勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 韓国経済ニュース時評

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    韓国は、依然として福島原発のトリチウム海洋放出問題で大揺れである。韓国大学生進歩連合に所属する学生らが20日午後、ソウル市鍾路区の日本大使館前で、処理水の海洋放出を糾弾して断髪式を行う騒ぎになっている。一列に座って男子学生が、断髪している光景を報道陣に見せつけている。パフォーマンスである。

     

    韓国進歩派は、西側社会での進歩派という概念と違い「民族主義」である。通常は、保守派に分類されるが、韓国では進歩派を名乗っているから厄介である。

     

    国会では、鄭義溶(チョン・ウィヨン)外交部長官が20日、国会外交統一委員会による緊急懸案質疑で、日本政府が東京電力福島第1原発の処理水を海洋放出する方針を決めたことについて、「断固として反対していることを強調したい」と答弁し、19日に「国際原子力機関(IAEA)の基準に合う適合な手続きに従うならあえて(海洋放出に)反対しない」とした発言について釈明した。こちらも、前言を翻すような言動である。

     


    『聯合ニュース』(4月20日付)は、「海洋放出巡る発言で与党も外相叱責 『国民の情緒と違う』=韓国国会」と題する記事を掲載した。

     

    韓国の国会外交統一委員会は20日、日本政府が東京電力福島第1原発の処理水を海洋放出する方針を決めたことを巡り緊急懸案質疑を行った。委員会では鄭義溶(チョン・ウィヨン)外交部長官への叱責(しっせき)が相次いだ。

     

    (1)「鄭氏は19日、国会で開かれた対政府質疑で海洋放出について「国際原子力機関(IAEA)の基準に合う適合な手続きに従うならあえて反対しない」と述べ、条件付きで放出を認めるような発言をした。この発言に対し、与党「共に民主党」の李相ミン(イ・サンミン)議員は「国民の情緒や要求と違い、混線を招く憂慮がある」と批判。同党の李在汀(イ・ジェジョン)議員は「日本の汚染水放出を防げないということを前提とし、無気力に対応した」と指摘した」

     

    下線部が、韓国社会の特色を示している。「国民の情緒」が全てを決める社会である。裁判結果すら、国民の気分を害してはならぬという不文律がある。「反日」は、まさに韓国情緒の最高位にある。それゆえ、福島原発トリチウム問題は、科学の問題でなく「反日問題」となっている。文大統領は、「国際海洋法裁判所へ訴える」と気勢を上げただけに、国民感情を鎮めるには難儀するであろう。韓国は、科学という客観的尺度が通用しない「未開社会」である。

     

    (2)「鄭氏は、「メディアが(発言の)一部分だけを切り取って報道した」とし、「メディアのヘッドラインの書き方を非常に残念に思っている」と釈明した」

     

    鄭外交部長官は早速、メディアの報道責任へ擦り付けている。トリチウム放出は、感情論で対応できる問題でない。風評を生むからである。「風評大好き」韓国だけに、政府はIAEA(国際原子力機関)と国民情緒の間に挟まって苦労するに違いない。

     

    『聯合ニュース』(4月20日付)は、「海洋放出巡る発言について釈明、『反対のための反対ではない』―韓国外相」と題する記事を掲載した。

     

    (3)「鄭氏は、「国際原子力機関(IAEA)の基準に合う適合な手続きに従うならあえて反対しない」と述べたことについて、議会で次のように釈明した。「一部で政府が反対のための反対をしているのではないか、日本がやれば無条件で反対するのではないかという指摘があり、『そうではない』という趣旨で発言したもの」として、「条件が満たされればなぜ反対するのかという趣旨だった」と説明した」

     

    外交部は、文大統領の強硬論との間に立って苦悩している。日韓関係が最悪事態の中で、トリチウム放出問題が重なり、あえて日本と対立したくないという思いもある。それが、「国際原子力機関(IAEA)の基準に合う適合な手続きに従うならあえて反対しない」という言葉になったのだろう。米国も、IAEAの路線に立っているからだ。

     


