勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 中国経済ニュース時評

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    けさ、発行しました。よろしくお願い申し上げます。

     

    米国は中国を絨毯爆撃

    ファーウェイは核企業

    サプライチェーン危機

    若者1千万農村で就労

    自力更生路線は不可能

     

     

    米中通商協議は、協定全文もできあがった段階で、中国がひっくり返す前代未聞の事態になりました。争点は、協定事項を法律改正するという原案が、中国によって国務院(内閣)の政令変更になったことです。米国は、これが重大な違約行為と見なし、第3弾「2000億ドル25%関税」措置を発表しました。中国もその後、これに対抗して600億ドルに最大25%関税をかけ、米中が「対峙」する形となっています。

     

    米国は、さらに第4弾として残り3000億ドルに対し、25%関税をかけると発表しました。中国の対抗できる金額は、あと100億ドルに過ぎません。こうなると米中の関税引上合戦は、圧倒的に「中国不利」の状況になります。

     

    中国は,この状況を打開すべく国民の「愛国心」に訴える戦術に切り替えました。国内メディアが一斉に米国批判をするという言論「ゲリラ戦」です。中国メディアの『経済日報』が運営する微信(ウィーチャット)のアカウント「陶然筆記」の論説では、次のように主張しています。

     

    真に誠意を示す新たな動きが米国側からない限り、米当局者が訪中して通商協議を続けることに意味はない、というものです。この論説内容は、国営の新華社通信と共産党機関紙の人民日報でも報じられており、米国が誠意(妥協)を示さない限り、米中協議を行なう意味はないと高飛車です。中国政府の意向をメディアに代弁させています。

     


    米国は中国を絨毯爆撃

    米国は、中国が土壇場で米中協定の反古を狙ったとして、下記のような強硬手段に出ています。

     

    第3弾 2000億ドル相当の製品にかけている関税率を25%に引き上げると通告

    第4弾 新たに3000億ドルに25%関税を科すべく準備開始

    第5弾 このほか、米商務省は5月16日、中国通信機会社ファーウェイ(華為技術)と関連会社68社について、米政府の許可なく米企業から部品などを購入することを禁止する「エンティティ―リスト」への正式な追加を発表しました。これは、米国が放った中国戦略の「核爆弾」に匹敵するものです。その理由は、後で説明します。

     

    ファーウェイは、世界最大の通信機会社に成長しました。ただ、背後に中国人民解放軍が控えているのでないかと疑惑の目で見られて来ました。通信機は、秘密情報を扱います。その秘密情報がファーウェイを介して中国軍に筒抜けになれば、これ以上の安全保障危機はありません。米国は、これを最も危惧しています。そこで、米同盟国やNATO(北大西洋条約機構)加盟国へ、ファーウェイ製品の排除を呼びかけています。

     

    次世代通信網として「5G」がいよいよ、実現の段階に来ました。「5G」は「4G」に比べ通信速度は100倍とされます。この「5G」が実用化されると、私たちの日常生活が一変するほど、AI(人工知能)が人間の雑務を肩代わりしてくれるという期待もかかっています。その通信基盤で、ファーウェイの「5G」を利用すれば、情報は簡単に北京で傍受されるというのです。全自動運転車が実用化の暁に、その車が北京からの指令で拉致される。そういう危険性も真面目に語られています。

     

    以上のように、米国はファーウェイの存在に危機感を持っています。そこで、米企業とファーウェイ・関連企業68社との取引を許可制にすると発表しました。

     

    ファーウェイは核企業

    ファーウェイは、中国IT技術の頂点に立っています。このファーウェイが実は、中国ハイテク化計画「中国製造2025」の中核企業の役割を果たしています。中国は、基幹産業を国有化しています。ファーウェイだけ、民営企業であるはずがありません。ましてや前記「中国製造2025」の推進企業です。中国政府と「ツーカー」の関係にあることは誰でも気付くはずでしょう。

     

    それでもファーウェイは、民営企業であると主張しています。社員株主制度が、その根拠ですが、米国の学者の分析で否定されています。形式上は、民営企業でも実質的に国有企業なのです。

     

