勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 韓国経済ニュース時評

    a1370_000550_m
       

    韓国進歩派は、こぞって日本と比較して喜怒哀楽の対象にしている。世界は広いのだ。日本だけを目の敵にしないで、もっと広い視野から日本を眺めたらどうだろうか。

     

    韓国の政権支持メディア『ハンギョレ新聞』(1月16日付)は、「韓日関係に地殻変動が起きている」と題する記事を掲載した。その中で、「韓日逆転の時代が来た」とはしゃいでいる。ノーベル科学賞を一人も取っていない国が、大言壮語しているのは可笑しくもあり気の毒にも思う。そこまで、反日に走る度量の狭さに呆れながら、中国では日本を違った視点で見ているケースを伝えたい。

     

    『サーチナ』(1月4日付)は、「この国も あの国も? 中国人が知らなかった「世界の親日国」と題する記事を掲載した。

     

    日本に対して複雑な感情を抱く人が多い中国。現在、反日感情は落ち着いているものの、領土や歴史などの対立が激化すると、反日感情も一気に噴出するということを繰り返してきた。だが、世界的に見ると反日国は少数派であり、むしろ親日国が少なからず存在する。中国メディア『百家号』はこのほど、「中国人が知らなかった8つの親日国」を紹介する記事を掲載した。



    (1)「記事が紹介した最初の国は「モンゴル」だ。モンゴル出身の力士が日本で活躍しているのは大きいようだと紹介、さらに日本によるODAへの感謝もあるのだろうと推測している。だが、中国にはこの手の感謝が全くないのは興味深いところだ。ちなみに、モンゴルにおける対中感情は非常に悪い」

     

    モンゴルの日本贔屓は、大相撲力士が日本で大活躍していることを反映している。ODA(政府開発援助)による無償援助や、有償援助でも超低利・長期返済など全く負担にならないように支援していることが大きな理由であろう。

     

    中国は、過去の日本によるODA支援(3兆円超)で最高額に達しているが、その実情を一切、公表せずにきた。唯一、胡錦濤国家主席は訪日の際に日本国民へ謝辞を述べたが、中国ではカットされ放送されなかった。中国の復興は、すべて中国共産党が自力で行ったと宣伝しているためである。

     


    (2)「2カ国目は、「インドネシア」だ。技能実習生が多いことと、日本のおかげで独立できた歴史によるところが大きいと分析した」

     

    日本は、太平洋戦争で大きな被害を与えたので、ODAで手厚い支援をした。これが、日本への感情を和らげたもの。日本企業の進出も最も早かった。インドネシアは、ASEAN(東南アジア諸国連合)のリーダー国である。

     

    (3)「3カ国目は「パラオ」で、日本語が残っていて、「国旗まで日本を真似ている」と驚いている様子だ」

     

    パラオは、第一次世界大戦の戦後処理をするパリ講和会議によって、日本の委任統治領になった。パラオは周辺諸島の中核的な島となり、多くの日本人が移住した。日本の統治が始まってからは、ドイツの統治下ではほとんど進んでいなかった学校や病院、道路など各種インフラストラクチャーの整備、貨幣経済への移行が重点的に行われた。この当時の記憶が、今も親日国感情となっているのであろう。

     


    (4)「4カ国目は「ポーランド」。ロシア革命の混乱期、極寒のシベリアに取り残された765人の孤児を、日本だけが助けたと紹介した」

     

    日本は第一次世界大戦後、765人のやせ細ったポーランド人孤児をシベリアから助けて日本へ移送し休養させたあと、日本の船舶でポーランドへ送りとどけた話である。ヨーロッパでは、どこの国も救出に協力しなかった中で、アジアの日本が単独で救出に動いた。ポーランドの人たちは、日本の善意に深謝して、ポーランドの日本大使館とずっと友誼関係を維持してきた。1995年の阪神・淡路大震災の際は、震災孤児の代表をポーランドに招待し、励ましてくれたというエピソードが残っている。

     

    (5)「5カ国目には「フィンランド」を紹介。当時国際連盟の事務次長だった新渡戸稲造が、フィンランドに平和をもたらした手腕と功績を忘れていないという」

     

