勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 中国経済ニュース時評

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    米国がこれまで、イランへの軍事攻撃を躊躇してきたのは、イランによる本格的な反撃の恐れからだと指摘されている。ところが、トランプ大統領は最小の被害で、最大の効果を狙って「ピンポイント作戦」を敢行した。歴代米国大統領が出来なかったことをやったことに軍事専門家は驚きの声を上げている。中には、絶対にイラン報復があるという指摘もあるほど。

     

    現状では、その動きはなさそうだ。イラン革命防衛隊による旅客機誤射による墜落事故で、国民のイラク政府批判が高まるという思わぬ方向へ事態が動いているからだ。こうなると、米国の「ピンポイント作戦」は将来、再び行なわれることはあるのか。中国が、いち早く最高指導部7人と王岐山国家副主席で秘密会議を開いたという。

     

    『大紀元』(1月15日付)は、「米のソレイマニ司令官殺害、中国最高指導部に衝撃か、警護体制を強化との報道」と題する記事を掲載した。

     

    米軍によるイラン革命防衛隊コッズ部隊のカセム・ソレイマニ司令官の殺害について、中国のネットユーザーから支持の声が上がった。この出来事は中国最高指導部に衝撃を与え、直ちに護衛体制を強化したとフランス国営ラジオRFIが報じた。

     

    (1)「ネットユーザーの多くは、米政府のソレイマニ司令官に対する「斬首行動」は、ピンポインドで正確に特定の人物を狙えるため、「一般人が犠牲になる大規模な戦争が避けられた」と歓迎した。一部のネットユーザーは、米政府の今回の殺害行動について、「指導者を先に(あの世に)行かせるモデル」と命名し、「世界の人々の幸せのために、これからも全体主義国家の独裁者を『先に行かせる』べきだ」とのコメントを書き込んだ。ネットユーザーが中国版ツイッター「微博」に掲載した分析記事では、人工知能(AI)の時代を迎えた今、米軍は今後ビッグデータ、先進的な通信技術、無人機を駆使し、敵対勢力の指揮官だけを殺害する戦略を取る可能性が高いとの見解を示した」

     

    中国のネットユーザーは、今回の事件を歓迎しているという。独裁者が戦争を始める前に、米軍がピンポイントで戦争指揮官を排除してくれれば、戦争を未然に防ぎ、それだけ犠牲者が減るという理屈だ。

     

    (2)「また、「ソレイマニ司令官殺害は暗殺か」と題する別の記事は米政府の殺害計画に理解を示した。記事では、ソレイマニ氏と指揮下のコッズ部隊はこれまで、イラク駐留米軍の兵士約600人を殺害したことを挙げた。また、2007年、国連がソレイマニ司令官を制裁対象リストに追加したことにも言及した。中国のネット検閲当局は記事と読者コメントを削除した」

     

    ソレイマニ氏と指揮下のコッズ部隊はこれまで、イラク駐留米軍の兵士約600人を殺害したことを上げた。これは、米国が「ピンポイント作戦」の正当性を主張する理由ともなっている。米国は、大軍を率いて攻撃すれば、味方にも大きな被害を出す。そういう戦争を考えれば、「ピンポイント作戦」の意義もあろう。

     

    (3)「ラジオ・フランス・アンテルナショナル(RFI)中国語版は10日、ソレイマニ司令官の殺害で、中国最高指導部に衝撃が走ったと報道した。報道によると、ソレイマニ司令官の死を受け、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長とロシアのプーチン大統領は「非常に驚いた」が、中国当局の情報筋は「中国の指導者も例外ではない」と話した。今回の出来事はイラン現政権を支援する中国当局に「警鐘を鳴らした」という。RFIによれば、中国共産党中央政治局の常務委員7人と王岐山・国家副主席は、米政府の発表直後に顧問や分析官などを集め、緊急に秘密会議を開いた。同報道は情報筋の話として、中国指導者らが米政府に暗殺される「可能性はゼロに近い」が、指導者らは「標的暗殺」を防ぐために、「過去最高レベル」の警護体制を整えたとした」

     

