勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 中国経済ニュース時評

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    ファーウェイ(華為技術)は、米国による輸出禁止措置が、時間とともにボディーブローのように経営へ効いてきた。具体的には、ドル資金の調達が難しくなってきたことだ。ファーウェイは当初、米国による制裁影響は軽微であると高を括ってきた。それは、やせ我慢に過ぎず、海外企業へ自社保有特許の販売を模索し始めている。

     

    『ロイター』(7月20日付)は、「『飢餓』が迫るファーウェイ、頼みの資産売却も望み薄」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)は英米両国から新たな締め付けを受けており、創業者の任正非最高経営責任者(CEO)は知的財産の売却を検討している。しかし海外にはファーウェイの知財、あるいは携帯機器や通信設備事業の買い手はほとんどいない。中国政府も英米への屈服と受け取られるような売却を認めないだろう。ファーウェイは海外での資産売却が進まず、「飢餓状態」に陥りそうだ」

     

    米国政府が、ファーウェイへの輸出禁止措置を発表してから、ちょうど1年が経つ。当時の記事によれば、ファーウェイと言えども米国の技術とソフトに依存しているから、いずれ大きな痛手を受けるだろうと予測されていた。ファーウェイは、中国経済の将来を担う中核企業である。それだけに、米国は必殺の技を繰り出したと言うべきである。米国の「知略」に負けたのだ。

     

    (2)「米中対立を回避する任氏の試みは頓挫した。ファーウェイは民間企業だとの訴えにもかかわらず、中国の外交筋は同社の商業的利益は中国政府の外交問題と不可分との方針を明確にした。また中国政府は、英政府がファーウェイ製品の国内移動通信システムからの除外を求める米政府の圧力に屈すれば、報復措置を取ると警告していた。英政府は最終的に米国の要求を受け入れた」

     

    ファーウェイは、社員株主制を取っていると強弁してきた。だが、米国法学者の分析によって、実態は国有企業であると見抜かれている。米国は、豪州の助言でファーウェイへ最初の制裁を加えた。英国も、今回の新型コロナウイルス事件と、香港問題で米国に同調してファーウェイ5Gの不採用に踏み切った。英国は、香港の「一国二制度」破棄で煮え湯を飲まされたことで、「中国不信」が深まっている。

     

    (3)「ファーウェイ事業のかなりの部分が、こうした措置の標的となる。同社は2019年の売上高1230億ドル(約13兆1610億円)の40%余りを海外が占めた。しかし、同社製スマートフォンは米グーグルのアプリが利用できなくなり、幹部は米国のビザを取得できず、米国が圧力をかけ続けるのも確実で、企業価値を守るため、海外資産売却が一段と重要な検討課題になっているように見える」

     

    ファーウェイの売上高の4割強が、海外売り上げである。この部分が、米国の「猛攻撃」で

    大きな減少を迫られている。企業価値(株価)を維持するには、海外事業を売却する必要に迫られている。まさに、米国による「絨毯爆撃」の被害が大きく広がってきたのだろう。

     

    (4)「第5世代(5G)通信関連の知的財産を売却するという案は、任氏自身が昨年持ち出したものだ。米国に5G通信分野のトップ企業はないが、例えばシスコなどの企業がファーウェイから特許を手に入れれば、市場で代表的な企業になるかもしれない。米政府は中国の原発技術で同じような政策を取った。ただ、米当局者はこうした見方を否定した」

     

    ファーウェイは、5Gにからむ知的財産の売却を模索している。米企業に売却して資金回収を図る狙いだ。米政府は、こういう動きを否定している。

     

    (5)「ファーウェイは海外の通信機器事業を韓国のサムスン電子に売却しようとするかもしれない。顧客はファーウェイのことは脇に置き、エリクソンとノキアの2強による通信機器市場の寡占状態を防ぐためにサムスン電子をとにかく歓迎するだろう。最大の問題は中国国内の世論だ。ファーウェイが資産を売却すれば、米政府はファーウェイと、その延長として中国政府が敗北を喫したと大騒ぎするだろう。中国政府には受け入れ難い展開だ

     

    ファーウェイは、資金繰りで行き詰まっている。仮に、海外企業に資産を売却できる見通しができても、中国政府は米国に屈したものとして受け付けないだろう。となれば、中国政府がファーウェイに対して、資金繰りの面倒を見ざるを得まい。苦しい局面である。