    米中通商協議において米国は、「中国製造2025」が政府補助金で研究開発される違法性を主張し続けました。WTO(世界貿易機関)は、補助金制度を認めないからです。米国の主張が、中国によって退けられたので、ファーウェイが「代替目標」になったのです。ファーウェイは、米企業との取引が不可能になれば、中国半導体技術は停滞の羽目に陥ります。

    (つづく)

     


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    米中貿易交渉が行き詰まったことから、中国が外交交渉に見せる「二刀流」を使い始めた。これまで米中貿易摩擦と呼んできたが、米中貿易戦争と改めている。国内で緊張感を煽り、米国に譲歩を迫る戦術である。

     

    2012年、日本が尖閣諸島を国有化した際も、中国メディアは一斉に日本批判を行い、国内では暴動を誘発させるなど、日本に猛烈な圧力をかけてきた。最後は、米国による尖閣諸島が日米安全保障条約の適用地域との声明で沈静化した経緯がある。

     

    中国は、米中貿易協議でもこの最終パターンに持ち込み始めた。先ず、中国メディアの米国批判を見ておこう。

     

    『ブルームバーグ』(5月17日付け)は、中国 米国との協議継続に今は関心ない可能性」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国は、現在のような関税引き上げの脅しの下での対米協議再開に関心がないと、国営メディアが17日報じた。同時に、政府は国内経済を守るため景気刺激を強化すると表明した。『経済日報』が運営する微信(ウィーチャット)のアカウント「陶然筆記」の論説は、真に誠意を示す新たな動きが米国側からない限り、米当局者が訪中して通商協議を続けることに意味はないとの見解を示した。論説の内容は、国営の新華社通信と共産党機関紙の人民日報でも報じられた。中国商務省の報道官は16日、米当局者が追加協議のために訪中するという話は聞いていないと述べた」

     

    下線部分で、米国が誠意を示さない限り、中国は協議しても意味ないとしている。冷静に考えれば、中国が米国との約束を反故にしたのが原因である。このように、いつの間にか米国が悪者で、中国が被害者という立場の入れ替えが行なわれている。現在の韓国が、徴用工問題で日本に向けている批判と同じパターンだ。中韓の儒教国は、屁理屈の名手である。

     


    (2)「中国国営メディアの厳しく攻撃的な論調は今後再び変わる可能性もあるものの、数カ月にわたり米国との対立を強調せず『貿易戦争』という言葉の使用も禁じてきた中国側からとしてはこの論調は意外だった。米国は交渉を続けたいと言いながら、『雰囲気を乱すような行動をしている』とブログは指摘。トランプ大統領が中国の通信機器メーカー、華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)による米市場とサプライヤーへのサクセスを制限する動きに出たことに言及した。『米国が交渉推進に十分誠意を持って臨んでいるようには見えない。米国はむしろ強硬な圧力を拡大している。米国が中国人民の意志を無視すれば、米国は中国側から実効ある反応を引き出すことは恐らくないだろう』と主張した」

     

    下線部分で、中国政府はメディアを使い、交渉の決裂を臭わせる。中国政府当局者の弁ではない。この『ブルームバーグ』の記事さえ、動揺が感じられる。中国の駆け引きのうまさはここにあるのだ。相手を動揺させて交渉決着に持ち込むのだ。

     

    このパターンに警戒する記事も紹介したい。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(5月15日付け)は、「米中貿易戦争、愛国心あおる中国国営メディア」と題する記事を掲載した。

     

    中国政府は米国との貿易摩擦を巡り、交渉による解決を望むと繰り返し強調している。だがその一方で、米政権に対する国営メディアの辛らつな批判で愛国心をあおっている。

     

    (3)「国営の中国中央電子台(CCTV)は夜のニュース番組で、貿易摩擦は「大した問題ではない」と指摘。中国は「困難を突き抜けて進み」、「危機をチャンスに変える」と伝えた。こうした見解はソーシャルメディアで広く共有された。共産党系のタブロイド紙は社説で、中国が米国との「人民の戦争」に直面しているものの、中国政府には米政権に対抗する十分な手段があると自信を示した。国営ニュース大手もこぞってこれを掲載した。中国当局者はやや控え目な姿勢を取り、米国に交渉の席に戻るよう訴えかけている。ロシアを訪問中の王毅外相は13日、米中貿易協議で「重要かつ重大な進展」があったとし、両サイドが互いに利する合意に至るであろうと期待感を示した」

