勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 中国経済ニュース時評

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    マハティール首相は、その後も老いの一徹で「中国嫌い」を発揮している。理由は、ナジブ前首相が中国に利用とされたと見ていることだ。ナジブ氏は2016年末、中国と協定した「東海岸鉄道」と天然ガス・パインライン事業で、総経費200億ドルもの巨額契約を結んだ。マハティール首相は、これが「亡国プロジェクト」と判断、先頃の訪中で棚上げさせてきた。この怒りが収まらず、マレーシアへ進出した中国不動産資本に矛先を向けている。

     

    『大紀元』(8月28日付)は、「マハティール氏、中国主導の海上都市計画を狙い撃ち」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「マレーシアのマハティール首相は8月27日、外国人には、マレー半島南端で進行中の巨大都市開発プロジェクト『フォレストシティー』に住むためのビザは発給しないと宣言した。同首相が、シンガポールに近い埋立地に人口70万人の新しい街を築くという、中国の不動産デベロッパー大手、碧桂園控股(カントリー・ガーデン・ホールディングス)の計画に横やりを入れたのはこれが初めてではない。だが今回は、大きな影響が出そうだ。碧桂園は、マンション販売ではマレーシア人より外国人をターゲットにしてきたからだ」。

     

    マレー半島南端で巨大都市開発プロジェクトが進んでいる。その名前は、「フォレストシティー」という。人工島4島に人口70万人の街を建設するという大掛かりものだ。中国資本の手になる。販売ターゲットは主として外国人といわれる。すでに、一つの島のマンションが完成している。残りは人工三島の工事である。

     

    マハティール首相が反対する理由は、中国資本がマレーシアの環境を食いものにするという素朴な怒りであろう。先に、中国政府から200億ドルものプロジェクトで利益を吸い取られる所だった。今度は、中国民間資本による人工島プロジェクトである。中国の官民が、マレーシアへなだれ込んでくることに腹を立てているのだ。これ以上、中国の食い物にされない。そういう宣言に聞こえる。

     

    (2)「マハティール氏は、27日に開かれた記者会見で、『一つ確かなことがある。建設される町は、外国人には売ることができないということだ』と、ロイター記者の質問に答えて言った。『あそこに住みにくる人々に、ビザは発給しない』。1981年~2003年にマレーシアの首相を務めたマハティール氏は、政府側の姿勢についてこう説明した。『マレーシア人ではなく外国人のために造られたものだからだ。マレーシア人のほとんどは、マンションを買うことができない』と指摘してきた」

     

    マハティール氏は、マレーシア人が買えないような高級マンションを作っても、マレーシアの利益にならないと言っている。この点の指摘は重要だ。「一帯一路」計画も棚上げさせたのは、マレーシアの利益にならないからだ。中国は、各国に「一帯一路」計画を強引に進めさせ、債務漬けにしている。それは、相手国の利益にならず、中国の利益を優先する結果だ。マハティール首相は、中国の自己本位を見抜いて、「ノー」と拒否しているのだろう。まさに「憂国の士」だ。

     

     

     

     


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    中国は、南シナ海で違法に占拠している島嶼を埋め立て軍事基地化している。ここへ、核兵器配置計画を進めている、とフィリピン国防相が記者会見で明らかにした。中国は、島嶼占拠の上に、核兵器配置という異常な行動に出ているのだ。

     

    こういう事態を受けて世界は、どのように対応するのか。

     

    中国の穏健派では、米中貿易戦争の深刻化を受けて、この問題が南シナ海や台湾、北朝鮮問題へと波及して、米中が冷静時代へ突入するのでないかと危惧している(『ブルームバーグ』8月28日付、「『新たな冷戦』に中国恐々、米の戦略が台湾や南シナ海への波及警戒」)。中国は、こういう外交的なリスクが次々と高まりかねない行動を取っているからだ。習近平氏の国粋主義がもたらすあらたな危機の発生であろう。

     

