勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 韓国経済ニュース時評

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    帝王的な権力者意識に酔う

    理想と現実大きなギャップ

    進歩派専門家が愛想尽かす

    経済原則を無視の暴走政策

     

    韓国文在寅(ムン・ジェイン)大統領の支持率が急落している。世論調査機関によっては、支持率が30%割れを起こしている。就任当時の80%台を記録した支持率は、もはやウソのように消えてしまった。

     

    文政権は、若者の高い支持で実現した。その若者が、支持層から離脱する事態を招いている。そこに深刻さがあらわれている。若者が、文氏を大統領に押し上げる原動力になったのは、文氏の「正義・公正・公平」という倫理性にあった。朴槿惠(パククネ)前大統領が、民間人の国政壟断を許したこと。その民間人の娘が、誰もがその名前を知って憧れる名門女子大学へ「コネ入学」できたことなど、「入試地獄」の韓国では絶対に看過できない事態であった。

     


    こうして、朴大統領を罷免に追い込む韓国政治史上で初めての事件になった。文氏が、立候補で掲げた「正義・公正・公平」は、韓国社会では十分に新鮮な響きを持っていたのである。文大統領は、それだけに自らの当選できた背景を片時も忘れてならないはずであった。そこが、「権力の魔性」の恐ろしさである。文氏もこの「魔性」に溺れてしまった。

     

    帝王的な権力者意識に酔う

    文大統領は、5月10日に就任5年目を迎えた。残す任期は、わずか1年を残すのみである。文氏は、記者を前に就任4年を振り返る演説をした。その席で、記者とのやり取りでいくつかの興味ある話があった。

     

    その一つに、次のようなものがある。

     

    文大統領は月城(ウォルソン)原発1号機の捜査などと関連して、「原発捜査などのいくつかの捜査を見ても、検察は大統領府の権力を恐れないようだ」と述べたのである。これは、検察による政権側の疑惑捜査を非難している雰囲気だ。正しい回答は、「大統領府といえども、三権分立の立場から当然、検察捜査の対象になる」と言うべきであった。文氏の心情では、「不愉快」という思いが滲み出ている発言である。

     

    月城原発1号機は、黒字操業中の原発であり、何ら問題のない存在であった。文氏は、これを強引に操業中止に追込んだのである。政府からの説明では、赤字操業を理由に挙げたが「ウソ」であった。韓国検査院(会計検査院)の調査を前に、政府機関の職員が夜間にしのび込み、データの改ざんや関連資料を削除するという「スパイ」もどきの立ち回りをして事態の隠蔽を図った。文氏の掲げた「正義・公正・公平」にもとること、おびただしい事件である。

     

    文大統領は、もう一つの長官(大臣)任命で強引な手法を取っている。

     

    文大統領が5月11日、野党が非適格と判断した3人の長官候補に対する人事聴聞経過報告書を14日まで送付するよう国会に要請したことだ。韓国では、長官就任にあたっては、国会が聴聞会を開き同意することが原則になっている。ただ、国会が同意しなければ、大統領権限で長官に任命できるシステムだ。

     

    国会が14日までに聴聞報告書を送付しなければ、文大統領は15日午前0時から長官候補らを任命でき、事実上の任命強行手続きに入ったとみられる。今回も文大統領が任命を強行すれば、現政権になって野党の同意なく任命された長官級要人は32人になる。この強引人事の発令数は、歴代政権で最大数である。

     

    国会の聴聞会では、これまでも重箱の隅を突くような調査や質問が行なわれてきた。今回、3人の長官候補に「バツ印」がついたのは、呆れるような理由である。

    1)長官候補の夫人が、英国から密輸で陶器を輸入して販売した。

    2)本人が、不動産投機に関わった。

    3)本人が、教え子の修士論文を盗用した。

     