     

    中国政府は、硬軟両様の神経戦を展開している。敵に噂をばらまき動揺させ、降伏させるという古来の戦法である。このカビの生えた戦術が、米国を攪乱させると見ている。その点が「幼稚」に見える。中国の撃てる弾(関税引上対象)は、後100億ドルしか残っていない。これを撃ち終えたら、「白旗」を挙げざるをえない最終局面だ。中国が、粘りに粘って来るところだ。

     

    (4)「専門家によると、こうした両極端の論調は、中国指導部がポピュリスト的な愛国主義の活用を目指す一方、外交政策を複雑化させかねない、行き過ぎた愛国主義の噴出を回避しようと苦心する様子を反映している。中国共産党はしばしば、政策の正当性を裏付けるために愛国心をかき立てる。習近平国家主席は政治指導者として、また中国主権の断固たる守護者として大衆向けのイメージを押し出しつつ、こうした戦略を大いに活用してきた。愛国心による群衆の怒りは、外国の譲歩を迫ったり、相手国との対立激化を抑止したりする影響力となり、中国政府の外交目標を前進させる上で役立つこともある」

     

    中国の「愛国心戦法」が、米国を怯ませることがあろうか。米議会は、超党派でトランプ支持に固まっている。米国が妥協する理由がないのだ。約束を破った相手に妥協する。これは、米国のルールにない。契約は守る。これが、民主主義社会の「掟」でもある。

     

     

     


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    米商務省は16日、中国ファーウェイ(華為技術)と関連会社68社について、米政府の許可なく米企業から部品などを購入することを禁止する「エンティティリスト」への正式な追加を発表した。

     

    ファーウェイ任正非・最高経営責任者(CEO)は18日、日本メディアの取材に応じた。トランプ米政権が同社への輸出規制を決めたことについて「我々は法に触れることは何一つしていない」と反論、半導体など基幹部品の自社開発を進める方針を示した。米国による厳しい措置について、危機感を表明せず、逆に米国を批判した形の会見であった。経営者として疑念を抱かせる内容だ。以下に、その根拠を示したい。

     

    『日本経済新聞 電子版』(5月18日付)は、ファーウェイCEO、『米半導体、売ってくれなくていい』」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「ファーウェイのトップが米国による禁輸決定後にメディアのインタビューに答えたのは初めて。スマートフォン(スマホ)などの生産に影響が予想される点については、『(クアルコムなど米企業が生産に不可欠な)半導体製品を売ってくれないならそれでいい。準備は以前から進めてある』と強調。グループの半導体設計会社、海思半導体(ハイシリコン)などを通じた独自開発を推進する考えを示唆した」

     

    ここでは、強気を見せている。スマホは、ファーウェイの主力製品ではない。それでも「4Gの高級スマホに重要なRFチップなどの主要部品を米国以外から調達する必要がある。ファーウェイはRFチップを主に米コルボと米スカイワークス・ソリューションズから調達している」(『フィナンシャル・タイムズ』5月17日付け)

     

    また、昨年暮れからスマホに使う半導体の在庫を積んでおり、半年から1年分を用意しているという。その在庫もいずれは補充する必要が出てくる。他国の半導体メーカーが,スムースに調達に応じるかどうか。米国の目が怖いのだ。楽観は禁物である。

     

    (2)「輸出規制が経営に与える影響に関しては、『ファーウェイの成長速度が鈍化することは予想されるが、部分的なものにとどまるだろう』と限定的との見方を示した。「(過去に米国から制裁を受けた中国の同業大手)中興通訊(ZTE)のように求めに応じて経営陣を刷新したり、監視を受け入れたりすることはしない」と米政府に強気の姿勢を見せた」

     

    ファーウェイが、世界の通信会社として成長する分野は、次世代通信網「5G」である。米国は、この分野の成長阻止を狙っている。ファーウェイは、「5G」開発で、米国のソフトや半導体に大きく依存している。したがって、影響が出るはずである。米国は、安全保障面から何としてもファーウェイの発展を抑制したいのだ。そのためには、ありとあらゆる手段を使うであろう。