    米国が、今回の「ピンポイント作戦」を行なうには、国際法という大きな壁がある。それを、クリアできない場合は、世界的な批判を浴びるだろう。北朝鮮の金正恩氏はどうか。いずれは、そういう作戦の対象者になりうる条件を揃えていることは疑いない。人民弾圧のほか、核開発で周辺国を翻弄している「罪」は計り知れないからだ。

     

    中国最高指導部が、秘密会議を開いたということは興味深い。新疆ウイグル自治区で100万人を強制収容して、人権弾圧を行なっている国家だ。人権弾圧の命令を出している者は、それなりの責任を負うべきである。

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    中国にとって「核心的利益」である台湾総統選で、習近平国家主席は親中派候補者の大敗を喫した。香港では民主派が、区議会選挙で大勝し「親中派候補」が少数派に追いやられた。この二つの動きは、習近平氏の強硬策がいずれも失敗したことを意味する。

     

    識者によれば、つい最近のイランにおける「政府批判」と絡めて、「トランプ外交の勝利」という見方さえ出ている。反民主主義国に対して、トランプ米大統領が、毅然として対応していることが、人権弾圧が顕著な中国やイランで、反対勢力が息を吹き返してきたというのである。

     

    イラン問題は別としても、香港と台湾が中国からの圧迫を跳ね返えした裏には、米国が強力な後ろ盾という事実がある。米中貿易戦争によって、米国は中国の主張する「核心的利益」に配慮する気配は全くなくなっている。むしろ、中国への圧力手段に使っている。これまでの中国であれば、「強力な不満を表明する」と抗議したものだが、今やその声も小さくなっている。米中貿易戦争により、中国経済がガタガタになっている結果である。米国に対抗する前に、中国経済の信用崩壊が始まる懸念が強まっているほどだ。

     

    『大紀元』(1月14日付)は、「蔡英文氏が大勝、中国の台湾政策に変化もたらすのか」と題する記事を掲載した。

     

    111日に行われた台湾総統選では、与党・民進党の蔡英文総統は、817万票と過去最多得票で再選を果たした。対中融和路線の最大野党・国民党の韓国瑜・高雄市長の552万票を大幅に上回り圧勝した。専門家は、中国当局が今後、台湾政策を変更するのか注目している。

     

    (1)「ポンペオ米国務長官は12日に声明を発表し、蔡英文総統の再選について「強固な民主主義制度の力強さを再び示した」などと祝意を表明した。これを受けて、英国、日本、オーストラリアを含む60の国の政府や団体が相次いで、蔡総統に祝意を表した。今回の総統選では、世界各国13の訪問団、107人の外国人学者が台湾を視察に訪れ、台湾総統選に対する国際社会の関心の高さが示された」

     

    世界各国13の訪問団、107人の外国人学者が台湾視察した。また、英国、日本、オーストラリアを含む60の国の政府や団体が相次いで、蔡総統に祝意を表したという。この事実は、きわめて重い意味を持つ。台湾が米国の強い支援を受け、中国が経済的に左前になっている現実を如実に表わしている。中国が強要する「一つの中国論」に縛られことなく、台湾へメッセージを送れるという国際情勢の変化である。

     

    (2)「蔡英文総統が総統選で史上過去最多の817万票を獲得したことは、中国当局の台湾政策および台湾への介入が完全に失敗したことを意味する。台湾市民が、中国当局が唱える「一国二制度」に対してノーと明確に否定した。今後、中国当局が政策の方向性を修正するのかに関心が高まっている」

     

    蔡氏が817万票を得たことは、中国に対して無言の抵抗力になる。台湾有権者が圧倒的な支持を与えたことになるからだ。習氏の台湾威嚇は無視されたのだ。

     


    (3)「ドイツメディア『ドイチェベレ』中国語版112日付によると、米スタンフォード大学の台湾問題専門家、カーリス・テンプルマン氏は、中国当局が台湾への圧力を緩めて「将来4年間、蔡英文氏のことを放って置く」可能性があるとの見方を示した。理由は、中国当局は蔡英文氏が総統選で勝利したことよりも、副総裁に選出された民進党の重鎮である賴清徳氏を最も警戒しているからだという。賴氏は蔡英文氏と比べて、中国当局に対してさらに強硬姿勢を示している。「2024年の総統選では、賴氏は有力な総統候補者である」