    (4)「鄭氏は海洋放出を巡り、「現在把握しているところでは、前向きな反応を示した国は米国が唯一だ」とし、米側に対して主張の根拠を示すよう求めたと答弁。汚染水ではなく「処理水」という表現を使った科学的な根拠、日本の決定が透明に行われたと評価した根拠、世界的な安全基準に合致すると判断した根拠などについて、米国に問い合わせたと明かした。また、「南北を含む太平洋沿岸国5カ国は日本の措置に対して強く批判した」と指摘し、「中国は韓国よりもはるかに強硬な立場を発表した」と述べた。その上で、日本の決定の問題点が国際社会でも広く議論されるよう取り組む方針を明らかにした」

     

    韓国は、日本政府から100回もの説明を受けてきた。福島原発の処理水が、汚水でないことも知っているはずだ。それを、あたかも「初耳」のように振る舞っている。卑怯な態度だ。中国が強硬姿勢は、日米同盟の強固な姿勢への反発に過ぎない。「江戸の仇を長崎で打つ」類いのものである。中国に大義はない。

     

    (5)「鄭氏は、「『静かな外交』で解決するものではない」とし、「国際海洋法裁判所への提訴は2018年10月から検討してきた」と表明。日本が国際法上の義務を履行しない場合、紛争解決手続きに進む準備を徹底して行っていると伝えた」

     

    韓国は、衣の下から鎧がちらつかせている。国際海洋法裁判所への提訴を検討してきたというのだ。日本は、IAEAと4回も打ち合わせて遺漏なきを期している。韓国に、尻尾を掴まれるようなヘマをするはずない。正攻法である。

     

    次の記事もご参考に。

    2021-04-18

    韓国、「身勝手」米紙で紹介されたネロナムブル 福島トリチウム反対が「典型例」

    2021-04-20

    韓国、「腰砕け」福島トリチウム、米国の不介入で反対断念し海洋放出を認める「不様」

     

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    韓国は、福島原発トリチウムの海洋放出に対して、国を挙げて「絶対反対」と叫んでいた。文大統領は、国際司法裁判所へ訴える準備をせよと言うほどであった。だが、外交部長官が4月19日、IAEA(国際原子力機関)と協議することを前提にして、日本政府の海洋放出方針を認めると発表した。

     

    『聯合ニュース』(4月19日付)は、「海洋放出、IAEA基準に従うなら反対せず=韓国外相」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「韓国の鄭義溶(チョン・ウィヨン)外交部長官は19日、国会で開かれた対政府質疑で、日本政府が東京電力福島第1原発の処理済み汚染水を海洋放出する方針を決めたことについて、「国際原子力機関(IAEA)の基準に合う適合な手続きに従うならあえて反対しない」と答弁した。その上で、「反対するというよりは国民の健康と安全を最優先にしながら、日本に三つ程度を一貫して要請している」と説明。「一つ目は十分な科学的な根拠提示と情報を十分に共有すること、二つ目はより十分に事前協議を行うこと、三つ目はIAEAの検証へのわれわれの専門家か研究所代表の参加保証」と述べた」

     

    韓国は、日本政府から過去100回にわたる説明を受けているにもかかわらず、「抜き打ち発表」などと、言いがかりをつけ反対姿勢を打ち出した。明らかに、政治問題化させる意図であった。

     

    ところが、ケリー米大統領特使が韓国の思惑を否定する発言をした結果、「反日」の狼煙を取り下げるという無様な形となった。ケリー氏は、次のように述べた。

     

    「日本はIAEAと非常に緊密に協力している。今後もそうであることを確信する。すでに日本政府によって進行中であり、非常に明確な規定と期待値がある(検証)手続きについて、米国が飛び入りするのは適切でない」との考えを示した。これは、韓国が、米国を海洋放出に反対させようという魂胆の破綻を示していた。

     

    韓国は、米国が一緒に反対へ回らないと分かったので、大急ぎで反対論を引っ込めたもの。韓国は、すぐに中国と電話会議を開き「中韓共闘」を狙ったが、韓国の心変わりで空中分解する運命になった。

     

