勝又壽良のワールドビュー

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    文政権は、来年5月9日で幕を閉じる。あと1年を残すが落第政権であることは免れなくなった。政権支持メディア『ハンギョレ新聞』も、「力不足」を率直に認めざるを得ないほどの惨状である。

     

    文大統領は就任直後、執務室に雇用状況ボードを設置して雇用を改善すると明らかにした。「雇用大統領になる」と宣言したほどだが、雇用事情は悪化の一途である。これまで計25回の大小の不動産対策を出したが、全て空振りに終わって効果はない。国民の暮しは悪くなるばかりである。

     

    『ハンギョレ新聞』(5月10日付)は、「『文在寅政権の4年、善意と価値示したが力不足だった』」と題する記事を掲載した。

     

    本紙は政治専門家10人に文在寅政権の1460日間をどう評価するか、文大統領は残りの365日をどうやって送ればいいのかについて、意見を聞いた。「善意を持って正しい価値を掲げたが、力量は足りなかった」という総評とともに、コロナ禍の終息と不平等の緩和に力を入れ、社会的対立を最小化すべきという診断が提示された。

     


    (1)「文在寅政権に対する期待が大きかっただけに、評価も厳しかった。延世大学のパク・ミョンリム教授は「文在寅政権は大量得点を抱えて出発した政権だという点を考えなければならない。文大統領が優れていたところもあったが、代案勢力の不在で反射利益を得た側面がある」と指摘した。慶南研究院のイ・グァンフ研究委員は「政権序盤で不動産政策の方向性を間違えており、所得主導成長が革新成長と不協和音を起こした時もうまく収拾できなかった。また包容国家と福祉国家のビジョンを最初から強く進められず、バランス発展政策も不十分だった」とし、「善良な意志に及ばなかった政策力量」だと要約した」

     

    『ハンギョレ新聞』は進歩派擁護メディアである。そこへ登場する識者も当然、進歩派であろう。この人々が、文政権へ厳しい評価である。仲間内が、これだけ批判するのは、実態が相当に悪いということだ。

     

    下線部分は、文政権が「棚からぼた餅」式の利益を得て成立した政権という意味である。朴槿惠(パク・クネ)政権が弾劾で幕を引いただけに、文政権はその反動で高い支持率を得たに過ぎなかった。そこを誤解・錯覚した。文政権は全て可能と思い込んで暴走したのである。

     

    (2)「パク・ミョンリム教授は「この4年間、韓国社会で進歩と保守を分ける基準が失われたことが最も残念だ」と述べた。彼は「文在寅政権の中心勢力である86世代(1960年代生まれ)が観念的には進歩だが、実際の暮らしにおいてはそうではなかったうえ、実質的にも進歩の価値と目標を逆転させてしまった」とし、二極化の解消を掲げながらも不動産の高騰で資産の不平等が深刻化しており、エコを主張しながらも実際は予備妥当性調査(大型事業で政治的・経済的な妥当性を事前に検証する制度)の免除を受けた土建事業が多かったという点などを例に挙げた」

     

    文政権によって、進歩と保守を分ける基準がなくなったと指摘している。具体的には、清潔であるべき進歩派が堕落して、保身の術に出てしまったことだ。これは、議員や大統領府の秘書官などの素質の悪さが理由としても、そういう連中を集めた文大統領の責任は免れない。進歩派の多くは「運動圏」(学生運動や市民運動の経験者)で、それまで正業に就かなかった人たちである。それだけに「一攫千金」で、もうけ仕事に目が眩んだのだ。

     

    (3)「専門家らは、文在寅政権が敵味方の陣営論理で「ろうそく連合」を自らの手で解体してしまった点も大きな悪手に挙げた。ザ・モアのユン・テゴン政治分析室長は「ろうそくの民意というのは強固な進歩と中道が結合した80%の世論」だとしたうえで、「この『ろうそく連合』が形骸化したのが最も残念」だと指摘した。イ・ジンスン理事長は「進歩-保守、労働-資本という構図の87年体制が終わってから、新たな進歩の多極化体制が実現されず、陣営を分ける論理だけが横行している」とし、「87年体制は事実上破局を迎えた」と指摘した」

