勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 中国経済ニュース時評

    a0005_000022_m
       

    中国政治家の前時代性が、女子テニス選手の告発で浮き彫りになった。中国副首相(当時)が、不適切な関係を求めたとする問題からだ。この女子選手は告発後に、行方不明になっている。本人と称する人物から、「元気でいる」とのメールが報じられたものの、信憑性を疑われている。

     

    この問題について、IOC(国際オリンピック委員会)委員は、事態が糾明されなければ、明春開催予定の北京冬季五輪開催を中止することもあり得ると発言するなど、疑念がひろがっている。

     

    『ロイター』(11月20日付)は、「IOC委員、北京五輪への影響に言及 女子テニス選手消息不明で」と題する記事を掲載した。

     

    国際オリンピック委員会(IOC)のディック・パウンド委員は、女子テニスでダブルス元世界ランク1位の彭帥選手(中国)が消息不明になっている問題への対処次第で、IOCが2022年北京冬季五輪開催に関して強硬な態度をとる可能性があると述べた。

     


    (1)「彭帥選手は中国交流サイトの微博(ウェイボ)で2日、中国共産党の幹部だった張高麗元副首相から性行為を強要され、合意の上で不倫関係を持ったと暴露。その投稿は約30分後には削除されたが、投稿のスクリーンショットがインターネット上で拡散し、大きな話題となった。この投稿以降、彭帥選手は消息不明となっており、その身を案じる声が世界中で高まっている。

     

    告発内容が、極めて衝撃的であった。それはもちろんだが、告発した本人の居所が分からないという、さらにショッキングな出来事である。中国社会が、泥沼状況であることの一端を見せつけられた感じだ。

     

    (2)「大坂なおみ選手やセリーナ・ウィリアムズ選手(米国)なども安否を心配するコメントを出し、女子テニスのツアーを統括するWTAのスティーブ・サイモン最高経営責任者(CEO)は、対処に問題があった場合は中国でのトーナメント開催から撤退する用意があるとの警告も出している

     

    WTAは、女子テニスに関する中国トーナメントから撤退することもあると警告している。

     

    (3)「パウンド委員はロイターに対し、「もし、早急に良識ある形で解決されなければ、事態の収拾がつかなくなるかもしれない。(IOCが強硬な態度をとる)可能性もある。五輪大会を中止するとまではいかないかもしれないが、どうなるかは誰にも分からない」と述べ、北京冬季五輪中止の可能性も完全には排除しなかった」

     

    IOC委員は、北京冬季五輪中止の可能性もあり得ると警告している。それほど,中国の引き起した事態は重大なのだ。

     

    (4)「中国への対応に関しては、「自分が中国側だったら、『(五輪中止は)残念だが、われわれよりも、世界中のわれわれ以外の人々の方がよりがっかりすることだろう』と言える」とし、圧力をかけるよりもスポーツ界や政府関係者との交渉の駆け引きの方が有効であるとの見解を示した」

     

    IOCが、前面に出て解決策を求めるよりも、中国のスポーツ界や政界が自浄作用を働かせろと要請している。もし、そういう動きもなければ、「最悪事態」へ突入ということなのだろう。

     


    『ロイター』(11月20日付)は、「
    消息不明の中国テニス選手、所在確認求める声 米仏など懸念表明」と題する記事を掲載した。

     

    中国共産党の幹部だった張高麗元副首相との不倫関係を告白し、行方が分からなくなった女子テニスの彭帥選手(中国)を巡り、各界から所在確認を求める声が相次いでいる。

     

    (5)「米ホワイトハウスは19日、中国政府に対し、同選手の所在確認と安全確保について「独立した検証可能な証拠」を提示するよう要請した。サキ報道官は「彭帥選手が、中国共産党幹部による性的暴行を告発した後、行方不明になっているとの報道に深い懸念を抱いている」と述べた。フランスのマラシネアヌ・スポーツ相も「わが国は人権の尊重に深くコミットしている。彭帥選手のケースのような性的暴行の告発には、透明性が絶対に必要だ」と表明した」

     

    米ホワイトハウスまでが、発言する事態になっている。米国は、北京冬季五輪へ「外交ボイコット」を検討中だけに、中国政府へ厳しい対応を求めるであろう。

     

    (6)「このほか、大坂なおみ選手やセリーナ・ウィリアムズ選手(米国)らトップ選手を始め、関係団体などからも彭帥選手の安全を確認するよう求めるコメントが出されている。

