勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    中国は、内外需の景気不振で失業者はリーマンショック後、最大の規模に達している。こういう状況を反映して、これまで中国人の形容詞となってきた「爆買い」が影を潜めてきた。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(7月1日付)は、「中国人旅行者の支出大幅減、貿易戦争と元安響く」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「国連世界観光機関(UNWTO)によると、2018年の中国からの出国者数は1億5000万人で世界全体の旅行支出では約20%を占め、世界の旅行市場で極めて重要な存在となっている。だが公式統計によると、中国人旅行者の国外での支出は19年13月に前年同期比で10%減った。業界の幹部やアナリストは、中国経済の成長鈍化に加え、米国との貿易戦争が一因である過去1年間の人民元下落が原因だとしている」

     

    世界中に中国人旅行者が現れると話題になっているが、今年1~3月はついに変調が見えてきた。前年比で10%減になった。景気の悪化と人民元下落が原因である。

     

    (2)「こうした状況を受け、中国では国内旅行や費用が安い旅行を好む傾向が広がっている。国内旅行は今年、大幅な伸びを示している。「中間層の旅行者は安上がりな選択肢を選ぶだろう」と、上海で欧州旅行を専門に扱う旅行会社を営むピーター・リャオ氏は言う。「為替レートが要因だ。旅行業者は高いパッケージツアーを埋めるのが難しくなっている」

     

    国内旅行と海外でも近距離が選ばれているという。欧州旅行などは敬遠されている。

     

    (3)「中国人旅行者に人気のタイやベトナムは今年、中国人訪問者数が1桁台前半の減少を記録している。遠方の旅行先の一部では中国人旅行者が劇的に減っている。ニュージーランドへの中国人旅行者は4月に前年同月比で21%減少した。その一方で日本など近場への旅行は増えている。中国人旅行者は景気の先行きに弱気になっていると、同国オークランド空港のスコット・タスカー・ゼネラルマネジャーは言う」

     

    タイやベトナムが減っている。ニュージーランドは4月に前年同月比で21%減少した。かなりの落込みで景気の先行きへの警戒観が原因という。日本は近距離で増えている。日本の統計によれば、今年1~5月の累計では10.8%増だ。ちなみに、周辺国では同期間に軒並み減少している。韓国4.7%減、台湾1.4%減、香港1.8%減である。

     

     

     


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    中国は5月中旬、米中合意事項を反古にしたが、協議再開はこの時点から協議になりそうな見通しである。中国は、何の目的でそれまでの協議を反古にしたのか、無意味だったことになろう。

     

    中国経済は、さらに厳しくなっている。中国国家統計局の6月の製造業PMI(購買担当者景気指数)は、49.4と基準の50を割ったまま。一方、調査対象は中小企業がやや多いい「財新6月製造業PMI」も49.4と低調であった。この調査では、次のようなことが判明した。

     

    「内需、外需ともにさえず、米中貿易戦争に製造業が一段と圧迫されていることが浮き彫りとなった。過去1年間に打ち出された一連の景気支援策にもかかわらず、中国経済は失速したままとみられ、早期の追加刺激策が必要になりそうだ。国内顧客からの受注が、輸出受注よりも速いペースで冷え込み、中国が内需の弱さにも直面していることが示された」(『ロイター』7月1日付)

     

    6月の「財新製造業PMI」では、中国経済の内需が先に崩れている深刻な事態になっている。

     

    『大紀元』(7月1日付)は、「米中通商協議が再開へ 、行き先は依然に不透明」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「米中両国が首脳会談後にそれぞれ発表した声明を見ると、交渉再開の決め手はおもに、次の3点である。

    「米政府がしばらく新たな関税制裁を発動しない」

    「米中貿易不均衡を埋め合わせるために、中国当局が米製品を大量に購入する」

    「一部の米国企業に対して、華為技術(ファーウェイ)との取引を容認する」

     