     

    「87年体制」とは、1987年6月29日盧泰愚大統領候補が発表した政治宣言である。正式名称は「国民の大団結と偉大な国家への前進のための特別宣言」。.29民主化宣言とも呼ばれる。大統領直接選挙制の導入と、金大中ら反体制派政治家・政治活動家の赦免・復権を骨子とした。韓国民主化の号砲である。その87年体制が、文政権の「敵・味方論」の識別で事実上、破局を迎えたという痛烈な批判である。文在寅は、韓国民主化に逆行したというのである。

     

    (4)「任期満了まで残り1年となり、専門家らは評価とコミュニケーションの重要性を強調した。ソ・ボクキョン責任研究員は、「非正規労働者の正社員化など社会経済的な改革目標をなぜ達成できなかったのか、方向性は正しかったにもかかわらず、条件が合わなかったのか、最初から修正すべき具体的目標は何だったのかを、学界や市民社会とともに見直す場を開くべきだ」と主張した。イ・ジンスン理事長は「不動産問題は一朝一夕には解決できない難題であることを国民も知っている。『このような部分は簡単には解決できない』と率直に言うことも必要だ。長期的にはこうした方向で共に進もうと説得しなければならないのに、総合不動産税の緩和などその場しのぎの政策を掲げるから、国民は怒っている」と述べた」

     

    文政権の経済政策は、空想論に基づいていた。供給よりも需要を付ければ経済は回ると信じていたのだ。供給増がなければ、いくら需要を付けても価格の高騰を招くだけである。最低賃金の大幅引上げはその轍を踏んだ。文政権4年間で、ソウルの住宅が8割も値上がりしたが、朴槿惠政権では1割強に止まった。朴政権では、住宅供給を増やしたからだ。素人政治が招いた悲劇である。

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    韓国は、5月21日に行なわれる米韓首脳会談を前に悩みに悩んでいるだろう。米国が、クアッド(日米豪印)参加を求めるのは必至の情勢であるからだ。韓国はこれまで、クアッドについて参加を要請されたことはないと否定してきた。これは中国の手前、そう発言しているだけで真実は違う。機会あるごとに米国から要請されている。文大統領は、クアッド参加についてバイデン大統領へどのような返事をするのだろうか。

     

    『韓国経済新聞』(5月9日付)は、「クアッドと韓国」と題するコラムを掲載した。筆者は、尹永寛(ユン・ヨングァン)元外交部長官・ソウル大学名誉教授である。

     

    (1)「3月12日のクアッド4カ国首脳会談の共同声明文を詳細に読んでみると韓国が注目すべき点が目に付く。5項目、700語余りで構成された共同声明文には「中国」「軍事」という言葉はひとつもなく、軍事と関連した「安全保障」という単語もたった3回出てくるだけだ。残りはすべて新型コロナ、気候変動、核心技術、反テロリズム、高級インフラ投資、人道主義的支援、災害救助などの話で、どのように4カ国がこうした領域で協力するのかに集中している。これに注目する必要があるのは、韓国ではみんなクアッドについて米国が日本、オーストラリア、インドと連合して中国を軍事的に牽制しようと追求している安全保障の枠組みがすべてであると理解しているようだからだ」

     

    クアッド4カ国首脳会談の共同声明文が、中国を刺激しないような内容になったのはインドの要請による。インドは、クアッド参加に消極的であったが、技術面での共同作業に利点を感じて決断した。だが、内実は4ヶ国の共同軍事演習などを行なうことで合意している。



    (2)「数日前に参加したある国際会議ではバイデン政権でこの問題を扱っている核心担当者の1人が公開的にクアッドは、「安全保障機関ではなく『アジアのNATO』を指向してもいない」と話した。ともに参加した米国のインド専門家は、インドの場合もクアッドに参加しているがクアッドを軍事同盟とみておらず、米中間でインドの戦略的自律性を放棄する意志もないと診断した」

