勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    習近平国家主席が、文大統領の70回目の誕生日に祝賀メッセージを送った。韓国大統領府は、「韓中両首脳は今年で修交30周年を迎え、両国がこれまでの関係発展成果に基づき、韓中戦略的協力パートナー関係を一層発展させていく」と話している。

    中国は、韓国の次期大統領選に関心を寄せている。間違っても、野党保守党候補が当選しないように願っていることは確実である。そのために、内政干渉に値する越権発言をしているのだ。韓国を「戦略的協力パートナー」でなく、「属国」扱いしているのだ。

     

    今月20日に開かれた「韓中修交30周年および北京冬季オリンピック(五輪)記念国際学術大会」では、なんと「韓国大統領候補は、選挙期間に中国に関連した敏感な問題に言及しないよう希望する」と隣国大統領選挙へ言及したのだ。発言の主は、前駐韓中国大使の邱国洪氏だ。現職ではないが、こういう発言自体が異常である。韓国は、抗議すべきである。

     

    『中央日報』(1月24日付)は、「中国の『韓国大統領選挙干渉』遺憾」と題するコラムを掲載した。

     

    前駐韓中国大使の邱氏は、「一部の韓国政治家の言動が中国関連の敏感な問題を扱った」とし「新しい大統領が就任した後、良い中韓関係の始まりのために基礎をしっかりと固めよう」と述べた。「一部の韓国政治家」という表現自体のほうが鋭敏である。野党「国民の力」大統領候補の尹錫悦氏が、昨年末に駐韓米商工会議所を訪れた席で「韓国国民、特に青年たちの大部分は中国を嫌っている」と言及したのである。

     


    (1)「中国側の要人が、韓国大統領選挙をめぐり敏感な話を取り上げている。昨年の国民の力と中国側の攻防が出発点だ。昨年7月12日、国民の力の李俊錫党代表が米国ブルームバーグのインタビューで、中国を「民主主義の敵」と表現した。続いて同月15日、尹氏が中央日報のインタビューでTHAAD(高高度ミサイル防衛体系)と中国レーダーに言及した。すると中国は、ケイ海明駐韓中国大使と趙立堅外交部報道官が直接抗議した」

     

    中国は、与党候補の発言は好意的に取りあげ、最大野党候補の発言には敏感に反応して抗議する。これは愚策である。国内干渉になるのだ。そういう区別ができない点が、中国の外交音痴ぶりを表している。

     


    (2)「韓国大統領選挙の局面における中国側の発言に懸念の声が出ている。韓国・亜洲(アジュ)大学のキム・フンギュ教授は、「世界的にも最も否定的な韓国の対中世論を考慮する場合、主権と内政不干渉の原則に反しかねない中国要人の不適切な発言は、両国関係に資するところがない」とし、「大統領候補も国内政治を外交に延長せずに国家アイデンティティと国益を明確に提示する必要がある」と話した」

     

    中国は、米国大統領選での候補者発言について沈黙している。だが、韓国大統領選では、越権行為をして内政干渉の発言をする。韓国を「属国」扱いしている証拠だ。

     

    (3)「中国が韓国大統領選挙に敏感なもう一つの理由は、昨年文在寅政府が米国に傾いたという「疑い」にある。北京外交界では、昨年5月21日のワシントン韓米共同声明のほうが4月の日米共同声明よりも中国に及ぼす影響が大きいという評価が共有されている。当時、韓米共同声明は英文A4用紙7枚(1万7725字)分で、日米声明の5枚(1万4285字)よりも多かった。付属文書を合わせると約3万4000字と2万4000余字でさらに大きな開きがある

     

    中国は、日米共同声明と米韓共同声明の字数を比較して、韓国の方が多いとして重要視したという。子どもじみた発想である。質的な評価をしないあたり、中国外交はどこを見ているのか怪しくなってくる。

     

    (4)「内容でも「台湾海峡の平和と安定」をはじめ、気候・グローバル保健・5G・6G・半導体・サプライチェーン(供給網)回復力などグローバルイシューをもれなく扱った。ラテンアメリカでの民主的価値や人権協力まで盛り込んだ。日米声明にはない内容だ。中国側は、「韓国が米国と経済・科学技術・価値観・安全保障・外交など核心領域で協力を強化し、中米戦略競争の重要領域にさらに深く介入している」と分析した」

     

    中国は、韓国を「属国」扱いしてきたから、米韓同盟の突っ込んだ内容に驚いたのであろう。ただ、韓国はその後、米韓共同声明の内容にそって実行していないのだ。多分、中国からブレーキがかかったのであろう。あるいは、「脅迫」と言い換えてもいい。

