勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    韓国は、朝鮮半島という地理的条件から有史以来、中国や北朝鮮とは切っても切れない精神的なつながりがある。朝鮮戦争によって、その「つながり」は大きなダメージを受けたはずだが、親中朝論者には蚊に刺された程度だ。むしろ、南北朝鮮統一の機会を失ったという理解だ。韓国進歩派と自称する人々は、この立場である。文在寅氏も、口には出さぬが心情的には中朝へ大きく傾いている。この反動が、反日米である。とりわけ、日本への恨みを持ち続けている。これは、永遠に消えないであろう。

     

    『朝鮮日報』(7月17日付)は、「『イニ』と『晋ちゃん』がドブに放り投げた韓日現代史」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙の鮮于鉦(ソンウ・ジョン)論説委員だ。

     

    暇さえあれば韓国に来て講演料を持っていく日本人学者がいる。その学者人生を通じて北朝鮮を賛美し、韓国の存在価値を否定してきた人物だ。史料の検証もなく金日成(キム・イルソン)を美化する一方で、明確な証拠が多いテロや拉致といった北朝鮮の凶悪犯罪は認めない。韓国の報道機関はそんな彼を「日本の良心」だという。韓日の歴史対立で韓国側の味方をするという理由だけでそう言っているのだ。

     


    (1)「日本にはこうした部類の人間が多い。戦後の日本の自由と豊かさを享受しつつ、世界で最も抑圧的で貧しい北朝鮮を擁護するファッション左翼たちだ。それと同時に、自由と豊かさを志向する韓国を軽蔑した。政治では社会党、文化では岩波書店を中心に巨大勢力を構築した。彼らが権力を握っていたならば、韓国は今とは違っていただろう。だが、日本国民は彼らを主流として受け入れなかった。そうして捨てられた彼らは「反日」の旗を手に韓国で老後資金を稼いでいるのだ」

     

    日本に存在する「ファッション左翼」は、韓国軍事政権時代の人権弾圧を非難する目的であったが、北朝鮮では今なお行なわれている現実を故意に触れようとしない。そういう意味で、片手落ちである。そのファッション左翼も現在、日本では大きく後退した。

     


    (2)「韓日国交正常化時に受け取った日本の請求権資金が、浦項総合製鉄(現:POSCO)建設に使われたことはよく知られている。当然受け取るべきカネを受け取って使ったのに、何を大層な事のように言っているのか、と言うこともできる。しかし、それは知らないから言える言葉だ。賠償金や経済協力資金は使い道が厳しく定められている。カネが後進国の政治の下水溝から消えたり、銃や刀になったりしてはいけないからだ。浦項総合製鉄の資金はもともと農林水産業用だった。米国、英国、フランス、ドイツ、イタリアが韓国にそっぽを向いた。日本の同意がなければ、製鉄所建設はそのまま水に流されてしまうような状況だった。韓国の頼みに日本政府は同意した」

     

    韓国の浦項総合製鉄建設は、日本の鉄鋼業界が技術支援した。八幡製鉄(現・日本製鉄)の稲山社長が音頭を取ってオールジャパンで支援したものだ。主要国は、すべて断った案件である。日本側の思いは、日韓併合時代への償いであった。韓国は現在、こういう日本の事情を理解することはない。

     


    (3)「
    安岡正篤という保守主義者がいた。日本政府と新日鐵を説得して韓国に協力させた人物だ。一学者だったが、日本政界の舞台裏で実力者として大きな力を発揮した。彼は韓国の正統性を疑わなかった。韓国は共産主義と闘う防波堤だと考えた。この信念は自民党主流派の韓国観を支配した。彼らの努力が韓国にどのような影響を及ぼしたかは、李秉喆(イ・ビョンチョル=サムスングループ創業者)、朴泰俊(パク・テジュン=浦項総合製鉄初代社長)ら戦後第1世代の企業経営者たちの自叙伝を見れば分かる」

     

