勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 中国経済ニュース時評

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    中国は、武漢でロックダウンにより新型コロナウイルスを封じ込めて以来、この戦法を得意としている。だが、自ら築いたこの「成功方程式」に、今や手足を縛られている。「ウィズコロナ」へ切り変えられないからだ。ロックダウンの矛楯は、日に日に明らかになっているが、「効かない」中国製ワクチンを認める訳にもいかず、「閉じ籠もり」戦術でやり過ごすしかない。

     

    海外では、中国のロックダウンによって供給不安が高まり、これがインフレを煽る危険性さえ指摘されている。国に酔っては、意に沿わぬ金融引締めも発動せざるを得ず、「コロナ+インフレ」と中国への不満は高まるばかりである。

     

    『大紀元』(1月14日付)は、「中国のゼロコロナ対策、限界に近づくー独専門家」と題する記事を掲載した。

     

    新型コロナウイルスが、2年前に中国武漢で発生して以来、中国は「ゼロコロナ」対策を実施してきた。感染力の強いオミクロン株が急速に広まるにつれ、都市封鎖という同対策は限界に近づいていると専門家は予想している。

     

    (1)「ドイツの著名なウイルス学者、アレクサンダー・ケクレ氏は1月11日の国内ラジオ番組で、多くの国際的な専門家の共通の認識として、オミクロン株のまん延により、中国政府の「ゼロコロナ」対策は経済と社会に深刻なダメージをもたらすが、解決策にならないと述べた。「中国国民だけではなく、世界経済に関係する問題だ(中略)、すでに半導体、自動車産業などさまざまな業界のサプライチェーンに問題を起こしている」と同氏は論説した」

     

    オミクロン株は、感染力が極めて強くロックダウの意味がなくなる。中国は、世界のサプライチェーンの中核に立つので、生産がストップするのは世界経済へ大きな影響を及ぼす。責任は重大なのだ。習近平氏が、自ら第3期国家主席就任の条件整備目的でロックダウンするとは、余りにも本末転倒と言うべきであろう。

     


    (2)「いまも都市封鎖が続いている西安市では、食料品の供給が不足し、妊婦や心疾患の患者が診療を拒否されるなどの問題が発生し、市民の不満が高まっている。米政治リスクの調査会社ユーラシア・グループは3日に発表した2022年世界の「10大リスク」に「No zero Covid(ゼロコロナ政策の失敗)」を1位に挙げた。中国がウイルスの変異型を完全に封じ込められず、経済の混乱が世界に広がる可能性を指摘した。「より深刻な経済的ダメージ、より広範な国家介入、より高まる国民の不満など問題は噴出する」と報告書は記した」

     

    ユーラシア・グループは、中国の「ゼロコロナ」対策を、22年の世界10大リスクの1位に選んだほどである。具体的には、経済的損害、国民生活への国家介入、それに伴う国民の不満を高めて政治的不安要因になるとしている。

     


    (3)「シンガポール国立大学東アジア研究所上級研究員の林大偉氏は、独国際公共放送「ドイチェ・ヴェレ」の取材に対し、中国の防疫対策は経済への影響を第一優先順位にしたことがなかったと述べた。香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」は野村證券の香港駐在チーフ中国エコノミスト陸挺氏の見解を報じた。同氏は2021年12月発表のレポートで、ゼロコロナ対策のコストは増大になる一方で、中国が世界のサービスや貿易から排除されるリスクが高まると予想したという」

     

    下線部は、重要な指摘である。これからもパンデミックはしばしば起こりうると言われている。特に、中国起源が予想されている。自然破壊が最も進んでいることや、野生動物を食する「奇習」の存在である。中国人は、いわゆる「ゲテモノ食い」と指摘されている。こういう民族が地球上に存在する以上、西側諸国はパンデミックへ自衛策を取らざるを得ないであろう。

     


    (4)「
    ゼロコロナ対策は、サプライチェーンの国外シフトを加速させ、外需に影響を与える。内需の牽引役である不動産市場は債務危機や、新型コロナによる消費市場への影響を受けている今、当局は市場の信頼を回復しつつ、ゼロコロナ対策をいかに継続するかという難題を抱えている。世論の反対も高まっている。政府の防疫政策に疑問や批判を呈するネット書き込みは増えている。国際人権NGOのヒューマン・ライツ・ウォッチの中国上級研究員である王亜秋氏はドイチェ・ヴェレに対して、「ネットで発言すると処罰を受けかねないため、ほとんどの中国人は黙っている」と市民の間に不満が溜まっていることを指摘した」

