勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 韓国経済ニュース時評

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    「日韓問題を国内政治に利用しない」。次期韓国大統領の尹(ユン)氏は、このように繰返し発言している。文政権は、「反日」を国内政治に利用し、野党の保守派を追詰める戦術に使ってきた。何とも言えない剣呑な政権であったのだ。

     

    次期政権は、親日米をはっきりと打ち出している。国際情勢の急変の中で、安全保障問題が最重要課題になってきただけに、日米韓三ヶ国の協力体制を築こうという狙いである。この一環として、次期政権は米国へ代表団を派遣して新政権の政策を説明し理解を求めた。日本へも4月24日~28日までの予定で代表団を派遣する。

     

    代表団は、日本滞在中に外務省や与野党関係者との会談を予定している。尹氏の報道官は「対北朝鮮での協調や、韓日間の懸案を解決する土台を築く効果があると期待している」と述べた。過去、最悪状態の日韓関係に改善への動きが出るか、である。

     

    『中央日報』(4月18日付)は、「韓国『尹錫悦時代』、韓日関係でまずやるべきこと」と題する記事を掲載した。

     

    5月に発足する尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権には外交的な難題が多い。いつでも高強度の挑発ができるよう準備する北朝鮮の脅威、米中間で激化する戦略競争など、どれ一つも容易なものはない。しかし実際これをうまく解決していくことが可能な隠れたポイントがある。それは日本だ。韓国は自由民主主義と市場経済という核心価値を共有する隣国の日本と多くの安保懸案で利害関係が一致するからだ。脅威に対応するための連携はやりやすい。

     

    (1)「一例として北朝鮮のミサイル脅威が挙げられる。非核化の方法は対話が必要だが、米朝が当事者となる非核化対話で「スモールディール」に対する懸念は常に存在する。米国本土に脅威となる長距離ミサイルの除去を優先視する場合、韓国を脅かす短距離ミサイル問題は看過されやすい。こうした状況を共に防げる唯一の国が日本だ。韓日は北朝鮮の中距離・短距離ミサイルによる安保の脅威を共有する」

     

    韓国の安全保障問題で最大の課題は、北朝鮮の軍事力強化である。この問題は、日本にとっても重大課題である。それゆえ、日韓が共同歩調とれる分野は、まず北朝鮮問題になる。文政権では、北朝鮮を脅威と位置づけなかった。

     

    (2)「それで、文在寅(ムン・ジェイン)政権が韓日関係を最悪の状況になるよう放置または助長したのは、北核の脅威をはじめ多くの安保的懸案を扱ううえで自らを不利な状況に追い込むのと同じだった。もちろん誰が原因を提供し始めたのかを問いただせば、非難されるべき側は日本だ。不当な経済報復措置を取り、過去の問題に誠意ある態度も見せなかった。しかし外交力というものは「それで」でなく「それでも」を成し遂げるものだ。断交するのではない限り、それでも韓日関係をこれほどまで悪化させないために、政府は今よりもっと努力するべきだった」

     

    このパラグラフでは、相変わらずの「日本加害者論」である。外交問題で、過去の歴史を絡めたら絶対に上手く行かない。これが、外交交渉の鉄則である。過去を語らないことが、前向きな関係を築くポイントである。文政権は、こういう外交の原則を踏み外した。素人外交だったのだ。新政権は、この愚を犯さないと見る。

     

    (3)「ところが、国内政治的に反日感情を活用して対決構図にさせたのが文政権の敗北だ。その間、葛藤の根源である過去の問題解決のための国内的努力も十分にしなかった。5年間のトンネルを過ぎて、ようやく韓日関係改善の環境が形成されつつある。尹錫悦次期大統領は候補時代から関係改善の意志を見せ、日本でも文政権が退くだけでも状況が変わるという期待感が高い。しかし、最近の日本発の報道を見ると、尹政権はこのような期待感を満たすのではなく、期待感を下方調整する方向を定めるべきではないかと感じるほど心配が多い」

