勝又壽良のワールドビュー

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    カテゴリ:経済ニュース時評 > 韓国経済ニュース時評

    テイカカズラ
       

    韓国国家情報院は8月20日、国会情報委員会業務報告で、北朝鮮について「与正氏が国政全般で委任統治している」と明らかにした。この報告を巡って、種々の議論がされている。

    世襲独裁である北朝鮮体制の特性上、委任統治は有り得ないことであり、なされたこともないとんでもない話という批判が代表的なものだ。朴智元(パク・チウォン)国家情報院長は、「正恩氏が統治ストレスのために権力を委任した」と説明したが、この説をそのまま信じるのは無理という批判である。

     

    韓国政府は、北朝鮮が「委任統治」したと民主的なイメージで説明した意図は、世論操作の臭いがすると野党が批判している。具体的には、「国会情報委員会は、国家情報院の独占的な対北朝鮮情報の権限を国内政治用に利用する所ではない」とし、「親日排斥では事足りず、確証のない北朝鮮問題で、不動産暴騰、税金地獄、道徳性の堕落による支持率急落を回避しようとしている強い疑念を覚える」と指摘している。以上は、『東亜日報』(8月22日付)が報じた。

     

    このように、北朝鮮があたかも民主化されたような「委任統治」という説明に韓国では異論が噴出している。海外の専門家も、国家情報院の報告に疑念を呈した。米中央情報局(CIA)元分析官でランド研究所のス・キム研究員は8月20日(現地時間)、自由アジア放送(RFA)に、「北朝鮮関連の情報を確認するのに限界があり、今後の行動を混乱させる目的で故意に情報を捏造したりする」と指摘される始末だ。前記『東亜日報』が報じた。

     


    『朝鮮日報』(8月21日付)は、
    「『金与正氏が一部委任統治』北に何が起きているのか」と題する社説を掲載した。

     

    韓国の国家情報院は20日、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の妹である金与正(キム・ヨジョン)氏について「委任統治を行っている」と国会に報告した。「金正恩氏が今なお絶対権力者だが、過去に比べるとその権限を多く委譲している」というのだ。国情院はさらに「委任統治は金与正氏だけが行っているのではなく、経済は金徳訓(キム・ドクフン)首相、軍事は崔富一(チェ・ブイル)、戦略武器は李炳鉄(イ・ビョンチョル)など」とも伝えた。金与正氏が後継者になることが決定したわけではない」との見方も同時に示している。謎解きのような話だ。

     

    (1)「国情院は、「委任統治」の理由として「金正恩氏の統治ストレス軽減」との見方を示した。過去9年にわたる独裁のストレスがたまっているというのだ。「政策が失敗した場合、金正恩氏の責任を他の誰かに押し付けるため」との理由もあるという。今の北朝鮮で順調に事が進んでいることは何一つない。対北制裁とコロナ事態によって経済は完全に崩壊し、さらには水害にも見舞われた。最高指導者がメンツをつぶされた米朝首脳会談もいまだに大きく影響している。金正恩氏に住民の不満が向かわないようにする必要があるのだ」

     

    北朝鮮の「委任統治」の理由は、「金正恩氏の統治ストレス軽減」という。何か、取って付けたような説明である。健康状態が悪化していることを「ストレス」という言葉に置換えれば、積極的な「委任統治」でなく、消極的な意味で「代行」というところだろう。国情院は、オブラートに包んでいるのだ。

     


    (2)「北朝鮮において、「委任統治」は過去に一度も行われたことがない。金日成(キム・イルソン)主席が一人統治体制を確立してからこのかた、誰にもその権限は与えられなかった。金正日(キム・ジョンイル)総書記は腹違いの兄弟を粛正し、ナンバー2とささやかれる部下は直ちに除去した。金正恩氏も叔父と腹違いの兄を処断した。その金正恩氏が主要な権限を委任するとなれば、これは尋常なことではない

     

    下線で指摘の通りのことが現在、北朝鮮で起こっていることは間違いない。「一人統治体制を確立」している北朝鮮が、「委任統治」とは天変地異の変化が起こる前兆と見るべきかも知れない。何かが、起こっているのだろう。

     