     

    中国は、唯我独尊の民族である。他国との協調など考えたこともないような連続である。儒教倫理は、縦型の支配構図の社会であるから、横型の話合い・協調という民主主義を受入れ入れる余地は存在しない。そういう国家が,GDP世界2位になってしまったのである。世界は、この現実といかに向き合うか。また、いかにそのデメリットを最低限に抑えるか、という難問に突き当たっている。 


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    中国の住宅不況は、地方政府の土地売却収入減に直結する。昨年、耳目を集めた不動産開発大手、中国恒大の経営危機が不動バブルに水をかけた。こうして、昨年の地価下落は前年比10%になった。格付け会社S&Pの予測によれば、今年はさらに20%下落。来年も同様に5%の値下がりを予告するという深刻な事態だ。

     

    これでは、地方政府の財源難は確実である。土地売却益は、中央政府・地方政府の財源で平均して約5割も占めている。それだけに、急激な土地販売益の落込みは「政府機能」を奪う懸念を強めている。

     


    『日本経済新聞 電子版』(1月13日付)は、「中国地方都市、新築住宅購入へ助成 減税や消費券配布」と題する記事を掲載した。

     

    中国の地方都市が、新築マンションの購入支援に乗りだした。取得税の軽減や家電などの購入補助券の配布で需要を掘り起こす。政府の不動産規制などでマンションの在庫が54カ月ぶりの水準に膨らんだため。取引を活性化させ、地方財政が依存するマンション用地の売却収入の落ち込みを抑えたい考えだ。

     

    (1)「住宅購入者だけでなく販売実績が優れた不動産開発会社にも「消費券」を配ります――。南部の広西チワン族自治区桂林市は2021年12月、こんなマンション販売刺激策を発表した。同年12月の新築物件の販売実績が多い上位3社に対し、最大30万元(約540万円)分の消費券を付与。住宅購入者の消費券はマンション取引額の1%分だ。消費券は22年3月末までに、市内で家電や自動車を買う際に使える。不動産開発会社の販売努力を財政で促し、市場を下支えする。浙江省金華市の一部地域でも、221月から最大3万元の住宅購入補助券の支給を始めた」

     

    住宅不況で、一番困っているのは地方政府であろう。土地が売却できなければ、財源難に陥る。「土地本位制」経済のカードが、一挙に裏返しになったのである。これまでの数々の無駄な投資を行なえた財源が、地価下落でさっぱりと消え去る。「土地蜃気楼」が終わったのだ。

     

    (2)「不動産シンクタンクの易居不動産研究院によると、主要100都市の新築マンションの在庫面積は21年11月末に5億2000万平方メートルとなり、16年7月以来の高水準に達した。特に、省都クラスより小規模の地方都市は前年同月比7%増えた。北京市や上海市などの1級都市が3%、省都クラスの2級都市が1%それぞれ減ったのと対照的だ。習指導部の方針を受け、地方政府は積極的な販売促進策を打ち出しにくかった。転機となったのは共産党が21年12月に開いた中央政治局会議と中央経済工作会議だ。「マンション市場が合理的な住宅購入の需要を満たすことを支持する」と強調。投機の抑制は続ける一方、居住目的の実需まで抑え込むことがないよう規制を緩める姿勢を示した」

     

    主要100都市の新築マンションの在庫面積は、21年11月末に16年7月以来の高水準に達した。床面積で5億2000万平方メートルというが、1戸100平米とすれば、520万戸となろう。仮に、1戸50平米とすれば1000万戸の在庫となるのか。14億の人口を擁する中国と言えど、簡単に捌ける在庫ではなさそうだ。

     

    (3)「地方政府が不動産市場のてこ入れに動く背景には、販売不振が地方財政に打撃を与えることへの懸念もある。中国の土地は国有制で、地方政府の歳入は、土地の使用権を不動産開発会社に売って得る収入に依存する。20年の売却収入は中央と地方の税収総額の5割以上に相当した。中国財政省によると、21年1~11月の売却収入は前年同期比4%増にとどまり、20年までの2ケタ増から失速した。マンションの販売減少や価格下落で「仕入れ」にあたる土地の価格にも下押し圧力がかかった。米格付け会社S&Pグローバルは売却収入が22年は前年比20%、23年は同5%それぞれ減ると予測する」

     

    S&Pの予測によれば、土地売却収入は今年が20%減、来年はさらに5%減の予想である。これが現実化すれば、地方政府は財源難で運営が著しく制約される。一大事である。

     