     


    (5)「米韓共同声明後、中国は韓中外交を格上げした。11月16日、米中首脳テレビ会談の翌日、呉江浩部長助理(外務次官補)が張夏成駐中韓国大使と会い、北京駐在大使で初めて米中会談のバックブリーフィングを行った。25日には楊潔チ政治局委員が張大使を釣魚台に呼んで接見した。12月2日には天津で徐薫安保室長と楊委員の会談が、23日には崔鍾建外交次官と楽玉成外交部筆頭副部長(外務次官)間の戦略対話が続いた。2017年文在寅政府発足後、最も頻に行われた高官連続接触だった。中国はこの期間、THAAD配備後初めて中国内の韓国映画上映を許可した」

     

    中国は米韓共同声明発表後、韓国を従来よりも丁重に扱うようになったという。米韓は、同盟国である。中国が、その韓国を「属国」扱いして良いはずがない。中国外交の出鱈目さは、この一事でも分るのだ。

     

    韓国は、中国へ堂々と立ち向かうべきである。そのためにも、「反日」をやっていると、日韓不和を理由に中国から見下されるのだ。韓国は、これまで反日外交を行い、中国から粗略に扱われてきたことに気づくべきである。


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    中国の人口計画では、人口減になるのは2030年ごろとされていた。それが、なんと今年に繰り上がることは確実になった。8年の前倒しは、中国の年金制度に大きな影響を与える。人口は、国家の基盤である。毛沢東は、「社会主義に人口過剰はない」と大見得を切って、人口増を歓迎した。中ソ戦争に備えていたという見方もあるが、ともかく、毛沢東死亡後に始まった「一人っ子政策」(1979年)の効果が効き過ぎて、今日の事態を招いた。

     

    毛沢東の「人口過剰論無視」と習近平氏の「一人っ子政策の長期化」は、いずれも独裁者が招いた事実誤認である。民主政治であれば、一人の人間がすべての決定権を握ることはあり得ない。そのあり得ないことを行なって、中国経済は振り出しに戻ったのだ。あっけない話である。

     

    『ロイター』(1月23日付)は、「中国の人口は21年ピークか 打開策は若年層への給付」と題するコラムを掲載した。

     

    中国の人口は、予想よりずっと早い2021年にピークを迎えた可能性がある。政府は高い生計費など、出生率を抑えている根本原因への対策を優先し続けるかもしれない。しかし、政治的な節目である今年の景気を押し上げたいなら、若い世帯への助成措置など痛みの少ない対応を採る方が現実的だろう。

     

    (1)「1月17日に発表された中国の人口統計は傷口に塩を塗る格好となった。折しも昨年第4・四半期の国内総生産(GDP)成長率は大幅減速し、ノムラは1~3月期の成長率が2.9%に落ち込む可能性を予想している。これは、政府当局が通常許容できる水準よりはるかに低い」

     

    投資銀行ノムラは、今年1~3月期のGDP成長率を2.9%(前年同期比)と見ている。ノムラの22年のGDP成長率は4.3%である。こういう状況では、出生率がさらに低下確実である。

     

    (2)「2021年の人口は、出生率から死亡率を差し引いた「自然増加率」がわずか0.034%と、前年の0.145%から低下した。つまり人口14億人の中国において、1年間に50万人弱しか国民が増えなかったということだ。これは多くの地域で既に、人口が減少に転じていることを示している」

     

    昨年の自然増は48万人である。このことから、今年は自然減になって中国人口は、減少過程へ入る。あらゆる経済計画の基本が、「ご破算」になるのだ。

     

    (3)「高齢化は予想以上のスピードで進んでいる。2017年の国家計画では、人口がピークを迎えるのは2030年ごろと予想されていた。このため当局は、子育てコストの引き下げに熱心に取り組んできた。習近平国家主席は昨年、住宅市場の取り締まりを強化し、学習塾産業を一夜にして非営利化してしまった。だが、今年は5年に1度の指導部刷新が行われる共産党大会を秋に控え、景気への懸念が台頭。このため、そうした厳しい措置の魅力は薄れる可能性がある」

     

    人口ピークは、これまで2030年ごろと見られてきた。それが、なんと8年も繰り上がるのだ。中国当局の慌てぶりが目に見えるようだ。年金制度も大きな狂いだ。

     


