勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 韓国経済ニュース時評

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    文政権は、最近の支持率が40%を割って39%に下落して衝撃を受けている。この「危機打開策」として、定番の反日利用に傾いている。折から、8月15日の光復節(植民地脱出記念日)で、金光復会長が過激な「親日排除演説」を行い、与党「共に民主党」は、「我が意を得たりの演説であった」と賞賛した。これが、国内で大きな波紋を呼んでいる。

     

    金光復会長は、演説で韓国初代大統領の李承晩を「親日派」として排撃した。日本にとって李承晩は許しがたい人物である。朝鮮戦争中に勝手に「李承晩ライン」を引き、竹島を韓国領に取り込み、多くの日本漁船を拿捕略取してきたからだ。こういう行為をする李承晩が、「親日派」とは笑わせる話しだ。

     

    金光復会長によれば、李承晩が独立当初の韓国で、朝鮮総督府の出身者を多く官僚として採用したことだという。人材の少ない韓国で、行政経験のある総督府勤務経験者を採用するのは当然である。それが、「親日行為」というのだ。韓国進歩派の「親日」とは、こういう不条理な線引きで恣意的に決めている。100%感情論である。朝鮮戦争の英雄ペク氏も戦前、日本軍将校であったという理由で「親日」のレッテル貼りをし、文政権と歩調を合わせている。文政権は明らかに、金光復会長を「反日」で政治利用しているのだ。


     

    こういう韓国進歩派の異常な「親日狩り」への反動が起こってきた。

     

    『中央日報』(8月19日付)は、「韓国12の報勲団体『“親日派破墓”主張した光復会長、すべての行事から排除…報勲団体長として認めない』」と題する記事を掲載した。

     

    韓国の12の報勲団体が、今後すべての行事から金元雄(キム・ウォヌン)光復会長の出席を排除すると18日、明らかにした。

    (1)「大韓民国傷痍軍警会は、「金元雄光復会長の妄言に対する報勲団体の立場」を通じて「12の報勲団体は金元雄を報勲団体長と認めない」とする立場を伝えた。傷痍軍警会は「金元雄は護国英霊の前に百拝謝罪をし、光復(解放)75年が過ぎた今、親日清算という美名で国論分裂と社会葛藤を助長する世論集めを画策するのをやめて即刻辞退せよ」とし「民主党議員の顕忠院親日破墓法の推進中断も要求する」とした」


    下線を引いた部分は、金光復会長排除の理由だが、文政権への批判でもある。

     

    1)親日清算という美名で国論分裂と社会葛藤を助長する世論集めを画策するのをやめて即刻(光復会長を)辞退せよ。

     

    2)民主党議員の顕忠院親日破墓法の推進中断も要求する。

    与党は、狂ったように「親日派排除」を叫んでいる。植民地から脱して75年も経ち、なお精神的に自立できない進歩派とは「何者か」という問いかけをしているようだ。国立墓地である顕忠院から親日派の墓地を穿り返せという法案(顕忠院親日破墓法)も気違い沙汰としか言いようのない振る舞いである。敵国人が葬られているわけでない。韓国の発展に貢献した人たちの墓である。それが、政治的立場が異なる理由で「穿り返せ」とは異常である。

     


    『朝鮮日報』(8月18日付)は、「光復会・金元雄会長の反日発言、背後に青瓦台による支持率計算?」と題する社説を掲載した。

     

    光復会長の金元雄(キム・ウォンウン)氏がところ構わず語る罵詈(ばり)雑言が徐々にひどくなっている。金氏は故ペク・ソンヨプ将軍について「625初期、ペク将軍の第1師団は現れなかった。それだけで死刑に値する」と述べた。故・李承晩(イ・スンマン)元大統領については「解放後、米国にへつらい米国に利益をもたらした人物」と主張した。「李承晩は親日派」「安益泰(アン・イクテ)は民族反逆者」という光復節記念演説問題でその名前が売れて満足したのか、話にもならない暴言をその後も続けている。

     