    文大統領は、こういう「傷物」長官候補3人について、国会へ再度の聴聞会開催を要求している。これは、大統領権限で長官へ就かせるシグナルだ。文大統領は就任以来、こういう強引な手法で30人を上回る長官を誕生させてきた。どこが、
    「正義・公正・公平」なのか、呆れる話ばかりだ。

     

    理想と現実大きなギャップ

    文大統領は先の記者会見で、次のようにも語っている。

     

    次の大統領が備えるべき「徳目や時代精神は何か」という記者の質問に、「まず時代精神とともにあるべきこと。そして、バランス感覚が必要だ」と答えたのだ。これまで、文氏が大統領として行なってきたことと大きなギャップに気付くであろう。文氏は、自分の行動が、時代精神とバランス感覚に合致していると判断している点に驚くほかない。自分に甘く他人に厳しいという、人間として最も忌避すべき行動に、文氏がどっぷりと浸っているのである。(つづく)

     

    次の記事もご参考に。

    2021-05-03

    メルマガ254号 支持率急落29%、地獄をみる文在寅 一足早く送る言葉「あなたは道

     

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    端から見ていると、韓国のインド太平洋戦略対話「クアッド」参加問題は、歯がゆいほどフラフラしている。国際情勢の変化に対する認識不足が、こういう姿勢を取らせているのだろう。5月21日の米韓首脳会談では、クアッド問題がメインテーマになることが明らかになるとともに、大慌てしている。滑稽である。

     

    『中央日報』(5月12付)は、「『クアッド』冷遇してきた韓国の賭け? 駐米韓国大使はなぜSKバッテリー工場に行ったか」と題する記事を掲載した。

     

    韓国はこれまで、米韓2国間会談でクアッド問題を切り出しても「『協議』はあったが、『参加要請』はなかった」という形で線を引き、「クアッドプラス」の話が持ち上がるたびに韓国政府当局者は「4カ国さえもクアッドの性格に対して意見が完全に一致していない」と言って、もう少しで引きつけを起こしかねないような雰囲気だった。



    (1)「こうした政府の言語が少しずつ変わっている。「部分協力」「分野別協力」に可能性を残しておきながらクアッドの大きさを測り始めた。5月21日に予定されている韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と米国のジョー・バイデン大統領間の初の首脳会談を控えた気流の変化だ。今回の首脳会談でクアッドに関連する問題は核心的に扱われる可能性が高いというのが外交界の支配的な見方だ」

     

    中国怖しが、こういう臆病な外交姿勢を取らせるのであろう。基本的な米韓同盟のあり方という骨格の議論をしない場当たり外交の典型例である。クアッドの部分参加は、3月18日の米韓の外交・防衛「2+2会合」の発表文に現れていた。本欄は、これまでこの事実を指摘してきた。ぼやけていた姿が、次第にその骨格を現してきたと言えよう。

     

    (2)「外交の基本は、ギブ・アンド・テイクだ。新型コロナウイルス感染症(新型肺炎)ワクチンの支援などの課題を抱えている文政府の立場では、米国の東アジア政策の核心軸であるクアッドに背を向けてばかりはいられないということだ。これと関連して、韓国政府はクアッド首脳会談を通じて用意されたワーキンググループに参加する形で協力する方案を模索中だ。クアッドは気候変動、新型コロナ、新技術など3つの分野で参加国の専門家が参加するワーキンググループを創設した」

     

    韓国が、クワッドの気候変動、新型コロナ、新技術など3つの分野に参加する意思を表明するという記事である。この問題は、3月から一貫して持ち上がっていたことである。記事自体が遅れている。

     


    (3)「気候変動や新型コロナへの対応は、米国が中国と協力するという立場を決めた分野だ。韓国政府は対中圧迫の色彩が薄い分野で協力が可能だと考えたことになる。だが、最近になって政府は分野別協力が可能な分野に新技術のワーキンググループも検討しているという。米国も韓国の半導体技術力などを高く評価していて、新技術分野は韓国を除いて論じることができない立場である点を考慮しているということだ。