    (4)「若い世帯に現金や税控除の形で助成する方が、現実的かもしれない。多くの国々と異なり、インフレ率が低水準を維持している中国では、なおさらだ。四川省攀枝花(はんしか)市は昨年
    、第2子か第3子をもうけた親に月額78ドルを支給する措置を導入したが、追随する地方自治体はほとんどみられない。原因はおそらく、自治体の財政ひっ迫にある。スーチョウ証券のエコノミスト、レン・ゼピン氏は自身のソーシャルメディアアカウントで、中国人民銀行(中央銀行)は毎年2兆元(約3140億ドル)を「刷って」出生率向上のための基金に提供すべきだと訴えたが、その後にアカウントを凍結された。デリケートな問題であることを示した」

     

    自治体財源の約55%は、土地売却金へ依存している。その土地が、不動産バブル終焉で値下がりしているのだ。自治体財源に穴が空いている以上、第2子、第3子誕生祝い金を支給できる状況でない。公務員給与の大幅カットしている手前、誕生金支給は余りにもチグハグである。

     

    (5)「助成措置を講じても、中国の大都市に住む若者には限界的な効果しかもたらさないだろう。都市部の若者は仕事のストレスや自立心の芽生えから、結婚して出産することに消極的だ。とは言え、助成措置があれば一時しのぎにはなるだろう。著名な生殖科学者、イー・フーシアン氏によると、ロシアでは2007年に住宅補助など一連の支援措置が導入され、その後の8年間は出生率が上がった。少なくとも貧しい世帯には恩恵が及ぶということだ」

     

    中国では、「寝そべり族」と言われる無気力なムードが広がっている。「働かない」、「結婚しない」という虚無派だ。これも、当局への抵抗であろう。共産主義が、思わぬところで抵抗に遭っている。出生率激減は、中国共産党への抵抗であるかも分らない。「早く、この世を終わらせる」という意味を込めているのだ。

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    中国経済の花形であったテック企業が、今や習近平氏から蛇蝎のように嫌われる存在に成り下がった。発端は、アリババ集団のジャック・マー氏が、金融子会社アントの株式上場をめぐる当局との軋轢である。アントには、習氏の政敵江沢民一派が隠れ株主で入っていたことが発覚し、株式上場直前に禁止処分となった。以来、習氏はテック企業に疑いの目を向けている。今では「反腐敗」というレッテルを貼っているほどだ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(1月23日付)は、「中国テック株『真冬の苦境』、独占は腐敗強まる圧力」と題する記事を掲載した。

     

    中国のテック株の苦境が一段と深まっている。主要5社の株式時価総額はピークと比べて約1兆1000億ドル(約130兆円)減った。アリババ集団の予想PER(株価収益率)は2014年の米国上場以来、最低水準となっている。中国政府による巨大IT(情報技術)企業への圧力は、データ安全・金融サービス分野での統制強化から、「反腐敗」にまで広がりつつあるからだ。

     


    (1)「共産党の汚職摘発を担う中央規律検査委員会は20日、「プラットフォーマーの独占の背後にある腐敗の調査に着手する」と、年に1回の全体会議後のコミュニケ(公報)で腐敗調査の方針を明らかにした。公報は「権力と資本の癒着を断ち切る」と宣言。巨大IT企業と官の癒着に切り込む構えだ。公報を受けた21日の香港市場で、アリババ株は一時前日比5%超下落した。同委員会は21年夏、アリババ集団が本社を置く浙江省杭州市で約2万5000人を対象に調査を始め、すでに杭州市トップを含む複数の党幹部が失脚している。中国国営中央テレビ(CCTV)は19日、失脚した杭州市トップが地元IT企業と癒着していたと報じた。社名は明らかにしなかった。調査を通じて巨大IT企業の腐敗が暴かれれば、重大な経営問題に発展しかねない」

     

    中国社会は、賄賂が潤滑油になっているので「叩けば必ず埃が出る」はずだ。アリババの急成長の裏には、当局との癒着があったであろうことは想像に難くない。この闇に紛れて、習氏の政敵江沢民一派が資金作りに接近していたことは事実であった。習氏は、それを知らなかっただけに衝撃も大きく、網をテック5社に拡大しているのであろう。

     


