報」が、18日遅くに出された。南西部の四川省から長江デルタ地域の上海市まで、過去数週間にわたって猛暑が続いており、当局者らは気候変動が原因だと繰り返し述べている。国営新華社の報道によると、長江南岸にあるハ陽湖は例年の同時期に比べ、表面積が4分の1に縮小している。中国中央テレビ(CCTV)は19日、重慶市の66本もの川が干上がっていると報じた。『ロイター』(8月19日)が伝えた。

     


    『ロイター』(8月17日付)は、「中国・四川省、家庭やオフィスへの電力供給制限」と題する記事を掲載した。

     

    中国・四川省は17日、住宅、オフィス、ショッピングモールを対象とする電力制限を開始した。猛暑と干ばつで深刻な電力不足に陥っていることが背景。国営メディアなどが報じた。

     

    (1)「地元の国有電力会社によると、540万人が住む達州市では、17日を通して住宅、オフィス、ショッピングモールで数時間ごとに交代で停電を実施する。住宅への電力供給が制限されるのはまれ。中国では電力不足時に家庭用・商業用電力の供給を優先するため、工業用電力の供給を制限することが多い。17日付の『四川日報』によると、政府機関には冷房の設定温度を26度以上にし、エレベーターではなく階段を利用するよう通達が出ている。噴水、ライトショー、夜間の商業活動も禁止される」

     

    四川省では、優先される家庭用・商業用電力まで、数時間ごとに交代で停電を実施する羽目に陥っている。中国政府は、今年初めて全土に干ばつ警報を発令したほどで、事態の深刻さが現れている。こういう状況では、工場への停電は先ず最初に行なわれている。

     

    (2)「四川省は14日、家庭への電力供給を優先するため、今月15~20日に工場の操業を停止するよう指示した。同省は電力の80%以上を水力発電に依存しているが、気温上昇と少雨を受けて発電量が減り、7月下旬以降、工業ユーザーの電力使用を制限している。アナリストによると、熱波が続けば、四川省から電力の一部を購入している浙江省や江蘇省に電力不足が波及する恐れがある」

     

    四川省では、工場への停電を今月15~20日で実施している。干ばつ状況が改善されたわけでもないので、停電は継続となろう。浙江省や江蘇省は、四川省から電力の一部を購入しているので、電力不足が波及する恐れが強まっている。

     


    米『CNN』(8月17日付)は、「中国で干ばつ対策の人工降雨、記録的猛暑で長江干上がる」と題する記事を掲載した

     

    国家気象センターによると、中国の熱波は8月15日で64日目となり、記録を取り始めた1961年以来で最長となった。今回の熱波は観測史上最も過酷で、今後数日でさらなる悪化が予想されるとしている。40度以上を観測した測候所は過去最高の262に達し、8地点では44度を観測した。

     

    (3)「記録的な猛暑と干ばつに見舞われている中国で、長江の一部が干上がるなどの被害が深刻化し、航空機から雲にロッドを打ち込んで人工的に雨を降らせる対策が講じられている。長江流域では複数地域が天候改変プログラムを打ち出したが、雲が薄すぎて計画が実行できない地域もある。中国中部の湖北省は同日、ヨウ化銀ロッドを打ち込んで雨を降らせる計画を発表した。ヨウ化銀ロッドはたばこほどの大きさで、雲の中に打ち込んで氷粒をつくり、水分を重くすることで雨を降らせる仕組み」

     


    中国では、人工降雨を1940年から行われており、2008年の北京オリンピックでも、晴天を保証するため開幕前に人工的に雨を降らせた。この技術は、雪を降らせたりヒョウを抑えたりする目的でも使用できる。

     

    (4)「湖北省の非常事態管理当局は16日、同省では少なくとも420万人が6月以来、深刻な干ばつの影響を受けていると指摘した。15万人以上が飲料水を確保しにくくなり、猛暑と干ばつのため約40万ヘクタールの作物に被害が出ている。気象当局は17日、熱波に対して最高レベルの警戒を呼びかける赤色警報を少なくとも138の自治体に発令し、373自治体には上から2番目に高いオレンジ警報を出した」

     

    湖北省では6月以来、少なくとも420万人が深刻な干ばつの影響を受けているという。人工降雨実験も行なわれているのであろうが、効果は出ていないに違いない。人工降雨で解決できるレベルの干ばつではないのだろう。

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