     

    (6)「ファーウェイが、海外の携帯端末事業を手放さないのはこのためともいえる。同社製端末はグーグル製アプリが使えず、機能不全に陥っている。ファーウェイは代わりに独自の基本ソフト(OS)「ハーモニー」の導入を進めているが、グーグル製OS「アンドロイド」から大きなシェアを奪うことはなさそうだ。軍歴を持つ任氏がたとえ「降伏」を望んでも、「司令官」である中国政府がそれを許さないだろう」

     

    中国政府は、ファーウェイが民間企業である、と言い続けてきた。だが、ファーウェイの海外事業の売却は、中国のプライドがかかるとして拒否する方向である。ファーウェイは、この間にたって迷走せざるを得なくなった。

     

     

     

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    米国ワシントンでは、不気味なほど議論がないままに、米国が中国との終わりのない紛争に陥っている様相を感じられるという。『フィナンシャル・タイムズ』(7月16日付)が、米中対立に向けた米国の決意のほどを報じている。米中問題については、あれこれ議論している段階を超えて、中国へ「一撃加えろ」という米国の超党派的な無言の合意ができあがっているというのだ。

     

    「ヤンキー」と言えば、日本では「不良」を意味する。本来は、米国開拓者魂を意味するのだ。不安な中で荒野を切開く一群の人々が、襲ってくる敵に無言で立ち向かう姿を表わしているのかも知れない。本欄ではこれまで、この「ヤンキー魂」が今も米国発展の原動力になっていると指摘してきた。現在の米国は、中国との対決に腹を決めて「来るなら来い」という居直った気持ちを表わしているように見えるのだ。その一つの現象が、米国議員によって22年の北京冬季五輪不参加論が掲げられたことだ。

     

    『中央日報』(7月21日付)は、「米中葛藤は最高潮、2022年北京冬季五輪にボイコットの可能性」と題する記事を掲載した。

     

    米中関係が悪化し、米国が2022年中国北京冬季オリンピック(五輪)の参加をボイコットする可能性があるという観測が提起された。

    (1)「香港『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』は、新冷戦と呼ばれる最近の雰囲気上、米国を中心に北京冬季五輪へのボイコットの動きが起きる可能性があると20日、報道した。対中国強硬論者であるマルコ・ルビオ米国上院議員が中国開催権剥奪を主張したことに続き、リック・スコット上院議員は開催国の交代を要求できる方法を用意した」

     

    新疆ウイグル自治区の住民100万人が、強制収容所に入れられている。職業訓練という名目だ。ウイグル文化の消滅が、目的とされている。ナチスと同類の犯罪である。さらに、香港の民主主義を弾圧すべく「香港国家安全維持法」を強引に導入した、中英協定による「一国二制度」の破棄である。こういう国家が、平和の祭典であるオリンピックを開催するに不適切であることは疑いない。こうして、北京冬季五輪反対論が出てきたのであろう。

     


    (2)「米国主導で英国、オーストラリア、ニュージーランド、カナダなどが参加する「ファイブアイズ同盟」が技術・貿易・理念などで中国との緊張を高めており、新型コロナウイルス感染症(新型肺炎)の中国責任論も浮上している。カナダ出身である国際オリンピック委員会のディック・ポンド委員は、「来年の東京夏季五輪が再び延期されたり中止となったりすれば北京冬季五輪も中止すべきだろう」と主張した」

     

    新型コロナウイルスによるパンデミックが、世界大混乱を招いている。中国は、その責任を負うべき立場である。その点について曖昧にするどころか、米国原因説をまき散らすことまでやっている。「懲罰を加えろ」という反感が強まっているのだ。来年夏の東京五輪が、再度の延期になれば、北京五輪も中止すべきという意見も出ている。

     

    (3)「米外交問題評議会(CFR)の黄厳忠・世界衛生問題上席研究員は、「新型肺炎で中国は米国と欧米諸国の政治家たちの『避雷針』になるだろう」とし、「反中世論の拡大を利用して北京五輪のボイコットを要求する可能性がある」と見通した。ロンドン大学スティーブ・ツァンSOAS中国研究院院長も「今の状況でボイコットの危険は実在する」と話した」

