勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 中国経済ニュース時評

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    人民元相場が下落している。1ドル=6.845元まで下げるなど、米中貿易戦争の先行きの厳しさを反映したもの。往年の中国経済の輝きは、完全に失った。米国政府は、これと反対に意気軒昂である。

     

    米大統領経済諮問委員会(CEA)のハセット委員長は8月1日、米経済は戦後最長の景気拡大に達するとの認識を示した。「今後5年は毎年3%程度のペースで成長する」と語り、米経済は今後も力強い拡大が続くとした(『日本経済新聞』8月2日付)

     

    弱り目の中国経済に対して、ホワイトハウスのクドロー国家経済会議(NEC)委員長は、次のように語った。『ブルームバーグ』(8月4日付)が、「人民元の下落、劣悪な投資先との評価も反映」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「人民元相場が下落している理由の一つは中国が『劣悪な投資先』だからだとし、中国をこき下ろした。中国は3日、米国の対中追加関税計画が実行された場合、中国は米国からの輸入品に関税を賦課するとして、その対象リストを発表していた。クドロー氏は3日、ブルームバーグテレビジョンのインタビューで、『元安の背景には、中国が劣悪な投資先だから資金が逃げていることもあり、これが続けば中国経済に本当の被害が及ぶと私は思う』と語った」

     

    人民元安は、現象面から言えば「人民元を売って米ドルを買っている」ことである。この背景を、クドローNEC委員長が、ズバリと指摘したもの。「中国が、劣悪な投資先になったから、人民元を売って米ドルに換えて逃げ出した」ことになる。このまま、人民元安が続けば、中国経済の被害が拡大すると警告している。

     

    (2)「クドロー氏は、『中国から資金が逃避した場合、そして通貨はその先行指標となり得るが、中国にとって大変なことになる。よって私は、中国が経済的に弱い立場にあると主張する。中国にとりそのような状況は、向かい合って貿易交渉をする上で適していない』と述べた。さらに『中国経済は成長が鈍化しているように見える。ほぼ全面的に弱まっている。人民銀は強力な資金の追加供給や与信により、景気を押し上げようとしているようだ』と語った」

     

    人民元安は、中国からの資金逃避を示している。これは、中国経済が弱い立場に置かれていることを物語る。金融緩和によって、この状態を改善すべく貸出を増やす工夫をするほど追い込まれている。この状態が、「信用収縮」=「貸し渋り」と呼ぶ。かつての日本経済が、バブル崩壊後に起こった深刻な事態である。日本の経験したあの苦しみが、中国で始まったのだ。楽観できない事態である。

     

    クドロー氏は、「中国にとりそのような状況は、(米国と)向かい合って貿易交渉をする上で適していない」とまで言われている始末だ。つまり、意地を張らずに自らの「技術泥棒」行為を認めて改めよ、と突き付けられている。


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    中国共産党中央政治局会議は7月31日、今年下半期の経済政策について話し合いが行われた。その結果、緩和的な金融政策と積極的な財政政策を実施する方針を示した。一方、当局は、債務圧縮政策を継続し、「住宅価格の上昇」を断固として阻止していくとの姿勢を示した。

     

    この政策転換に対して、中国株式市場は失望を呼び株価は8月1~3日まで大幅な下落となった。欧米メディアは、逆にこの政策転換を評価して中国経済は時間を置いて立ち直るのでないか。そうなると、トランプ政権による「中国圧力」効果が薄れると懸念する報道が出てきた。

     

    株価の上海総合指数は8月1日に前日比1.8%安。2日は、同2%安をつけた。3日は、同1%安の2744ポイントに終わった。現在の上海市場は個人投資家よりも機関投資家の参加率が高いとされている。機関投資家は、総合経済対策が打たれても中国経済の先行きに、米中貿易戦争の影響が待っている。そう強く見ている証明であろう。

     

    中国経済は、輸出が経済成長率に大きく寄与していると誤解されている。輸出から輸入を差し引いた純輸出のGDP寄与度はマイナスの時期が多いという意外な結果が出ている。

    次に、その実績を示したい。

    2011年 -0.8%ポイント

      12年  0.2%ポイント

      13年 -0.1%ポイント

      14年  0.3%ポイント

      15年 -0.1%ポイント

      16年 -0.6%ポイント

      17年  0.6%ポイント

      18年 -0.7%ポイント(1~6月)