     


    (3)「任氏は、輸出規制を決めたトランプ米大統領を『次々と貿易相手国を脅すような政策は企業からリスクをとる姿勢を奪い、米国も信用を失う』と批判した。次世代通信規格「5G」製品に関し『米国からここで生産してほしいと言われても、行くことはない』と米国進出の可能性を否定した」

     

    このパラグラフの発言は、米国を刺激するだけの「鬱憤晴らし」にすぎない。米国が、ファーウェイに代償を払わせるべく、手ぐすねを引いていることが分からないとしたら、相当の「能天気」経営者だ。ファーウェイが、ここまで発展できた裏には、中国人民解放軍の支援があったことを窺わせるような「会見記」である。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(5月17日付け)は、「ファーウェイは米制裁措置に耐えられるか」と題する記事を掲載した。

     

    (4)「米調査会社デローロによると、ファーウェイは28%の市場シェアを持つ世界最大手の通信機器メーカーで、欧州のエリクソンとノキアを大きく引き離し、5Gの受注でも世界のトップに立っている。だが、販売を伸ばすなかで(今年の売上高見通しは1200億ドル)、ファーウェイの部品需要は膨らんでいる。これは『外製部品への依存度がとても高い』ということだと、バーンスタインのリー氏は言う。5Gの構築とそれに伴う部品需要拡大の中で、ファーウェイはインテルやクアルコム、コルボから部品を購入またはライセンスを受けている」

     

    英調査会社IHSマークイットが今年初め時点で推計した2018年の5G関連機器の出荷台数世界シェアは、前記の記事と違ってファーウェイが4位に落ちている。これは、米国政府の「ファーウェイ批判」が響いているであろう。

     

    (5)「エリクソンが24%で首位、21%のサムスン電子が2位、ノキアは20%で3位につけた。ファーウェイは17%で4位にとどまった。米国の排除要請の影響で伸び悩んだ可能性がある。18年の4Gまでの携帯通信インフラ売上高シェアでも、前年トップだったファーウェイが2位に転落、エリクソンが2位から首位に浮上した」(『共同通信』4月22日付け)

     

    米国政府が総力を挙げてファーウェイ製品の排除に動いている影響は大きいのだ。


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    米商務省は16日、ファーウェイと関連会社68社について、米政府の許可なく米企業から部品などを購入することを禁止する「エンティティリスト」への正式な追加を発表した。これは、米国が放った「中国戦略」の核爆弾に匹敵する。米国をここまで怒らせた中国の対応のまずさが浮き彫りになっている。

     

    中国が、米中貿易戦争の原因をつくった。GDP世界2位という奢りが招いたとも言える。日本は,無謀な太平洋戦争を仕掛けたと同じ短慮が、中国を傲慢にさせたのだ。太平洋戦争直前、日本はABCDラインによって石油や鉄鋼など戦略物資の禁輸措置を受けた。理由をつくったのは日本。満州からの撤兵をせず、日本領と主張した結果である。この時の主役は、米国である。米国には、中国を追い詰めるノーハウを山ほど持っているはずだ。

     

    中国は、脆弱な国内事情を抱えながら、対外強硬策を進めてきた。その最終コースに米国の大ナタが振るわれたと見るべきである。基礎技術のない国家が、世界覇権などという、とてつもない野望を持った。それに下された鉄槌と見るべきだろう。

     

    『ロイター』(5月16日付け)は、「米国のファーウェイ排除、世界IT供給網に混乱必至」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「ファーウェイより経営規模の小さい同業の中興通訊(ZTE)は昨年、一時的に米政府の制裁対象となり、経営危機に陥った。規制リストへの追加でファーウェイも経営が悪化するとみられるが、影響は同社だけにとどまらず、米国のサプライヤーも打撃を被りそうだとアナリストはみている。ファーウェイの昨年の部品調達700億ドル分のうち、クアルコムやインテル、マイクロン・テクノロジーなど米企業が110億ドル前後を占めた。ファーウェイへの規制強化で米企業はこの売り上げを失う。一方、アップルなど米国の製品メーカーは、主要な市場である中国から手痛い報復措置を食らう恐れがある