    (3)「これまで北朝鮮において対南・対米・軍事問題は最高権力者だけが取り扱うことができた。それが最近は金与正氏が前面に出て対南・対米強行メッセージを立て続けに出している。金正恩氏はその姿を見せなくなり、「健康異常説」も広がっている。さらには父の金正日総書記が一度も開催しなかった労働党大会を来年1月に再び開催するという。これまで見たことのなかった出来事が相次いで起こっている。今、北朝鮮では何か問題が生じているのだろうか」

     

    正恩氏の身の上に、重大な事態が起こっているという予想も可能であろう。一度も開催しなかった労働党大会を来年1月に再び開催するというからだ。これまでの経緯もあるので、正恩氏「雲隠れ」の理由は掴めないが、それを憶測させる前兆現象は見え隠れしているようだ。死亡説も一つありうるだろう。



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    韓国文大統領は、新型コロナウイルス第1波を早期に収束させたことで、「K防疫モデル」の成功と自画自賛した。その舌の根が乾かないうちに、「感染調査に応じない者は逮捕・拘束」と強権発動の構えである。日本の安倍首相がこんな発言をしたならば、集中砲火を浴びる。この一件を見ても韓国の民主主義が、未成熟であることは明白だ。

     

    日本の第2波は、7月下旬で峠を越えたようだと専門家が判断している。一人の感染者が、感染させる再生産率は、「1」を割っているのだ。8月に入って夏休みが始まってから、感染者が急増することもなく「沈静化」しているのは、韓国と大きな違いだ。なぜ、韓国は「K防疫モデル」が破綻したのか。その理由を探って見たい。

     


    『朝鮮日報』(8月19日付)は、「新型コロナ再流行は明らかに政府の責任『今からでもミスを認めるべき』」と題する記事を掲載した。

     

    高麗大学九老病院感染内科のキム・ウジュ教授は、「新型コロナウイルス再拡散の根本的な原因は政府の防疫政策の失敗だ。それに対する反省はせず、危機のたびに特定の集団を『魔女狩り』する方法では、また別の危機をもたらすだけだ」と指摘した。これは最近の首都圏を中心とした新型コロナウイルス感染症再拡散に関して、本紙インタビューで述べた言葉だ。同教授は「政府は今からでも国民の前で素直にミスを認め、感染症対応の段階を引き上げなければならない。そうしないと新型コロナウイルス流行の第2波は防げない」と警告した。

    キム・ウジュ教授は、大韓感染学会で2013年から15年まで理事長を務めた感染症分野における韓国の最高権威と言われる。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代の2003年に重症急性呼吸器症候群(SARS)対応のための政府諮問委員を務めたのを皮切りに、2004年の鳥インフルエンザ、2009年の新型インフルエンザなど感染症が流行するたびに政権の傾向とは関係なく政府諮問委員を務めてきた。2015年の中東呼吸器症候群(MERS)流行時は官民合同対策班の共同委員長を務めた。

     

    (1)「キム・ウジュ教授は、最近の新型コロナウイルス首都圏再拡散の根本的な原因として、同時多発的に出された政府の間違った政策を挙げた。まず、7月24日から教会など小グループの集会禁止を解除し、スポーツ競技の観客入場を限定的に許可した措置だ。さらに、低迷している消費者心理をよみがえらせるため8月14日から利用可能な外食・公演クーポンを配ると発表した。キム・ウジュ教授は、「政府が教会の小グループによる集会を可能にし、外食クーポンを配ると発表したことで、国民に『気を緩めてもいい』という一種のシグナルを出してしまった。明らかに誤った政府の判断により、このような事態が起こったのだ」と批判した

     

    下線部分は、日本と同じ状況である。日本は、「GOTOトラベル」を土壇場で東京都を除外して実行するなど混乱もあった。だが、韓国のように感染者急増は起こらず、沈静化に向かっている。この日韓の差は何か。日本は一人一人が慎重に行動したが、韓国ではそういう配慮が足りなかったのだ。こういう言い方は誤解を受けやすいが、「他人に迷惑をかけない」という日本の風習が生きていたのであろう。

     

