勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 韓国経済ニュース時評

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    最低賃金の大幅引上げに端を発して、韓国経済の基盤がメチャクチャであることが浮き彫りになってきた。「反日騒動」で見せたあの勝ち誇った姿は、もはやどこにも見られない。さらに、大きな社会問題になっているのは、自営業者の金策が著しく難しくなってきたことだ。

     

    韓国では、なぜこれほどまでに自営業者のウエイトが高いのか。定年退職後、退職金のほかに借金までして自営業を始める理由は何か。韓国では、年金を含めた社会保障制度が完備していないことにある。これは、データ面で確認できる。日本で、定年退職後に自営業を始める人は珍しい。生活のために小商売を始めるよりも、今まで勤めた会社で嘱託などのコースを選ぶ。

     

    韓国では、高齢者の1人当たり社会保障費が、OECD35ヶ国中32位(2013年)、対GDPの社会保障費が、同34位である。日本はどうか。前者が10位。後者が7位である。日本の方がはるかに恵まれている。だから、老後に、商売を始める人がいないワケだ。

     

    『韓国経済新聞』(7月31日付)は、「借金まみれの韓国の自営業者、金利上がれば48万人が信用不良者」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「退職金に加え借入までして食堂などの店を開きながら借金を返せなくなり廃業する自営業者が増加している。『商売さえうまくいけば負債を返すのは一瞬』という考えから無理に貸付を受けたが利子も返せないほど、経営状況が悪化したためだ。急激な最低賃金引き上げなどで各種コストが増える中で景気が悪化し消費者が財布を閉じ始めたためと分析される。金融当局は事実上、自営業者への貸付総量を引き締め始めた。『貸付の崖』に直面した自営業者は消費者金融まで訪ね始めた。彼らが倒れれば金融システムだけでなく実体経済まで衝撃は避けられないと指摘される」

     

    自営業者の経営悪化問題は、最賃の大幅引上げがきっかけになって津波のように広がっている。これが、個人消費を沈滞化させており、自営業者の金繰りに影響を及ぼしている。正規の金融機関が警戒し始めており貸出を絞っている。日本のように、自営業に親身になる金融機関は存在しないのか。こういう韓国の金融システムでは自営業者を追い詰めるだけだろう。文政権は、自営業者の金融隘路を打開しなければ、自営業を救えない。最後に行き着く先が消費者金融では、高金利で自らの首を締めることになろう。

     

    (2)「自営業者は銀行、貯蓄銀行、農水畜協など相互金融の貸付が閉ざされると、消費者金融まで探しに出た。これに伴い、消費者金融利用者のうち自営業者の割合だけ増えたことがわかった。消費者金融で金を借りた低信用者のうち自営業者は昨年6月末の18.8%から12月末には21.6%に増加した。今年上半期は25%まで増えたというのが金融圏の分析だ」

     

    消費者金融まで金策に出かけるのは、韓国経済がすでに下降局面に入っていることの証明である。政府は、この実態も知らずに来年の最賃を10.9%も引上げている。何ともチグハグナ話だ。すでに、自営業者が消費者金融利用者の4分の1とは、尋常ならざることだ。

     

    (3)「金融当局は、全自営業借主約160万人のうち、償還力が落ち金利上昇に弱い借主は約48万人(貸付金38兆6000億ウォン)に達するとみている。このうち格付けが7等級以下や消費者金融などで高金利貸付を受けた約18万人(貸付金12兆5000億ウォン)は高危険群に分類している。金利上昇時には彼らが経済の信管になりかねないという指摘だ」

    全自営業借主約160万人のうち、約48万人が「信用不安者」に分類されているという。このうち、約18万人は「高危険群」である。文政権は、こういう実態を把握しているだろうか。文氏は毎日、午前3時まで資料を読んでいるという。それも結構だが、
    街へ出て庶民がどのような暮らしぶりしているのか、それを見るべきだ。

     


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    水害現場からの映像では、水が引いており消毒が始まっている。ダム決壊の原因調査が始まる見込みだ。事故を大きくした理由として、現場に復旧用設備がなかったという致命的な問題が明らかになっている。特に、工事を請け負ったSK建設は、韓国でダム建設1位の実績を持つ企業であるだけに、その対応に疑問符がついている。

     