    1921年、国際連盟の事務次官であった新渡戸稲造を中心として、オーランドのフィンランドへの帰属を認め、その条件としてオーランドの更なる自治権の確約を求めたいわゆる「新渡戸裁定」が示された。これらは、両国(フィンランドとスウェーデン)政府の具体化作業と国際連盟の承認の後、1922年にフィンランドの国内法(自治確約法)として成立し、オーランドの自治が確立した。オーランドは現在、フィンランド政府によってスウェーデンへの復帰を認められている。ちょうど100年前、新渡戸稲造による平和裁定を、今も評価してくれているのだ。



    (6)「6カ国目は「北マケドニア」。建物の大部分が倒壊した大震災で、再建に来てくれたのが日本人建築家・丹下健三氏だったためだという」

     

    1963年、スコピエ大震災が発生し、死者1100人を出すという大惨事になった。その再建に丹下健三が力を貸してくれたというのである。当時は、「世界の丹下」として売り出す初期であり、斬新なアイデアを提供したのであろう。丹下の「業績一覧」にはその記載がない。

     

    (7)「7カ国目は、日系人の多い「ブラジル」である」

     

    ブラジルは、日本移民最大の受け入れ国である。1908年6月、日本からの本格的移民が始まった。1950年代、日本政府後援による移民が停止されるまで、ブラジルに渡った日本人移民の子孫は5世、6世の世代になり、海外で最大の日系人社会(約150万人)を持つなど、ブラジル社会に完全に溶け込んでいる。

     


    (8)「8カ国目にはエルトゥールル号遭難事件で日本に乗員を助けてもらった「トルコ」を挙げている」

    1890年(明治23年)、和歌山県串本町沖で発生した軍艦「エルトゥールル号」遭難事故(587人の犠牲者)で付近魚民が積極的な救援活動を行った。エルトゥールル号は、日本を訪問しての帰途、台風に遭遇した事故であった。日本の心温まる救援活動が、トルコから感謝された両国の友好関係が築かれた。日本には多くのトルコ友好協会があり、交流が積極的に行われている。


    (9)「これらの国が昔の出来事を忘れておらず、今も親日感情を抱いてくれているというのは心温まるものがある。こうした国々で親日感情が今後も続くよう、良好な関係を維持していきたいところだ」

     

    中国メディアが、こういう事例を挙げてくれなければ、日本も忘れ去るような話もあろう。人間、互いに誠意を込めて対応すれば、どれだけ時間が経ってもこうして、心のつながりは続く良い例を示してくれた。感謝したい。

    a0960_008407_m
       

    日韓が政治的・経済的に逆転したという新刊本が出たという。韓国が、日本を上回ったというのである。韓国の複数メディア(聯合ニュースとハンギョレ新聞)は早速、取り上げて大喜びだ。1945年8月15日、あの解放記念日のような気持ちなのだろう。

     

    韓国が日本に勝ったという証拠は、次のようなものである。


    日本の相対的貧困率、年金の所得代替率、教育への公的支出額のGDP比といった指標を取り上げ、「先進国として恥ずかしい水準」と指摘している。また、経済協力開発機構(OECD)の資料を基に、2017年に韓国の1人当たり購買力平価GDPは4万1001ドル(約425万円)で、日本(4万827ドル)を抜いたとして優越感に浸っている。

     

    購買力平価は、両国の物価水準を基準に算出される。日韓の消費者物価比較では、韓国がはるかに安い。それを反映して計算される購買力平価で、韓国が日本を上回ったと言って自慢することではない。韓国の「後進性」を反映して、労働価値が低い結果に過ぎないのだ。

     


    韓国メディアが取り上げたのは、イ・ミョンチャン著『日本人が証言する韓日逆転』である。著者は韓国人
    だが、「わが民族が長い間願ってきた『韓日逆転』の瞬間が近づいていることを証明するのがこの本の目的だ」と説明。「越えられない4次元の壁(努力では越えられない壁)、日本」と「弱小国、韓国」の図式はもはや存在しないと強調しているという。著者は慶応大で博士課程を修了するなど、日本に10年ほど留学した経験を持つ。帰国後は東北アジア歴史財団で韓日関係を研究している。以上は、『聯合ニュース』(1月16日付)による。


    『ハンギョレ新聞』(1月16日付)は、「韓日関係に地殻変動が起きている」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「日本が韓国を眺める視線はよく「嫌韓」が突出し、これに対抗する韓国の日本に対する感情は「反日」だ。歴史的被害者の加害者に対する「反日」は納得できる一面があるものの、加害者が被害者に対する「嫌韓」の視線を止めないことは不思議でならない。その妙に歪んだ感情の淵源は『日本人が証言する韓日逆転』で確認できるが、これは優越意識の別名としてよく指摘される劣等感の発露だ」

