勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    米国は、中国の送り込んだスパイ逮捕に大童だ。これを未然に防ぐには、疑わしい人物の入国拒否がもっとも有効な策である。そこで、中国人ビザ1000人余を取消し処置とした。「水際作戦」の展開である。

     

    中国外務省は米国の行動は、「あからさまな政治的迫害で人種差別」だとし、留学生の正当な権利を侵害していると主張。北京での同日の記者会見で、「中国はさらなる行動を起こす権利を有する」と同省の趙立堅報道官は述べた。

     

    趙立堅報道官は、「戦狼外交官」として有名である。恫喝発言を連発するからだ。「人種差別で、留学生の正当な権利を侵害していると」大段平を切っている。米国が、自国の機密情報窃取を阻止することが、人種差別で中国人留学生の正当な権利の侵害と騒いでいる。頭を冷やして発言すべきであろう。

     

    『ブルームバーグ』(9月11日付)は、「米国、安全保障理由に中国人1000人余りのビザ取り消し-中国側は非難」と題する記事を掲載した。

     

    米国は国家安全保障を理由に中国人留学生・研究者1000人余りのビザ(査証)を取り消したことを明らかにした。中国政府は抗議するとともに、報復の可能性を示唆している。

     

    (1)「(在中)米国大使館の報道官は9月10日の声明で、「高度な軍事力を開発する目的でテクノロジーと知的財産、情報」が中国人の大学院生や研究者に窃盗されるのを防ぐ措置の下、ビザが撤回されたと発表した。影響を受けるのは「少数の学生・学者」とし、米国は引き続き「合法的」な学生・研究者を歓迎するとコメントした」

     

    ここで米国大使館が発表した、中国人留学生・研究者1000人余りのビザ取消しは、肩書きを偽ってビザ申請した者を調査した結果、はじき飛ばしたのであろう。今回の措置は、5月の米大統領布告によるもの。すでに4ヶ月の時間を経ており、米国が厳重に身元調査して「スパイ予備軍」を排除したのであろう。多くは、中国人民解放軍ないし関連大学や研究所に所属する「スパイ予備軍」だ。これまで、FBIに逮捕された人間は、すべてこのケースに該当する。

     

    それにしても1000人余とは凄い。1人1テーマのスパイでも、1000余のテーマが労せずして中国に渡るリスクを、米国は抱えるところだった。油断も隙もならない中国の泥棒根性に呆れる。

     

    (2)「中国外務省は米国の行動は「あからさまな政治的迫害で人種差別」だとし、留学生の正当な権利を侵害していると主張。北京での同日の記者会見で、「中国はさらなる行動を起こす権利を有する」と同省の趙立堅報道官は述べた。米国大使館によると、ビザ取り消しは中国人民解放軍と関係のある中国国民を対象にした5月の大統領布告の下で行われた。ビザが無効になった個人についての情報は明らかにされていない」

     

    米国大統領布告で、すでにビザ発給を厳重にすると予告している。中国は、それでも1000人余も申請ビザに潜り込ませてきたのだ。その大胆不敵なやり方に、腹が立つやら、またそこまでやらなければ、先端情報を得られないという後進国特有の事情を抱えているに違いない。こんな状況で「世界覇権」を夢見ている。どこか、頭の構造がおかしくなってしまったのだろう。

     

    米国留学が困難になれば、日本へ向かってくるだろう。日本も入国ビザはより慎重にして、「ネズミ一匹」通さない体制を組むべきだ。日本国内にある「孔子学院」は、スパイの拠点になるので、警察庁は監視の目を光らしておくべきだ。

     

    中国外交部の「戦狼報道官」は、「中国はさらなる行動を起こす権利を有すと」と、大見得を切っている。そういう啖呵を切る前に、中国人留学生が米国でいかなる「スパイ活動」をして逮捕されているかを知るべきだ。

     


    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(9月8日付)は、「
    FBIから逃げる中国研究者、緊迫の攻防」と題する記事を掲載した。

     

    米当局が中国軍とのつながりが疑われる中国人研究者の捜索を強化する中、追う側も追われる側も緊迫度が増している。検察当局の話からは、逃亡計画失敗やごみ箱に捨てられた証拠、空港での捕物劇といった生々しい攻防が浮かび上がる。

