勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 中国経済ニュース時評

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    米中貿易戦争は、新たな段階を迎えている。トランプ米政権が10日、中国からの輸入品2000億ドル(約22兆4000億円)相当を対象とする関税リストを発表した。実施は8月末と見られるが、中国経済にとってはさらに「圧迫材料」が増えている。

     

    こうした劣勢を反映して、中国人民元相場には「売り圧力」が高まっている。1ドル=6.66元(12日19時)であるが、オフショア市場では全く違った様相を呈している。オフショア市場とは、国内市場とは異なり、非居住者が規制を受けない自由市場である。このオフショア市場は国内市場の先導役を果たすので要注意だ。11日、6.7192元となり2015年8月以来の安値を記録した。このことから、国内市場への波及が予想されている。

     

    『ブルームバーグ』(7月12日付)は、「人民元がデッドクロスを形成、2015年切り下げ以来初ーチャート」と題する記事を掲載した。やや専門的だが要約すれば、チャート上で人民元相場は大きく値下がりする兆候を見せているので、注意を呼びかけているもの。

     

    「中国のオフショア人民元相場は11日に2016年1月以来の下落率を記録するとともに、テクニカル的には売りのシグナルとして知られる『デッドクロス』を形成した。人民元・ドルの移動平均線を見ると、50日線が200日線を上から下に抜けていることが確認できる。3年前のショッキングな人民元切り下げ以来の現象だ。JPモルガン・アセット・マネジメントのグローバルストラテジスト、デービッド・レボビッツ氏によると、中国はもう少し元安を容認することはできるが、過度な元の下落は逆効果であり、その場合はある時点で介入することになる、としている」

     

    人民元相場の下落は、中国経済の弱さを裏付けるものだ。中国政府は、人民元安を誘導して輸出テコ入れ策に利用したいところ。この思惑が外れて15年のように歯止めのきかない事態を避けたいというのも本音だ。オフショア市場の動きは、国内市場へ波及していくので推移を見守りたい。

     

    7月12日の上海総合指数の終値は、2837ポイントで、前日比59ポイントの上昇である。当局の相場テコ入れに違いない。12日の『ブルームバーグ・ニュース』では、20年間も運用してきた中国株から撤退したファンド・マネジャーのインタビューが報じられている。それによると、マクロ経済指標に多くの問題を抱える中国株を売却して、タイやベトナムの株式が妙味あると強調。理由は、マクロ経済指標に懸念がないとしている。中国株が売られタイ・ベトナムが買われるとは、アジア経済の主役が交代する印象を与える。時代は変化している。


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    日本の共同通信が、中国の内部資料を入手して報じた。それによると、これまでの中国人民軍の建前であった「国土防衛型任務」を「対外拡張型任務」へ拡大決定した。すでに、中国は国産空母を建艦しており、最終的には7隻体制にすることが報じられてきた。「対外拡張型」は既定事実であろう。文書では、中国共産党政権が米国、日本、ロシアを先例とし、「大国は軍事強国であることが不可欠」と覇権を狙う野心を表している。これまで「平和主義」を標榜してきた中国が、ついに牙を剥き始めたことが明確になった。

     

    中国共産党は、旧ソ連共産党と何ら変わらないことを証明した。習近平という超保守主義者(毛沢東主義者)が、選択した軍拡路線は「中華帝国」の再来である。遅れてきた「帝国主義」というイメージはいかんともし難い。「対外的拡張路線」は、第二次世界大戦までの発想である。21世紀の「大国」は、文化や科学技術の発展をめざす。「ハード」から「ソフト」への展開が共通認識になっている。この中で、中国だけが異端であり、今後の世界を攪乱させる意図が明白である。

     

