勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 韓国経済ニュース時評

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    韓国は、出資と経営が同一という非近代経営である。これは、財閥と呼ばれるものだが、日本が戦後の経済民主化で捨てた制度を採用している。端的に言って「時代遅れ」であることは言うまでもない。これからの激動期に、韓国財閥は試練にさらされよう。 

    『ハンギョレ新聞』(3月22日付)は、「カリスマをまとった韓国の財閥3・4世経営実績もなく血筋だけ」と題する記事を掲載した。 

    好きか嫌いかにかかわらず、財閥グループは韓国経済で占める割合が非常に高く、その財閥グループを牛耳る存在がまさにトップだ。現在は創業主の34世たちがCEOになっている。彼らは会社を設立しておらず、起業家精神があるわけでもなく、経験が豊富でもない。しかも、激しい競争を経てCEOの座に伸し上がったわけではない。彼らが最高の地位に就くためには、厳格な評価などの手続きは別にしても、正当化できる論理は必要だ。

     

    (1)「ここで登場するのがカリスマだ。お世辞ではない。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が財閥トップたちと釜山(プサン)でトッポッキを食べたエピソードを見てみよう。サムスンのイ・ジェヨン会長は「しっ」という滑稽な表情のミームが拡散し、おでん屋の前には「イ・ジェヨン会長が立っていたところ」という表示も登場した。この些細なこのエピソードから、イ会長に人とは違うカリスマがあると考える大衆の心理がうかがえる。サムスン関係者たちが「わが会長」に対する評価をする時、他のことはともかく、「オーラ」は確実にあるという話をたびたび聞く。すなわち財閥3~4世の(地位を)正当化する根底にはカリスマがあるというのが関係者たちの言葉だ」 

    韓国左派は財閥を批判するが、一般は「名家」意識でみている。朝鮮李朝時代からの連綿として続く崇拝意識が働いているのだ。日本では戦後に、こういう「名門意識」は一掃されている。 

    (2)「カリスマCEOは、果たして企業の業績を改善するだろうか。様々な研究の結論は「断定するのは難しい」である。その中で代表的なのはカリスマのタイプによって実績改善の可能性が影響を受けるという解釈だ。過去の経営実績と華やかなキャリアなど客観的に観察できる事実に基づいて形成されたカリスマと、客観化されず漠然とした心理や期待を背景にしたカリスマはその結果も異なる可能性がある」 

    カリスマCEOは、世間がつくり挙げた虚像である。韓国は未だに、この虚像が生き延びる社会的な雰囲気が残っているのだ。

     

    (3)「財閥の3~4世トップたちのカリスマには、客観的実体があるだろうか。過去の経営実績はない。実績があっても失敗が多く、創業者の故チョン・ジュヨン現代グループ会長の苦難、逆境、失敗とは比べ物にならない。高速昇進をしても、それを34世の能力だと考える人はほとんどいない。結局、カリスマの根源は財閥家という血筋に基づいたレガシーだけだ。創業者のカリスマと34世のカリスマはその種類が違う。後者のカリスマが実績改善に肯定的な影響を及ぼすとは期待し難いだろう」 

    韓国の財閥家のルーツは、李朝時代からの大地主とみられる。サムスンは地主であった。他の財閥もルーツを辿るべきだろう。 

    (4)「問題はここにとどまらない。まず、会社の経営が危機に陥れば、間違いなくカリスマCEOを求める声が高まる。財閥でいえば、カリスマ3~4世が会長の座に就くチャンスが生まれる。危機の時に現れた最高経営者は、組織を揺さぶるものだ」 

    財閥3~4世に、経営手腕があるとは限らない。実務経験がないからだ。ただ、家柄でカリスマ性を感じるだけだ。

     