    (2)「中国の習近平総書記は今月、共産党の政治理論誌「求是」に投稿した論文で「中国のデジタル経済は不健全で模範的でない傾向が強まっており、国家の経済や金融の安全の脅威になっている」と巨大IT企業を強く批判していた。中央規律検査委員会の全体会議には習氏も出席しており、公報はデジタル経済を「不健全」と見なす習氏の意向を強く反映したとみられる。巨大になったIT企業が共産党には「一党独裁の政治体制を揺るがしかねない存在」と映るようになってきたためだ。IT企業はスマホのアプリを通じて決済、位置情報から健康に至るまで国民のありとあらゆるデータを握り、影響力は強まるばかり。IT企業がもたらす経済成長をあきらめてでも、締め付け路線を選ぶほかない」

     

    習氏は、中国企業のすべてを共産党支配下に組入れなければ安心できなくなっている。地方のトイレの配置まで気になるという習近平だ。習氏には、企業へ自由な発展をさせるという考えがない。これでは、中国経済の発展は覚束ない。すべてが疑心暗鬼の対象になっている。

     

    (3)「実際、習指導部によるIT企業への圧力は強まる一方だ。20年にアリババ傘下のアント・グループの株式上場を差し止めて以降、データ安全と金融サービスの2分野で統制が厳しくなっている。データ安全では、100万人を超える利用者の情報を抱えるネット企業が外国に上場する際、当局のセキュリティー審査を2月から義務付ける。中国のIT企業は大半が100万人を超えるユーザーを抱える。すでに激減している中国企業による米国上場は一段と困難になる見通しだ」

     

    中国の遅れていた金融サービスが、テック企業によって発展の基礎ができたことは事実である。ただ、政府は「デジタル人民元」を発行するに当り、テック企業の金融サービスが邪魔な存在になってきたことや、国有銀行の預金までMMFに流れる事態になって、テック企業の押さえ込みに入ったのだ。

     

    (4)「金融サービスでは、中国証券当局が14日、中国版MMF(マネー・マーケット・ファンド)である通貨基金の規制強化案を公表した。アリババがグループで手掛ける「余額宝」が主要なターゲットだ。余額宝は一時運用資産残高が1兆元(約18兆円)を超えるまでに巨大化し、金融システムに影響を及ぼしかねないと当局が問題視していた。さらに28日にはアリババグループが支付宝(アリペイ)上で提供していた「相互宝」と呼ぶ共済(保険)類似商品の提供を停止する。加入者が病気やけがの給付金をお互いに負担するもので、余額宝とともに既存の金融機関のシェアを奪う革新的な金融サービスとして投資家から高く評価されていた」

     

    テック企業のサービスは、至れり尽くせりであった。一方では、テック企業がリスクをすべて銀行側にしわ寄せしていた事実も浮上し、批判される側になった。テック企業が、急成長した裏には、それなりの「カラクリ」もあったに違いない。だが、ここへ来て「すべて悪」という習氏の決め付けは、政治がらみのものを想像させる。

     



    (5)「こうした統制強化を受けて、騰訊控股(テンセント)、アリババ、美団、京東集団(JDドットコム)、拼多多(ピンドゥオドゥオ)の主要5社の時価総額は21日時点で約1兆3300億ドルと、21年2月に付けたピークから約1兆1000億ドル(46%)減った。株式市場では悲観論が強まっている。中国政府の巨大IT企業に対する姿勢は、初期の「育成」から「統制」へと急旋回し、ここにきて「反腐敗」というより苛烈なものへと変質しつつある。中国IT企業はこのまま萎縮し、成長力を失ってしまうのだろうか。底入れの気配が見えない株価は、そんな「暗い未来」を映し出しているかのようだ」

     

    下線のようにテック5社の株価は、昨年2月のピーク時から46%も落込んでいる。「反腐敗」というレッテルを貼られたのでは致し方ない。習氏から敵視されているのだ。習氏が在任中は、テック株に芽は出ないのか。暗黒時代に入った。

     

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    中国の2021年の普通出生率(人口1000人当たり)は、7.52人と急落した。ほぼ、日本・台湾並の水準へ接近してきたのだ。昨年は、高齢社会(65歳以上人口比が14%超)入りし、今年は人口の自然減(人口の減少過程)へ突入する。

     

    世界一の人口数を誇った中国に大異変が起こっている。人口は、国家を形成する基本要因である。この人口が減少過程へ入ることは、同時に中国が超大国化への夢を絶たれることである。家族構造や識字率、出生率から世界を読み解く仏歴史人口学者、エマニュエル・トッド氏は、中国の未来と日本について、貴重な発言をした。

     

    『日本経済新聞 電子版』(1月23日付)は、「中国は超大国になれない」と題するインタビュー記事を掲載した。仏歴史人口学者、エマニュエル・トッド氏へのインタビューである。

