勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 韓国経済ニュース時評

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    中小企業が、音を上げている。文政権による早急な最低賃金の大幅引上げと、週労働時間52時間限度が壁になっているからだ。いずれも、賃金コストを大幅に引き上げた。中小企業には、耐えられる限界を超えており、金利もまともに払えず「ゾンビ化」している。経営は、過去2回遭遇した通貨危機や金融危機よりも圧迫された状態である。一方、大企業労組は最賃大幅引上げと労働時間短縮でメリットを存分に享受し恵まれた立場だ。

     

    『朝鮮日報』(1月25日付)は、「借金で持ちこたえる韓国中小企業『むしろ通貨危機当時がよかった』」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「韓国の中小企業は630万社(2017年末)だ。そこで1599万人が働いている。企業数の99.9%、雇用の82.9%を背負う韓国経済の屋台骨だ。通貨危機や世界的な金融危機など大きな衝撃にも耐えてきた韓国の中小企業は内需景気の悪化、輸出不振、最 低賃金の急上昇、労働時間の短縮という例のない四重苦に直面した。ある中小企業の経営者は「酸素マスクで延命し、毎日毎日を持ちこたえ、死期を待つ存在だ」と嘆いた」。

     

    文政権の最大の欠陥は、大企業労組の要求を鵜呑みにしていることだ。労組にとって良いことは、韓国経済にプラスと信じ切っている素朴さである。労組の影で泣かされている中小企業がいることを忘れている。企業数の99.9%、雇用の82.9%を占める中小企業を苦境に追い込む。そういう政策は落第なのだ。

     


    (2)「中小製造業は昨年、マイナス成長の危機に直面した。通貨危機のピークだった1998年(マイナス2.01%)以降の21年間で初めてだ。韓国銀行によると、中小製造業の売上高は2017年に7.66%増加したが、18年は伸びが2.77%に縮小した。19年は13月がマイナス7.3%、マイナス0.5%を記録した。下半期に状況が改善したとしてもマイナス成長の危機だ。売上高も減少し、収益性の悪化を増収でカバーすることも限界に達した」

     

    中小製造業の売上高は、17~18年はプラスを維持したが、19年に入ってマイナス基調へ転落した。韓国には現在、通貨危機も金融危機も起こっていない。それにもかかわらず、この事態に落込んだ原因は、最賃大幅引上げによる内需不振である。文政権は、この政策が間違っていたことを絶対に認めず逃げ回っている。

     

    (3)「中小製造業の経営者らはしきりに「通貨危機当時よりも厳しい」と言い、いくつかの理由を挙げた。当時は内需が急速に冷え込んだが、ウォン相場の急落で輸出競争力が高まった。輸出でなんとか耐え忍ぶことができた格好だ。しかし、現在は内需だけでなく、輸出も厳しい状況だ。19年の輸出は10.3%減で、01年(12.7%減)、09年(13.9%減)以降で初めて2桁台の減少となった。借金で延命する企業も増えている。韓国銀行によると、営業利益で融資の利払いを賄えない中小企業(インタレスト・カバレッジ・レシオが1未満)は18年時点で47.2%となり、14年に比べ9ポイントも増えた。中小製造業の2社に1社が潜在的「ゾンビ企業」ということになる

     

    韓国の労組組織率は、10%強である。残りは未組織労働者だ。この10%強が、腕力に物言わせて「厚遇」を得ている。その煽りで、未組織労働者が泣かされている。文政権は、このことに全く気付いていない。独り善がりなのだ。

     


    (4)「最低賃金の引き上げと労働時間の制限は火に油を注いだ。フレームメーカーの経営者Dさんは「通貨危機当時は政府が企業支援に取り組んだが、現在は政府が製造業の事業をさらにやりにくくしている」と指摘した。金型メーカーの社長は「製品価格が韓国の半額の中国企業と競争できたのは、韓国が昼夜分かたずに工場を稼働し、納期を2030日早めることができたからだ。労働時間の週52時間上限制で『納期』という唯一の武器まで奪われた」と話した。

     

    (5)「このメーカーは苦肉の策として、52時間上限制の適用を回避するため、従業員を58人から49人に削減した。豆腐業者を経営するEさんは「最近2年間で最低賃金は30%上昇したが、納品単価は1015%低下した。妻と息子、娘だけの家族企業になってしまい、『社長』と呼ばれるのもきまりが悪い」と語った。

     