    (2)「金氏による一連の言行は、独立有功者とその子孫の集まりである光復会の看板に泥を塗っている。それでも与党勢力は金氏を制御するどころか、「光復会長であればそれくらいの問題意識は語ることができる」として金氏に同調している。政策の失敗で支持率が下がったため、これを反日フレームによって挽回するということだろうか。護国英雄、独立運動の先烈(祖国のために殉じた義士)に対する冒とくといわざるを得ない」

     

    韓国与党は、親日排除で支持率を集めている無策政党である。困った時に、平身低頭して日本へ頼み事をするにもかかわらず、普段はここまで反日姿勢を高めてくるのだ。韓国進歩派は、警戒すべき相手と見ざるを得ない。

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    韓国社会の縮図を見ているような思いがする。自己の利益追求のためには手段を選ばないのだ。韓国政府は、医師不足解消で年間400人、10年で4000人の医学部学生増員計画を立てている。

     

    これに対して、韓国の医師会が医師過剰を招き、地方での医師の生活を圧迫するとして反対している。韓国は、日本以上のスピードで高齢化が進む見通しが強くなっている。当然、医師不足が深刻化する。高齢者の増加は、罹患者を増やすからだ。こういう韓国全体の人口動態変化を無視して、8月26日から一斉ストで「診療拒否」を予告しているのだ。

     

    新型コロナウイルスは、第2波の蔓延が予測される事態になっている。文大統領は、「K防疫モデル」と胸を張っていたが、とんでもないこと。第2波が接近している。中央防疫対策本部のチョン・ウンギョン本部長は8月17日、「新型コロナウイルス感染症が恐ろしい速度で全国に拡大している。大規模な流行の初期段階」と警告する事態である。ここで、医師ストが重なればどうなるか。韓国の防疫体制が崩れるのだ。



    『中央日報』(8月18日付)は、「韓国中央防疫対策本部長『新型コロナ、恐ろしい速度で拡大、医療システムが崩壊するかも』」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中央防疫対策本部のチョン・ウンギョン本部長は17日、「現在、首都圏には今まで診断されなかった無症状・軽症感染者が累積している。新型コロナがソウル・京畿(キョンギ)だけでなく全国的に拡大している」とした。新型肺炎の一日新規感染者数は4日連続で三桁となっている。教会・カフェなどの多数の人が利用する施設を中心にした集団感染も増加している。4~17日までここ2週間の感染経路をみると、新規感染者1126人のうち733人(65.1%)が国内発病だ。まだ感染経路が把握できない感染者も131人(11.6%)だ」

     

    韓国の新規感染者が、大都会にとどまらず全国に拡大傾向を見せている。極めて危険な事態を迎えていると警告している。

     

    (2)「チョン本部長は、「最近、集団発病事例が増加している宗教施設を対象に疫学調査を実施した結果、宗教活動の集いを通じて発生した感染が非首都圏地域を含むコールセンター・保育園・介護施設などさまざまな場所に二次感染が連鎖的につながっており『n次電波』の危険性も大きい」と話した。

     

    宗教施設での感染は、信者の分布から判断すれば、地方へ感染拡大があっても当然であろう。文大統領は、宗教施設での感染拡大に強い警告の言葉を発しているほどだ。

     


    (3)「また、「新型コロナの感染危険は『高危険施設』に限らず、日常で毎日利用する食堂・カフェ・市場などどこでも誰でも新型コロナの感染に露出する危険が非常に大きくなっている」とし「今すぐ流行状況を統制しなければ(感染者数は)桁外れに、手のほどこしようもなく増加して医療システムの崩壊、また莫大な経済的な被害につながりかねない危機状況」と話した。チョン本部長はソーシャルディスタンス(社会的距離)など防疫守則を徹底して守ることを呼びかけた」

     

    下線のように、コロナが爆発的感染する危険性が高まっている状態だ。こういう高リスクの中で、韓国医師会は医師増員反対を掲げてストへ突入すると発表した。コロナの大波が来ると予告されている前に、医師が雲隠れすればどうなるか。

     