    『大紀元』(7月11日付)は、「世界覇権を狙う中国、軍改革で国土防衛型から対外拡張型へーリーク文書」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「共同通信が内部資料を入手し、7月3日に報じた。文書は、中国軍の最高機関である中央軍事委員会の政治部門が、習近平主席による『強軍思想』を教える教材として、20182月に内部で配布したものだという。これまで組織改革は、指揮系統の近代化などと説明されてきたが、方針転換していることが、このたびの文書で明確になった。中国軍の拡張が続けば、東シナ海、南シナ海、朝鮮半島、台湾など、日本をはじめとする周辺国との摩擦が強まる可能性がある」

     

    中国共産党の具体的なイメージは、「強軍思想」という軍国主義で彩られていることが判明した。これまで随分と厚化粧して、その本心を捕まれないようにカムフラージュしてきたが、ついに本心を表わした。戦後日本における「中国共産党」支持者は、新中国が反帝国主義で平和希求路線を守ることへの共鳴であった。それが、どうだろう。やっぱり領土拡張を求めるだけの「エセ平和主義」であった。その中国が、「米帝国主義」と一戦交える軍拡を始めるという。ここまで来たら、共産主義の看板を下ろして「中華帝国」を名乗った方がすっきりしよう。

     

    (2)「防衛型から外向型へ転換する理由について、『中国の国益が国境を越え広がるにつれて、緊急にグローバルに国の安全保障を維持する必要がある』としている。また、『強い軍事力は強力な国になるためには必要不可欠であり、米国、ロシア、日本の発展がこれを証明している』と3カ国を先例にした。文書は、『より影響を与えられる状況を作り、危機を抑え、紛争を収め、戦争に勝つ』ために、軍隊の力は米国を上回ることを目指すとある。また冒頭で、軍の組織改革は、軍の最高指導者である習近平主席による『強軍思想』に基づき、中国の特色ある新社会主義に則るべきだとした。さらに、米軍の力を『曲がり道を走る遅い車』と例え、ハイテク兵器や最新兵器により軍事プレゼンスで優位に立てると鼓舞している」

     

    米国は、覇権国家としての役割を果たしている。市場の開放・経済力・軍事力において、世界に貢献する義務がある。ロシア(ソ連)と日本(戦前日本の帝国主義)は、米国のような覇権国家としての資格が欠如し、単なる領土拡張を狙うだけの夜盗にすぎなかった。ロシアも日本も軍備だけに頼る国家ゆえに「自滅」したのだ。中国は、米国のような総合力に優れた覇権国家の資格がないので、酔狂にも自滅型の帝国主義に堕す。中国は、習氏という超保守主議者を国家主席に選んだ不幸を噛みしめることにな

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    トランプ米政権は7月10日、中国からの輸入品2000億ドル(約222000億円)相当を対象とする新たな関税リストを発表した。これを受け中国株が急落している。日本時間15時05分現在、2761ポイント(前日比)マイナス65ポイント、2.3%の下落)になっている。人民元相場も下げた。

     

    米国が、さらに強い姿勢を見せているのは、中国が米国に対して技術窃取への反省姿勢を全く見せないことだ。それだけでなく、米国へ制裁関税をかけるという真っ向勝負に出ている点がトランプ氏をさらに刺激している。

     

    米国は景気が絶好調であり、対中貿易戦争を行なうにはまたとないチャンスと判断していることも疑いない。この「好機」を生かして、中国経済の基盤を揺さぶる戦略であろう。ただ、この「荒業」はいつまでも継続できないことも事実だ。米国の受ける傷が大きくなることを考えれば、来年一杯が限度という指摘が出ている。

     

    『ブルームバーグ』(7月11日付)は、「米政府、22兆円相当対象の対中関税リストを発表」と題する記事を掲載した。

     

