勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 中国経済ニュース時評

    テイカカズラ
       

    新型コロナウイルスワクチン開発は、国家の威信がかかる競争であった。中国は、昨年11月から秘かに人民解放軍にワクチン開発をさせていた。新型コロナウイルスが、WHOによって世界に告知される以前から、中国はワクチン開発に着手していたことになる。これは、中国が、事前に事態(新型コロナウイルス)を察知していたことを示す証拠である。

     

    中国は、ここまで抜け駆けしワクチン開発を行い、世界一という称号を手にする予定であった。それが、まんまと米国2社にその栄冠をさらわれてしまったのだ。その悔しさ、無念さを伝える記事が現れた。

     

    『人民網』(11月22日付)は、「『ワクチン有効性90%以上』が世界経済にとって意味するものとは?」と題する記事を掲載した。

     

    米国のファイザー製薬が同社の新型コロナウイルスワクチンの有効率が90%以上だと発表したのに続き、米・モデルナ社もこのほど同社のワクチン研究開発が飛躍的進展を遂げたと発表した。世界経済が泥沼に陥っている今、ワクチンは世界経済回復の希望となるのだろうか?中国新聞社が伝えた」

     


    (1)「科学界は、有効率が少なくとも75%に達する新型コロナワクチンの研究開発を目指している。また、米国国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のファウチ所長のこれまでの発言に従えば、「情勢が厳しいことをふまえれば、50%以上のワクチン有効性でも受け入れられる」状況だ。ワクチン有効性90%というのは、実際には業界関係者のワクチン有効性に対する予想をはるかに上回っている」

     

    ファイザーとモデルナの最終治験の結果では、有効率が95%前後という「神がかり的」な高さを示した。これは、最先端研究である遺伝子を利用した開発によるものとされている。中国が開発中のワクチンについては、最終治験も終わっておらず詳細情報は不明である。多分、米国2社の結果よりも劣るのであろう。

     

    (2)「しかし、90%というワクチン有効性が決して盤石ではないことに注意を向けなければならない。ファイザーの説明によると、現在同ワクチンの臨床試験はまだ終了しておらず、安全性と有効性に関するデータも収集している最中だ。研究が進むにしたがって、最終的なワクチンの有効性比率は変わるかもしれない。また、ワクチンに関する一部のカギとなる情報がまだ明らかにされておらず、この点からもワクチンの最終的な有効性に疑問符が付いている」

     

    このパラグラフは、間違ったイメージを読者に伝えるものだ。ファイザーからは、最終治験が終わり、その結果が発表になっている。詳細は後で取り上げるが、ブラジルで最終治験中の中国ワクチンと比べて、後遺症は「ゼロ」同然である。

     

    (3)「ミネソタ大学感染症研究政策センターのマイケル・オスターホルム所長が言う通り、さらに多くの情報がない状況下では、現時点でワクチンがどれだけの影響を及ぼすかを予測するのは時期尚早だ。中国国際問題研究院米国研究所の蘇暁暉(スー・シャオフイ)副所長も、「ワクチンは感染症抑制のキーとなる要素だ。現時点でワクチン研究開発には重要な進展が見られるものの、最終的に必ず成功するかどうかは誰も保証できない」と指摘している」

     

    ファイザーによる最終治験の結果発表は、11月19日である。この記事は11月22日である。ここへ登場した関係者は、ファイザーの結果を知らず、当てずっぽうの非難をしている。すべて、間違っている。

     

    (4)「ワクチンはまだ最終的に研究開発されていないが、世界の株式市場は一足先に「強心剤」を打ち、相場が高騰した。中国現代国際関係研究院研究員の陳鳳英(チェン・フォンイン)氏は取材に対し、「感染症が世界経済にもたらした衝撃は巨大だ。経済の回復はそう簡単なことではなく、一定のプロセスが必要だ」と述べ、経済回復は多方面にわたるため、回復には一定の「遅延性」があると指摘した。ワクチンの大規模接種・普及には依然としてしばらく時間が必要

     

    米国2社によるワクチン開発は、遺伝子情報を使うもので、製造が短期間で大量に行われるメリットを持っているという。来年後半になれば、先進国のかなりの部分で大規模接種が可能になる。中国は、先行2社の偉業に「ケチ」をつけて、立遅れた中国企業を庇っている。見苦しい限りだ。