    セリーナ・ウィリアムズ選手は「彭帥選手のニュースを受けて、とてもショックを受けている。一刻も早く彼女が無事に発見されることを願っている。この件は調査されるべきで、われわれは黙っていてはならない」と述べた」

     

    女子テニス選手から、心配の声が上がっている。公的機関が、早急に動き出すべきであろう。

     

    a0960_008532_m
       

    中国は、昨年1月に世界へ広がった新型インフルエンザを奇貨として、マスク外交やワクチン外交を展開した。だが、その後のコロナ変異株デルタ型によって、中国製ワクチンでは立ち向かえないことが判明。中国製ワクチンの評価は「一夜」にして失墜した。

     

    米英型ワクチンは、コロナ変異株に有効とされるので、中国でもこれを接種したいところだが、メンツがあって接種しないのだ。その代償はまことに大きく、23年まで「コロナ鎖国」を続けるのでないかと悲観論が出てきた。

     

    英紙『フィナンシャル・タイムズ』(11月9日付)は、「中国『コロナ鎖国』のリスク、世界と壁 自国も打撃」と題する記事を掲載した。

     

    中国は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)に対し、世界で最も厳格な国境管理と検疫体制を敷いている。外国人も中国人も入国の際には最低2週間の隔離を求められる。中国の指導者たちが暮らす北京に入る際は、さらに厳しい検疫や隔離が適用される。世界各地でロックダウン(都市封鎖)が実施されていた頃は、中国の極端な政策もさほど目立たなかったが、多くの国々が通常に戻るに従い、中国の他国との関係を断とうとする孤立ぶりが一層際立つ。

     

    (1)「海外とのビジネスへの影響は既に明らかだ。中国は貿易や海外投資は続けているが、海外とのビジネス面でのつながりは弱まり始めている。各国の在中国商工会議所によると、国際的な企業の経営幹部らが中国を去り、後任が来ない事態が続いているという。世界的なビジネスセンターとしての香港の役割も打撃を受けている」

     

    外国人も中国人も、入国の際には最低2週間の隔離を求められる。中国の指導者たちが暮らす北京に入る際は、さらに厳しい検疫や隔離が適用される。この制度は事実上、外国人にとって数カ月滞在するのでなければ中国への入国は不可能なことを意味し、大半の中国人にとっては海外渡航禁止を意味する。コロナ鎖国の状態だ。変異株に効くワクチンがない結果である。

     


    (2)「中国は、鄧小平が1980年代に「改革開放」の方針を掲げて以降、この40年、驚異的成長を遂げてきた。鄧は、毛沢東の文化大革命がもたらした中国の孤立が、中国の貧困と後進性につながったと判断、謙虚でもあったので中国が外の世界から学ぶことができると考えた。しかし、中国の現状は大きく異なる。英オックスフォード大学で中国史を研究するラナ・ミッター教授は、「国境を閉ざせば発想も閉じられたものになる」とその危険性を指摘する」

     

    中国は、コロナ鎖国をしている間に、発想が唯我独尊の危険なものになる恐れが強い。

     

    (3)「中国は40年間の急成長を経て自信も深めている。中国メディアは西側諸国、特に米国は衰退の一途をたどっているとみている。中国政府は、環境技術や人工知能(AI)など将来の鍵となる一部の重要な技術では世界に先んじていると考えている。そのため中国政府は中国が世界を必要とする以上に、世界が中国を必要としていると考えている可能性がある。中国政府の新型コロナの感染を完全に抑え込もうとする「ゼロコロナ」政策は、習氏と中国共産党の政治的正当性維持とも密接に絡んでいる。中国の新型コロナの公式死者数は、米国の75万人に対し5000人に満たない。そのため習政権は、米国が人権問題をあげつらうものの中国共産党の方が実際には国民の命を守っていると主張する」

     

    下線のような「ゼロコロナ」は、世界の「ウィズコロナ」と全く異なる。中国は、武漢での多数に上がったコロナ犠牲者数を改ざんして少なく発表した。GDPは水増し発表だが、犠牲者数はその逆である。真実とは、ほど遠い国である。

     

