中国企業への信頼が大きく崩れている。中国恒大は、外債の利払いが三回も不可能になる事態に陥った。この連鎖によって、不動産開発企業全般へ不安が拡大している。その根本には、中国経済への疑念の深まりがある。中国恒大がばらまいた負の材料が、改めて中国の抱える根本的な問題をあぶり出したのだ。
『日本経済新聞 電子版』(10月16日付)は、「中国不動産、社債市場で強まる警戒、恒大以外も調達難」と題する記事を掲載した。
中国の不動産会社の資金調達が一段と難しくなってきた。社債市場では中国恒大集団以外にも債務不履行(デフォルト)の懸念が高まり、これまでに発行した社債の価格が急落。10月の発行事例はこれまでなく、市場での調達環境の悪化を映す。当局の規制で銀行融資も減少。中国の不動産会社は日本の国内総生産(GDP)を上回る巨額債務を抱えており、金融市場で警戒が高まっている。
(1)「中国の不動産販売額で業界トップ3に入る恒大は9月以降3回、米ドル建て債の利払いを見送った。30日間の猶予期間が終わる10月23日ころに格付け会社によるデフォルトが確定する可能性が出ている。恒大以外の中堅も厳しさを増している。主要都市でマンション開発などを手掛けるキンエン・リアル・エステートは15日に償還期限を迎える2億ドル(約230億円)のドル建て債について、2023年満期の社債との交換を提案した。格付け会社フィッチ・レーティングスは実現すれば部分的なデフォルト(RD)になり得るとの見方を示す」
恒大は業界2位であるが、過剰な債務依存で政府の設定した財務3ルールに事実上、全て不合格という悲惨な状態である。中堅の不動産開発企業も資金繰りで苦境に立たされている。
(2)「中国調査会社の克而瑞(CRIC)は15日、「不動産会社は借り換えや現金確保が難しくなっており、業界全体の信用リスクが高まっている。政策が緩和されないとデフォルトが増える可能性がある」と指摘した。中国当局は不動産会社が守るべき財務指針「3つのレッドライン」や不動産融資の総量規制などを導入し、低格付け企業への視線は厳しさを増す。リフィニティブによると、7~9月の中国不動産会社の外債発行額は約19億ドルと、前年同期比61%減少した。UBSウェルス・マネジメントは年内に償還を迎える不動産関連の債券を45億ドルと推計したうえで「財務体質が脆弱なシングルB格銘柄のデフォルトリスクが高まる。新発債の発行による借り換えは難しい」とみる」
7~9月外債発行額は、前年比61%減である。明らかに恒大問題が悪影響を及ぼしている。年内償還額が45億ドルと推計されているが、このうちどれだけまともに償還できるか不明である。中国の不動産開発企業は、債務に依存した経営だっただけに、ひとたび融資規制にかかるとお手上げである。
(3)「銀行融資や「シャドーバンク(影の銀行)」を通じた資金調達も細っている。当局は1月に銀行の総融資残高に占める住宅ローンや不動産会社向け融資の割合に上限を設けた。銀行による9月の中長期融資は企業向けが前年同月比で35%、個人向けが同27%それぞれ減った。銀行の帳簿に計上されない委託融資、信託融資、手形引き受けは1~9月の累計で1兆5671億元のマイナスだった。返済が調達を上回ったことを示し、マイナス幅は前年同期の9.5倍となった」
9月の社会融資総量(銀行融資+株式公開+信託会社融資+債券発行)は、前年比10.0%増であった。8月の同10.3%増から縮小している。2017年以来の低水準である。中国経済全体が、「縮み志向」になっている。信用不安による典型的な現象である。
(4)「野村国際の推計では、中国の不動産開発会社が抱える債務は6月末時点で33兆5000億元(約590兆円)と、日本の名目GDP(約540兆円)を上回る。多くの企業が債務に依存した開発を続け、16年末に比べて1.8倍に急拡大した。陸挺・中国首席エコノミストらは、「中国不動産会社のデフォルトは増えるだろう。特に内陸部や北部への投資が多い中小業者がリスクを抱えている」と指摘する」
中国不動産開発企業が抱える債務残高は、6月末時点で約590兆円と、日本の名目GDP約540兆円を上回っている。異常の一言である。過剰融資=過剰投資は明らかで、不動産バブルが崩れた後は、「ぺんぺん草」も生えないであろう。「ぺんぺん草」とは、戦後の日銀名物総裁の一万田尚人が言った有名な言葉である。「過剰投資した後はぺんぺん草も生えない」と。