     

    新技術分野のワーキンググループへの参加は、韓国にとってメリットが大きいからぜひ参加したい分野のはずである。韓国は、技術という「美味しい分野」には加わるが、安全保障面での義務は免れたいという、「食い逃げ」姿勢である。米国に韓国を守ってもらうが、クアッドでの安保義務はご免という虫の良い話である。米国も韓国の身勝手さに苦笑するであろう。

     

    (4)「これに関連し、李秀赫(イ・スヒョク)駐米韓国大使が今月7日、米国ジョージア州に位置するSKイノベーションのバッテリー工場を訪問した事実も公開された。今回の工場訪問は、韓国も新技術分野への協力にさらに前向きな立場に旋回するかもしれないという信号とも取れる。このような気流の変化がいわゆる「首脳会談用」なのか、根本的な戦略的立場の変化なのかは明確ではない。一部では、今回の首脳会談の目的は新型コロナワクチンの支援を受けることではないかという指摘もある」

     

    米韓首脳会談の目的が、米国からワクチン支援を受けることにあるとも指摘している。ワクチン問題は、クアッド問題が上手く進んだ場合の副次的話題である。メインは、クアッドの「正規加入」である。韓国では、首脳会談の意義を忘れたトンチンカンなことを議論している様子である。

     

    (5)「専門家は、クアッドと関連した政府の決定は国益を中心に置いて下されるべきで、臨時方便のように瞬間、瞬間の峠を乗り越えることを考えたアプローチは適切ではないと指摘する。高麗(コリョ)大学国際大学院の金聖翰(キム・ソンハン)教授は「新技術分野は米中間に譲歩のない、事実上ゼロサムゲームが起きる分野で、韓国がクアッドの新技術ワーキンググループに参加するなら、米国も大きな期待を持つことになるのは明らか」としつつも「だが、ワーキンググループに入った後は具体的な措置が必要だが、このような部分が忠実に講じられず韓国が相変わらず消極的な立場を見せるなら、かえって韓米関係に予想できない波紋を呼ぶ恐れがある」と話した」

     

    韓国は、食卓に並んだ料理でおかずだけ食べ、メイン料理には箸を付けない雰囲気である。外交が、ギブ・アンド・テイクを基本とするが、韓国はこれから外れて「テイク・アンド・テイク」という幼児的な発想法である。これでは、米韓同盟に魂は入らなくても致し方あるまい。韓国は、三流同盟国に落込もうとしている。




     

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    文大統領は、南北交流に「バランス外交」が不可欠と思い込んでいる。韓国の将来は、「平壌(ピョンヤン)へ続く」とまで考えている。つまり、南北朝鮮が統一することで「憎き日本」へ対抗できると真面目に考えているからだ。これは、合理的な根拠があっての話でなく、ただ意味もなくそう思っているだけである。「反日=南北統一」という妄念に突き動かされている。

     

    韓国は、米国からインド太平洋戦略対話の「クアッド」(日米豪印)へ参加するように、頻りと呼びかけられている。だが、生返事に止まっている。技術分科会に参加するという意思表示だけだ。「準会員」に止まり、「正会員」への昇格の返事をしないのである。しかし、5月21日の米韓首脳会談では、そういう曖昧なことでは済まされない。態度をはっきりしなければなるまい。

     

    『中央日報』(5月11日付)は、「クアッド、中国を意識する理由はなくなった」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のナム・ジョンホ中央日報コラムニストである。

     

    我々はよく「固定観念の奴隷」になったりする。クアッド(日米豪印)加入をめぐる賛否論争でもこうした問題が表れる。現在「クアッドは中国を防ぐための安全保障協力体で、韓国が加入すれば中国の経済報復を受けることになる」という命題が真実のようになっている。