    (4)「中国のゼロコロナ政策は、今や習政権を厳しい事態に追い込む落とし穴となるリスクが浮上している。各国が低いレベルの感染なら許容する方向に転じつつあることは、中国にとってその分、海外との接触がより危険に思える可能性がある。そのことが、中国が海外との接触をさらに制限することにつながりかねない。中国では今や3分の2の省で感染力が強いデルタ型が小規模の感染拡大を引き起こしている。そのため国内の移動制限を緩和することさえ難しくなっている。先日も上海のディズニーランドを訪れた客1人の感染が確認された時、来園していた3万人強が園内に足止めされ、全員が検査を受けたという」

     

    「ゼロコロナ」は、有効なワクチンがないために行う防衛策である。そのために払う経済的な犠牲は、中国経済に回復不能なまでの深傷を負わすであろう。不動産バブルの崩壊と重なったことが、致命的な打撃を与えるはずだ。最後の砦である消費までが、ロックダウンで凍結されるからだ。

     


    (5)「
    こうした厳しい措置は、中国国民の間でも議論を呼んでいる。だが、近いうちに制限が緩和される可能性は低い。中国政府としては22年秋の党大会までは、いかなる政治的リスクもとりたくないはずだ。来年の党大会後の冬には感染の急拡大も起こり得る。そのため多くの専門家は中国のゼロコロナ政策とそれに伴う厳しい入国管理は23年に入っても当分続くと予想する。そうなると、中国が自ら課した鎖国状態は3年以上続くことになる。その結果、中国経済と世界経済が共に打撃を被るだけでなく、中国と世界の国際協調も打撃を受けるだろう」

     

    来年2~3月の北京冬季五輪・パラリンピックや来年秋の党大会開催で、否応なく人流を増やす。だから、コロナ鎖国は23年まで続くのでないか、という悲観的な見方がされている。もともと、中国がコロナを発生させ、パンデミックにまでもたらした。その責任をこういう形でとらせるとは、何とも皮肉な話である。

     

    (6)「目に見えないながらも、最も大きな影響を受けるのは中国の人々かもしれない。外国人と直接触れ合う機会がなければ、外国人は危険で堕落していると信じ込むのは容易だ。中国がいずれ国を開くとき、世界が目にする中国は全く違う国になっているかもしれない」

     

    3年間のコロナ鎖国によって、中国の人たちが「誇大妄想」に陥って、世界のリーダーは中国であるなどと信じ込まされるとしたら、大変な事態を招き兼ねない。自由世界に住む人間として、そういうリスクだけは願い下げにしたいと思う。

    a1320_000159_m
       


    米国政府は、同盟国企業が中国での先端製品の生産拡大を阻止する動きを見せている。中国の競争力を徹底的に削ぐ姿勢である。韓国は、こうして半導体生産企業が米国政府の強い圧力を受けている。

     

    『朝鮮日報』(11月19日付)は、「米国、SKハイニックス中国工場への先端設備搬入を阻止 韓国系工場10カ所以上が緊急事態」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「世界2位のメモリー半導体メーカー、SKハイニックスの無錫DRAM工場(中国・江蘇省)における先端設備導入計画が米国の対中制裁で頓挫しかねないとの見方が示された。無錫工場はSKハイニックスのDRAM生産量の50%、全世界のDRAM生産量の15%を占める重要生産拠点だ。中国に先端生産拠点を置いている韓国企業がエスカレートする米中テクノロジー戦争の犠牲になりかねないという懸念が高まっている」

     


    中国製造業には、戦略製品の半導体製造が泣き所である。外資系企業の半導体製品にほとんど頼らざるを得ないのが現状だ。米国はここに目を付けて、中国国内での製造に待ったをかける姿勢に転じている。ひとたび、米国を敵にした場合の恐ろしさが、こういう形で吹き出てくるのだ。

     

    (2)「ロイター通信は18日、SKハイニックスが無錫工場に先端半導体生産のための極端紫外線リソグラフィー(EUV)設備を導入する計画を立てたものの、米国のブレーキで頓挫する可能性があると報じた。ロイターは米ホワイトハウスなど複数の消息筋を引用し、「バイデン政権は中国が軍の現代化の核心である最先端半導体の開発に米国や同盟国の技術が使われることの阻止に焦点を合わせている」と指摘した」

     

    EUVは,後述のとおりオランダ企業しか生産できないという。受注は2年先まである売り手市場である。米国企業のノウハウが入っているので、EUV納品先について米政府が目を光らせているもの。間違っても、中国の手に渡ってはならないという厳戒体制を敷いている。