     

    (1)「(質問)中国は急速な少子高齢化に加え、過去の「一人っ子政策」による男女の出生数の偏りなどで、人口動態に関わる難題を抱える。人口問題は中国に何をもたらすのか。

    (答え)人口学者としてみれば、出生率の低さや高齢化の(進展の)速さから、中国が世界を支配する超大国になることは非現実的だ。2020年の合計特殊出生率が1.3と極めて低かったことから、中国が中長期的な脅威ではないことは明らかだ。実態を知るには、いつから低水準だったのかを解明する必要がある。労働力となる20~64歳の人口は60年までに15年比で35%以上減るとみられている。巨大な人口規模から労働力の一部を国外で補うこともできず、中国の人口減は日本よりも深刻なものになるだろう

     

    中国の合計特殊出生率が、1.30と日本よりも低い異常事態だ。もはや、中国が中長期的に脅威でなくなることは確実である。中国の人口減は、日本より深刻になるだろう

     


    (2)「(質問)中国の家族構造については、どのように分析していますか。

    (答え)中国の農民世帯では、古くから親子間は権威主義的であり、兄弟間は平等な関係だ。これが権威と平等を重んじる文化を生み、共産主義の発展と中国共産党の権力維持を支えてきた。生活水準の上昇や核家族化が進んでも、社会の根幹にある価値観の変化はとてもゆっくりとしたものだ。権威主義がシステムに根強く残る中国が、リベラルな民主主義国になることはないだろう。民主化を急ぐよう(国際社会など)外部が中国に促してもあまり意味はない。米欧でも民主主義が危機下にある現在では、中国が民主主義になるかという問題の重要性は薄れている気さえしてしまう」

     

    中国は、親子関係は権威主義、兄弟は平等主義ある。旧中国では、遺産相続は男兄弟に平等(女子は除外)で、竃の灰まで平等に分けたという逸話がある。中国の権威主義は歴史的なもので、民主化は簡単な話でない。

     


    (3)「(答え)中国には平等の文化があったため共産主義革命が起きた。社会に根付く平等の価値観と、現実に拡大する格差は緊張関係にあり、人口減によって状況は一段と悪化するだろう。中国の指導者層は今でも、革命が起きることに不安を感じているはずだ」

     

    中国には、孟子思想の「大同主義」が理想郷とされている。すべてが平等であり、子どもは社会が育てるという、現代の福祉思想に通じるものがある。だが、権威主義(共産党)によってその実現は妨害されている。

     


    (4)「(質問)中国の今後を読み解くうえで何に注目しますか。

    (答え)高等教育だ。若者の25%が大学に行くようになると、社会の古いシステムが崩れる。中国はまだこの段階に至っておらず、おそらく今後10年で新たな危機を経験することになる。共産党が非常に厳しい局面を迎えるのは間違いないだろう。4分の1以上の人が高等教育を受けた社会では、大衆の連帯から人々が離脱する現象が起こり、不平等が生じて社会システムを不安定にしてきた。米国では1965年に新自由主義という危機が起き、格差がどんどん広がった。フランスは80年代に古いカトリック教会の思想や共産主義思想が崩壊した。ロシアは(91年の)共産主義の崩壊前にこの段階に達していた。中国での危機がどんなものになるかはまだわからない」

     

    若者の25%が大学へ進学すると、社会の古いシステムは崩れる。中国では、2010年までの統計しか公表されていないが、25~34歳人口の17.95%が大卒である。その後、中国政府は大学進学を奨励してきたので、25%の危険ラインへ接近しているはずだ。ちなみに、日本は61.51%(2019年)、米国51.86%(同)である。韓国は69.81%(同)で、世界トップである。

     


    (5)「(質問)米中対立のはざまにいる日本のとるべき道は。

    (答え)日本は米国に付いていくか、中国と対話をしていくかを選ばなければならず、歴史的に重要な場面を迎えている。日本の真の課題は戦争ではなく、低出生率という人口問題だ。米国という国の本質や世界での振る舞いをよく分析する必要がある。本来は、人口減という共通課題に日中両国がともに向き合うことも可能なのだ。中国の人口減は安全保障面で日本の恐怖を減らすかもしれないが、経済面では深刻な影響になりうる

     

    中国が、本格的な人口減社会へ向かう以上、日本は経済面で深刻な影響を受けるとしている。日本の対中輸出依存度を下げる工夫が必要である。日本は、2020年で22.0%が中国向けで首位である。米国は同2位(18.4%)。ただ、日本の対中輸出は、中国にとって不可欠な分野で国産化が不可能な製品である。