    『レコードチャイナ』(7月31日付)は、「ラオスのダム決壊、現場に復旧用装備がなかったと判明」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「韓国『SBS』は、韓国のSK建設が建設中だったラオスのダムが決壊した事故をめぐり『事故前に沈下現象が確認された際、現場には復旧用の装備がほぼなかったという証言が出た』と報じた。ラオス・ダム建設の韓国の合弁会社は、国会報告で『ダムの沈下が確認された後に急いで復旧装備を手配した』と述べた。また、ダムの工事現場で働いていた従業員『2013年の工事開始時から、現場には施工会社であるSK建設の装備はなかった』と話したという」

     

    SBSは、ソウルを中心とする民放である。この報道によると、現場での復旧用の設備がなかったという。また、工事開始時からSK建設の建設機械装備がなかったという証言がある。これは、SK建設が下請けに「丸投げ」したとも受け取れる。こうなると、仮に手抜き工事があったとすれば、監督できなかったSK側の責任は免れまい。

     

    (2)「SBSが2013年にSK建設が結んだラオス・ダム工事の下請け契約書を確認したところ、ダム2つと補助ダム5つの大規模な工事であるにもかかわらず、下請け会社は1社だった。同社は昨年6月、請け負った土木工事とダム構造の工事を終え契約が終了したため撤収した。その際に主要な建設装備も運び出されたため、今回の緊急の状況で復旧装備がないという事態が発生したという。建設業界では『大規模な工事で一括下請負が行われることは異例』と指摘する声が上がっている。SBSは『大規模な工事を行っているにもかかわらず、問題発生時にすぐに投入できる装備を用意していなかった』と批判的に伝えている」

    7つのダムで、一つの下請け企業に工事を任せたことが疑問視されている。このような大規模工事では、複数の下請けが入るものと指摘されている。競争原理を働かせる意味で、複数の下請けは必要でなかったか、という点は再検討が必要かも知れない。


    (3)「これに対し、SK建設は『残るは仕上げの作業だけという状況だったため下請会社は撤収した』とし、『ダムの上部が流失した翌日に現地の業者に依頼してダンプトラックなど12台の装備を投入した』と説明したという」

    SK建設の弁解は、苦しいように見える。竣工して発注先に手渡すまでは、受注業者の責任である。経費削減という意味もあったのだろうが、現在が雨期であることを配慮すべきであった。こうした事故が起こって見ると、「事故は起こるべくして起こる」という昔ながら教訓が生きるはずだ。

     

     

     

     


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    ラオスは、5~10月が雨期である。この最中に起こったダム決壊だけに、敏捷な救援活動を迫られている。韓国政府は、29日、ラオスのセピアン・セナムノイダム事故の被害支援に向け救護隊を派遣した。

     

    『韓国経済新聞』(7月30日付)は、「韓国政府緊急救護隊がラオス行き、ダム施工の韓国企業は被災者臨時宿舎の建設着手」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「韓国政府は29日、ラオスのセピアン・セナムノイダム事故の被害支援に向け救護隊を派遣した。輸送機2機に分乗してソウル空港を出発した韓国海外緊急救護隊(KDRT)は内科、小児科、救急医療、耳鼻咽喉科分野の医療陣15人と支援スタッフ5人で構成された。救護隊は10日間にわたり現地で被害地域住民の感染病予防と治療活動をする。ラオス救護隊第2陣の派遣は今後話し合われるという」

     

    韓国政府は7月29日、韓国軍の輸送機2機で医師やスタッフが現地へ到着した。今回のダム決壊では、日本の黒部ダムの貯水量(2億トン)の25倍、50億立方メートルもの大量の水が一気に流れ込んできたという。甚大な被害が出ているが、この程度の対応でいいのかと批判の声が上がっている。事故発生が7月23日。韓国の政府救援隊に出動が遅いと言われる理由だ。ただ、後のパラグラフにあるように、ダム建設を請け負ったSK建設が200人ほどの救援体制を組んでいる。

     

    (2)「SK側では、救護団長のチェ・グァンチョルSKグループ社会貢献委員長と、アン・ジェヒョンSK建設社長ら経営陣も、救護団員200人ほどとともに復旧作業をしている。救護団は被災者の健康管理と疾病予防に向け韓国政府が派遣した医療支援団と協調することにした。チェ委員長は『被災者が早く生活基盤に復帰できるよう努力している。被災者に救護品が不足しないよう支援する』と話した」

     

    今回の政府派遣の救援隊と協調するというが、政府救援隊の第2陣は今後の状況次第とされている。韓国政府が前面に出ることを控えているのか。今後に予想される賠償問題を意識して「半身に」構え始めたとすれば、本末転倒であろう。何が起ころうと、韓国政府が後に控えているという安心感を現地側に与えることが、国家としての信頼感を高める要因と思うのだが。