    (4)「気がかりなのは、売却収入の実態が統計以上に悪化している恐れもあることだ。規制強化で不動産開発会社が資金不足になり、入札にかけても買い手が付かない土地が目立ち、融資平台と呼ぶ地方政府傘下の投資会社が購入する例が増えているためだ。中国メディアによると、江蘇省無錫市が昨秋に実施した入札では、買い手がついた20区画のうち17区画は融資平台だった。同省南京市でも6割近い土地を融資平台が落札した。融資平台が地方政府の歳入不足を補う、つなぎ資金を提供した形だ」

     

    融資平台は、地方政府の「隠れ蓑」になっている。資金調達機能をもった地方政府の別働隊である。土地が売却できなければ、この融資平台に買い取らせて資金繰りを付けるという最悪ケースが増えている。中央政府は、融資平台を赤字財政の温床として警戒してきた。だが、現実にはこうやって整理もされず生き続けている。新たな負債隠しの手段として悪用されるであろう。この融資平台の債務は、最終的に地方政府が返済負担になる。

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    低能ワクチンが首締める

    コロナ・バブルが命取り

    「新発展段階」論で煙幕

    暴走経済に最後の断下る

     

    中国武漢が、新型コロナウイルスの発症地であることは動かせない事実である。中国は、この事実を覆そうとして、WHO(世界保健機関)調査団へも非協力姿勢を貫いている。習近平氏の独裁政権にとって、中国が発祥地であることは認めがたいことなのだろう。

     

    この見栄が、中国を窮地に追い込んでいる。中国が、ワクチンを開発したとして国威の発揚を狙ったものの「効かないワクチン」の異名を取る始末である。習氏は、中国製ワクチンが世界最高と喧伝したので、国内で中国製ワクチンに代わって欧米製ワクチンを接種できないジレンマに陥っている。

     

    低能ワクチンが首締める

    習氏は窮余の一策として、昨年のG20で提案をした。中国製ワクチンと欧米製ワクチンの相互承認を呼びかけたのだ。これが実現すれば、中国で欧米製ワクチンを接種できる名目がたつ。だが、英米はこの提案を黙殺した。英米が、中国製ワクチンを承認しないからだ。

     

    中国製ワクチンは、品質がバラバラである。最終治験結果を公表することもなかった。断片的に伝わる治験効果は50%台とされている。英米ワクチンの95%から見れば雲泥の差である。英米が、中国製ワクチンを歯牙にも掛けないのは当然なのだ。

     

    中国は、「効かないワクチン」を抱えて無防備状態である。そこで、コロナ対策として編み出されたのが「ゼロコロナ」である。つまり、少数者でも感染者が出たならば、その地域一帯を封鎖する「ロックダウン」方式に打って出た。武漢市で効果を上げたとして以後、このロックダウンが中国の専売特許になっている。

     


    「ロックダウン」された住民には、死活問題である。一切の外出が禁じられるので、経済活動が厳禁となるのだ。これに伴う損失は、個人レベルの負担とされている。同時にこれが、個人消費の落込みとなって現れる。中国は、不動産バブル崩壊で経済に大きな負担が掛かかるのだ。そのうえに、この消費減退という二重の負担によって、中国経済は曲がり角に立たされている。こうして、今年のGDP成長率は4%台前半への落込みが、予想されるに至った。中国経済の敗北である。もっとはっきり言えば、習近平氏の独断が負けたのだ。

     

    中国の天津市は1月12日、新型コロナウイルスのオミクロン変異株の感染拡大抑制策として、1400万人の市民を対象に新たな大規模検査を開始した。2月4日から北京冬季五輪が開催される。天津から北京まで、高速鉄道で30分の距離である。天津のコロナが、北京へ飛び火するのは時間の問題であろう。天津でも、防疫に失敗すれば責任者の懲戒処分が待っている。コロナ防疫には、責任者の「首が懸かっている」のだ。

     

    当局のデータによると、天津市(人口1400万人)は11日に確認された有症状の新型コロナ国内感染者が33人だった。前日の10人から増加した。同市は12日、2回目の大規模検査に応じるため、企業やその他機関の従業員に半日休暇を命じ、自宅待機を要請した。住民の市内での移動が制限されているほか、町外へ出ることも困難になっている。事実上の、ロックダウン開始の「予鈴」である。すでに、西安市(人口1300万人)がロックダウンになっている。

     