    (2)「また、今回のサラン第一教会など特定の集団が再拡散の原因として指摘されていることも批判した。キム・ウジュ教授は、「防疫に穴が開くと、政府はすぐに特定の集団を攻撃する行動を見せた。かつて新型コロナウイルス感染拡大で新天地イエス教会やソウル・梨泰院の性的少数者のクラブを糾弾したのとまったく同じだ」と言った。さらに、「毎回、一集団を取りざたして葬ることで状況を終わらせ、防疫システムにどのような問題があったのかはきちんと診断しないことが、危機が繰り返されている根本的な原因だ」と分析した」

     

    韓国の悪弊は、原因究明をせずに特定団体・個人をヤリ玉に上げて非難し、それで「一件落着」というやり方だ。今回も宗教団体が非難されている。特に、プロテスタント(保守派)教会が感染源になったので、一段と政権による非難ボルテージが上がっている。感情的な国家である。

     

    (3)「キム・ウジュ教授は、政府がこのほど「ソーシャル・ディスタンス(社会的距離・感染防止のため人と人の間に距離を取ること)確保」を第2段階に強化したことも、「迅速に対応したが、問題がある」と言った。原則上、第2段階では室内50人以上、室外100人以上の人員が集まる行為を禁止しているが、政府は禁止ではなく「自粛勧告」だけを出したのだ

     

    下線のように、「自粛勧告」でなく、「禁止」にすべきであった、という。政府にも判断で甘さがあったのだ。日本では、すべて「自粛要請」である。それでも、効果を上げているのは、やはり「国民性」という点に帰着するのだ。

     

    (4)「キム・ウジュ教授は、「十分でないだけでなく、政府が公言した原則を自ら変えてしまった点に、より大きな問題がある。マニュアルを朝令暮改式に変えれば、政府を信じて従う国民がいるだろうか」と言った。現在の状況で必要な対応策については「政府は10人以上の集まりを禁止するなど、『ソーシャル・ディスタンス第3段階』に引き上げなければならない。それと同時に、過去の失策を素直に認めて国民の助けを求めるべきだ」と語った」

     

    文政権は、絶対に国民へ謝罪しない。今回は、逮捕・拘束と言って国民を脅かしているほど。日本では、こういう戦時中のような「非国民」扱いのニュアンスを聞くことはない。日韓政府のコロナ対応は、終息後に総括すると非常に興味深い結論が引き出せると思う。現状では、日本が好成績である。

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    文大統領は、「三権分立」が口癖である。その通りなのだが、自らそれを破る発言をしている。コロナ感染調査に非協力な者は逮捕・拘束せよと発言しているのだ。行政府の長たる大統領が、司法に対して「逮捕・拘束」を命じること自体、「三権分立」原則を破るものである。文大統領は、ご都合主義者である。都合の良い時だけの「三権分立主義者」だ。

     

    韓国の新型コロナウイルス感染は、第二波に入っている。目前に医療崩壊も予測されるほどの感染者急増である。文大統領は、「K防疫モデル」と胸を張っていた手前、つい焦って「逮捕・拘束」という気持ちになったのだろうか。

     

    『ハンギョレ新聞』(8月22日付)は、「文大統領、最大の危機『必要ならば、防疫妨害行為は逮捕・拘束を』」と題する記事を掲載した。

     

    文在寅(ムン・ジェイン)大統領が21日、一部のプロテスタント教会と保守団体などが新型コロナウイルス感染症の防疫に非協力的であることと関連し、「疫学調査や防疫措置を妨害する行為に対し、必要な場合は現行犯逮捕や拘束令状の請求など、厳重な法執行を示してほしい」と述べた。

     

    (1)「最近、首都圏を中心に新規感染者数が1日300人台に急増したことを受け、直接緊急点検に乗り出したのだ。文大統領は「感染者数が300人を超えたが、あっという間に300人が900人になり、さらに千人を超えるかもしれない。国内で新型コロナウイルスの感染者が発生して以来、最大の危機と言えるだろう」としたうえで、「ソウルの防疫が崩れると、全国の防疫が一気に崩壊する可能性もある」と述べた」

     

    宗教の集会が、大量感染者を生み出すきっかけになっている。韓国は、信仰心が篤いとされる。ただ、欧米流の信仰と異なり、中国の風水(占いの一種)に凝っているので、その延長線の「信仰」と見られる。集団行事を行なっているので、これが大量感染を引き起している。

     