     
    ファイザーは11月19日、ファイザーとBioNTechCOVID-19ワクチン候補の国際共同第3相臨床試験ですべての主要な有効性評価項目を達成」と題する記事を掲載した。前記記事が、危惧している点を取り上げてその危険性がないことを示したい。

     

    1)有効性に関する主解析において、BNT162b21回目接種から28日経過した時点以降のCOVID-19の予防に95%の有効性を示した。

     

    2)有効性は年齢、性別、人種・民族で一貫しており、65歳を超える成人では94%を超える有効性が認められた。

     

    3)米国食品医薬品局(FDA)が緊急使用許可(EUA)に求めている安全性データの収集を達成した。

     

    4)4万3000人を超える参加者を組み入れ、すべての集団においてワクチンの忍容性は良好であることを示すデータが得られた。重大な安全性の懸念は認められず、グレード3の有害事象で頻度が2%を超えるものは、疲労3.8%と頭痛2.0%のみであった。

     

    5)両社は数日以内にFDAにEUAの申請を行い、世界中の規制当局にもデータを共有することを計画している。

     

    6)両社は2020年に最大5000万回分、2021年末までに最大13億回分のワクチンを世界で生産することを見込んでいる。

     

    7)ファイザーは豊富な経験、専門知識と既存のコールドチェーンのインフラを活用し、世界中にワクチンを流通できると確信している。

     

    関心が持たれている副作用については、頻度が2%を超えるものは、疲労3.8%と頭痛2.0%のみであった。この程度の副作用は仕方ないであろう。 

     

     

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    RCEP(東アジア地域包括的経済連携)のまとめ役は、中国という報道が見られる。確かに、RCEP参加国では最大のGDP規模であるが、主役はASEAN(東南アジア諸国連合)であった。中国の自由化率案は当初、80%台と低かったという。それだけ、国内産業保護を強く意識していたことを意味する。中国は、世界覇権へ挑戦すると豪語しているが、国内産業の競争力は弱いのだ。それが、輸出大国に踊り出られたのは、外資系企業の輸出に依存した結果である。

     

    『ハンギョレ新聞』(11月17日付)は、「『世界最大のFTA』RCEPは中国が交渉を主導? 事実と異なる」と題する記事を掲載した。

     

    韓国・中国・日本・ASEAN(東南アジア諸国連合)など15カ国が参加する世界最大の自由貿易協定(FTA)である東アジア地域包括的経済連携(RCEP)が11月15日、交渉開始から8年を経て最終妥結した中、「RCEPは中国が主導する協定」だという一部の通商専門家とメディアの報道は事実と異なるという指摘が出ている。一部では中国主導という点を前面に出し、「米中間のメガFTA対決」として今後の巨大貿易協定の構図を分析するが、韓国大統領府と政府は「RCEP交渉を今回の妥結まで主導してきたのは、中国ではなく韓国とASEAN」だと説明する。

     


    (1)「韓国政府の通商当局者も「今回のRCEP加盟国間の輸入関税の妥結内容は、ASEAN10カ国に共通して適用される関税譲許案が基本で、これを基本に韓国・中国・日本・オーストラリアなどの非ASEAN各国の間の関税譲許のスケジュールと幅について交渉が行われる過程を経た」とし、「ASEAN各国は『非ASEAN各国の間の開放の譲許水準が、ASEANに適用される開放水準よりさらに優待してはならない』と要求し貫徹させた」と述べた。ASEANそして韓国が主導したという意味だ」

     

    RCEPを推進したのはASEANであること。同時に韓国が側面から支援したとしている。ここでは、中国が旗振り役でなかったことを示している。

     

    (2)「RCEP交渉の局面で中国が主導しなかったという事実と状況は、様々な側面に現れた。政府当局者は、「関税譲許(縮小・撤廃)の場合、中国は、今回の交渉過程でASEAN各国が要求したものより低い水準の市場開放と自由化を望んだ」とし、「韓中日3国の間の個別国家間の関税譲許水準も、協定の出発時からさほど開放の水準を高めず、80%台でひとまず妥結しようという方向に中国も立場を決めた」と述べた。中国はRCEP協定の影響力を左右する市場開放の水準をむしろ低めたという意味だ」

     