    仮に、天津市も同様の措置を取られれば、コロナのオミクロン株の感染力が並外れて大きいことから判断して今後、中国全土がロックダウンされる懸念が強まる。中国経済が全面的に麻痺する危険性を持ち始めた。

     

    中国東部の港湾都市である天津。中部の西安、南部のテクノロジー拠点・深圳といった複数の都市は昨年12月下旬以降、厳しいコロナ対策が導入されている。コンテナ取扱量で世界第三位の寧波・舟山港では、周辺地域で二十数件の新規感染が確認された結果、トラック輸送や倉庫作業に制限が課されており、目詰まりがさらに悪化する恐れがあると指摘されている。

     

    コロナとバブルが命取り

    中国当局は昨年、武漢市でコロナ封じ込めに成功したと見ている。この「成功物語」に酔って、一段と厳格なロックダウンへ踏み出す公算が大きい。今回は、昨年以上の供給困難に陥るかもしれないと指摘が出ている。『ウォール・ストリート・ジャーナル』(1月12日付)は、次のような厳しい見方を報じている。

     


    「複数のエコノミストは、中国が封じ込め対策を一段と強化するとの見方を示しており、中には2020年4月以来となる全国的なロックダウンの実施を予想する声すらある。ゴールドマン・サックスは11日、足元のコロナ感染動向を踏まえ、中国の2022年経済成長率見通しを従来の4.8%から4.3%に下方修正した」

     

    同様の厳しい予測が投資銀行「ノムラ」からも出ている。野村證券は2008年、倒産したリーマンの大部分を引継ぎ、今や世界の「ノムラ」として著名な存在だ。厳しい経済予測で評価を高めており、昨年12月に今年の中国経済が4.3%成長と予測した。ノムラはまた、米国の成長率見通しで、中国よりも0.3%ポイント高い4.6%を予測した。(つづく)


     

     

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    中国は、対米外交の悪化と経済不振で苦境に立っている。この中国で最近、前駐米大使の崔天凱が、「戦狼外交」に対して警鐘を鳴らしたという。これまで、中国政府に関して批判がましい発言をすべて禁じられてきた状況からみると、今回の崔発言は内容とともに、その背景に関心が集まっている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(1月12日付)は、「『味方にも損害』習近平寵臣 対米消耗戦に覚悟の諫言」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙編集委員の中沢克二氏である。

    中国への帰任後、半年近く姿をくらましていた前駐米大使の崔天凱が突如、公の場に現れた。その目的は、米国の戦略的で徹底した抑え込み策に中国が十分、対応できていない危うい現状に警鐘を鳴らすことだった。とりわけ目を引くのは、強硬一辺倒の「戦狼外交」は米側の挑発に踊らされている面もあるという示唆だ。「冷静さを欠く対応が味方にもたらす損害」にまで触れた勇気ある発言は今、中国の政界、外交関係者の間で大きな話題になっている。

     


    (1)「前駐米大使の崔天凱は、次のよう発言した。

    『決して、私たち自身の不注意、怠惰、無能によって味方に損害を与えてはならない』

    『中国の対米政策で重要なカギは“対等な対抗措置による反撃”ではない。中国人の利益になる反撃を考えることだ』

    『原則として、準備のない戦い、現状把握なしのむちゃな戦い、腹立ちまぎれの戦い、消耗戦をしてはいけない』」

     

    仮に3箇条と呼ぶとすれば、中国外交の奢り昂ぶりに対する、内部からの痛切な批判である。威張り散らしてきた中国外交が、内部から「一刺し」された痛快さを覚えるほど。中国が、対EU関係で急速に悪化しているのは、文字通り「3箇条」によるものだ。一昨年末、7年越しにまとめた中国とEUの投資協定は、昨年早々に始まった新疆ウイグル族弾圧をめぐる中国とEUの対立で、「売り言葉に買い言葉」という感情的にヒートアップ。EU側は、怒りの余り協定の批准審議を棚上げしてしまった。中国外交が,猛省すべき事柄だ。

     


    (2)「発言内容をじっくり分析すれば、最高指導者におもねるほかの官僚らとの違いは明らかだ。これは、2021年12月20日、中国外務省傘下の政策提言機関などが主催した重要な討論会での公式発言だ。現在の対米強硬路線を推し進めてきたのは、外交トップである共産党政治局委員の楊潔篪(ヤン・ジエチー)、そして国務委員兼外相の王毅(ワン・イー)らだ。とはいえ、全ての重要政策を決めているのは習近平である。つまり、崔天凱は対米外交を担った当事者ならではの自省に、習近平路線への批判をにじませた。「自身の無能によって味方に損害を与えるな」というのは、まさに君主をいさめる忠告を意味する諫言(かんげん)でもある」