    (2)「米国が、海洋放出決定を支持する立場を示したことに関しては、「米政府も汚染水の放出問題はIAEAの適合性判定を受けるべきだという基本原則はわれわれと同じ」との見解を示した。ただ、「米国の発表内容はわが政府の判断とは異なる部分が多く、さまざまな経路で米側にわれわれの立場を明確に説明し、理解を求めた」と述べた。また、「日本が汚染水の放出決定を履行する場合はさまざまな実効的な対応策をすべて検討している」と明らかにした」。

     

    米国は、海流から見て福島原発のトリチウム海洋放出で、韓国よりも早く影響を受ける立地にある。その米国が、「無害」であると発言している以上、韓国が横車を押すことは無理であった。

     

    韓国は、IAEAの立場を極端に軽く見ていた。その証拠は、文政権支持メディア『ハンギョレ新聞』の論調に見て取れる。

     


    『ハンギョレ新聞』(4月15日付)は、「IAEAと米国はなぜ日本の汚染水放出決定を支持したのか」と題する記事を掲載した。

     

    日本政府が4月13日、福島第一原発の汚染水の海への放出を決定したことに対し、米国と国際原子力機関(IAEA)が相次いで支持声明を発表したことについて、その背景に関心が集まっている。韓国や中国、ロシアなどの隣国が強く反発する中、米国とIAEAはなぜはばかりもなく日本を支持するのだろうか。

     

    (3)「原発大国の一つである日本のIAEAでの影響力は強い。韓国外交部の資料によると、IAEAの正規予算の分担率で日本は8.2%を占め、米国(25%)、中国(11.6%)に次いで3番目に多い。汚染水の海への放出を支持した米国と日本を合わせれば33.2%となり、圧倒的な分担率を占める。韓国は2.2%で11位だ。また、前事務局長は日本の天野之弥氏だ。天野前事務局長は、2009年から死去する2019年までの10年にわたって事務局長を務めた」

     

    トリチュウムという放射性物質の扱いは、純然たる科学上の問題である。それを、このように日本の出資比率や功労者である天野前IAEA事務局長の就任まで引っ張り出して、悪口を並べ立てた。韓国の「下劣さ」が滲み出た記事である。国際機関が、こういう政治的な要因で左右されるはずがないのだ。

     


    (4)「この間、日本の汚染水放出に特に言及していなかった米国による即時の支持声明については、「意外」との反応が多い。気候変動などの環境問題に大きな関心を示してきたジョー・バイデン政権が、海洋生態系や水産物を食べる周辺国に大きな被害を及ぼす可能性のある汚染水の放出を支持したからだ。最近、中国を牽制するうえで、日本の協力がいつになく重要となってきていることで、外交的観点から協力したとみられる」

     

    米国が、「正論」を述べていることにまで悪態をついている。米国は、日本を反中連合に引き込むために、あえてトリチウム放出問題で日本側に付いていると邪推を回しているのだ。これが、韓国進歩派を名乗る新聞の正体である。韓国の「朝日新聞」と言われるが、実態はこの程度なのだ。

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    韓国は、日米首脳会談に対して複雑な反応を見せている。

     

    政権支持メディア『ハンギョレ新聞』(4月19日付)は、「米日首脳会談で米国が望む『強力な中国けん制』に賛同した菅義偉首相が、その見返りとしてバイデン米大統領の東京五輪支持と米製薬会社からの新型コロナワクチンの追加供給を得たものとみられる」と見当違いも甚だしい報道がされている。

     

    中国が、海洋進出を急いでいる背景への認識を欠いて、東京五輪支持と米製薬会社からの新型コロナワクチンの追加供給を認めた、とする報道は自殺的ですらある。これが韓国政府の偽らざる見方とすれば、韓国外交は重大な「認知症」を患っているというほかない。一方では、まともな報道もある。それを紹介したい。

     


    『韓国経済新聞』(4月19日付)は、「日米首脳『中国牽制』で足並み…『来月訪米』文大統領、選択肢が狭くなる」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「日米首相が52年ぶりに両国の共同声明に台湾を明記して「対中国包囲網」を強化することにした。両国首脳は北朝鮮の完全な非核化と韓日米3カ国連携の必要性を再確認した。6世代(6G)移動通信の開発に計45億ドル(約4890億円)を投資するなど経済部門でも中国を積極的に牽制することにした。日本が中国を牽制しようとする米国の動きに力を加えると、米中の間で「綱渡り外交」を展開してきた韓国政府は、来月末韓米首脳会談を控えてより大きな苦悩に陥ることになった」