    (1)「「加入賛成派は、クアッドに入らなければ韓国が米国の2流同盟国に墜落すると警告する。そして「血盟である米国側に立ってこそ北朝鮮と中国の脅威を防ぐことができる」という論理を展開する。反対論者は米中間に挟まれた韓国が一方の肩を持つのは危険だと考える。2016年の高高度防衛ミサイル(THAAD)配備をめぐる中国側の経済報復の被害が大きかったのは事実だ。それで「戦略的あいまい性」という名でクアッド加入を明らかにしないでおこうと主張する。事実上、参加を拒否するということだ」

     

    世界最強の軍事力を持つ米国の力を信じられず、中国の威嚇を恐れているのは滑稽である。同盟は、単騎出陣型よりも何十倍も安全である。こういう分かりきったことが分からないのは、「反日=南北統一」という妄念に取り憑かれている証拠だ。

     


    (2)「こうした二分法的な思考は、正しいのだろうか。まずクアッドが中国牽制用の安保共同体という認識から見てみよう。バイデン政権の発足以降、クアッドの性格ほど大きく変わったものはない。トランプ政権当時は、クアッドを中国の浮上を防ぐための安保共同体に育てるというのが目標だった。しかし今は変わった。国家安全保障会議(NSC)のエドガード・ケーガン上級部長(東アジア・オセアニア担当)は7日に開かれたセミナーでこう断言した。「クアッドはアジア版NATOでも安保同盟でもない」と。さらに彼は「ワクチン、気候変動、サイバー安保など公共財的イシューをめぐり協力する連帯」と強調した。米国の構想がこうであれば、韓国が中国のために加入しない理由はない」

     

    下線部は、インドをクアッドに参加させるために用いた「話法」である。インドは、伝統的に「非同盟主義」である。かつ、中国を無用に刺激したくないという立場から、下線のような話法を使っているだけだ。日米豪は、明らかに安保同盟という認識である。

     

    (3)「さらに注目されるのは、クアッドの一つの軸であるインドの立場だ。発表者として参加したインド専門家によると、インドはクアッドが決して集団安保体制に発展することの望まず、いかなる合同軍事訓練にも反対するということだ。さらにインド政府は、クアッドの決定が中国に対する独自の外交政策より優先されることはない点を明確にしている。すなわち、インド-中国の関係は自ら調整するということだ。このような場合にクアッドが中国牽制用の安保体制に発展する可能性はほとんどない」

     

    インドは、日米豪と合同軍事訓練に参加している。インドが、中国と国境紛争で長年の紛争を続けている以上、軍事面でのつながりに無関心であるはずがない。

     

    (4)「クアッドに加入すれば、中国の過酷な報復があるという論理も問いただす必要がある。クアッド創設メンバーのインド・日本はそのままにして韓国だけを攻撃するというのは、中国の立場でも矛盾がある。もちろん、開き直って韓国だけを攻撃する可能性はある。この場合、我々はファーウェイ(華為技術)事業禁止およびコロナ原因調査の主張などで昨年5月から中国の経済報復を受けたオーストラリアの事例を見ればよい。オーストラリアは対中輸出の比率が全体の20%を超えていた国だ。しかし1年間の中国の経済報復にもかかわらず、市場多角化政策などで全体の輸出は2.2%の減少にとどまった」

     

    韓国は、中国の影に怯えている。これが、中国の凄いところで暴力団的な圧力を掛けて韓国を萎縮させているのだ。日豪も、中国とは重要な貿易相手国である。それでも、安全保障という国家成立基盤を守るためには、経済とは異なる視点での対応が必要である。

     


    (5)「台湾の場合、昨年の蔡英文総統の「一国両制」拒否発言などで中国と軍事的葛藤まで生じたが、対中輸出額は2019年の918億ドルから昨年は1024億ドルと、むしろ11.5%も増えた。南シナ海で深刻な領有権紛争をしたベトナムも対中貿易が減るどころか増加傾向にある。中国との葛藤が必ずしも経済報復につながるわけではないということだ」