     

     

    (3)「セナムノイダムの施工を担当したSKグループも被害復旧に積極的に乗り出している。SKグループは29日にアッタプー県政府の要請を受け緊急救護団が被災者臨時宿舎建設工事に入ったと明らかにした。1万平方メートルの敷地に150世帯が生活できる宿舎を1カ月以内に完工する予定だ。工事が終われば学校などで生活する被災者が基礎便宜施設を備えた所で暮らせる」

     

    緊急住宅建設が150世帯で足りるはずがない。罹災家屋は3500棟ともいわれから、この程度では焼け石に水だ。それに、10月までは雨期にあたる。家屋復旧は最優先するべき事項だが、どうなっているだろうか。日本には、震災で使われた家屋が多数あるはず。日本政府も支援可能である。これも、韓国政府が動かなければどうにもならない話だ。


     


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    韓国経済は、世界でも例のない大幅な最低賃金引き上げで、文政権に首を締められている。最低賃金引き上げは、社会の底辺で働いている人たちの経済的待遇を改善して、経済全体を好循環の軌道に乗せる。こういう目的のはずだが、韓国では2年間に約30%も大幅に引き上げる破天荒なことを始めた。これが仇になって、韓国経済は循環軌道から脱線して破綻するだろう。

     

    2年間で、約30%の最賃引き上げと言っても、ピント来ないかも知れない。そこで、その計算式をお見せしたい。100×1.164×1.109=129.08になる。1.164は今年の最賃引き上げ率(16.4%)。1.109は来年の最賃引き上げ率(10.9%)である。昨年の最賃水準を100とすれば、来年の引上げ後の最賃水準は129になる。よって、2年間で約30%の賃上げになるのだ。

     

    こういう、生々しい数字を見て余りにも大幅だという野党の政治家がいた。「いた」と過去形にしたのは、つい先日、痛ましくも自死を遂げたからだ。その人の名前は、国会議員であった故魯会燦(ノ・フェチャン)前正義党代表である。不覚にも、身元の分らない政治献金を受け取ったことに責任を感じ、自ら死を選ぶ悲劇的結果になった。魯氏は死去する3日前にワシントン特派員らと会った席で、後掲のような自戒を込めた発言をしていた。

     

    『中央日報』(7月30日付)は、「文在寅政権、もう大げさな旗幟はたたもう」と題するコラムを掲載した。

     

    (1)「最低賃金を短期間に1万ウォンに引き上げるという文在寅(ムン・ジェイン、2020年まで)、安哲秀(アン・チョルス)、劉承ミン(ユ・スンミン、2022年)だけでなく正義党(2019年)の公約は、実現不可能なポピュリズムであると告白した。韓国の自営業者の比率は経済活動人口の28%で米国の4倍にのぼる。自営業問題は、カード手数料を1%台に下げたり、商店賃貸借保護法を改正したところで解決しない。最低賃金の大幅引上げにある」

     

    各党は、国民の支持をえたいばかりに、実現不可能な公約を掲げたことが明らかにされている。ここまで、韓国政治の舞台裏が明らかになると、これに熱狂した韓国国民が哀れに思えるのだ。自ら選んだ大統領の手によって、自らの生活基盤を破壊されたからである。かつて、ヒトラーに熱狂して選んだドイツ国民が、塗炭の苦しみを味わったことと同じ図式に見えるのだ。口当たりの良いポピュリズムの恐ろしさがここにある。

     

    正義党とは、2012年10月に結成された進歩正義党(略称: 正義党)を前身とし、2013年7月の党大会で現在の党名となった国会議員は6名である。韓国型社会主義の実現を目指しているという。

     

    (2)「現在、自営業者と零細企業・中小企業人は2年間で最低賃金が30%近く上がったことで悲鳴をあげている。青年はコンビニエンスストアのバイトも見つけるのが難しくなった。経済の毛細血管が詰まり、支持率は急落している。文大統領との27日の光化門(クァンファムン)ビヤホール対話でも『業種別・地域別に速度調節をする必要がある』という意見が出てきた。まさに正しい言葉だ。魯会燦式にまずは現場の声を聞いていれば当然反映されたはずであり、今のような混乱はなかっただろう。広がる所得の差を減らすということには賛成する。しかし最低賃金1万ウォン自体が目標ではないはずだ。にもかかわらず短期間に1万ウォンに引き上げれば、自営業者・零細業者・アルバイトの生計が脅かされるという声にこの政府の誰も耳を傾けなかった。これでも『人が優先だ』と話す資格があるのだろうか」