    このパラグラフでは、意外な事実が明らかにされている。中国の自由化率案が80%台で低かったという点だ。中国は、日本の醤油と日本酒の関税撤廃が21年後である。この一事を見ても、いかに中国の生産性が低いかを示している。人口14億人の巨大マーケットを持つ中国が、醤油と日本酒の競争力で人口1億2000万人の日本より劣る。いかに、国民生活に直結する分野の投資がされなかったかを示している。中国の跛行的な産業構造を証明しているようだ。

     


    (3)「インドは市場開放により、中国産の安価な工業製品やオーストラリア産の農産物が自国の市場になだれ込むと憂慮し、妥結を長くためらってきた。このように「中国主導のRCEP」に対する懸念が強いインドを協定に再び引き入れるため、中国は交渉過程で後ろに退いている状態だった。他のRCEP加盟国も、中国が先頭に立たず後方で消極的に取り組んでいることを望んでいたことが知られている

     

    インドは、土壇場でRCEPに署名せず参加を見送った。それは、中国主導のRCEPという印象を嫌ったこともある。下線のように、他のRCEP加盟国もインドの参加を求める立場から、中国の役割が小さいことを望んでいた。

     

    (4)「RCEP地域ブロックは、貿易・人口、総生産の規模で世界最大であることは正しいが、実際のRCEPの市場開放化の水準は、他の巨大地域貿易協定に比べ低い方だ。CPTPPは、サービス・労働・知識財産権・競争・投資政策を含む極めて包括的な範囲を扱うのに対し、RCEPは、主に協定参加国の漸進的な工業製品の関税縮小と原産地規定の統合に焦点を合わせている。開放の水準だけをみると、実際の内容はさほど野心に満ちた協定ではないこともありうるという意味だ

     

    RCEPとTTP(CPTTP:現行のTPP)を比較すれば、規模はRCEPに軍配が上がるものの質の面ではTTPにはるかに及ばない。下線のように開放水準から見ると、野心的なFTA(自由貿易協定)ではない。

     


    (5)「中国はRCEPを通じ、自国の商品をさらに多く輸出しようとする目的よりは、21世紀の陸上・海上シルクロード経済ベルトと呼ばれる「一帯一路」をASEANに拡張しようとした。RCEPは関税の撤廃・縮小を目標とする貿易協定だが、中国は、関税よりも一帯一路に目的を置いていたので、RCEPの交渉・妥結の過程で主導者の役割を果たさず、また、果たせられなかったということだ」

     

    中国がRCEPに期待している役割は、関税率の引下げ・撤廃よりも、「一帯一路」で影響力を増そうとしていると指摘している。この中国の狙いは成功するだろうか。ASEANは、すでに中国の勢力拡大へ神経を使っている。今後の中国の経済力低下を考えれば、ASEANが経済援助額の減る中国の言いなりになるとは思えない。

     

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    習近平政権が、足がかりにしてきた国有企業は、その非効率経営ゆえに経営行き詰まりを見せている。社債デフォルトでは、国有企業が全体の4割を占めているのだ。これまで、国有銀行は国有企業の融資専門機関として機能してきた。この甘えの関係が、国有企業に非効率経営を許してきた大きな理由であろう。その上、習氏は「国進民退」という看板を掲げて、国有企業優遇策を打ちだしてきた。国有企業のデフォルト多発は、習近平政権批判へと繋がる要因を多く秘めている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(11月22日付)は、「中国の社債不履行『国有企業も』 景気回復、支援緩む」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国の社債の債務不履行は足元で国有企業にも広がってきた。2020年は11月20日までに1570億元(2兆5000億円)で元利払いが遅れ、うち国有企業の比率は4割強と19年を大きく上回った。新型コロナウイルスで資金繰りを助けてきたが、景気回復を受けて支援措置を縮小した途端に過剰債務企業の資金繰りが苦しくなった」

     

    国有企業で社債デフォルトが増えているのは、国有銀行がもはや融資を続けられないという限界を示している。中国の金融市場もまた、これ以上金利を引下げられない限度に達している。市場金利が、自然金利(最適金利)を下回っているからだ。このような状態でデフォルトへ陥るのは、ゾンビ企業として中国経済に生き残る必要性がない、という烙印を押されたようなもの。それだけ、無駄な資源配分が国有企業向けにされてきたことになる。計画経済の落し穴だ。

     