     

    「一国二制度」を否定する蔡氏が、圧倒的多数で再選された。この結果、中国は台湾へ圧力を掛けにくくなった。中国は、台湾に干渉しても恥をかくだけである。中台は、静かなにらみ合いが続くと見られる。中国に軍事行動を取りにくくさせるであろう。

     

    『日本経済新聞 電子版』(1月15日付)は、「台湾総統選で熾烈な国際謀略戦、『親中』消す米中激突」と題する記事を掲載した。筆者は、同紙の編集員の中沢克二氏である。

    (4)「『(中国)共産党に近付き過ぎると国民党は大敗の道を歩む。反省しなければならない。4年後の総統選も勝てない見通しになれば崩壊さえありうる。既に台湾政界には『親中国』の市場はなくなってしまった』。これは長年、国民党を支持してきた有力経済人の指摘である。惨敗した国民党では既に党内政局が始まっている。党主席が辞任の意向を表明した今、カギは現職の高雄市長でもある韓国瑜の動静だ。敗戦の弁では選挙戦の攻撃性から一転し、言い訳を一切しなかった。爽やかな印象を残したことで本拠地、高雄で市民からの市長罷免要求をかわせるかどうか。彼は今後、数カ月は高雄市長の地位を守る戦いを強いられる」

     

    国民党は、中国へ接近しすぎて住民の支持を失った。今回の総統選では、海外へ出ている留学生や社会人が、自弁で帰国して「民主主義を守る」ための一票を投じた。一度、自由主義と民主主義の恩恵を受けた者が、率先して民主主義を守るために立ち上がったのだ。中国の誤算は、草の根民主主義の威力を知らなかったことである。


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    中国人は、訪日外国人観光客数で約30%を占め、昨年は1000万人にも達した。それだけ、日本に魅力を感じてくれるのだろう。この流れは、日本での居住者増加になっている。最新データ(2018年末の法務省調べ)によると、外国人日本居住者数は次のようになっている。増減率は、2017年比である。在留カード及び特別永住者証明書上に表記された国籍・地域である。

     

    (1) 中   国      764,720人 (構成比28.0%) (+ 4.6%)
    (2)
     韓   国      449,634人 (   16.5%) (- 0.2%)
    (3)
     ベトナム       330,835人 (   12.1%) (+26.1%)
    (4)
     フィリピン      271,289人 (    9.9%) (+ 4.1%)
    (5)
     ブラジル       201,865人 (    7.4%) (+ 5.5%)
    (6)
     ネパール           88,951人 (    3.3%) (+11.1%)
    (9)
     インドネシア         56,346人 (    2.1%) (+12.7%)

     

    このデータを見ると、韓国が微減である。日韓関係の悪化を反映したものだろう。ベトナムは26.1%もの増加である。TPP(環太平洋経済連携協定)結成では、ベトナムが日本を支援してくれた事情もあり、日本・ベトナム関係は過去最高である。そういう外交面の関係を反映している。

     

    中国は、外国人居住数の約3割を占めている。日中関係の良好さを映したものだが、日本旅行でのリピーターは約5割にも達しているので、日本居住者の増加になっているのだろう。

     

    『サーチナ』(1月10日付)は、「日本で暮らしている中国人は中国に住んでいる時よりも幸せなのか」と題する記事を掲載した。

     

    日本に移民したいという中国人はますます増えているようだ。その理由には、仕事や学校、環境の良さなど様々な要素があるのだろうが、日本では中国よりも良い暮らしができるのだろうか。中国メディア『今日頭条』(1月6日付)は、「在日中国人は中国に住んでいる時よりも幸せなのか」と題する記事を掲載した。

    (1)「記事の中国人筆者は、日本に住んでいる中国人の友人2人を紹介。1人の男性は中学生の時に、日本で働く親と一緒に日本に来たそうだ。卒業後に日本で就職し、今はカメラマンの仕事をしているという。日本の生活について、学生時代は非常に校則が厳しいと感じたが、ルールを良く守る日本人を評価しており、日本という社会に対しては良し悪しだと感じているようである。仕事に関しては、日本は中国人にとって魅力ある場所のようだ。日本は先進国なだけあり給料は高く、中国と比べて職業による収入格差が小さく、そのうえ今は訪日中国人の増加で、中国人が日本で仕事を探すのが比較的容易になっているだからだという