    最低賃金の引上げや、労働時間の短縮は正しい目標である。問題は、実施するタイミングである。それを全く考慮せずに一律に実施する。この書生っぽさが、失敗の原因である。政治が成熟していないのだ。何をやり出すか分からない政府である。

     

     

     

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    韓国の朴槿恵前大統領への贈賄罪などに問われた、サムスン電子副会長の李在鎔被告(51)の差し戻し審が昨年10月、ソウル高裁で始まった。大法院(最高裁)は8月、李被告を懲役2年6月(執行猶予4年)とした二審判決を破棄したからだ。差し戻し審では、量刑が重くなるとの見方が一般的である。だが、文在寅大統領は就任以来4回も李被告と面会している。また、サムスンを称える演説もしている。これは、高裁に向けて「執行猶予をつけろ」というメッセージとみるべきだ。

     

    大法院は一昨年10月、徴用工賠償問題で日本企業へ支払い判決を出した。文大統領は、この2ヶ月前に徴用工問題が人権問題であり、時効はないと演説したのである。大法院に対して、「日本企業への賠償判決を出せ」というメッセージであったのだ。韓国では、大統領が絶対的権力者である。皇帝である。その意に背いた判決は出しにくいのだ。

     

    こういう韓国特有の権力関係から言えば現在、進行中の差し戻し審はきわめて興味深いのである。私には、執行猶予をつける準備が進んでいるように思えるのだ。

     


    『日本経済新聞 電子版』(1月24日付)は、「サムスントップ悩ます『異色』判事、仰天発言の真意」と題する記事を掲載した。

     

    韓国の朴槿恵(パク・クネ)前大統領への贈賄の罪に問われたサムスン電子トップの李在鎔)被告の差し戻し審で、ソウル高裁の判事が李被告に投げかけた発言が波紋を広げている。

    (1)「ソウル高裁で開かれた差し戻し審の初公判で、鄭晙永(チョン・ジュンヨン)部長判事は「サムスンに総帥も恐れる監視制度があったなら、こんな犯罪は考えもしなかったはずだ。米大企業の順法監視制度を参考にしてほしい」と李被告にこんな注文をつけ、さらにこう続けた。「審理が進む間も総帥としてやるべき仕事をしてほしい。1993年、51歳だった李健熙(イ・ゴンヒ=李被告の父)総帥はフランクフルトで新経営を宣言して危機を克服した。2019年、同じ51歳になった李在鎔総帥の宣言は何か」。鄭判事が引き合いに出したのは「フランクフルト宣言」と呼ばれる、李会長が93年に幹部をフランクフルトに集めてぶった演説だ」

     

    李健熙氏が、かつてドイツ・フランクフルトに役員を集めて、製造業として当然の「品質第一宣言」を行い、社風を一変させた有名な話だ。裁判長は、李副会長に向かって社風一変の策を聞いたのである。

     

    (2)「鄭判事の発言は、李被告に経営者として会社を変える覚悟があるのかを問うた格好だ。鄭判事は126日の第3回公判ではこう尋ねた。「被告人は(大統領からの)拒絶できない要求に応えたと主張する。ならば今後、権力者から同じ要求を受けたら同じように応えるのか。どうしたら防止できるのか。次の期日までに意見を出してほしい」。判事の問いかけに、李被告はさぞかし戸惑ったはずだ。だが、判事の求めに応えないわけにはいかない。サムスン側は回答を用意した」

     

    裁判長は李被告に対して、時の大統領から要求を受けても、それを敢然と断る「防衛策」を聞いている。この辺りに、すでに「執行猶予づき判決」を予想させるものがある。

     


    (3)「20年の仕事始めの12日、李被告は社内向けのスピーチで社員に語りかけた。「誤った慣行と思考は果敢に廃し、新しい未来を切り開こう」。サムスンは「順法監視委員会」を設置することも決めた。弁護士や検事出身者、大学教授ら7人で構成し、系列会社も含むグループの法令違反を調査する。委員長に就任した金知衡(キム・ジヒョン)元大法院(最高裁)判事は9日に記者会見し、「サムスン側の介入を完全に排除し、倫理経営の番人役を果たす」と語った」

     

    サムスンは、「順法監視委員会」を設置することも決めたのである。第三者の独立委員会にサムスングループ全体の法令違反を調査させる権限を持たせるという。自浄作用を果たす委員会だ。

     