     

    (3)「連邦捜査局(FBI)捜査官は今夏、数十人の研究者を尋問し、研究内容や軍との関連を問いただした。ここ数週間、捜査範囲が拡大したことを受け、一部の容疑者は当局の追及を逃れようとし、少なくとも2人の研究者が逮捕された。彼らの研究は、中国人民解放軍の計画と関係している疑いがある。検察側の裁判資料でそれが明らかとなった」

     

    FBIが、集中的に捜査している。スパイ予備軍の摘発である。中国にとっては、スパイほど、「おいしい稼業」はない。ほとんど無コストで、莫大な成果を手に入れるからだ。

     

    (4)「検察当局によると、うち1件では、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の人工知能(AI)分野の研究者グアン・レイ容疑者が、FBIが捜査中の技術窃取疑惑に関連する証拠を破壊した罪に問われている。グアン容疑者は、ロサンゼルス国際空港から出国するところを止められ、その数日後、データを消去したコンピューターのハードドライブ(HDD)をごみ箱に投棄した。検察側はこう主張する」

     

    証拠隠滅罪である。禁固刑で20年が予想される。

     


    (5)「もう1件では、バージニア大学で流体力学を研究する科学者フー・ハイチョウ容疑者が、指導教官のプロプライエタリソフトウエア(ソースコードが未公開のソフト)のコードを盗んだ疑いがある。この教官は米海軍の資金援助を受け、20年前からソフトの開発に取り組んでいた。フー容疑者は先月、シカゴ発の便に搭乗するところを米当局に阻止された。指導教官は彼が中国に戻るつもりだとは聞いていなかったという。検察側は裁判資料でこう主張した」

     

    米海軍の資金援助を受け、20年前から研究してきたソフトの窃取容疑である。もし、中国の手に渡っていたらと、思うとゾッとする。これは、証拠隠滅罪を上回る窃盗罪である。重い罪に服するのだろう。

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    基礎研究実績の乏しい中国が、先端科学へ挑戦している不思議は、米大学への留学による研究成果窃取によるものだった。ここ1年ほど、FBI(米連邦捜査局)は人民解放軍所属という身分を隠した留学生を集中的に捜査、起訴している。有罪になれば、最大で禁固刑で20年という。中国から送り出される中国スパイは、捕まれば20年の刑務所暮らしになる。

     

    『大紀元』(9月10日付)は、「米国で起訴された中国国防大の学生、婚約者も逃亡図り逮捕、軍用スパコンを研究」と題する記事を掲載した。

     

    証拠隠滅および米連邦捜査局(FBI)の調査を妨害した疑いで8月に米国で逮捕された中国国防科技大学の学生関磊容疑者の婚約者は、証人になると承諾した後、国外逃亡を企み、空港で逮捕された。

     

    (1)「関容疑者は7月、FBI調査官との面談の2日後に、急いで中国へ帰国しようとしたが、「米国の利益を損害した」と空港で審査官に足止めされた。自宅に引き返した彼は、ハードドライブを破壊しゴミ箱に捨てた。29歳の関容疑者は、2018年からカリフォルニア大学ロサンゼルス校に留学しており、人工知能を中心に研究している。検察当局は、同容疑者が機密の米国ソフトウエアや技術データを中国に送り、核爆発アプリケーションを備えたスーパーコンピュータの開発に使用しようとしたと疑っている。同容疑者の楊智慧婚約者も、同じ大学で学ぶ中国人留学生であり、証人になることに同意していた。8月31日に検察官に通知せずに中国行きの飛行機に搭乗しようとして、同日、空港で逮捕された」

     

    中国にして見れば、最先端の研究成果を苦もなく窃取できる場所が、米国大学研究室であった。過去、どれだか盗み出したか。

     

    (2)「FBIはこの1年間、中国の研究者の動きを注視し、彼らは米国の研究機密漏洩の経路の一つだとわかった。米国司法省はこの夏、複数の中国軍出身の研究者を起訴した。駐米中国領事館のウェブサイトでは、空港での電子機器検査について留学生に警告を発している。また中国の外交官が各地を回って、捜査に警戒するよう留学生に注意を促したり、中国軍関係者に電子機器やソーシャルメディアのチャット記録などを削除するよう促したりした関容疑者は2020年9月17日に証拠隠滅の罪で逮捕される。これは最高で20年の懲役刑が科される重罪に当たる」

