中国経済は、お尻に火がついた状況に追い込まれている。ロックダウンである以上、やむを得ないとは言いながら、「急減速」である。手っ取り早い手段は、住宅ローンを緩和して、大量の在庫をはかすことだ。
中国人民銀行(中央銀行)が、5月13日発表した4月の人民元建ての新規融資は、6454億元で3月の3兆1300億元から80%も急減した。アナリストは、1兆5200億元と予想していたから、悪化予想をさらに下回る「SOS」の状況に陥っている。超強気の習近平氏といえども、これでは李首相に兜を脱がざるを得なくなった筈だ。
最近の地方政府トップ人事では、李首相の息がかかった国務院(政府)の大臣クラスが、栄転している背景が分るようだ。経済再建には、李首相仕込みのエリートでなければ無理という判断かも知れない。
住宅ローンなど家計向け融資は、4月が5369億元で、3月よりも29%減になった。企業融資は4月が1兆9016億元。3月よりも24%の減少である。減少幅から見れば、家計向け融資の落込みが大きい。こういう背景もあって、住宅ローン金利が0.2%の引き下げになる。
『日本経済新聞 電子版』(5月15日付)は、「中国、住宅ローン金利の下限下げ マンション市場低迷で」と題する記事を掲載した。
(1)「中国人民銀行(中央銀行)と中国銀行保険監督管理委員会は15日、住宅ローン金利の下限を引き下げると発表した。1軒目を買う人が対象で、これまでより0.2%低くした。銀行に金利の引き下げを促し、低迷が続くマンション市場をてこ入れしたい考えだ。1軒目の住宅ローン金利は、期間が同じLPRが下限だった。今後は「LPRより0.2%低い水準」が下限となる。LPRは、政府が事実上の政策金利と位置づける金利だ」
住宅は、1世帯1軒が普通である。これが、2軒目3軒目と複数住宅を持つこと自体が、不動産バブルの結果である。住宅は、いずれ経年劣化していくものだ。不動産バブルを前提にして値上りしなければ成り立たない話だ。政府が「勧進元」で不動産バブルを推進したから、2軒目、3軒目という異常な事態を引き起した。
最優遇貸出金利(LPR)は現在、5年物は4.6%である。今回の住宅ローン優遇で1軒目は0.2%の引き下げを受けられる。それでも、4.4%である。これで、高額物件の500万元(約9500万円)の住宅ローン支払いは、金利だけで月々34.8万円にもなる。20~30代の若者世代に購入可能か疑問である。共稼ぎでも支払いが困難であろう。中国の不動産バブルは崩壊して当然だ。これからの中国経済減速を考えれば、住宅不況は永続するだろう。
(2)「不動産シンクタンクの易居不動産研究院の厳躍進氏によると、500万元(約9500万円)のローンを30年かけて元利均等で返済する場合、0.2%の金利低下で毎月の返済額は600元ほど少なくなる。「過去の利下げによる月々の負担軽減額は150元ほどだったので、下限引き下げの効果は大きい」と指摘した」
前のパラグラフで説明したように、中国の住宅価格は高騰し過ぎた。需要減になっても驚くことはない。
(3)「住宅ローンの利回りは最優遇貸出金利(LPR、ローンプライムレート)の5年物が目安になる。現在の5年物は4.6%なので、新たな下限は4.4%となるもようだ。なお購入物件が2軒目以降という場合の下限は「LPRより0.6%高い水準」で、従来のままだ」
中国で複数住宅を持つことは、これからの人口急減を考えると、余りにも無謀である。住宅が値下がりに転じれば、中国経済は修羅場に陥る。余剰の中古住宅が、一斉に市場へ出てきて価格は急落し、新規住宅販売はストップするだろう。現在、味わっている苦しみ以上のことが起こるだろう。中国経済の行き詰まりは目に見えている。