勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 中国経済ニュース時評

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    米中貿易戦争は、新たな段階へ進む。中国は目下、恒例により河北省北戴河の保養地に集まり、重要案件を非公式に協議している。今年の最大の焦点は、対米貿易摩擦とされている。習氏としては、メンツのためにも米国へ強く出ざるを得ない。

     

    『ブルームバーグ』(8月8日づけ)は、次のように伝えた。

     

    (1)「中国は新たに160億ドル(約1兆7800億円)相当の米国製品を対象に8月23日から25%の関税を賦課することを確認した。これより先に米政府が発表していた追加関税と同規模の措置で対抗する。発表文によれば、今回の関税は北京時間午後0時1分と、米関税と同時に発動される。中国商務省は発表文で、中国製品160億ドル相当に25%の追加関税をかけるという米国の決定は『非常に理不尽だ』とし、正当な利益と多国間貿易体制を守るために報復せざるを得ないと表明した」

     

    米国と同時刻、同金額の報復を科すことは、演出も十分に意図している。北戴河(ほくさいが)会議中であるから、米国に対して強く出て党内の不満を押しつぶす意図も透けて見える。習氏が貿易戦争へ突入した裏には、党内序列5位の王滬寧(ワン・フーリン)政治局常務委員の存在が上げられている。彼の「主戦論」に引っ張られた側面も強く、習氏は強行突破を図って、米国へ対抗する姿勢を保っているのでないか。

     

    (2)「160億ドル分のリストは6月に公表済みだが、対象を入れ替えた。品目数は114から333に増えた。原油に高関税をかければ、国際価格が高騰した時に純輸入国の中国に不利と判断したようだ。7月6日から追加関税をかけた自動車の対象車種を大幅に広げた」。以上は、『日本経済新聞』(8月9日付)が伝えたもの。

     

    対象品目から原油を外した点に注目したい。ギリギリの線で米国への配慮が隠されていることだ。米国が原油国として再登場しているので、中国は将来の対応を見据えたのではないか。原油価格高騰時に、中国へ不利というのは表向きのこと。米国への恐怖感が中国政府を支配していると見るべきだろう。


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    訪日外国人観光客目標は、2020年の4000万人である。達成に向けて着実に進んでいる。その有力武器は、「オモテナシ精神」であることが立証された。旅は、人と人とのふれ合いだ。言葉は十分に分らなくても、真心込めて接待すれば分ってくれるものだろうか。

     

    『中央日報』(8月8日付)は、「中国旅行客が選ぶ最も親近感のある国1位は日本」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国人が、『歓迎を受けている気分になる国』ランキング(2018年調査)で、1位は日本、2位はタイ、3位は香港、4位は韓国、5位はオーストラリアだった。2017年調査で、タイは1位、日本は2位、韓国は6位だった。2017年、中国人が多く訪問した国家は1位香港、2位マカオ、3位台湾、4位タイ、5位日本だった」

    この調査は、米オンラインホテル予約サイト『ホテルズドットコム』が最近、「中国人海外旅行報告書(CITM)」を発表した。1億3000万人以上(2017年)が海外に出かける中国が世界に及ぼす影響を分析した報告書だ。今年は過去1年間で海外旅行経験のある中国人3047人(18~58歳)を対象に調査を進めた。

    中国人が外国旅行した国の旅行者数ランキングで、日本は5位である。だが、満足度では1位だ。これは、旅行業関係者の並々ならぬ努力の結果に違いない。日本は「満足度で金賞」に輝いたのも同然の快挙。ご苦労様です。日本の国際収支の「サービス収支」改善に大きな貢献である。

     

    (2)「調査に参加した中国人の65%は自由旅行を選好すると回答した。これは昨年調査より11%増となる数値で、18~38歳回答者は71%が自由旅行を選好すると答えた」

    もはや、団体旅行の時代から個人旅行(自由旅行)が主力になってきた。若い世代ほど、自由旅行の比率が高まっている。リピーターを増やすには、「オモテナシ精神」が最大の武器となろう。日本人は接客業に向いている。

     

    (3)「ミレニアム世代(1980年代初めから2000年代初めに生まれた世代)の支出規模も目を引く。海外旅行中、一日の支出額が80年代生まれは346ドル(約3万8620円)、90年代生まれは314ドルで、70年代生まれ(299ドル)よりも多かった。調査に応じた中国人は平均的に所得の28%を旅行に使っていることが明らかになったが、90年代生まれは所得の36%を旅行に使うと答えた。90年代以降生まれは昨年よりも海外旅行支出額が80%増えた」

     

    中国の若い世代ほど、旅行中の消費額が増えている傾向が掴める。調査に応じた中国人は、平均的に所得の28%を旅行に使っていることが明らかになった。90年代生まれは所得の36%を旅行に使うと答えた。この数字を見て、本当だろうかと訝るほどである。中国の若い世代は、国内で自由を奪われた生活を余儀なくされている。せめて海外へ出たときは「パッ」とカネを使う気持ちも分らないではない。余計なことを言って申し分けないが、中国の国際収支では、「サービス収支」が大赤字になっている。理由の一つは、この海外旅行での消費にある。日本が「オモテナシ精神」を発揮すればするほど、中国の「サービス収支」は赤字幅が増えて、日本のそれが黒字になるという関係だ。