    (2)「そして、ソウル市の持つ行政力を総動員するよう指示した。文大統領は「一部で迅速な疫学調査と防疫措置に対する妨害行為が非常に組織的に行われている。現場で(疫学調査と防疫措置を)物理的に制止したり、妨害するようなことまで起きている」とし、「非常に大々的なフェイクニュースを通じて政府の疫学調査をはじめとする防疫措置を妨害している」と述べ、これらの行為に対する懸念を示した」

     

    文氏は、悪意に解釈している。集団で受診を拒否しているのではあるまい。宗教行事に参加して感染したとなれば、自分のプライバシーが冒されるリスクを懸念しているのであろう。韓国は、春のコロナ感染第一波を速やかに収束させた裏には、「人権侵害」をしてまで感染者を追跡した。これが、ヨーロッパでは不評であった。「K防疫モデル」は、人権侵害リスクを伴っているのだ。今回の受信拒否には、そういう意味が込められている。

     

    (3)「文大統領はさらに厳しい法執行も要求した。文大統領は「もし疫学調査や防疫措置を妨害する場合は、感染病管理法だけでなく、公務執行妨害など他の刑事犯罪も適用し、断固たる法的対応をしなければならない」とし、「必要な場合は、現行犯逮捕や拘束令状の請求など、厳重な法執行をしっかり示してほしい」と述べた。「公権力がきちんと執行されていることを国民に必ず見せてほしい」と付け加えた。文大統領は「通常は公権力の行使は最小限に抑えるべきだと考えているが、感染病に対する防疫や災害に対する対処、こうした場合は個人の人権問題だけにとどまらず、国民共同体の生命と安全に直結する問題であるため、公権力が十分に国民を保護する役割を果たすべきだ」と述べた」

     

    文大統領は、「もし疫学調査や防疫措置を妨害する場合は、感染病管理法だけでなく、公務執行妨害など他の刑事犯罪も適用し、断固たる法的対応をしなければならない」と発言している。これは、三権分立の立場から言って「越権行為」であろう。法的な対応は、司法が判断することだ。文氏は普段から、「司法はいくらでも自由に扱える」という傲慢な気持ちでいるから、それがストレートに出てくるのだろう。危険である。

     


    (4)「最近、コロナ感染検査で陽性反応を示したチョン・グァンフン牧師が担任牧師を務めるサラン第一教会についても言及した。中央災害安全対策本部は20日午後6時現在、同教会に関連した感染者は合わせて739人だと発表した。「サラン第一教会の信者名簿や光化門集会に参加した人の名簿はすべて確保されているか」という文大統領の質問に、ソウル市のソ・ジョンヒョプ市長権限代行は「城北区(ソンブクク)のサラン第一教会は現場で調査を行っており、引き続き他の資料を確保しようと努力している。防疫当局は前日、集団感染が発生したソウル城北区長位洞(チャンウィドン)のサラン第一教会で信者名簿の確保を試みたが、抵抗する教会側と一晩中対峙するなど、難航している

     

    下線分は深刻な問題だ。信者リストを提出せよとは、プライバシーの最大の侵害である。教会側が抵抗するのは当然だ。韓国の民主主義は、この程度の「付け焼き刃」である。日本は、人権尊重の余りコロナ対策で「生温い」と批判されるが、はるかに民主的である。韓国は、まだまだ未成熟と言うほかない。

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    韓国は、米中対立が深刻化していることの認識が不十分である。相変わらず「二股外交」が可能と見ているようだ。韓国の二股外交は、「自主外交」という認識であるが、安全保障環境が厳しくなってきた現在、外交は同盟国と一体となるべきである。韓国は、事大主義に囚われており、中国依存心が消えないのだ。

     

    韓国は、米国防長官提案の日米韓三カ国の防衛相会談を断った。理由は、習近平国家主席の訪韓を実現させるべく、日米へ肩入れした印象を与えたくないというもの。

     

    『東亜日報』(8月21日付)は、「政府が韓米日国防長官会議の提案を拒否、その理由とは」と題する記事を掲載した。

     

    エスパー米国防長官と河野太郎防衛相が、29日に米国のグアムで会議する方向で調整しているとされる中、当初、米国が韓国政府に韓米日国防長官会議を提案したことが20日、分かった。しかし、政府が回答せず、これと共に推進されたマーク・ミリー統合参謀本部議長の訪韓も具体的な進展がないという。