    韓国は、経済を理由にしてクアッド参加を渋っているが、これは付け足しの理由であろう。本当は、「反日=南北統一」が目的である。南北を統一して、日本へ仇討ちするには、韓国がクアッドに加わっていては実行できないという思惑に縛られているのであろう。韓国進歩派が、民族主義=反日=南北統一という一本の線で繋がっていることは間違いない。

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    米韓首脳会談は、5月21日ワシントンで開催される。文大統領にとっては、在任最後の1年になった。それだけに、成果を上げなければならないという焦りが出ている。南北対話再開への道筋をつくりたいと考えているのだ。

     

    ただ、バイデン大統領を「説得」しょうとしてオーバーランすれば、必ずバイデン氏から痛烈なしっぺ返しを受け「やぶ蛇」になる恐れが強い。文氏にとっては正念場を迎える。

     

    『中央日報』(5月11日付)は、「ワシントンでは『大韓民国の大統領』であるべき」と題するコラムを掲載した。筆者は、チェ・フン/編集者である。

     

    バイデン大統領と文在寅(ムン・ジェイン)大統領のワシントン会談が10日後に行われる。バイデン大統領と韓国の指導者が初めて会い、同盟と国際的イシューへの対応をリセットする重要な時期だ。期待と同時に「異見の増幅だけはないことを望む」という不安が共存する。なぜか。



    (1)「まずはバイデン大統領のカラー。バイデン氏は1973年に上院に入って以来およそ40年間をワシントンのインサイダーとして活躍した筋金入りの民主党員だ。民主党の核心的な価値は人権、人種平等、女性保護、水・大気など環境、公平課税、年金保護、医療保険、名分のない戦争(ベトナム・イラク)に対する嫌悪だ。そのすべての出発点は「人権」にある。民主党の十字軍的な姿勢を考えると、彼に説教をしたり教えたりして北朝鮮に寛大な互恵性を見せてほしいという性急な態度は成功確率がゼロだ。79歳の政治家が深く掘り下げてきた「原則」に関連する問題だ」

     

    バイデン氏は、民主党中道派である。長い間の政治家活動で「人権」が出発点だ。文氏が、この「人権」を踏みにじるような発言をすれば、米韓首脳会談の成功はおぼつかない。

     

    (2)「上院外交委員長を務めたバイデン氏の外交スタイルも明瞭だ。1979年にバイデン氏が米上院代表団長としてクレムリンでソ連のブレジネフ書記長、コスイギン首相と向き合った。コスイギン首相が「歴史上核兵器を使用した国は米国だけだ。あなたたちが先に我々に核を使用しないと言っても信じることができない」とし、3時間ほど長広舌をふるった。バイデン氏がすでに把握していた欧州内のソ連のタンク数がはるかに少なく言及されると、バイデン氏はこう語った。「コスイギン首相、我々(米国)式に話しましょうか。たわごとはほどほどにしろ!」。同僚議員が後ほど「何と通訳したのか」と尋ねると、通訳官は「冗談はやめてください…」(ジョー・バイデン自叙伝)」

     

    バイデン氏は、よく「失言する」と評されている。それは、率直な物言いにある。文氏の「持って回った」言い方は、誤解を受ける恐れがあろう。慎重にかつ短く発言することだ。例によって自慢話をすれば、バイデン氏から軽くあしらわれるだろう。

     


    (3)「自身の外交哲学を彼は自叙伝にこう要約した。「悲劇は権力を目的に偏見を利用した非常に利口な人たちから始まった。私は米国を背負って話す時に謙そんは率直ほど重要でないということを経験から学んだ。世界の指導者らは、弱気な態度のにおいをよく感じ取る。率直に話して米国の力を示すことが、むしろ彼らの信頼を得る道だ」と。「金正恩(キム・ジョンウン)はならず者」「習近平は体質的に民主主義的な点が一つもない」など、今でも彼は率直だ。いくら善意で包装して言葉を選んで北朝鮮をかばっても消えない信念であるようだ」