     

    韓国は日米共同声明によって、一ヶ月後の米韓首脳会談に臨む戦略の再検討を迫られているはずだ。これまでの米中「二股外交」が、極めて困難になったという現実を再認識させられているであろう。日米共同声明を「模範解答」とすれば、韓国はどういう答案を書くのか、である。

     


    (2)「ジョー・バイデン米国大統領と菅義偉首相は16日、ホワイトハウスで開かれた日米首脳会談以降「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し、両岸(中国と台湾)問題の平和的解決を促す」という内容の共同声明を発表した。両国首脳が共同声明に台湾を明記したのは1969年11月リチャード・ニクソン元米大統領と佐藤栄作元首相の会談以来52年ぶりだ。日中修交(1972年)と米中修交(1979年)以降今まで両国首脳会談で台湾を触れたことはなかった。今回の首脳会談で台湾問題が取り上げられたのは、同盟国との関係を活用して中国を牽制しようとするバイデン大統領の戦略に菅首相が呼応したと分析される。共同声明には香港と新疆ウイグル自治区の人権問題に対する懸念など中国を圧迫する多数の内容が含まれた」

     

    日米が台湾問題に触れたことは、中国による台湾海峡の侵犯が軍事衝突を生みかねない危険性を帯びているからだ。中国の軍事行動をけん制するためには、やむを得ない措置と言えるだろう。日本にとって台湾問題は、対岸の火事でないのだ。台湾が中国の支配下になれば、沖縄の安全保障に重大な懸念をもたらす。

     


    (3)「日本が中国と領土紛争を繰り広げている尖閣諸島(中国名・釣魚島)で米国が共同防御体制を構築するという意志を明らかにした。菅政権が最優先課題として前面に出している北朝鮮の日本人拉致問題を解決することにも米国が協力することにした。両国は北朝鮮の完全な非核化という共同の目標を再確認し、地域の平和と繁栄のために韓日米3カ国の協力が重要だということで一致した。中国政府は「内政干渉」として強く反発した」

     

    日米が、北朝鮮の完全な非核化を共同目標にしたことは、文政権にとって痛手である。韓国は、朝鮮戦争終結案を主張するという「暢気」な対応である。日米が厳しい対応を求めるのと対極の動きなのだ。日米韓三ヶ国で北朝鮮問題に対応するという原則から言えば、韓国は日米共同声明に沿わざるを得まい。重大な路線変更である。

     

    (4)「中国政府は、前日発表した立場文で日米首脳の声明に対して「中国の内政を激しく干渉し、国際関係の基本準則を深刻に違反した」と批判した。台湾や香港、新疆問題は中国の内政という点と日本との領有権紛争地である釣魚島は中国の領土だと再度主張した」

     

    中国は、「内政干渉するな」と主張している。これは、選挙で選ばれていない政権が、好き勝手なことをする権利を保証されることではない。国際的なルールである人権などの厳守が要求されるのだ。中国の主張が間違っている。

     


    (5)「経済部門でも中国を牽制するための様々な合意が行われた。バイデン大統領と菅首相は、「日米競争力・強靱性( コア)パートナーシップ」を発足して半導体と次世代移動通信技術の開発、脱石炭化などを米国と日本が主導していくことにした。このため、両国は次世代移動通信人6G技術にそれぞれ25億ドルと20億ドルの計45億ドルを投資する方針を共同声明の付属文書に盛り込んだ。ファーウェイ(華為技術)とZTEなど中国通信会社が世界5G市場の40%を占める状況を深刻に認識し、6G市場では早目に主導権を握るための戦略と解釈される。バイデン大統領は「信頼できる事業者が5Gの安全性と開放性に寄与すべきだ」と強調した」

     

    日米の共同技術開発は、韓国にとって極めて魅力あるテーマである。韓国経済の先細り状況を考えれば、ここは何としても参加したいテーマのはずである。だが二股外交をやって、この共同技術開発の余禄も得たいという訳にはいかないのだ。韓国にとっては、実に悩ましい選択である。