    (5)「二番目の問題点として、カリスマCEOは実績と関係なく莫大な報酬を受け取る。財閥の34世たちは典型的にカリスマに対する補償を受ける人たちだ。カリスマのある人がCEOを務めるべきだとし、超高速で会長の座までたどり着き、職級ごとに報酬を押し上げる。全知全能のスーパーマンであるかのように、複数の系列会社で役員を兼職し、報酬を重複受領する人もいる」 

    カリスマCEOは、事実上の「名誉職」である。トップとして、「座り」が良いということだろう。実務能力は、問われていないのだ。 

    (6)「三番目の問題として、カリスマCEOには大衆の関心を追い求め、会社内部に留まらない傾向がある。他の組織の仕事を受け持ったり、どこかで講演をしたりもする。最近は職務以外のことといえば、断然ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)だ。SNSを通じてあらゆることに口を出すのがイーロン・マスク氏だ。韓国ではチョン・ヨンジン会長がこのようなタイプに当てはまる。もちろん個人的あるいは社会的活動そのものが問題であるわけではない。それが行き過ぎて本業がおろそかになる時に問題が生じる」 

    カリスマCEOは、大衆人気があるから多方面へ関心を示す。それは、大衆が欲していることでもあるのだ。

     

    (7)「四番目の問題は、カリスマCEOに対する外部の評価は概して肯定的だが、問題は評価の正確性が劣るという点だ。アナリストがカリスマCEOに注目し、会社の成長可能性を肯定的に評価して投資を勧誘したものの、会社の実績が期待に及ばなかった事例は少なくない。このようなカリスマCEOに対する外部の評価とこれに基づいた生半可な予測が、財閥問題を深刻にさせる主なチャンネルの一つだ。専門家集団のほうが、一般国民よりむしろ財閥トップのカリスマを称賛する場合が多い」 

    下線部は、韓国社会の前近代性を雄弁に物語っている。「名門」をありがたがる崇拝意識が、未だにあるからだ。

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    日米が、揃って半導体生産体制強化に合わせ、韓国からの人材獲得へ動き出している。韓国では、後輩が役員へ昇格すると先輩は退職する例が多いことから、ここを狙い目に人材スカウトを始めている。台湾のTSMCも人材スカウトの標的になっている。ただ、TSMCの離職率は韓国の半分とされ、高い定着率となっている。 

    『中央日報』(3月23日付)は、「米日、韓国半導体のブレイン引き抜き サムスン電子の離職率 TSMCの2倍『半導体人材争奪戦』」と題する記事を掲載した。 

    米国や日本の半導体業界は、韓国の半導体人材を欲している。韓国の半導体企業は、愛国心の強調を越えて、自ら人材を引き寄せる魅力を備えなければならないとの指摘が出ている。

     

    (1)「米国の「メイド・イン・USA・チップ」構想には、チップを作る人材が必須だ。米政府から27兆ウォン(約3兆円)の補助金を受けたインテルは、韓国のファウンドリー人材を狙っている。メモリーメーカーのマイクロンは、世界1位の韓国のHBM人材を狙っている。匿名希望の韓国国内の工科大学教授は「サムスン・SKハイニックスで働く元教え子たちが最近、米国企業への転職の提案を受けているが、幼い子供がいる場合は真剣に米国行きを悩んでいた」と述べた。中国半導体企業の人材奪取に続き、米国企業に流出する人材規模が大きくなりかねないという意味だ。影響は、国内の素材・部品・装備業者にも及んでいる。ある部品業者の関係者は、「サムスン・SKなどに技術支援をしていた従業員がそのまま離職する事例が増え、最近年俸を高め新規採用も増やしている」と述べた」 

    韓国独特の「年功序列」意識が、後輩の役員就任を機に先輩を退職させている。海外企業は、こういう「チャンス」を捉えて、積極的なスカウトを行っている。 

    (2)「政府が乗り出して「半導体復活」を叫ぶ日本も、人材確保に死活をかけている。日本半導体の「失われた20年」の間、人材養成が途絶えたため、50代のエンジニアが再び現場復帰する場合が多い。台湾3位のファウンドリー企業PSMCと日本SBIホールディングスの合弁会社・日本JSMCのジョセフ・ウー代表は先月、現地メディアに「最も大きな問題はエンジニア不足」とし「台湾からエンジニアを派遣してもらい、日本エンジニアを台湾に送って訓練させ海外人材も募集する」と述べた」 