    サムスン創業者の李秉喆氏は、戦前の早稲田に留学している。この経験を生かして戦後、日本企業に食込んで多くの技術支援を取りつけた。ただ、半導体は日本技術を窃取した。この間の事情は、李氏が私的な日本の会合で語っている。私は、その席にいて今なおその情景を記憶している。

     

    (4)「かつて植民地支配した国と支配された国の中で、独立後、韓日のように発展的な関係を結んだケースはない。しかし、韓国の左派は「戦犯に助けてもらった」として韓国の経済発展をさげすむ。「戦犯」のレッテルを子どもたちが使う鉛筆にも貼る。韓国が滅びることばかりを待っていたデタラメ学者を「日本の良心」とあがめる。中国に盾突いた日本企業の財産を没収する。この国を二度抹殺しようとした中国に、カネと技術を惜しみなくささげる。米国の北東アジア安保のおかげで生き延びていながら、韓米日軍事協力を口にすると「いっそ中国・北朝鮮と手を組もう」と言う。彼らは現代ではなく、旧韓末時代(朝鮮時代末期から大韓帝国時代まで)を生きている。だから果てなく彼我を混同する」

     

    このパラグラフは、韓国の実情を実に良く示している。私はしばしば、韓国外交が朝鮮李朝末期の混乱と同じだと指摘している。これは、韓国人の心情が中朝と繋がっている事実を雄弁に物語っている。こういう層に対して説得も対話も無理である。これが、反日の原動力になっているのだ。韓国人のざっと半分を占めているだろう。

     


    (5)「安倍晋三元首相が死去するや、韓国の報道機関は彼を「日本の保守の心臓」と報道した。だが安岡正篤、岸信介、中曽根康弘、小渕恵三につながる日本の保守は彼らの質の低い手を読み、広い視野で韓日関係を導いた。安倍元首相は「晋ちゃん」という愛称通り、お坊ちゃまの限界から抜け出せなかった。文政権と同じ手で対決して保守の格を下げた。そういう点で「イニ(文在寅前大統領の愛称)」と「晋ちゃん」の時代はコインの裏表だ」

     

    このパラグラフには異論がある。「安岡正篤、岸信介、中曽根康弘、小渕恵三につながる日本の保守は彼ら(注:韓国)の質の低い手を読み、広い視野で韓日関係を導いた」は結局、韓国の日本への甘えを増やしただけだ。日本が誠意を見せてもそれを理解せず、要求すれば何でも応じるという誤解をもたらした。その頂点が文政権である。安倍政権は、韓国の甘えを拒絶し、初めて「政経不分離」で対抗したに過ぎない。日韓関係の正常化開始のゴングである。

     

    (6)「文政権は選挙で崩れた。無念の経緯で安倍時代も終わった。時代はこのように必然と偶然が重なる時に変わる。尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は彼らが引き継いだ難題を解き始めた。両国はいつも難題を解きながら発展してきた。何かを始めれば、何もしない人々が必ず邪魔する。何かを成し遂げれば、それまで壊してきた者たちが再び壊そうと扇動するだろう。はねつけて前に進めばよい」

     

    韓国側には、根っからの親中朝派がいる。この層は、日韓関係の正常化を望んでいない人たちだ。韓国経済が徹底的に疲弊し根拠なき自信が崩れなければ、まともに日本を見ることもないだろう。それまで待たなければならない。

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    韓国大統領の支持率が最近、急落している。就任早々、不支持率が支持率を上回っているのだ。韓国ギャラップが7月12日から14日にかけて調査したところ、尹大統領「支持率」は32%。6月第2週の53%を記録して以降、連続して下落している。1カ月で20ポイントを超える低下だる。一方、「不支持率」は先週より4ポイント増えて53%である。

     

    何が原因か。経済状況の急悪化が国民の不満を高めていることは間違いない。ただ、韓国内での認識は、枝葉末節な部分に目を向けている。コップの中の争いが原因と捉えているのだ。

     