    (4)「1月17日の4回目公判。サムスン側の弁護士は同委の概要と設置の狙いを説明した。鄭判事は「サムスンによる国民との約束だが、守られるか疑問を抱く人もいるだろう。厳しく徹底的に点検する必要がある」と述べ、独立した第三者の専門家を専門審理委員に指名し、点検するしくみを提案した。黒いスーツに濃いグレーのネクタイ姿の李被告は発言せず、緊張の面持ちでじっと耳を傾けていた。公判でのやりとりは、起きた事実に照らして量刑を判断する一般的な裁判とはずいぶん違ってみえる」

     

    下線部分は、「出来レース」である。裁判所が、「介入」する必要があるだろうかと疑問を持たせるほどだ。裁判所がここまで踏込んでくれば、「贈賄再犯」の恐れはかなり軽減されるはず。つまり、李被告に「執行猶予」をつける条件はすべて整ってきたと言えよう。後は、どういう判決になるのかを待つだけだ。

     

    李被告には、なぜ「執行猶予」が必要なのか。サムスンは、韓国経済を支える「一本柱」である。このサムスンのトップを収監したならば、韓国経済は漂流せざるをえないほど弱体化している。「反企業主義」の文大統領といえども、この程度のことは分かっているはずだ。韓国社会全体が「執行猶予づき判決」を納得するには、「贈賄再犯」を防止するシステムをつくることが先決と見ているのだろう。


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    文大統領の任期は、2022年5月である。仏のマクロン大統領と4日違いだ。任期は、双方5年である。どちらが業績を上げて退任するか。興味深いものがある。マクロン氏は、強大な労組と対決して経済再生を図っている。文大統領は、巨大労組の顔色を伺い最低賃金の大幅引上げによって、経済破壊に進んでいる。

     

    この対照的な二人の大統領を比較すると、政治家としての度量の違いが浮かび上がる。文氏は、国家の利益を忘れて、ひたする自らの支持基盤の労組へ忠実に振る舞っている。マクロン氏は、フランス経済再興のために、反対勢力を説得しながら進んでいるのだ。どちらの国民が幸せか。言うまでもあるまい。

     次に、両国の実質GDP成長率を比較したい。

     

            フランス   韓国

    2014年   1.0%   3.2%

      15年   1.1%   2.8%

      16年   1.1%   3.0%

      17年   2.3%   3.2%

      18年   1.7%   2.7%

      19年          2.0%


    フランスは2017年、マクロン大統領になってから実質GDP成長率は、それ以前の1%強から抜け出た感じで2.3%や1.7%になっている。経済改革が功を奏し始めているのだ。韓国とは対照的である。上り坂のフランスと下り坂の韓国である。

     

    『中央日報』(1月24日付)は、「メシアはいない」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のイ・ジョンミン論説委員である。

     

    相次ぐデモに苦しんでいるフランスのマクロン大統領の評価が韓国で急上昇している。保守政権10年の「積弊」と積弊清算を呪文のように唱えながら執権し、「新積弊」を生み出した進歩政権に失望した韓国の人々に清凉剤となっている。

     

    (1)「マクロン大統領は2017年、文在寅(ムン・ジェイン)大統領と4日の差で就任した。マクロン大統領は経済・産業・デジタル相を辞任し、「アン・マルシュ」を結成して大統領選挙で当選した。左派でも右派でもない中道を標ぼうして旋風を起こした。「過去の数十年間、左派・右派政治家は公共支出を増やし、未来の世代に負担を押しつけた。現実に立ち向かう勇気がなく、子どもたちに耐えがたい負債を押しつける卑怯な行為をした」。フランスを低成長・高失業の泥沼に陥れた政界の無能を攻撃し、「フランス病」の治療を訴えた39歳の青年の覇気に有権者は喝采を送った」

     

    下線部分は、文政権にそのまま当てはまる。経済の失政をすべて、財政支出で隠しているからだ。韓国は、健全財政路線を歩んできた。文政権になって、すべて財政支出でカバーする「ポピュリズム」政治に落込んで恥じず、だ。国家財政を食い物にしている政権である。

     


    (2)「マクロン大統領の真価は、「雄弁」でなく「実践」で表れた。執権するとすぐに富裕税廃止、法人税引き下げ、福祉予算削減を一瀉千里に進めると、2018年には油類税引き上げまで断行した。パリ郊外に暮らして自動車で出退勤する中産層・庶民が油類税引き上げに反発した。自動車事故に対応するため車内に義務的に備えている蛍光色の黄色いベストを着た運転者のデモは、マクロン退陣運動にまで広がった。支持率は20%台に落ちた。しかし失業が減り、景気が反騰したことで、危機から免れた。「解雇しやすい環境」を作ったところ、企業の雇用が回復したのだ

