勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 中国経済ニュース時評

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    現在の米中貿易戦争が、第三次世界大戦に点火する危機を孕むという説が登場した。私は、中国にその経済力がないと見る。仮に、中国が開戦の火ぶたを切れば、民主主義国の経済包囲を免れない。

     

    これから取り上げる説の起点は、次に指摘するように、いささか現実離れしている。トランプ大統領が、中国へ戦争を仕掛けるという妄想を抱いているのだ。

     

    「行動が予測できないトランプ米大統領は、第1次大戦前のドイツを率いていた皇帝ウィルヘルム2世を彷彿とさせる。よりまともな指導者がいなければ、西側、ひいては世界が深刻なトラブルに陥るのは必至だ」(『フィナンシャル・タイムズ』(11月27日付))というのだ。ドイツ帝国皇帝のウィルヘルム2世と、民主主義国・米国のトランプ大統領を同じ「戦争狂」に見立てるのは、飛躍である。米国民主主義が、戦争抑制システムとして動いている現実を見落としている暴論だ。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(11月27日付)は、「現在は第1次大戦前に並ぶ難局」と題する記事を掲載した。筆者は、同紙のチーフ・エコノミクス・コメンテーターであるマーティン・ウルフ氏である。

     

    (1)「現在は、(過去の世界的戦争の要因になった)3つ(の要因)がすべて入り交じっている時代だ。冷戦時と同じく超大国同士の政治制度とイデオロギーが対立していて、30年代と同じく金融危機後の民主政治と市場経済に対する信頼感が低下しており、ポピュリズム、ナショナリズム、権威主義が台頭している。1次大戦勃発前に台頭した米国と同様、中国の経済力が大幅に増したことも重要な特徴だ。米国は第1次大戦以来初めて、自国より経済力が勝る可能性がある大国と向き合っている」

     

    下線を引いた部分で分るように、中国の経済力をきわめて過大に評価している。私は、英国経済紙『フィナンシャル・タイムズ』(FT)の記事には、一つの強い傾向があることに気付いてきた。それは、米国を批判する一方で、中国を実力以上に高く評価する傾向があることだ。その点で、米国経済紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(WSJ)の情報量と見識の高さを買っている。同じ英国の経済誌『エコノミスト』は、厳しい中国批判で一貫しており、FTとは見識を異にしている。

     

    この記事の筆者は、世界銀行のエコノミストなどを経て87年にFT入社し、ジャーナリストに転じたという。ならば当然、現在の中国経済が不動産バブルにまみれた最悪事態にあることを承知のはずだ。日本経済で分るように、バブル経済崩壊に伴う後遺症がどういうものか理解しているに違いない。そういう視点で、現在の中国を観察すれば、空前絶後の負債を抱えている経済である。この中国が、「米国は第1次大戦以来、自国より経済力が勝る可能性がある大国」に発展する可能性は「ない」と見るのが、合理的な判断であろう。

     

    中国の人口動態から見ても、絶望的である。合計特殊出生率は日本の「1.4台」よりも低位で、正式の発表を取り止め、「偽データ」を世銀に提出するという厳しい状況に追い込まれている。世界銀行は、中国国務院と共同で、長期経済成長率予測を発表した。それを見ると、惨憺たる結果が発表され、米国の潜在成長率を下回るのは時間の問題である。このような中国が、科学技術も窃取せざるを得ないほど立遅れいる。世界覇権に挑戦しても勝てる公算はない。

     

    (2)「(米ハーバード大学のグレアム・)アリソン教授は、相互不信が第1次大戦の勃発への道のりをあおった様子をうまく描写している。米国と中国が今、正面衝突を避けることは、それ以上に重要だ。冷戦の最大の成果は、直接的な戦争が回避できたことだ。だが、それをもたらした核抑止力だけでは今は不十分かもしれない」

     

    中国が、米国に戦争を仕掛けることは、第一次世界大戦の口火を切ったドイツ皇帝ウィルヘルム2世と同じ振る舞いとなろう。習近平氏を取り巻く民族主義グループは、きわめて危険な存在である。米中貿易戦争で妥協を阻み拡大させたのは、この民族主義グループである。米国は民主主義国である。中国の専制主義国と違い、簡単に開戦には踏み切れない政治システムだ。それが、民主主義の利点である。

     