    『東亞日報』(7月16日付)は、「国政基調の全般にわたる見直しが必要だ」と題する社説を掲載した。

     

    (1)「尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領に対する国政支持率の下落傾向が、1ヵ月以上続いている。6月末、否定評価が肯定評価を上回る「デッドクロス」調査結果が出た後、先週に肯定評価40%ラインが崩壊し、15日には32%まで下落する結果も発表された。政権の序盤、高い支持率を踏み台に各種政策を力強く展開しなければならない時だが、現実は逆だ。国政メッセージは衆口ふさぎ難く(口を塞ぎ難いほど、多くの人がやかましく騒ぐこと)、様々な逸話が出てきて支持率を失っており、これが再び国政動力を損なう悪循環の沼にはまったような局面だ。今が底なのかどうかもわからない。深刻な危機状況であることは確かだ」

     

    1週間に一度という頻度で多くの世論調査会社が調査結果を発表している。韓国は、世論調査会社が儲かるという評判であり、新規参入が絶えない業界である。世論調査を盾にして、政治を動かすという思惑も働いている。

     


    こういう雑音のある調査だが、尹政権の支持率が急落していることは事実だ。無能であった文政権より、変化が起こると期待した。だが、世界経済の急変で韓国経済が混乱していることで、「期待外れ」もあろう。

     

    (2)「支持率下落の原因に、大統領のドアステッピング(立ち話取材)発言論議、検察などの偏重人事論議、李俊錫(イ・ジュンソク)代表懲戒をめぐる与党内紛、いわゆる「尹核関(尹錫悦氏側の核心関係者)」の不和説、妻の金建希(キム・ゴンヒ)氏をめぐる雑音などが挙げられる。みな一理ある診断だ。ただし、これだけでは大統領選挙と地方選挙を続けて勝利した新政権の異例の低い支持率を十分に説明することはできない。尹政府の国政基調を原点から見直す時だ」

     

    韓国世論が、冷静に政権の施策を評価するのでなく、些末なことを大袈裟に捉えて評価を変えていることも否定できない。与党内紛や大統領夫人を巡る話題など、政策とは無関係な筈だ。それが、大統領評価を左右すること自体、不思議である。

     


    韓国特有の「噂話」の好きな国民性を表している。無為無策の文大統領が、退任直前まで40%台の支持率を維持したことも摩訶不思議だった。大統領が、芸能人扱いされているとしか思えないのだ。

     

    (3)「文在寅(ムン・ジェイン)政権で起こった非常識と不公正、「ネロナムブル(自分(ネ)がやればロマンスだが、他人(ナム)がやると不倫」の誤りを正し、常識と正義を確立することは重要な課題だ。しかし、反文(文在寅)そのものは国政基調にはならない。新政権が樹立したら、5年間、何をどのようにするのか国政の青写真を出してこそ、国民も正しい方向かどうか判断することができる。今は何をするのかが見えないもどかしい状況だ)

     

    国民は、外交よりも日々の暮しに直結した話題を求めている。国内改革をするには巨大野党が壁になるが、ともかく真正面から交渉するしかない。

     

    (4)「世界的な景気低迷の恐怖が襲撃している。物価暴騰で庶民は生活苦にある。外国為替危機、金融危機よりも厳しい不況が襲うという憂鬱な展望も多い。尹大統領も、非常経済民生会議を開くなど危機管理に乗り出しはした。しかし、政府がまともに対応しているのか、そのような能力を備えているのか信頼を与えることができないのも事実だ。一方では新たな積弊清算で騒がしく、他方では経済危機の暗雲が漂うのに、「経済リーダーシップ」は曇って見えるため、国民は不安で仕方がない。「以前の政権よりまし」といった比較話法では、国民の共感は得られない」

     

    公平に見ると、新政権は外交と前政権の不祥事の追及に全力を挙げている印象が強い。これも重要だが、経済問題の解決策のメニューだけでも国会で議論することが必要であろう。