     

    下線を引いた部分は、非関税障壁といわれる部分である。米中協議でこの撤廃が要求されているから、中国が無思慮に復活させたら米国から大目玉を食らうこと必至だ。

     


    (2)「ファーウェイはサプライヤーを米国企業から中国企業に切り替えるのが難しく、少なくとも数年以内の移行は無理なため、厳しい事態に直面するという。
    ファーウェイが生産を抑制せざるを得なくなれば、アジアと欧州で多くのサプライヤーの経営が影響を被る。また、各国が次世代通信規格「5G」のネットワーク構築にしのぎを削っているだけに、ファーウェイの製品に依存し、米国によるファーウェイ規制に反対している通信業界も混乱に見舞われるだろう。ファーウェイに半導体を供給しているサプライヤーの幹部は「ファーウェイは米国製の主要部品が手に入らなければネットワーク用サーバーを製造することができず、米国以外の国からの部品調達も停止するだろう」と述べた。ファーウェイはスマホについては社内で部品をそろえることができるが、サーバーやネットワークの分野では事情が異なるという」

     

    下線を引いた部分は、まさにファーウェイの弱点部分である。「5G」も米国の複数のIT企業の協力の下で進められていた。米国政府は、この事実を把握しているので「一撃」を加えたもの。米国の首を狙う敵に塩を送る必要はない。そういう、いとも簡単な判断である。

     

     (3)「米国によるファーウェイの規制リスト追加は中国の5Gにとっても「悪夢だ」と指摘。中国は来年中に5Gを全国展開する目標を掲げているが、ペースが遅くなりそうだとした。ファーウェイは、米政府に協力する用意があり、製品のセキュリティー確保のために実効性のある手立てを講じると発表したNHインベストメント&セキュリティーズのアナリスト、ドー・ヒュンウー氏は「最大の懸念は、ファーウェイ製品を使っていた米国の同盟国が、米国の顔色をうかがってファーウェイとの取引を打ち切ることだ」と述べた」。

     

    下線の部分は、「今さら」という感じである。ファーウェイ当局は、米政府を訴えているほか、数々の悪態をついてきた。その請求書がファーウェイに回ったという感じだ。中国政府と同様、ファーウェイも長期的視野が欠けている。

     

    (4)「中国に進出している米ハイテク企業の関係者は、『米国はファーウェイを徹底的に叩くと決めたようだ。問題は、当面は米中貿易協議で妥結の見通しが立たたないため、米国がファーウェイの抹殺を急いだ点だ』と話した」。

     

    このパラグラフは,きわめて重要な部分である。米国は、ファーウェイ抹殺を狙っている。これは事実だろう。米国が禁輸措置をとれば、数年内に技術的に行き詰まる。そう見ているのだ。中国が、「中国製造2025」を放棄しないのなら、その中核企業であるファーウェイを潰すだけ、という明白な意図が浮かび上がる。米国の怖さはここにある。私が、かねがね指摘している点だ。


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    米中貿易戦争は、第4弾に入りそうな気配を漂わせてきた。米国が、これまで対象外としていた約3000億ドル(約33兆円)分の中国製品に「第4弾」の関税をかけるというのだ。玩具やスマホなどの消費財が、全体の約4割を占め、第3弾(約24%)から割合が高まると指摘されている。

     

    太平洋戦争に喩えれば、米機のB29が日本本土を爆撃するような話である。米中貿易戦争がここまで戦線拡大されずに終息するように、切に祈るほかない。米国があくまでも「初志貫徹」の姿勢を見せているのは、「我に正義あり」だからだ。WTO(世界貿易機関)の自由公正な貿易を守り、ルール違反国の中国を許さない、という原則論がある。話は逸れるが、米国が広島と長崎へ原爆2発を落とした理由は、早期の戦争終結であった。中国製品に「第4弾」の関税をかける、トランプ氏の狙いもここにある。

     

    中国は、対等の原則に反するとか、話合い路線が本筋だとか「泣き言」を言っている。だが、中国も報復して、米国をギャフンとさせる必要がある。そこで出てきたのが、中国保有の米国債売却説だが、米国は一笑に付している。