     

    私は、『日本人が証言する韓日逆転』なる書籍を読んでいない。第一、韓国が日本を上回ることなど想像もできないからだ。人口規模の異なる日韓を比較して、逆転するという発想がそもそも成り立たないのである。

     


    韓国は、合計特殊出生率が世界最低記録を更新し続ける最悪事態に見舞われている。国家存亡の基盤である人口の出生率が、下がり続けるという「非常事態」下にあるのだ。日韓優劣論を議論している間に、韓国は世界最速で人口減少に向かう危機感と立ち向かうべきだ。韓国人は、文大統領を筆頭に空理空論に酔うのが好きなようである。

     

    (2)「本書はタイトルが語るように、韓国と日本の力の逆転の過程に注目する。新型コロナウイルス感染症の防疫において、日本と比較せずとも韓国が成功していることは、特に語る必要もない」。

     

    文大統領の「K防疫モデル」の自慢話を聞かされている感じだ。『ブルンバーグ』がまとめたコロナ対策の総合評価ランキングで、日本は韓国よりも上位(世界2位)である。韓国の防疫対策と言えば、PCRの全数調査を自慢する。だが、日本の行ったクラスター把握こそ、防疫面で最善の策である。この点で、韓国は間違っていたのだ。

     

    (3)「経済面での韓日関係の変化は、改めて新鮮に提示される。何よりも根源は政治だ。韓国と日本の民主主義の格差は、両国がなぜ力の逆転状況に至ったのかを如実に示している。敗戦を克服できず過去にとらわれて停滞している日本と、植民地と開発独裁を乗り越えて産業化と民主化に邁進し、成果を収めてきた韓国の違いが両国のはっきりと異なる今日を作った」

     

    韓国の民主主義が成功していると言っている。韓国進歩派は、民族主義集団である。「敵・味方」の二分論に立ち、敵を徹底的に叩き、味方の不正を見逃し庇う。これは民主主義と呼ばないのだ。多数の横暴を続け、野党の意見を100%封殺するのは、独善・独裁と呼ぶ。最近の文政権支持率低下は、反民主主義政治が飽きられてきたものだ。

     


    (4)「このため著者は、日本の気鋭の若手学者である白井聡京都精華大学教授の『永続敗戦論』を紹介する。戦争で負けたのではなく、戦争が終わっただけなのだという日本軍国主義者のごまかしを日本人が受け入れてきたこと、こうした「涙ぐましい努力」が安倍政権を経てコロナ禍で如実に崩れ落ちたことを、この書は緻密にあらわにする」

     

    「終戦」という言葉をヤリ玉に上げている。確かに、実態は「敗戦」である。だからと言って、日本人が戦争の反省をしていないと位置づけることは暴論である。「憲法九条」は、保守派を含めて憲法に残そうと努力している意味を理解していないのだ。安倍政権を頻りと批判しているが、韓国進歩派特有の現象である。まさに、牽強付会(けんきょうふかい)の典型例である。

     

    (5)「今日の日本経済は「失われた30年」を経験した結果だということが提起される。戦後、米国に依存して爆発的な経済成長を成し遂げた日本が、1989~2019年の「平成」期には落ち込み続けたことを、主要大企業の企業価値と国内総生産(GDP)、国家債務比率、為替レートなどを挙げて説明する。日本の国際的な地位の変化は、もはや日本が先進国ではないことを示しているという主張だ」

     

    一つだけ例を挙げて反省を求めたい。日韓の失業率比較では、日本が皮肉にも好成績である。韓国は若者が就職できず、2~3年の失業が定常化している。日本に「就職浪人」がいないのは、雇用が確保されている結果だ。人間の生存条件は最低限、衣食住の確保である。それは、雇用先があるから可能である。韓国では、職がない上に「住」も高騰して若者に手が届かなくなっている。この韓国の実態が、日本より優れているとは経済を見る目を失っている証拠である。これ以上の説明は不必要であろう。

     