    (3)「最も重要な結論は恐らく、新たな破滅的戦争を避けるだけでは不十分だということだ。どれほど避けられないようにみえたとしても、現在の我々には、昔のように大国同士が張り合うゲームに興じる余裕はない。そんなことをするには互いの利害が密接に絡み合いすぎている。世界が直面する経済、安全保障、環境面の課題に対処していくには、西側と中国とその他諸国の関係について、全員が得をする「ポジティブサム」のビジョンを共有して、人類は過去よりはるかにうまくやらなければならない」

     

    この論調の裏に、私は中国の存在を嗅ぎ散る。中国は、米国に負けない経済力を持つが、戦争を自制していると臭わせている。それよりも、世界が利益になる課題に取り組もうという論法である。この主張は、誰も反対できないし賛成する。中国は、時間稼ぎするつもりだろう。毛沢東が、蔣介石に二度も「国共合作」を持ちかけて、弱点をカバーした戦略と同じ手法が隠されている。手の込んだ中国の仕掛ける謀略戦の一端を担いでいる記事だ。

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    専制国家・中国の脆さが、今回の香港区議会議員の壊滅的な敗北に表れている。中国最高指導部は呆然としており、どのように対策を打ったら良いか分らない状況という。監視カメラで、国民の動向はすべて監視できても、心の中は読めなかったという「痛快」な話だ。

     

    『大紀元』(12月5日付)は、「習近平氏、フェイク情報で情勢誤認、香港選挙大敗にショックを受けているー中南海高官」と題する記事を掲載した。

     

    11月、香港の区議会選挙では民主派が85%の議席を占める圧勝となった。北京上層部に近い消息筋は香港大紀元に対して、習近平国家主席が「惨敗」にショックを受けていると明らかにした。また、香港情勢について中国指導部に判断の誤りがあり、「これといった解決策もない」と考えているという。

     

    (1)「香港大紀元は123日、北京の政治中枢である中南海の高官からの情報を独占入手した。それによると、習主席は香港の選挙結果にショックを受けている。中南海(注:中国最高指導部)はいま、混乱の最中にあるという。また、共産党指導部の判断ミスは大きく、対策を見つけることができないという。香港区議会議員選挙の前、海外と香港の中国専門家は、中国共産党が建制派(親中派)の「不利な情況」のために、選挙を取り消すかもしれないと推測していた」

     

    香港区議会議員選挙は、共産党の大敗北に終わった。原因は、民主主義社会の「民意」を掴めなかったことだ。独裁国家の政治システムは、民意を強権発動で動かせる。民主社会の政治システムでは、市民一人一人の意思が生かさせる。習近平氏は、個人の力の恐ろしさを知ったはず。選挙結果に呆然としたのは当然であろう。

     

    (2)「選挙は予定通りに行われた。消息筋によると、林鄭月娥長官が、選挙を取り消せば内外からの批判がさらに高まることを懸念したという。情報筋によると、区議会議員選挙の期間中、中連弁(中国共産党政府の駐香港連絡事務所)と香港マカオ連絡事務所、林鄭長官は「選挙に勝てる」と状況を誤って判断し、中央政府に報告して、予定どおりの選挙実施を要請したという。また消息筋は、中国政府の選挙の事前予想では、1票を500元(約8000円)で買収することができるため、その買収分は前回選挙の3倍多い120万票を親中派(注・建制派)に確保できると見積もった

    得票数は次の通りである。

    民主派 167万3991票

    建制派 122万0939票

     

    建制派(親中派)は、買収によって122万票を確保した。だが、これまで投票を棄権してきた人たちが、怒りの一票を民主派に入れて、習近平氏らの指示で動く建制派を圧倒したのだ。これが、民衆の怒りの持つ恐ろしさである。なぜ、建制派が122万票を得て大敗北したのか。買収が、薄く広く行なわれ、議席に結びつかなかったことだ。          

     

    (3)「1124日の投票日に、中連弁の職員が早朝、投票所に向かう途中、親中派が多いとされる高齢者が投票所に行っているのを見て、「建制派の優勢」を北京に伝えたという。少なくとも7つの親中派の香港メディアが、選挙の「建制派勝利」の下書きを済ませていた。中連弁が「勝利」とメディアに伝達していたからだという」

     

    建制派は、買収による120万票で民主派を圧倒できる、と自信を持っていた。民衆は、それを上回るエネルギーで建制派を排除した。ここに、市民の怒りがどれだけ大きかったを物語っている。

