勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 中国経済ニュース時評

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    中国が、GDPで日本を抜いた2010年当時、中国人は日本を小馬鹿していた。「小日本」と侮辱する言葉を使ったものだ。また、家電などで日本ブランドが消えて行く姿に喝采して、「日本が滅びる」と言っていた。

     

    こういう記事に出会うたびに、私はブログでその間違いを指摘し、反論してきた。GDPで日本が抜かれたのは、人口動態において「人口ボーナス」が終わった結果である。中国も2011年以降、そういう状態にはいること。家電が日本から中国へシフトしたのは「人件費の差」である。ただし、日本は最終製品を作らないが、その部品をつくって世界へ供給する。「B2C」から「B2B」へ移行するだけで、収益的にはプラスになる、と言ってきた。

     

    中国でいま、日本を小馬鹿にするような記事はほとんど目にすることはなくなった。訪日中国人が、年間1000万人(2019年)も来る時代だ。1000万人の観光客が帰国して、一人10人ずつ日本の土産話をしただけで1億人に達する。日本の実情が正確に伝わる「装置」ができあがっている。これは、日本にとってまたとない「チャンネル」になった。

     

    『サーチナ』(1月7日付)は、「尊敬できる日本、『中国人はこれでも日本を馬鹿にできるか』」と題する記事を掲載した。

     

    中国メディアの『今日頭条』(1月3日付)は、日本の尊敬できる面について紹介し、「これでも日本を馬鹿にできるか」とする記事を掲載した。

    (1)「記事はまず、中国人に感心されている日本のすごいところを3つ紹介。それは、日本の「清潔さ」、「親切さ」、「便利さ」だという。清潔さに関しては、中国との大きな違いは「一人ひとりが清掃工」であることだと指摘。中国では道路などを掃除する専門の清掃工がいるが、日本にはいない。それでもきれいなのは各自がごみを持ち帰ることで清潔さを保っていると、驚きを持って伝えている」

     

    日本人が、他人と違うことをしない背景には、「恥」の意識が強いのであろう。これは、武士道精神から来ていると思われる。戦時中、戦争で敵の捕虜になることを「最大の恥」と教え込んだが、武士道の流れだ。


    (2)「親切さに関しては、「あまりに親切なので動機を疑うほど」だと紹介。裏を返すと中国では親切にしてくる人には大抵、別の目的があるということだろう。記事の筆者は、日本でウインドーショッピングした際に、買わなくても店員が微笑んで見守ってくれていたと振り返った。日本に来ると皆親切で気分が良く、ある中国人は気分が落ち込むと日本に気分転換に来るほどだという」

     

    日本人が、お客に親切であるのは「島国」であることも影響している。相手に対して不親切なことをすれば必ず、身元が明らかになる。その場合、家族や大袈裟に言えば「一門」の恥になる。古来、農業社会であった。一族の助け合う精神は、他人に対しても同様のもてなしをするのであろう。



    (3)「便利さに関しては、日本の商品は何でも利用者のことを考えていると紹介。日本の家電が発展しているのは、「便利至上主義」の日本市場に合わせて作るので、究極に便利な家電ができるからだと分析した。日本の家電には便利な機能が多く付いているものが多いが、これは利用者の視点で設計しているからだろう」

     

    江戸時代の「からくり人形」や「和時計」は、時流に合わせた「便利至上主義」と言える。「和時計」は、当時の西洋では、すでに1日24時間の定時法が採用されていたが、日本ではそれとは全く違った「不定時法という方法で時間を数えていた。季節に合せた時間の計り方で、それはそれで合理的であった。この日本独特の方法が、発明・発見の原動力になったと見られる。

    (4)「こうしたことは、中国人にはなかなか真似できることではなく、ゆえに日本を尊敬する理由となっているようだ。やはり「日本を馬鹿にすることはできない」と言えるだろう」

     

    中国は、孔子による儒教の影響が余りにも大きく、墨子(ぼくし)の論理学を攻撃して根絶やしにした。これが、近代科学の基本になる帰納法や演繹法という思考方式を育てなかった。日本は、江戸時代から蘭学を取り入れ、近代科学への助走を始めていた。この背後には、「和算」という日本独特の数学が存在した。江戸時代に、高度な代数・整数方程式論・解析学・幾何学が実用の範囲を超えて発達していたことは日本の誇りである。