     


    (6)「日米両国は、多国間連携を通じて次世代の移動通信技術だけでなく、国際標準化部門でも主導権を握るためにともに取り組むことで一致した。半導体のサプライチェーンの再編に協力し、人工知能(AI)および両者コンピュータなどの共同研究も推進する。バイデン大統領は「米日両国の技術は専制主義でなく、民主主義によって共有される方式で管理されるだろう」とし、中国を牽制しようとする意図を隠さなかった」

     

    日米は、技術の国際標準化でも世界をリードする構えである。日米の技術を総合化すれば、難しい問題でなくなる。ここまで協力する米国が、TPP(環太平洋経済連携協定)へ復帰しない理由がなくなる。一日も早いTPP復帰が望まれるのだ。さて、韓国はどうするか。日本と敵対しているデメリットをひしひしと感じるであろう。

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    韓国は、クアッド加入を明らかにしていない。だが、中国との関係を苦慮して「曖昧戦術」をとっている気配もする。今回の日米首脳会談における日米の濃密な関係を見せつけられると、微妙な気持ちにもなろう。

     

    日本が日米首脳会談の番外編で、菅首相はファイザー社CEOと電話協議し、ワクチンの供給増(量は不明)の約束を交わした。河野担当相は18日、日本人(16歳以上)全員の接種を9月末までに終えるメドがついたと発表した。

     

    韓国では、洪楠基(ホン・ナムギ)首相代行が18日、ワクチン接種について「4月までに300万人、6月までに1200万人」との目標を示した程度である。このワクチンに関する日韓の違いを見ると、米国との親密度がはっきりとワクチン供給量に現れている感じが否めないのだ。

     


    韓国は、日米の親密度を見せつけられて、疎外感を強めているはずだ。米同盟国の中で、日本は「親藩」に格上げされている。つまり、英国や豪州と同じ扱いになっている。一方の韓国は、「外様」へと格下げである。関ヶ原の戦い後、徳川家についた大名と同じ扱いに下がっている。朝鮮戦争では血を流して共に戦った米韓が、すっかり隙間風が吹いているのだ。ワクチン問題で、日韓の差が出ている背景にそれを感じざるを得ない。

     

    『朝鮮日報』(4月12日付)は、「中国をけん制するクアッド入りを拒んだ韓国 民主主義国家の間で自ら孤立」と題する記事を掲載した。米国の大手シンクタンクの一つである戦略国際問題研究所(CSIS)の副所長、ビクター・チャ氏が、次のように記者の質問に答えている。

     

    (1)「(質問)今年2月に米議会上院のメネンデス外交委員長が本紙とのインタビューで「文大統領が中国共産党創立100周年を祝ったことに失望した」と述べた。どう考えるか。

    (答え)中国に対抗するため各国による連合体が組織されている。オーストラリア、日本、米国、英国などは結集を始めた。これに参加しない国の一つがすなわち韓国だ。韓国は同じような考えを持つ民主主義国家の間で自ら孤立を招いていると懸念している」

     

    韓国だけ中国共産党創立100周年を祝っている。民主主義を否定する中国共産党へ祝意を述べる韓国の振舞が目立つのだ。韓国は、民主主義国の中で孤立している。

     


    (2)「(質問)この問題でチャ氏は一つの図を示した。米国、日本、オーストラリア、インドの連合体であるクアッド4カ国と韓国がそれぞれどれだけ連結されているかを示すものだった。この図は何を意味するのか。

    (答え)米国、日本、オーストラリア、インドの間は実線や点線など複数の形で互いにつながっている。相互関係がいかに活発かを示している。ところが韓国は他国とつながった実線が一つもなく点線だけだ。現時点で参加が正式に決まったプロジェクトはなく、基本的に(米中間であいまいな態度を取る)ヘッジング(リスクに対して保険をかけること)をしていることを意味する。他国と比較して韓国が距離を置いていることが分かる。非常に懸念すべき方向に向いているのだ」

     

    韓国は、クアッド4ヶ国の日米豪印と何らの関係もなく、孤立していることが分かる。それだけ、中国との関係を重視している証に見える。異常である。

     


    (3)「(質問)このような懸念は米国にもかなり広がっているのか?