     

    下線部は、訪日中国人の増加でその関連ビジネスの雇用が増えているという意味である。日本の著名な経済学者は、10年後に日本人が中国へ出稼ぎに行くという説を出している。これは、中国経済の分析が不足している結果で、過去の高成長イメージで捉えている影響だろう。日本人が中国へ出稼ぎに行く時代は来ない。

     


    (2)「別の人は、留学で日本に来てそのまま残ったそうで、「中国に近い」大阪で働くことにしたためか、ネットで見るような「日本人のよそよそしさ」は感じないと紹介している。周りの日本人は中国人のように細かいことにこだわらず親切で、休みの時には一緒に遊びに行くほど親しくなり壁は感じないとしている。人間関係に関しては、大阪なら難しくないということらしい。しかし不満もあり、日本の会社は給料が能力ではなく勤務年数に応じて計算されることに納得がいかず、脱サラして自分で会社を立ち上げたそうだ。しかし日本では起業するにもリスクが高いとしている。現時点では帰化する予定はないが、日本では帰化せず永住権でも日本人とほぼ同じ福祉が受けられ、ないのは選挙権と被選挙権ぐらいだからだという」

     

    中国人が、日本で脱サラして起業してもリスクが高いという。これは、日本人が中国で起業しても難しいのと同じ理由であろう。外国人では、その国の微妙な点、銀行と取引など軌道に乗るまでには、「信用の蓄積」が不足しているからだ。

     

    (3)「2人とも日本で生活することに対して良い面もあれば不満な点もあるようだ。ただ、日本に住み続けるつもりでいることからすると、総合的に「日本の生活は幸せ」なのだろう。記事に対して、「中国よりも幸せに決まっている」、「これだけたくさんの人が日本に住み続けているというのは、100%幸せに決まっている」などの意見が寄せられた。また在日11年という中国人は「何でも人頼みではない」ので人間関係がシンプルだと紹介している。やはり日本は在日中国人にとって、総合的に「幸せな国」になっているようだ」

     

    下線部分は、日本が「人縁社会」でないから人間関係があっさりしていることを評価している。中国では、「人縁関係」にどっぷりと浸かっているので、それが苦手な人は日本向きであろう。


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    けさ、下記の目次で発行しました。よろしくお願い申し上げます。

     

    南北統一バカの一つ覚え

    北の瀬戸際作戦なぜ失敗

    核放棄を迫る中国の理由

    中国の危機は日韓核武装

     

     

    韓国は、今年4月に総選挙を迎える。経済状況悪化の中で、与党「共に民主党」が勝利を収めるには、きわめて不利な状況に置かれている。唯一の突破口は、南北交流事業を軌道に乗せられるかどうかだ。韓国では、南北問題が年配者にとって党派を超えたテーマになっている。それだけに、南北の話合いが再開できる機運が出れば、文政権にとって朗報であろう。

     

    文政権は、南北交流事業再開が「命」である。肝心の北朝鮮は、韓国無視に出ている。米朝関係を再開するきっかけを作ったのは韓国だ。北朝鮮は、その韓国と昨年2月のベトナム・ハノイの米朝会談失敗後に、批判トーンを高めている。理由は、韓国が楽観的な情報を北朝鮮に流して「裏切られた」という思いを強くしたもの。北朝鮮は韓国を仲介せず、米朝の直接交渉に転換したのであろう。

     

    韓国は、どうやって「南北交流事業」を軌道に乗せようとするのか。北朝鮮が、経済制裁下で経済的に逼迫している以上、少しでも「現金収入」になる道を模索している。南北による共同観光開発プランは、その中に入っている。これは、経済制裁に反するものである。米国は、北朝鮮へ制裁緩和という誤ったシグナルを与えると懸念し強く反対している。

     

    米韓同盟にとって最大の問題は、韓国による南北事業が経済制裁に風穴を開けるのでないかという点である。米国は強い警戒姿勢を取っているが、韓国は4月の総選挙を前に「どさくさ紛れに」南北交流事業を始める可能性を示唆している。大統領府の文正仁(ムン・ジョンイン)特別補佐官が、1月に入って米国でのシンポジュームで発言したもの。総選挙情勢いかんでは、「一発逆転」を狙った行動に出るのでないか。