     

    韓国は、日本を馬鹿にすることが「生きがい」になっている国である。これは朝鮮において、儒教でも後世の朱子学の影響が最も強く出ている結果である。朱子学では、一生懸命に徳を積めば、他者よりも優位な立場に立つという思考方式になっている。朱子学は、科挙試験の科目になり、これを学んだ知識人層は両班(やんばん)と呼ばれる身分階層を形成した。仏教だけでなく同じ儒教の一派である陽明学さえも異端として激しく弾圧した。朝鮮では、中国以上に朱子学にもとづく社会の統制が強固になり、それが朝鮮の近代化を阻む要因になった。

     

    未だに、「敵―味方」に分かれた争いを続けている国である。中国よりも近代化意識は低いと見るべきだ。論より証拠に、朝鮮に朱子学が入って来たのは李朝(1392~1910年)以来である。600年以上も、この「独り善がり」な精神構造になっている。文大統領の発言には、朱子学による「韓国優越感」が滲み出ている。反日運動は、韓国朱子学のどうにもならない硬直性の表れと見るべきだろう。日本は、韓国に対して「悪いことは悪い」とはっきり伝えるべきだ。たとえ、摩擦があっても尻込みしてはならない。

     

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    新興国は、いつでも大誤算を演じる。日本が、一時的でも米国に勝てると見て始めた太平洋戦争は、開戦7ヶ月後のミッドウエー海戦の大敗北から連戦連敗の憂き目にあった。最後は、原子爆弾2発の投下によって惨めな戦が終わった。

     

    中国は、米国と2018年夏に貿易戦争を始めた。勝てると見ての戦いであったが、無残な敗退で米国の要求をほぼ入れた「第1段階合意」を結ぶ。1月15日に署名する。中国が、最も屈辱条項とすべきは、米中合意が誠実に履行されているかチェックする項目が含まれていることだ。これこそ、日本がミズーリ号米戦艦で署名した「敗戦受託」と同じである。

     

    現在の中国経済は、信用危機のまっただ中にある。不動産バブル崩壊に伴う不良債権の累増により、信用創造機能は大きく制約されている。マネーサプライ(M2)は、名目GDP成長率並という極度の資金逼迫状態に追い込まれている。

     

    「土地本位制」で高騰する地価上昇に任せ、資金供給してきた咎めが一気に噴出しているのである。日本がバブル経済で酔っていた当時の再現であった。このことから、中国経済の未来は、ほぼ推測が可能である。つまり、中国経済の「再興」はあり得ないということだ。中国が、今回の米中貿易戦争「休戦」に当り、米国の要求を飲まざるを得なかった背景は、すべてここにある。中国が、米国に勝てると錯覚して「応戦」した米中貿易戦争の当時の舞台裏を見ておきたい。

     


    『ロイター』(2018年8月8日付)は、「中国トランプ貿易戦争に勝てる理由」と題するコラムを掲載した。

     

    (1)「トランプ米大統領が中国との貿易戦争に勝つことを期待できない理由を知りたければ、ネット通販大手アマゾンの中国版とも言えるアリババ・グループ・ホールディングを見れば事足りる。筆者は先月、アリババの最高戦略責任者で、中国のビジネス・金融界最高の知性の1人とされる曽鳴氏と2度突っ込んだ話をする機会を得た。曽氏が明確に指摘したのは、中国にはもはや、米国を本当に必要としている分野はほとんどないということだった。米国製品は必要ないし、米国のアイデアはさらに必要ない。挫折をしても、中国は自分の力で立ち直れることを証明している」

     

    私は、このコラムがいかに間違えているか、これまで複数回ブログで取り上げてきた。結論は、すでに出ているが、下線部分に新興国の傲慢さが滲み出ている。「中国にはもはや、米国を本当に必要としている分野はほとんどないということだった。米国製品は必要ないし、米国のアイデアはさらに必要ない」とは、よくぞここまで盲目的な発言をしたものと驚く。

     

    これは、アリババの最高戦略責任者の発言だけでない。多くの中国人が傲慢発言をしていた。日本の若手将校が「打倒米英」と絶叫して、開戦要求して軍部の上層部を突き上げていた状況と変らないのだ。これが、新興国共通の奢りである。盲目になって前が見えないのだ。

