護身で検察捜査権限を縮小
権力を私的に利用した天罰
世論調査が示唆の政権交代
ユン前検察総長が有力候補
韓国は、公務員による不動産投機事件が発覚して上を下への騒ぎに発展している。文政権になって、25回もの不動産対策を発表しながら、住宅高騰を止められずにきた。これだけでも、世論の反発を受けて当然だが、その上さらに公務員の不祥事が発覚した。政府不信が高まっている。
韓国土地住宅公社(HL)職員が、政府の住宅建設予定地を先買いして、莫大な投機利益を懐に入れた事件の表面化だ。この関係者が一人や二人でなく、100名以上の数に上がっている。公務員の綱紀が、乱れているのだ。文政権も、検察捜査から犯罪行為を隠している。公務員が、その手法を真似たのであろう。
文政権は、公務員犯罪に大慌てである。4月7日に首都ソウルと第二の都市釜山で、市長補欠選挙が行なわれる。この両市の市長選は、与党出身市長が揃ってセクハラ事件を起こしての辞任(ソウルは自死)結果である。これだけでも、与党候補に不利である。そこへ、公務員による土地投機事件が重なって、選挙戦は野党候補が有利な状況の展開である。
これに慌てた政権・与党は、韓国公務員137万人全体の財産登録制度をつくるという騒ぎに発展している。137万人の財産を登録するには莫大な予算と人材投入が避けられない。これだけの人数の財産を登録すれば、その家族まで含めれば、概ね600万人が政府による財産監視の影響下に入る。韓国国民は5182万人(2020年)だ。この1割強に当る国民財産が、政府機関に登録されるとは、自由主義経済を建前とする韓国で違憲の恐れが強いであろう。
そういうリスクを冒してまでも、ソウル・釜山の市長選に勝たねばならない切迫感に襲われている。ソウル市長は、閣僚級の待遇で閣議に出席できる特権が与えられている。野党出身のソウル市長が誕生すれば、閣議に野党出身者が出席するという不都合な事態になる。これは、政府情報が野党へ筒抜けになるようなものだ。与党は、来年3月大統領選の「秘策」が漏れる事態を避けたいはずである。
そもそも、先の公務員137万人の財産登録制は、公務員を潜在的犯罪者に見たてている。これでは、先述の通り公務員の家族を含め600万人が、野党支持に回る可能性が強まるのだ。大統領選にとって、不利であることは言うまでもない。文政権は、こうした目先の対策に追われ将来を忘れている。進歩派政権「自沈」の道を進んでいるようなものである。
最高検察庁は、公職を利用して不動産投機を行った者を全員拘束し、法定最高刑(終身刑)を求刑するよう、全国の検察庁に指示した。文政権は、検察庁「虐め」で捜査権限を縮小してきただけに、検察内部では割り切れない気持ちになっているという。本来、土地登記簿に照らし合わせた捜査は、警察の管轄であろう。それをわざわざ検察庁所管にさせた狙いは、国民へのアピールである。スタンドプレイなのだ。
護身で検察捜査権限を縮小
文政権は、検察庁から高度の捜査権を取り上げ、政権の関わった犯罪捜査を妨害した。その代わりに、単純な土地投機捜査を検察にやらせる。本来、警察捜査の分野であろう。文政権は、検察を子どものように扱っている。これが、文政権の目指す検察改革の姿なのだろう。かりそめにも、進歩派を掲げる政権のやるべきことではない。
英誌『エコノミスト』(2020年11月28日号)は、「文在寅(ムン・ジェイン)大統領の検察改革が正反対の効果を生んでいる」と評した。ユン検察総長の職務停止(注:後に解除)が、検察全体をユン総長の側に立たせ、文大統領は前任者(朴槿惠:パククネ)のように捜査対象になりかねないと警告を発しているのだ。
文氏は、以下のような3点で大きな疑惑を抱えている。朴槿惠・前大統領による「国政壟断」と質の異なる悪質な疑惑隠しである。
1)蔚山(ウルサン)市長選で、文氏の長年の友人を当選させるべく、選挙戦直前に野党候補者に無実の嫌疑を掛けて家宅捜査させた。これで野党候補者(現職)の信用を失墜させ、落選させたのである。このお膳立てをしたのが、大統領府で文大統領側近の高官である。
2)文氏が大統領選で掲げた「反原発」の公約を早期に実現させる目的で、黒字操業であった月城原発を「赤字経営」にデータ改ざんして、強引に操業を止めてしまった。後に会計検査院からの査察を免れるため、深夜に所管部署へしのび込み、関連データを改ざん、あるいは削除した。
3)削除されたデータの中に、北朝鮮への原発建設案があった。韓国で建設中にストップさせた原発工事を再開し、北朝鮮へ電力を送電する案が含まれていたのである。また、南北の緩衝地帯に原発を建設する案まで含まれていた。韓国では、原発は危険であるとして操業を中止させながら、北朝鮮のためなら喜々として再開させる。この「ダブルスタンダード」は何であるのか。売国的な行動であろう。(つづく)
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