     


    南北統一バカの一つ覚え

    文政権が、同盟国である米国との関係悪化を覚悟してまで、南北交流事業に賭けている理由は、将来の南北統一という「民族悲願」達成を目指しているからだ。むろん、文政権に残された任期はあと2年半を切っている。最後の1年は、次期大統領選で文政権はレームダック化する。そうなると実質的な任期は1年強しかない。この間に、南北接近など物理的にも不可能な局面である。

     

    こうなると、次期政権に託さざるを得なくなる。だが、進歩派政権が続く保証はない。文政権はそれだけに焦っている。参政権は、今年4月から18歳に引下げられる。この若者層を狙って、高校歴史教科書を大幅に書き換えさせた。文政権に有利な記述を増やし、保守派に不利益をもたらす狙いだ。韓国経済の光の部分である「漢江の奇跡」に当てるページを減らした。また、北朝鮮に対しては人権問題などの厳しい記述を緩和させ、「南北統一準備」教科書に変えさせている。

     

    文政権は、韓国の国民生活向上よりも南北交流事業に熱を入れているほどである。だが、南北交流事業による経済効果は、韓国にとって微々たるもの。政治的な効果が大きく、話題性を呼ぶ程度のことに過ぎないのだ。文大統領は、「民族和解」への第一歩として大きな期待を寄せている。

     

    文在寅氏は、少年の心のような純粋さで「南北統一」を夢見ている。だが、南北に分離してすでに75年が経とうとしている。この間、南北朝鮮の政治情勢は大きく変化した。東西ドイツの統合と根本的に背景が異なるのだ。その背景を説明したい。

     

    (1)北朝鮮が「金一族」によって専制的に統治されていること。

    (2)北朝鮮が中国の衛星国になりつつあること。

     


    この2つの事実は、旧東西ドイツとは全く異なる。東ドイツは、「金ファミリー」のような統治体制でなかった。また、ソ連が崩壊して東ドイツを統治する経済力を失ったのである。この2つの僥倖が重なって、東西ドイツは西ドイツを核に統合できたのだ。

     

    南北朝鮮の置かれている政治・外交的な環境は、東西ドイツと180度異なる。はっきりいえば、米中の覇権争いも加わって、北朝鮮は中国の衛星国の地位になりつつある。こうして、米中が和解する時代の到来と「金一族支配終焉」がなければ、東西ドイツ型の統合は不可能である。文在寅氏は、この現実から目を逸らし、不可能である南北統一の夢を売っている「政治屋」に過ぎない。

     

    北の瀬戸際作戦なぜ失敗

    以上の記述によって、南北朝鮮統一が現状の世界情勢下では不可能であることを指摘してきた。問題は、北朝鮮が核保有を続けるのか。また、米朝交渉によって核放棄するのか。こういう核心的なテーマに焦点を合わせなければならない。

     

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    中国の習近平国家主席の打つ手はすべて失敗している。台湾総統選では、「反中国派」の現総統が再選される。台湾を孤立させるべく、台湾断交国には、多額の支援を約束する「札ビラ外交」を派手に行なってきた。こういう強硬策は、香港民主化要求デモの弾圧でも表面化した。これが、「台湾を第二の香港にするな」という共通認識を育て「反中国色」を強めることになった。米中貿易戦争でも手痛い打撃を受けている。

     

    中国は、自らの経済力を過信して米中貿易戦争で暴走した。昨年5月、いったんは妥結方向に向かったが、「国権侵害」という理由で反古にし、妥結のチャンスを失った。この結果、近く署名する「第1段階合意」では、契約履行をチェックする機構設立まで約束させられる「最悪事態」に陥っている。中国経済自体の失速により、もはや米国へ対抗すべき時間と体力を失った。

     