     

    (2)「トランプ政権は、最初から負けるよう計算された競争を、あるいは戦争を、実行するために最善を尽くしているようにみえる。中国株式市場の方が米国株式市場よりも打撃を受けているが、トランプ氏は、米国の方がより長く痛みに耐えることができ、締め付けを強めれば中国政府が交渉に応じると考えているようにみえる。だがそれは、中国人の考え方や、1年前よりも弱含んでいるとはいえ依然として米国の2倍近いペースで拡大している中国経済の底堅さに対する理解を欠いた考えだ。そして、事の重大さやメカニズムをあまり理解していない人間が、待ち受ける大混乱に突入するとき、どこまで事態が悪化しうるかについて考えを巡らせた形跡もない

     

    このコラムの筆者は、米紙『ニューヨーク・タイムズ』や米『CBSテレビ』の元特派員である。私は、このコラムを読んだとき、筆者の略歴を見て驚いたのである。これだけの経験を積んだ記者が、中国情報に惑わされたのだ。中国経済がバブルであることの認識が100%欠如していたことの哀れな記事となった。

     

    下線部分は、中国経済が完全に「バブル軌道」を暴走していることを掴めなかったことを証明している。日本経済は、「いずれ米国を抜く」と大真面目に考えるエコノミストが存在した。このパラグラフでの主張も、日本で誤診をしたエコノミストと同じである。

     

    冷静に米中の経済構造を分析すれば、中国有利などという結論が出るはずがない。米国は世界の覇権国である。世界一の市場の深さ、ドルの基軸通貨、世界一の技術イノベーション国。中国が勝てる相手ではない。そういう基礎分析をすれば、アリババの最高戦略責任者の発言を鵜呑みにすることもなかっただろう。汚名を残してしまった記事である。

     

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    韓国の自動車産業は、中国からその実力を見下げられる報告書が出た。中国商務省が、自動車の輸出台数を中韓で比較したもの。もとより、この報告書に信憑性はないが、弱り目に祟り目の韓国にとっては、奮起して見返してやらねばならないであろう。他国のことながら、「痩せカエル負けるな一茶ここにあり」である。

     

    『サーチナ』(1月5日付)は、「我が国の自動車産業、国際競争力はもはや韓国を超えた だが日独には・・・」と題する記事を掲載した。

     

    中国メディア『快科技』(1月1日付)は、中国商務部はこのほど「中国自動車産業の国際競争力は韓国を超えた」とする報告書を発表したと伝えた。

    (1)「記事は、同報告書について「中国商務部が中国汽車技術研究中心に委託し、まとめた報告書だ」と伝えつつ、「現在の中国自動車産業の競争力は2002年当時に比べて大幅に向上している」と主張していることを紹介。市場における中国の自動車メーカーの競争力、中国車の競争力などを総合的に評価した場合、中国の自動車産業の競争力はすでに韓国を超えた」と分析していることを伝えた」

     

    中国は、自動車産業育成のために膨大な補助金を使っている。自動車用電池でも、同様な手順で規模の拡大に全力投球してきた。そういう補助金がらみで補強している中国製自動車に対して、韓国の現代車と起亜車は、韓国のTHAAD(超高高度ミサイル網)導入にからむ経済制裁で、中国で不買対象にされたのだ。中国における韓国車への差別を考えると、中国商務省の報告書は「空々しいことを書いている」と言わざるを得ない。

     


    相手の手足を縛っておいて、「中国が勝った」というのは余りにもアンフェアな振る舞いである。これが、中国の本音であろう。

     

    中国車には、トヨタがEV(電気自動車)で特許を無料公開している恩恵もあるだろう。いま以て、満足のいくエンジンを開発できずにいる中国自動車企業が、韓国よりも技術が上とはおこがましいのだ。もっと、謙虚に振る舞うべきであろう。

     