     

    このパラグラフでも、日本の報道で韓国新政権歓迎の記事がないことに不満を漏らしている。これは、日本への甘えである。国際情勢は、ウクライナ問題に象徴されるように、ロシアと中国の連帯に注目が集まっている。韓国の新政権を「歓迎する」、あるいは「しない」というレベルの域を超えたところにあるのだ。韓国メディアは、もっと目を見開くべきである。

     


    (4)「大統領選挙が終わってから、ずっとこのような流れだ。(日本では)尹次期大統領の就任式に送る祝賀使節に関しては一行も報道されないが、韓国が日本に政策協議団(特使団)を送る計画という報道は多い。開始からこのような形の駆け引きはよくない。韓国側でいくら韓日関係改善に向けた環境が形成されたとしても、日本が呼応する意志がなければいかなる効果もない。手のひらも互いに接してこそ音が出るものではないのか」

     

    韓国新政権が発足前に、外交政策で日本へ説明することは歓迎すべきことである。政権発足後すぐに、日韓で議論が可能になるからだ。ただ、歴史問題はタブーである。日韓が、打ち解けて話し合える雰囲気が出るまで封印することである。先ず、安全保障の議論が優先されるべきだろう。

     


    (5)「まず、日本は過去に対する反省もまともにせず「韓国が解決策を出すべき」という高圧的な姿勢で一貫した韓国たたきをやめなければいけない。それで十分だというのではなく、新たな始まりのための基本の中の基本だ。尹錫悦政権は関係改善のための日本との協議に先立ち、両国間の葛藤の根源である過去の問題解決のために国内的な努力から取り組む必要がある。その最初は被害者の声を聴くこと、その次もまた聴くことだ」

     

    韓国が歴史問題を持ちださなければ、日本は韓国叩きをする必要はない。慰安婦や徴用工の問題は、文政権が意図的に持ち出したことである。新政権が関知しないことだから、現在と将来の問題を先行させるべきだ。

     

     

     

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    50対500の違い

    時代錯誤的な大国論

    先入観で日本を視る

    李朝と同じ拙い外交

     

    韓国では今、「50対500」という言葉が話題になっているという。ウクライナのゼレンスキー大統領の国会演説で、韓国と日本の国会議員が出席した人数の比較である。50は韓国で、500が日本である。

     

    韓国の国会議員定数は300人である。そのうち、出席した人数が50人程度であった。韓国の与党「共に民主党」は、人権尊重を売り物にしている政党で、180人の議員を擁する。仮に、出席者50人が全員、与党議員としても出席は3割に満たなかったことになろう。国会議長や文大統領も出席しなかったのだ。

     


    出席した議員もゼレンスキー氏の演説中(15分程度)、居眠りをしたりスマホをいじったりと真剣に聞いている様子でなかったという。演説が終わった後も拍手する人もいなかった。これに比べて日本の国会は、ゼレンスキー氏の演説に対して熱気を見せて聞いた。岸田首相以下、閣僚も出席したのである。演説後は、盛大な拍手を送ったのだ。

     

    50対500の違い

    日韓の国会が、ウクライナ問題についてこれだけ対照的な反応を見せた理由は何か。後日、韓国の外交官は、次のような感想を言っていたそうだ。

     

    十分に大きく成長した韓国が、損を恐れてロシアの顔色をうかがう様子を表した。自由世界の連帯と犠牲によって朝鮮戦争から起死回生した韓国が、いざウクライナを助ける番になると身を惜しむ様子を見せている。国連軍として朝鮮戦争に参戦した外国にとって、自らの国の兵士の血を流した地である韓国が、ウクライナへ恩返しもしない。韓国国会のあのような低俗な様子には、恥ずかしくて何も言えなかった、というのである。

     


    韓国与党議員が、このように消極的な態度を見せた裏には、ロシアへの遠慮だけでない。ロシアのウクライナ侵攻を非難しない、中国への思惑もある。韓国がロシアを批判すれば、間接的に中国をも批判することになる。こうして、中ロを一体として見ている韓国与党の外交姿勢が顕著に表われているのだ。