     

    (4)「消息筋によると、いま、香港の選挙結果を受けて、共産党上層部は依然として「どう処理すべきかわからない」状態だという。この消息筋は、中南海の決定は、選挙の2週間前に起きた、中文大学と理工大学の「占拠」および道路やトンネルの閉鎖という抗議活動により、市民の不満は頂点に達していると考えていた。「なぜ大敗という事態に陥るのか」と、信じがたい結果だという。実際、学生たちは大学から撤退する際にも香港警察の暴力に遭い、撤収できない事態にあり、10万人の市民が物資を送ったり車両やバイクで送迎したりして、学生たちの退出に尽力したとされる」

     

    共産党上層部が、今後の敗戦処理で対策が見つからないという。専制主義者が、民主主義の精神を理解できない結果だ。中国本土でも、取り返しのできない過ちに陥っているはずだ。監視カメラで、人間の心を支配できないことを知るべきであろう。

     

    (5)「『フィナンシャル・タイムズ』は10月、中国共産党と30年近い交流を持つ米国高官が最近、訪中し、「政治局員を含む上層部は下から偽の情報を受け取っている」ことに驚いた、と報じた。「非常に質の悪い情報しか届いていない。下の人が嘘ばかりついている」。報道は、習近平体制後、中国共産党は権威主義システムを強化し、反体制派を抑圧し、インターネットなどで情報検閲と統制を行っていることに原因があるとした。また、下から上への報告は、上層部が「聞きたい話」しかないという」

     

    香港区議会議員選挙の民主派勝利は、共産党政治の限界を示している。これで、共産党政権下の中国本土で、選挙が行なわれる機会は永久にあり得ないことを示唆している。これは、中国共産党が、一段と国民から乖離した存在になることを示す。最後は、「野垂れ死に」しかないことを意味するのだ。習近平氏は、中国再生の機会を奪った張本人である。

     

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    文政権の本心が、「親中朝・反日米」であることはよく知られている。その本心を隠して、中朝へさりげなく秋波を送っているのが文政権である。公式の席上で、文正仁(ムン・ジョンイン)大統領統一外交安保特別補佐官が4日、国際会義でとんでもない発言したというのだ。

     

    文正仁氏は、これまでもたびたび不規則発言を行い批判されてきた。それでも解任されないのは、文大統領との特別のつながりがあるためとされている。それを良いことにして、傍若無人の発言を続けているのだろう。

     

    『朝鮮日報』(12月5日付)は、「文正仁特別補佐官、『在韓米軍が撤退したら中国が核の傘を提供すればどうか』」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「文正仁(ムン・ジョンイン)大統領統一外交安保特別補佐官は4日、国立外交院の外交安保研究所が開催した国際会議で、「もし北朝鮮の非核化が行われていない状態で在韓米軍が撤退したら、中国が韓国に『核の傘』を提供し、その状態で北朝鮮との交渉をする案はどうだろうか」と述べた。同補佐官はこの会議で司会を務めている際、このような突発的な質問を中国側の参加者に投げかけた。大統領安保特別補佐官が在韓米軍の撤退を仮定して、中国に韓国の安保を任せればどうかと尋ねたものだ」。

     

    文特別補佐官の発言を聞いて、これが大統領に政策を進言する立場の特別補佐官であろうか、と唖然とする思いだ。韓国の自由主義体制という価値観の根本からいって、共産主義国家とは相容れないものである。文特別補佐官は、そういう原点を無視して、中国の膝下に屈するというのだから、もはや正常とは思えない。韓国が、中国の傘に入ることは、韓国が共産化するという意味である。そこまで認識した上での発言か不明だが、中国に対して大変な親近感を持っていることは疑いない。文大統領も同じであろう。だから、こういう発言をする特別補佐官を抱えているのであろう。

     

    (2)「韓国外交部の康京和(カン・ギョンファ)長官はこの会議の基調講演で、最近相次いでいる北朝鮮のミサイル・放射砲挑発や対米圧力発言について、「北朝鮮は現在、危機的な状況にあるように見ることもできる」と言いながらも、「少なくとも対話の経路は開かれている」と述べた。また、「どんな状況でも韓半島で戦争が発生することはないだろう」とも言った」

     