     

    崔氏は、中国外交の行き詰まりを肌で感じているに違いない。楊潔篪と王毅が、調子に乗って、習氏の意向を忖度して暴走した面があるからだ。特に、王外相の傲慢さは常軌を逸している。外交官でなく、暴力団のようなことを口にするからだ。私の最も嫌いな外交官タイプである。

     

    (3)「もっと具体的なのは、形だけにこだわった「対等な対抗措置」への強い疑義だ。これはバイデン米政権による様々な対中制裁に対し、メンツを最優先して全く同じ形の対米制裁を打ち出す中国外交の行動様式を指す。これが実際のところ中国国民の利益になっていないと言い切っている。そして、重要なのはアップル、インテルなどのハイテク企業を米国に引き戻そうとする米政府のワナに陥らず、米企業が中国に残って発展する環境を整えることだと訴えた」

     

    このパラグラフを読むと、中国は、相当に参っている感じがする。中国外交のまともな相手は、ロシアぐらいしかいないのだ。これでは、中国外交の展開は不可能である。

     

    (4)「崔天凱は新中国(中華人民共和国)の歴史上、最も長い8年間も駐米大使を務めた米国通で、駐日大使も経験している。オバマ、トランプ、バイデンという米大統領3代の対中政策の変化を現場で観察してきた。注目したいのは、崔天凱は習近平が最も信頼する寵臣(ちょうしん)だったことだ」

     

    崔氏は、習近平氏の厚い信任があったので8年間もの長期にわたり、駐米大使を務められたとされている。それだけに、習氏に対して,言いにくいことも言える関係とされている。

     


    (5)「11年8月、当時、米副大統領だったバイデンが中国を訪れた。北京では国家副主席だった習と会談して3日間滞在。その後、四川省に足を延ばす計6日間のリラックスした旅だった。習はバイデンのカウンターパートとして長旅に同行した。その際、事実上の通訳として付き添ったのが、外務次官だった崔天凱だ。経緯を知る関係者は「崔天凱への信頼はこの長旅で強いものになり、(習政権時代の)異例の長期間、ワシントンで対米外交を担う端緒となった」と証言する」

     

    バイデン・習近平両氏が、中国における長旅の通訳をしたのは崔氏という。この旅行で、崔氏は習氏の信任を得たという。意外と、

     

    (6)「目下の消耗戦とは何なのか。そこにはバイデン政権が英国、日本、オーストラリア、インドなどの同盟国や中国の周辺国との関係強化で築いた中国包囲網への強い警戒感がある。中国包囲網は技術覇権争い、サプライチェーン(供給網)の分断と絡み、中長期では中国経済の足かせになりかねない。外交と経済は密接にリンクしている。「時と勢いは我々の側にある」と訴えてきた習近平はなお強気だが、バイデン政権の対中戦略が着実に効いてきているのも事実だ。崔天凱の覚悟の諫言はその証左でもある」

     

    米国は、「クアッド」(日米豪印)を中国対峙の最前線にしている。また、「AUKUS」(米英豪)という軍事同盟を結んで、中国へ軍事的に対峙する。いずれも中国の「戦狼外交」がきっかけを提供している。中国外交の失敗だ。崔氏の発言は、習氏と打合せ済で中国外交路線を変える兆しかも知れない。

     


    (7)「これで中国の方針が変わるかは微妙だ。とはいえ、節度さえ守れば、そうした発言が許され、広く流布される雰囲気が出てきたのは、ちょっとした変化である。これは急減速が大問題になっている習近平式の経済政策に関する議論についてもいえる。裏を返せば、中国の外交、経済が置かれた現状はそれほど厳しいのだ。22年秋の共産党大会でトップとして異例の3期目入りを目指す習近平にとって、最大の課題は困難な対米関係と減速する中国の国内経済だ。これらのコントロールにてこずれば、闘いのヤマ場に向けた政局運営が一段と難しくなる」

     

    下線部のように、中国は外交・経済の両面で追詰められている。反省があって当然だが、「覆水盆に返らず」もまた真実だ。取り返しのつかないことをしでかしたのである。


    文大統領は、2月4日からの北京冬季五輪出席について、大統領府が「検討していない」と答えた。つまり、出席しないという意味であろう。これまで、大統領府は「外交的ボイコットについて検討していない」であった。同じ「検討していない」でも、主語が変わったのである。