    (2)「香港城市大学政治学部の鄭宇碩・教授は、「トランプ大統領が習近平国家主席のメンツを立てるために、中国側の要請に応えて、新たな制裁関税を実施しないこととファーウェイへの禁輸措置の一部解禁を示した。一方で、中国側は5月上旬に合意した交渉内容を基に今後の交渉を続けるという米側の要求に応じた可能性が高い」との見方を示した。「米国は、これまでの合意内容を覆さないと繰り返し強調した。5月上旬に、双方が構造改革の推進や米企業への技術の強制移転、国有企業への補助金の撤廃などで意見が一致したため、今後の交渉はこれらに基づいて進められる」と鄭教授は述べた」

     

    5月上旬に時間を戻して、ここから協議再開になりそうだ。この間に、中国経済は落込んでおり、中国にとって「反古」は何のメリットにもならなかったことになる。

     

    (3)「中国時事評論家の石実氏は、米中通商協議の再開に同意した中国当局は依然として厳しい状況にあると指摘した。「2500億ドル相当の中国製品への制裁関税が維持されており、ファーウェイと他の中国ハイテク企業がまだ米の禁輸措置リストに入っている」ため、今後の情勢は中国当局にとって必ずしも楽観的ではないとした。米政府は5月以降、今までの交渉内容を反故した中国当局に対して、制裁関税の税率を引き上げ、ファーウェイとその子会社、他の半導体企業に禁輸措置の実施と次々に対抗策を講じ、譲歩を迫った。「合意の撤回をした中国当局は甚大な損失を被った」

     

    (4)「中国人歴史学者の章天亮氏は、「中国当局は合意を覆して、米国に報復関税措置などを実行して徹底的に抵抗していくと明言したのに、結局、無駄骨を折って5月上旬に戻り交渉再開を承諾した。これは、やはり米国の制裁措置が功を奏し、中国の国内景気の後退や失業者の増加が想像以上に深刻化していることを反映している」とコメントをした」

     

    トランプ氏は、交渉の速度が問題でなく、交渉の中身が重要と発言している。これは、中国経済の悪化が、米国への抵抗力を弱めて最後は米国の案を飲まざるを得まい。という見方を示している。ただ、中国内部の根強い抵抗勢力があるので、表面的に米中「妥結」を装っても、内実は「サボタージュ」して長期の紛争を招くという見方も可能だ。

     

    中国国内の足並みの乱れは、中国経済の衰弱をもたらすだけで、構造改革を遅らせているに過ぎない。中国の「反習派」が無駄な抵抗をしていると、中国経済の沈没時期を早めるだけになろう。


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    けさ、下記の目次で発行しました。よろしくお願い申し上げます。

     

    供給網の再編成を招く

    不動産税で財源捻出へ

    構造改革を拒否の理由

    経済成長率で米中逆転

     

     

    中国はいったん、米国との貿易戦争を終息させる決意をしました。だが、「主権」を理由に妥結を拒んでいます。6月末の米中首脳会談で、交渉再開を決めました。今後の交渉スケジュールは、これからの協議に委ねています。

     

    供給網の再編成を招く

    米中首脳会談の結果を受けて、メディアでは中国の「作戦勝ち」という見方もあります。果たして、そうでしょうか。表面的な見方と言わざるを得ません。紛争解決が延びれば延びるほど、中国へ不利に働く点を見過ごしているからです。今回のように、交渉開始から1年経っても結論が出ない問題は、仮に協定ができても紛争の種が尽きず、ギクシャクし続けるという予想を高めます。中国のサプライチェーンが、他国へ移転する可能性を大きくなるのです。中国にとって致命傷になります。

     

    中国政府は、サプライチェーン再編成のリスクに直面していることを見落としています。このことが、中国に「米国の圧力に対抗して最後まで戦う」というピント外れの発言をさせている理由でしょう。トランプ米大統領は、先の米中首脳会談で、「結論を急がない」と発言しました。まさに、米国の狙いはサプライチェーンの再編成によって、中国の潜在的な経済成長力を削ごうとしているのです。

     

    6月30日に、中国国家統計局は6月の「製造業PMI(購買担当者景気指数)」を発表しました。前月並みの「49.4」にとどまり、好不況の分岐点50を下回りました。問題は、輸出の新規受注が落込んでいることです。3~5月までの3ヶ月は、米国が第4弾3000億ドルについて25%関税を掛けると予告したので、繰り上げによる新規輸出受注が増えました。6月は急減しています。この状態は、今後とも続くはずです。