     

    中国が、米国債1兆ドルを一時に投げ売りすることは、「自爆テロ」と同じで、中国に大変な売却損を出すのは必定。その売却したドルを中国へ持ち帰れば、大幅な元高で中国の輸出がさらに難儀する。要するに、米国債を大量に売却することは、中国にとってリスク100%の話なのだ。「話半分」という喩えもあるが、米国債売却説は、それにも該当しないただの「与太話」である。

     


    『ロイター』(5月15日付け)は、「中国、制裁合戦で守勢に立たされ手立て枯渇」と題する記事を掲載した。

     

    米国と中国の通商問題を巡る「制裁合戦」は、不均衡是正を目指すトランプ米政権の攻勢を受けた中国が守勢に立たされ、自国の利益を損なわずに反撃する手立てが枯渇しつつある。

     

    (1)「米国は華為技術(ファーウェイ)や中興通訊(ZTE)を狙い撃ちしたり、海軍艦艇に台湾海峡を通過させるなど、関税以外の面でも中国への攻撃を強めている。関係筋によると、こうした米国の圧力の高まりを背景に、中国の指導部は米国と合意にこぎ着け、経済の長期的発展を阻害しかねない貿易戦争の泥沼を回避しようとしている。しかし米国に譲歩しすぎていると受け止められ、愛国派から反発を食らう危険も十分念頭にある。米国の要求に応じて、国有企業や戦略的に重要なセクターに対する政府補助金や税制上の優遇措置を打ち切れば、国家主導の経済モデルが崩れ、共産党の経済支配が弱まる恐れがあるという」。

     

    日本が終戦の決断を下したのは、2発の原爆投下である。中国は、トランプ氏から第4弾の「関税爆弾」の投下準備を見せつけられ、「終戦」を決意せざるを得ない状況に追い込まれている。習氏は、この状況をどのように捉えるかだ。「共産党支配継続」が第一であるから、これの見通しがつけば合意するのだろう。

     

    (2)「中国の政策当局の内部関係者は『まだ弾は残っているが、全て撃ち尽くすことはないだろう』と述べ、あくまでも両国が受け入れ可能な合意に達することを目指す姿勢を打ち出した。中国が現在使える報復手段には必ずリスクが伴う。中国が昨年7月以降最大25%の追加関税を課した米国からの輸入品は合計で約1100億ドル相当となっている。一方、米国勢調査局のデータでは、米国がさらに中国への締め付けを厳しくした場合に中国が報復のために追加関税率を導入できる米国からの輸入品は、原油や大型航空機などおよそ100億ドル相当にすぎない。対照的に米国は中国からの輸入品3000億ドル相当について追加関税率を導入することをちらつかせている」

     

    中国が、最後に撃てる弾は100億ドル程度。米国はこの30倍の3000億ドルに関税をかけられる。中国は、敗戦直前の日本と同じ状況だ。B29に竹槍で立ち向かうようなもので、消耗戦になるだけである。

     

    (3)「報復手段を関税から米企業に対する非関税障壁に移せば、中国市場は不公平との受け止め方が広がって調達や投資の面で外国企業の中国離れが起きるリスクがあるという。

    折悪しくトランプ氏は米企業に対して生産拠点を米国内に戻すよう呼び掛けている。ピーターソン国際経済研究所のロバート・ローレンス研究員は最近、記者団に対して『サプライチェーンに対する中長期的な影響が非常に過小評価されている。私が中国側ならばこの点を深刻に心配するだろう』と述べた

     

    非関税障壁で米企業虐めをやれば、外国企業の中国離れを起こすだけである。中国から外資系企業が脱出してしまえば、中国は「もぬけの殻」同然になる。こうして中国全土にはりめぐらされたサプライチェーンは寸断される。まさに戦時中の日本が、米機から絨毯爆撃を受けたような「焼土」になりかねない。ここは、メンツとか国権とか言わないで、実利に徹して消耗を少なくすべき段階だ。習近平氏が、「名将」であるか、ただの「威張りや将軍」であるか、評価の境となろう。


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