    『韓国経済新聞』(8月18日付)は、「コロナ大流行危機でもストライキ強行するという韓国の医師」と題する記事を掲載した。

     

    ソウル・京畿道(キョンギド)など首都圏で新型コロナ感染者が急増する中、医療界が大々的なストライキを予告し、医療空白事態が現実になるかもしれないという懸念が出ている。



    (4)「8月14日に集団休診をした大韓医師協会は26日から3日間の日程でストライキをする予定だ。崔大集(チェ・デジプ)大韓医師協会長は16日、フェイスブックを通じて「17-22日に政府が決断しない場合、破局的な結果が生じるだろう」とし「4大悪医療政策撤廃闘争をいかなる状況でも最も高いレベルで断行する」と強調した」

     

    韓国医師会が、ストを予告している理由は次の点に反対しているためだ。

    1)医大定員の拡大

    2)公共医大の設立

    3)韓方調剤の給与化

    4)非対面診療(注:遠隔診療)

     

    前記4点で、ストライキをする理由になり得るだろうか。医師が増えれば、国民の医療不安が解消される。医療関連雇用が増えるのだ。病院へ行ってみれば分るが、多くの人々が働いている。病院は、医師と看護師だけで成り立っているのではない。技術者など多くの人々に雇用の場を提供している。雇用政策の面からも医師増員は不可避である。韓国医師会が遠隔診療に反対しているのは時代遅れである。大きな病院へ患者をとられるという保身的理由だ。患者が減れば、大きな病院へ勤務すればいいだけのことである。医師が損するから、医学生増員反対とは、韓国人のエゴ丸出しの話である。

     


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    韓国で再び、国政混乱が始まる気配だ。文政権の失政糾弾デモが8月15日、雨の中を5万人集めてソウルで開催された。ソウル市のデモ禁止命令にもかかわらず行なわれた。参加者たちは、不動産価格高騰を非難し政府の反民主的政権運営をヤリ玉に上げた。

     

    政権支持率急落の中での反政府デモに、政権側は神経を尖らせている。与党「共に民主党」は、親日勢力の仕業と批判の矛先を見当違いのところへ向けている。韓国では、政局が行き詰まるようになると、必ず登場する「親日糾弾」の定番コースである。韓国は、今でも実質的に「日本の植民地」のような振る舞いを続けている。

     

    『朝鮮日報』(8月17日付)は、「禁止命令にもかかわらず、5万人が光化門で反政府デモ」と題する記事を掲載した。

     

    光復節(日本による植民地支配からの解放記念日)の15日午後、文在寅(ムン・ジェイン)政権に批判的な5万人以上(主催者側の試算)が光化門広場などソウル都心一帯に集まった。ソウル市が集会禁止命令を出し、断続的に梅雨の雨が降っていたが、集会の参加者らは景福宮の光化門から徳寿宮大漢門に至るまでおよそ1キロにわたりぎっしりと集まった。参加者らは「国はおまえのものか」「文在寅大統領退陣」などと叫んだ。

     


    (1)「光化門集会の参加者らは主に政府の不動産政策失敗、独善的な行動などへの怒りを訴えた。この日、演壇に立ったある市民は「(現政権の不動産政策により)賃貸人と賃借人のどちらも被害者になった」「契約の自由を奪う遡及(そきゅう)立法であり、国民の自由と権利が踏みにじられている」と訴えた。ソウル市立大学に在学中のムン某さん(25)は「本来なら私はいわゆる『デッカムン(文大統領の熱烈な支持者)』だったが、今、政府の行動を見ていると、以前の政府と何も違いがない」「朴槿恵(パク・クンヘ)政権は反対側の意見を聞かずに弾劾されたが、今回の政府も結末は同じようになるだろう」と主張した」

     

    文政権の政策は、ことごとく失敗している。国民が、禁止命令が出ていても雨中をデモに参加する気持ちは純粋だ。政権支持者だけに「アメ」をしゃぶらせ、反対派を弾圧する文政権に怒りを感じないのは不自然である。

     