     

    文氏は、決して北朝鮮を庇うような話をしてはならない。批判すべき点を批判しないと、バイデン氏の信頼を勝ち取れないだろう。

     


    (4)「バイデン政権は、失敗したトランプ政権のビーガン北朝鮮政策特別代表の声にも傾聴してレビューした。その対北朝鮮政策は「クリントン・ブッシュ・オバマ・トランプとは異なるはず」であり「トランプ政権の大妥協でも、オバマ大統領の戦略的忍耐(でもなく、非核化段階別に相応措置を取る漸進的進展」(ホワイトハウスのサキ報道官)だ。「よく調整された実用的接近であるため、北朝鮮が外交の機会をつかむべき」(ブリンケン国務長官)と…)

     

    バイデン政権は、過去の北朝鮮政策の失敗を幅広く検討している。その結果、オバマでもなくトランプでもない「第三の道」を選ぶことになった。北朝鮮が非核化に向けた約束を履行する段階に応じて、米国も制裁解除する方法である。文氏は、これに協力する道を探して米韓同盟の一枚岩を演出することである。韓国が、これを妨害するような素振りを絶対に見せてはならないだろう。

     

    (5)「文大統領のワシントン成功法も単純になる。「韓国は人権と平和を追求する自由民主主義共和国」であることを鮮明にすることだ。それも社会主義体制との地政学的最前線の砦であることを…。この共感のもとに、次の点を強調する。

    1)韓米同盟の価値の再確認

    2)対話・外交を通じた北朝鮮の完全な非核化協調

    3)域内安保に必須の日本との関係改善努力--などが共有されることを期待してみる。何よりも特定陣営だけの指導者ではなく「大韓民国の大統領」として国民多数の望みをバイデン大統領に伝えることを願う。外交は権力エリートだけの専有物ではない」

    文氏は、前記の3点を疎かにせず、米国と協力する姿勢を取ることが重要である。その延長線で、「クアッド」問題が出てくるはずだ。中朝への思惑を捨てて、韓国の国益を実現すべきである。下線部は、そのことを指摘している。文大統領には、失地回復のまたとない機会になる。それだけに、慎重な対応が望まれる。

     

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    文大統領は、就任4周年を迎えて演説を行なった。その際、次期大統領に必要な資質として「時代精神とバランス感覚の必要性」を訴えた。聞きようによっては、文氏の「懺悔の言葉」にも聞える。最近の支持率低下は、まさに時代精神とバランス感覚の欠如が招いた結果である。その反省もなく、文氏は堂々と聖人君子のように「宣う」のに驚くのだ。

     

    『中央日報』(5月10日付)は、「文大統領演説、次の大統領 時代精神ともにすべき『バランス感覚必要』」と題する記事を掲載した。

     

    文在寅(ムン・ジェイン)大統領が次期大統領に必要な徳目として「時代精神」と「バランス感覚」を挙げた。文大統領は10日に青瓦台(チョンワデ、大統領府)で開かれた就任4周年特別演説後の質疑応答でこのように明らかにした。

     


    (1)「文大統領は、「次の大統領が備えるべき徳目や大統領候補が備えるべき時代精神は何か」という質問に、「過去にもそうした質問を何度か受けたが、私の答はいつも同じだ。まず時代精神とともにすべきということ。そしてバランス感覚が必要だ」と答えた」

     

    時代精神とは何か。これを、間違いなく正確に把握できれば、内政でも外交でも失敗することないはずだ。だが、進歩派からも文氏は厳しい批判を浴びている。となれば、文大統領は時代精神の流れに沿っていなかったことになる。流れに棹さし進まなかったのである。それは、時代遅れの民族主義に囚われていた結果であろう。