    (1)「エスパー氏は来週、パラオとグアム、ハワイ歴訪を機に韓米日国防長官会議を希望したという。これと関連して米政権関係者は東亜(トンア)日報に、「29日にグアムかハワイで米韓日国防長官会議を提案した」とし、「3国の協力を強化し、北朝鮮と中国の脅威に対する抑止力のため」と話した。また、ミリー氏も29日に訪韓する案を韓国政府と調整したが、事実上、失敗に終わったという」

     

    エスパー米国防長官が提案した日米韓三カ国防衛相会談は、韓国の無反応で実現しないことになった。米韓同盟と言ってもこの程度の「結束力」である。韓国が、中国と北朝鮮へ「秋波」を送っているからだ。

     

    (2)「米国が、28日に終わる韓米合同軍事演習の直後に韓米日国防長官会議とミリー氏の訪韓を推進したのは、米中対立の中で韓国と日本に反中国連合戦線の参加を求める狙いがあるとみられる。米国は、北朝鮮が労働党創建75年である10月10日に大規模な軍事パレードを準備していることや、韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)維持の問題についても協議しようとしたとみられる。韓米外交筋は、「米大統領選局面や中国の習近平国家主席の年内訪韓の可能性、南北協力などを考慮して、(今回の会議には)政府が慎重な態度を示したようだ」と伝えた」

    会談が不成功に終わったのは、次の理由である。

    1)米大統領選の帰趨

    2)中国の習近平国家主席の年内訪韓の可能性

    3)南北協力などを考慮



    以下に、私のコメントをつけたい。

     

    1)米国の現職大統領はトランプ氏である。11月3日の大統領選の様子を見るという思惑だ。民主党候補が当選しても、対中政策は変わらないし、むしろ強化されると予測されている。となれば、トランプ氏を忌避する理由にはならない。むしろトランプ氏が当選すれば、トランプ忌避が、大きな反動を招く要因になろう。「G7」は、大統領戦後に開催される。あれだけ「G7拡張案」に乗り気だった韓国が、掌返しの行動に出るのだ。裏切りである。信用できない民族である。

     

    2)中国の習近平国家主席の年内訪韓に賭けているのだ。これで、国内政治のテコ入れに使う気持ちである。文氏の支持率回復に利用して、レームダック化を防ぐ狙いであろう。どこまでも国益より、私益重視の大統領である。

     

    米中対立激化の中で、習近平氏が訪韓したところで、米中の枠組が変わるわけでない。米韓同盟という軍事同盟がありながら、なぜ中国へ秋波を送るのか、不可解としか言いようがない。それほど、中国陣営に参加したいならば、米韓同盟を解消するしかない。国民世論では8割が米国派である。中国派は数%に過ぎない。とても、米韓同盟の解消は困難である。私益で国益を毀損してはならないのだ。

     

    3)南北協力も、米韓同盟の枠内で行なうしかないのだ。米韓関係が順調にいってこそ、米国の強力を得られて南北関係も進むはずだ。北朝鮮は、国連制裁下にある。文氏がいくら力んでも制裁の枠を超えられないもの。もともと、北の制裁は核開発禁止である。それは、韓国の利益になることだ。制裁に従わず核開発を続ける北朝鮮は、韓国に潜在的な「損害」を与える忌避すべき相手である。その北朝鮮に援助したいという文氏の発想は、国益に反するものである。

     



    テイカカズラ
       

    中国外国トップの楊潔チ中国中央政治局委員は21日、1泊2日の日程で訪韓し、訪問先としてソウルではなく釜山を選んだことが注目される。ソウルは現在、新型コロナウイルスの第2波に突入し、5人以上の集会を禁止するという「非常事態」へ突入している。

     

    これが、表向きの理由のように見られているものの、この裏には中国の「焦らし戦法」で言いたいことだけを伝える目的が隠されているように見える。釜山訪問であれば、文大統領を表敬訪問する必要はない。それゆえ、習近平訪韓の日程について具体案を文大統領に話す必要性がなくなるのだ。中国側は、「習訪韓」を材料にして韓国からの好条件を引き出す狙いであろう。

     