     


    (5)「政府と国会が別に動き、与野党は1ヵ月半が経っても院構成もできずに争っており、与党は2年後の総選挙だけを見つめている。国が混乱すればするほど、国民の視線は大統領に向かう。野党の非協力のせいだけにすることはできない。何より今は経済に集中する時だ。すべてのメッセージを危機対応に合わせなければならない。経済ラインに大胆に力を与える必要がある。一日の日課のようにドアステッピングにこだわるのではなく、国家が直面した現実、限界、政府の危機対応の方向を説明し、各経済単位の苦痛分担と政界の協力を求める正式の記者会見を行う必要もある。忍耐の時間が減っていることを自覚しなければならない」

     

    巨大野党が、政策実行のブレーキになっている。だが、少数与党もこれを恐れていないで、果敢に議論をする姿勢が求められる。そういう姿勢を明確にするだけでも、世論は変ってくるであろう。

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    韓国経済は、崖っ縁に立たされている。高インフレ・高金利・貿易赤字の「三重苦」に苛まされているからだ。とりわけ、これまで貿易黒字を出してきた中国が、5月以降に赤字に転落したことが大きな痛手である。高インフレ・高金利でも貿易黒字を維持できれば不況抵抗力もあるが、最後の砦が脆くも崩れたのだ。

     

    中国は、香港を含めた対中国輸出は韓国全体の3割台になっている。それだけに、中国経済の動向が韓国経済を大きく揺さぶることになってきた。「落ち目の」中国経済への過度の依存度が、韓国経済の危機へ繋がってきた。

     


    『韓国経済新聞』(7月16日付)は、「『外貨準備高急減を懸念』当局介入は危機として映ることも 韓国、通貨スワップは可能か」と題する記事を掲載した。延世大の金正シク(キム・ジョンシク)経済学部名誉教授(元韓国経済学会長)へのインタビューである。

     

    金教授は、「昨年は貿易黒字であり、資本流出の心配も少なかったが、1年間に大きく変わった。韓国の基礎体力(ファンダメンタルズ)が大きく落ちたため、ウォン安ドル高になるのは普通だ」と語った。今は為替レートを防御するよりも、輸出活性化に重点を置くべきという提言である。

    (1)「米国が短期間(1~2年)に金利を3%以上引き上げた場合、韓国は例外なく危機を迎えた。1997年の通貨危機、2008年のグローバル金融危機の直前だ。下半期に米国が利上げをすれば、新興国全体が危機を迎える可能性が高い。さらに深刻な問題は、韓国経済の基礎体力が弱まっている点だ。最近は貿易収支が赤字に転換した。28年ぶりの衝撃だ。不動産など資産価格バブルのほか、賃金引き上げで輸出競争力も落ちている。資本の流出が起きやすい条件だ。さらに労使紛糾までが生じれば通貨危機に入る可能性が高まる」

    韓国は、人口5200万人である。国内市場の狭隘化からどうしても輸出依存度が高くなる。その意味で、「竹馬経済」である。この「竹馬」が、時に波乱を起す宿命を負っている。過去二度の通貨危機は、こうして起こったのだ。現在、三回目が襲うと懸念を強めているところである。

     

    中国経済の不調で5月以降、韓国の対中貿易が赤字になっている。94年9月以来の黒字基調が4月で途切れたのだ。中国は、「ゼロコロナ」と不動産バブルの後遺症が本格的に現れている。4~6月のGDP成長率は、前年比0.4%増と辛うじてマイナスに転落しないギリギリの線で踏みとどまった。米国の高金利が世界経済を冷やしており、韓国の対中輸出が急回復できる見通しはない。

     