     

    中国の在米領事館が、学生スパイが安全に任務遂行できるように手引きしていた実態が分かっている。米国政府が、ヒューストンの中国領事館閉鎖を命じたのは、こういうスパイ手引きを大掛かりに行っている証拠を掴んだに違いない。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月25日付)は、「中国軍の極秘研究やスパイ活動、米大学が隠れみの」と題する記事を掲載した。

     

    (3)「中国軍の学術機関の研究者が、米ボストン大学の著名物理学者ユージン・スタンレー教授(78)の下で学びたいと志願した際、スタンレー氏は彼女の所属先に不審を抱かなかったと話す。「私は政治に全く興味がない。私は科学者だ」とスタンレー氏は話す。同氏の幅広い研究には、人工知能(AI)を使って金融市場を解読する方法や、統計物理学を応用した病気の予防策などがある」

     

    スタンレー教授は、統計物理学の名高い専門家だ。同氏の経歴書のコピーによると、同氏の研究室に在籍した研究員や客員研究員はこれまで200人を超え、そのうち中国出身者は75人前後とみられる。WSJが報じた。中国出身者が4割弱を占めている。組織的なスパイ活動であった。

     

    (4)「この中国人研究者は最近、米国ビザ(査証)申請の際に身分を偽り、中国軍中尉であることを隠していたとして起訴された。この事例は、最先端研究の国際協力に対する米大学の開放性が、潜在的に悪用される可能性があることを浮き彫りにした。これまで国防総省や国立衛生研究所(NIH)などさまざまな米政府機関が警鐘を鳴らしてきたのは、中国が米大学の専門知識を活用し、中国の軍事的・技術的な競争優位を高めようとしていることだ」

     

    中国が、米国から簡単に最先端研究を盗み出せたのは、米大学の開放性を悪用したものである。

     


    (5)「ボストン検察当局は1月、中国の人材引き抜きを巡って注目度の高い事件を告発。ハーバード大学化学部の学部長が、中国に外国の高度専門人材を呼び込む「千人計画」を通じて、中国から数百万ドルの援助を受けていた容疑で逮捕された。罪状認否はまだ明らかでない(注:起訴された)。また、テキサスA&M大学システムでは、調査の結果、中国の人材採用プログラムに100人以上の教員が関与していたと判明。このうち参加を公表していたのは5人のみだった」

     

    中国の「千人計画」では、米国の超一流研究者へふんだんに資金を与えていたことが判明している。ハーバード大学化学部学部長は、ノーベル賞候補にも上がった著名化学者である。法廷に立たされたのだ。

     

    (6)「大学はオープンな人材交流を続ける一方で、中国人民解放軍(PLA)との協力では明確な線引きをすべきだ。無党派の政府系シンクタンク、オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)の2018年の報告書はこう指摘した。「敵対する軍隊が専門知識や技術を開発するのを助けることは国益にならない」。報告書の中で主筆者のアレックス・ジョスク氏はこう述べた。同氏は人民解放軍がそれに先立つ10年間に、科学者やエンジニア2500人以上を資金援助したことを突き止めた。受け入れた大学側は彼らが軍に所属していることを知らない場合もあった

     

    ASPIの報告書によれば、人民解放軍が2018年以前10年間に2500人以上の研究者に資金援助している。中国は、自前で研究するよりも手軽に「最先端研究」を手に入れてきた。今後は、この道が封じられる。

     

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    TikTok(ティックトック)は、世界的な人気アプリである。豪州のシンクタンクは、TikTokが北京で情報操作可能という警告を発表した。豪州のシンクタンクは、ファーウェイの「5G」が、北京で操作可能という事実を世界で初めて公表したことで知られている。

     

    自民党は10日、TikTok問題についてTikTok日本代表を呼んで質疑応答をするなど、情報漏洩に神経を払っている。豪州シンクタンクの報告を参考にすることが望まれよう。第三者組織によるチェックが不可欠である。

     