    「米通商代表部(USTR)の10日の発表資料によれば、10%の追加関税は一般からの意見公募や公聴会が終わる8月30日以降に発効する可能性がある。同リストの対象品目は衣料品、テレビ部品、冷蔵庫、その他のテクノロジー製品。ただ、携帯電話など注目度が高い品目の一部は除外された。今回の関税が実施されれば、中国からの輸入品の約半分に追加関税が課されることになる。貿易戦争は共和党に加え、米実業界も愚かなことだと批判、エコノミストらは久しぶりに好調となった世界経済に打撃となり得ると警告している。しかしこうした中でもトランプ大統領に姿勢後退の様子は見られない」

     

    米国経済は、絶好調であるので当面、米国が受ける被害は少ない。ただ、世界貿易への悪影響が懸念されることは事実だ。トランプ氏が、中国と「ディール」をするためにあえて強烈な制裁案を発表したとも見られる。中国は、これにどのような反応を見せるのか。その点も注目される。

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    中国経済はふらついている。過剰債務の削減(デレバレッジ)を始めたばかりで体力が墜ちているからだ。肥満体の人間が減量を始めたのと同じことであろう。そこへ、降って湧いたように米中貿易戦争が始まった。中国経済にとっては「泣きっ面に蜂」である。この危機を受けて、上海総合株価指数は1月末の高値以降、約20%の下落を記録した。

     

    ここまで下落したので自律反発の形で、7月10日の終値は2827ポイント。12ポイントほどの上昇だ。だが、これを以て、上海総合株価指数底入れ、反発に転じるとは誰も見ていない。ただ、トランプ砲が鳴らないだけの話で、誰かが「小遣い稼ぎでもやったか」という程度の受け取り方のようだ。

     

    今回の下落局面は、機関投資家がリードしているという。彼らは、投資のプロ集団ゆえに理詰めの投資戦略である。機関投資家は、中国株に対してどのようなイメージを持っているのか。知っておくことが必要であろう。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(7月10日付は、「中国金融市場の動揺、今年は2015年より悪化か」と題して次のような記事を掲載した。

     

    (1)「3年前、上海総合指数は6月からの2カ月間でほぼ半分に下落。ようやく16年に入って底入れしたが、15年半ばにつけた高値水準をいまだに回復していない。人民銀が15年8月に突如2%の元切り下げを実施したことも市場に衝撃を与えた。今年さらに心配なのは、債務増大への中国政府の対策と米国との貿易戦争などだ。投資家は中国経済に潜む根本的な問題を指し示す兆候に理性的に反応しているようだ」

     

    中国株のリード役は交代した。15年が、個人株主の熱狂的な動きに煽られた。今回は、機関投資家が主役だ。それだけに、自らの投資尺度で動いている。投資家は、中国経済の抱える欠陥が過剰債務にあることを知り抜いており、一時的なムードに流されることはなさそう。冷静に分析している。中国当局の「口先介入」に乗せられないことが肝要だ。

     

    (2)「上海の資産運用会社CYAMLANインベストメントの張蘭丁最高経営責任者(CEO)は『15年の相場崩落は突然熱にとりつかれて、素早く引いたかのようだった。今回は下げ相場が長引きそうだ』と指摘した。今年と15年との大きな違いの一つは、一般的には市場を長期的観点でとらえる機関投資家が株安を主導しているように見える点だ」

     

    今年の株価下落は機関投資家主導である。それだけに、合理的な根拠が確認できなければ株価が大きく跳ねる見込みはなく、むしろ低迷相場は永続きしそうである。

     

    (3)「投資家の種類ごとに分類した取引のデータはないが、投資のプロが相場をけん引している様子を2つの要素が示している。第1に、今年の上海株の下落は中信証券や宝山鋼鉄など、主要な中国国有企業の株安が原因だ。これら優良銘柄は通常、大手機関投資家に好まれる傾向にある。第2は、中国に9000万人いる個人投資家が今年の相場低迷にそれほど影響を及ぼしていないという合図だ。借入資金での株式投資に利用される証拠金融資の急減である。7月5日時点の証拠金融資残高は、9089億元(約151000億円)と、15年夏の相場崩落直前に記録した過去最高の21000億元の半分弱だ」