    日本では、過去の半導体技術者を積極的に採用して、技術再訓練を行っている。「ダピダス」の場合、こうした技術者が次々と応募しているという。

     

    (3)「日本の新生ファウンドリー・ラピダスの関係者は21日、韓国中央日報紙に「工程とパッケージング分野全般に人材が不足しており、海外人材を必ず迎え入れなければならず、当然韓国エンジニアもリクルーティングの対象」と述べた。TSMCの日本子会社JASMは最近、韓国の大学院生を対象にした就職情報サイト「キム博士ネット」で、修士・博士クラスの専攻者エンジニアを対象に求人活動を始めた。JASMが韓国で人材採用に参入したのは今回が初めてだ。日本経済新聞などによると、日立・パナソニック・NEC・富士通などが最近賃金を大幅に引き上げ、半導体装備業者の東京エレクトロン(TEL)は大卒新入社員の初任給を40%引き上げた」 

    日本のハイテク企業は、積極的な賃上げを行った技術者の転職を防ぐ体制を強化している。 

    (4)「台湾は、自国の半導体技術人材を徹底的に守っている。KOTRAによると、台湾の賃金労働者の所得は韓国の69%水準に止まっている。しかし、台湾半導体従事者の年俸はこの5年間で22.9%増加し、台湾の平均(9.3%)を大きく上回った。台湾を代表する半導体企業メディアテックとTSMCの2022年の非管理職職員の年俸中央値はそれぞれ374万7000台湾ドル(約1772万円)と243万5000台湾ドル(約1152万円)で、台湾平均の4~5倍水準だ。台湾の経済安保を主導する産業らしい処遇だ。TSMCの修士クラスの新入エンジニアの初任給は8360万ウォン(約950万円)水準だ。2018年に比べて2022年のTSMCの賃金は47%増えた」 

    台湾TSMCの給与水準は、台湾平均の4~5倍である。2022年の非管理職職員は、1772万~1152万円。新人エンジニアは約950万円である。

     

    (5)「TSMC創業者であるモリス・チャン博士は昨年秋、米マサチューセッツ工科大学(MIT)での講演で「台湾が半導体強国になった理由」について第一に人材、第二に低い離職率を挙げた。台湾は、半導体エンジニアと生産職が報酬のより高い職場へ移ることはほとんどなく、日本も同様だという。チャン博士は「反面、米国の半導体業界は離職率が15~25%で高い」として「これでは製造業がまともに成功できない」と述べた。TSMCとサムスン電子の離職率はそれぞれ6.7%と12.9%で(2022年基準)、サムスン電子がTSMCの2倍だ」  

    TSMCとサムスン電子の離職率は、それぞれ6.7%と12.9%で(2022年基準)である。サムスン電子が、TSMCの2倍になっている。 

    (6)「韓国は、工学部を出て大企業に行っても、40代半ばから後半になると「押し出される」という認識が強い。IMF通貨危機の時に経験した大企業構造調整の余波は最近20年間「工科大学忌避、医大志向」につながった。「後輩が先に役員になったら出て行かなければならない」という通念も根強い」 

    韓国では、妙な「年功序列」意識が働いている。「後輩の下では働かない」という意識だ。これでは、韓国からの人材流出は増え続けるであろう。

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    世界の半導体は、メモリーから非メモリーへと大きく転換している。特に、AI(人工知能)の実用化とともに、この流れが加速化している。韓国のサムスン電子は、こうした流れを見誤り、今や大きな差を付けられた。韓国半導体に危機が忍び寄っているのだ。 