    (2)「これまでも国有企業の債務不履行はあったが、20年は有名な大型企業も債務危機に陥った。中国随一の名門大学、清華大学に属する紫光集団は16日までに社債13億元(約206億円)を償還できなかった。紫光集団は中国では最先端の半導体製造を手がける。過剰債務や収益化の遅れを指摘する声はあったが、習近平国家主席が掲げる半導体国産化の主役だっただけに市場には衝撃が走った。同社の社債には額面の1割まで売られる銘柄も出ている」

     

    紫光集団のデフォルトで、同社の社債は額面の90%ダウンまで売り込まれているという。精華大学の名声も地に墜ちたのも同然である。技術的に行き詰まったと見られる紫光集団を救えなかった点で、精華大学の研究能力にまで疑問符がつきかねないほどの衝撃であろう。今日発行のメルマガ210号で、詳細に分析した。

     

    (3)「河南省所管の国有石炭会社、永城煤電控股集団は11月10日に社債10億元(約168億円)を償還できなかった。10月に別の社債を発行したばかりの上、格付けも最上級のトリプルAだった。「暗黙の政府保証」があるともみられてきたため、社債市場全体が動揺した。とくに遼寧省や山西省など財政余力の乏しい地域に本社を置く企業の社債が値下がりした。山西省は省みずからが「返済に問題はない」と表明する事態に追い込まれた。中国の社債の債務不履行は15年から増加し、19年には1670億元まで増加した。20年も過去最高を更新するペースだが、前年までとは中身が大きく異なる。19年は国有企業の不履行が約400億元と全体の4分の1だったが、20年はすでに金額で1.8倍に達し、比率も4割まで高まった」

     


    海外の投資ファンドでは、中国の格付けを全く信用していなかった。A、AA、AAAという最高ランクの格付けが、全体の9割を占めるというインチキ格付けである。この状態は3年前から認識されていた。国有企業のデフォルトが増加基調であることから、金融市場の不信感はいやが上にも高まらざるを得なくなっている。

     

    (4)「相次ぐ債務不履行を受け、社債の発行条件は悪化している。11月以降、少なくとも470億元の社債発行が延期または取り消しになった。陝西省西安市の国有企業、天地源が16日に発行した3年債は金利が年7.98%と高かったうえ、10億元を予定していた発行額は2億元まで圧縮した。金融当局は不安払拭に躍起だ。金融行政の司令塔である国務院(政府)金融安定発展委員会は21日、債券市場をテーマにした会議を急きょ開いた。「金融システム危機を起こさない」と強調したのは、社債市場の動揺がさらに広がるのを防ぐねらいとみられる」

     

    社債市場は、疑心暗鬼に取り憑かれている。社債発行の延期や発行金額の縮小などを迫られている。だいたい、格付けが信用を失った以上、信用復活の手がかりをなくしている。

     


    (5)「銀行の不良債権とその「予備軍」は、計6兆7000億元近くまで増えた。円換算では100兆円を上回る。企業の現金収入などを厳しく調べる先進国の基準で査定すれば潜在的な不良債権は公表値の何倍もある、とみる専門家もいる。長期政権をめざす習指導部は、政権崩壊リスクの芽を摘むことを経済政策でも最優先する。金融システム危機はリスクの筆頭で、不良債権の圧縮は待ったなしの課題といえる。国有企業でも一律の救済は難しい」

     

    銀行の不良債権とその予備軍は、100兆円を上回ると推測されている。中国GDPを名目1550兆円(2019年)とすれば、その6.5%が煙と消える計算である。ざっと、1年分の名目GDP増加率に相当するのだ。この傷を乗り越えることは容易でない。中国経済の抱える不良債権の山が、これからの中国にとって大きな負担になることは確実だ。



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    木に竹を接ぐ中国の技術発展

    紫光集団のデフォルトが示唆

    精華大学のご威光及ばず無念

    レストランまで半導体へ参入

     

    米中対立の長期化が不可避の現在、中国は「自給自足」を前面に掲げている。米国やその同盟国から孤立しても、自前の技術を磨きこの危機を乗り越えようという戦略である。毛沢東は「長征」(1934~36年)と称して、蔣介石率いる国民党軍に敗北し、江西省瑞金から陝西省延安まで1万2500キロを徒歩で逃げ延びた。だが、最終的に勝ち抜いて、新中国を建国した歴史にあやかろうというものだ。

     

