勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    中国は、7月6日に米国と貿易戦争に突入した。世間では、GDP1位と2位が関税引き上げで激突しているだけに、その余波の大きさに注目が集まっている。中国の対米輸出が減少すれば、中国へ部品や素材を輸出していた国々が影響を受ける。台湾や韓国などのアジア各国がその余波を受けるのだ。

     

    米中だけに問題を絞れば、深刻なのは中国である。

     

    中国経済は、2010年にGDPで日本を追い抜くために、無理なインフラ投資や不動産開発投資を行なってきた。念願叶って2位に就いたが、2012年に習近平氏が国家主席に就任以来、さらに前記の投資に力を入れて債務を膨らませてきた。今や、過剰債務で首が回らないところへ、今回の「米中貿易戦争」が始まった。最悪事態である。習氏が「永久国家主席」の座を手に入れてしまったために、自らのメンツ保持も絡んで、米国との妥協ができなくなっている。2期10年で国家主席を退任するこれまでのルールであれば、習氏は米国と妥協が可能であったであろう。だが、この先20年以上は国家主席に留まる野望を持っていれば、妥協は不可能だ。ここは、米国と闘う以外に道はない。これが、中国にとっては判断ミスにつながる危険性が高い。

     

    米中貿易戦争は、米国が対中貿易赤字を減らせと要求しているものだが、これだけで済めば話がこじれることはなかった。中国が米国からの輸入額を増やせば良いことで、中国は原油や天然ガスの輸入を増やす計画を出していた。米国は、これに首を振ったのだ。「中国製造2025」というハイテク製品の生産に必要な技術を米国から窃取したのだから、その分を500億ドル分の製品に関税25%を科すとした。中国が、これに反発して報復関税を科すとしたのだ。

     

    中国は、米国の技術を窃取していないと言い張っている。だが、どれだけ盗み出したか分らない。産業スパイを使う。中国へ進出した企業の技術を公開させる。米国への留学生に研究成果を持出させる。あらゆる機会を捉えて技術窃取に励んできた。その集大成が「中国製造2025」というハイテク製品生産計画である。中国は、この生産計画を足がかりに、2050年を目途に米国の覇権へ挑戦すると言い出した。

     

    米国にして見れば許しがたい話だ。米国の技術を盗んだ上に、米国から覇権を奪い取るとまであからさまに言い出した以上、もはや妥協はしない。とことん、中国を追い詰める。率直に言えば、こういう経緯で7月6日から米中は貿易戦争に突入した。

     

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(4月9日付)は、「米中貿易戦争、勝利の鍵は『レバレッジ』」と題する記事を掲載していた。今から3ヶ月前だが、客観的に見て米国の「勝ち」と判定していた。

     

    「トランプ氏が正しいかどうかは、誰が最も交渉のレバレッジ(交渉上の相対的優位性)を持っているかに大きく左右される。経済的には、米国だ。昨年の5060億ドル(約54兆2000億円)規模に上る中国の対米輸出は、国内総生産(GDP)比4%に相当する。一方、米国の1300億ドル規模の対中輸出はGDP比0.7%にとどまる。そのため、貿易戦争となれば、中国の経済成長は米国よりもリスクにさらされる。また、米中双方が実際に、500億ドル相当の輸出品に関税を課した場合、米国はその後も、中国を狙い撃ちする標的がより多く残っている」

     

    この記事は、米中が相手国へ輸出する金額と自国のGDPの比率を出せば、どちらが有利かを問うたものだ。米国は0.7%、中国は4%だとしている。米国は中国に対して約6倍も有利な立場である。しかも、中国の景気は下り坂だ。どう見ても、中国には歩がない。中国はいつまで頑張れるのか。中国の技術窃取に端を発している以上、自らが矛を収めるべきであろう。

     

    中国は、7月6日に米国と貿易戦争に突入した。世間では、GDP1位と2位が関税引き上げで激突しているだけに、その余波の大きさに注目が集まっている。中国の対米輸出が減少すれば、中国へ部品や素材を輸出していた国々が影響を受ける。台湾や韓国などのアジア各国がその余波を受けるのだ。