     

    下線部分は、抵抗を受けやすい政策である。既得権益をはぎ取るからだ。既得権益を維持すると、財政硬直化を招く。「働かざる者は食うべからず」という原則を打ち立てる。それが、経済を活性化させる道だ。韓国は、労組に新たな既得権益を与えてご機嫌伺いをしている。最低賃金の大幅引上げがそれだ。労働市場の流動化とは、「解雇しやすい」環境づくりだ。企業はこれをテコに、新部門へ挑戦する余裕が生まれる。こうして、一斉に新部門へ取り組めば、結果として雇用増に結びつく。労組的な発想では、雇用増が実現不可能なのだ。

     

    (3)「今度は年金改革に注力している。「より多くの労働をしてより少なく受ける」年金改革は歴代政権がすべて失敗した深刻な問題だ。抵抗は全国民的だ。フランス鉄道労働組合は過去最長ストライキ記録を連日更新している。マクロン大統領は退職後の大統領特別年金(月2500万ウォン)を放棄する背水の陣を敷いて労働組合を説得している。国家大討論会を開き、労働組合と向き合った。自身を「企業寄り」と攻撃する労働者の前で、はっきりと犠牲を要求した。「仕事をせずにより多くのお金を稼ぐことはできない。税金を減らして政府の支出を増やすことはできない」。「企業を守らず労働者を保護できると考えるのは間違っている」と指摘する

    韓国労組は、「仕事をしないが、雇用を保障して、年功賃金を払え」という虫の良い要求をする。これは、高度経済成長期に実現できたが、低成長経済では不可能である。経済環境の変化を理解しない韓国労組に、どうやって現実の厳しさを教えるか。心情的に最も近い立場の文政権が、説得する以外にない。文政権は、労組を説得するどころか煽っている。韓国与党には、「ステーツマン」が一人もいないのだ。

     


    (4)「マクロン改革の成敗を予測するのは容易でない。しかし票が減ることを覚悟しながら国民に犠牲を要求する指導者の堂々とした態度とリーダーシップがマクロン大統領を輝かせる。選挙ではなく国家の明日を考える政治家らしい品格だ。キッシンジャー元米国務長官の警句を思い出す。「この時代の根源的危機の兆候は、国民に犠牲を要求する指導者が登場しなくなったところにある」。意味深長な言葉だ」

    文氏は、保守派を毛嫌いしている。これでは、大統領の資格がない。進歩派がいれば、必ず保守派が存在するもの。健全な世論は、そういう中でバランスを取りながら形成されるのだ。文氏の希求する「進歩派で永久政権」は、進歩派独裁体制を意味する。もっとも危険な道を「党利党略」目的で突き進んでいる。マクロン大統領の念頭には、フランス国民とともに歩む理想図がある。文大統領には党派性しかないのだ。


     

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    韓国の昨年の実質GDP成長率が発表された。辛うじて2%を維持した。この裏には、涙ぐましい努力があった。2%成長の中身を見ると、民間部門が0.25%ポイント。公共部門が1.75%ポイントの寄与となっている。政府部門が、支出を増やして1%台の成長率を阻止したことは間違いない。今年4月の総選挙を前に、「1%台成長」では不利と見たのだ。

     

    政府はまだ隠し立てをしている。GDPデフレーターの数値が不明であるのだ。名目成長率が1%台であるが、GDPデフレーターがマイナスで「名実逆転」(名目成長率が実質成長率を下回る)になっていることを知られたくなかったのであろう。名実逆転であれば、韓国経済は、先行き不安を増幅するからだ。

     

    韓国銀行のGDP統計発表数字を各紙で調べた。だが、GDPデフレーターが見当たらないのである。隠してしまったと見られる。IMF(国際通貨基金)による昨年10月予測では、GDPデフレーターは、前年比マイナス0.868%であった。すでに発表されている各四半期のGDPデフレーターは、1月から9月までマイナスを記録。3四半期のGDPデフレーター平均は、マイナス0.938%である。

     

    韓国は、昨年のGDPデフレーターがマイナスに落込んだとすれが深刻である。普通の経済では、GDPデフレーターがプラスになる。つまり、輸入物価、生産者物価、消費者物価などを総合したGDPデフレーターは、上昇しているものだ。その意味で、GDPデフレーターは景気の基調を見る上で不可欠である。韓国のGDPデフレーターがマイナスに落込んだのは、韓国経済が長期不況色を強めていることを意味する。韓国銀行は、それを嗅ぎつかれないように隠したのでないか。私は、そう疑うのである。