    このパラグラフは、すべて表面的な発言を真に受けている。公式的には、このように発言することで意思統一しているのである。

     

    (3)「クアッドは、このように中国包囲のような特定の目標を持って出て行くのではなく、上で列挙した重要非軍事的課題を協力して解決していくことにより、国際社会に公共財を提供する方向でその時ごとに変化していく国際的連帯にすぎないということだ。それなら韓国もこれまで中国を意識してクアッド参加に消極的だった態度を変えるべき必要ができたと考える」

     

    クアッドが、中国包囲であることは明白であるが、それを明言しないだけである。単なるボランティア集団ではない。ただ、自由と民主主義を守る意味では「公共財」である。

     

    (4)「韓国がクアッドに参加しないならば、このすべての重要懸案分野で韓国は疎外されるだろう。例えば新型コロナワクチン普及と関連しとても差し迫っているのが韓国の現在の状況だ。気候変動、サイバー、スペースも韓国が積極的に国際協力に参加すべき分野だ。何より核心技術分野での参加が重要だ。半導体分野が見せるように核心技術分野で韓国がいつ、そしてどんな国際連帯や供給網に参加するかが極めて重要な外交安保問題になってしまった」

     

    米韓同盟がありながら、中国へ配慮して同盟の主旨を生かされないのは本末転倒である。韓国は、中国と同盟関係にないのだ。この原点に立って考えるべきことであろう。


    (5)「北朝鮮の核問題も、ここで議論されるべきなのに韓国が抜けたままクアッドメンバー同士、例えば米国と日本が非核化など韓半島関連の主要懸案に対する国際的議論を主導するならば韓国は核心当事者なのにもかかわらず後回しにされかねない。率直に米国は、トランプ大統領時代に続きいまも北朝鮮の核問題に関して、韓国よりもむしろ日本ともっと緊密に議論するのではないかと疑いを持つ時がある」

     

    北朝鮮問題は、すでに日米間で話し合われて結論が出されている。韓国は、この結論に従うほかない状況である。明らかに日米韓の3ヶ国関係では、日米に比重が移っている。

     


    (6)「韓国政府がクアッドに加入することにするならば事前に米国と静かに議論すべきことがある。それは、中国の予想される報復に対しどのように対応するかだ。中国政府は、すでに多様な方式で韓国政府がクアッドに加入しないよう圧迫している。韓国政府が加入を決めるならば十中八九経済報復が入ってくるだろう」

     

    中国が、韓国のクアッド入りで報復すれば、クアッドの名において対応すべきだろう。

     

    (7)「米国政府関係者やシンクタンクの専門家らは、前回中国がTHAAD配備に対する経済報復に出た際に、米国が何の行動も取らなかったことに対して一種の申し訳なさを感じている。こうした点を考慮し中国が同じ方式で経済制裁を加えてくる時にどのように対応するのか、米国とともに案を準備しておくのが良いだろう。しかし、たとえ米国が助けなくても韓国が判断して加入を決めたならばそのまま進むのが正しい主権国家の姿勢だ」

     

    中国が、THAAD問題で韓国へ報復した当時は、米中関係が悪化していなかったので米国は静観していた。クアッド参加で、中国が同様なことをすれば状況は異なっている。クアッドの名において対応する事態になる。

    (8)「追加で、クアッド加入を通じてクアッド諸国、特に米国と日本との関係が改善される契機が設けられるならば、そして韓半島問題に対し彼らのより緊密な協力を引き出すことができるならばさらに望ましいだろう。韓半島の地政学的ジレンマ、北朝鮮問題、北朝鮮問題に対する中国の影響力など、韓国だけが持っている特殊な状況に対するさらに深い理解と協力を、特に米国と日本から引き出すことができるならばそれは錦上添花だろう」

    韓国がクアッドに参加すれば、日米は「同じ釜の飯を食う仲」になる。韓国との関係は改善方向の条件が生まれることは確かだ。韓国は、「反日」の旗を降ろすことになろう。

     