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    普通、デフォルト(債務不履行)は、支払い期日を過ぎてから発生するものである。不動産開発の中国奥園集団は、支払い期日前にドル債1200億円の支払いが不可能になったと発表した。奥園集団は,昨年の売上高が約2兆1736億円。これだけの大きな規模の不動産開発企業が、営業継続に見切りを付けるほど、住宅不況が深刻な状態にあることを示している。もはや、業況回復が見込めず、早々と「デフォルト宣言」をしたと思われる。

     

    中国不動産開発企業の大手である中国恒大集団は、昨年半ばからデフォルトの瀬戸際にある。恒大集団は、国内債権者への支払いを優先して、海外株主グループとの対応に手抜かりがあった。そこで1月20日、実行可能な再建計画の策定を目指すと同社は繰り返してきたが、海外債権者と実質的な交渉を行っていないと批判した。この結果、今後は「強行措置」もあり得ると警告した。具体的には、「デフォルト申請」である。そうなれば、恒大集団は実質的に「倒産」となる。法的にすべての債権者は平等な扱いだ。中国政府の目論む「再編計画」は消えるだろう。

     

    奥園集団は、こうした恒大集団の動きを見ながら対応方法を模索したのであろう。海外債権者からは、「デフォルト申請」が出される公算も否定できなくなってきた。

     

    『大紀元』(1月21日付)は、「中国奥園がデフォルト、ドル建て債満期前日に発表 1200億円超」と題する記事を掲載した。

     

    中国不動産開発会社、中国奥園集団(以下、奥園)は19日、ドル建て債4本について支払いを実施しないと発表した。規模は日本円換算で約1239億円。同社は、すべての海外金融債務について「デフォルト(債務不履行)のイベントが今後起きる(または起きた)」と示した。

     


    (1)「同社は声明で、20日に満期を迎える元本1億8000万ドル(約205億円)の社債と、23日が満期日である元本5億ドル(約569億円)の社債の償還と利払いを行わないと示した。2023年6月と24年6月に満期を迎える他の2本の社債について、30日間の猶予期間が終了した後も、利払いを実施しないと同社は明らかにした。この2本の社債の元本残高は4億ドル(約456億円)。奥園は、「流動性の状況を慎重に考え、全体の財務再建を待つ間、限られた手元資金をキープし、すべての債権者の公平性を維持するため」にデフォルトを判断したと説明」

     

    奥園集団は、2023年6月と24年6月に満期を迎えるドル建て社債まで、支払い不能として発表した。業況が、そこまで深刻な落込みになっている結果であろう。恒大集団は、国内債権者を優先して返済し、海外債権者への対応を後回しにしている。こういう不公平な状況を見ている奥園集団は、内外の債権者を差別した対応せず、「倒産宣言」で平等な扱いを目指しているのであろう。

     


    (2)「中国メディア『21世紀経済報道』(20日付)は、市場関係者と投資家は奥園の発表に驚いたと示した。同紙は、20日と23日に満期を迎えるドル建て債の「買い入れ消却」をしなかった奥園は、流動性問題を抱える不動産会社の中で「(奥園の)このような態度とやり方は明らかに他の不動産会社と異なる」と、支払い日の直前にデフォルトを発表したことを批判した。報道によると、流動性のひっ迫で、奥園の業績は引き続き低迷している。発表では、21年12月31日までの年間売上高は前年比約9%減の1210億3000万元(約2兆1736億円)だった」

     

    恒大集団のように、売上が急減しているわけでない。だが、客観的に見て、もはや営業継続は不可能と判断したほど、不動産業界の落込みが酷いことを踏まえたのであろう。不動産バブル崩壊について身を以て知ったのだ。

     


    (3)「奥園の関係者は、経済金融情報サイト『第一財経』の取材に対して、昨年10月に同業他社の花様年集団のデフォルトが報じられた後、奥園の債権者に返済の前倒しを次々と求められたと明かした。同社は昨年11月14日、香港部門が保有する一部の資産を9億香港ドル(約132億円)で売却した」

     

    恒大集団に端を発する不動産開発企業への信用喪失は、同業他社への債権繰り上げ返済要請となってはね返った。これは、業界全体の体力消耗に繋がっている。恒大集団が、不動産バブル終焉への導火線になった。奥園集団は、その巻き添えを食った形である。信用不安の連鎖が起こったと言うほかない。

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