    (答え)バイデン政権の関係者にこの図を見せるたびに、誰もがこれを欲しがる。韓国が離れつつあるとの懸念と一致するからだ。人権問題もこれとつながっている。韓国は香港や新疆ウイグル自治区について特に何も言っていない。そのため韓国が(米国の同盟国の中で)弱点になっていると心配している。バイデン政権はこの弱点を強化したいと考えている。そのためCSISは韓米同盟に向けた提言を行った。トランプ前政権の4年間、そして文在寅政権の4年間に(韓米同盟は)弱体化した。人権問題はその中の一つの要素だ」

     

    韓国は、民主主義国でありながら、クアッドとの関係はゼロである。中国の人権問題でも沈黙している。不気味である。

     

    (4)「(質問)何が最も大きな問題なのか。

    (答え)結局はいつも北朝鮮との関連がある。韓国は中国に対抗する意思が弱い。北朝鮮問題で(中国との協力関係が)害されると考えているからだ。THAAD(高高度防衛ミサイル)報復も非常に強い印象を残した。あのようなことがまた起こらないことを願うということだ。しかし私の見立てではこのような論理は少しおかしい。(中国からの)報復を恐れるのであれば、自分だけでなく(対抗する)グループに参加した方がよい。それは事実だ。クアッドがとても良い例だ。(米国では)専門家の多くが『韓国はクアッドに参加すべきだ』と考えている。誰もが韓国のクアッド参加は必要と考えているのだ。ところが私の理解では、韓国はクアッドへの参加要請を受けたにもかかわらずこれを断った」

     

    下線のように、韓国は中国を怖ければクアッドに入るべきだが入らない。クアッドから孤立して中国を恐れている。まことに不思議な構図になっている。

     

    (5)「(質問)これまで韓国政府は「クアッドに参加している国からの加入要請はない」と主張してきた。「韓国が加入したくても日本が反対する」という見方もある。

    (答え)その点についてはバイデン政権の関係者から直接話を聞いた。韓国がクアッドへの参加を希望するなら何の問題もないということだ。日本を含む全ての参加国も問題提起はしないということだった。クアッドがやるべきことの中で、韓国が同意できないことは何一つない。(東南アジアに)ワクチンを供給することや、安全なサプライチェーンの構築などだ。たとえ日本が反対したとしても、米国がこれを受け入れるようにしただろう」

     

    韓国の悪質なところは、必ず誰かを悪者にして責任を回避することだ。クアッドへ加入しない理由を「日本の反対」のせいにしている。小児病的な退行現象というべきだ。

     

     

     

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    文在寅の思惑が大外れへ

    日韓の置かれた同一条件

    韓国の人権論は日本向け

    中国の日本威嚇は空鉄砲

     

    日米首脳会談が4月16日(現地時間)、ワシントンで開催された。米国は、対外戦略で中国との競争に打勝つことを最大目標に掲げている。インド太平洋戦略「クアッド」(日米豪印)は、そのマジノ線に位置づけられた。日本はその核である。バイデン米大統領が、最初の対面による首脳会談相手に菅首相を選んだのは当然であろう。

     

    米国は、中国の世界覇権への挑戦を絶対に退ける強い意志で臨んでいる。日本が数ある米同盟国の中で、最大のパートナーになっていることは、日韓関係にも微妙な変化を与えている。日韓関係が悪化しても、従来のような米国の仲裁する動きが全く見られないことだ。日韓関係がひび割れした理由は、韓国の国際法違反にある以上、米国は日本へ妥協を求める訳にいかないのである。

     


    米国は、中国に対して国際法遵守を要求している。この立場から、国際法違反の判決を二度も続けて出した韓国に対して、米国が是認できるはずがない。韓国はこういう国際法的な視点がゼロである。日本を悪者にすれば、米国が中に入って仲裁してくれるという甘えが今もつきまとっている。

     