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    文政権の登場以来、ソウルの住宅は8割も高騰するバブル状況に陥っている。若者はこの状況に焦っており、株式投資など投機に熱中する事態になっている。投機は、いずれ時間の経過とともに沈静化する。その際、莫大な債務が若者を苦しめるはずだ。

     

    ソウルの住宅バブルは、農地の高騰に点火している。韓国でも農地の売買は、農地法の厳しい背限がかかっている。それをくぐり抜けて、不動産屋が暗躍している。付近に商店街もコンビニもない場所で、不動産屋が10軒も並んで客引きをしている状況だ。高度経済成長時代、日本の不動産バブルを思い起こさせる情景である。韓国が、この段階で不動産に狂ってしまったのである。

     


    『ハンギョレ新聞』(5月8日付)は、「投機の対象になった農地、離れることも帰ってくることもできない農家の人々」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「『地価が高騰しています。高すぎて田舎の人は手が出ません』。京畿道平沢市玄徳面黄山里(ピョンテクシ・ヒョンドクミョン・ファンサンリ)で会ったある農業従事者は、こう言いました。黄山里はカフェやコンビニ一つない静かな農村です。にもかかわらず、これまで都市を離れたことのない私にとって、「見慣れない風景なのに、不思議とどこか親しみのある」場所に感じられたのです。この村の第一印象は、例えるなら「できたばかりのアパート周辺に不動産屋ばかり並んでいる、がらんとした商店街みたい」というものでした。近くに店といえるほどものは一軒も見当たらない静かな村に、不動産屋だけが10軒以上ありました」

     

    平沢(ピョンテク)市は朝鮮半島の中西部の京畿道南部にある。新興の港湾都市であり、韓国海軍第2艦隊及び在韓米軍軍港がある。西は黄海に面している。ソウル市や仁川市に近接した場所だ。それだけに、ソウルの宅地暴騰の連想買いを引き起している。

     


    (2)「ここ3年10カ月間の京畿道の農地取引16万4145件のうち、農地が属する市郡と購入した人が居住する市郡が一致しないケースは、10万5639件(64.%)に達していました。京畿道内でも外部の人による購入の割合は平沢市(ピョンテクシ)が84.%で最も高く、平沢市内でも黄山里は97%で最上位グループでした。実際、ここでは不動産屋が村の進入路に店を構え、外部の人を迎えていました。そして都市でよく見かける現象を目撃することができました」

     

    文政権になって起こった不動産投機の波が、京畿道の農地取引において地元住民でない人たちの取得が64.%。平沢市でも同様に84.%を占めている。明らかに、農業目的の農地購入でないことを示している。現に、不動産屋が軒を連ねて営業しているのだ。この農地法違反行為が、堂々と行なわれていることが不思議である。文政権は、「公正・公平・正義」を売り物にしている。だが、不法行為が見逃されているのだ。

     


    (3)「黄山里の土地の平均価格は最近20年間でおよそ7倍以上も上昇しました。外国人の投資を誘致するための特別経済区域の一つである黄海経済自由区域の造成などで、平沢市に吹き荒れた開発ブームが広く影響を及ぼしましたが、この過程で特に黄山里近くの西海線安仲駅の開発が大きな影響を及ぼしました。立ち遅れた地域の発展が進む過程で、追い出されるかのように、地元の住民が慣れ親しんだ地を離れざるを得なくなる現象が起こっているのです。黄山1里の農地面積の67.%はすでに外部の人の所有になっています。様々な理由で黄山里の住民の多くが小作農になりました。農業をしようとしても、黄山里の土地には手が出ません。高すぎて採算が取れないからです」

     

    下線部のように、鉄道駅が開設されることが契機に農地は値上りしている。後述のように、憲法や法律によって、農地は農業従事者だけが取得できる制限がついている。この法律が無視されて、違法売買が行なわれているのだ。

     


    反日になると、目の色を変えて騒ぎ回る国民が、足元でこういう違法な投機行為が行なわれている。多分、「農地の宅地転用」が簡単に行なわれている結果であろう。典型例は、文大統領である。営農計画書まで出して取得した農地が、後に宅地に地目変更されている。こういう「ザル法」で、韓国農業はどうなるのか。よその国の話であるが、余りにも酷い脱法行為が行なわれている。