     

    今年の最賃16.4%引き上げですら、コンビニ店主はアルバイトの雇用を打ち切っている。家族で細々と経営するスタイルに切り替えたのだ。この煽りを受けて、青年が新規にコンビでのアルバイト口すら探すことが困難になっている。魯氏の方式に従えば、先ず現場の状況把握をすることだ。文在寅政権は、「理念先行」で現場の動きを把握せずに、大号令を発してしまった。今や、二進も三進も行かず、新たな「悪者探し」をして、そこへ責任を転嫁させる雰囲気だ。カード会社の手数料が高い。店舗の賃貸料が高い。これらの外部条件に責任を被せようとしているが、最大の問題は最賃を急激に上げすぎたことだ。


    韓国は、自営業が底辺を支えている経済である。その自営業が最賃の急激な引き上げで、直撃弾を浴びた形になった。来年も二桁引き上げである。自営業者の悲鳴は、韓国経済の凋落につながる。


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    韓国の文政権は、気の毒なほど経済面で「ドジ」が続いている。文大統領は、7月26日にソウルの光化門で市民とビールを酌み交わし、「庶民大統領」を演出し、国民の悩みを聞くという触れ込みだ。この席では、最低賃金で経営が苦しくなっている話や、就職難の悩みも打ち明けられたという。

     

    だが、文政権は国民の暮らしを圧迫するような政策ばかりやっている。その根本的な間違いは、最低賃金の大幅引き上げが国民のためになるという「妄念」にあることに気づいていないのだ。つい先日、IMF(国際通貨基金)のアジア担当官が、直々にこの政策の危険性を説いている。「馬に念仏」で聞く耳持たぬ連中である。

     

    前記のIMF担当官は、最賃引上が物価引き上げの要因になると警告したが、ついにそれが現れ始めている。

     

    『中央日報』(7月30日付)は、「不況でも止まらない物価上昇 韓国政府の所得主導成長を強打」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「物価が韓国・文在寅(ムン・ジェイン)政府の核心経済政策である所得主導成長を脅かしている。農産物、外食費、ガソリン代などの価格が全般的に上昇を続けている。猛暑や原油価格の上昇に加え、最低賃金引き上げが複合的に作用した結果だ。利益が増えても物価が急騰すれば実質所得の底上げを図ることは難しい。ただでさえ景気不振という状況で、物価まで所得主導成長の足を引っ張ることになり政府の悩みは深まるばかりだ」

     

    韓国政府が、生産性を上回る最低賃金引上げを強制している以上、賃上げ上昇分を価格に上乗せるのは当然である。「便乗値上げ」ではない。こういう悪循環を想定せず、「良いことばかり」を考えていた結果、副作用が現れてビックリ仰天し始めている。

     

    (2)「最低賃金引き上げもサービス業などの物価を動揺させている。男性ヘアカット専門店『ブルークラブ』の首都圏店舗は今月からカット代を一斉に1000ウォン引き上げた。物価上昇は景気回復を邪魔するもう一つの悪材料だ。物価が上昇すれば懐事情が厳しくなった家計は財布の紐を締めるようになり、消費不振に帰結する。このような状況が続けば、所得向上による内需拡大という政府の経済目標は難関を避けられなくなる」

     

    ソウルの有名男性ヘアカット専門店では、カット代を100円引上げたという。これは、「一波が万波を呼ぶ」の喩え通り、消費者物価全般へ広がってゆくであろう。誰も文句は言えない値上げである。韓国政府の想定外の動きであろう。

     

    (3)「所得主導成長政策の核心である最低賃金引き上げが、物価上昇の一因になっているため政策の転換が必要だという指摘がある。国際通貨基金(IMF)アジア太平洋局のタルハン・フェイジオールー課長が今月25日(現地時間)、米国で開かれたセミナーに参加して『韓国の最低賃金引き上げスピードがとても速い』とし、最低賃金引き上げに伴うインフレーション(物価上昇)の可能性を指摘したのもこのような脈絡だ」

     

    文氏が、「最賃引上」について打算で動いているとは思えない。彼の風貌から受ける印象は、「真面目人間」である。その文氏が、最賃の大幅引き上げが国民のためになると信じ込んでしまった。この「妄信」をどのようにして解くのか。文氏の師匠である牧師先生にお願いするほかない。


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