     

    いったい、韓国の国益を守る外交基軸はどこにあるのか。それを疑わせるに十分な振る舞いであった。それは、文政権で大統領特別補佐官を務めていた文正仁氏の発言に見て取れる。ウクライナ侵攻を招いた一半の責任は、ウクライナ側にあるという認識である。文氏は、特別補佐官辞任後も文政権の外交政策において、強い影響力を持っていると見られる。その彼が次のように発言した。

     

    「(ウクライナ)指導者の誤った判断が決定的な触発要因となった。プーチンの狂気じみた侵攻の決定も問題だが、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の未熟な初期対応も問題視されている。冷静に言うと、戦争予防という危機管理には失敗した」(『ハンギョレ新聞』3月7日付)

     


    この発言は、極めて問題含みである。ウクライナが、大国ロシアへNATO加盟など、刺激的態度をとったことで、ロシアの侵攻を誘発したと指摘している点だ。この議論は、19世紀の植民地理論を彷彿とさせるものである。「小国」は、「大国」に逆らわずご機嫌取りをすることが安全保障の決め手になるとしている。いわゆる、大国への「隷属」の奨めである。

     

    この理屈を日韓併合に関連づけるとどうなるか。朝鮮は、日本へ反抗姿勢を見せたので併合されたという理屈になる。これは、韓国がこれまで絶対に承服しなかった点である。日本が,強引に朝鮮半島を蹂躙したという歴史観に立っており、日韓基本条約が成立して50年経ってもなお、「謝罪と賠償」を求めている背景だ。

     


    韓国が、現在も日韓併合に拘るならば、ウクライナ侵攻問題では率先して、ウクライナ支援に立ち上がるべきである。実態は、全くの逆である。中ロの顔色を覗ってウクライナ支援をできるだけ目立たないようにしている。韓国は、日韓併合を糾弾すると同じ姿勢で、中ロを批判しなければ歴史観として辻褄が合わないのだ。

     

    時代錯誤的な大国論

    韓国には、旧時代的認識である「小国」ウクライナが、「大国」ロシアを刺激したという見方が巣食っている。実は、これが韓国政界だけでなく、韓国メディアにも見られるのだ。外信報道を利用して、日本の防衛をけん制する意図の記事が現れたのである。『朝鮮日報』(4月17日付)は、次のように報じた。

     

    米『ニューヨーク・タイムズ』(4月12日付)は、日本がロシアのウクライナ侵攻を契機に軍事費増額の動きを見せていると批判的に報道した。具体的には、次のような内容だ。

    1)日本がウクライナに防弾チョッキやヘルメットなどの軍事装備を支援した。

    2)岸首相が、スピードのある国防力増強論について発言した。

    3)日本が、クライナ戦争を利用して「平和国家」のくびきから抜け出すとの懸念が浮上している。


    これを報じた『ニューヨーク・タイムズ』記者と、転載した『朝鮮日報』記者は、ロシアのウクライナ侵攻が、世界史的にどういう意味を持っているか。その認識が、共にゼロであることを明白にしている。欧州は、ウクライナ侵攻によって1991年のソ連崩壊以来の安保危機に遭遇している。あるいは、第二次世界大戦(1945年)後の最大の問題と捉えているのだ。前記の記者は、これらと対照的な時代認識である。(つづく)

     

     

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    日本は、ロシアのウクライナ侵攻に強い反対の声を上げ、積極的に外交活動している。これに対して韓国メディアが疑念を呈している。軍事力強化への野心に利用しているというのだ。

     

    自衛権は、国家固有の権利である。その国防費の対GDP比は、日本の場合1%と世界的にも珍しいほどの低予算である。韓国は2%を上回っている。この韓国が、日本を批判するのはお門違いと言うほかない。

     

