韓国の対日外交が、急回転している。これまでの仇敵に対する言動から、親しい隣国として日本を遇し始めているからだ。日本側が、特別に韓国へメッセージを送った訳でもない。菅新政権の誕生で、何かが変るだろうという漠然として期待からだろう。
それに拍車を掛けたのが、米国でバイデン新政権が誕生することだ。バイデン氏は、同盟の結束を重視するという姿勢を明らかにしている以上、日韓関係の破綻原因が韓国側にあるとの自覚を強めざるを得なくさせている。日韓慰安婦合意の舞台裏でバイデン氏は当時、副大統領として関わっていた。その日韓慰安婦合意が、文政権によって一方的に破棄されたのだ。文政権は、バイデン氏に合せる顔がないのだ。慌てふためくのは当然であろう。
『ハンギョレ新聞』(11月18日付)は、「韓日議員連盟会長、『菅首相、韓国が“進展した立場”示すよう繰り返し求めた』」と題する記事を掲載した。
この記事には、日本側を非難するトーンがないことに驚く。これまでの例では、韓国側を擁護して、日本を非難するものがパターン化してきたのだ。それが見られないのは、韓国が相当、不利な状態に追込まれていることを覗わせている。
最近、韓日議員連盟会長として日本を訪問し、菅義偉首相と面会した共に民主党のキム・ジンピョ議員が、韓日関係改善を望む日本側の意思を確認したことを明らかにした。ただし、菅首相は韓国の最高裁判所(大法院)による強制徴用被害者賠償判決について、韓国が先に「進展した立場」を示すべきという立場を貫いていると、キム議員は伝えた。
(1)「キム議員は16日、CBS(キリスト教放送)のラジオ番組に出演し、菅首相との面会結果について、「両国関係をこのまま放置してはならない、改善すべきだという意志を互いにはっきりと確認したと思う」と述べた。さらにキム議員は「菅首相が、元徴用工問題の解決のために、韓国が進展した立場を示してほしいという話を1、2回繰り返した」と付け加えた。キム議員をはじめとする韓日議員連盟所属の与野党議員は、12日から2泊3日の日程で日本を訪問した」
下線部分によって、日本の主張が全く変っていないことが韓国側にはっきりと伝わったことだ。韓国は、韓国大法院判決が、国際法からかけ離れていることを自覚せざるを得ない立場にある。当時の大法院判決で、2人の裁判官が国際法から外れているとして反対していたのである。
(2)「キム議員は同日、KBS(韓国放送)ラジオ番組にも出演し、「最近(日本を訪問した)パク・チウォン国家情報院長の(訪問の)時もそうであり、私に会った時も、菅首相が『韓日関係が健全な関係に発展するためには、元徴用工問題について韓国政府の進展した立場が必要だ』と繰り返し強調した」と説明した。キム議員の話を聞く限り、日本は「1965年の請求権協定で韓日関係の債権、債務はすべて清算されたが、韓国最高裁がこれを無視して判決を下したため、この問題は韓国政府が解決すべきだ」という立場を維持していると見られる。ただし、キム議員は「この2年間、(中略)日本側も韓国側もさまざまな代案を示してきたと聞いている」とし、「結局、今は両国首脳間の選択と決断だけが残っている」と述べた」
下線部分は、前国会議長の文氏が昨年暮れに提案した法案を指している。これは、日韓の民間有志による寄付金で、旧徴用工へ賠償金を払うというもの。「代位弁済」という形を取り、永遠に解決して蒸し返さない狙いだった。被害者側も乗り気になり、1万人の署名を集めて法案化を請願した。だが、市民団体による反対で文政権は腰砕けになった経緯がある。
日本政府もこの案に賛成していたが、日本側の謝罪がないという理由で最終的に葬りさられた。前首相の李氏は、つい半月程前までこの案を否定していた。それが、再び復活しそうな状況である。韓国側に一貫した姿勢がなくフラフラしていることが、韓国外交が風見鶏と言える理由である。
(3)「キム議員はKBSとのインタビューで「(反日、反韓感情が依然として強く)環境は良くない」とし「妥結できれば妥結するが、これがまた拙速な妥結となれば、(状況を)さらに悪化させる恐れがある」として、懸念を示した。両国の隔たりを埋めて、合意案を“妥結”するよりも、関係悪化を防ぐための“管理”の必要性を強調したのだ。輸出規制問題を先に解消したり、来年夏の東京五輪をきっかけに、両国間の交流協力を強化するなど信頼を築いていけば、過去の歴史問題でも突破口を見出せるという趣旨でもある。キム議員は「日本が受け入れられる代案を、韓国も日本も提示したものがある。それらに基づき、最大限距離を縮めなければならない」と述べた」
下線部は、前記の日韓による民間の寄付金を原資にするもの。日本側では、寄付の条件として名前を出さないことを要求しているなど、具体的な動きも見られた。
(4)「一方、キム議員は同日、YTNのラジオ番組にも出演し、来年初めに米国のバイデン政権が発足した後の朝鮮半島情勢について「バイデン氏は韓米日の三角戦略同盟を非常に重視する立場だった」とし、「当然(韓日)両国に対する関係改善の圧力も高まるだろう」と予想した」
このパラグラフで、韓国がバイデン政権の出方に神経を使っていることが浮き彫りになっている。韓国が、日韓慰安婦合意を破棄したことの後ろめたさを「告白」しているようなものであろう。