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    昨日のブログで、中国序列5位の王滬寧(ワン・フーリン)政治局常務委員が、7月に入って姿を見せない問題を取り上げた。その後の記事で、習近平氏自身への批判が出てきた点を取り上げたい。昨秋以来、初めての「習批判」である。

     

    これは、国民の経済的な不安が、米中貿易戦争によって増幅されてきたことが背景にある。これまで、不動産バブルの後遺症で苦しんできた上に突如、米国との関税戦争に巻き込まれたからだ。国民は、この政治的な不手際を批判する矛先を、習近平氏に向け始めたように思える。

     

    率直に言って、習氏の政治体質は国粋主義的である。「中国の夢」を唱道し「米国覇権挑戦論」を掲げるなど、ヒトラー的な扇動政治家の要素を持っている。現在の中国経済の置かれている状況を確認せず、領土拡張型の帝国主義時代を彷彿とさせる政策を追い求めてきた。それをバックアップ、ないしリードしたのが前記の王氏である。習―王のペアは、時代錯誤型の盲進タイプである。それだけに、王氏への批判は、同時に習氏へ向けられる要素を持っている。習氏にとっては、楽観していられる場面ではない。

     

    『ブルームバーグ』(8月8日付)は、「内患外憂の習近平氏に吹き始めた逆風ー中国国民に不安広がる」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「数カ月前、中国の現職最高指導者としての習近平氏の勢いを止めることはできないように見えた。国家主席の任期制限を撤廃し、数十年ぶりとなる政府組織の抜本改革を発表。昨年11月のトランプ米大統領訪中を成功させ、米国との貿易戦争を阻止できるように思われた。共産党総書記でもある習氏への党からの礼賛も相次いだ」

     

    半年前の習氏を取り巻く政治状況と、現在では大きく変わってきた。昨秋、トランプ氏の訪中時は、米中首脳が協力しあえる雰囲気を漂わせていた。これは表面的なこと。米国側はすでに経済問題で警戒感を強めていた。中国は、大型商談で米国の関心を逸らしたとほくそ笑んでいたが、トランプ氏が中国を離れるとき、米代表団は「もうこれ以上は騙されないぞ」と冷たく言い放っていた。この間の事情は、WSJ(『ウォール・ストリート・ジャーナル』)が正確に伝えていた。トランプ訪中は、「敵情視察」である。

     

    中国は、米国を軽くあしらった積もりでいたが、米国はその上を行っていた。中国の不正貿易慣行(技術窃取や政府の補助金支給)を是正しない場合、関税引き上げで罰を加えるという基本方針を立てていた。中国は、追加関税問題だけを取り上げて騒いでいるが、その原因である不正貿易慣行の存在については口をつぐんでいる。中国は否定しているが、これは全く改める意思のないことを表明したことだ。中国は、自らの非を認めず、米国へ報復関税で逆襲する「恥知らず」な国家に身を落とした。習氏の「強いリーダー」演出が後退時期の判断を誤らせたと言える。

     

    (2)「こうした圧倒的に強いリーダーとしての存在感が裏目に出るかもしれない。景気減速や株式相場の急落、粗悪ワクチンを巡る不祥事などは全て国民の不満を招く。欧米や世界の金融センター各地では、中国の野心に対する警戒感が広がりつつある。一段とエスカレートしつつある米国との貿易戦争は、中国が当初想定していた展開とは異なり、習氏の失敗を映し出すプリズムとなっている。中国人民大学の王義桅教授(国際関係)は、『貿易戦争が中国の腰を低くさせている。われわれは謙虚にならなければならない』と話し、習氏肝いりの現代版シルクロード構想『一帯一路』の下での大規模なインフラ整備事業をどのように進めていくかについてさえも再考すべきだとの考えを示唆した」

     

    中国で起こっている問題は、中国国民を不安にさせている。景気減速や株式相場の急落、粗悪ワクチンを巡る不祥事などは、国民を不安に陥れるに十分な「事件」だ。とりわけ、金融不安では、庶民が気楽な利殖手段として利用してきた「インターネット融資」(P2P)の倒産を多発させている。こういう事件は、中国が国家として成熟していれば起こりえない問題だ。金融制度の未成熟さは、政府の責任である。国民の財産も安全に守れない政府が、「大言壮語」して世界覇権論など語る資格はない。習氏に向けられている不満の原点は、この一点にあるに違いない。


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    ディズニーの人気キャラクター「くまのプーさん」を初めて実写映画化した「プーと大人になった僕」(日本公開9月14日)について、中国当局は公開を認めないことになった。中国当局は製作会社に公開拒否を伝えた際にも理由を示さなかったという。『ロイター』(8月8日付)が伝えた。

     