    『大紀元』(9月10日付)は、「豪シンクタンク、TikTokは『強力な中国の政治家』海外でも情報の流れ操作」と題する記事を掲載した。

     

    オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)は、北京企業の提供する短編動画投稿アプリTikTokは、中国共産党にとって好ましい世界世論の形成に強い影響力をもつことから、「強力な政治家」と喩えた。

     


    (1)「ASPIは最近、「TikTokとウィーチャット、グローバルな情報の流れを操作する」と題した新たな報告書の中で、TikTokはどのコンテンツを表出させるかを操作しているとした。あらゆる政治的・社会的なトピックを検閲し、コンテンツの降格や削除を行なっている。同報告は、「地理的な地域、トピック、言語を越えた情報の流れを秘密裏にコントロールする能力を持ち、展開することで、TikTokはグローバルな影響力を持つ強力な政治参加者とみなすことができる」としている」

     

    TikTokは、どのコンテンツを表出させるかを操作している。TikTokは、中国政府と無関係であると主張しているが、それは偽りであることが証明されている。創業者自身が共産党員であること。内部に共産党支部が存在し、会社を監視しているからだ。

     

    (2)「2019年の内部文書で、TikTokは、米トランプ大統領や日本の安倍総理大臣などの国家指導者の情報を含むコンテンツについても検閲している。また天安門広場、チベット、新疆ウイグル、法輪功といった中国共産党が検閲している情報も取り下げ対象にするよう、社員に通知していることが発覚した。ASPIによれば、TikTokの社員がこの政治検閲問題は今も行われていると暴露した」

      

    TikTokは、米トランプ大統領や日本の安倍総理大臣などの国家指導者の情報を含むコンテンツについても検閲しているという。ここまで来れば、立派な諜報機関である。

     

    (3)「TikTokは、2020年7月時点で世界中に7億人近いユーザーがいる。このうち、1億人は中国国外のアカウントだという。中国でもっとも人気のある多機能アプリの微信(ウィーチャット)は、騰訊(テンセント)が所有している。フェイスブックやツイッター、インスタグラムなど、国際的なソーシャルメディアネットワークの大部分は、中国共産党の検閲システムにより同国内では利用することができない。しかし、 TikTokやウィーチャットなどの中国企業のアプリは海外に拡大して商業的利益を得ている。さらに、これらの中国アプリは、表現の自由を含めて、中国政府の好まない話題を検閲するシステムをそのまま「輸出」している」

     

    中国国内では、フェイスブックやツイッター、インスタグラムなどは利用不可能である。だが、中国アプリは、海外に拡大して商業的利益を得ている。これは、極めて不公平である。中国は、他国が中国アプリを禁止しても、異議申し立てできない立場だ。

     

    (4)「2019年9月25日、オーストラリアの『外国勢力の干渉に関する委員会』では、TikTokおよびウィーチャットの活動について調査報告されている。それによれば、「字節跳動も騰訊も共産党による影響下にある。企業内の中国共産党委員会を通じて、サイバーセキュリティ法を施行している」。中国の法律によれば、企業は中国共産党当局にあらゆるデータを提供する義務がある。さらに、TikTokなどのソーシャルサイトは、共産党のプロパガンダを発信しなければならない」

     

    豪州政府の『外国勢力の干渉に関する委員会』報告でも、TikTokおよびウィーチャットが中国共産党による影響下にあると断定している。

     

    (5)「ASPIの報告書によると、中国政府は長い間、TikTokおよびウィーチャットなど党紀に従う企業に作られたアプリを通じて、世界の情報の流れを操作しようとしてきたと指摘する。ASPIは、こうした中国共産党によるグローバル規模の情報操作への対応について、どのように対処すれば良いかを提言した。各国は自国内で使用されるアプリならば、どこの国が開発したものであっても、信頼できる第三者組織から確認できるユーザーデータ保護システムの枠組みをつくり、その基準に従わなければ、アプリの活動を禁止させるべきだとした」

     

    外国製アプリは、信頼できる第三者組織から確認できるユーザーデータ保護システムの枠組みをつくり、海外との関係を絶つべきとしている。日本でも、TikTokが人気アプリであれば、中国本社の関係を絶って日本独自の第三者組織による監視が必要であろう。 