     

    a0960_008707_m
       

    韓国は文政権登場以来、内政面の行き詰まりが明らかになっている。獄窓に繋がれている朴・前大統領は、韓国の将来に深い憂慮を抱いているという。弁護士接見の際、自分の感じている危機感を吐露したものだ。保守派の立場からみれば、進歩派(民族主義集団)の文政権が朝鮮半島のことしか考えず、世界の動向を無視していることが気になるのだろう。

     

    これは、朴・前大統領一人が抱く危機感ではない、文政権支持メディアですら、若い女性が韓国の未来に絶望し「非婚化」こそ、自らの生きる道と思い定め始めていると、警戒感を強めているのだ。それを示唆するデータが出て来た。政権交代待望論である。

     

    世論調査会社の韓国ギャラップが1月15日に発表した調査結果によると、来年の次期大統領選挙で「現政権を維持するために与党候補が当選したほうが良い」との回答が39%だったのに対し、「現政権を交代させるために野党候補が当選したほうが良い」との回答は47%だった。来年の大統領選挙では、野党政権に代るべしという意見が47%を占めたのである。

     


    『朝鮮日報』(1月16日付け)は、「自国では帝王、海外では仲間外れ」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙の朴正薫(パク・チョンフン)論説室長である。

     

    文在寅政権による4年間の政権運営は「内強外弱」という言葉で要約できるだろう。国の内側では帝王のように君臨するが、外の世界では「いじめられっ子」のように一人でうろついている。

     

    (1)「労働者が死亡すると、事実上の過失がない場合でも経営者を1年以上の懲役に処することを定めた「重大災害企業処罰法」はその典型だ。この法律を強行した政界関係者が説明できない事実がある。それは世界のどこの国にもこのような法律はないということだ。唯一英国に同じような規程があるそうだが、その英国も法人にのみ罰金を科すだけだ。具体的な過失の有無とは関係なく、経営者個人に対し、それも懲役刑の最低ラインまで決めて処罰する国などどこにもない。産業史に残る世界最初の立法の事例が誕生したのだ」

     

    「重大災害企業処罰法」という、世にもまれな法律ができた。労働者が災害で死亡した場合、経営者に責任がなくても1年以上の懲役に処すというもの。労働者保護という狙いだが、中世の暗黒時代を想起させるような法律である。現政権は、時代を逆さまにした立法を臆面もなく連発する。これでは、企業は萎縮してビジネスを止めた方が無難な道となろう。

     

    (2)「他国はなぜこの「重大災害法」を制定しないのだろうか。厳しい処罰だけでは労働災害を事前に防げないことを知っているからだ。韓国はすでに労働災害に伴う処罰が十分に厳しい国だ。安全、保健、環境に関する規制を守らず、それによる事故を理由に事業主を処罰する法律は63、罰則の規定は2555に達する。いくら厳しく罰し、強い規制をかけても、現場の意識が変わらなければ意味がない。経営者を刑務所送りにして解決するのであれば、同じような法律は世界の標準になっていたはずだ」

     

    文政権の発想では、企業は放っておくと悪いことをするという前提である。企業性悪説である。これが、企業の自律的発展を阻止する要因である。

     

    (3)「文在寅政権の政権運営は、世界と別の「われわれ式」が特徴だ。「所得主導成長」は文在寅政権が初めて実行する世界を見回しても前例のない実験だ。もしこれが成功すれば、経済学の教科書を新たに書き換えねばならない。「馬車が馬を引っ張る」と言われる奇跡を実現する結果となるからだ。ただひたすら規制ばかりの不動産政策は、それ自体が世界的に話題となるに十分だ。供給もない状態で不動産価格を押さえ込もうとする政府はこの世の中に存在しないからだ。何でも金で解決する税金万能主義、官主導の「大きな政府」、民間ではなく公共に重点を置く雇用対策など、全てがグローバルなトレンドに逆行するものだ」

     

    このパラグラフでは、文政権の経済失政が韓国経済を袋小路に追込んでいる実態をついている。これが失業者を増やし、若者から住む家を奪っている理由である。経済活動に疎い元学生運動家上がりで、「にわか政治家集団」の文政権には手に余る課題なのだ。

     


    (4)「どこの国の政府も、自国の企業が競争に勝ち抜けるよう支援する政策を進める。しかし文在寅政権は正反対だ。激しい生存競争に立ち向かう企業に対して政府は後ろからタックルを仕掛けている。文在寅政権は「企業規制三法」として他国には存在しないか、あるいはあまりにも過激な経営権への攻撃手段を導入した。週52時間労働は世界で最も硬直した非弾力的構造として設計された。政府が先頭に立って企業を海外資本の攻撃にさらし、夕方には研究所の明かりを消させた。最初からグローバル競争で落ちこぼれさせるつもりだったかのようだ」