    『ハンギョレ新聞』(3月23日付)は、「メモリー輸出も、AI時代の非メモリーも不振 赤信号灯った『半導体強国』韓国」と題する記事を掲載した。 

    (1)「830億ドル(2018年)から429億ドル(2023年)に。5年間で韓国メモリー半導体の輸出額は半分に減った。特にここ2年間は、毎年輸出額の減少率が2桁に達した。世界のメモリー市場で、サムスン電子とSKハイニックスを中心とした韓国の半導体大手のシェアは、約10年間にわたり60%前後に達するほど独占的地位を保っているにもかかわらず、輸出額において急激な変化が現れたのだ。専門家たちは、業況によって大きく左右されるメモリー中心の韓国の半導体産業構造に内在した弱点が露呈した2年だと評価する」 

    世界のメモリー市場で、サムスン電子とSKハイニックスは60%前後に達する高いシェアを持つ。だが、メモリー市場は世界半導体の23%にすぎない。76%は非メモリー市場である。韓国は、その狭い市場で6割を占めるという「お山の大将」である。

     

    (2)「相対的に安定した成長をみせる非メモリー半導体市場では、韓国の影響力は微々たるものだ。産業研究院の資料によると、国別の非メモリー半導体のシェア(売上ベース)は韓国が3.%で、台湾(10.%)、日本(9.%)、中国(6.%)を下回っている。半導体設計分野の強い米国が54.%を占めている。世界の半導体市場で、メモリー半導体の比重は23.88%(市場規模187兆ウォン)である一方、非メモリー半導体は76.12%(593兆ウォン)。韓国が強い存在感を放っているのは小規模な市場だけという話だ」 

    国別の非メモリー半導体のシェアでは、日本が9.2%であるが韓国は3.3%である。日本は、底力を発揮して韓国を大きくリードしている。こういう潜在的力量を持つ日本は今、半導体復興に賭けて立ち上がっているところだ。可能性は十分ある。 

    (3)「半導体強国に赤信号が灯ったのは、韓国の半導体産業を率いてきたサムスン電子の状況と相まっている。特に、サムスン電子はメモリー部門でも競争力を脅かされている。サムスン電子の半導体事業部(DS)内外では「四面楚歌」という反応まで出ている。大規模な投資を通じて汎用半導体市場をいち早く先取りすることに成功したサムスンの戦略が、注文生産に近づいた人工知能(AI)時代の新しい半導体地形にうまく対応できずにいるのだ。代表的な事例が、主力のDRAMのカテゴリーに属する高帯域幅メモリー(HBM)だ。AIサーバー用グラフィック処理装置(GPU)に欠かせないHBMは昨年から需要が急増したが、サムスン電子はGPUを独占しているNVIDIA(エヌヴィディア)にHBMを供給できなかった。サムスンを追撃していたSKハイニックスが事実上供給を独占した」 

    サムスンは、AI時代の到来を読み誤った。DRAMに属する高帯域幅メモリー(HBM)が、AIサーバー用グラフィック処理装置(GPU)に不可欠であることに気づかなかったのだ。技術陣の「大ミス」である。不注意の一語である。

     

    (4)「ユジン投資証券リサーチセンター長のイ・スンウ氏は「AI時代に入り、汎用半導体のDRAMも顧客オーダーメード技術が重要になっているのに、サムスンの競争力が伸び悩んでいる。HBMだけでなくダブルデータレート(DDR)でも技術力の問題があり、以前には見られなかったサムスン内部の危機が大きくなっている雰囲気」だと語った。サムスンが2019年にHBM開発チームを解体したのは、サムスンが未来の動向をうまく予測できなかった事例に挙げられる。匿名の半導体業界関係者は「サムスンが、2019年に収益性が保障されないとの理由でHBM開発チームを解体した。当時は、下降局面に対応しようとした選択だったが、未来を読めなかった短期的な戦略がAI半導体市場の初期に苦戦する結果を生んだ」と話した」 