    外交部の康京和長官暢気だ。「どんな状況でも韓半島で戦争が発生することはないだろう」と言っている。希望的な段階を超えて、「無能」という域かもしれない。北朝鮮が現在、危険な動きを見せている。米国に対して12月までに「回答」をせよと、「小」が「大」に向かって「威嚇同然」の発言をする状況が、正常とは思えない。

     

    (3)「これに対して、チャールズ・カプチャン・ジョージタウン大教授兼米外交協会主任研究員は、「韓半島に戦争が100%ないだろうと確信しすぎてはならない。北朝鮮との関係を改善するには数十年かかる可能性があるため、息の長い交渉をしなければならない。北朝鮮と合意に至らなければ、北朝鮮は緊張を高めるかもしれない」と語った」

     

    下線を引いたように、北朝鮮との交渉は相当の時間がかかることを覚悟する必要がでてきた。その間、軍事的な衝突という最悪事態を棚に上げて、「夢のような話」ばかりしていられるものでない。瀬戸際外交が得意の得意な北朝鮮である。それに備えた対応も必要である。

     

    『朝鮮日報』(12月5日付)は、「緊張高まる韓国軍、 鄭国防相『北による軍事活動増強を鋭意注視』」と題する記事を掲載した。

     

    (4)「韓国国防部(省に相当)の鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防長官は4日「北朝鮮は軍事活動を強化しており、これを韓国軍は鋭意注視している」と述べた。鄭長官はこの日、国防部庁舎で開催された「2019下半期全軍主要指揮官会議」に出席し「北朝鮮はわれわれと米国政府に対し、年内に対北朝鮮政策の転換をしなければ対話には応じず『新しい道』を模索するなどとして緊張を高めている」とした上で上記のように述べた。北朝鮮が近くミサイル発射などの挑発に乗り出す可能性が高いと予想しているようだ」

     

    (5)「鄭長官は「北朝鮮は戦闘飛行術大会を行い、また西海の昌麟島でも射撃を行うことで919軍事合意に違反した」「最近は超大型放射砲(多連装ロケット砲)を発射するなど、今年に入って13回にわたりミサイルを発射し、軍事活動を強化しているが、現在韓国軍はこのような状況を鋭意注視している」と述べた。鄭長官はさらに「今年は安全保障環境が過去に比べて大きく変化し、予測も非常に難しかった」とも指摘した」

     

    北朝鮮は、軍事国家である。こういう相手に対して、外交部長官が朝鮮半島では戦争は起こるまいと、暢気な発言していること自体、きわめて危険である。火事を小火に止めるには、細心の注意が必要である。韓国軍は、南北融和ムードで北への警戒感が緩んでいる。これを元に戻すにも時間がかかるのだ。緊張感を一度緩めると、「いざ」と言うときに間に合わなくなる。

     

     

     

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    下記の目次で発行しました。よろしくお願い申し上げます。

     

    中国の米国軽視が対立原点

    香港人権法で出足を封じる

    貿易と金融で米国が有利に

    戦略間違えた中国は苦境に

     

    1989年12月3日は、米ソ首脳がマルタ会談で冷戦終結を宣言した日である。あれから30年経つ。米ソの対立終結で、世界は平和になると期待した。米国は、中国に対して共同でソ連を追い込んだ「仲間」として遇してきた。2001年、中国がWTO(世界貿易機関)加盟に当っても、米国は積極的に後押しした。中国経済が発展すれば、専制主義が民主化されていくと期待したのだ。

     

    米国の中国へかける民主化期待は、習近平氏の国家主席就任で泡のごとく消えた。米国は一時、米国の技術を中国へ自由に使わせるという恩典まで与えていた。これも、中国の民主化への願望であった。だが、中国は一貫して「革命理論」を固執していたのだ。最終的には世界革命を目指し将来、世界覇権を握る野望を鮮明にしている。その推進役が、習近平氏であるのだ。

     

    中国の米国軽視が対立原点

    中国が、「米国弱し」と見くびった契機は、2008年のリーマンショックである。米国経済は、金融機関の破綻や自動車メーカーGMの国有化など、瀕死の重傷を負った。財政破綻を免れるべく、多額の国債を発行。中国へ頭を下げ、国債を「買って貰った」のである。この米国の卑屈なまでの態度が、中国を増長させることになった。

     