    テイカカズラ
       

    米国による中国半導体産業への報復攻撃は、戦時中の日本で見せた都市への「絨毯爆撃」と同様の凄まじさを見せている。これが、「カーボーイ精神」というのだろう。米国の善意を裏切り産業スパイを重ね、米国の技術を強制開示させた恨みが、集中的に晴らされている感じだ。日本は、太平洋戦争で米国の量的な反撃力の大きさを体験させられた。今度は、中国がその「洗礼」を浴びている。

     

    『大紀元』(9月9日付)は、「米、中国半導体最大手への制裁検討、軍事用の疑惑か」と題する記事を掲載した。

     

    94日、ロイター通信などの報道によると、米政府当局は、半導体受託生産の中国最大手「中芯国際集成電路製造(SMIC)」を輸出規制の対象に追加することを検討している。報道を受け、SMICの株価が7日の香港市場で23%急落した。

     

    SMICは2000年に、米国と台湾のチップ企業のベテランによって設立された中国最大の受託チップメーカーへ成長した。他のチップメーカーと同様に、SMICは米国企業の高度な技術に頼ってチップの製造とテストを行っている。

     


    (1)「9月6日付の米『ウォール・ストリート・ジャーナル』(WSJ)が消息筋の話として報じたところによると、米国の防衛請負業者SOSインターナショナルは8月発表した報告書で、SMICが中国軍の国防建設プロジェクトを支援していることを示し、米政府に警鐘を鳴らしたという。報告書によると、SMICは中国の大手国有防衛企業と提携している。また、軍事的背景を持つ中国の大学の研究者らは、SMIC製品の要求事項に対応する技術を開発している。大学のうちの一つは、スーパーコンピュータを利用したシミュレーション(核実験)を実施した疑いで、2015年に米国商務省の輸出禁止対象のブラックリストに登録された」

     

    中国の半導体企業が、中国政府や人民解放軍と無関係とは信じられない。最初から、密接な関係があると見るのが自然であろう。米国政府が、輸出規制を掛ける根拠は十分あろう。SMICの株価が、9月7日の香港市場で23%も急落したのは、中国経済への影響が大きいことを示唆している。

     

    (2)「報告書は、「中国の軍事アカデミーや防衛産業向け工業団地の研究者は、SMICの製品仕様を研究するため、SMICのプロセスやチップを使用しており、他の工場ではチップを生産していない」とした。また、結論を裏付けるため、中国の軍事大学が発表した論文も引用している。情報筋によると、同報告書は米商務省の産業安全保障局と今回のリスク評価に関わる米政府当局者など、トランプ政権の複数の機関で閲覧されているという。WSJによると、トランプ政権がSMICをブラックリストに載せるとすれば、それは中国通信機器最大手である華為技術(ファーウェイ)への制裁と同じ手順を踏む可能性があるという」

     

    米国の防衛請負業者SOSインターナショナルの報告書で、SMICが中国軍の国防建設プロジェクトを支援していることを示し、米政府に警鐘を鳴らした。これは、相当の証拠を握っての報告であろう。中国でSMICが、政府と無関係とは信じられない。

     


    (3)「米政府は、ファーウェイを禁輸対象の「エンティティリスト」に追加した後、一連の制裁強化措置を次々と打ち出し、ファーウェイをいよいよ窮地に追い込んでいる。SMICの香港上場株は97日、23%下げ、716日のハイテク株暴落以来の最大の下落となった。SMICの取引先やサプライヤーの株も下落している。SMICの競合会社、半導体ファウンドリー大手の台湾UMCは9%以上も急騰した。SMICは5日、同社のWeChat内の公式アカウントで長文の声明文を掲載し、自社の製品とサービスは民間および商用利用のみを目的としており、軍事利用目的ではないと主張した」

     

    SMICが、米国からファーウェイ並みの禁輸措置を受ければ、中国半導体産業は大きな痛手を受ける。まさに、21世紀最大の戦略産業が半導体である。そこに狙いをつけて「精密誘導爆弾」を投下している感じだ。米国の「戦わずして勝つ」という戦略であろう。

     

    中国は、半導体産業がヨチヨチ段階で「世界覇権論」をぶち上げてしまい、自ら好んで米国の報復攻撃を引き寄せたようなものである。口は災いの元と言うが、この中国の失敗は、永遠に語り継がれるだろう。