     

    米中だけに問題を絞れば、深刻なのは中国である。

     

    中国経済は、2010年にGDPで日本を追い抜くために、無理なインフラ投資や不動産開発投資を行なってきた。念願叶って2位に就いたが、2012年に習近平氏が国家主席に就任以来、さらに前記の投資に力を入れて債務を膨らませてきた。今や、過剰債務で首が回らないところへ、今回の「米中貿易戦争」が始まった。最悪事態である。習氏が「永久国家主席」の座を手に入れてしまったために、自らのメンツ保持も絡んで、米国との妥協ができなくなっている。2期10年で国家主席を退任するこれまでのルールであれば、習氏は米国と妥協が可能であったであろう。だが、この先20年以上は国家主席に留まる野望を持っていれば、妥協は不可能だ。ここは、米国と闘う以外に道はない。これが、中国にとっては判断ミスにつながる危険性が高い。

     

    米中貿易戦争は、米国が対中貿易赤字を減らせと要求しているものだが、これだけで済めば話がこじれることはなかった。中国が米国からの輸入額を増やせば良いことで、中国は原油や天然ガスの輸入を増やす計画を出していた。米国は、これに首を振ったのだ。「中国製造2025」というハイテク製品の生産に必要な技術を米国から窃取したのだから、その分を500億ドル分の製品に関税25%を科すとした。中国が、これに反発して報復関税を科すとしたのだ。

     

    中国は、米国の技術を窃取していないと言い張っている。だが、どれだけ盗み出したか分らない。産業スパイを使う。中国へ進出した企業の技術を公開させる。米国への留学生に研究成果を持出させる。あらゆる機会を捉えて技術窃取に励んできた。その集大成が「中国製造2025」というハイテク製品生産計画である。中国は、この生産計画を足がかりに、2050年を目途に米国の覇権へ挑戦すると言い出した。

     

    米国にして見れば許しがたい話だ。米国の技術を盗んだ上に、米国から覇権を奪い取るとまであからさまに言い出した以上、もはや妥協はしない。とことん、中国を追い詰める。率直に言えば、こういう経緯で7月6日から米中は貿易戦争に突入した。

     

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(4月9日付)は、「米中貿易戦争、勝利の鍵は『レバレッジ』」と題する記事を掲載していた。今から3ヶ月前だが、客観的に見て米国の「勝ち」と判定していた。

     

    「トランプ氏が正しいかどうかは、誰が最も交渉のレバレッジ(交渉上の相対的優位性)を持っているかに大きく左右される。経済的には、米国だ。昨年の5060億ドル(約54兆2000億円)規模に上る中国の対米輸出は、国内総生産(GDP)比4%に相当する。一方、米国の1300億ドル規模の対中輸出はGDP比0.7%にとどまる。そのため、貿易戦争となれば、中国の経済成長は米国よりもリスクにさらされる。また、米中双方が実際に、500億ドル相当の輸出品に関税を課した場合、米国はその後も、中国を狙い撃ちする標的がより多く残っている」

     

    この記事は、米中が相手国へ輸出する金額と自国のGDPの比率を出せば、どちらが有利かを問うたものだ。米国は0.7%、中国は4%だとしている。米国は中国に対して約6倍も有利な立場である。しかも、中国の景気は下り坂だ。どう見ても、中国には歩がない。中国はいつまで頑張れるのか。中国の技術窃取に端を発している以上、自らが矛を収めるべきであろう。

     


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    米国政府は7月6日、360億ドル相当分の中国製品について、25%の関税引き上げ措置を発表。中国政府もこれ受けて、同額の米国製品の関税引き上げ措置を取った。中国商務省の声明文では勇ましい文言はなく、米国への恨み節が見られた抑制的なもの。これまでは、「断固闘う」「あらゆる報復手段を使う」など、ゲリラ戦のような文言を並べていた。だが、冷静になってみると、中国の受ける被害の大きさが分かり、首をすくめざるを得なくなったと見られる。