     

    新型コロナウイルス発症に対する中国への反感は、世界中に広がっている。その抗議の姿勢をはっきりと示すべく、北京五輪を中止すべきだというのだ。ここまで事態が広がると、中国の対応は難しくなろう。

     

    仮に、西側諸国が北京五輪へ参加しない事態になれば、中国は世界からどのように見られているかが分かるだろう。2022年は、習近平国家主席の任期延長が議論される年になる。習氏の退任を促すには、北京五輪不参加が大きな力を発揮するかもしれないのだ。

     

     

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    4~6月期のGDPは、前年同期比で実質3.2%。事前予想を上回る「好成績」であった。その中身は、旧態依然のインフラ投資と不動産開発投資である。いずれも、もはや非効率投資の典型例である。

     

    インフラ投資は、資金回収が超長期のものばかりだ。採算が効率である投資は、これまでにあらかた終わっているはず。今は、「落ち穂拾い」でインフラ投資をしているであろう。GDP押上げだけが目的である。

     

    不動産開発投資も事情は似たり寄ったりだ。空き家5000万戸もある中で、さらなる住宅投機が成功するだろうか。消費者=投機家は、政府が住宅の値下がりを防いでくれると「当てにする」神頼み投資である。危ない投資だ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(7月20日付)は、「中国の地方『隠れ債務』膨張、傘下投資会社の起債5割増」と題する記事を掲載した。

     

    中国の地方政府で「隠れ債務」が膨らんでいる。新型コロナウイルスを受けた景気対策でインフラ投資を積み増しているためだ。地方政府傘下の投資会社「融資平台」の2020年の社債発行額はすでに50兆円規模に達し、起債のペースは前年を5割上回る。中央、地方政府が一部の救済を迫られるとの見方もあり、金融市場のリスク要因になっている。

     


    (1)「中国全土の融資平台が今年17月中旬までに発行した社債は前年同期を5割上回る3兆3000億元。中国の調査会社、大智慧のデータによると、すでに19年通年(4兆4000億元弱)の4分の3に達した。地方政府のこうした非公式な「隠れ債務」と公式債務の合計は70兆元に迫る。中国の20年46月期の国内総生産(GDP)は前年同期比で実質3.%増と、主要国の中でいち早く新型コロナウイルスの影響から脱しつつある。ただ中身をみると所得や消費の回復は鈍く、不動産やインフラ整備への依存が続く。国債、地方債と並ぶ資金源が融資平台による調達だ」

     

    小林旭の歌に、「昔の名前で出ています」という一節がある。中国の景気回復の切り札は、相変わらずの「インフラ投資と住宅開発投資」の2本建てである。まさに過剰投資によって、一時的な景気落込みの痛手を癒やそうという「モルヒネ」にしかすぎない。今の、中国にそんな高尚なことを言っていられる余裕はないのだ。

     

    (2)「融資平台の債務について、国務院(政府)は「地方政府の合法的な資金調達ルートは地方債のみ」と定める。中央、地方政府とも元利払いの保証や救済義務はないと繰り返し表明する。しかし、実際には融資平台の債務すべてを政府が見捨てるとは考えづらい。人材や公共事業を巡って関係が深く、規模の大きさから金融システムすら揺るがしかねないためだ。融資平台が社債や銀行借り入れで積み上げた負債は、地方政府の「隠れ債務」とみなす考え方が一般的だ。江蘇省常州市のある融資平台も「バックには政府がついており、(債務の返済に)問題やリスクはない」とし、暗黙の保証をにおわせる。20年に満期を迎える融資平台の社債は2兆5000億~3兆元とみられ、隠れ債務は1兆元規模で積み上がりそうだ」

     

    融資平台とは、地方政府が資金調達と建設事業を兼ねる機関である。資金効率など考えている機関ではない。中央政府から命じられるGDP押し上げを実現するために、資金を集めて事業を行なう。この丼勘定から見て、大きなウミが貯まっていることは想像に難くない。今年は、隠れ債務が1兆元規模(約16兆円)積み上がると見られる。

     