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    韓国の文正仁(ムン・ジョンイン)大統領統一外交安保担当特別補佐官が、私人(延世大学名誉特任教授)肩書きで『ハンギョレ新聞』に寄稿した。肩書きは私人でも、現職の大統領特別補佐官に変わりない。文氏の発言は型破りのものが多く、中国礼賛・米国批判であった。南北朝鮮統一には、米軍の存在が「邪魔」というもので、米韓対立で決着のつかない問題は、中国に仲介して貰え、という非常識な内容であった。

     

    今回の寄稿は趣きを変えて「中国批判」に転じている。読む方が戸惑いを覚えるほどの「転向」である。文大統領の外交路線を変更させる「狼煙」のような位置づけかも知れない。中国の最近の外交が、脅迫じみていることから「覇道」と定義づけ、道徳に裏付けられた「王道」へ戻れ、と主張している。

     

    「覇道」や「王道」という言葉を目にして思い出すのは、孫文の著書『三民主義』である。中国は、決して武力を用いた「覇道」の道を選んではいけない。高い道徳による「王道」を進むべしと説いている。中国革命の原点は、この「三民主義」にあった。共産党が、これを乗っ取り換骨奪胎してしまったのである。この精神が生かされているのは、現在の台湾である。

     


    『ハンギョレ新聞』(9月7日付)は、「中国が新冷戦を避ける道」と題する寄稿を掲載した。筆者は、文正仁(ムン・ジョンイン)延世大学名誉特任教授である。

     

    (1)「マイケル・ポンペオ米国務長官が7月23日、ニクソン記念館で行った次のような主旨の演説を行った。

    ・共産党独裁が人民を抑圧する国

    ・覇権への野望で世界を脅かす国

    ・新型コロナウイルスを全世界に広げた国

    ・不公正貿易で産業技術を盗んで米国でスパイ活動をする国

    ・香港市民の自由とチベット・ウイグルの少数民族の権益を抑圧する独裁国家

    ・軍事力増強を通じて世界平和と南シナ海・東シナ海での海路の安全を脅かす国」

     

    もはや、コメントをつけるまでもない。周知の事柄である。

     

    (2)「8月24日、中国共産党機関紙「人民日報」がポンペオ長官の批判を26項目に分けて反論した。

    ・中国共産党は人民のための中国の特色ある民主主義に忠実である

    ・中国は反覇権主義を外交政策の基本規範とし、国際秩序を誠実に守っている

    ・新型コロナウイルスに関するすべての情報を透明に公開し、その克服のノウハウを国際社会と共有している

    ・不公正貿易に対する米国の要求を受け入れ、革新と研究開発(R&D)投資で米国と競争している。産業スパイ行為というのは事実無根だ

    ・香港の国家安全維持法は内政問題で、分離主義者や外勢と結託し、国基を揺さぶる人たちのみ適用される。また、ウイグルの政治犯収容所は潜在的テロ分子らに対する精神及び職業訓練場所だ

    ・中国の軍事力は米国に比べて劣勢であり、南シナ海と東シナ海で海路安全を国際法に基づいて完全に保障する」

     

    以上を読むと、すべて虚偽と言わざるを得ない。例えば、「中国共産党は人民のための中国の特色ある民主主義に忠実である」である。人民に選挙権も与えず、上からの指示で選ばれる代議員が決める政策は形ばかりである。この調子で言えば、北朝鮮も民主主義国になる。国民を監視し弾圧する政治は、民主主義でなく独裁主義と呼ぶのだ。民主主義の定義を変えてはならない。

     

    (3)「中国の立場を額面どおりには受け入れられない3つの理由がある。

    まず、中国政府の戦略的曖昧性と混乱だ。習近平主席は就任後、全人類とともに繁栄する「和平発展」と人類運命共同体、米国に言うべきことは言いながら協力と競争をするという「新型大国関係論」、周辺国と親善、誠意、互恵、そして包容関係を維持するという「親・誠・恵・容」政策、そしてアジア諸国と協力、包括、共同、持続可能な安保を模索するという「新アジア安全保障」構想などを提示した」

     