    『大紀元』(8月28日付)は、「フィリピン国防省、中国は南シナ海に核兵器配備と計画」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「フィリピン国防総省は、南シナ海で中国がサンゴ礁などを拡張工事し軍事拠点化していることについて、『核兵器の配備計画があることは間違いないだろう」と述べた。デルフィン・ロレンザーナ国防相は827日の定例記者会見で、同国が西フィリピン海と呼ぶ南シナ海での領土紛争は、中国と外交的な手段で議論されるべきだと述べた。『私たちは外交的な議論を望んでおり、核兵器配備に反対している。我々は核兵器を係争地域に運ばないし、攻撃計画もない』ロレンザーナ国防相は述べた」

     

    中国が占拠している島嶼は、フィリピン領である。明らかに他国領土を侵略して、核兵器配置とは許されざる行為である。親中派とされる人たちは、この暴挙を中止させる義務を負っているはずだ。反対行動に立ち上がるべきだろう。

     

    (2)「米国防総省は、連邦議会の年次報告書で、中国政府と中国軍は『海上浮遊型原子力発電所」を開発中で、南シナ海での島嶼部に電力供給する計画を進めていると記している。国有の中国船舶重工集団(CSIC)の技術者である張乃亮氏は、昨年10月の国際会議で同発電所について『2020年よりかなり前に準備が整う』と説明した」

     

    米国防省は、中国政府と中国軍は『海上浮遊型原子力発電所」を開発中で、南シナ海での島嶼部に電力供給計画を把握して。米国は、この施設が完成する前に何らかの手を打って止めるのでないか。そうなると、米中貿易戦争と南シナ海問題が、同じ脈絡の中で進行となり、世界的に緊張場面が予想される。米国は、米中貿易戦争で中国経済を徹底的に痛めつけ、習氏を追い詰める戦略をとる可能性が出てきたように思われる。

     


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    中露関係は、一体化されているように見えるが、それは表面上にすぎない。ユーラシア大陸で、「両雄並び立たず」の喩え通り、ロシアが中国の経済的な膨張を警戒しているからだ。ロシア政府は、次世代通信機「5G」で中国通信機メーカーのファーゥエイ・ZTEの製品導入を拒否する方針が伝えられている。ロシアの中国警戒の一端だ。

     

    『大紀元』(8月28日付)は、「露、ファーウェイ・ZTEの輸入規制を検討。米豪に続き」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「ロシア政府は、米国、オーストラリアに続き、問題視されている中国通信企業の華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)の通信設備に対する輸入規制を検討している。米『ラジオ・フリー・アジア』(23日付)によると、露紙『コメルサント(Коммерсантъ)』(20日付)は、政府担当者の話を引用し、同国の通信設備メーカー数社と業界関係者から、ファーウェイとZTEを含む外国通信設備の輸入禁止を提案されたと報じた」

     

    ロシア政府は、中国通信企業のファーウェイとZTEの5G製品の輸入規制を検討している。自国の情報が中国へ筒抜けになるリスクの回避である。中国製通信機には、秘かに情報を北京へ送る機能が仕掛けられている、として警戒されている。すでに、米英豪に続き日本政府も導入拒否を検討中と伝えられている。ロシアも、この「拒否戦列」に加われば、中国製品市場は大きく狭められる。

     

    (2)「『コメルサント』の報道では、中国勢はロシア通信設備市場の主要な供給源だと示された。同国通信業界関係者の話によると、2017年ロシア通信設備市場の総規模は2500から3000億ロブールに達したが、ロシア通信企業が占める市場シェアがそのうちの6%から8%(約150から240億ルブール)にとどまった。ロシア通信企業の実際の生産能力は市場の8割以上をカバーできるにもかかわらず、現状ではファーウェイとZTEなどの外国勢が市場の大半を占めているという」

     

    ロシアでは、中国製通信機が圧倒的なシェアを占めているが、後のパラグラフにあるように、正当な競争で勝ち得たシェアではなさそうだ。不正競争の結果とされている。ロシア通信機メーカーでも、ロシア市場の8割以上をカバーできる能力があるという。

     

    (3)「露ニュースサイト『Akket』(20日付)は、ロシア通信業界が、中国のファーウェイやZTE、スマートフォンメーカーの小米(Xiaomi)などが様々な手法で関税や付加価値税の賦課を回避し、露企業に不公平な競争環境を強いたと批判した、と報道した。『

    コメルサント』によると、メドヴェージェフ首相が通信業界の提言を財務省や産業貿易省など各政府機関に配布し、審議・調査するよう要求した」

     