    もう一つ指摘しなければならないのは、ロシアのウクライナ侵攻が持つ意味だ。欧州では、これまで「中立」を標榜してきたフィンランドとスウェーデンが、軍事同盟のNATO(北大西洋条約機構)加入意思を見せているのである。これら北欧二国と、日本の対ロシアへの地理的条件は、さほどの違いがあるわけでない。ロシアが、占領している北方四島は北海道に隣接している。日本が、軍事的に緊張するのは当然であろう。

     


    『朝鮮日報』(4月17日付)は、「ウクライナ戦争の一方で 軍事・外交面で影響力を高める日本」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアによるウクライナ侵攻で国際秩序が揺らぐ今の状況を利用し、日本がアジアで存在感を高めている。ウクライナ戦争を巡ってロシアを強く批判し、また米国の同盟国として中国けん制にも積極的に乗り出すことで、国際社会における自国の立場を再び強めているとの見方も出ている。

     

    (1)「日本の林芳正・外務大臣は先日ポーランドを訪問し、ウクライナと連帯する意志を明確にした上で、日本への移住を希望するウクライナ難民20人以上を連れてきた。岸田文雄・内閣は異例にもウクライナ難民をさらに受け入れる意向を表明するなど、今回の事態を受けて積極的に動いている」

     

    日本は、これまで難民(避難民)受入れに消極的と批判されてきた。その日本が、国際的人道問題であるウクライナ人の救済に動いて、非難される理由はない。

     

    (2)「日本は来月24日には中国けん制の核心軸である米国、日本、インド、オーストラリアの4カ国からなる安保協力体「クアッド」の2回目となる対面での首脳会議を東京で開催する。安倍晋三・元首相当時からクアッドの立ち上げを呼び掛け、その発足後はクアッドの事実上の事務局となっている日本の立場が今回の会議でさらに強化されるものとみられる。昨年は米国と英国が「オーストラリアへの原子力潜水艦建造支援」を目的にこれら3カ国からなるAUKUS(オーカス)を発足させたが、これに日本を参加させる動きがあるとも報じられている。日本の外務省はこのニュースを否定しているが、長期的に今のAUKUSが最終的に日本を加えたJAUKUS(ジョーカス)になるとの見通しも少なくない」

     

    中国は、ロシアのウクライナ侵攻に対して非難していない現実が何を意味するかだ。中国もまた、同じことを始める潜在的な危険性を持っていることを立証した。日本は、尖閣諸島問題で常時、中国に領海侵犯されている。日本が、中国の「尖閣諸島侵攻」事態に備えて、同盟を強化することが非難の対象になるだろうか。

     

    欧州では、フィンランドとスウェーデンがNATOへ加盟したいと動きが始まっている。ロシアのウクライナ侵攻がなければ起こらなかった問題である。この伝で言えば、日本が仮にAUKUSへ加盟するという問題が起こっても、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟と同レベルの話であろう。取り立てて、日本を非難することにはならないであろう。

     

    (3)「日本は最近、米国と日本が中心となって進めるインド・太平洋構想にASEAN(東南アジア諸国連合)諸国からの協力を取り付けるため外交に力を入れている。岸田首相は先月19~21日にインドとカンボジアを訪問し、今月末にはインドネシア、タイ、ベトナムを訪問する予定だ。カンボジアはASEANの議長国、インドネシアはG20(20カ国・地域)議長国、タイはアジア太平洋経済協力会議(APEC)の議長国だが、これらの国々に対し中国の一帯一路に対抗するインド・太平洋構想への参加に向け説得に力を入れるものとみられる」

     

    フィリピンはこれまで、米国と軍事同盟を結ぶ一方で中国と経済的な関係を強化してきた。そのフィリピンが、ロシアのウクライナ侵攻で態度が一変したのである。日本と外務・防衛の「2プラス2」会合を持ったのだ。そして、自衛隊とフィリピン軍は装備の相互利用と相互訪問を常時行える態勢を検討することになった。自衛隊が、この取り決めを済ませているのは米国・豪州だけである。フィリピンとの間に協定が成立すれば、日本は3例目になる。