    習氏は、第1期政権では、国際社会と協調する姿勢もみせていた。

     

    (4)「中国は最近、和平発展に相反する「大国崛起」を追求しており、人類運命共同体を標榜する「一帯一路」構想も新帝国主義という非難を浴びている。「親・誠・恵・容」とは裏腹に、周辺国との紛争が絶えないうえ、アジア国家の期待を集めた「新アジア安全保障」は、形骸化して久しい。残ったのは「新型大国関係論」だけだ。このような戦略的曖昧性と混乱が周辺国の信頼を損ねている」

     

    第2期政権では、大国主義を臆面もなく掲げている。挙げ句に、世界覇権に挑戦すると言い出したのである。平和的手段での「協調と競争」であれば容認されるが、強奪・脅迫という帝国主義そのものに変貌している。

     


    (5)「次に、ホワイトハウスの「アメリカファースト」政策で米国の国際的地位が大きく損なわれたことを受け、中国では道徳的リーダーシップに対する議論が活発に行われている。例えば、清華大学の閻学通教授は、荀子を引用し、世の中には3つのリーダーシップがあるという。徳治で人と天下を取る王道、政治力と武力を通じて天下の一部を得る覇道、強圧で諸侯国一つ程度を強奪する強権の3つだ。閻教授は、中国が米国に勝つためには王道を歩まなければならないと主張する」

     

    中国が、世界に受入れられるための条件は、世界の普遍的価値である民主主義(独裁主義でない)を受入れるしかない。それは、共産主義の放棄である。腕力(軍事力)での世界支配は中国を滅亡させる。よって、中国の世界覇権論=共産主義放棄と同意語になろう。

     

    (6)「大規模な開発援助と最近の新型コロナ防疫の成功で、中国の国際的地位が改善したのは事実だ。しかし、果たして中国は米国を凌駕する道徳的リーダーシップを発揮して、世界の人々の心をつかむことができるのだろうか。THAAD(高高度防衛ミサイル)問題で韓国に示した態度、南シナ海での行動、コロナ禍以降人口に膾炙する「戦狼(せんろう)外交」など、振り返ってみると、中国外交は王道ではなく覇道と強権に近いものに見える」

     

    中国外交の現状は、覇道である。チェコ上院議長の台湾訪問に対し、臆面もなく「代償を払わせる」と恥ずかしげもなく言ってのける感覚は覇道そのもの。外道である。

     


    (7)「最後に、中国例外主義の問題だ。米国も例外主義を掲げているが、自由や民主主義、人権という普遍主義でこれを正当化しようと努めてきた。一方、中国の例外主義には、説得力のある普遍的な要素がない。文明国家や中国の特色ある社会主義、中国の特色ある民主主義という特殊性だけが強調される。中国が普通の国なら問題にならないだろう」

     

    中国の特色ある社会主義は、一国レベルで行う話だ。だが、世界標準にはなれない。他国が賛成しないからだ。この限界と矛楯を認識すれば、世界覇権論など出るはずがない。

     

    (8)「世界を主導するリーダー国になるためには、2つのうち1つを選ばなければならない。中国の特殊性を全世界に伝えて世界標準にするか、さもなければ中国の特殊性と普遍性を折衷しなければならない。前者の場合、「中国モデルによる世界支配」という反発が激しくなりかねない。結局、可能なのは後者の道しかない。中国指導部の柔軟性と変容性が求められる」

     

    このパラグラフの結論は、共産主義のままで世界覇権が不可能という事実だ。難しい話ではない。戦前の日本は「八紘一宇」というアジア覇権を目指して挫折した。ましてや、中国の世界覇権論などは、中国を滅ぼす危険性を秘めた大博打である。習氏の「戦犯1号」は確実だ。

     

    (9)「中国が、米国との新冷戦を避け、尊敬される大国になるためには、国家戦略の方向性を明確にしなければならない。和平発展路線に忠実で、王道を行動で示し、中国的特殊性と世界的普遍性を調和させてこそ可能なことだ」

     

    文正仁氏がこういう結論を出したことは、韓国外交が「親中朝・反日米」路線から決別する意味であろう。ここまで中国への認識を変えながら、韓国が中国への「秋波外交」を続けるとしたら、韓国も滅亡の運命にある。

     

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