    (2)「6月末基準で韓国の外貨準備高は4382億8000万ドルだ。2008年のグローバル金融危機当時の2005億ドルと比較すると倍以上も多い。しかし外国人の株式投資の比率が高く、安全保障リスクも高い国なので、外部の衝撃を防ぐのに十分な水準とは見なしがたい。特に最近は外貨準備高が減少している点が心配だ。昨年10月に比べて310億ドル減少したが、当局がウォン安を防ごうと為替市場に介入したためとみられる。下半期には米国の金利がさらに高まるとみられ、このような形で介入すればまた数百億ドルが減少することになる。これを外国は通貨危機のシグナルと見なすかもしれない。韓国経済がさらに不安定になる要因になるはずだ」

    韓国は、ウォン安を食止めるべく為替市場に介入している。その結果、すでに310億ドルの外貨準備高を減らしている。さらに介入すれば、数百ドルを失うことになろう。IMF基準で見た韓国の外貨準備高は、「モデル数値」を下回っている。ウォン投機を招きやすい状況になっているのだ。それだけに、外貨準備高を減らしたくない状況だ。

     


    (3)「韓国のファンダメンタルズをまともに反映すれば、今よりもウォン安ドル高になる可能性が高い。適正為替レートは貿易収支を赤字にしない水準でなければいけない。わが国のファンダメンタルズが悪化した中で、ウォン安ドル高を無理に防ごうとしても、それはできることではない。もし(適正為替レートではないが)1ドル=1300ウォン水準に抑えていれば韓国の輸出は減少し、貿易赤字によってウォン安ドル高がさらに進む可能性がある。当局が為替市場に過度に介入するのは望ましくない」

    韓国経済のファンダメンタルズは、明らかに悪化している。この状況で、ウォン安を阻止すべく為替介入しても効果はない。

     

    (4)「韓国の財政悪化にもかかわらず、これまで通貨危機に陥らなかったのは、貿易黒字と韓米通貨スワップが維持されたからだ。現時点ではこのような安全弁がない。米国の利上げの時期には、輸出増大と貿易収支の黒字転換に焦点を合わせるべきだろう。その間、物価安定に重心を置いていたパラダイムは変わらなければいけない。5月から対中貿易収支は赤字に転じた。5月に11億ドル、6月には12億1000ドルの赤字となり、今後も赤字が続く可能性が高い。韓国は中国に劣勢になっている。その国の見通しが暗いと見なされれば、外国資本は投資資金を一度に引上げることもありうる。米国との通貨スワップを通じて為替市場の安全弁も用意しなければいけない」

     

    文政権下でウォン安が進んだものの、FRB(米連邦準備制度理事会)からの短期ドル資金借入で危機を乗り切ってきた。現在の韓国経済は、財政赤字・貿易赤字と「双子の赤字」に陥っている。米国からドル資金借入で外貨資金繰りを付けなければ、外貨準備高の減少という事態を招くだけで傷を深くする。

     


    (5)「2008年と新型コロナパンデミック直後もそうだったように、新興国の数カ国とグループの形で通貨スワップを再開してほしいと要請することができるはずだ。通貨スワップが締結されれば、現在1ドル=1300ウォン台の為替レートは1200ウォンを割るまでウォン高ドル安が進むと予想する。輸入物価も下がり、株価も大幅に上昇する可能性がある」


    米国から短期借入れをすれば、1ドル=1200ウォンを突破するようなウォン高が期待できるだろう、としている。ただ、韓国経済が痛んでいるだけにそこまでの「ウォン高」になるか疑問である。

     

    (6)「円・ドル為替レートは1ドル=137円を超えた(円安ドル高)。下半期に米国の金利が上がれば円安はさらに進む可能性がある。日本との競合品目は減っているけれど、円安の威力は依然として大きい。下半期に1ドル=150円に近づけば、サービス貿易にも影響が及ぶだろう。韓国人の日本旅行が増えて、韓国はサービス収支も悪化すると予想される。円安になれば、韓国もウォン安にしなければいけない。貿易赤字が拡大すれば為替市場はさらに不安定になる」

    ウォン相場の動向には、円相場との絡みがある。円安が進めば、韓国人の日本旅行が増えて、韓国のサービス収支の赤字が増え、経常収支赤字へ拍車をかける。これが、ウォン安を招くのだ。韓国は、難しい局面を迎える。