     

    『朝鮮日報』(1月23日付)は、「金融危機以降最低の2%成長、それも4分の3は税金」と題する社説を掲載した。

     

    昨年の韓国の経済成長率が2.0%にとどまり、世界的金融危機以降10年ぶりの低成長を記録した。政府が年末に税金をつぎ込み、ようやく2%を死守したが、2%のうち企業や家計による民間の寄与割合は25%ポイントで、税金支出を意味する政府の寄与度が75%ポイントに達した。特に財政出動で総力戦が展開された昨年10~12月には政府が成長全体の83%ポイントを担うという正常ではない状況である。民間経済が停滞する中、政府が税金で無理に成長率をつり上げたことを示している。文字通り「税金主導成長」である。

     

    (1)「政府があらゆる手段を使い、2%達成に全力を挙げたのは「成長率1%台」という成績表では総選挙を戦えないからだ。それで「予算を残せば不利益を与える」として、予算の早期執行を促した。地方自治体が給与の支給日を前倒しし、各地の教育庁は長期休業に入る前に教室の私物ロッカーや机椅子を交換するなどてんやわんやだった。真冬に木を植えたり、高齢者の就労事業を行ったケースもあった。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は勤労・子女奨励金を執行するのに忙しかった一線の税務署にピザまで配った。税金を節約するのではなく、最大限気前よく使わないと大統領に称賛されない国になった」

     

    下線部分には、政府10~12月にかけて財政支出を必死で増やして、GDPの下支え策に出た様子を示している。一昨年の10~12月期のGDPも政府部門の支出増で18年のGDP成長率を2.7%に押し上げている。昨年も同じ手を使ったのだ。だが昨年と同様に、今年1~3月期のGDPはマイナス成長になろう。

     

    (2)「経済の至る所で成長動力が失速している。低成長の相当部分は政府の政策的ミスが原因だ。労組寄りで反企業・反市場的な政策が企業の意欲をそぎ、産業の活力を低下させた。全ての先進国が規制改革と減税、労働改革を通じて競争力を高める政策を取る中、韓国政府は逆行した。最低賃金と法人税を急激に引き上げ、硬直的な労働時間の週52時間上限制を強行し、コスト負担が高まった。規制改革どころか環境や既得権の保護を理由に新たな規制を大量に追加し、企業活動に足かせをはめた

     

    文政権は、何よりも総選挙の敗北を恐れている。だから、支持母体の労組と市民団体の顔色を見て政策を行なっている。苦しむ国民を救うことよりも、「共に民主党」を総選挙で勝たせる。それによって、文在寅氏は安心して任期を全うして、検察捜査を受けずに幕引きできると踏んでいるのだ。

     

    (3)「経済副首相と与党代表は2%成長について、「困難な環境でも善戦した」と自画自賛した。経済基調を転換するという言葉は全くなかった。税金主導成長は持続可能なものではない。既に財政赤字が急速に膨らみ、政府債務が初めて700兆ウォンを超えた。やがてこれ以上税金をつぎ込むことができない状況が到来する。現政権はそれが任期後に訪れると信じているのだろう」

     

    文大統領は、韓国の大統領ではなく「共に民主党」の大統領である。これほど露骨に支持母体の利益だけを追及した政治家もいないだろう。それが、2019年の経済成長率の中身に表れている。


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    文大統領は、自己保身で汲汲になっている。4月の総選挙で与党「共に民主党」を勝たせる。それが、文氏の退任後の身分を安泰にさせると信じているからだ。その一環として、検察改革を行い、文氏側近を捜査する検察に人事面で露骨な介入をした。およそ、公正と平等を説いている文氏にふさわしくない行動である。

     

    文大統領による検察への人事介入が、世論調査で文大統領と与党の支持率をジリジリと引下げている。国民は、じっと政権と与党の振る舞いを凝視しているのだ。共に民主党は、この成り行きに頭を痛めている。

     

    『ハンギョレ新聞』(1月23日付)は、「『大統領府ー検察の軋轢』、総選挙の悪材料となるかも、民主党の心痛」と題する記事を掲載した。

     