     

    中国商務部の声明文には、首を傾げるような情緒的な文言が入っている。注意点に下線を引いた。

     

    米国は世界貿易機関(WTO)ルールに違反し、経済史上最大の貿易戦争を仕掛けた。このような関税は典型的な貿易上のいじめであり、こうした行動はグローバルなサプライチェーンとバリューチェーンを脅かし、世界的な景気回復を阻害するだけでなく、グローバル市場の動揺を招き、より多くの罪のない多国籍企業や一般企業、一般消費者を苦しめる。米国の企業と国民にとってもプラスにならず、害を及ぼす」(『ブルームバーグ』7月6日付)

     

    「貿易上のいじめ」とか「世界的な景気回復を阻害する」、「米国の企業と国民に害を及ぼす」など、同情を引こうという戦術である。米国の関税引き上げ理由が、中国による米国技術窃取にあることに頬被りし、責任を全て米国になすりつける意図がみえみえだ。

     

    中国は、自らのハイテク化計画である「中国製造2025」についついて派手に宣伝しすぎたことを反省している面もある。これまで、自力でハイテク化に取り組んできたような印象を打ち出しすぎたからだ。中国科学技術省の傘下にある「科技日報」の劉亜東・編集長は先週行った講演で、次のように語っている。

     

    「家が他人の土台の上に建っているにもかかわらず、われわれが完全で恒久的な知的財産権を持っていると主張している人たちがいる」(『ウォール・ストリート・ジャーナル』7月6日付)

     

    前記の講演主旨は、中国が外国技術を使って発展してきたことを忘れて、あたかも自力で技術開発したような錯覚をしてきたことを戒めたのだ。日本の新幹線技術を使いながら、中国の高速鉄道は独自開発と言い募って歩いたことを指しているのだろう。こういう反省をしたのか、関税引き上げ問題では米国に対して抑制的な姿勢である。得意の「大言壮語」を封印した形だ。

     

    「中国政府も、韓国などに対してしたように、愛国心をあおって消費者に米国製品のボイコットを促すことは控えている。また、共産党の検閲当局は国営メディアに対し、貿易戦争やその中国株式市場の下落への影響について大々的に報じないよう指示している」(『ウォール・ストリート・ジャーナル』7月6日付)という。

     

    この米中貿易戦争は、いつまで続くのか。

     

    中国が、関税引き上げで報復した大豆は、トランプ米大統領の支持基盤の農村を直撃した。だが、農家は中国の不正貿易慣行を糺すには絶好の機会と捉え、トランプ支持を変えないのだ。こうなると、中国の思惑外れに終わりか

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    米中貿易戦争は、あすから双方が360億ドル相当の製品に25%の関税を科す。非生産的な振る舞いだ。原因は、米国が技術窃取を止めるように中国へ要求したのに対して、中国が「ノー」と答えた結果である。双方は断固、闘うと表明しているが、中国の劣勢は明らかだ。

     

    ここからが、中国の本領発揮である。例の「嫌がらせ」の連発が気になるところ。日本も韓国も、この「洗礼」を受けた。相手国産品の不買運動と旅行禁止措置である。得意の不買運動は、米国企業が単独で中国へ進出できず、中国資本との合弁形式である。となれば、米国産品の不買運動を始めると、中国のパートナーが損害を受けるので、不買運動の効果は期待薄になりそうだ。

     

    もう一つは、米国に対すうる「旅行抑制」である。ただ、表面きってハッキリとは言えないのが悩みだ。ニューヨークの目抜き通りから、中国人観光客が消えてしまったとなれば、「大ニュース」になって、世界中に配信される。これでは、中国政府の狭量さをわざわざ世界に宣伝するようなものだ。これまで、他国をいじめ抜いてきた中国が、はたと米国相手では手詰まり感が否めない。名案があるのだろうか。

     