     

    米国バイデン大統領の外交ボイコット発言以来、同盟国の英国、豪州、カナダがボイコット発言。ニュージーランドは、「コロナを理由に欠席」すると公表した。日本は、「政府関係者は出席しない。日本オリンピック委員会会長らが出席」と発表した。外交的ボイコットと言わないだけである。韓国は当時、「外交的ボイコットを検討していない」と出席に含みを持たせていたのだ。

     

    中国外交部は、この韓国発言を歓迎して「韓国大統領が出席する」と受取ったのである。だが、韓国は土壇場で「大統領の出席を検討していない」に変わったことで、内心、怒っているに違いない。

     

    『聯合ニュース』(1月12日付)は、「文大統領の北京五輪出席『検討していない』韓国大統領府  」と題する記事を掲載した。

     

    韓国青瓦台(大統領府)の関係者は12日、来月開催される北京冬季五輪への文在寅(ムン・ジェイン)大統領の出席を巡り、議論がどのように進んでいるのかを問う記者団の質問に対し、「検討していない」と応じた。

    (1)「同関係者は、「わが政府は北京冬季五輪が2018年の平昌、2021年の東京と続くリレー五輪として北東アジアと世界の平和・繁栄および南北関係に寄与することを希望するという基本的な立場を持っている」と述べた。その一方で文大統領の出席は検討していないとし、「慣例を参考にして適切な代表団の派遣を検討中」と説明した」

     

    下線のように、文大統領は出席せず、代表団を送るとしている。日本の発表と同じスタイルの踏襲である。

     


    (2)「今月末にオンライン形式で韓中首脳会談が開催されるとの見方については、「決定した事項はないが首脳間の交流の重要性を勘案し、双方が意思疎通している」と説明した。同関係者は、「両国は首脳など各レベルでの交流の重要性を認識している。新型コロナウイルス対策でも意思疎通を強化するべきという認識で一致している」と説明した」 

     

    中韓首脳のオンライン会談は、決定した事項はないとしている。「双方が意思疎通している」と親密さをアピールしている。それほど、親密ならば出席した方が良いのでは、言いたくなるほど。中国への気配りであろう。

     

    文政権は、重大事項を決めるとき必ず,秘かに世論調査をしている。今回の北京冬季五輪への文氏の出席については内密の調査をしたであろう。『中央日報』(21年11月27日付)は、次のように報じた。

     


    (3)「文在寅政権はすでに2019年8月、日本の輸出規制報復に対応して果敢にGSOMIA(軍事情報包括保護協定)終了を決定しながら、世論調査をその根拠に挙げた。当時、青瓦台関係者は『政務的に国民の意思を把握するために青瓦台内部の参考用としてほぼ毎日、世論調査を実施した。国家利益というものは名分も重要で実利も重要であり、国民の自尊感を守ることも重要だ』と述べた」

    この先例から言えば、文氏の北京冬季五輪出席に対する世論の反応を調べている筈だ。その結果は、世論が「ノー」と反応したのであろう。そう推測させる別の世論調査結果がある。

     

    ソウル大学アジア研究所は1月12日、『アジアブリーフ』の最新号に掲載した『2021韓国人のアジア認識アンケート調査結果分析報告書』である。アジア研究所は昨年12月、成人男女1031人を対象に米国、中国、日本、フランス、オーストラリア、ドイツ、タイ、ベトナムなど主要国20カ国に対する好感度を調査した。その結果は、次のようなものだった。『中央日報』(1月12日付)が報じた。


    「回答者の71.6%(複数回答)が、『信頼できる国』の第一位に米国を挙げた。反面、日本は13.3%、中国が6.8%となった。19位と20位である」

     

    日本へは「反日」であるから低位であることが当然。だが、中国は最下位となったのだ。中国は、何かと韓国人の感情を逆なでし、中国文化が韓国文化よりすぐれている、としている。こういう感情的なもつれから、「反中」が高まっているのだ。

     

    文政権は、こういう世論調査結果を見れば、米国へ不義理してまで「北京冬季五輪」へ出席する意味もない、とドライな解釈を下したのであろう。北朝鮮も北京冬季五輪へ不参加を表明している。こうなると、ますます北京へ出かける意味がなくなるのだ。かくして、「文大統領の北京五輪出席は『検討していない』」となったのだろう。これで、モヤモヤに決着がついた。

     

     

     

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