     

    上記のデータを見れば、輸出が中国のGDPを引っ張り上げる力は弱い。加工貿易構造になっているために、付加価値率が低い産業構造である。ここから、「中国製造2025」というハイテク産業計画が登場した理由である。だが、先進国の技術窃取という「技術泥棒」による産業構造高度化計画は許されるものでない。中国は、この辺が見境なく、手当たり次第やるので米国を初め先進国から反発を受けている。

     

    本格的な米中貿易戦争に突入すれば、中国輸出はますます減る。純輸出のGDP寄与度は一段とマイナス幅を拡大させるはずだ。この中で、インフラ投資依存というこれまで使い古した方法を引っ張り出しても効果は薄いはずだ。インフラ投資を行なった時点ではGDPを押上げるが、リターンの少ないインフラ投資では収益性が低く、利益による債務返済は不可能だ。インフラ投資をやればやるほど、債務が膨らむ悪循環にはまる。これまで、中国が過剰債務を抱えた理由は、全てここにある。

     

    共産党中央政治局会議が7月31日に決めたことは、過去の繰り返しで債務によるインフラ投資の継続・拡大である。債務削減を一時的に中止し、先へ繰り延べるという決定に過ぎないのだ。西側メディアは、この借金漬けインフラ投資の効果が大きいと見ているが、それは誤解だ。インフラ投資に効果があれば、債務拡大という悪循環は起こるはずがなかった。中国のインフラ投資は、極めつけの「非効率投資」であることは間違いない。何ら、評価にも値しない代物である。

     

    金融政策も「窓口指導」の復活をするという。日本の高度経済成長時代、資金不足のために、日銀が市中銀行ごとに貸出枠を指示した制度である。中国人民銀行は、この「窓口指導」を利用するが主旨は全く異なる。主要銀行ごとに「貸出増加枠」を決めて実行させるのだ。日銀は、「貸出抑制枠」に使った。同じ「窓口指導」でも中身は180度異なる。

     

    中国人民銀行が、ここまでやって貸出を増やそうとする理由は、銀行が貸出しに慎重であるからだ。確実に回収できるか分らない相手企業に融資するはずがない。すでに、「信用収縮」が起こっている。放っておけば新規融資は減るばかりだ。末端の信用状態は、ここまで悪化している。そこで、銀行に新規融資の「割り当て」をして貸出を増やせ、と言っているもの。この辺りの事情が分れば、中国経済が政策転換で蘇る期待は限りなくゼロに近いはずだ。

     

    上海総合株価指数が3日連続で安値を更新した事情は、こういうものであったはずだ。ブルームバーグの集計データによると、中国株は8月2日の下落で時価総額が6兆900億ドル(約680兆円)に目減りした。これに対して日本株は6兆1700億ドルで、ついに日本が時価総額で中国を抜いて、再び世界2位の座に立ち戻った。これは、象徴的な話であろう。中国が、時価総額2位の座を滑り落ちた。日本が復活したのだ。

     

     


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    米国の恐ろしさを見せつけたのが、「新国防権限法」である。8月1日、米上院で成立し、トランプ大統領に署名を待つばかりとなった。この法律は、毎年の米国防予算を決めるという法主旨だが、それだけにとどまらない。米国の安保戦略が全て含まれている。非公開部分があるという法律であり、米国の対中国戦略は大きく転換した。

     

    もはや、オバマ政権時代のような「中国融和姿勢」をかなぐり捨て、力には力で対抗する基本方針が盛られている。米朝首脳会談を機に、トランプ大統領は「在韓米軍撤退」を臭わせる発言をしたが、今回の新国防権限法によってそうした撤退論を封じられた。

     

    『朝鮮日報』(8月3日付)は、「米議会、新国防権限法で在韓米軍削減を制限」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「米国政府が議会の承認なく在韓米軍の兵力を2万2000人以下に減らせなくする『2019会計年度国防権限法』(NDAA)が8月1日(現地時間)、米国連邦議会上院本会議で可決した。法は、在韓米軍の削減が米国と同盟国の安全保障を深刻に阻害せず、韓国・日本との合意を経たと国防長官が議会に確認した場合を除き、現在2万8500人規模の在韓米軍の兵力を2万2000人未満まで削減してはならないと制限している。また、米国政府が今後北朝鮮と結ぶ核合意の履行状況について、検証評価を議会に報告するよう義務付ける内容も盛り込まれた」