    韓国紙『中央日報』(7月4日付)は、「米国と貿易摩擦中の中国、米国旅行注意令発動」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「『米国では銃器事故が多い。旅行者は怪しい人物に警戒しなさい』。中国と米国の貿易葛藤が深まる中、中国政府が米国を訪問する中国人に旅行注意令を発令した。在ワシントン中国大使館は、最近、公式サイトに掲示したお知らせを通じて、中国人観光客が米国を旅行する時は高、価な医療費、公共場所での銃撃と強盗事件、税関捜索および押収の危険、通信詐欺、自然災害などに注意しなければなければならないと警告したもの」

     

    駐米中国大使館は警告文で、『米国の治安状態は良くない。銃撃や強盗、盗難事件が頻繁に起こっている。したがって旅行者は周辺の環境や怪しい人々に警戒し、夜間は一人で外出してはいけない』と載せたわけだ。米国を低開発国並みに扱っている。これで、胸の溜飲を下げているのだろう。何か、「引かれ者の小唄」にも聞える話だ。中国のできる「嫌がらせ」がこの程度としたら、もはや米国へ撃つ弾もなくなってきた証拠かも知れない。

     

    米国産商品への不買運動はどうか。

     

    『ブルームバーグ』(7月4日付)は、「習主席の奥の手、米製品不買は中国側パートナーに打撃もたらす恐れ」と題する記事を掲載した。

     

    (2)「米中貿易戦争の可能性が高まる中、中国の習近平国家主席の最大の武器の一つは、消費者による米国ブランドの不買運動になる可能性がある。しかし、不買運動は中国自体にも打撃を与える恐れがある。コカ・コーラやマクドナルド、ウォルト・ディズニーといった米ブランドの中国事業は中国政府の支援を受けた中国企業の共同所有となっているからだ。コカ・コーラの主要中国パートナーの一つは政府系の中糧集団であり、上海ディズニーランドは中国コンソーシアムが出資している。また中国国内のマクドナルドのフランチャイズの経営権は政府系複合企業の中国中信集団とプライベートエクイティ投資会社の中信資本が握っている」

     

    コカ・コーラやマクドナルド、ウォルト・ディズニーなど、米ブランドの中国事業は中国政府の支援を受けた中国企業の共同所有である。これでは、中国政府は不買運動という手に出にくくなる。こんな姑息なことをやる前に、米中貿易戦争を終わらせる方がはるかに有益なはずだが、さて、どうなるのか。



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    米中摩擦は、今や「発火」寸前の危険な状態に陥っている。習氏は、あくまでも米国と闘う姿勢と報じられる。米中の話し合いが決裂し、関税引き上げ合戦へ突入すれば、不利なのは中国に決まっている。米国からの技術伝播がなければ即刻、干し上がる危険性をはらんでいるからだ。

     

    その例が、通信大手中興通信(ZTE)である。米国の法律に違反してイランへIT機器を輸出した問題で、米国政府から7年間の米製品輸入禁止処分を受け、経営は大きく傾いた。先頃、前記の処分を撤回する代わりに15億ドル(うち、5億ドルは供託金)の罰金と全役員更迭、それに米国側から監視役が常駐という屈辱的な制裁を飲まされた。

     

    だが、ZTEの経営破綻と国有化が取り沙汰されている。香港紙『蘋果日報』が72日に伝えたもの。中国当局やZTEからの公表はまだない。香港紙報道では、(国有通信企業の)烽火通信科技集団がZTEの全株式を買収したと報じた。

     

    こうしたZTEの「末路」から、中国は一日も早く自前の半導体生産体制を確立しなければならないところへ追い詰められている。だが、肝心の技術がないのだ。手っ取り早い方法は、研究者のスカウトか先端技術をもつ企業との連携である。その慌てふためいた姿を覗いてみた。

     

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(6月27日付)は、「シリコンバレーで人材引き抜き中国の飽くなき野望」と題する記事を掲載した。

     