     


    インド太平洋戦略構想(クアッド)は、こうして具体的に動いているが、韓国は蚊帳の外である。ウクライナ侵攻問題でも他人事だ。ウクライナ大統領による韓国国会演説で、無関心ぶりを見せた。米国が、韓国を守ってくれるだろうという依存心の現れである。韓国は、「クアッド」を真剣に考えるべき国際情勢の変化を知ることだ。

     

    (4)「日本による一連の動きについて米『ニューヨーク・タイムズ』紙は12日「日本がウクライナに防弾チョッキやヘルメットなどの軍事装備を支援し、岸田首相はスピードのある国防力増強論について発言している」とした上で「ウクライナ戦争を利用して日本が『平和国家』のくびきから抜け出すとの懸念が浮上している」と指摘した。同紙は「(今が)平和国家のアイデンティティーから遠のく日本の変化の『決定的瞬間』だ」との見方も示した。国際社会で積極的に声を上げ、自衛隊の憲法への明記を目指し、軍事大国に向かおうとしているという意味だ。今年に入って日本の政権与党である自民党と防衛省は「防衛力の抜本的強化」を強調し、GDP(国内総生産)の1%以内としている防衛予算を大きく増額させたいと意気込んでいる」

     


    『ニューヨーク・タイムズ』(NT)は、下線のような指摘をしているが、自衛権は国家固有の権利である。日本の国防費は世界的にも極めて低いのだ。こういう事実を知れば、NTもこういう記事を書かなかったであろう。

     

    NTは、ウクライナがロシアに侵攻された事態をどう見ているのか。その同じ目線で、日本の防衛問題を論じるべきである。日本は,米国と軍事同盟を結んでいる。厳密な意味で言えば、「中立国」でない。日米軍事同盟は、日米が日本防衛で対等な関係である。日米が同じ歩調で、日本防衛に当る義務があるのだ。韓国は、米韓軍事同盟を結んでいる。韓国の事情は、日本の置かれている状況と同じはずである。 

     

     

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    韓国の国会議員は、ロシアによるウクライナ侵攻に対して本心では無関心であることが分った。4月11日に行なわれたウクライナのゼレンスキー大統領の韓国国会での演説は、韓国国会議員300名中、出席したのは50~60名であった。国会議長は欠席し、演説中もスマホをいじったり、居眠りする議員も。中ロへの配慮を見せた現場であった。

     

    朝鮮戦争で、国連軍の支援を受けた韓国の国会議員が、他国での侵略戦争による被害には全くの無関心である。韓国が、いかに自国本位であるかをまざまざと見せつけている。日韓関係の悪化理由も、こういう韓国の身勝手さによることを示している。

     


    『ハンギョレ新聞』(4月13日付)は、「ゼレンスキーの訴えに『がらんとした国会』が見せた恥ずかしい韓国の外交」と題する社説を掲載した。

     

    ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が11日午後、韓国国会で行ったオンライン演説を聞く議員たちの姿は、国際秩序の変化に無関心な韓国政治の現状を示しているようだった。同氏の兵器支援要請は確かに頭を悩ませる問題だが、政治家たちの誠意のない態度は批判されて当然だ。

     

    (1)「ゼレンスキー大統領が外国の議会を相手に行った演説は今回が24回目で、アジアでは日本に次いで2回目だった。しかし、今回のように聴衆席ががらんとしたのは初めてだった。議員300人のうち約60人だけが出席し、座席300席の会場ががらんとしていた。与野党の指導部は出席したが、パク・ビョンソク国会議長ら国会議長団の姿は見当たらなかった。場所も国会本会議場ではなく、国会図書館の大講堂だった。約17分の演説にも集中できず、携帯電話を見る議員も目についた。これまで23カ国のオンライン演説の度に沸き起こったスタンディングオベーションもなかった」

     