     


    (3)「シリコンウエハーに回路を描くのに使われるEUV装置は次世代DRAMを生産する上で重要な設備であり、オランダの半導体製造装置メーカーASMLが独占的に生産している。現在オランダ政府は米国の要求でEUV装置の対中輸出許可を出していない。一部からは無錫工場の先端化に設備導入問題で支障が出れば、SKハイニックスの競争力悪化だけでなく、世界の半導体サプライチェーンの危機に発展しかねないと懸念する声も聞かれる」

     

    中国の世界覇権という夢が覚めるまで、米国は中国を徹底的にマークする姿勢である。SUVが導入できなければ、業績に響くという企業の事情はあっても、「安全保障優位」の現在において、ただ我慢するしかないであろう。

     

    (4)「一部には、米国の対中制裁に同調する日本が、韓国企業の新たな脅威になるとの分析もある。ポステク(浦項工科大)産業経営工学科の鄭宇成(チョン・ウソン)教授は、「日本は最近、中国製通信設備の導入を阻止する法案を推進するほど米国に積極的に協力している。日本が自国製の半導体素材、化学薬品、設備などの中国搬入を阻めば、韓国企業には深刻な打撃になる」と指摘した」

     

    岸田政権では、経済安全保障担当大臣のポストが生まれた。また、人権担当補佐官も生まれた。いずれも中国を的にした布陣である。こうなると、日本が、中国で使用することの分かっている戦略製品の輸出を差止めるケースもあろう。

     


    『朝鮮日報』(11月19日付)は、「米中間を綱渡りする韓国企業」と題する記事を掲載した。

     

    (5)「LG電子は過去1年間で中国国内の工場を9カ所から4カ所に減らした。スマートフォン事業撤退、人件費上昇による影響もあるが、エスカレートする米中対立を受けた「脱中国」の考えも少なからず作用したというのが財界の分析だ。しかし、LG電子は今年初めには中国・南京市の電気自動車部品工場増設に3400億ウォン(約328億円)の投資を決めた。世界最大の自動車市場である中国を攻略するために先手の投資に踏み切った格好だ。財界関係者は「LG電子が最近中国で見せた矛盾する姿は米中という両大国の間で危うい綱渡りをせざるを得ない韓国企業の現実を示している」と指摘した」

     

    EVは、戦略製品でないから米国政府も無関心である。だが、バッテリー、半導体などは、中国での生産にブレーキがかかるはずである。

     


    (6)「米中が鋭く対立するようになり、韓国企業の苦労も増大している。半導体、バッテリー産業のサプライチェーン再編を急ぐ米国の投資圧力を受ける状況で、同時に最大の消費市場であり、生産基地でもある中国の顔色もうかがわなければならないからだ。韓国のIT大手企業幹部は、「米政府の政策に従って、いつ中国から工場閉鎖や営業停止といった報復を受けるか分からず、悩みの種は一つ二つではない」と述べた」

     

    前記の戦略製品は、安全保障政策と絡むので、中国での生産が次第に難しくなろう。韓国は、米韓同盟で国の安全保障を米国に託している以上、米国政府の要請を受入れざるを得まい。

     

    ムシトリナデシコ
       


    これまでのIMF(国際通貨基金)は、なぜか中国へ甘い姿勢を見せてきた。人民元をSDR(特定引出権)へ昇格させる際もそうであった。中国のできもしない約束を鵜呑みにして、結局は「食い逃げ」されたのだ。自由変動相場制移行も資本自由化も実現されないのだ。

     

    中国景気の予測もそうだ。2021年の中国の実質経済成長率が10月に8.%、22年が5.%と予測していた。それが、今回は「下振れする可能性が高まっている」と警戒感を示したのだ。本欄の立場から言えば、これまでが「大甘」であった。

     


    『ロイター』(11月19日付)は、「
    中国、金融リスクに『明確かつ協調的』に対応をーIMF」と題する記事を掲載した。

     

    国際通貨基金(IMF)は19日、中国経済に関する年次審査終了後に声明を発表し、中国は金融リスクに「明確かつ協調的な方法」で対処すべきとの見方を示した。財政政策については、今年の緊縮的なアプローチから一時的に中立的にシフトすべきと指摘した。

     