       トランプ米政権は中国への頭脳流出が米国の技術的競争力と国家安全保障を損なうことを危惧し、中国企業による一部米IT(情報技術)企業への投資を制限しようとしている。一方、中国は別の方法で米国のノウハウを活用しようとしている。人材の引き抜きだ。政府当局者や人材紹介会社、引き抜きの誘いを受けた人たちによると、中国政府や企業はトップクラスのエンジニアや科学者、その他の熟練技術者(特に米国在住の中国系人材)を引きつけようとしている。主な標的となっているのが、大手IT企業や研究所、ベンチャー投資家が集まるシリコンバレーだ」

     

    中国もあの手この手を使って、米国のトップ頭脳を中国へ引入れるべく必死である。基礎研究からコツコツやるよりもカネを払って、最高技術を手に入れようという魂胆だ。この前例は、韓国のサムスン電子にもある。サムスンは、基礎研究に時間と金を掛けず、応用技術を手に入れてきた。研究時間の短縮を金で買う感じだ。だが、自前の研究開発基盤がないと、その後に新たな研究が進まない欠陥が出てくる。サムスンは今、これに悩んでいるのだ。

     

       「今のところ、中国企業は人材引き抜きを続ける万全の態勢にある。アリババグループ や 百度(バイドゥ) などの中国IT大手は、シリコンバレーに研究開発拠点を構えている。また、中国のIT企業やベンチャーキャピタル(VC)企業のハブとして、北京市内には同市政府系企業によって3階建ての『中関村科技園』(中関村サイエンスパーク)が設けられている」

     

    中国のIT企業は、米国のシリコンバレーに研究開発拠点を設けて、米国の最新研究情報の入手と人脈づくりに力を入れている。IT最大手の一部では、社員が平均2年以内に転職しているという。中国IT企業も、この研究者流動化の中で高給を条件にスカウトに懸命である。

     

    次の例は韓国である。こちらは、企業ぐるみの買収という大掛かりな手を打っている。

     

    韓国紙『中央日報』(7月2日付)は、「中国の韓国半導体企業狩り」と題して、次のように伝えた。

     

      「半導体装備メーカー『セミクス』のユ・ワンシク代表はこのほど中国から合併の提案を受けた。セミクスは半導体検査装備のウエハープローバで世界3位に入る強小企業だ。条件は破格だった。中国に工場を作り、装備を購入し、研究開発にかかるすべての費用を出すというものだ。株式は中国側が51%、セミクスが49%を提案した。ユ代表は、『合併すれば中国市場を確保できるため心が動いた。しかし何年か後に技術だけ奪われて捨てられる可能性があり、苦悩の末に断った』と話した」

    ここに出てくるケースは、中国企業が海外企業と提携する際の「常套句」だ。「おいしい」条件をズラリと並べて、相手が食いついてくるのを待っているという。過去に、こういう好条件で釣り上げ、途中で契約を打ち切られる例がある。技術さえ手に入れれば、後は邪魔物。あっさりと見捨てるのだ。

     

       「半導体製造工程関連業務を担当するハンさん(41)は最近中国の半導体メーカーへの転職の提案を受けた。現在の年俸の5倍に、外国人だけが暮らす高級マンションと小学生の子どもの国際学校の学費を5年間支援するという破格な条件だった。ハンさんは『たいてい5年単位で労働契約を結ぶが、それ以前に解雇されるという話もあり、ひとまず固辞したがまだ悩んでいる』と話した」

     

    ここでは、現在の年収の5倍と子どもを国際学校に5年間通わせる学費、それに高級マンションを条件のヘッドハンティングだ。この話を持ち込まれたハンさんは、余りの厚遇に半信半疑である。相手は、技術入手だけが目的である。それさえ可能になれば、すぐにお払い箱になるリスクに敏感である。相手は、百戦錬磨の中国人だ


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    米中双方は7月6日、それぞれ相手国に対して関税引き上げに踏み切ると予告している。GDP世界1位と2位の両国が、ハイテク技術をめぐって紛糾し、互いに譲らず「実力行使」すれば、世界経済への影響は不可避である。ことの発端は、米国が自国技術を中国によって窃取されているとして、関税引き上げのペナルティを科すもの。中国が、これに対し反発しており、米国へ報復する形になっている。