    台湾で11日、総統選の投開票が行われた。再選を目指す台湾独立志向の与党、民主進歩党(民進党)の蔡英文総統が親中路線の最大野党、国民党の韓国瑜・高雄市長らを抑えた。日本時間午後10時半の集計で、蔡氏の得票は800万票を超え、総統選の最多得票を記録した。民進党は、2018年11月の統一地方選で惨敗した。だが、香港での抗議活動によって反中意識が高まったことが追い風となり、息を吹き返したもの。習氏が、蔡氏を勝たせたと言える。

     

    「台湾を第二の香港にするな」というスローガンは、台湾民主化の共感を呼んだ。海外留学で外国へ出ている若者や、台湾に国籍を置いて海外で働いている人たちが一時帰国して投票するなど、「反中国色」は、かつてない盛り上がりを見せている。

     


    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(1月9日付)は、「台湾で強まる中国への反発:香港となるな」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国政府に対する香港での抗議活動は、自治を維持する台湾の全域で広く共感を引き起こしている。台湾に対しては、中国が領有権を主張する一方で、米国が兵器売却と非公式の政治交流を通じて支援しており、台湾は長期にわたってこの地域の緊張要因となってきた。香港市民への共感は、蔡英文総統(63)の政治的命運を大きく変えた。蔡氏率いる与党・民主進歩党(民進党)は、中国とは異なる台湾の独自性を支持しており、伝統的に独立志向が強いとみられている。11日の総統選で再選を目指す蔡氏は選挙運動の中で、香港デモ参加者に対する支持を明確に打ち出してきた。主要対立候補で親中派とされる野党・国民党の韓国瑜・高雄市長との対比を際立たせた格好だ。現政権が中国の強権的な圧力に対する防波堤になっていると訴えているのだ」

     

    習近平氏の民族主義が、香港と台湾で敗北した。「自由と民主主義」を味わった人間にとって、それを失うことがいかに苦痛で耐えられるか。それを市民がはっきりと示している。韓国の文政権は、何が何でも北朝鮮と統一したいと舵を切った。民主主義の「有難み」を理解しない証拠だろう。

     

    (2)「蔡氏は今回の選挙を、経済的利益のために中国の思惑に屈するのか、それとも民主主義を守るのかという、選択の場だとしている。そのメッセージは有権者の心に響いており、各種世論調査は再選の可能性が高いことを示している。わずか1年前の地方選挙では、同氏率いる民進党は屈辱的敗北を喫していた。香港での抗議行動は、台湾市民の中国本土に対する根深い反感を強める役割を果たしている。これは、強大な統一国家を実現するという中国の習近平国家主席の構想にとって、新たな障害となる。中国政府は過去何十年もかけて、台湾の経済的未来は中国本土との関係次第だと台湾市民に納得させようとしてきた。その一方で軍事演習を通じ、武力による台湾併合も依然選択肢の1つであることも示してきた」

     

    中国は、世界覇権に挑戦するという。世界中に独裁主義を普及させて歴史の歯車を逆回転させる企みをしている。香港と台湾は中華人でありながら、その無謀な試みに「ノー」と拒否をしたのだ。

     

    (3)「中国は、台湾と経済的な結びつきを強めることで、統合を進めようとしてきた。一時はこの作戦がうまく機能しているように見えた。台湾が中国依存を高める中で、多くの台湾人も、完全な独立は幻想だとの考えを受け入れるか、独立という目標を無期限に封印するようになった。こうしたムードは、昨年の習氏の演説を受けて変わり始めた。同氏は「一国二制度」の枠組みの下、台湾を支配する計画を急ぐ意向を示唆した。一国二制度は半自治的な領土である香港とマカオの統治のために中国政府が使っている枠組みだ。長年、多くの台湾人たちはこうした考え方に抵抗してきた。習氏はまた、武力行使の選択肢も排除していないことを明確し、台湾独立を「行き止まり」と表現した。そして、香港で衝突が起きた。デモ隊は6月以降、香港で中国政府の影響力が高まっていることに反対し、大規模な抗議活動を展開している。

     

    中国は、「GDP世界2位」の一枚看板で、中華世界を統一し、最終的に「世界統一」に乗り出す計画を持っている。この戦略は、出鼻で大きくつまずいた。こんな状況で、世界を「中華色」に染めることなどあり得ないのだ。中国が、世界の普遍的な価値観である自由と民主主義に変るしか、世界へ同化する道はない。

     

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