韓国政治は今、異常な状態にある。メディアが、ユン大統領の米国発言をねつ造し、与野党抗争の火に油を注ぐ事態を招いている。およそ、メディアの「中立性」とほど遠く、「党派性」を前面に出している。先進国では考えられない光景である。
この結果、国内で旧徴用工問題について静かに議論できる雰囲気でなく、韓国政府として交渉できる案をまとめることは不可能であろう。野党が、政府批判する絶好の標的にするだろう。
『中央日報』(9月28日付)は、「用問題、超党派的な接近が必要だ」と題するコラムを掲載した。筆者は、魏聖洛(ウィ・ソンラク)元韓半島平和交渉本部長である。
韓日首脳会談の波紋は徴用問題の過去と現在を改めて考えさせた。この波紋の基底には、徴用関連の解決法が提示されない限り韓国と正式な首脳会談をしないという日本の立場がある。
(1)「日本がこうした硬直した立場を見せるまで、韓日間では長い攻防があった。前政権で大法院(最高裁)の最終判決が出て、韓国は三権分立と被害者中心主義を前に出して韓日協定上の紛争解決手続きである2国間協議と仲裁委回付を拒否し、大法院の判決の履行を模索した。国内法中心の接近だった。刺激を受けた日本は大法院の判決の履行を一切拒否し、韓日協定で終わった問題という立場を守った。国際法中心の接近だった。結局、日本は解決法がなければ首脳会談をしないという立場を固めるに至った」
韓国大法院は、どうして永遠に日韓紛争の種になる徴用工問題判決を出したのか。文大統領の意に沿うような判決を出したばかりに、日韓は争わなければならない事態に陥っているのだ。韓国は国内的視点であるが、日本は国際法の視点に立って論理を組立てている。両国が、上手く組む合うことにならないのだ。
(2)「新政権は、従来よりもやや現実的な姿勢で解決策づくりに努力してきた。官民合同委員会を設置し、意見をまとめる努力もした。閣僚級も被害者に会った。もう政府は解決法の提示が次の手順と考えるようだ。解決法は代位弁済と似たものになると推定される。ところが政府がこのように進めても問題はないのか不安だ。最初の理由は解決法に関する世論をまとめる作業が不足している点だ」
韓国は国内視点であるから、国内の意見を統一しなければならない。これでは、百年河清を待つような話だ。金の話になると絶対に強欲な主張が出て、議論をリードするものである。
(3)「大法院の判決が韓日協定に合わず、日本が国際的合意の履行を強く要求する現実の中で、韓国が柔軟な解決法を出さなければ問題を解決するのは難しい。これはやむを得ず韓国が譲歩する姿として映るため、国民感情上、負担になる。負担となる解決法を出すため、その過程で世論をまとめる作業がなければならず、そのための装置がなければいけない。こうした点で官民合同委を推進した政府の接近は正しい方向だが、議論の過程で被害者団体は政府が特定解決法を進める可能性を警戒して政府を批判し、次々と合同委から離脱した。代位弁済に対しても批判的な見解が表出した。意見がまとまったというよりも論争が拡大したという印象だ」
本来は、文政権が引き起こした問題であるから、文政権時代に解決すべきであった。それが、逃げ回りユン政権に押し付けた形だ。野党は、与党に協力するどころか、足を引っ張る状態である。解決案が、まとまるような雰囲気はゼロである。
(4)「政府の低い支持率と与野党間の激しい対立だ。各種捜査の対象となった野党は闘争モードになっている。それだけに政治的な環境は厳しい。こうした状況で政府が一方的に特定解決法を進める場合、被害者は異議を提起し、進歩世論と野党は反対する余地がある。低い支持率の政府としては揮発性が高い過去の問題に巻き込まれて推進の動力を失いかねない。政府がこれを貫徹するとしても、野党が反対を続ければ、今後、政権交代があれば慰安婦事例のように覆る可能性がある。これは政府と野党、国すべてにプラスにならず、避けなければいけない」
徴用工問題は、韓国の反日問題のシンボルとなっている。韓国に、反日を政治的に利用しようという一派が存在する限り、解決は不可能となろう。韓国は、日本の協力を得られず外交上で不利な状況が続くであろう。
(5)「急いで容易にしようとして法的に脆弱な解決法を採択することがないよう留意する点だ。その場合、被害者団体が大法院の判決に背くとして訴訟を起こす可能性がある。裁判所が被害者の主張を認めれば厳しい状況を迎える。難しくても法的に問題のない解決法を追求しなければいけない。一部の人は、今のような与野党対決局面で野党の賛成は得られないというだろう。このような時であるほど、特定事案に限定してでも国益のために与野党が「協治」する事例をつくる必要がある。政府がどうするかにかかっている」
韓国野党が、日本との関係改善は国益に適うことという認識にならない限り、徴用工問題は帰結しないだろう。日本は、韓国がそれを自覚するまで待つほかない。