     

    日本では、法人の農地取得すら困難を極める厳格運用である。日韓では、法律に対する認識がこれだけ違っている。これが、日韓紛争の原因である。

     


    (4)「憲法や法律にも、農地は農業を営む人しか所有できないと書いてありますが、現実はそれとはかけ離れています。高位公職者の聴聞会で「農地法違反」が問題視されるのは見慣れた風景です。ここ3年10カ月の間、ソウル市民が平沢市民より平沢の農地を2倍多く購入しました。公職者は摘発されれば世間から非難されますが、平沢の農地を購入した“ソウルの農業従事者たち”は、そのような心配など微塵もないでしょう。農村の高齢化とあいまって、農地は本来の目的を失い、次第に「投機性不動産」へと変わりつつあります。それでも村を守りながら農業を営む高齢者たちがいなくなったら、農地には値札だけが残るでしょう」

     

    下線部のように、「農地法」のような法律で農地売買は規制されている。現実は、ザル法である。農地が、「投機性不動産」に化けたとき、韓国農業はどうなるか大きな懸念がつきまとう。韓国は、日本以上のスピードで人口高齢化が進む。真剣なビジョンがない国なのだ。

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    米中首脳会談は5月21日と決まった。米国は、オンラインによるクワッド(日米豪印)首脳会談、日米首脳会談、G7外相会談などを積み上げて、対中国戦略を築き上げている。中国の違法な海洋進出を認めないという強い意志表示である。

     

    最後の仕上げが、米韓首脳会談となった。全ての手順が済んだあと、文大統領にクアッド参加について「イエス」か「ノー」を正式に聞く段取りである。まさかこれまで、米国からその話を聞かなかったとは言えまい。

     

    『中央日報』(5月7日付)は、「バイデン大統領と首脳会談を控えた文在寅大統領へ」と題するコラムを掲載した。筆者は、マイケル・グリーン米国戦略国際問題研究所(CSIS)上級副所長である。米国のアジア戦略に深く関わっている重要人物である

     

    (1)「文大統領は5月21日にジョー・バイデン米大統領と初めての対面会談をします。言うまでもなく最も重要な目的は両首脳が厚い親交を結ぶことです。文大統領は終戦宣言と戦時作戦統制権返還などに対するバイデン大統領の約束を引き出す機会にしたいと考えていると思いますが、攻撃的アプローチ法は一歩間違えれば逆効果となり、来年韓国で新しい大統領が当選するまでホワイトハウスが行動を保留するようにさせかねません。バイデン大統領は、韓国大統領と個人的な親交を深めることを最も重要な目的と考えています。「堅固な」韓米同盟を中国と北朝鮮に証明したいと思っています」

     

    先ず、文氏に釘を刺している。文氏が残り任期1年しかないことから焦って、米国へ要求を出せば何ら得られないどころか今後、文氏を相手にしないであろう。米国は、「堅固な」米韓同盟を中国と北朝鮮に証明したいと願っている、としている。つまり、韓国は米国へ協力して欲しいと言っているのだ。具体的には、「クアッド参加」である。

     

    (2)「米国は北朝鮮に対して「戦略的忍耐」でも「度量が大きい取引」でもない、完全な非核化を前提とした漸進的なアプローチ法を選択するでしょう。北朝鮮が序盤にはこれを拒否する可能性が高いです。ですが、北朝鮮との対話を再開するためには韓日米の連帯の堅固さを示すことが重要です。韓米間で分裂の様子を見せれば北朝鮮は交渉テーブルに出てこようとはしないだろうし、中国は北朝鮮を圧迫するよりは韓米同盟の弱体化に集中しようとするでしょう」

     

    北朝鮮政策では、完全な非核化を前提とした漸進的なアプローチ法を選択する、としている。北朝鮮が約束を守れば、米国もそれに従い制裁を解除するもの。これを実現するには、米韓の強い結束が前提になる。

     

