「日韓問題を国内政治に利用しない」。次期韓国大統領の尹(ユン)氏は、このように繰返し発言している。文政権は、「反日」を国内政治に利用し、野党の保守派を追詰める戦術に使ってきた。何とも言えない剣呑な政権であったのだ。
次期政権は、親日米をはっきりと打ち出している。国際情勢の急変の中で、安全保障問題が最重要課題になってきただけに、日米韓三ヶ国の協力体制を築こうという狙いである。この一環として、次期政権は米国へ代表団を派遣して新政権の政策を説明し理解を求めた。日本へも4月24日~28日までの予定で代表団を派遣する。
代表団は、日本滞在中に外務省や与野党関係者との会談を予定している。尹氏の報道官は「対北朝鮮での協調や、韓日間の懸案を解決する土台を築く効果があると期待している」と述べた。過去、最悪状態の日韓関係に改善への動きが出るか、である。
『中央日報』(4月18日付)は、「韓国『尹錫悦時代』、韓日関係でまずやるべきこと」と題する記事を掲載した。
5月に発足する尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権には外交的な難題が多い。いつでも高強度の挑発ができるよう準備する北朝鮮の脅威、米中間で激化する戦略競争など、どれ一つも容易なものはない。しかし実際これをうまく解決していくことが可能な隠れたポイントがある。それは日本だ。韓国は自由民主主義と市場経済という核心価値を共有する隣国の日本と多くの安保懸案で利害関係が一致するからだ。脅威に対応するための連携はやりやすい。
(1)「一例として北朝鮮のミサイル脅威が挙げられる。非核化の方法は対話が必要だが、米朝が当事者となる非核化対話で「スモールディール」に対する懸念は常に存在する。米国本土に脅威となる長距離ミサイルの除去を優先視する場合、韓国を脅かす短距離ミサイル問題は看過されやすい。こうした状況を共に防げる唯一の国が日本だ。韓日は北朝鮮の中距離・短距離ミサイルによる安保の脅威を共有する」
韓国の安全保障問題で最大の課題は、北朝鮮の軍事力強化である。この問題は、日本にとっても重大課題である。それゆえ、日韓が共同歩調とれる分野は、まず北朝鮮問題になる。文政権では、北朝鮮を脅威と位置づけなかった。
(2)「それで、文在寅(ムン・ジェイン)政権が韓日関係を最悪の状況になるよう放置または助長したのは、北核の脅威をはじめ多くの安保的懸案を扱ううえで自らを不利な状況に追い込むのと同じだった。もちろん誰が原因を提供し始めたのかを問いただせば、非難されるべき側は日本だ。不当な経済報復措置を取り、過去の問題に誠意ある態度も見せなかった。しかし外交力というものは「それで」でなく「それでも」を成し遂げるものだ。断交するのではない限り、それでも韓日関係をこれほどまで悪化させないために、政府は今よりもっと努力するべきだった」
このパラグラフでは、相変わらずの「日本加害者論」である。外交問題で、過去の歴史を絡めたら絶対に上手く行かない。これが、外交交渉の鉄則である。過去を語らないことが、前向きな関係を築くポイントである。文政権は、こういう外交の原則を踏み外した。素人外交だったのだ。新政権は、この愚を犯さないと見る。
(3)「ところが、国内政治的に反日感情を活用して対決構図にさせたのが文政権の敗北だ。その間、葛藤の根源である過去の問題解決のための国内的努力も十分にしなかった。5年間のトンネルを過ぎて、ようやく韓日関係改善の環境が形成されつつある。尹錫悦次期大統領は候補時代から関係改善の意志を見せ、日本でも文政権が退くだけでも状況が変わるという期待感が高い。しかし、最近の日本発の報道を見ると、尹政権はこのような期待感を満たすのではなく、期待感を下方調整する方向を定めるべきではないかと感じるほど心配が多い」
このパラグラフでも、日本の報道で韓国新政権歓迎の記事がないことに不満を漏らしている。これは、日本への甘えである。国際情勢は、ウクライナ問題に象徴されるように、ロシアと中国の連帯に注目が集まっている。韓国の新政権を「歓迎する」、あるいは「しない」というレベルの域を超えたところにあるのだ。韓国メディアは、もっと目を見開くべきである。
(4)「大統領選挙が終わってから、ずっとこのような流れだ。(日本では)尹次期大統領の就任式に送る祝賀使節に関しては一行も報道されないが、韓国が日本に政策協議団(特使団)を送る計画という報道は多い。開始からこのような形の駆け引きはよくない。韓国側でいくら韓日関係改善に向けた環境が形成されたとしても、日本が呼応する意志がなければいかなる効果もない。手のひらも互いに接してこそ音が出るものではないのか」
韓国新政権が発足前に、外交政策で日本へ説明することは歓迎すべきことである。政権発足後すぐに、日韓で議論が可能になるからだ。ただ、歴史問題はタブーである。日韓が、打ち解けて話し合える雰囲気が出るまで封印することである。先ず、安全保障の議論が優先されるべきだろう。
(5)「まず、日本は過去に対する反省もまともにせず「韓国が解決策を出すべき」という高圧的な姿勢で一貫した韓国たたきをやめなければいけない。それで十分だというのではなく、新たな始まりのための基本の中の基本だ。尹錫悦政権は関係改善のための日本との協議に先立ち、両国間の葛藤の根源である過去の問題解決のために国内的な努力から取り組む必要がある。その最初は被害者の声を聴くこと、その次もまた聴くことだ」
韓国が歴史問題を持ちださなければ、日本は韓国叩きをする必要はない。慰安婦や徴用工の問題は、文政権が意図的に持ち出したことである。新政権が関知しないことだから、現在と将来の問題を先行させるべきだ。