    (2)「中国国内の市場規模や中国メーカーのコスト競争力や価格競争力は、中国の自動車産業にとっての強みであると指摘する一方、中国の政策や法律体系、中国メーカーの規模、研究開発能力や品質水準といった点では、まだ、日本やドイツ、米国の自動車産業の競争力とはまだ差があるとしながらも、「その差は縮まっている」との結論に達したという。記事は、同報告書では「自動車産業は一国の工業力と経済力そしてイノベーション能力を示す指標」であるとし、同時に最もグローバル化が進み、欧米の先進国にとって輸出の柱になっていることからも分かるとおり、「世界的に貿易金額の大きな産業」であると指摘していることを紹介」

     

    中国は、見せかけの国際競争力を自慢している。すべて補助金がつけられている事実を隠して見栄を張っているのだ。あのファーウェイ(華為技術)ですら、これまでに総額8兆円の補助金が出ているとWSJ(『ウォール・ストリート・ジャーナル』)がすっぱ抜いている。

     

    自動車産業は、雇用吸収力の大きい産業でもある。各国政府は、それだけに国産車育成にかけるエネルギーは大きなものがある。中国は、補助金で育成しようとしているが、これは間違いである。補助金目当てで独立できないのだ。

     


    (3)「中国の自動車産業の輸出額は、2013年は460億ドルだったが、18年には606億ドルまで伸び、輸出される自動車の単価も10%以上伸びたことを挙げつつ、「付加価値の高い新エネルギー車の輸出が伸びている」ことを紹介し、中国の電気バスが日本などにも輸出されていることを理由に「中国の自動車産業は世界で評価を得つつある」と主張、その競争力はもはや韓国を超えたと分析していることを伝えた」

     

    輸出金額が伸びたことを自慢している。だが、国産車か外資系かの区別がない。中国国産車は、価格の安いこと=補助金漬けである。これは本来、WTO違反である。中国製自動車が補助金なしでどこまで競争できるのか。それは、疑問である

     

    中国メディア『今日頭条』(19年8月19日付)で、「日系車と中国車の差はどこにあるのか」と題する記事を掲載し、中国人が中国車ではなく、日系車を好んで購入する理由について説明している。

     

    「日系車と中国車の差」は自動車の生命とも呼ぶべき「基幹技術そのもの」にあると指摘。その1つはエンジンに関する技術であるとしたが、ホンダのアース・ドリームス・テクノロジー、マツダの圧縮着火エンジン、スバルの水平対向エンジン等は「すべて世界トップレベルの存在」だと絶賛しているのだ。中国国産エンジンの多くは、三菱製エンジンを「リバースエンジニアリング」したものだと指摘。リバースエンジニアリングは、ある製品を分解したり動作を解析するなどして構造や動作原理を把握する調査手法である。

     

    このように、中国車は未だに自慢できるエンジンすら製造できない実情を暴露している。 また、多くの中国車は自動車の基幹技術の一つであるシャーシにおいても、リバースエンジニアリングを採用していると指摘している。こういう実情を見れば、韓国車に勝てるはずがないのだ。間違いなく、「大言壮語」である。


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    中国では、「広大な国土・4000年の歴史・人口世界一」の3セットで、世界トップの地位は不動と錯覚している。考えて見れば、自慢になるものは何もないのだ。今後の世界経済を予測する上で確定的な事実は二つある。それは、環境悪化と人口高齢化である。この二大要因によって、その国の経済の運命は決められる。

     

    中国は、環境と人口高齢化で落第である。冒頭に挙げた中国自慢の3セットのうち、「広大な国土・人口世界一」は逆効果に転じる。4000年の歴史も「革新阻害」要因になっている。未だに民主化できず、専制政治が続いているからだ。結局、中国は他国に自慢できる要因は何もないという悲劇的な結論になる。

     

    中国は、この現実を受入れようとしていない。監視カメラで国内を弾圧し、海外への領土拡大で米国覇権に挑戦できると思い込んでいる。その有力な手段が、中国の膨大な人口を利用したデータをAI(人工知能)で分析・活用すれば、資本主義経済の市場による資源配分より効率的な経済成長が可能と信じ込んでいるようだ。

     


    『日本経済新聞』(1月5日付)は、「逆境の資本主義(4) 自由より国家、走る中国」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「クリントン米政権で国防次官補を務めたハーバード大のグレアム・アリソン教授は、中国の国家資本主義が新しい産業競争で優位性を持ちうると、次のように警告する。「経済発展には個人の自由が不可欠と言われてきたが、中国は必ずしもそうでないことを証明している」。人工知能(AI)などがあらゆる産業の基盤となる21世紀には、いかにして多くのデータを集めるかが雌雄を決する。個人のプライバシーよりも国家の利益を優先する中国は間違いなく優位な立場にある