     

    メディアを賑わす、在韓米軍の削減については厳しい枠が付けられ、安易に削減論を話題にできないように国防権限法がお目付役になった。現在2万8500人規模の在韓米軍の兵力を2万2000人未満まで削減してはならないと制限した。しかも、日韓の合意を得ることを前提にしている。中朝の動きに警戒の目を光らしているのだ。

     

    (2)「また同法では、『在韓米軍に対する議会の認識』という条項を別に設け『在韓米軍の相当規模の削減は、北朝鮮の完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)と関連するものなので交渉可能な項目ではない』として『CVIDが米国の外交政策の核心目標』と定めた。さらに同法は『在韓米軍の大規模な削減は、中国・ロシア・北朝鮮など専制主義諸国が長年追求してきた目標』と指摘した」

     

    北朝鮮の非核化では、CVID(完全かつ検証可能で不可逆的な非核化)を核心目標に据えている。トランプ政権が、ここから逸脱した米朝合意は不可能になった。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月2日付)は、「米国防権限法、中国への厳しい姿勢を反映」と題する記事を掲載した。

     

    (3)「米議会が可決を目指している年次の国防権限法(NDAA)について、一部議員は、これまでになく厳しい対中姿勢を反映していると指摘している。米議会では、中国に対抗しようとする超党派的な動きが勢いを増している。同法案には、中国政府の一連の政策に対抗する措置が含まれている。中国による南シナ海での軍事活動拡大、米国のハイテク技術を獲得しようとする行為、中国共産党の宣伝活動などに狙いを定めたものだ。今年の国防権限法に反映されているのは、議会や安全保障関係者の間に広がる超党派的なコンセンサスだ。すなわち、世界は大国のライバル関係を巡る新時代に入り、米国は中国やロシアとの競争に一段と力を入れる必要があるとの見方だ」

     

    米議会では、超党派で中国へ対抗する姿勢を強めており。これが「国防権限法」改正に色濃く反映されている。①南シナ海での軍事活動拡大、②米国のハイテク技術窃取行為、③中国共産党の宣伝活動などに狙いを定めた。①は南シナ海における中国軍活動の抑制、②は米中貿易戦争の主要テーマ。③は孔子学院への監視だ。米国が、長年見て見ぬ振りをした結果、中国を増長させたという反省が基本にある。オバマ政権の失だ。米国は、明らかに中国を「仮想敵国」にしている。

     

    (4)「米国は非機密扱いの2018年国家防衛戦略(NDS)で、『米国の繁栄と安全保障を巡る重要課題は、長期的かつ戦略的な競争の再出現』であり、『中国は自国に有利なようにインド・太平洋地域の秩序を塗り替えるため、軍の近代化や情報作戦、略奪的な経済政策を通して近隣諸国を抑圧している』と指摘している。国防権限法で特に目を引くのは、中国の経済活動に関する条項だ。法案は対中取引について、対米外国投資委員会(CFIUS)による安全保障上の審査を厳格化すると同時に、米技術の輸出規制の見直しを目指している」

     

    米国は、中国を封じ込める確固たる意思を内外に表明した。米中貿易戦争は、単なる経済問題を超えている。米中覇権争いへの米国の見せた最終的な回答である。私は常々、この視点から米中問題を見てきたつもりだ。


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    上海総合株価指数は、8月2日に前日比2%下落の2768ポイントで終わったが、3日も続落して2744ポイント(下落率1%)で引けた。米中貿易戦争の影響を懸念したもの。

     

    『ブルームバーグ』(8月3日付)は、次のように伝えた。

     

    「ブルームバーグの集計データによると、中国株は2日の下落で時価総額が6兆900億ドル(約680兆円)に目減りした。これに対して日本株は6兆1700億ドル。世界最大の株式市場は米国で、時価総額は31兆ドルをやや上回る水準だ。中国株式市場の時価総額は2014年終盤に日本を抜き、世界2位に浮上。15年6月には10兆ドル超の過去最高を記録した。上海総合指数は年初来で16%余り下落し、世界の主要株価指数でもパフォーマンスの悪さが目立つ。人民元は対ドルで5.3%下げている。米国との貿易摩擦や政府主導の債務削減の取り組み、景気鈍化が打撃となった」