    中国は、「米国弱し」と判断し南シナ海の島嶼を占領した。ここを埋め立て、軍事基地を構築し始めたのである。オバマ米大統領(当時)は、習近平氏に抗議して「軍事基地化しない」との約束を取り付けた。そのような「口約束」を守る中国ではない。オバマ氏の温厚な外交姿勢を逆手に取って、中国は南シナ海で次々と島嶼を埋め立て、一大軍事基地を擁するにいたったのだ。

     

    米国は、この予想外の事態に慌てた。トランプ大統領になって、対中強硬策に転じた背景は、以上のような米中間の経緯がある。トランプ氏を一概に、破天荒な大統領と言えない部分がある。中国によって寝首を掻かれたことへの反撃という面があるのだ。

     

    米国外交は、伝統的に「お人好し」な側面を持っている。日露戦争(1904~5年)まで、米国は日本の近代化を支援していた。それが、次第に日本と距離を置き、やがて警戒論に変ったのは、日本の軍事的な野望に気付いたからだ。1910~11年、「オレンジ作戦」と銘打って太平洋での日米開戦を想定した戦略研究に着手したほど警戒姿勢に転じた。

     

    米国は、このように相手国に対して「裏切られた」と認識したとき、一転して厳しく対応する国である。中国に対しても同様であろう。日中戦争当時は、中国の国民党軍支援で全力を挙げた。1949年の共産党革命後は断交したが、1979年に復交。その後は、中国経済の成長発展に向け支援してきた。その中国が、革命理論に従って米国の覇権に挑戦すると公言するにいたったのである。

     

    米国にして見れば、これまでの中国支援は何であったのか。そういう落胆と怒りに燃えているはずだ。米国の怒りは、かつての日本から煮え湯を飲まされた事情と良く似ている。

     

    日本が、日露戦争で辛うじて勝利を掴んだ裏に、米国の外交的支援があった。そういう恩義を忘れて、その後の日本が米国へ敵対行動を始めた。こうした日本による裏切りへの怒りは、現在の中国に向けられているはずだ。米国はカーボーイ精神である。「裏切り者は許さない」というムードが強い。この事実を見落とすと大変なことになろう。余談だが、米国が日本へ原爆2発を投下した裏には、カーボーイ精神が影響していたと言える。

     

    先に米議会が、上下両院で1名の反対者を除き全員が「香港人権法」(「香港人権・民主主義法」を可決した背景を見れば、明らかである。米国が、米中貿易戦争で中国を経済的に追い込むやり方と、いささかの違いもないと見られる。

     

    香港人権法で出足を封じる

    香港人権法が施行されたことは、中国にとって取り返しの付かない事態を招くリスクを抱えた。この認識はまだ一般化していないが、いずれは分るはずである。

     

    日本は米国と開戦する前に、米国から経済封鎖を受けた。いわゆる、日本が命名した「A

    BCDライン」である。Aは米国、Bは英国、Cは中国、Dはオランダである。島国で資源のない日本が、経済封鎖を受けて、石油や鉄くずの輸入が杜絶した。日本の戦争遂行能力の削減が目的であった。(つづく)

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    聞き捨てならぬビッグ・ニュースが飛び込んできた。中国の習近平国家主席の側近が、知中派の米国大学教授に、中国共産党が政策的に行き詰まっていることを示唆したという。

     

    この種の情報は根拠もなく大袈裟に扱われるものだが、冷静に中国経済を分析すれば、「行き詰まり」は明らかだ。日本がバブル経済崩壊後、政治も経済も混迷した。この経験を思い出せば、すでに中国も同様な事態に陥っていることは、想像に難くないであろう。

     

    中国の場合、市場機構を無視して権力で経済を動かす致命的な欠陥を抱えている。市場機構であれば、経済の矛楯は価格変動を通して自律的に調整される。権力による経済計画の矛楯は、破綻寸前まで表面化しないのだ。表面化したときは、すでに時遅しで解決不能である。長年にわたり健康診断を受けないで、突然の病魔に驚くのと同じである。

     

    中国は、国有企業という最悪形態に経済を集約化している。国有企業は財政と一体化している。赤字の把握が遅れて手遅れになる。習近平氏は、この国有企業という「経済の墓場」へ、強引に中国経済を追い込んだ。まさに、「万死に値する」誤りである。

     