    メドヴェージェフ首相は、ロシア通信業界の提言を財務省や産業貿易省など、各政府機関に配布して審議・調査するように要求したという。話がここまで進んでくると、中国製通信機の「5G」導入は困難であろう。

     

    ロシアが中国を警戒するのは、中国の「一帯一路」である。ロシアの裏庭に当る中央アジアへ進出しており、着々と政治的な影響力を高めている。専門家は、中国の中央アジアにおける影響力拡大は、ロシアの地域的利益を真剣に脅やかすと考えている。今回の「5G」拒否も、この流れの一環であろう。「一帯一路」は、中国の命運に負の影響を与え始めたことは確実である。領土拡張を狙う習近平の「国粋主義」が、各国で壁に突き当たってきたと言えそうだ。


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    中国が、最も恐れるのは資本流出である。外貨準備高3兆1000億ドル台を取り崩すことが、中国の国威を傷つけると考えているからだ。理屈の上では、そのようなことはないのだが、外貨準備高を「見せ金」に使う中国政府は深刻に受け止めている。

     

    その忌み嫌う資本流出につながりかねない現象が起こっている。短期金利で中国が米国の金利を下回ることが起こっているからだ。市場関係者は、この動きに注目している。

     

    『ブルームバーグ』(8月28日付)は、「中国から資本流出のリスク 米中短期金利が逆転」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国の金利が米国より低くなることはめったにない。だが7月と8月にそれが起きた。中国当局が景気を支えようと、金融緩和的措置を講じた結果、起こったものだ。世界1、2位の経済大国の短期金利が逆転した」

     

    米国は金利引き上げ、中国が市場金利を引下げて景気下支えを図っている。この米中による政策意図の逆転が、中国からの資本流出につながる前兆である。資本流出は、中国経済の根幹を揺るがす「大問題」へ発展する。中国の投資ファンドすら中国株に厳戒態勢だ。警戒すべきであろう。

     

    (2)「中国の翌日物金利は7月、米フェデラルファンド(FF)金利誘導目標の上限を下回った。この現象は少なくとも2015年以来のこと。中国が、一連の景気刺激策を打ち出す中でおこり、8月に入ってもそうした状況にある。オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)の曲天石エコノミスト(上海在勤)は、米中の短期金利逆転は大きなリスクをはらむと分析する。中国の資本動向における最近の安定を打ち砕く可能性もあるとみている」

     

    米中の短期金利逆転は、滅多に起こらない現象である。それが、7月、8月と続いている。これは人民元相場の安定を突き崩す。中国当局は、急に人民元高へと誘導を始めた。米中金利逆転に警戒し始めた結果とも読める。

     

    (3)「前出の曲天石氏は、米中間の金利逆転が『投資家がドル資産の保有を望む一方で、企業は債務を人民元建てで保有したいと考えることを意味し、資本流出につながる』と述べ、『中国人民銀行(中央銀行)は比較的短期間ならこうした逆転現象を容認することができるが、資本流出を招くため長期間は無理だ』と指摘した。華宝信託の聶文エコノミスト(上海在勤)は『中国が直面しているより大きな問題はどのようにして加速しつつある経済成長鈍化ペースに歯止めをかけるかだ。予想以上に景気減速が進めば人民銀は利下げさえも検討するかもしれない。企業の資金調達コストがはっきりと下がるまで、低水準の借り入れコストがかなり長く続くだろう』と話した」

     

    専門家は、金利逆転現象に警戒している。投資家はドル資産の保有を望み、中国企業が債務を人民元建てで保有したい意向の表れと読む。債務を人民元建てにすれば、返済時にドル高の影響を受けないからだ。これらを総合すれば、ドル高・人民元安を前提にした行動である。この積み重ねが限界に達すれば、一挙に「ドル流出・人民元暴落」へつながる。「蟻の一穴堤を崩す」の喩えが身に沁みるのだ。


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    トランプ大統領の大型減税は、レーガン政権が実施した1986年以来、約30年ぶりの抜本改革となった。これによって、消費面から米国経済を支え、米中貿易戦争を乗切る体制が確立した。

     

    具体的な内容は、次のようなものだ。

     