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    韓国を「クアッド」(日米豪印)に参加させろ、という議論がある。クアッドは、インド太平洋戦略の緩いグループである。だが、先々にはより強固な結びつきになる可能性を持つ。それだけに、韓国がクアッドへ正式加入する場合、日本との感情的行き違いをどのように乗り越えるのか、これが最大のポイントだ。

     

    文政権以前は、韓国軍の上級階級が自衛隊へ留学していた。韓国艦艇が2018年12月、海上自衛隊哨戒機へ行なったレーダー照射事件を巡る騒動の際、韓国国防部長官(国防大臣)は日本へ猛烈な敵意を見せた。彼は、二度も航空自衛隊へ留学しており、海上自衛隊哨戒機が国際ルールで飛行していることを熟知していたはずだ。それにも関わらず、あのような虚言で日本へ対抗した。また、旭日旗を降ろして釜山港へ入港せよとも要求している。自衛隊が、このような韓国軍と共同作戦することは難しいであろう。

     


    『日本経済新聞』(7月16日付)は、「韓国をクアッドに引き入れよ」と題する記事を掲載した。筆者は、元NATO欧州連合軍最高司令官ジェームズ・スタブリディス氏である。

     

    米太平洋艦隊で過ごした長い年月の間、私はしばしば日本と韓国の間にある敵意に驚かされた。日本による朝鮮半島占領の傷痕など複雑な歴史的経緯があり、両国間に政治的見解の相違があることは理解している。それでも米軍の責任者は、両国のカウンターパートとの協力関係を構築できないことにいら立ってきた。

     

    (1)「北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記の動向や中国が軍事的主張を強めていることを受け、韓国は軍事力を強化している。今後は安全保障において日本とのハイレベルの協力関係を模索するとも思われる。日米豪印4カ国の枠組み「Quad(クアッド)」は韓国を加え、5つを意味する「quint(クイント)」を考える時期だろうか。韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は防衛支出の増加を示唆している。射程が長く高性能の弾道ミサイルや、核弾頭は搭載しない極超音速巡航ミサイルなどの導入を目指すとみられる」

     

    韓国は、右派や左派も問わず自衛隊に恐怖感を持っている。日本の防衛費増大や改憲によって、自衛隊は韓国へ攻め込むと警戒しているのだ。このような状況で、自衛隊と韓国軍が共同行動を取ることは難しいであろう。旭日旗にすら敵意を見せる国だ。世界で唯一の「恐日国」である。

     


    (2)「韓国は米国の「核の傘」に依存し、自前の核戦力の構築を控えてきた。今後も核保有に踏みだす可能性は低いが、原子力潜水艦の建造や、核兵器製造の手前の能力の構築を選択する可能性はある。米国は、韓国が核兵器や原子力潜水艦を取得することに反対してきた。しかし米国がオーストラリアの原潜配備計画を黙認したことで方針は変わるかもしれない。この瞬間にも北朝鮮は核実験の準備を進め、記録的な数の弾道ミサイルを発射している。2022年の発射数は19年の25発をすでに超えている。

     

    米国は、韓国へ原子力潜水艦技術の伝授を拒否している。中ロへ漏出することを警戒しているのだ。米国の韓国への信頼度は、日本と比べて極めて低い。文政権の反米傾向が祟っている。

     

    (3)「北朝鮮は陸軍と空軍の近代化も進めている。韓国は、経済問題に悩まされている北朝鮮が見返りを求めて本格的な威嚇行為を始めるのではないかと懸念している。その結果、韓国は米国が持つ情報への無制限のアクセスを求めるだろう。北朝鮮の核戦力に対する先制攻撃を実施するには、韓国は攻撃力の高い無人兵器も必要になる。サイバー攻撃でも北朝鮮は強力な能力を有しており、韓国には米国の支援が必要だ。尹政権の防衛力の強化が軌道に乗っているように見えるのは重要だ」