     

    下線部分は、過去の中国経済の発展が「人口ボーナス論」によって100%説明可能である点を見落としている。後講釈で国家資本主義(注:計画経済)が、市場経済に優るという結論は出せないはずなのだ。現に、中国は不動産バブルによる過剰債務で信用崩壊寸前にある。このような経済は、国家資本主義によってもたらされたものだ。日本の平成バブルを上回る過剰債務を積み上げており、市場経済システムが作動していれば、ここまで悪化せずに調整できたであろう。

     

    市場経済と計画経済の比較論は、古くて新しい問題である。1920年代から40年代にかけて盛んになった経済計画論争、或いは経済計算論争と呼ばれる論争で行なわれたもの。この時、ノーベル経済学賞受賞のハイエクは次のように主張している。「必要な情報の収集に成功し効率的な価格付けと資源配分を行えるのは、分権的なメカニズムとしての市場メカニズムだけである」という展望を示した。

     

    中国経済全体が計画経済であり、市場メカニズムを尊重しない経済政策の下では、AIで分析する資源配分が、政府の政策意図によって歪められる危険性がきわめて高いのだ。そういう国家資本主義経済へ、外資企業が喜んで参入するだろうか。企業内部に共産党支部(地区委員会)を強引に作らされるところへ進出するメリットはない。しかも、時間の経過とともに人口高齢化が進む中国市場は、魅力が低下する。AIが、中国経済活性化の切り札にはなり得ない。私はこう見るのだ。

     

    (2)「電子商取引のアリババ集団の創業者、馬雲(ジャック・マー)氏は、ビッグデータとAIを組み合わせれば、国が資源配分を差配する計画経済が機能すると言い切る。アダム・スミスが成長の源泉とした「見えざる手」と対極をなす中国式の「見える手」経済は成功を収めるのだろうか」

     

    市場経済の「見えざる手」から計画経済の「見える手」は、習近平氏が唱えた言葉だ。中国の抱える膨大な債務残高の存在を見れば、「見えざる手」による市場機能の有効性が、すでに立証されている。中国は、それを無視したから現在の苦境に落込んだのである。

     

    中国は、この苦境をAIで解決するというのだ。皮肉な話だが、膨大なデータを分析すれば、中国の適性経済成長率は、現在よりもはるかに低く出てくるはずだ。広大な中国の国土が公害で汚染されている。これを修復するにはどれだけのコストがかかるか。すでに明らかにされた試算では、環境破壊分を差し引けば実質のGDP成長率は2~3%に落込んでいる。中国政府は、AI分析か弾かれたこの数値を素直に受入れるだろうか。

     

    問題は、ここにあるのだ。政治の論理でAI分析を受入れない強引さがつきまとうことである。習氏は、AI分析で出てきた結果をそのまま受入れれば、即座に辞任を迫られるはずだ。共産主義という専制政治は、真実を覆い隠すことで生きながらえてきたのである。この原則は永遠に変らず、AI分析を生かせない政治的動機が働くはずだ。

     

    テイカカズラ
       


    中国経済が順調であれば、台湾総統選も露骨に介入したであろうが、もはやその力を失っている。1月11日に迫った総統選では独立志向の強い蔡総統の再選が濃厚となっている。

     

    中国は、台湾総統選に介入したくても「香港民主化デモ」ですっかり風向きが悪くなっている。これまで中国は、台湾に対して香港と同じ「一国二制度」を持ちかけてきた。その香港で民主化デモが止まず、中国は強硬策に出て警察に手荒な取締をさせ人気急落である。

     

    これが、台湾総統選で蔡総統の支持を増やし、中国に近い国民党の支持率を急落させている。もはや、中国は手の打ちようがなく、蔡総統の再選が有力になっている。この裏には米国の強い台湾支持がある。米上院外交委員会は昨年9月中旬、台湾を防衛する「台北法」法案を上院本会議に上程することを全員一致で決定した。

     