     

    時代精神は、その時代の社会、人心を支配する精神であろう。となれば、世論調査などによって民心の姿を知って、政治をすることになる。だが、文氏はそういうことを一切しなかった。進歩派の固定概念で現実を歪めて見ていたのだ。

     

    経済政策の失敗は、その顕著な例である。最低賃金の大幅引上げと不動産政策の失敗は、市場経済という原理原則を曲げて、文政権支持層の利益に奉仕した結果だ。文氏のいう時代精神とは、支持層の意見に従うことであった。これは、時代精神と呼ばず、党利党略という「党派性」という偏ったものである。

     


    (2)「文大統領は、「韓国の歴史が発展していくべき方向を正確に見ることが重要だ。目に見えるものがすべて本当の真心だと考えない、川の水にも泡沫のように流れる民心がある一方、川底でとうとうと流れる民心の方向がある」と強調した」

     

    韓国の歴史が発展していくべき方向を正確に見ることを訴えている。韓国の歴史は、誰がつくるのか。それは、政治家でも大統領でもない。国民の選択によるものだ。文氏が、大きな誤解をしたのは、大統領が歴史の発展をつくると誤解していること。だから、あれほどまでに大々的に、「反日運動」の先頭に立てたのだろう。

     

    韓国は、朝鮮戦争によってあわや共産主義体制に飲み込まれるところだった。これを救ったのは、米軍をはじめとする国連軍である。自由と民主主義を標榜する国家群だ。その韓国が、救ってくれた側よりも侵略してきた側に親近感を持って接しるという不思議な選択をしている。被害者が、救ってくれた側よりも加害者に親近感を持つという倒錯した感情を抱いている。犯罪心理学の分野でしか分からない動きである。

     

    下線部では、「川の水にも泡沫のように流れる民心がある一方、川底でとうとうと流れる民心の方向がある」と指摘している。浅瀬の川の泡よりも、静かに流れに大河に身を託する生き方をすべきで、まさに、歴史の法則(専制制度→封建制度→市民社会)に沿う生き方だ。文氏は、この歴史の歯車を逆転させ、専制制度の中朝に親近感を寄せる倒錯した歴史観である。

     

    世論調査でも韓国の民心は、一貫して米国に親近感を持ち、中朝には冷淡である。民心に従うことが時代精神に沿うとすれば、韓国は進歩派よりも保守派のほうが、はるかに誠実な生き方と言えるであろう。文政権の登場は、完全に進歩派の土台を掘り崩してしまったのである。

     

    (3)「続けて、「昔、時代精神は個人的な洞察力を通じて時代精神を探さなければならないと考えたが、最近ではそれより共感を通じて探さなければならないと考える。結局、国民の集団知性が時代精神といえるほど国民としっかり疎通し共感し時代精神を見つけ出すことがとても重要だ」と指摘した」

     

    下線部分は、重要な指摘である。時代精神は主観によって把握するのでなく、共感によって探さなければならない、と指摘している。「共感」とは、独り善がりなものでなく、コミュニケーションによって得られる共通の認識である。それは、国会の議席数の多寡によるものでなく、庶民感覚の多数派が形成するものだ。

     

    韓国進歩派の時代精神は、労組と市民団体の運動家が形成してきた。既得権益を守り、自派だけが利益を得るという最も醜い姿を露呈している。

     


    (4)「その上で、「そのように設定する時代的課題といってもその課題は速度や実践方法などさまざまな面で国民がともにその方向に行けるようバランスを取ってアプローチすることが必要だ」と明らかにした」

     

    バランスを取るというのは、党派の一方に偏らないことを意味する。文政権は、すべて与党の利益のみに奉仕して野党の主張に耳を貸さなかった。たまたま、昨年4月の総選挙で与党が大勝して、バランス精神は消えてしまった。すべて、大統領たる文在寅の責任に帰す問題である。

     

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