     

    中国の技術窃取については、日本やEU(欧州連合)も米国同様に被害を訴えている。日米欧が、揃って中国をWTOへ提訴する形だ。中国は、こうして極めて不利な事態へ追込まれる。この局面を打開すべく、中国の日本接近外交が展開されている。だが、日米欧の世界3極は、知的財産権侵害という重大事実の発生がある以上、問題の白黒を付けざるを得ない立場だ。

     

    中国は、「中国製造2025」というハイテク産業育成計画を立てた。もともと中国には科学技術基盤がないので、先進国の技術を当てにしていることは明瞭である。問題は、中国が特許料という対価を払っての導入でないことだ。①中国へ進出する外資企業に対して強引に技術を開示させる。②M&Aによって強引に技術を移転させる。③米国へ留学させて中国へ技術を持ち帰らせる。④産業スパイ活動で技術を窃取する。こういう違法活動で、米国の「頭脳」を盗み出そうとしていることに米国政府が抗議しているのだ。

     

    中国が、ここまで強引に技術窃取を進めている背景は何か。

     

    それは、習近平国家主席が宣言したように2050年を目途に、米国と軍事覇権を争える実力を蓄えることにある。現在は、「中国製造2025」の段階だが、これは第1段階に過ぎない。その後に、第2と第3の段階がある。完成の暁(2050年)には、世界の軍事覇権を確立するとしている。中国海軍が米海軍を圧倒する構想だ。

     

    21世紀の現在、軍事力で世界秩序を塗り替えようという発想は、時代遅れであると言わざるを得まい。それに、中国の思想信条は自由や民主主議を否定する全体主義である。国家権力確立のためには、個人の人権を弾圧して当然、という国家が中国である。こういう極端な信条に裏付けられた中国が、世界覇権を握ることが万一起こった場合、日常生活は激変するはずだ。常時、国家の監視下に置かれる生活を強いられる。それを歓迎する民主国があるとは思えない。中国の世界覇権確立には、最終的に軍事力を用いて相手国を屈服させるしか方法はない。そこには、「血の臭い」がついて回るだろう。

     

    米国が現在、知的財産権を守るべく行動開始した裏には、世界覇権を中国に渡さないというシグナルを送ったことだ。それには、中国をハイテク計画の第1段階で叩くこと。こういう戦略を明確にしている。

     

    中国の軍拡への取り組みはどうか。

     

    『レコードチャイナ』(7月2日付)は、「中国の空母は事実上7隻へ、米国の支配的地位脅かす可能性も」と題する記事を掲載した。

     

    米華字メディア『多維新聞』(7月1日付)によると、中国は空母艦隊の拡充を図り、2025年までに複数隻の空母と大型強襲揚陸艦を建造しようとしている。米外交専門誌『ザ・ディプロマット(電子版)』によると、中国はステルス性の高い055型ミサイル駆逐艦の配備を進めるとともに、空母の建造も急ピッチで進めている。中国人民解放軍は2025年までに空母4隻を建造する計画だが、事実上7隻となる可能性が高いという」

    この報道通りに実現すると、中国は2025年までに事実上、空母7隻体制になる。これは、中国の推進する「一帯一路」計画を、軍事力を背景にして遂行しようという狙いと見られる。戦前の日本が、「八紘一宇」(はっこういちう)と称して、アジアや中国大陸を侵略したが、その「中国版」である。空母7隻体制によって、アジアから米軍を撤退させ、まずは、アジアの軍事覇権を実現する。これが、中国の真の狙いであろう。これと、「中国製造2025」は表裏一体の計画である。その後に、米国との最終対決を構想しているのだろう。

     

    中国は、こういう青写真を描いている。ただ、中国経済が順調に発展するという前提付きの話だ。米中貿易摩擦は、中国経済の土台を掘りくずすリスクを抱えている。予定通りに進む保証はどこにもない。


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