     

    文政権は、反日になると目の色を変えて騒ぎ立てる。日本の半導体主要3素材に関する輸出手続き規制強化では、「克日」と称し研究開発費を大盤振る舞いしている。これは例外であり、他はことごとく「企業規制」に走っている。これが、どれだけ韓国企業の体質劣化をもたらしているか、理解できないのだ。

     

    (5)「ただ内政に限って言えば、文在寅政権は卓越した手腕を発揮した。政敵を排除し、権力機関を私物化し、大企業の制御権を握り選挙で連戦連勝した。このように国内では非常に勢いのある政権だが、国外では無能の極致を示している。この政府による一連の外交惨事はすでに知られた通りだ。韓米同盟に亀裂を入れ、友好国との関係は破綻した。対北ビラ禁止法が米国議会の聴聞会で取り上げられ、北朝鮮の人権問題では世界で恥をかいている。米国務長官が日本まで来たのに韓国をスルーする事態も起こった」

     

    文政権は一口に言って、「内弁慶」政権である。国内では、身内だけを登用し、敵と見た検察トップを力尽くでも引きずり下ろそうとする。海外では、外交がことごとく失敗している。米国とは隙間風、日本とは「どん底」である。ただ、北朝鮮に対しては「隷属姿勢」を強めて傅(かしず)いている。文政権が、最低最悪であることは間違いないであろう。

    a0960_008572_m
       

    1月8日、韓国地裁は元従軍慰安婦女性らへの賠償支払いを日本政府に命じた。その後、数時間して外交部はコメントを発表した。要約すれば、次のような点だ。

     

    1)政府は裁判所の判断を尊重し、慰安婦被害者の名誉と尊厳を回復するために韓国政府ができうる努力を尽くす。

    2)政府は2015年12月の韓日慰安婦合意が両政府間の公式合意という点を想起する。

    3)同判決が外交関係に及ぼす影響を綿密に検討し、韓日両国の建設的で未来志向的な協力が続くよう様々な努力を傾ける。

     

    これらコメントは、前述の通り判決後、数時間を経て発表されたことに注目したい。それは、政府部内で熟慮して出されたということだ。特に、2)の「政府は2015年12月の韓日慰安婦合意が両政府間の公式合意という点を想起する」という文言である。日韓慰安婦合意は、韓国によって骨抜きにされたが、現在も形式的に存在している。日本政府が、これを盾にして韓国政府へねじ込めば、韓国は「グーの音」も出ないのだ。日韓慰安婦合意には、「非可逆的にして最終的な協定」という意味まで書き込まれている。

     


    日韓慰安婦合意書において、今回のような判決が出れば、すべて韓国政府が処理する建前である。韓国外交部が、日韓慰安婦合意の存在に「両政府間の公式合意という点を想起する」としたのは当然である。

     

    『日本経済新聞 電子版』(1月15付)は、「慰安婦訴訟、韓国外務省論評に映る対『変化』の本気度」と題する記事を掲載した。筆者は、同紙の編集員 峯岸博氏である。

     

    「被害者中心主義」を掲げる韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権と裁判所は一枚岩ではないか。元従軍慰安婦女性らへの賠償支払いを日本政府に命じた8日のソウル中央地裁の判決をめぐり、日本国内にはこんな疑念が少なくない。だが、関係者の話を総合すると、文大統領がこの時期に望んでいた判決内容とはいえず、韓国政府も対応に困惑しているのが実態だ。その戸惑いは判決後に韓国政府が発表した「外務省報道官論評」に見てとれる。要約は、前記の3点である。

     

    (1)「文政権の基本姿勢である1)は変わらないが、注目すべきは2)だ。17年5月の文政権発足以降、「被害者の意見が十分に反映されていない」と合意を事実上ほごにした韓国外務省が正式な論評で「両政府間の公式合意」とわざわざ明示したからだ。国内の反発は覚悟だろう。実際、反日組織の急先鋒(せんぽう)である元慰安婦支援団体「正義記憶連帯(正義連)」が13日、ソウルの日本大使館前の定例集会で論評の2)を持ち出し、「歴史的な判決に対する両国政府の反応には失望を通り越して憤怒している」と痛烈に批判した」