     

    2015年6月に、中国の時価総額は10兆ドル超の過去最高を記録したが、その後は下落基調に転じて、8月2日には6兆900億ドルへ下落。日本の6兆1700億ドルを下回った。日本の世界2位浮上は4年ぶりだ。日中経済の勢いの差が株価に現れている。


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    サムスン電子は、現代自動車とともに韓国経済を牽引する二枚看板であった。「あった」と過去形にしたのは、現在の現代自の売上営業利益率は3%台に落込み、「ゾンビ化目前」という事態になったからだ。残るは、サムスンだけである。そのサムスンは、スマホの販売台数で中国勢の低価格品にシェアを食われて収益悪化を招いている。

     

    中国では、例の政府による補助金によって国内スマホメーカーが低価格で販売している。これは、WTO(世界貿易機関)違反であるが、「涼しい顔」で続けている。中国国内で低価格であれば、輸出しても反ダンピング法に抵触しないからだ。このように、巧妙に仕組んだ低価格品によって、サムスン・スマホは中国製品に追撃されている。

     

    サムスンは、韓国国内では文政権に目の敵にされている。朴槿惠・前政権との癒着を問われて批判の矢面に立たされてきた。これを跳ね返すような昨年の業績は絶好調を維持したが、今年はスマホの異変と半導体市況に陰りが出ており、今後は「下り坂」が予想されている。

     

    『朝鮮日報』(8月1日付)は、「スマホ不振のサムスン電子、減収減益、際立つ半導体依存」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「サムスン電子は、今年46月期の売上高が前期比3%減、営業利益が5%減と発表した。201746月期以降4半期連続の過去最高業績更新がストップした。サムスンは主力スマートフォン『ギャラクシーS9』の販売台数が予想を下回り、スマートフォン事業の業績は大幅に低下した。ディスプレーも中国製の安価な液晶パネルが大量に流入し、営業利益が縮小した。半導体事業は、過去最高となる営業利益を上げて業績を下支えしたが、営業利益の78%を半導体に依存する形となった」

     

    サムスンの業績は、スマホが停滞し半導体が好調という色分けである。スマホのライバルであるアップルは、業績好調で明暗を分けた。『韓国経済新聞』(8月3日付)が、次のような記事を紹介している。『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月2日付)が、「高価格戦略でアップルは上昇したが、サムスンは沈んだ」というもの。両社は、スマホ市場停滞に対応し昨年から高仕様スマホを高価格で発売した結果、アップルは従来の顧客を維持した。サムスンの一部の顧客は、中国企業などに流れた。アップルかサムスンか、という最終的なブランドの選択では、アップルに軍配が上がった形だ。

     

    スマホと一口にいっても、高級品から普及品にいたるまで多種多様である。販売台数で争のでなく、収益性に焦点が当てられている時代に移行している。

     

    (2)「スマートフォン事業を担当する無線事業部は、46月期の売上高が24兆ウォン、営業利益が26700億ウォンだった。1年前と比較すると、売上高は20%、営業利益は34%減少した。3月中旬に発売されたギャラクシーS9が前作と大差ないと不評で、アップル、華為(ファーウェイ)、小米(シャオミ)などとの競争でも押され気味となり、業績が伸び悩んだ。このままではギャラクシーS9の通年販売台数が当初目標の4500万台に大きく届かない3000万台以下にとどまるとの見方も聞かれる」

     

    4~6月期のスマホは、前年比で売上高20%減、営業利益率34%の減益になった。ギャラクシーS9の不振と中国勢に追撃されたもの。中国勢は、低価格品でシェ競争だけが目的、という感じである。

     

    (3)「最近、指摘されている半導体需要のピーク説に関連し、『今年下半期もDRAMNAND型フラッシュメモリーなどメモリー半導体の需要が増え続ける』との見方を示した。ただ、来年の市場見通しについては、『具体的な予測値を示すのは難しい』とした。半導体景気の後退懸念について、予測が難しいというのだ」

     

    来年の半導体市況は見通し難としている。世界的な過剰生産が懸念され始めている。


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