    (3)「米国政府と議会の観点からは、中国との戦略競争が対北政策よりも優先順位がはるかに高いという点を肝に銘じなければなりません。バイデン大統領は中国と真剣な対話に臨むことに先立ち、欧州など同盟国との結束を優先しています。ワシントンでは韓国政府の政策が米国の努力を弱めるのでないか重大な疑問点を持っています大統領は中国に対する懸念を率直に共有し、中国の強圧に対抗し、規則に基盤を置いた国際秩序を強化するために韓国ができる領域はどこか模索しなければなりません」

    米国の立場からすれば、中国問題が第一であり北朝鮮問題は第二である。ワシントンは、韓国が米国の努力を弱めるブレーキなると懸念している。韓国は、これを払拭するように努力して欲しい。中国の強圧に対抗する役割を担って、西側諸国の一員であることを示して欲しい、としているのだ。

    (4)「中国との競争で最も重要分野は技術、特に人工知能(AI)関連技術です。米国政府と議会は半導体およびサプライチェーン投資計画を終えていて、韓国は最も重要な同盟国の一つです。サムスンが米国半導体工場建設計画を確定発表するなら、バイデン大統領に会うときに大きい利点になるでしょう」

    サムスンが、米国へ半導体工場建設を最終決定して貰えれば、米国は歓迎するであろう。

     


    (5)「バイデン大統領は気候変動に関して話をしたいと思っています。大統領がこれらの分野で追加の約束をすれば会談に役立つでしょう。バイデン大統領は韓国のコロナワクチンに対して助ける意向があるでしょう。米国には十分な残余ワクチンがあり、友邦・同盟との「ワクチン外交」の重要性を認識しています」

    韓国が、気候変動抑制に寄与するように、さらなる計画発表することを米国は期待している。米国は、韓国へワクチンも輸出できる余力が生まれてきた。

     

    (6)「ホワイトハウスが今回の会談を通して「堅固な」韓米同盟を証明すると公言した点をよく覚えておいてください。この事実に留意すれば会談でしくじることはないでしょう」

    繰り返せば、韓国が「クアッド参加」の表明によって、米韓同盟は「堅固」なものになる、としている。米韓首脳会談の焦点は、この一点に懸かっている。

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    韓国は、中国の脅迫を恐れてインド太平洋戦略対話の「クアッド」(日米豪印)へ本格的参加を見合わせている。下部の分科会には参加意思を示しているが、義務を負わずに「良いところ取り」という露骨さを見せている。

     

    こうした韓国の外交姿勢に対して、米国は対中戦略において「コリア・パッシング」を明確にした。米韓での直接対話では、中国問題を外して議論していないことが明らかになった。米国は、情報漏洩を恐れ始めているのであろう。

     

    『朝鮮日報』(5月7日付)は、「米国、対中けん制戦線から事実上『コリア・パッシング』」と題する記事を掲載した。

     

    米国は中国けん制を安全保障政策の重要問題としているが、韓国側と会うときだけは中国に関する言及は控えているようだ。実際にロンドンで行われたG7(先進7カ国)外相会議の際に韓米外相会談(3日)と韓米日外相会議(5日)が相次いで開催されたが、いずれも中国問題は議題にならなかった。今回のG7会合期間中、米国のブリンケン国務長官が主要国の外相と会談するたびに「中国」を大きく取り上げたこととは対照的だった。「米国は反中政策に拒否感を示す韓国に期待しなくなったのでは」との懸念の声まで出ている。

     


    (1)「韓米日外相会議とは対照的に、米日外相会談(3日)では中国問題が大きく取り上げられた。会談直後に日本の外務省は「両長官は東シナ海と南シナ海における中国の一方的な現状変更の試みに強く反対した」、「台湾海峡の平和と安定が重要という点、さらに新疆ウイグル自治区の人権問題に対する深刻な懸念を共有した」と説明した。韓米日外相会議で中国問題が取り上げられなかったのは韓国が理由だったと十分推測できる内容だった」

     