     

    韓国市民団体は、慰安婦問題によって経済的利益を得てきたとんでもない集団である。彼らは、「ビジネス」として慰安婦問題をとり上げている集団と言っても過言でない。純粋な「非営利・非政治」というNPOではないのだ。

     


    (2)「同様に、3)も日本へのメッセージである。「判決が外交関係に及ぼす影響を綿密に検討し」の表現が、「三権分立の原則」に偏っていた従来より前進しているのは確かだ。論評には日本政府に元慰安婦への賠償支払いを促す内容もない。その代わりに、日韓両国の建設的で未来志向的な協力が続くよう「韓国政府が努力する」と宣言している

     

    下線部は重要である。「韓国政府が努力する」との一文が入っていることは、慰安婦賠償を韓国政府が独自で行うという意味なのか。そこまでは、文政権のことゆえ不明である。ただ、4月のソウルと釜山の市長選がある。また、来年3月の大統領選があることから、それまでは、態度を鮮明にしないだろう。

     

    (3)「思い出すのが、18年10月、韓国大法院(最高裁)が新日鉄住金(現日本製鉄)に元徴用工への賠償支払いを命じた徴用工判決だ。このとき、韓国政府は「司法の判断を尊重し、関係省庁や民間の専門家などと諸般の要素を総合的に考慮して対応策を講じていく」(李洛淵=イ・ナギョン=首相)とし、日韓関係についても「未来志向的に発展させていくことを希望する」(同)と述べるにとどめた。それに比べると、今回は論評全体の3分の2が日本との外交関係を重視した内容で、韓国政府が自発的に改善に動くという立場を示している特徴がある」。

     

    下線のように、韓国政府が自発的に改善に動くというニュアンスを出したのは異例のことだ。米国の次期バイデン政権を意識した動きであろう。バイデン氏が、オバマ政権時に副大統領として日韓慰安婦合意に奔走した。その手前もあって、繕っていることも十分に考えられる。

     


    (4)「それだけ事態が深刻であるといえる。個人と日本企業が争う構図だった徴用工判決に対し、慰安婦訴訟の被告は日本政府だ。ウィーン条約で外交上の国有財産は保護されているとはいえ、成り行き次第では外交関係の破綻すら想定される。文政権も「司法判断を尊重」とばかり言っていられない状況になっている」

     

    韓国は慰安婦賠償金として、日本政府資産を差押えたならば、「日韓外交戦争」になることは間違いない。日本が、確実に報復する。そういう無益な争いを避けて、韓国政府が独自で処理すべき案件である。

     

    a0960_006624_m
       

    文大統領は1月14日午前、大統領府で離任する冨田浩司駐韓日本大使と面会した。その席で、「韓日両国は最も近い隣国であり、北東アジアと世界平和・繁栄のために共に歩んでいかなければならない最も重要なパートナー」と述べたと姜ミン碩(カン・ミンソク)報道官が書面ブリーフィングで伝えた。

     

    文氏が、日韓は最も近い国で最も重要なパートナーと述べたのは、昨年9月に菅首相就任の際に次ぐ二度目である。この発言を、次期駐米日本大使に就任する冨田氏にしたところがミソである。米国に向けた発言でもあるからだ。韓国は、日本と協力しますというゼスチャーをして見せたのであろう。

     

    バイデン次期米国政権は、同盟国の力を結集して中国と対抗する旨を強調している。この線から見れば、日韓が旧徴用工や慰安婦の問題で対立していることは、同盟の結束を乱すことになる。いずれも、韓国が火を付けた問題である。とりわけ、日韓慰安婦合意はバイデン副大統領(当時)の強い要請があって妥結した事情がある。文政権は、その慰安婦合意を足蹴にしたのだ。その上、今回の旧慰安婦賠償判決である。韓国が、対米外交上も危機に立っていることは間違いない。

     

    バイデン米国次期大統領は、カート・キャンベル元国務次官補(東アジア・太平洋担当)をホワイトハウス国家安保会議(NSC)のインド太平洋担当調整官に指名した。バイデン政権の対中国政策を総括する地位だ。このキャンベル氏が、同盟国結集の旗振り役である。

     