    検察の同時多発的な捜査をめぐり、大統領府と検察間の緊張が続き、「共に民主党」の苦悩が深まっている。総選挙に否定的影響を及ぼさざるをえないが、今後相次ぐ起訴と裁判で短期間に整理されうる事案でないことが悩ましい。民主党は、検察人事と大統領府捜査に関連した軋轢が最近の世論調査に現れた支持率小幅下落に影響を及ぼしたと分析している。

     


    (1)「大統領府は23日、検察の人事異動で捜査にブレーキをかけた。検察はこれに対抗してチェ・カンウク大統領府公職規律秘書官を起訴するなど、あたかも大統領府と検察が打ち合うような状況が演出された。「終わりそうで終わらない」軋轢が続いている。前日にもチェ秘書官は「チョ・グク元長官に対する捜査結果があまりにつまらないものだったので(新たな)疑惑を作り出している」と激しい表現を使って検察を非難した」

     

    日本では、首相官邸が検察の動きを批判することはない。三権分立の立場から言って、行政が司法に介入することはあり得ないからだ。韓国は、時代遅れで大統領が皇帝と錯覚している。日本より100年は遅れている。そういう認識がゼロで、「日韓対等」意識で立ち向かってくるからギクシャクするのだ。

     

    (2)「間に挟まった民主党は、「検察の捜査に無理がある」と反発しているものの、内心は総選挙に及ぼす影響により神経を尖らせていると見られる。継続している大統領府ー検察の軋轢」が、総選挙で領域を拡張しなければならない中道層に良くない影響を与えかねないと見ているためだ。民主党のある戦略通議員は「総選挙のリスク要因になり得る。軋轢それ自体が負担になりかねず、大統領府に対する検察の捜査が続いているだけに、捜査を通じて新たな事実があらわれれば圧迫になりうる」と展望した」

     

    大統領府は、検察の家宅捜査を拒んだ結果、検察捜査官が8時間も室外で待機させられ、やむなく家宅捜査を諦めたという一件があった。メディアによって一部始終報じられているから、大統領府には不利である。支持率が下がって当然であろう。家宅捜査を拒否するのは、大統領府が別格の扱いということだろうが、「三権分立の原則」に著しく反することである。そのことに気付かないほど、特権意識を持っていることを示している。

     

    (3)「また、別の与党関係者も「検察が無理な捜査をしていることは事実だが、私たちも与党なのに軋轢管理がうまくできていない。表立たないように軋轢を収拾する方式で進むべきなのに、かえって正面から争う姿を見せている」と指摘した。検察が大統領府に対する捜査を通じて総選挙に影響を及ぼしていると声を高めようとしても、すでに「大統領府に対する捜査を阻もうとしている」というフレームが形成されている状況を憂慮しているわけだ」

     

    下線のような「邪推」をなぜするのか。検察は大統領府の「敵」という位置づけであるからだ。この意識に基づいて、検察人事に介入し検察改革をやっているのだろう。検察機構を政治の道具に使うのは、政府腐敗の原点である。文政権が、すでに腐敗していることを自ら証明している。

     

    (4)「大統領府は、大統領府およびチョ・グク前法務部長官に関連する捜査を指揮した次長検事を全面交替した人事と関連して、「人事提案権は法務部長官に、人事決定権は大統領にある」という原則的な立場だけを明らかにした大統領府捜査の遮断用という保守勢力の反発に生半可に対応すれば、さらに世論が悪化することもありうるためだ」

     

    大統領府が、検察や裁判所の人事権を振りかざして、「人事決定権は大統領にある」と言うのは民主主義として未成熟である。日本では、こういう露骨な発言をする首相を見たことがない。司法人事は、独立を保障すべきである。文政権は、裁判所の人事権も握って、「積弊一掃」を行なわせている。言葉は上品でないが、「ろくなことをやらない」大統領なのだ。

     

    (5)「韓国リサーチのチョン・ハンウル世論分析専門委員は、「大統領府と検察の軋轢イシューは、政府・与党にとってはマイナスに働く。まず経済が1順位ではないとのメッセージを与え、チョ・グク前長官イシューを再び呼び覚ます効果がある。チョ前長官または大統領府に対する捜査を妨害している姿に映れば、政府・与党にはマイナスにしかならない」と明らかにした」

     

    下線部分の大統領府と検察が争っている印象は、大統領府にとってマイナスでしかない、と世論調査の専門家が指摘している。その通りだ。検察の人事権も大統領にある。それでも検察は、自らの任務に対して忠実に遂行している。この検察に拍手を送るのが普通の感覚だろう。文政権は、権力を野党に渡したくない一念で、すでに正常な感覚を失っているのだ。


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