    習近平氏は「新長征」と称しているが、日進月歩の科学の時代に「自前の技術開発」は途方もない時間と資金の浪費を招く。その間に、中国の人口動態は急速な高齢化に見舞われることが確定している。最初に「長征」を試みた時代背景と全く異なり、「時間との勝負」が課されているのだ。この面を無視して新長征の「引きこもり策」を取ることは、中国100年の計において決定的な出遅れをもたらすであろう。

     


    木に竹を接ぐ中国の技術発展

    経済発展の源は、資本・労働・技術である。中国は今後、人口高齢化が急速に進み労働力が急減する。これを補うには、技術進歩が不可欠だ。基礎技術が進歩してこそ、初めて応用技術が花開くものである。中国の歴史において、技術研究が奨励される歴史はなかった。それは、次のような背景にもとづく。

     

    中国は、歴史的に技術を軽視する風土にあった。科挙試験では、受験資格として職人を排除したこと、身分階層を「士農工商」の序列に決めてきた。農本主義(農業が国富の元)を採用したのは、秦の始皇帝時代からだ。「工商」を低い身分に陥れたのは、農業と違い富の蓄積が容易であり、謀反を起こす危険性を避けるためだった。

     

    以来、2000年余もこうした時代風潮の中で、中国は時を刻んできたのである。工業を軽視する風潮が、中国の経済発展を大きく遅らせた。新中国になって科学技術に力を入れているが、2000年に及ぶ「空白」は何とも埋めがたいもの。採算面から、「独創」よりも「模倣」を重んじる中国において、利益にもならない基礎研究が実るはずがないのだ。内外での技術窃取は、こうした背景から堂々と行われてきた。

     


    足りない技術は、よそから持ってくる。これは、中国だけでなく韓国にも共通している。サムスンが、数年前にスマホの新製品発売で発火する事故が起こった。この際に浮き彫りになったのは、サムスンに関連基礎技術がないという事実を表面化させた。韓国は日韓併合で36年間、日本統治を受けて日本流の基礎研究の重要性を知ったはずである。それでも、サムスンのような事態が引き起こされた。

     

    中国になると、欧米風の近代化教育の経験はゼロだけに、とてつもないギャップが生じていることは間違いない。基礎研究という地道な作業工程の重要性を知らないことが、いかに研究過程でミスを生んでいるか。中国では当初、高速鉄道開発でどうにも解決できない問題点を抱えていた。何回、挑んでもはね返される技術の壁が、日本の新幹線技術で即座に解決できたのである。

     

    紫光集団のデフォルトが示唆

    これと同じミスが現在、半導体研究と製造でもたらされている。これを象徴する「事件」が最近起こった。

     

    中国半導体産業トップの紫光集団(精華大ユニグループ)は、習近平氏の出身大学である精華大学の経営する企業である。この紫光集団が11月15日、約206億円の手形を決済できずデフォルトになった。習近平氏の絶大な権力を想像すれば、約206億円の債務不履行で世間を騒がせるとは想像もできない事件である。

     


    見方によっては、習近平氏の政治力をもってしても食い止められないほど、紫光集団が過剰債務に蝕まれていたのであろう。中国半導体産業の思わざる蹉跌を見せつけられたのである。紫光集団の7~9月期の負債は、約8342億円である。うち、60%が1年未満の短期債務という。運転資金を借入れたものであろう。それでも、約206億円の手形を落とせなかったのは、売上不振ということだ。上半期に約521億円の営業赤字を出している。典型的な販売不振に陥っていたのである。

     

    中国の年間半導体輸入額は、約3000億ドルとされている。最近の中国半導体の自給率は15.7%(2019年)である。これだけの市場がありながら、紫光集団が上半期に500億円を上回る営業赤字を出した原因は、自社で満足な半導体を生産・販売できなかったからに他ならない。半導体企業の収益を大きく作用するのは、完成品割合の「収率」である。つまり、「歩留まり」だ。収率が上がらなければ、満足な製品として販売できないゆえに、生産コストが上がって赤字に陥る。紫光集団の赤字は、技術的行き詰まりが原因であろう。

    (つづく)

    あじさいのたまご
       

    中国は、GDP統計まで改竄する国だ。国内では、社債の格付けなどインチキそのものが横行している。トリプルA(AAA)という格付け最上級を得ていた国有石炭会社、永城煤電控股集団が11月11日、債務不履行に陥った。中国政府が、社債市場の抱える問題について調査を始めることになり、中国社債市場の構造的な歪みが表明化している。