    経済の破綻が、政治を狂わせる。民衆弾圧で監視カメラを多用する。政治形態としては最悪である。この異常状態が恒常的なものになったら、中国は窒息する。中国国民は、それでも羊のように沈黙しているはずがない。金の切れ目は縁の切れ目だ。中国経済破綻は、中国共産党終焉の鐘になる。

     

    『大紀元』(12月2日付)は、「『中共政権はもう道がないと自覚している』知中家の米教授」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「米ペンシルベニア州立大学のアーサー・ウォルドロン(Arthur Waldron)教授(アジア・中国史専門)はこのほど、『大紀元』英字版の番組で、中国習近平主席の側近の話として、「中国共産党の内部は、もう進む道がないと認識している」と述べた。同教授は大紀元英字版のインタビュー番組、「アメリカの思想リーダーたち」(America Thought Leaders)に出演した。教授は、米議会の米中経済安全保障審査委員会の創設者で、シンクタンク・戦略国際問題研究所の常任理事でもある」

     

    アーサー・ウォルドロン教授は、米国の著名人である。その経歴から見ても、こけおどしの話をするはずがない。信憑性があるものと受け取るべきだろう。

     

    (2)「ウォルドロン教授は、習近平主席の側近とされる、ある共産党高官との会話で、この高官が「私たち(中共政権)はどこにも行く道がない。誰もがこの体制は行き詰まっていると知っている。どこにでも地雷があり、一歩踏み間違えば滅びてしまう」と発言したという。ウォルドロン教授はまた、この発言を踏まえて、中国共産党はすでにソビエト連邦の末期と同じように、崩壊の時期に入ったと語った」

     

    下線部分の発言は、中国の価値観が普遍的でないゆえに、他国が中国に同調する基盤のないことを示唆している。中国から利益を引き出そうと狙っている国を除けば、中国の価値観に同調することは自殺行為である。

     

    (3)「教授は、当時の米ソ対峙と違って、米企業や金融機関が現在、中国に投資し、経済関係を築いているとした。「しかし、中国共産党が崩壊することは中国の崩壊ではない。中国はまだそこにある。政治体制だけが大きく変わるだろう」。中国共産党は現状を正しく把握できてないため、機能不全に陥っている。手当たり次第で問題に対応しており、現状から抜け出すための施策をまったく打ち出していない」

     

    中国共産党は崩壊しても、中国経済は残っているという意味だ。ただ、巨大債務が、中国の潜在成長力を奪っている。楽観は禁物である。

     

    (4)「さらに教授は、米ポンペオ国務長官と彼のチームに、共産党体制の崩壊とその後の政治体制の転換に備えるよう助言したと述べた。教授は、米国は過去50年にわたり、リチャード・ニクソン氏やヘンリー・キッシンジャー氏ら米国のかつての指導者たちが、対中政策に大きな過ちを犯してきたと述べた。「彼らは中国共産党に接近し、中国をソ連と対峙させる戦略だった。」この戦略は、「ファンタジー」であり失敗であるとした。「彼らは中国の複雑な政治と社会構造を理解していなかった」。現在続いている香港デモについて、教授は香港の特別な地位が失われるとの考えを示した」

     

    米共和党は、ニクソンが米中復交の立て役者のなったことから、強い思い入れがある。キッシンジャー氏は高齢にもかかわらず、なお米中共存を夢見ている。現在の中国は、習近平氏によって異質のものに変形している。その事実を認めようとしない結果であろう。

     

    (5)「教授は、自らはもう中国の地を踏むことはないだろうと考えていたが、現在の情勢の変化でこの考え方を改めたという。体制変化後の「新しい中国」を確認するため、再び訪中してみたいと語った」

     

    世界は、中国経済が空前絶後のバブルに陥っていることを理解しようとしないのだ。はっきり言えばその「無知」が、中国と世界の経済を楽観視している理由であろう。歴史的な低金利で新興国は、中国を筆頭に巨額の債務を背負っている。返済は不可能なほどの規模である。

     

    中国は本来、米国と経済的な争いを起こすべき時期でなかった。だが、中国の民族主義によって、無謀な争いに突入して経済力を疲弊させている。米国が要求する市場経済化の推進は、中国再生に不可欠である。だが、民族主義によって改革への道を自ら閉ざしている。香港問題は、絶対に起こしてはならなかった。米国の「香港人権法」で、香港の運命すら握られているという最悪事態だ。

     


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