韓国は、依然として福島原発のトリチウム海洋放出問題で大揺れである。韓国大学生進歩連合に所属する学生らが20日午後、ソウル市鍾路区の日本大使館前で、処理水の海洋放出を糾弾して断髪式を行う騒ぎになっている。一列に座って男子学生が、断髪している光景を報道陣に見せつけている。パフォーマンスである。
韓国進歩派は、西側社会での進歩派という概念と違い「民族主義」である。通常は、保守派に分類されるが、韓国では進歩派を名乗っているから厄介である。
国会では、鄭義溶(チョン・ウィヨン)外交部長官が20日、国会外交統一委員会による緊急懸案質疑で、日本政府が東京電力福島第1原発の処理水を海洋放出する方針を決めたことについて、「断固として反対していることを強調したい」と答弁し、19日に「国際原子力機関(IAEA)の基準に合う適合な手続きに従うならあえて(海洋放出に)反対しない」とした発言について釈明した。こちらも、前言を翻すような言動である。
『聯合ニュース』(4月20日付)は、「海洋放出巡る発言で与党も外相叱責 『国民の情緒と違う』=韓国国会」と題する記事を掲載した。
韓国の国会外交統一委員会は20日、日本政府が東京電力福島第1原発の処理水を海洋放出する方針を決めたことを巡り緊急懸案質疑を行った。委員会では鄭義溶(チョン・ウィヨン)外交部長官への叱責(しっせき)が相次いだ。
(1)「鄭氏は19日、国会で開かれた対政府質疑で海洋放出について「国際原子力機関(IAEA)の基準に合う適合な手続きに従うならあえて反対しない」と述べ、条件付きで放出を認めるような発言をした。この発言に対し、与党「共に民主党」の李相ミン(イ・サンミン)議員は「国民の情緒や要求と違い、混線を招く憂慮がある」と批判。同党の李在汀(イ・ジェジョン)議員は「日本の汚染水放出を防げないということを前提とし、無気力に対応した」と指摘した」
下線部が、韓国社会の特色を示している。「国民の情緒」が全てを決める社会である。裁判結果すら、国民の気分を害してはならぬという不文律がある。「反日」は、まさに韓国情緒の最高位にある。それゆえ、福島原発トリチウム問題は、科学の問題でなく「反日問題」となっている。文大統領は、「国際海洋法裁判所へ訴える」と気勢を上げただけに、国民感情を鎮めるには難儀するであろう。韓国は、科学という客観的尺度が通用しない「未開社会」である。
(2)「鄭氏は、「メディアが(発言の)一部分だけを切り取って報道した」とし、「メディアのヘッドラインの書き方を非常に残念に思っている」と釈明した」
鄭外交部長官は早速、メディアの報道責任へ擦り付けている。トリチウム放出は、感情論で対応できる問題でない。風評を生むからである。「風評大好き」韓国だけに、政府はIAEA(国際原子力機関)と国民情緒の間に挟まって苦労するに違いない。
『聯合ニュース』(4月20日付)は、「海洋放出巡る発言について釈明、『反対のための反対ではない』―韓国外相」と題する記事を掲載した。
(3)「鄭氏は、「国際原子力機関(IAEA)の基準に合う適合な手続きに従うならあえて反対しない」と述べたことについて、議会で次のように釈明した。「一部で政府が反対のための反対をしているのではないか、日本がやれば無条件で反対するのではないかという指摘があり、『そうではない』という趣旨で発言したもの」として、「条件が満たされればなぜ反対するのかという趣旨だった」と説明した」
外交部は、文大統領の強硬論との間に立って苦悩している。日韓関係が最悪事態の中で、トリチウム放出問題が重なり、あえて日本と対立したくないという思いもある。それが、「国際原子力機関(IAEA)の基準に合う適合な手続きに従うならあえて反対しない」という言葉になったのだろう。米国も、IAEAの路線に立っているからだ。
(4)「鄭氏は海洋放出を巡り、「現在把握しているところでは、前向きな反応を示した国は米国が唯一だ」とし、米側に対して主張の根拠を示すよう求めたと答弁。汚染水ではなく「処理水」という表現を使った科学的な根拠、日本の決定が透明に行われたと評価した根拠、世界的な安全基準に合致すると判断した根拠などについて、米国に問い合わせたと明かした。また、「南北を含む太平洋沿岸国5カ国は日本の措置に対して強く批判した」と指摘し、「中国は韓国よりもはるかに強硬な立場を発表した」と述べた。その上で、日本の決定の問題点が国際社会でも広く議論されるよう取り組む方針を明らかにした」
韓国は、日本政府から100回もの説明を受けてきた。福島原発の処理水が、汚水でないことも知っているはずだ。それを、あたかも「初耳」のように振る舞っている。卑怯な態度だ。中国が強硬姿勢は、日米同盟の強固な姿勢への反発に過ぎない。「江戸の仇を長崎で打つ」類いのものである。中国に大義はない。
(5)「鄭氏は、「『静かな外交』で解決するものではない」とし、「国際海洋法裁判所への提訴は2018年10月から検討してきた」と表明。日本が国際法上の義務を履行しない場合、紛争解決手続きに進む準備を徹底して行っていると伝えた」
韓国は、衣の下から鎧がちらつかせている。国際海洋法裁判所への提訴を検討してきたというのだ。日本は、IAEAと4回も打ち合わせて遺漏なきを期している。韓国に、尻尾を掴まれるようなヘマをするはずない。正攻法である。
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2021-04-18 |
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