    サムスンは2019年、前記のHBM開発チームを解体してしまった。サムスンが、朴大統領事件に巻き込まれて大混乱していた当時のことだが、経営危機感から守りの姿勢に入っていた証拠であろう。

     

    (5)「サムスンは、非メモリー分野で数年にわたって挑戦をしているものの、ライバルを遠くから追いかけている格好だ。非メモリー半導体を作る領域であるファウンドリ(半導体委託生産)市場でトップ業者である台湾のTSMCが、アップルやNVIDIA、AMDなど大型顧客企業を確保し、1位の地位を固めている。一方、サムスン電子が大手顧客企業から受注したというニュースは聞こえてこない。サムスン電子は家電および自社のスマートフォンに向けたチップ生産と、TSMCに集中した注文を分散して受け取る戦略で2位の座を保っている状況だ。最近は、米インテルがファウンドリ事業に再び進出し、サムスンを押しのけて2位にのし上がろうとしている状況だ」 

    サムスンは、長いこと「半導体世界一」を誇りにしてきたが、現在はそれどころの話でなくなった。台湾のTSMCに大きく引離されているほか、日本が国策半導体企業ラピダスによって追撃体制を固めている。韓国半導体は、かつての力を失った。

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    日本が、英国・イタリアと共同開発する次期戦闘機の第三国への輸出をめぐり、自民・公明が、歯止めをかけた上で、第三国への輸出を容認することで合意した。戦闘機の輸出は、部品の供給を含めて40~50年もの長期間の取引契約になる。これは、日英伊三カ国の外交関係が安定するだけでなく、戦闘機の輸出先とも同じ良好な外交関係を維持するという副次的効果が期待される。戦闘機輸出には、こういう外交面での認識が重要である。 

    韓国は、日本が武器輸出に本腰を入れてきたことに警戒観を強めている。韓国の武器市場を蚕食されるのでないかという危惧である。日本は、防衛費を対GDP2%に引上げる。これに伴い武器の国内製造も増えるので、兵器コストの引下げ目的で輸出しなければならない事情にある。韓国市場を「横取り」しようという次元の話ではない。

     

    『中央日報』(3月20日付)は、「『韓国が刺激』防衛産業輸出規制解いた日本の進撃、韓国パートナーも狙う」と題する記事を掲載した。 

    日本が世界の防衛産業市場で存在感を表わし始めた。日本政府と防衛企業が海外防衛産業見本市に参加してセールスに出るなど官民が有機的に動く姿だ。一部では「ウクライナ戦争後に急成長した世界の防衛産業市場の新たなダークホース」という評価まで出ているほどだ。 

    (1)「日本が強みを持っている素材・部品・装備を中心に輸出拡大戦略を展開するだろうという見方も出ている。最も目に付く日本の変化は、各国の受注競争が激しい世界の主要防衛産業見本市での動きだ。日本の防衛省が主導し昨年から日本の防衛産業事業者が本格的に見本市に顔を出し始めた。昨年9月に英ロンドンで開かれた欧州最大の防衛産業見本市「DSEI」には8社が、続いて昨年11月にオーストラリアのシドニーで開催された海洋分野の防衛産業見本市「インドパシフィック」には10社が参加した。防衛省は先月開かれたアジア最大規模の航空宇宙分野の防衛産業見本市「シンガポールエアショー」にも初めてブースを設けたが、過去最大となる13社が参加し関係者を驚かせた」 

    日本企業が最近、世界の主要防衛産業見本市へ積極参加している。日本の防衛省が支援しているという。

     

    (2)「このように日本の防衛産業企業が積極的に営業に出た背景には、「日本政府の防衛産業輸出への意志が強く作用している」という見方が出ている。これまで日本の防衛産業企業は輸出せず自衛隊にだけ武器と装備を納品してきた。そうするうちに欧米や韓国の防衛産業事業者と比較して採算性が落ちてきた。これはこの20年間に日本企業100社以上が防衛産業事業から手を引いた理由でもある。日本政府内でも「防衛産業の生態系が崩れ防衛力低下につながりかねない」という警告が絶えなかった」 

