日米首脳会談後、菅首相はファイザー社CEOとの電話会談で、ワクチンの増量入手を決めた。韓国が、これに強く刺激されている。憎い日本が、ファイザー・ワクチンの輸入増加に成功したので、韓国も引くに引けない立場のようである。
米韓首脳会談は、5月下旬の開催予定である。外交部長官はその際、ワクチンと半導体のスワップ取引を米国へ提案するという。だが、米韓首脳会談のメインテーマは、インド太平洋戦略の安全保障問題である。韓国は、この肝心な点について曖昧にして、半導体・ワクチンのスワップ取引を持ち出せば、米国は驚くであろう。日米会談でも、ワクチン問題はテーマに上がっていなかった。
韓国は半導体を取り上げているが、民間企業であるサムスンの領域である。サムスンの経営にまで介入することは越権行為なのだ。サムスンは、米国での設備投資について明確な意思を示さない限り、政府があれこれ話題にできないはず。それよりも、クアッド問題に対して、意思表示が必要である。話題をはぐらかしてはダメなのだ。
『朝鮮日報』(4月22日付)は、「今急がれるのは韓米『半導体・ワクチン同盟』」と題する記事を掲載した。
(1)「英経済誌『エコノミスト』(4月17日号)は、「米国のバイデン政権はより多くのコロナワクチンを確保するため、ワクチンの原料と製造設備の輸出を統制する国防生産法(DPA)を施行し、米国外でのワクチン生産が難しくなっている」と報じた。米国がワクチンにおいて自国優先主義に乗り出したことで、他国によるワクチン確保がさらに難しくなっているというのだ」
現在の米国は、ワクチン輸出に向かって舵を切っている。中ロが、「ワクチン外交」を行なっていることから、米国も遅ればせながらワクチン輸出に取り組む。韓国は、こういう米国のワクチン外交について、ほとんど情報を掴んでいないようだ。
(2)「米国が、このようにワクチンを戦略武器として取り扱い、ワクチンの物量確保に乗り出した結果、韓国におけるワクチン導入のスケジュールにも大きな支障が出ている。韓国政府は当初、今年9月までに全人口の60~70%にワクチン接種を終わらせ、11月までに集団免疫を獲得する計画だった。ところが、アストラゼネカとヤンセンのワクチンによる副作用、さらにはファイザーやモデルナのワクチン供給遅延によってその実現が難しくなることへの懸念が高まっている」
米国では、ファイザーやモデルナが増産体制を取っているので早晩、過剰供給になる見込みだ。米国による「ワクチン外交」の展開を考えれば、「ワクチン・モンロー主義」に拘るはずはない。
(3)「このような状況を突破するため、「米国のバイデン大統領が進める米国中心の半導体サプライチェーン構築に韓国企業が積極的に参加することへの見返りに、米国からワクチンの供給を受けるべきだ」との主張が産業界を中心に出始めている。「半導体・ワクチンの韓米同盟」を構築するということだ。昨年末から始まった半導体の供給不足は米国の主力産業である自動車工場をストップさせ、さらにはハイテク産業全般にその影響が広がりつつある」
韓国は、「クアッド」についての議論が飛んでしまい、「ワクチン・半導体」スワップ取引に集中している。半導体・バッテリー・レアアース・医薬品の4種が戦略物資として取り上げられている。これは、「クアッド」の一環である。安全保障問題を素通りして、自国だけのメリット追及では、余りにも露骨な話になる。肝心の対中国の防衛戦略には加わらず、「ワクチン・半導体」議論をすれば、米国からピシャリとやられるだろう。相互の譲歩があって、初めて同盟が成立するのだ。
(4)「バイデン大統領は今月12日、ホワイトハウスで米国国内への半導体投資を複数の企業に直接要求した。サムスン電子は、20兆ウォン(約1兆9300億円)規模を投資する米国半導体工場のライン増設を検討しているが、現時点で最終決定は出せていない。サムスン電子の半導体ライン増設は経済的な効果や産業全体への波及力、雇用増進などあらゆる面で韓国が米国に提示できる最高の交渉カードと評価されている」
サムスンの経営トップである李在鎔(イ・ジェヨン)副会長は現在、贈賄罪で収監中である。最近は、李氏を恩赦にして米国での半導体投資の指揮を執らせろという意見まで飛び交っている。ワクチン入手にまつわる話だ。仮に恩赦となれば、世界の物笑いの種となろう。
(5)「盆唐ソウル大学病院のソ・ジョンソン碩座(せきざ)教授は、「米国が何の条件もなしにワクチンを提供することはあり得ない。そのため韓国が持つ最も強力な武器である半導体を積極的に活用すべきだ」とした上で「サムスン電子の李在鎔副会長のように、世界的なネットワークを持つ企業経営者が動いて米国への投資、米国企業に必要な半導体の優先供給を提案すれば、米国を動かせる可能性が高くなる」と主張した」
韓国は、ワクチン入手のために大騒ぎである。インド太平洋戦略という重大なテーマについては、議論の俎上にも上げず目先の問題で右往左往している。これまでの、「中国詣」でから言えば、中国製ワクチン輸入が話題に上がってもいいはずである。だが、全くゼロである。代ってロシア製ワクチン輸入が議論されている。中国は、見限られているのだ。