    政権側は、最近の文大統領支持率急落に慌てている。その対抗策が、「親日排除」だという。75年前に終わった「日韓併合」を未だに引きずって、政争の具にしている。発展のない民族である。

     


    『朝鮮日報』(8月17日付)は、「韓国与党の親日糾弾攻勢、支持率急落局面の転換が狙いか」と題する記事を掲載した。

     

    (2)「与党・共に民主党と与党系の関係者らが光復節(日本の植民地支配からの解放)をきっかけに、未来統合党をはじめとする野党に向かって一斉に「親日糾弾攻勢」をかけているのは、最近の支持率低下と無関係ではないという見方が出ている。「野党は親日」「自分たちは反日」という枠組みを通じて政治的局面転換を狙っているということだ」

     

    なんて愚かなことを続けているのだろうか。日韓併合で、朝鮮は近代化への準備ができたのだ。英国の植民地だったインドと比べるが良い。日本はインフラ投資を行ない、教育制度を確立した。ソウルに「京城帝国大学」を創立したのだ。こういう植民地政策が過去、世界に存在したか。冷静に考えてみるが良い。

     

    その日本の悪口雑言を言いふらして、国民の支持を集める。国民も国民だが、この程度の民族と思えば、怒りも収まるだろう。日本が、これ以上の話をしても理解は進むまい。諦めるしかない。

     

    (3)「共に民主党は、保守勢力の光化門集会についても「親日」対「反日」の構図で解釈した。共に「民主党の宋甲錫(ソン・ガプソク)報道担当は16日の記者会見で、「光復節集会で日章旗と旭日旗がはためいていたことに対する未来統合党の見解は何ですか?」と尋ねた。与党関係者らのこうした動きをめぐり、政界からは「立法独走、不動産失政、同党所属の自治体トップらの性的醜聞などで危機に直面している与党関係者が局面を転換するために『親日・積弊糾弾』に乗り出したもの」という声が上がっている」

     

    光復節集会で、日章旗と旭日旗がはためいたという。これは、本当だろうかと疑わざるを得ないほどだ。日本への思いが、今も受け継がれているのかも知れない。日本が、2020年「世界最高の国」ランキングで3位になっている。これは、国際評価である。この日本を未だに悪し様に扱っている。非難する方が、悪いと言わざるを得ない。

     

     

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    文政権は、支持率急落の中で一斉に批判が飛び出している。民主政治を装っているが、支持母体への利益還元と反対派への徹底的締め付けである。政権捜査を不可能にすべき検事総長を孤立させ、政権側の検事だけを出世させるという醜い行為が堂々と行なわれている。

     

    市民団体への利益還元では、反原発が上げられている。市民団体は、福島原発事故を過大に取り上げて「原発恐怖症」をまき散らし、その裏側において太陽光発電で多額の補助金を懐に入れているのだ。韓国検察が正常に機能していれば当然、捜査対象になるものが見逃されている。韓国政治は亡国の淵に立っている。

     

    『朝鮮日報』(8月16日付)は、「脱原発の手先と見物人たちの縄張り争い」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙の朴恩鎬(パク・ ウンホ)論説委員である。

     

    (1)「文在寅(ムン・ジェイン)政権発足直後に7000億ウォン(約630億円)をかけて補修した月城1号機の早期閉鎖、新規原発建設の白紙化、30-40年の稼動許可を得た原発10基の寿命延長の禁止など、脱原発措置が相次いだ。工程率30%のシンハンウル34号機の建設は中断された。そして、全国に太陽光パネルが広がった。毎日サッカー場10個分規模の森を伐採し、山を削っては、貯水池までも太陽光パネルで覆い尽そうとした。この3年間、無謀な脱原発の過程で、産業部は手先、環境部は野次馬の役割を果たした」

     

    韓国の地形では、太陽光発電が不適とされてきた。平地が少なく山間部の多い場所柄だけに、原子力発電が最適とされていたのである。だが、文政権支持の市民団体は、強引に太陽光発電を推進させたのだ。下線部のように、森林を伐採して太陽光パネルを敷き詰めたのである。今回の50日に及ぶ長期の梅雨で、あちこちで山崩れを起こして被害を出している。政府は、その責任についてダンマリを決め込んでいる。いかがわしい政権である。太陽光発電の手先が産業部であり、環境部は野次馬になって煽ったのである。