    同法案の狙いは、台湾を孤立させないことだ。米国が台湾と自由貿易協定を結ぶことや、台湾がより多くの国際機関に加盟すること(これに対する中国の妨害は激しさを増している)を目指している。また同法案は米国務長官に対し、外国政府に台湾との関係を強めるよう働きかけるよう指示し、台湾との関係を弱める国への経済・軍事支援を控えるよう促すことになる。台湾にとっては、願ってもないこと。米国という強い味方を得れば、中国の脅迫は問題外であるのだ。

     


    『日本経済新聞 電子版』(1月3日付)は、「台湾総統選、最終盤も蔡氏優勢、中国圧力 米援護射撃で防御」と題する記事を掲載した。

     

    11日に投開票が迫る台湾の総統選は、対中強硬路線の与党・民主進歩党(民進党)現職の蔡英文総統(63)が優勢を維持したまま最終盤に入った。香港の政情混乱を受けて高まる対中警戒感が追い風となっている。中国は軍事・外交などで蔡政権への揺さぶりを強めるが、米国の台湾接近の動きが世論の動揺を防いでいる。

     

    (1)「台湾では1日から世論調査の公表が禁じられた。民放TVBSが直前の昨年1229日に実施した最新調査では、蔡氏の支持率は45%と、対中融和路線の最大野党・国民党の韓国瑜(ハン・グオユー)高雄市長(62)に16ポイント差を付ける。美麗島電子報の調査ではその差は約28%に開いている。蔡氏は支持固めに向け中国への対抗姿勢を一段と鮮明にする。1日に総統として発表した新年の談話では、中国が「全面的に(社会に)浸透している」と情報工作への対策強化を訴えた。「民主主義と専制は同一国家で併存できない」とし、中国が目指す(高度な自治を認めるとする)一国二制度を用いた統一を拒否すると強調。香港の二の舞いを避けようとする市民の危機感に訴える」

     

    香港民主化デモで中国の脅威を知った香港市民は、台湾への移住希望者が増えている。こういう状況では、台湾総統選で中国支持派の国民党候補が勝てる可能性はきわめて低くなっている。

     


    (2)「国民党は、自ら劣勢に拍車をかけた面も大きい。総統選と同時実施の立法委員(国会議員)選を巡り11月、比例区名簿の2位に香港デモの民主派を「暴徒」と切り捨てた元大学教授を組み込んだ。4位の元陸軍中将は退役後に度々訪中し、中国・北京の人民大会堂で習近平(シー・ジンピン)国家主席の演説に聴き入る姿がテレビに映されたこともある人物だった。最悪のタイミングで党への親中懸念を引き起こした格好だ。韓氏は親中色の払拭に躍起だが、直近のテレビ討論会で対中政策への言及を避けるなど苦しさが目立つ。「蔡政権が続けば庶民の生活は一段と悲惨になる」と経済格差に不満を持つ人々に訴えるが、対中警戒感が強い若者や無党派層に支持が広がらない」

     

    国民党は本来、日本へ接近していた。それが、「一国二制度」という目眩ましを受けて、中国への接近を始めたもの。香港問題さえ起こらなければ、経済低迷で不評を買っていた蔡総統が不利な見通しであった。経済問題は現在、米国の強い支援で米台貿易協定も視野に入っており、明るい展望が描けるようになってきた。

     

    (3)「対中関係(悪化)は蔡氏の弱点になる可能性もあった。蔡政権は中国大陸と台湾が一つの国に属するという「一つの中国」原則を認めず、中国は圧力を強める。しかし対中関係を悪化させたとの蔡政権への批判は盛り上がらない。「米国との関係強化が衝撃を和らげている」(民進党関係者)からだ。中国は16年の蔡政権発足以降、台湾周辺での軍事演習を活発化。昨年3月末には中国軍機が中台の実質的な停戦ラインである台湾海峡の「中間線」を越えて台湾側空域に侵入した。一方で米国は同年に戦車やF16戦闘機など重要兵器を台湾に売却すると相次ぎ表明し、台湾の防衛強化に踏み込む姿勢を示した

     

    米国からF16戦闘機66機80億ドルの大量購入も決まった。これで中台の空軍戦闘力のバランスでは、台湾が大幅に回復したとされている。中国の台湾に対する軍事解放という「脅迫」は、その現実性において、大きく減殺されている。

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