     

    韓国は、北朝鮮への軍事的対抗措置を高めなければならない。それには、どうしても日米韓三ヶ国の結束が不可欠である。だがその前に、韓国の抱く日本への敵意をどうするのか。表面的に柔和になっても、感情面でのしこりまで解くには大変な時間がかかるであろう。二言目には、「謝罪せよ」と迫る韓国人の深層心理が急に変わるはずがない。

     


    (4)「日本も同様に防衛費を増やしている。年末までに改定される予定の「国家安全保障戦略」では、攻撃能力と弾道ミサイル防衛に向けた支出を増やすとみられる。韓国の尹大統領と日本の岸田文雄首相との首脳会談が開かれれば、両国間の防衛協力が優先議題のひとつになるだろう。両国はロシアによるウクライナ侵攻を強く非難した。ロシアの攻撃によって、人々は太平洋地域における軍事侵略の可能性が現実にあることを認識した。米国側はアジアの両国が共に防衛費を増やし、防衛協力の可能性を議論していることに満足感を抱いている」

     

    このパラグラフは、実に表面的なことばかりを取り上げている。むろん、こういう一致点は必要であるが、心のモヤモヤが解決できずに日韓で強力なパートナーシップを築くことは困難であろう。その溝を掘ったのが文政権である。

     


    (5)「米海軍主催の多国間海上訓練である第28回「環太平洋合同演習(リムパック)」は、韓国海軍と日本の海上自衛隊、その他二十数カ国が参加する世界最大の合同演習だ。6月29日に始まり8月まで開催され、クアッド参加国である豪印も重要な役割を担っている。韓国にとっては、米国との同盟の力が、日豪印とも連携することで強化される可能性がある。リムパックは海上と空中での協力の優れたリハーサルになるだろう。クアッドが、いつの日かクイントになる可能性はあり、韓国の参加は米国にとって歓迎すべき一歩になるはずだ

     

    下線のように、いつか韓国がクアッドに参加する日が来るであろう。その場合、韓国の政治状況の安定が不可欠である。反日勢力がどうなっているか。ポイントはここにある。

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    韓国は、3度目の通貨危機回避に向けて基準金利を一挙に0.5%引き上げた。事態は逼迫してきた。

     

    韓国は、消費者物価上昇率(5月5.4%)が6%台へと上昇見込みで、ウォン相場は1ドル=1300ウォン割れの事態を迎えている。外貨の流出が進んでおり、外貨準備高は4ヶ月連続の減少という危機状態を迎えている。韓国中央銀行である韓国銀行(韓銀)は、史上初めて基準金利を一度に0.5%引き上げる「ビッグステップ」に踏み切った。

     

    基準金利は7月13日、1.75%から2.25%へと引き上げた。これで基準金利は2014年8月(2.25%)以来、約8年ぶりに最も高い水準に上がった。韓銀は今後も、金利を追加引き上げの方針を強く示唆した。基準金利を決定する会議は、今年はあと3回(8、10、11月)残っている。今後、毎回金利引き上げの決定が下されれば、今年末には基準金利が3%に達するだろうという見通しも出ているほど。



    金利の急激な引上げで困惑しているのは、主として青年層である。これまで、不動産価格上昇に煽られて住宅購入に走った家計は、莫大な債務を抱えている。政府は、これを救済すべく金利減免措置を発表した。韓国では、こういう「徳政令」は珍しくなく文政権当時も行なった。過剰債務を抱えても、最後は政府が面倒を見てくれるという甘えが、過剰債務を生む要因になっている。「自己責任」が曖昧なのだ。

     

    韓国では、自己責任を強調するとすぐに「新自由主義」という非難が浴びせられる社会だ。「資自由主義」という理念の解釈よりも、何ごとも政府が面倒見てくれる政治をベストと理解している国である。この甘えが、過剰債務を生み出している背景にある。国民性と言えよう。