    (3)「大手格付け会社の中誠信国際信用評級は「19年末の隠れ債務は概算で43兆元近く」(汪苑暉アナリスト)と推計する。6月末の地方政府の公式な債務残高である24兆元を単純に合計すると67兆元、円換算で1000兆円にのぼる。公的支援が必要な隠れ債務は現時点では限られるが、残高が増えるほどリスクが高まるのは避けられない」

     

    地方政府は、今年6月末で隠れ債務を含めた債務残高が1000兆円に達するという。これだけの債務が、まともに金利を払っていけるだろうか。GDPは、右肩下がりの低下局面である。率直に言って不可能であろう。ダンプカーで吊り橋を走っているように見えて危険である。

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    中国は、「一帯一路」プロジェクトで海外に強力な「中国衛星国」づくりを目指してきた。その夢は、中国武漢が感染源である新型コロナウイルスのパンデミック化で、大きく躓いている。「一帯一路」プロジェクト対象国が、コロナ禍で財政的に行き詰まり、もはや中国主導のプロジェクトを受入れる余裕がなくなったこと。中国の国内事情では、人口高齢化に伴う福祉施設増強の要望が強くなり、「一帯一路」への批判が強まっている。

     

    こういう中国を取り巻く内外事情の変化で、「一帯一路」の前途には赤信号が強く灯っている。米中貿易戦争から始まった米中対立は、コロナ禍、香港国安法の強硬導入によって、「冷戦」状態に向かっている。米中デカップリングが進み始めており、中国の輸出に大きな障害になってきた。これにより、経常赤字に転落する可能性が高まっている。これにより、「一帯一路」を支援する資金枯渇が現実化する。「中国の夢」は、儚く散りそうである。

     

    『日本経済新聞 電子版』(7月20日付)は、「コロナ禍で一帯一路に黄信号、遠ざかる『中国の夢』」と題する記事を掲載した。

     

    いち早く新型コロナウイルスの感染拡大の第1波を乗り越えた中国社会は平穏な日常を取り戻しつつある。一方で中国国外に目を転じると、広域経済圏構想「一帯一路」などを足がかりに「中華民族の偉大な復興」を成し遂げるという「中国の夢」の実現に黄信号が灯っている。高揚する国内のナショナリズムに後押しされた中国の居丈高な外交路線が、世界中から反感を買う。その強硬な姿勢は「マスク外交」を通じて各国に医療支援しているときも変わらなかった。奇妙な政治理論に支配された一党独裁体制の限界が露呈した。

     


    (1)「中国当局が初期対応を誤ったために武漢市で感染が拡大した新型コロナは世界中に拡散した。中国に付いてしまったそんなマイナスのイメージを、「世界に手を差し伸べる責任ある大国」というプラスのイメージに転換するのが狙いだ。中国が重点的に支援したイタリア、インドネシア、マレーシア、パキスタン、スリランカといった国々を眺めると、ある共通点が浮かび上がる。その多くは「一帯一路」の参加国である」

     

    中国がコロナで重点的に支援した国々は、イタリア、インドネシア、マレーシア、パキスタン、スリランカである。その多くは「一帯一路」の参加国である。中国が橋頭堡とする国々である。

     

    (2)「中国は一帯一路に未参加のフランスやオランダ、スペインなどにも医療支援の手を差し伸べており、「責任ある大国」との好印象を与えることで、参加に向けた下地作りを進めているようにも見える。中国が医療支援した国は全部で150にも及んだ。一帯一路を通じて中国の勢力圏を拡大し、米国を凌駕する超大国としての地位を獲得するという野望が透ける」

     

    中国は、米国を凌ぐ超大国を夢見ている。だが、中国には普遍的価値観がないのだ。あるのは、「中国式社会主義国」という独善的価値観である。これでは、中国が世界の頂点に立つことは不可能だ。この重要な点での認識が、中国には完全欠如である。

     

    中国で初めて統一を実現した秦の始皇帝時代と現代の一帯一路では、価値観のギャップが大きな障害となる。始皇帝時代は、漢族で同じ価値観であった。一帯一路では、価値観が中国と全く異なっている。この違いが、中国の夢を遮るはずだ。

     