    (1)「『中国の回復はかなり進んでいるものの、均衡が取れておらず勢いは失速しており、同時に下振れリスクが増している』とした。減速の理由としては、政策支援の急速な縮小や、新型コロナウイルス感染拡大による消費への打撃、最近の電力不足、不動産投資の減速などを挙げた」

     


    減速の理由としては、次の4点を上げた。

    1)政策支援の急速な縮小や

    2)新型コロナウイルス感染拡大による消費への打撃

    3)最近の電力不足

    4)不動産投資の減速

     

    1)は、財政支出の減少である。財源の約半分を占める土地売却益の減少によって、財政支出が減ったのだ。「土地依存経済」の終焉である。この状況は,今後も続くであろう。

    2)中国製ワクチンは、変異株に効かないとされている。予防法は、ロックダウンしかなく、個人消費を落込ませている。住宅販売の落込みも個人消費に打撃である。

    3)電力不足は、「脱炭素」を急ぎすぎことと石炭価格急騰で電力会社が赤字に陥っている。

    4)不動産投資は、不動産開発企業の財務規制によって借入れが困難になっており、これが不動産投資に大きなブレーキを掛けている。関連産業を含めれば、GDPの25%も占めているのだ。

     

    以上の条件から、IMFは中国経済が失速リスクを抱えているという判断している。

     


    (2)「財政政策は今年、著しく緊縮的になっているが、一時的に中立にシフトして社会保障を強化するとともに、伝統的なインフラ支出よりも環境投資の促進に重点を置くべき」とした。銀行システムの強化に向けた「包括的な銀行再編方針」に加え、市場開放や国有企業改革に取り組む必要があるとも述べた。

     

    土地売却益が、中央・地方の財政収入のうち5割以上を占めている現状は、異常の一言である。よく、こういう不健全な財政状況を放置してきたと驚く。これでは土地売却益が減れば、自動的に景気も悪化する連動型である。こういう脆弱経済では、銀行システム強化が最も求められるところである。

     

    (3)「高水準の企業債務に対処する現在の取り組みと併せて「市場原理に基づく破産・整理の枠組み」を確立すべきと指摘。情報技術(IT)セクターへの規制強化にも触れ、政策の不確実性を高めたとした。IMFは中国の今年の経済成長率を8.0%、来年は5.6%と予想しているが、見通しへの下振れリスクが「増大している」との見解を示した」

     

    中国のデフォルトでは、1ヶ月の猶予期間があるという弛緩した状況である。日本では一度、元利償還ができなければ、その時点でデフォルトである。日本企業は、それだけに真剣勝負だ。

     


    中国企業は,信用維持に関してルーズである。多くの企業が、隠れ債務を持っているという。これを聞いただけで日常、公正な会計が行われていない証拠であろう。まさに、「伏魔殿」経営である。この企業経理において、バブルが発生しているのだ。IMFが、「市場原理に基づく破産・整理の枠組み」を確立すべきと指摘したのは当然である。IMFは今後、間違っても中国の発言を鵜呑みにしないことだ。

     

    中国の電子商取引大手アリババは、11月18日発表した7~9月期決算は、売上高と営業利益がアナリスト予想を下回った。売上高は前年同期比で29%増加したものの、アリババが昨年、過半数株式を取得したスーパーマーケットチェーン「サン・アート」の貢献を除けば、実質の伸び率は16%にとどまった。

     

    アリババにとって新たな懸念の種は、中国経済の減速と指摘されている。アリババは来年3月までの会計年度の売上高が前年比20~23%の伸びになると見込んでいる。これは2014年の株式公開以来、最も遅いペースである。今後、数四半期の成長率が大幅に低下することを示唆していると、『ウォール・ストリート・ジャーナル』(11月19日付)が報じている。IMFの予測と、同様の見通しである。

     

    次の記事もご参考に。

    2021-11-18

    メルマガ311号 習近平の「ジレンマ」、経済失速で立ち往生 台湾侵攻は「返り血浴びる」

    2021-11-04

    メルマガ307号 「衰退期」へ入った中国、コロナ禍さらなる重圧 「最後の藁」に気付かない

     

     

    テイカカズラ
       

    中国不動産開発大手の中国恒大は、滞っている支払いを急ぐべく手持ち資産の売却を急いでいる。約3000億ドル(約34兆円)の債務残高といわれるだけに、少々の資産売却を行っても「雀の涙」程度にしかすぎない。果たして、デフォルトは避けられるのか。

     