    キャンベル氏は、就任内定のニュースが伝えられた12日(現地時間)、米国の外交安保専門雑誌『フォーリン・アフェアーズ』に、「米国はいかにアジアの秩序を強化するのか」と題する文章を寄稿した。同氏は、次の3大課題を挙げた。

    1)力の均衡の回復

    2)適切な地域秩序の樹立

    3)中国の挑戦に対抗するための同盟の復元

     

    これから見ると、韓国の米中二股外交は不可能になる。文大統領が、冨田大使を通じて「日韓和解」のようなポーズを見せたのも理由があったのだ。

     


    『朝鮮日報』(1月15日付)は、「『韓米日協力』バイデン外交の前に立つ韓国の『親中・親北・反日』外交」と題する社説を掲載した。

     

    米国のバイデン政権が新たに設置する、ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)の「インド・太平洋調整官」にカート・キャンベル元国務省東アジア次官補が指名された。

     

    (1)「キャンベル氏は、中国とアジアに関する政策を総括指揮するいわゆる「アジアのツァーリ」になるという。キャンベル氏は、基本的に日本を米国のアジア外交における礎石と見なしている人物だ。中国のパワーを現実として認めつつも、米国に対する挑戦は抑制すべきという考え方を持っている。キャンベル氏は韓国については、「役割の拡大が必要」という認識を持っているという。これは韓国に対する「米国の同盟国として確実な立場を定めよ」という要求に等しい。キャンベル氏は盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権当時、韓米関係を「離婚直前の夫婦」に例えたことがある」

     

    キャンベル氏が、日本重視派と指摘している。日韓の国力の差からいえば、日本にウエイトがかかるのは当然の選択であろう。韓国が、それをひがんで「親中・親北・反日」外交に走るとすれば、感情外交としか言いようがない。

     

    韓国が、これまで米中二股外交が可能であったのは、米中対立が深刻化しなかっただけの話である。ところが、中国は公然と米国覇権に挑戦すると発言するに至った現在、米中は「敵同士」という関係になっている。よって、韓国の二股外交はもはや不可能である。韓国が、そういう認識を持っていないだけなのだ。

     


    (2)「キャンベル氏は先日、中国に対抗する同盟国の協力体に韓国を含める「民主主義10カ国の連合体(D10)が必要」との考えを示した。従来のG7に韓国、インド、オーストラリアを追加したものだ。また中国をけん制する戦略安保協議体「クアッド」を拡大し、軍事的な抑制にも焦点を合わせるという。米国、日本、オーストラリア、インドの4カ国に韓国などを追加するいわゆる「クアッド・プラス」の構想だ」

     

    キャンベル氏は、「民主主義10カ国の連合体(D10)」を提唱している。G7に韓国、インド、オーストラリアを追加するもの。欧州が、独仏の対立に幕を下ろしたから、初めてEU(欧州連合)が実現した。「D10」になるとすれば、韓国が日韓関係のすべてを国際法通りに受入れるとし、係争問題を国内問題として扱わない限り、日本はD10に賛成する訳にいかないのだ。そこは、バイデン氏の力量に待つほかない。

     

    (3)「米国中心の経済ブロックである経済繁栄ネットワーク(EPN)も引き続き推進する。今後は韓国に対してEPNへの参加を引き続き求めてくるはずだ。しかし韓国政府と与党は米国によるこのような戦略には否定的だ。バイデン政権のアジア・ツァーリが登場した際、韓国統一部(省に相当)は200億ウォン(約19億円)以上の南北協力基金を議決した。関心はただひたすら「南北」だけだ」

     

    韓国にとって、バイデン次期政権の存在によって、身を割かれるような思いをさせられるだろう。文政権は、「すべての道は平壌(ピョンヤン)に通じる」という認識である。この民族主義集団が、目を米国や日本に正しく向ける時が来るだろうか。疑わしいことだ。

     


    (4)「バイデン氏は2016年に副大統領として韓米日外交次官会議に出席し、3カ国による戦略的結束を強調したことがある。この会議に、バイデン氏が出席するのは異例だった。しかし韓国政府は露骨な「親中・親北・反日」だ。この互いに異なった路線が何か問題を引き起こさないか心配だ」

     

    バイデン氏は、ことのほか日米韓の三カ国の戦略的結束を重視している。バイデン政権になれば、「米韓二股外交」など、口にも出せない雰囲気になろう。米中対立の激化が、背景にあるからだ。

     

     


    このページのトップヘ