    (3)「一帯一路は計画通りに進んでいるわけではない。モンゴル、ラオス、パキスタン、キルギスなどでは、中国からの巨額の貸し付けが国の返済能力を大きく超えている恐れがあるなど、問題が噴出している。開発を受注するのは中国企業で資材も中国から購入。中国人労働者が建設に従事し、地元社会の恩恵は少ない。結局は国が借金漬けになるだけとの不満から、一部では中国への反感が高まっている。反中が広がったザンビアでは、現地に進出した中国メーカーの中国人幹部が惨殺される事件が発生した」

     

    中国の価値観は、自国中心の身勝手意識の優先である。これは、世界の普遍的価値観に背を向けたもの。このギャップが、各国で問題を起こしている。

     

    (4)「一帯一路は中国国内と国外の両方で逆風にさらされる」と語るのは、13~17年に東アジア・太平洋担当の米国務次官補を担ったダニエル・ラッセル氏だ。現在、米アジア・ソサエティー政策研究所の副所長を務めるラッセル氏は、「どの国もそうだが、社会が豊かになって中流層が厚くなると、政府への要求が増えてくる。中国国内でも、昨年ごろから一帯一路を疑問視する声が増えていた」と語る」

     

    中国経済は、潜在成長率の低下局面である。人口高齢化に伴い国内での福祉需要は膨らむ一方である。貴重な貯蓄は、中国国内へ向けろという要求が高まってゆく情勢である。一帯一路へ回す資金はなくなるのだ。

     


    (5)「国民の理解を得るのが難しくなってきている上、中国政府はコロナ禍で新たな経済対策に取り組む必要がでてきた。特に痛手を受けているのが中小企業だ。中国で中小企業は雇用の大きな受け皿となっており、失業率を抑えるためにも対策が急務だ。景気の減速で、退職給付や社会福祉などのセーフティーネットも一層充実させる必要がある。ラッセル氏は「社会不安が政治運動につながり、体制が揺らぐのを共産党は最も警戒する」と解説する。体制を盤石なものとするためにも国内の安定を図る投資を優先し、一帯一路は二の次にせざるを得ない」

     

    コロナ禍で、国内の中小企業が大きな痛手を受けている。一帯一路へ回す資金のゆとりはないのだ。

     

    (6)「一帯一路に参加している国々も、コロナ禍の影響で世界経済が減速し、これから財政が苦しくなると予想される。限られた国家予算を公衆衛生に優先的に回す必要があり、中国に対して巨額の債務を負ってインフラを整備する余裕はなくなる。よって一帯一路は停滞するというのがラッセル氏の見立てだ」

     

    一帯一路に参加している国々も、コロナ禍で国内経済が痛んでいる。巨額の一帯一路に使う財政的なゆとりはない。一帯一路に逆風が吹き付けて当然だろう。

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    中国の4~6月期の実質GDP成長率は、前年同期比3.2%増である。事前予測の同1.1%増を大幅に上回る「好成績」であった。習政権にとっては鼻高々であろう。それでも、1~6月期は、同マイナス1.6%である。

     

    詳細は後で見るとして先ず、指摘すべき点は、不動産開発投資が1~6月期で、同1.9%も増えた点である。パンデミックという騒ぎの中で、不動産開発投資がプラスに転じている点に異常さを感じなければならない。空き家が現在、6500万戸も存在している。値上り期待の住宅投機である。この膨大な投機住宅が、転売できなければどうなるか。考えて見ただけで身の毛のよだつ話である。中国社会特有の「投機性向」が今後、破綻しないはずがない。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(7月16日付)は、「中国経済、プラス成長復帰に潜む危うさ」と題する記事を掲載した。

     

    中国が16日に発表した年4~6月のGDPの実質成長率は前年同期比で実質3.%だった。文化大革命が終わった1970年代半ば以降で初めてマイナス成長に落ち込んでいた13月期から力強く回復した。16月期では依然として1.%減のマイナス成長だが、中国内陸部の武漢市で始まった新型コロナウイルスの感染拡大に今も苦しむ多くの経済大国にとっては、羨望の対象となる好記録だ。

     

    (1)「中国経済が堅調に回復したのは、中国政府が2008年の金融危機当時と同様、経済の再始動を促すために大規模な信用供給に動いたが、金融当局は不良債権が再び急増し、規制の緩いシャドーバンキング(影の銀行)が膨張する恐れがあると警鐘を鳴らしている。08年の金融危機後、中国では債務がかつてないほど急速に積み上がった。新型コロナの感染拡大以降は膨張スピードにいっそう拍車がかかって過去最高に達している」