    中国では、一部の反体制派が「くまのプーさん」は習近平国家主席に似ているとして抵抗の象徴に利用するようになった。これを受けて、政府はプーさんの画像を検閲対象としている。確かに習氏のふっくらとした顔立ちは「くまのプーさん」似である。一国の元首を「プーさん」呼ばわりしては失礼なことは言うまでもないが、国民に慕われていると考えれば、中国国民にディズニー映画を鑑賞させる機会を提供するのも政府の務めと思う。

     

    実は、米華字メディアの『多維新聞』(2017年7月19日付)によると、中国版ツイッターの「微博(ウェイボー)」や中国版LINEの「微信(ウィーチャット)」で、関連する投稿や検索ができなくなっていた「くまのプーさん」の規制が、昨年7月18日に解除されたという報道記事がある。

    中国のSNS上では数日間(当時)、プーさんに関する言及が「敏感ワード」となっていた。ウェイボーでは、中国語でプーさんを意味する言葉は検索不能であった。それが、解除されていたというのだ。それにもかかわらず今回、ディズニー映画ではダメというのは、最近の「習批判ムード」が影響しているに違いない。

    「くまのプーさん」と言えば、わが日本の誇る羽生結弦選手は、大の「くまのプーさん」好きで有名だ。この2月の平昌五輪でもリンクに大量の「プーさん」がお祝いで投げ込まれた。「この伝統は2015年に上海で始まった」と言われている。中国の人たちは、「くまのプーさん」が好きなのだ。

     

    そうとすれば、習氏の人気を高める手段として、ディズニー映画「プーと大人になった僕」の上映を認めた方が良いと思う。初演の日に、習氏が映画館で挨拶するユーモアもあれば申し分ない。習氏の人気挽回は確実だ。


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    中国は、米国という巨人を相手に無用な喧嘩を売ったものだ。米国は、西部開拓時代の「ヤンキー魂」が健在であることを忘れていた。中国4000年の歴史の方が上だと錯覚していた。その報いを嫌というほど味わされている。

     

    米議会を通過した「国防権限法」では、安全保障上の懸念を理由つまりスパイの疑いで、米政府機関が中国通信機器大手の中興通訊(ZTE)と華為技術(ファーウェイ)の技術を利用することを禁じる項目が盛り込まれた。これにより、ファーウェイは米国に事務所を構えていても仕事がない、という屈辱に直面している。米国撤退論が取り沙汰沙汰されている。

     

    『大紀元』(8月8日付)は、「ファーウェイ 米市場から撤退を計画か、1200人雇用も業務はない」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「海外メディアによると、国家安全保障上などの理由で、トランプ米政権に活動を規制された中国通信大手、華為技術(ファーウェイ)は米市場からの事業撤退を計画している。これに対して、ファーウェイ側は米国国内で『業務がないため、撤退などと言えない』と示し、実質上の撤退を認めた」

     

    米国の中国への警戒は厳しい。前述の「国防権限法」は、中国を標的にしており、「準戦時体制」とも言える最大の警戒相手国に成り下がった。習近平氏の「大法螺」(米国覇権挑戦論)が招いた結果だ。ファーウェイは、事実上、中国政府の指揮下に組み込まれた諜報機関である。

     

    (2)「韓国メディア「etnews」(6日付)によると、ファーウェイに近い関係者が、同社は34か月前から米市場から撤退を計画していたと話した。『ファーウェイの米市場でのモバイル事業が事実上、すでに中断されている上、米国内にある事務所から退去する計画だ』 米フォーブス誌は今年4月の報道で、ファーウェイの幹部は『米市場は同社のグローバル戦略の一部ではなくなった』と発言したため、今年末までファーウェイが米市場から撤退すると予測した。同報道によると、ファーウェイは、テキサス州プレイノ市に米国事業の本部を構えるほか、シリコンバレーやニュージャージー州の各地で13カ所の事務所を設けている。従業員が1200人いるという」

     

    全米各地に13カ所の事務所を構え、1200人の従業員を雇用するが解雇となろう。米国の労働市場が、逼迫化しているので失業への懸念は少ない。

     

    (3)「米政府に続き、欧米各国が中国当局に近い関係にあるファーウェイに対して警戒を強めた。オーストラリア政府は6月、国家安全保障が脅かされる恐れがあるとして、次世代通信『5G』の導入にあたり、ファーウェイの参入を禁止した。また、ロイター通信によると、イギリス政府は7月下旬、ファーウェイ製品に期限を過ぎたソフトウェアを使用されており、『技術的欠陥』で英国の情報通信ネットワークに安全リスクをもたらしているとの見解を示した」

     

    米国を先頭に、同盟国はファーウェイ製品の締め出しに動いている。スパイ活動の懸念からだ。中国のスパイ活動は高等戦術も使う。ハニー・トラップから始まり技は多彩である。いつどこで、罠が仕掛けられていないか。中国製品を使う場合、余計な神経を使わざるを得ない。そんなリスキーな製品を閉め出せば、安保上、一つ懸念が消えるのだ。中国は、西側諸国から「嫌われの国」へ転落した。

     

     


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