     

    『朝鮮日報』(7月15日付)は、「韓国政府、利払い不能の青年層対象に利子を最大50%減免」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は14日、非常経済民生対策会議を開き、新型コロナウイルス流行で被害を受けた自営業者や青年など弱者階層を支援するため、125兆ウォン(約13兆円)規模の金融支援策を盛り込んだ「金融部門民生安定計画」を発表した。借金を返済することが困難な自営業者に対し、元金を最大90%減免し、満34才以下の青年層の利息を30~50%減免することが柱だ。尹大統領は「物価上昇抑制のため、全世界で政策金利が引き上げられる状況で、弱者階層の債務負担が増大している」とし、「利上げは物価上昇を抑制するために避けられない措置だが、その負担が社会的弱者に転嫁されてはならない」と指摘した」

     

    借金返済が困難な自営業者は、元金を最大90%減免する。満34才以下の青年層の利息は、30~50%減免するという。何と、優しい政府であろうか。文政権による政策失敗を尻ぬぐいする形だ。自営業者は、最低賃金の大幅引き上げで苦しめられた。それにパンデミックが追い打ちをかけたが、元金を最大90%棒引きとは凄い。34歳以下の青年層の金利も30~50%減免する。利上げ分負担が帳消しになる。

     

    (2)「政府は債務過多に陥った青年層の利子減免など特例支援を1年間限定で実施する。所得と財産などによって、利息の30~50%と延滞利息を減免する。最大3年間元金返済を猶予するが、その期間には年3.25%の低金利を適用する。コロナ流行以降、26カ月間続いてきた自営業者と零細事業者に対する満期延長および利払い猶予措置は10月で終了する。政府は不良債権問題が一気に表面化することを避けるための対策を整えた。銀行が追加で満期延長に応じるか、不良債権化の懸念が強い融資について、金融当局が30兆ウォン規模の「新出発基金」で債権を買い取り、債務調整を進める。90日以上延滞した事業者ローンは元金の60~90%を免除する」

     

    徳政令は一度行なうと、必ず慢性化すると指摘されている。韓国では、こういう事態が起こっている。90日以上延滞した事業者ローンは、元金の60~90%を免除するというのだ。そのために、金融当局が30兆ウォン規模の「基金」で債権を買い取る。まさに、「おんぶにだっこ」である。

     


    こういう甘えが、社会の至るところに充満している。日本対しては、旧慰安婦や旧徴用工への賠償金請求がそれだ。騒げば金が出るという悪習が、外国にまで向けられることは、はなはだ困った事態である。契約概念が希薄であるので、過剰な借入れに走るのであろう。

     

    (3)「庶民の住居支援のための「安心転換融資」も今年は5兆ウォン上積みし、計25兆ウォンに拡充する。9月中に取り扱いが始まる安心転換融資は、従来の変動金利型住宅担保ローンを政策的住宅ローン制度「ポグムジャリローン」の金利より0.3%低い4%台の固定金利型ローンに乗り換えさせるものだ。住宅金融公社による賃貸保証金融資の最大保証限度も、2億ウォンから4億ウォンに引き上げる」

     

    文政権下で、ソウルのマンショ価格は8割も高騰した。この間の対策と言えば、全く的外れであった。住宅への課税基準が、住宅数であったのだ。ユン政権は、これを改めて住宅価額基準に変えるという。

     

    日本でも不動産課税は、時価評価が基準である。韓国では、多住宅保有者に対する税金重課によって、住宅価格を安定させようとした。都市の一等地にある不動産と田舎の不動産が、同じ1棟という意味で同じ評価であるはずがない。これでは、田舎よりもソウルのマンションを買ったほうが値上りもあって得になる。子供でも分る理屈が分らなかったのだ。韓国の税体系の矛楯が現れている。

     

    こうした税法の間違いを、庶民の住居支援のための「安心転換融資」で補正する。韓国進歩派の政策は、無惨という以外に言葉もない。


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