韓国から中国への直接投資額が昨年、約30年ぶりの大きな減少となった。米国が同盟国に対し対中依存を減らすよう働きかけており、中韓の経済的な結び付きが弱まっていることが裏付けられた。
韓国企画財政省が、15日発表した韓国企業による2023年の対中直接投資は、前年比78.1%減の18億7000万ドル(約2800億円)になった。中韓が、国交を正常化した1992年以来初めてである。中国は、韓国の対外直接投資先トップ5から外れた。
中国国家外貨管理局が、2月発表した2023年の国際収支によると、外資企業の中国投資は30年ぶりの低水準で、330億ドル(5兆円弱)にとどまった。韓国の対中直接投資の減少は、こういう流れの一環である。中国は、景気の停滞で工場新設など新規投資が細る一方、中国事業の縮小や撤退も出ている。中国当局が、強化するスパイ摘発への懸念や米国の対中規制をうけ、外資の中国離れが進んでいる。
『ハンギョレ新聞』(3月16日付)は、「韓国企業の中国への直接投資が78%減、韓国の海外投資額トップ5カ国から脱落」と題する記事を掲載した。
(1)「企画財政部が3月15日発表した「2023年の海外直接投資額」によると、昨年の韓国企業による海外への直接投資額は633億8000万ドルで、前年(815億1000万ドル)と比べて22.2%減少した。総投資額から持ち株の売却や清算などによる回収金額を除いた純投資額も、前年に比べて20.6%減の514億3000万ドルを記録した。2018年(518億1000万ドル)以降での最低値だ」
韓国左派にとって、韓国の対中直接投資が減少したことはショックであろう。これまで、「経済は中国、安保は米国」と使い分けて、中国接近の大義名分にしてきたからだ。その経済関係で、中韓が希薄になることは耐えられないはずだ。
(2)「中国地域への直接投資額は、78.1%もの大幅減の18億7000万ドルを記録した。韓国企業の国別海外直接投資額で、中国の順位は7位に下落。2002年(11億6000万ドル)以降で最も少ない金額である。中国が、韓国企業の海外直接投資額の上位5カ国から押し出されたのは1992年以降で初。中国の景気低迷で、企業が中国への投資を先送り・取消したことが大きく影響した。これは世界的な現象でもある。23年の中国への海外からの直接投資額は、前年(1802億ドル)に比べて81.7%の大幅減となる330億ドルにとどまった。1993年以来の最低値だ」
米国の対中半導体規制によって、韓国の半導体2社は中国での設備投資を抑制している。これも、韓国の対中投資を大きく減らした要因であろう。この状態は、今後とも継続される。韓国の対中投資は、構造的に減少過程へ入ったとみられる。
(3)「韓国企業の直接投資額が最も多かったのは、米国市場で277億2000万ドル。次いでケイマン諸島(61億7000万ドル)、ルクセンブルク(49億5000万ドル)、カナダ(36億ドル)の順だった。業種別に見ると、256億6000万ドルを記録した金融保険業の直接投資額が最も多く、次いで不動産業(42億4000万ドル)、鉱業(33億8000万ドル)、卸・小売業(25億5000万ドル)の順だった」
韓国の対米投資は、対中投資が減った分が米国へ「オン」されている。半導体・EV・電池などの先端技術投資が米国へ集中しているのだ。米中「デリスク」によって、西側諸国の直接投資は確実に中国から米国へシフトしている。
(4)「企画財政部の関係者は、海外への直接投資の減少について「米国の金利が2001年以降での最高値を記録するなど、グローバルな高金利基調が続いた中、中国の景気後退や欧州の地政学的なリスクなどが作用した結果だと解釈される」と指摘した」
世界の対外投資の流れは、これから大きく変わってゆく。「脱中国」が、鮮明になるであろう。中国が、「世界の工場」と言われたのは過去の話だ。今後は、地政学リスクが大きき立ちはだかり、一国での集中生産体制は消える。分散型で、サプライショックを回避するのだ。