    卑近の例で言えば、日本が福島原発の処理水であるトリチウムをIAEA(国際原子力機関)との話合い(過去4回)をベースに、2年後の海洋放出を決定した。この間、各国外交団に事態の顛末を100回も説明してきた。それにも関わらず、韓国は日本の一方的決定と非難している。米国は、日本の措置に賛成する旨の国務省談話を発表した。

     

    韓国は4月17日、米大統領特使で気候変動問題を担当するケリー氏をソウルに招き、日本の「悪行」を訴え善処を求めたが不首尾だった。ケリー氏は、「日本はIAEAと非常に緊密に協力して解決策を進めてきた。すでに両者の連携が進行中で、非常に明確な規定と期待値がある手続きの中に、米国が飛び入るのは適切でない」と述べた。韓国が、反日目的で米国を引き込む目論見は失敗したのである。

     

    文在寅の思惑が大外れへ

    日米関係の一段の緊密化は、米韓関係の位置をより低いものにさせている。私は、韓国が明確に「クアッド」加入姿勢を示さない限り、「外様大名」の位置に引き下がると指摘してきたが、先のケリー氏の発言はそれを雄弁に物語っている。実は、先の日米首脳会談の成果は、5月下旬に予定されている米韓首脳会談の成り行きに大きな影響を与えると考えられる。韓国は、日米首脳会談の結果をかなり追認させられると見るべきだろう。韓国が、最も関心を持つ北朝鮮問題は、日米首脳会談で決まった北朝鮮政策にそったものにならざるを得まい。

     

    文大統領は、南北問題解決において韓国が運転台に座ると強調してきた。現状は、日米韓三カ国が「共同運転」する形になっている。北朝鮮のミサイルが、日米の安全保障に大きな脅威になってきた以上、もはや韓国の一存で決められる問題でなくなったのである。韓国は、こうした情勢変化を見落としている。南北の話合いがベースとなって、解決策を見つけられるという妄想に浸っているのだ。そういう安易な解決段階は、とうに過ぎている。

     


    ここで、日米首脳会談の概略を見ておきたい。

     

    1)台湾海峡の平和と安定の重要性を強調

    2)日米安保条約5条を尖閣諸島へ適用することを再確認する

    3)半導体などのサプライチェーンで連携

    4)香港や新疆ウイグル自治区の人権状況への深刻な懸念共有

    5)脱炭素へ2030年までに確固たる態度を取る

    6)日本の今夏の五輪開催への努力を支持

     

    上記6項目中、韓国と無関係なのは2)と6)である。他は、すべて韓国も関係している。その意味で、日米首脳会談の共同声明は、5月下旬に予定されている米韓首脳会談の「ひな形」と見るべきだろう。米国は、あえて米韓首脳会談を日米首脳会談よりも1ヶ月以上遅らせ、韓国に決意を迫っていると考えられる。米韓首脳会談の共同声明が、日米首脳会談よりも「低級」であれば、中国に付け入る機会を与えかねないのだ。となれば、米国が韓国へも強い姿勢で迫ることが予測できよう。

     

    日韓の置かれた同一条件

    前記の主要項目について、私のコメントを記しておきたい。

     

    1)台湾海峡の平和と安定の重要性を強調している点は、韓国も無縁でない。日米共同声明で「台湾」が明記されたのは52年ぶりである。米中関係が、米ソ対立の冷戦時代へ逆戻りしているという意味だ。韓国には、そのような認識はゼロである。よりによって、鄭義溶(チョン・ウィヨン)外交部長官が4月2、3日に中国を訪問し、王毅外相と会談した。その席で、中韓外務・国防「2+2会議」の開催を決めた。出席者のレベルは低くすると言う。

     

    米中対立が深刻化している中で、米同盟国の韓国が中国へ接近するのは何とも不思議な現象である。多分、国際情勢が急変していることへの認識が不足している結果であろう。米韓首脳会談では、この点を米国から糺されるであろう。(つづく)

     

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    メルマガ245号 文在寅「天誅下る」 次期大統領選は野党勝利 政権交代で「被告席」

    2021-04-15

    メルマガ249号 文在寅が国民から「三下り半」 空理・空論では民の暮し立たず「若者反乱」

     

     

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