     


    (2)「原発(中止)で太陽光・LNGを大幅に増やすと電気料金がどれだけ上がるのか、温室効果ガスが本当に減り、気候変動の緩和に役立つのか、PM2.5の量が減るのかどうかに関心があるのだ。これに最も適合しているのが原発、というのは科学的な事実だ。電力1kWh(キロワット・アワー)を生産する際に排出される温室効果ガスが石炭で904グラム、LNGで386グラムである一方、原発はゼロに近い。粒子状物質の排出もほとんどなく、最も安価で、生産する単位電力当たりの死亡者数が圧倒的に低いのも原発だ。原発は2年分以上の燃料が備蓄されている。LNGの50日、石炭の15日よりも燃料供給の安定性が比較にならないほど高い。最もクリーンで安心して使える電気が原発なのだ」

     

    福島原発事故は、不運な面が多かった。最初の原発ゆえに安全性に問題があったのだ。だが、その後の原発は改良されている。そういう技術面での進歩を一切無視した原発廃止論は、感情論そのもという感じを否めないのだ。韓国が、まさにそれである。韓国では、支持派には経済的な利益が絡む場合が多いのだ。つまり、利権化されやすい国である。韓国政治が、その典型例である。

     

    (3)「こうした科学的事実を、脱原発政権も産業部も環境部も知らないわけがない。国連環境計画をはじめとする国際機関も「気候変動に対応するためには原発を活用しなければならない」と勧告している。第9次電力計画は当初、昨年末までに樹立されるべきだった。ところが、年を越して今年6月に延期され、再び8月に先送りされたという。公務員の間では「今年4月の総選挙で電気料金の引き上げ論争を避けたかったため」という話がかなり前から広まっていた。政権は「脱原発」を強引に推し進め、部処の公務員は国民の安全、環境、電気料金の引き上げよりも、政権の顔色をうかがうことが最優先となっている。税金で給料を支払うのがもったいないという国民が1人や2人ではなさそうだ」

     

    国連環境計画をはじめとする国際機関も、「気候変動に対応するためには原発を活用しなければならない」と勧告している。原発は、正しく恐れることが肝要である。「反原発」というと、なにか平和主義者のようなイメージがつくられている。科学的、経済的に議論すべきである。韓国の「感情社会」では、反原発が理由もなくもてはやされるのだろう。

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    韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は8月15日、光復節(日本の植民地支配からの解放記念日)記念式典の演説で、「1人の人権を尊重する韓国と日本の共同努力が、両国国民間の友好と未来協力の橋渡しとなる」と述べた。その上で、「韓国政府はいつでも日本政府と向き合う準備ができている。今も協議の扉を開いている」と強調した。

     

    具体論のない書生の演説である。文大統領は、高らかに理念を語れるが、具体策がないという「演説大統領」である。「日韓両国国民間の友好と未来協力の橋渡しとなる」と語ってみせるが、中身はないのだ。これは、国内政治でも同じである。経済成長目標を掲げても、具体的な対策がゼロである。文大統領は、こうして時間稼ぎをして任期を終わるのだ。

     

    『中央日報』(8月14日付)は、「ジョセフ・ナイ、ハーバード大学特別功労教授、文大統領の平和主義『同盟と武装なしでは現実性がない』」と題する記事を掲載した。


    国際関係分野の碩学、ジョセフ・ナイ、ハーバード大学特別功労教授(同大学ケネディスクール元学長)が、米中対立が深刻化すればするほど韓国は米国との関係を強固にすべきだと助言した。また、日韓関係改善には、韓国が過去に固執せず、現在の日本をありがままに受入れよ、と注目すべき発言をしている。

     