    朝鮮日報の記事では、日本と韓国でのゼレンスキー大統領演説会場の写真が掲載されている。それを見れば一目瞭然。日本の熱気と韓国の冷淡さが、はっきりと浮き上がっている。朝鮮戦争で受けた他国の支援を覚えていれば、韓国がこのような寒々とした光景を見せることはなかったに違いない。

     

    他人から受けた恩義は、当然のこととしている韓国社会の一端を映し出しているように見える。日本の朝鮮統治時代を地獄と捉え、反面で受けてインフラ投資と教育・司法・行政などの全般的な近代化への軌道準備という大きな恩典を否定する。プラス面をすべて拒否し、被害だけを誇大に宣伝する。人間として、恥ずべき行為である。こういう民族的なマイナス面が、今回のゼレンスキー大統領演説への無関心となって現れたのだ。

     


    (2)「ゼレンスキー大統領は、「韓国は1950年に戦争を経験し、多くの民間人が命を失った。しかし、国際社会の助けで乗り越えた」とし、朝鮮戦争を経験した韓国人たちに共感と連帯を訴えた。さらに、「我々がロシアの戦車や軍艦、ミサイルを阻止できる軍事装備が大韓民国にある。ロシアに対抗できるよう助けてほしい」と述べ、韓国の兵器支援を要請した」

     

    韓国文政権は、殺傷兵器は提供しないと拒否している。中ロへの配慮であろう。心のどこかで文大統領は、中ロへの思いを断ち切れずにいるに違いない。次期大統領であれば、武器を提供すると見られる。

     

    (3)「多くの民間人が虐殺され、都市が破壊され、東南部地域に対するロシア軍の大攻勢が迫っているウクライナの切迫した状況からして、十分理解できる要請だが、韓国として難題を投げかけられたことになる。北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を行い、核実験再開のシグナルまで見えるなど、安全保障をめぐる情勢が複雑になっている。米国と欧州の一部国家を除いては兵器支援をしない状況で、韓国の支援が北東アジア情勢の対立をさらに悪化させる恐れがあるというのは妥当な懸念かもしれない。また、兵器支援が早期の戦争終結と平和よりも対立の激化をもたらしかねないことから、韓国政府の「破壊兵器の支援はできない」という方針はやむを得ない選択だと言える」

     

    下線部は、矛楯したことを言っている。ウクライナが降伏すれば平和になるという論理である。これは、侵略したロシアの肩を持っていることだ。さらに、そのロシアを精神的に支援する中国とおなじ立場になることだ。


    ウクライナ戦争は、韓国の「ヌエ的」性格を極めて鮮明にしている。「洞が峠」を決め込んでおり、勝利した側に付こうという精神構造を覗かせているように見えるのだ。

     

     

     

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    敗れた中ロへの幻想

    プーチンの民族主義

    対照的な新旧大統領

    堅実化した韓国世論

     

    韓国の進歩派政権は、1期5年間で終わる。保守派政権が2期10年続いた後だから、文在寅政権の後継も進歩派が占めるはずであった。これが、従来の韓国政治譜であった。そのパターンが崩れた理由はなにか。韓国国民が、進歩派政権の継続に危機感を持った結果である。

     

    危機感を持ったと思われる背景は、安全保障問題と経済問題にある。韓国が、最も敏感でなければならない安全保障では、中国・北朝鮮・ロシアのご機嫌取りに終始し、日本との不和を「土産」にしているような格好だった。あたかも、日本が怖いから中朝ロへにじり寄るような姿であったのだ。

     


    端的な例でいえば、旭日旗である。文政権は、旭日旗が「軍国主義のシンボル」として拒否する前代未聞の行動に出た。2021年5月のことだ。「日本政府は、謙虚な姿勢で歴史を直視する必要がある」とまで反論した。旭日旗は、諸外国から何らのクレームもなく受け入れられている。フランス政府の招待により、自衛隊はパリの目抜き通りで旭日旗を掲げてパレードしたほどである。

     