     

    製造業の不振は、雇用面に反映します。製造業の雇用指数は2009年以来の低水準に落ち込みました。非製造業部門の同指数も16年初め以来の悪化を記録したのです。製造業では小規模企業が景気減速の打撃を最も受けています。大企業も生産活動が縮小しているので、大企業の雇用指数は過去3年余りで、初めて50を下回る緊急事態に直面しています。

     

    中国経済は、雇用の悪化という本格的な景気後退局面を迎えています。とうてい、米中貿易戦争を繰り広げるゆとりなどあろうはずがありません。それでも弱気を見せず、米国と最後まで戦うと言わざるを得ない事情とはなんでしょうか。

     

    それは、ここで米国の要求である「市場経済化」を受け入れれば、中国共産党の崩壊につながりかねないという危機感です。つい最近まで、中国式社会主義は市場経済システムよりも優れていると喧伝してきました。それが、米国の要求に屈したとなれば、発展途上国向けの「一帯一路」プロジェクトの推進にも障害になるという思惑が交錯しているのでしょう。ここは苦しくても米国と戦い、中国の「レゾンデートル」(存在理由)を明らかにする切羽詰まったところへ追い込まれています。

     

    経済問題は、メンツではありません。合理的なシステムか、どうかが問われるのです。そういう視点で米中貿易戦争を見ますと、中国は感情論で捉えており、理性的な判断が入り込む余地は見られません

     


    不動産税で財源捻出へ

    中国経済は、ますます財政依存体質へ落込んでいます。膨大な補助金を財政から捻出する必要性に迫られています。地方政府はこれまで、不動産バブルを活用してきました。土地国有制を利用して、土地利用権の売却益を財源に組入れてきたのです。中国財政は、土地国有制という基盤の上に成り立つもので、不動産バブルとは密接不可分の関係にありました。

     

    不動産バブルも限界に達しています。債務総額が負担の限界を超えたことです。企業は過重債務で倒産が増えています。家計は住宅ローンの負担で個人消費を切り詰めています。銀行は、不良債権で貸出能力が落込んでいます。政府管理の中小銀行が1行出てきました。倒産リスクの高い中小銀行が、12行もあるほどです。市場経済国家であれば、これだけの信用危機の淵に立たされている状況で、米国と貿易戦争など継続不可能という議論が出てきます。中国ではそれがすべて抹殺されており、表面化しないところに真の危機があるのです。

    (つづく)

     

     


    テイカカズラ
       

    昨日の米中首脳会談は、ひとまず最悪状対を回避したが、問題を先送りだけであった。依然として、貿易面での先行き見通しが立たない状態である。

     

    中国国家統計局が発表した6月の製造業PMI(購買担当者景気指数)は49.4と前月並みで好不況のラインである50を下回ったままだ。特に、輸出新規受注が4~6月と米国の関税第4弾3000億ドル回避で繰り上げて急増した後、6月は息切れによる急落の影響が全面に出てきた。7月以降の製造業PMIも暗い予想である。

     

    『ブルームバーグ』(6月30日付)は、「中国の6月製造業PMI、予想下回るー米中首脳会談での休戦前に」と題する記事を掲載した。

     

    中国の製造業活動を測る政府の指数は6月に予想以上の悪化が続いた。国内景気の低調さに米国の中国製品への関税発動が追い打ちをかけている。国家統計局が30日に発表した6月の製造業購買担当者指数(PMI)は49.4と、前月と同水準。ブルームバーグ調査のエコノミスト予想(49.5)に届かず、活動拡大・縮小の節目となる50を下回った。

     

    (1)「製造業PMIの項目別では新規輸出受注指数が前月から一段と低下。中国製品2000億ドル(約215700億円)相当への関税引き上げに伴う輸出業者への圧力が浮き彫りとなった。同PMIの低調さは米中首脳会談で貿易戦争が休戦となる前の段階で、今年前半の持ち直しが弱くなっていたことを示唆している」

     