     

    機関投資家主役説の根拠は2つある。第1の証拠は、優良銘柄の値下がりの大きい点で、いずれも機関投資家好みの銘柄が売られていること。第2の証拠は、借入資金での株式投資に利用される証拠金融資残高が、15年夏の半分程度であること。これら2つの点から、個人投資家よりも機関投資家が相場の主力である。このことは、中国経済の弱点を正確に把握して行動するに違いない。

     

     

     


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    中国政府が笛や太鼓で騒いできた「一帯一路」計画が、あちこちで「不都合な真実」が暴露されている。当初は、第二次世界大戦後、欧州経済復興援助で実績を上げた「マーシャルプラン・アジア版」という触れ込みであった。マーシャルプランとは、当時の米国務長官の名前をとり、米国が欧州の経済的な復興を支援した事業である。

     

    最近、中国政府は自国のメディアに対して「マーシャルプラン」なる言葉の使用を禁じる通達を出した。マーシャルプランは米国の援助であったが、「一帯一路」は援助でなく高利の貸付である。高利の債務を返済できない国では、担保を差し押さえられるという事態にまで発展し、中国がにわかに批判される側になっている。そこで、「マーシャルプラン」なる言葉を禁じたもの。

     

    マレーシアは、今年5月にマハティール氏が首相に返り咲いたことから、「一帯一路」計画の一環として契約済みの高速鉄道、「東海岸鉄道」(ECRL)計画を7月5日に中止決定された。中止期間は定められていない。同事業の第1期分契約額は、460億リンギット(約1兆2500億円)である。マハティール氏は、これだけの巨額投資が財政的に負担であることや、それに見合った効果が期待できないと指摘した。

     

    『サーチナー』(7月9日付)は、「マレーシアで『一帯一路』構想が躓き」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「マレーシア政府が同プロジェクトを中止した理由は、総工費が当初予算を上回る見込みとなり、財政悪化を防ぐためとしている。マハティール氏は今年5月の選挙戦でも中国との間で進んでいるプロジェクトは『国益にそぐわない』という見方を示していた。ECRLの総工費は当初550億リンギット(約1兆5050億円)と見積もられていたが、マハティール政権の最新試算によれば、中国への金利支払などを含むと810億リンギット(約2兆2100億円)に膨らむ見通しになったという」

    「東海岸鉄道」(ECRL)計画は、総工費が約1兆5050億円と見積もられていたが、金利分を含めると約2兆2100億円に膨らむ見込みだという。実に、当初金額に比べて46%増である。何か、「悪徳商法」の典型例という感じである。安い見積もりを出して契約を取り、その後に契約金額の上乗せをする。多分、こういうやり口で、スリランカなどを食い物にしてきたのだろう。

     

     

    (2)「マレーシアでは、同プロジェクトの他、中国との間で『一帯一路』関連で複数の大型プロジェクトの計画がある。これら計画に絡んで、ナジブ・ラザク前首相が背任、収賄罪容疑で逮捕されている。今回のECRLの中止に合わせて、中国企業との間で交わされたマレー半島とボルネオ島をつなぐパイプライン建設計画についても事業中止の判断が下されている。マレーシアにおける相次ぐプロジェクトの中止発表は、その他の地域での『一帯一路』プロジェクトの進行にも影響を与える懸念がある」

    マレーシアでは、前政権が「一帯一路」関連でいくつかのプロジェクトを中国政府との間で進めていた。ナジブ前首相が逮捕されたので、中国との間でいかなる契約があったかが、裁判過程で明らかにされるはずだ。そうなると、中国のメンツは丸つぶれだ。「一帯一路」計画は、中国の資金的行き詰まり感を反映して、すでに縮小方向に向かっている。マレーシアでの「取りこぼし」は、中国の野望を阻止するきっかけになり

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