     

    『ロイター』(11月20日付)は、「永城煤電のデフォルト、中国債券市場の欠陥を浮き彫り」と題する記事を掲載した。

     

    中国当局が国有石炭会社の永城煤電控股集団の債務不履行(デフォルト)について調査を始めたことで、中国の社債市場が抱える問題が明るみに出る形となった。

     

    (1)「同済大学のWang Qian教授(金融)は、債券投資家の最近の「質への逃避」は債券市場のインフラの欠陥を浮き彫りにしたと指摘した。銀行が融資先の企業が発行する債券を引き受け、企業はその資金を借り入れの返済や借り換えに回すという銀行間市場の一般的なモデルに疑問が投げ掛けられたという。ある債券ファンドマネジャーは「一部の銀行は融資したくない企業の債券を引き受けている」と語った。Wang氏は、企業は借り入れの返済ではなく、事業活動のために債券を発行すべきと述べた」

     

    出鱈目な社債がデフォルトに陥っているのは、中国政府に責任がある。企業の銀行借入れを抑制すべく、社債に切換えさせたという経緯がある。当欄では、借入金を社債に振り返るだけで無意味と指摘した。その脆弱性が、一気に表面化した感じである。

     


    (2)「最上級の「トリプルA」格付け取得していた永城煤電の債券がデフォルトとなったことで、中国の格付けビジネスの評価が一段と低下するとの見方を示した。デフォルトした債券の9割以上は返済不能となった時点の格付けが「A」「ダブルA」「トリプルA」などとなっており、債券価格が押し上げられていたという。シティ・リサーチの中国担当チーフエコノミスト、Ligang Liu氏は格付け機関が発行体の信用力を正直に示さなければ、投資家を誤解させていることになると指摘した」

     

    デフォルトした債券の9割以上が、「A」、「AA」、「AAA」の格付けを得ているという。高い格付けが、実態を表わしていなかったのだ。これは、中国格付け会社が、相手企業から賄賂を掴まされて甘い格付けをしたのであろう。もう一つ、暗黙裏に政府保証がついていたことだ。財務内容を精査せずに行った格付けである。

     


    (3)「これが世界の投資家が中国のソブリン債に殺到する一方で、利回りの高い中国の社債を避けている理由の一つとなっている。ロベコ(香港)のシニア信用アナリストTiansi Wangは、中国本土の市場には投資しないと述べ、「市場でリスクのプライシングが正しく機能していない」ことを理由に挙げた」

     

    中国の社債格付けは、インチキである。このことから、世界の投資家は国債を購入しても社債は避けている理由である。こういう社債格付けが出鱈目であるのは、過去からも指摘されてきた話だ。

     

    『ロイター』(2016年6月28日付)は、「中国の社債、格付け巡る懸念で外国人投資家は慎重姿勢」と題する記事を掲載した。

     

    中国は社債市場を外国人投資家に開放したが、国内の格付け機関が設定した格付けを巡る懸念から外国人投資家はまとまった資金の投入を手控えている。国内の格付け機関により中国企業の約80%は「AA」以上の格付けを付与されている。主な理由は、政府がこれまで滅多に企業に債務不履行(デフォルト)を認めなかったことにある。

     

    (4)「外国の格付け機関が格付けを設定できる中国の債券は少数にとどまっている。しかし外国の機関が格付けを付与している企業を見ると、国内格付けとの差は際立っている。この点も、外国人投資家が中国の社債市場に慎重な姿勢を取る理由だ」

     

    中国は昨年、米国の格付け企業の中国進出を認める方向になったが、具体的内容は曖昧にしている。中国国内で競争がないから、インチキ格付けが流行っているのだ。

     

    (5)「マニュライフ・アセット・マネジメント(台湾)のファンドマネジャー、ペニー・チェン氏は、「われわれは中国国内の格付け機関による格付けは決して採用しない。国内格付け機関の格付けでは、優良企業と問題企業を区別できない」と述べた。香港のあるファンドマネジャーは、「中国の社債は大半が外国の格付け機関による格付けがないため、われわれは中国の社債には非常に慎重であり、必要に迫られていない限りは手を出さないようにしている」と打ち明けた。

     

    ここに、中国格付けのインチキさが暴露されている。日本国内で、中国の社債を買うのはいかにリスクを伴うことか。留意すべきである。

     

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