    新規輸出受注指数が悪化しているのは、すでに実施されている2000億ドル関税引き上げ効果の浸透と、既述の第4弾3000億ドルへの関税引き上げを回避する繰り上げ発注の終わりが「ダブル・マイナス」となって影響したもの。中国の製造業には、相当の悪影響が出ているはずだ。中国国営メディアが流す楽観論や、「最後まで戦う」という状況にはない。

     


    (2)「マッコーリー・セキュリティーズの中国担当チーフエコノミスト、胡偉俊氏は「中国の現在の景気鈍化で貿易戦争は一因でしかない」と指摘。「世界経済の減速や国内で勢いが失われていることがより重要な要因だ。中国経済は政府がさらに積極的な政策措置を打ち出すまで底打ちしないだろう」と述べ、政策措置にはインフラ投資や不動産投資、消費の押し上げが含まれようとの見方を示した」

     

    中国経済は、輸出が不振だけでなく内需も低迷している結果、「老衰」状況にあることを告げている。景気刺激策を打っても「老衰経済」ゆえに効果は限られている。むしろ、債務を増やすだけに終わるはずだ。

     

    (3)「非製造業PMIは54.2と、前月の54.3から低下したが、依然として活動拡大を示している。より懸念されるのは労働市場の悪化で、製造業の雇用指数は2009年以来の低水準に落ち込み、非製造業部門の同指数も16年初め以来の悪さを記録した。製造業では小規模企業が景気減速の打撃を最も受けているが、大企業も活動が縮小している。大企業の指数は過去3年余りで初めて50を下回った」

     

    製造業は、質的に高い雇用の受け皿である。その雇用指数は、2009年以来の低水準に落込んでいる。リーマンショック以来の悪化だ。この状況での米中貿易戦争で、中国は最後まで戦えない状況」に追い込まれている。

     

     


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    中国は、国権が関わる問題として、土壇場で米中貿易交渉にストップをかけた。この国権とは何か。それは、中国共産党の運命に関わることだ。米国の要求のままに、経済機構を変えることが、中国共産党の権威を損ねるという解釈と思う。となれば、経済的な実利よりも政治的な利益を選択している可能性が大きい。そうとなれば、中国は相当の被害を覚悟した政治的な決定と見るべきだ。

     

    『日本経済新聞』(6月30日付)は、「米中休戦、収束見えず、期限曖昧で中国ペース」と題する記事を掲載しました。

     

    米中両首脳は29日の会談で貿易協議の再開を決めた。トランプ米大統領は関税第4弾の発動を先送りし、中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)の制裁解除に言及。今後の協議も期限が曖昧で一転して中国ペースの様相を呈しつつある。一時休戦となる貿易戦争が収束する道筋は見えないが、大統領選を控え成果を焦るトランプ氏が譲歩すれば中国の構造改革が中途半端に終わるリスクもある。

     

    (1)「2018年12月以来、7カ月ぶりの首脳会談は1時間強。2時間半かけた前回より大幅に短かかった。510日に決裂した閣僚級協議の再開を決めたが、前回会談のように「90日の期限を決めて、技術移転の強要や知財保護など5分野で集中協議する」といった具体的な目標は判明していない」

     

    (2)「実際、米中の協議は決裂以来水面下でもほとんど進んでいなかった。そのため、交渉は瀬戸際戦略をとった中国ペースとなった。早期の成果獲得へ短期決戦を挑んでいたトランプ氏は「急いでいない。正しい取引がしたいだけだ」と譲歩。前回12月には「3月に2000億ドル分の中国製品の関税を10%から25%に引き上げる」と通告したが、今回は関税引き上げを見送った上に期限も曖昧にしたままだ」



    (3)「交渉が動かないのは、米中の対立が貿易問題から国家主権を巡る争いになりつつあるからだ。中国が巨額補助金を投じるハイテク企業の育成策「中国製造2025」は、中央集権で経済を動かす「国家資本主義」の根幹だ。米国は「補助金で輸出攻勢する中国企業に比べ、米企業の競争が不利になる」と補助金撤廃を要求するが、中国は見直しに応じない」

     

    このパラグラフが、事態の本質部分であろう。米中が総力を挙げて「戦う」部分であるからだ。これは政治的な意味であり、経済的な分析は別の視点からすべきと見る。私なりの見方は、明朝に発行する「メルマガ69号」で明らかにしたい。


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