    企業の税負担が10年間で6500億ドル(約73兆円)減り、個人は1兆ドルを超える。企業や個人を潤して活力を高め、企業の投資を呼び込む。米国を豊かにする好循環をつくるというのだ。この段階で、米中が貿易戦争へ突入する。中国は、不動産バブルによる過剰債務が、企業と家計を襲っている。不況抵抗力は極端に低下した。片や、米国はトランプ減税がうなりを上げて始動し始めた。中国に歩があるとは思えない。習氏は玉砕覚悟だろうか。

     

    次に掲げる記事は最近、米国の家計貯蓄率調査において、これまでの常識を覆す結果が出てきたことを報じたもの。これによって、「米国経済強し」という印象を一層、高めるのだ。米国家計が、浪費好きというこれまでのメ-ジから一変し、家計に堅実性が戻って来た。また、「資産効果」と言って、株価が上昇すれば個人消費が増えて、貯蓄率が下がるという仮説が否定された意味も大きい。米国家計が、プロテスタント的なものに変化した点は、今後の米国経済を見る上で大きな要因となろう。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月21日付)は、」米国経済、家計貯蓄が意外な防波堤に」と題する記事を掲載した。

     

    (4)「米国経済が直近2回のリセッション(景気後退)に陥る前、家計は無防備だった。数年にわたり株式や持ち家など資産価値の上昇が続き、雇用見通しが改善する中、貯蓄はあまり必要ないと消費者は考えていた。そのため2001年と07年からの2回のリセッション時に失業率が上がり、資産価値が下がると、消費者は支出を厳しく引き締め、経済は収縮した。数週間前まで、一部のエコノミストは歴史が繰り返されることを警戒していた」

     

    これまでの「浪費好き米国家計」のイメージが変わった。具体的には、次のパラグラフで指摘されているが、堅実型に変わったのだ。そのきっかけが、2001年と07年のリセッションで塗炭の苦しみを味わい、貯蓄を取り崩してまでの消費を控えるようになった。これは、地味ながら底堅い個人消費の流れをつくっていく期待を持たせる。

     

    (5)「商務省経済分析局(BEA)が7月発表した貯蓄データの改定値で、家計が数年にわたり、はるかに多くの貯蓄をため込んでいたことが分かった。米国の世帯は、以前考えられていたよりはるかに多くを貯蓄に回しているようだ。今年1~3月期だけをとって見ても、BEAは個人貯蓄率の推計を従来の3.3%から7.2%へと倍以上に引き上げた。この数字は1990年代の平均貯蓄率である6.4%を上回る。直近の底である05年の2.5%に比べると3倍近い。1~3月期分の上方修正だけでも、年率にすると貯蓄が6135億ドル(約67兆7400億円)増えたことになる。今回の個人貯蓄率の見直しは少なくとも2002年以来の大幅修正となった」

     

    家計貯蓄データの見直しが行なわれた。その結果、家計が予想よりもはるかに多くの貯蓄をしていたことが判明した。今年1~3月期だけ見ても、BEAは個人貯蓄率の推計を従来の3.3%から7.2%へと倍以上に引き上げた。これだけの貯蓄率を維持し、生活をエンジョイする中で米国経済の好循環が続いているのだ。

     

    (6)「エコノミストらは、07〜09年のリセッションで痛手を負った消費者が貯蓄を決意した可能性が高いとみている。リセッションは数百万人の失業を招き、住宅の価値は決して下がらないという信念を覆した。この仮説を支えるのは、失業率が半分に下がり、株価が跳ね上がったにもかかわらず、修正された貯蓄率が13年からほぼ変わっていないという事実だ。この点について、JPモルガンの首席米国エコノミスト、マイケル・フェローリ氏は「マクロ経済のより確かな規則だと考えられてきた」資産効果に逆行すると指摘する。家計の資産が増えると消費が増え、貯蓄は減るというのが資産効果の理論だ」

     

    07〜09年のリセッションで痛手を負った消費者が、貯蓄の重要性を決意した可能性が高いと見られる。人間一度、痛い目に遭えば、二度とそれを繰り返したくない気持ちになる。今後とも、無駄を省きながら堅実な消費生活を続ける可能性が強い。ここへ、さらにトランプ大型減税で10年間に1兆ドル以上の減税が寄与する。米国経済が、個人消費面からも支えられる構造が強化されたと言えよう。

     


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