    『ロイター』(11月18日付)は、「中国恒大、デフォルトの可能性依然高いーS&P」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「格付け会社S&Pグローバル・レーティングは18日、中国の不動産開発大手、中国恒大集団がデフォルト(債務不履行)する可能性が依然高いと指摘した。来年3月と4月に総額35億ドルのドル建て債が償還を迎えるため。S&Pグローバルはリポートで「(恒大は)新築住宅を販売する能力を失っている。主要事業モデルが事実上破綻したことになるため、債務を完全に返済する可能性は低い」との見方を示した」

     

    ドル建て債券の残高は140億ドル(約1兆5400億円)にのぼる。来年3~4月には35億ドル(約3850億円)の償還を迎える。中国政府は、国内債務の利払いを急がせているが、ドル建て債券についてはそれほど強い姿勢で臨んでいる訳でない。こういう事情を考えると、140億ドルの償還については疑問符がつく。

     


    「主要事業モデル」は、販売契約時に予約金として3割を受取ってきたことを指す。これが企業の資金繰りを助けて、次々と事業拡張が可能になった。ところが現在は事実上、新規販売を中止しているので、現金収入を上げられない状態だ。こうなると、債務返済で大きな障害になっている。

     

    中国政府な、最終的に恒大集団を解体する方針とされている。それまでは、ギリギリ債務を返済させるに違いない。だが、どうしても返済できない部分が出るであろう。そうなると、S&Pが予測するように未返済残高が残るほかない。「デフォルト」という5文字が頭に浮かぶのだ。

     

    『ブルームバーグ』(11月18日付)は、「中国不動産政策が緩む兆し ー最悪期過ぎたのか、ゴールドマンなど物色」と題する記事を掲載した。

     

    中国の不動産開発企業に対する当局の締め付けは転機を迎えたのか。中国政府からの相次ぐ前向きなシグナルを受け、こうした問いが世界のトレーディングデスクで持ち上がっている。開発会社の株価や社債価格は年初来安値から持ち直しつつある。ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントやオークツリー・キャピタル・グループ、アジアの老舗ヘッジファンドなどが物色に動き始めている。

     


    (2)「中国共産党の政策を読むのは難しいが、財務が脆弱(ぜいじゃく)な開発業者から格付けが高めの同業他社への波及的影響を抑えるための取り組みが進んでいる兆候はある。一連の変更で説明を受けた銀行関係者と当局者5人によれば、中国当局はシステミックな流動性不足を防ぎ、社会の安定を確保するため微調整を行っている。センシティブな問題だとして匿名を条件に話した」

     

    不動産開発業界全体が、金融面で緊張状態に置かれる局面は緩和される。ただ,恒大集団のような財務比率の悪い企業が、生き残れるほどの環境にはなれない、としている。

     

    (3)「ただ、より劇的な転換を見込んでいるならば期待外れに終わる可能性もある。見境のない借り入れや不動産投機を抑える、より幅広い取り組みを後退させる意図は、現時点でないと銀行関係者や当局者は話す。銀行保険監督管理委員会(銀保監会)は先週、今後も「不動産の金融化」を抑制し、同セクターがバブル化しないようにすると表明した。S&Pグローバル・レーティングのレンユエン・チャン氏らアナリストチームは今月のリポートで、「われわれの見解では不動産政策が2022年に急転換される公算は非常に小さい」と指摘。「だが、開発業者で最近相次ぐ信用事由によって政策はやや和らぐ可能性がある」とも分析した」

     

    当局が、不動産業界の淘汰整理を促進する意向に変わりない。この基本原則から言えば、恒大集団は救済の網に掛からないであろう。「共同富裕論」を掲げている政府の立場は、住宅価格の高騰を防ぐことにある。優良企業だけ残す選別期に入っていることは間違いない。恒大集団は、その選別から漏れたという意味だ。

     

    (4)「S&Pは、クレジットクランチで借り換えリスクが悪化するととともに、利益率の縮小でキャッシュフローが制約を受けるため、不動産企業のデフォルト(債務不履行)は来年増えると見込んでいると説明。国有企業を中心に財務が強めの開発業者は生き残り、事業を成長させることができるだろうとリポートで指摘した」

     

    S&Pは、来年さらにデフォルト企業が増えると見ている。財務内容の良い国有不動産企業が生き残るだろうとしている。最後の勝者は、国有企業である。

    このページのトップヘ