    日本の防衛産業は、これまで輸出が認められないことから「脱防衛産業」が目立っていた。これは、日本の安全保障において極めて由々しき事態である。日本の防衛産業に一定の利益が出うるような配慮が必要になってきた。

    (3)「日本は昨年12月にフィリピンに初めて防空レーダーを納品して完成品輸出の道を開いた。三菱電機が受注したレーダー4基のうち最初の引き渡し分だった。拡張性が高いアジアに対する輸出という意味も大きかった。日本は世界最大の武器輸入国であるインド市場も開拓中だ。日本メディアによると、艦艇搭載通信用アンテナ輸出契約が差し迫った状態だ。日本はインドを含め米国、オーストラリアと4カ国の安全保障の枠組みであるクアッドだけでなく、両国間の外相・国防相(2+2)会談などを通じてインドの武器市場にアプローチしている」

    インドは、世界最大の武器輸入国である。この事情が、ロシアやイスラエルと密接な外交関係を維持している背景である。日印関係が良好である以上、日本がインドへ武器輸出を働きかけるのは当然であろう。インドも歓迎であろう。

     

    (4)「日本が2030年代の実戦配備を目標に英国・イタリアと共同開発中の次期戦闘機事業は、今後の日本の武器輸出方向を見極める試金石と評価される。岸田内閣が連立与党の公明党を説得した末15日に次期戦闘機の第三国輸出の道を開いたためだ。輸出対象は日本と関連協定を結んだ15カ国だ。ここには米国と欧州諸国だけでなく、オーストラリア、インド、シンガポール、フィリピン、インドネシア、マレーシア、ベトナム、タイ、アラブ首長国連邦(UAE)が含まれている」 

    日英伊による次世代型戦闘機は、英伊も積極的に販売する意向である。日本もこれに対応して売り込みを図るのは、西側諸国の結束を強める上にも不可欠である。日本は、アジアを中心に15ヶ国が販売対象とされている。日英伊による次世代型戦闘機開発では、米国も協力する。 

    (5)「米国が、極秘とするF35ステルス戦闘機の運用でも、韓国と日本で違いがみられる。この機種は、韓日とオーストラリアで導入したが、米国は日本とオーストラリアにだけ修理基地を置いている。これに対し「米国の立場では政権交代のような不安定性が低い日本をより信頼する部分がある」という見方が出ている」 

    米国の本音は、韓国左派を警戒していることだ。韓国左派は、中国や北朝鮮と近いだけに、腹を割った話ができないのだろう。情報が、筒抜けになる危険性が高いことだ。

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    韓国の政策金利は現在、3.5%である。21年7月までは0.5%であったが、高物価抑制で引上げられてきた。これに最も苦しんでいるのが低所得者である。政府の庶民金融商品「ヘッサルローン15」は、低所得者がヤミ金融に走らぬようにという「救済融資」を目的にしている。その金利が、なんと「15.9%」だ。日本の感覚から言えば、これこそ「ヤミ金融」並みである。

     

    韓国の資本蓄積が、いかに低レベルであるかを証明する話である。少しでも政策金利を引上げると低所得者へは低い信用度で高金利となって跳ね返るのだ。日本は、政策的意図で事実上1999年からゼロ金利である。この日韓の差は、資本蓄積の厚みの差を示すものだ。

     

    『ハンギョレ新聞』(3月17日付)は、「韓国『物価高・高金利ショック』庶民向け融資の延滞率が一斉急騰」と題する記事を掲載した。

     

    韓国で高金利・高物価が持続しているため低信用庶民層家計の借金負担が加重されていることが分かった。政府が庶民の高金利負担を減らすために供給する各種の庶民金融商品の延滞率が昨年急騰したことが明らかになった。

     