    韓国進歩派政権が、異常なまでに「反日行動」に出た背景には、前述のように中朝ロへ接近するために、敢えて日本とことを構える姿勢を取ったと見られる。韓国外交部長官(外相)は昨年10月、日本へ驚くべき発言をしたのである。

     

    中国外交が、国力増進を基にして対外的に強硬発言をしているのは当然である。韓国も、日本に対して強硬発言をしていると胸を張ったのだ。中国は、「戦狼外交」として悪評であった。これが、対外的な中国イメージをどれだけ低下させたか分らない。韓国は、こういう経緯を知りながら、日本に対して韓国版「戦狼外交」を行なったというのである。

     


    日韓は、米国という同盟国を介し間接的に結びあっている「友好国」の筈だ。その日本に向けて、堂々と「戦狼外交」を行なったと得意げに語る感覚が不可解である。当時の韓国政権は、ここまで日本を敵視していた。

     

    敗れた中ロへの幻想

    その韓国は現在、ロシアによるウクライナ侵略を目の辺りにし慄然としている。中朝ロが、一体感を見せているからだ。中国は現在、ロシアへの経済的・軍事的な支援を控えている。米国やEU(欧州連合)から名指しで警戒感を示されているからだ。しかし、精神的な支援をロシアに送っている。中国は、ロシアが侵略の理由であるウクライナのNATO(北大西洋条約機構)加盟問題が、ロシアの危機感を煽ったとしている。つまり、中国はロシアの侵略理由を正当化しているのである。

     


    これは、韓国にとって聞き捨てならぬ話である。中国が、ロシアのウクライナ侵略を「正当行為」としていることから、将来の朝鮮半島において同じ理由を使う可能性が大きいことである。中朝ロが一体化して、韓国の安全保障を脅かすという危険性がにわかにクローズアップされてきたのだ。

     

    ここで、ロシアや中国という専制国家が、いずれも「帝国復活」を目標にしていることに気付くべきである。専制主義は歴史の発展区分によれば、現在の資本主義=民主主義=市場経済から見ると、「二世代」前の古い政治経済体制である。

     

    歴史は、専制主義→封建主義→資本主義へと発展してきた。ロシアや中国の専制主義は、資本主義経済から見て、大きく出遅れている社会発展過程である。これゆえ、臆面もなく「ロシア帝国復活」とか「中華帝国復活」と言っているのだ。プーチン氏や習氏にとっての理想郷は、この「帝国復活」にある。何とも古風な話と思うが、彼らの歴史認識はこれだけ現実から遅れているのである。

     


    専制主義の歴史認識では、「弱肉強食」は自然の摂理であろう。ロシアは、ウクライナを侵略する。このことに、何らの精神的な苦痛も感じていないに違いない。強者の権利くらいに考えているのだ。中国も、同じ専制主義の立場であるから、プーチン流侵略戦争について「悪」とは認識していない。中国が、ロシアへ精神的支援を送る背景がこれであろう。

     

    文政権は、西側諸国においてロシアへの経済制裁への決定で最も遅れた国である。できれば、経済制裁に加わりたくなかったのだ。それが、米国からの強い圧力で渋々と決断した。文政権は、進歩派の看板を上げているが、本質は民族主義である。つまり、欧米進歩派の特質であるリベラリズムでなく、民族主義が前面に出ている。プーチン氏のウクライナ侵攻に共感する部分があるのだ。中国も、同じ背景である。

     

    プーチンの民族主義

    米中央情報局(CIA)長官のバーンズ氏は、2019年に出版した回顧録『裏交渉』で次のように指摘している。バーンズ氏は、駐ロシア大使を経験した。当然、プーチン大統領と面会している。プーチン氏の無謀な対外政策を理解するためには、旧ソ連の崩壊と傷ついた民族的自尊心、そしてゴルバチョフ時代とエリツィン時代の無秩序と混乱を理解しなければならないとしている。『中央日報』(3月29日付)が報じた。(つづく)

     

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