    この戦術にまんまと乗せられれば、韓国は自滅の運命だ。米中対立が先鋭化する中で、韓国が二股外交で漁夫の利を得られる時代は終わった。米韓同盟の枠の中で生きるしかなくないのだ。その覚悟が、韓国に求められている。

     


    『中央日報』(8月21日付)は、「『習近平の請求書』持ち込む楊潔チ氏、ソウルではなく釜山の狙い」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「韓国外交部などによると、楊氏は21日に国際金海(キメ)空港から入国し、22日午前に徐薫(ソ・フン)韓国大統領府国家安保室長に会う予定だ。楊氏が釜山に来るのは文在寅(ムン・ジェイン)大統領を表敬訪問しないという意味だ。これは習近平中国国家主席の年内訪韓成功するかどうかがわからない状況で、下手に韓国首脳に会わないという意図が隠れている。それほど、習近平首席の訪韓を成功させるために両国間で調整しなければならない案件が多いという意味だ。新型コロナ状況で習近平首席の訪韓というリスクを甘受するほど、両国がそれぞれお互いに贈る「贈り物」が何になるか交渉しなければならない状況だ」

     

    韓国にとって中国は、旧宗主国である。中国への思いは極めて強い。韓国進歩派には、最終的な心の「拠り所」であろう。韓国は、その中国へ何を「贈り物」にするのか。間違えれば、米国から強い逆反応を受ける危険性がある。韓国は、米韓同盟で守られている現実を忘れてはならない。

     

    (2)「亜洲(アジュ)大学中国政策研究所のキム・フンギュ所長は、「両国間の慎重な事案が多く、十分な合意がなされていないため、釜山で会うものと見られる」とし「なるべくあまり関心を持たれない方法で会合を進めたいという意志と見て取れる」と説明した。漢陽(ハニャン)大学国際大学院の文興鎬(ムン・フンホ)教授は、「楊氏が日本など他国を追加訪問していない状況で、韓国の地でソウルではなく釜山を選んだというのは異例」とし「文大統領との会談を避けることによって韓中両国がそれぞれ米国と北朝鮮をあえて刺激しないという政治的含意があるものと見られる」と述べた」

    楊氏が、ソウルでなく釜山を選んだ理由は、下線を引いた部分の狙いがあるだろう。米国と北朝鮮を刺激せず、実利だけを得るという目的が隠されている。つまり、露骨な要求を韓国に出す可能性が大きいということだ。

     


    (3)「韓国と中国の双方が明らかにした今回の訪韓の理由も新型コロナで延期されてきた習近平首席の訪韓のための議題調整だ。つまり、激化している米国と中国の戦略的対立の中、韓国が中国の要求事項をどれほど聞き入れることができるかによって、習近平主席の訪韓が決定する」

     

    韓国が、習訪韓を熱望していることは疑いない。これをテコに、国内支持率を上げるほか、南北交流促進のきっかけにしたいはずだ。ただ、米国との関係無視では進められない。米国との関係強化によって中韓関係促進という「正攻法」を選ぶことだ。米韓関係を外した中韓関係強化は、あり得ないことを認識すべきであろう。

     

    (4)「楊委員は訪韓前、8月19~20日にシンガポールを訪問し友好関係を築く予定だ。これにより、楊氏は韓国でも米中対立の局面で、中国に力添えするか、少なくとも中立を維持することを期待する可能性がある。米国が反中国経済のネットワーク「経済協力ネットワーク(EPN)」やファーウェイ制裁など「反中ブロック」への参加を同盟国に継続的に要求している状況で、韓国の積極的な参加を防ごうとしているのだ。また、外交・安保の専門家らは米国の中距離ミサイルを韓国に配備しないという要求をはじめ、香港・台湾問題について中国の立場に共感することを要求するなど、様々な首脳会談の「請求書」を出すという見方を示した」

    中国は、シンガポール訪問で中国に有利な話を引き出し、それを韓国にも飲ませようという魂胆であろう。中国のことだ。その程度の戦術を使うのは当り前である。韓国の気を付けるべき点は、習近平訪韓を実現させたくて安易な妥協をしないことだ。米中対立が、どれだけ深刻であるか。韓国は、その厳しい現実の理解が足らないから、まだ「二股外交」が可能と思っているほど国際情勢の急変に気付いていないのであろう。




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