    韓国が出席すると中国問題を議論しない。これは明らかに、「コリア・パッシング」である。関心を持たない韓国の前で、中国問題を議論しても時間の無駄であるだけでなく、情報漏洩の懸念すら出てくる。こうなると、韓国は米同盟国の中でも最下等の「外様」扱いになった。

     

    (2)「中国への圧力を最大限強めたとされる今回のG7外相会合後の共同声明も、その内容は米国が中心となって取りまとめられたようだ。声明は東シナ海と南シナ海の周辺情勢に深い懸念を示し、「台湾海峡の平和と安定の重要性」も取り上げられた。とりわけ世界保健機関(WHO)や世界保健総会(WHA)への「台湾の意味ある参加を支持する」との内容には中国が激しく反発するものと予想される」

     

    G7は、一枚岩になって中国へ対抗する姿勢を強めている。その中で韓国は、蚊帳の外に置かれている。韓国は、こういう姿を見て何とも感じないのか。そこまで、中国へ忠誠を誓わざるを得ないとすれば絶句以外にない。朝鮮戦争で侵略した中国へ親近感を示し、韓国と共に戦ってくれた米国へソッポを向く。不思議な感覚である。

     


    (3)「米国は、自分たちが最も関心を持つ中国けん制問題を「先進国の親睦グループ」とも言えるG7で積極的に取り上げたが、その一方で安全保障面での協力がテーマの韓米日外相会議で大きく取り上げなかったのは異例だ。韓国外交部(省に相当)の関係者は、「今回の韓米日外相会議にはさほど多くの時間を取ることができず、最近再検討を終えたバイデン政権による対北朝鮮政策の内容を共有することが重点的に行われた」とコメントした。「中国問題は限定された時間の中で議題としての優先順位が低かったにすぎず、意図して取り上げなかったわけではない」という趣旨の説明だ」

     

    安全保障問題は、国家存立の基盤である。それを保障し合うのが同盟の役割である。韓国は、米韓同盟の意義を軽んじて、侵略国へ手を振っている。この状態では、韓国は、西側同盟国から外れるであろう。中国の狙う「合従連衡」の思う壺である。同盟を破壊して連衡に持込み、相手を飲み込む始皇帝の戦略である。

     

    (4)「このような説明には説得力がない。今年3月に米国のブリンケン国務長官とオースティン国防長官が日本と韓国を相次いで訪問し、その際に行われた外相・国防相会議(2プラス2)でも同じような現象が起こった。当時、米日2プラス2会議後の共同声明には「従来の国際秩序に合わない中国の行動は米日同盟および国際社会に対して政治、経済、軍事、技術面での課題を投げ掛けている」との文言が入った。これを含めて、中国という言葉は3回も登場した」

     

    日米「2+2会議」の共同声明では、中国という言葉が3回登場している。日米間では、中国問題が重大テーマになっている。

     


    (5)「これに対して韓米2プラス2会議後の共同声明には中国という言葉そのものが登場しなかった。これは中国問題について「一致した立場」を表明できなかったことを示すもので、このような流れが韓米日外相会議にまで続いた可能性が高そうだ」

     

    米韓「2+2会議」の共同声明では、中国という言葉がゼロである。米韓では、中国に対して意見の一致がないことを示している。

     

    (6)「今後の関心は、今月21日にワシントンで開催される韓米首脳会談だ。ある外交官幹部OBは「今、外交当局は中国問題が韓米首脳会談の主要な議題とならないよう力を集中しているはずだ」、「このままでは韓国が米国と安全保障政策の哲学を共有できない国として認識されないか心配だ」と懸念を示した」

     

    韓国は、北朝鮮と親密になりたいばかりに中国へ気遣いしている。だが、気遣いすべき本当の相手は米国のはずだ。米中対立の帰趨は、同盟国を率いる米国が勝利することは決定的である。中国経済の「日没する」現状をつぶさに分析すれば、そういう結論に達するであろう。現在の米国が遮二無二、景気加速に立ち上がっているのは、パンデミック後に中国を大きく引離す意図である。それによって、中国の「戦意」を挫く戦略である。韓国は、そういう米国の意図を読めずに盲目になっている。溺れる側へ接近しているのだ。

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