     

    中国の4~6月期の実質GDPがプラス成長に転じたのは、大規模な金融緩和措置によるものだ。その影で、債務残高が急速に積み上がり、金融危機の芽を膨らませる結果となった。旧態依然とした景気回復策である。さもなければ、プラス成長は不可能なのだ。

     

    (2)「消費主導の経済に転換し、投資に依存する経済成長モデルから脱却しなければならないと中国政府が唱え始めて久しいが、個人消費のGDPに占める比率は今も40%未満と著しく低く、アフリカのガボンやアルジェリアなどと同水準に留まる。英国、米国などの他の先進国では、個人消費がGDPの65~70%前後を占める。新型コロナの感染拡大は中国の小売・サービス業を直撃し、消費が冷え込んだ。スーパーや百貨店、電子商取引(EC)などの売上高を合計した小売売上高は、1~6月期に前年同期比で 11.%減少した

     

    中国政府は、消費について誤魔化しの発表をしている。民間消費と政府消費を合計して、「消費」と称している。事情のよく分からないメディアは、この手に乗せられて「中国の個人消費は60%」という記事を書いている。これは間違い。民間消費は40%弱である。先進国に比べて、一段も二段も低いのだ。その代わり、固定投資が多くなっている。この固定投資リード型の中国経済が、個人消費リード型に転換するのは、10年以上の歳月が必要である。その間、GDP成長率はかなりの減速となる。

     


    (3)「これを受けて中国政府は、金融危機の時と同じように、借り入れ頼みの投資で成長を支えようとしている。インフラ投資と不動産開発投資が投資拡大をけん引する点も金融危機時と同じで、硬直化した国有企業が支配するセクターが中心的役割を果たしている。中国の専門家は昨年、建設ブームに沸いた10年を経て、不動産市場では少なくとも6500万戸以上が空室になっていると試算していた。にもかかわらず、不動産開発投資は16月期に前年同期比で1.%増えた。一方で、固定資産投資全体では3.%減となっている」

     

    中国の経済運営方針は、従来同様の固定投資リード型になっている。経済主導の切り替えは、GDP成長率を減速させるので軽々に行えないのだ。経済減速に耐えられないためである。不動産市場では、少なくとも6500万戸以上が空室と試算される。それにもかかわらず、不動産開発投資が16月期に前年同期比で1.%も増えている。「住宅バブル」の残り火に、「夢よもう一度」と賭けているのだ。哀れである。

     

    (4)「中国が16日に発表したGDPデータを少し掘り下げてみれば、国有企業の投資が16月期に2.%増えているのに対して、民間企業の投資が7.%減っていることがわかる。この重要なデータは、ほとんどの海外投資家に配布された英語のプレスリリースからは都合よく排除されている。ただ、習氏が先ごろ承認した3カ年計画では、民間企業や外資企業を後回しにして国有企業を優遇する内容が盛り込まれており、その政策には合致している。中国の約13万社に上る国有企業には 非効率や無駄、汚職がはびこる。しかし、国家が危機に見舞われる今、中国を一党支配する共産党にとって、国有企業は雇用と社会的安定を支える基盤として不可欠な存在になっている

     

    「国進民退」を絵に描くように、国有企業の投資が増え、民間企業の投資が減少している。中国共産党の立脚点は国有企業にある。ここが生き残らなければ、共産党政権も揺らぐのである。「国進民退」の促進である。

     


    (5)「中国指導部は明らかに、国が主導する借り入れ頼みで投資する、旧来の手法を復活させることを決めた。一部のエコノミストは10年前、中国経済は一定のスピードで走り続けなければ倒れて壊れてしまう自転車のようだと評した。今日、中国経済という自転車は債務という重荷を抱え、酔っ払いがこいでいるように見える。そのかたわらでは、戦略的な競争相手である米国などが倒そうとする機会を虎視眈々と狙っている

     

    中国経済は、過剰債務を背負ってフラフラになりながら自転車を漕いでいる姿に映るというのだ。米国が、中国経済の息の根を止めるチャンスを狙っている。中国はこれに気付かず、軍事力をかざして大言壮語している。末期的状況なのだ。

     

     

     

     

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