    (1)「11月の大統領選挙でバイデン民主党候補が当選した場合、同盟関係の回復と多国間協力に努めるなどトランプ政権の「米国優先主義」政策に大きな変化があると予想した。ただ、北朝鮮に対して平和主義を貫く路線には懐疑的な見方を示した。ナイ教授はバイデン候補の陣営で外交戦略に関する諮問活動をしているものと知られている。ナイ教授は今回の発言で、「韓国は(中国と日本の間に)サンドイッチのように挟まれているため気の毒だと思うことがある」とし「韓国の適切な戦略は、もっと距離のある国に行って力を借りてくること」と助言した」

     

    「韓国の適切な戦略は、もっと距離のある国に行って力を借りること」としている。それは、米国との関係を密接にすることで解決できる、と示唆しているのだ。ところが、文政権は潜在的な「親中朝・反日米」で米国から離れようとし、中国へ接近したがる傾向を持っている。文政権が、本質的に現実感覚が乏しい「書生政権」であることが災いしている。

     

    (2)「続けて、「離れている同盟国の米国との関係が韓国の保護膜となるだろう」とし「米国と同盟関係を維持することが保護であり保険」と繰り返し強調した。中国の過度な介入を遮断するためには、米国との同盟関係を強固にすることが不可欠ということだ。ただし、ナイ教授は「だからと言って中国と経済的な関係を切れというわけではない」とし「逆に中国経済から繁栄を享受することができなければならない」と付け加えた」

     

    米中対立激化に伴う「米中デカップリング」が、現実化しそうな現在、韓国の二股外交は不可能になる。韓国は、その差し迫った事態に気付いていないのだ。書生政権では致し方ないにしても、世界情勢の変化に敏感になるべきだ。

     

    (3)「現在の国際情勢についてナイ教授は、「習近平-トランプのリーダーシップは失敗した」と断言した。「米中が新型コロナウイルス感染症(コロナ19)問題で国際的リーダーシップを見せることができずにいるがどう思うか」という質問に対する答えだ。また、「習首席は党の統制権があるため、中国が内部的に大きく変わるとは思わない」と述べた。米大統領選挙でバイデン候補が勝利しても、中国の変化がない限り、米中の対立を解消することは困難だということを示唆したものだ」

     

    米大統領選挙でバイデン候補が勝利しても、中国の変化がない限り、米中の対立を解消することは困難であるとの示唆は重要だ。中国が、そこまで米国を過剰刺激したことで、米中の信頼関係は完全に崩壊している。

     

    (4)「ナイ教授は、韓日関係についてより未来志向的な形に変わらなければならないと強調した。ナイ教授は「リーダーにとって重要なのは過去にこだわらず未来を見ること」とし「北東アジア地域の平和と北朝鮮の抑制のためにも、日本を過去に韓国に傷つけた悪魔とみなしてはならない」と述べた。「今の日本は軍事力で韓国を支配していた1930年代の日本ではない」ではないかということだ

     

    下線をつけた部分は、世界的な日本への認識になっている。韓国はそれが理解できず、古い殻に閉じこもったままだ。文大統領は、光復節の演説で次のように語った。

     

    憲法10条に言及して、『個人が国のために存在するのではなく、個人の人間らしい生き方を保障するために存在する国を考える』と述べた。『果たして一人ひとりにも光復がなされたのか、振り返ってみなければならない』と」。

     

    典型的な書生論である。国家が安全保障で確固たる基盤を持たぬ限り、「個人の人間らしい生き方は保障されない」のだ。国家があってこそ個人の人権が保障されるものである。文氏がこの「屁理屈」を持ち出した意図は、慰安婦問題や徴用工賠償問題を遠隔的に取り上げている。人権問題が解決されない限り、日韓関係は一歩も進まないと示唆しているのだ。ナイ教授の主張によれば、余りにも過去に固執した「偏見」と言うべきだ。


    韓国は、現在の日本を認めるべきである。「反日」が、韓国のレゾンデートルと間違えた思考が、韓国をのっぴきならぬ窮地へ追い込んでいる。米中対立の激化が、韓国の居場所を狭めるに違いない。そういう中で、韓国はどのように生きてゆくのか。もはや、中国へにじり寄ることは不可能になるのだ。

     

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