    (1)「17日、国会政務委員会所属の改革新党ヤン・ジョンスク議員室が金融監督院と庶民金融振興院から受け取った資料によれば、信用等級が低い庶民のための政策金融商品「ヘッサル(陽光)ローン15」の昨年の代位弁済率が21.3%となり、2022年(15.5%)より5.8ポイント急騰したことが分かった。代位弁済とは、融資を受けた借主が元金を返済できなかった時、庶民金融振興院などの政策機関が銀行に対し代わりに弁済することを意味する。ヘッサルローン15の代位弁済率が20%台に跳ね上がったのは昨年が初めてだ」

     

    庶民のための政策金融商品「ヘッサル(陽光)ローン15」は、年利15.9%である。これだけの高金利は、日本でも払えぬ高利である。代位弁済が急増しているのは当然であろう。政府が、代わって金融機関へ支払っているのだ。

     

    (2)「特に、ヘッサルローン15は闇金融に頼らざるを得ない低信用者が正常な経済生活を継続できるように、相対的に高い年15.9%の金利で政策資金を融資する庶民金融商品だ。この商品の延滞率が高くなっていることは、低信用庶民層の償還能力が限界状況に達し、再び私債市場などに追い込まれる可能性が高くなっているという意味だ」

     

    低所得者で「ヘッサルローン」を延滞する状態では、後はヤミ金融へ行く以外の道はなくなる。悲劇が、待っているような事態だ。

     

    (3)「ヘッサルローン15のみならず、他の庶民金融商品も一斉に延滞率が上昇したことが分かった。満34歳以下の青年層を対象にした「ヘッサルローンユース」の代位弁済率は2022年(4.8%)の2倍水準である9.4%に急騰し、低信用勤労所得者のための「勤労者ヘッサルローン」の代位弁済率も2022年の10.4%から昨年は12.1%に上がった。低所得・低信用者の中で償還能力が相対的に良好で第1金融圏に移れるよう支援する「ヘッサルローンバンク」の代位弁済率は8.4%で前年(1.1%)より7.3ポイント急騰した」

     

    韓国経済の根本的問題は、金融構造が脆弱であることだ。ウォン安が頻繁に起こっており、そのたびに「日本との通貨スワップ」が叫ばれてきた。この問題は現在、日韓の友好ムードで「日韓通貨スワップ協定」が結ばれて解決した。だが、庶民は不況のたびごとに大揺れである。

     

    (4)「この他にも医療費・食事代など、それこそ急にお金が必要な脆弱階層に最大100万ウォン(約11万円)を当日貸すマイクロクレジット商品「小額生計費貸出」の昨年の延滞率は11.7%だった。信用評点下位10%の最低信用者のための最低信用者特例保証の代位弁済率も14.5%となった」

     

    マイクロクレジットは、当日貸しだけに高金利を取るのであろう。ここでも、延滞率は11.7%にも及んでいる。

     

    (5)「年齢帯に分けてみると、20代以下の青年層の代位弁済率が最も高いことが分かった。まだ資産形成ができていない青年層の償還能力が最も脆弱なわけだ。2018年以後6年間、これら庶民金融商品の支援を受けた人は計287万人で、貸出総額は19兆9000億ウォン(約2.2兆円)と集計された。このうち約10%に該当する1兆9922億ウォンが延滞され、昨年末基準で未回収金は1兆8058億ウォン(約2000億円)に達した。ヤン・ジョンスク議員は「高金利・高物価が持続し、家計負債負担に押しつぶされた庶民層の苦痛が政策金融商品の延滞率増加に現れている」とし「庶民用政策金融商品の金利適用に勤労所得増加率を連動させるなど金利設計方式を全面再検討しなければならない」と話した」

     

    20代以下の青年層は、代位弁済率が最も高いという。住宅ローンを目一杯借りて、返済余力がなくなっている結果であろう。オール借金漬けの韓国の若者は、未来に夢を失い結婚や出産から遠ざかっている。この矛盾を解決するにはどうすべきか。過去においても、矛盾を抱えながら解決せず先送りしてきたのだ。

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