勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 韓国経済ニュース時評

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    文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、来年5月までが任期である。余すところ一年余りとなった。この最後の一年で、念願の南北対話の突破口を開けと国家安全保障会議(NSC)全体会議で発破を掛けた。この会議では、米国のインド太平洋戦略にも初めて言及し、米国の「ご機嫌取り」もするなど、これまでになかった「全方位」へ気配りしている。

     

    南北対話に道を開くには、米朝関係が打開されなければならない。だが、米国バイデン政権は従来のトップダウン方式による交渉を否定している。ボトムアップ方式の交渉積み上げである。こうなると、米朝が来年5月まで、ボトムアップ方式で首脳会談を開催できるまでに関係改善できるか見通し難である。そこで、文氏は7月の東京五輪を利用し、日本・米国・韓国・北朝鮮の4ヶ国首脳会談開催に持込みたいというのである。

    文大統領は、夢のような話を実現させようというのだ。「すべての道はピョンヤンへ通じる」と信じているだけに、今後の韓国外交は混乱必至である。

     

    『朝鮮日報』(1月22日)付は、「『朝米・南北対話の突破口』、トランプを相手に使った政策に再び言及した文大統領」と題する記事を掲載した。

     

    バイデン米国大統領就任を、「米国の帰還」を歓迎する文大統領の言葉は、表向きはバイデン政権の政策に歩調を合わせたかのように聞こえる。しかしその裏面にはトランプ時代の米朝・南北対話への復帰に対する期待と意思も込められている。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が言及した「3年前の春の日」を再現するということだ。

     

    (1)「文大統領は国家安全保障会議(NSC)全体会議を主宰した。文大統領自ら主宰するNSC全体会議は「ハノイ・ノーディール(米朝首脳会談決裂)」対策のため2019年3月に開催して以来1年10カ月ぶりだ。バイデン政権発足を「韓半島平和プロセス」再稼働のモメンタム(契機)にしたい文大統領の意思が反映されたのだ」

     

    文大統領は、南北対話開始による「韓半島平和プロセス」に執着している。それには、米朝の対話が進まなければならない。現在では、その見通しはゼロである。文氏は、韓国が米朝関係改善の糸口をつくると意気込んでいる。だが、バイデン政権は従来方式の交渉を否定しているのだ。韓国は、インド太平洋戦略に参加するような口ぶりである。これは、中国を刺激し北朝鮮へ、安易に南北対話に乗るなという差配をさせるかも知れないのだ。そうなると、韓国が独自に動く余地は限られるはずである。結局、韓国はあちこちを突いてみても、解決案は出て来そうもない。

     

    米中対立の長期化という国際環境の中で、南北関係はどうあるべきか。米韓同盟の緊密化による以外、道はなさそうだ。南北関係は、米中関係が好転しない限り前進しないであろう。これが、冷厳な現実と言うほかない。

     


    (2)「シンガポール合意は、トランプ前大統領が自らの治績として任期中に一貫して宣伝してきたもので、バイデン政権の方向性とは距離が遠いとの指摘もある。次の国務長官に指名されているブリンケン氏も先日行われた米議会上院での公聴会で、従来の対北朝鮮政策に対する全面的な再検討に言及し「どのような選択肢が北朝鮮を交渉のテーブルに引き出す圧力を高めるのに効果的か検討する」との考えを示した。トランプ式の即興的なトップダウン外交ではなく、制裁の強化に焦点を合わせるということだ」

     

    米国新政権は、北朝鮮に対して制裁強化に動き出す意向を見せている。文大統領が、想像している状況とは全く異なっている。米国は、トランプ方式の米朝交渉を否定している。文氏の描く構図は、トランプ式のトップダウンである。これは、米韓関係で大きく食い違う点だ。韓国も、米国式のボトムアップ方式の外交戦略に転換せざるを得まい、となれば、今回の韓国外交部長官交代は、何の意味もなさないだけでなく、むしろブレーキ役になりかねないリスクを抱えている。

     


    (3)「会議の席で文大統領は、「長い膠着状態を一日も早く終わらせ、朝米対話と南北対話に新たな突破口を見いだし、平和の時計が再び動き出すよう最善を尽くしてほしい」「われわれ政府に与えられた最後の1年という覚悟で臨んでもらいたい」と述べた。早期の米朝対話実現の必要性を強調したもので、3日前の新年記者会見で「シンガポール宣言から再び始めねばならない」と語ったこととも相通じる話だった」

     

    韓国は、南北対話を急ぎたいとしても、当の北朝鮮はどうなのか。これまでの北朝鮮の動きを見れば、そういう気配はない。北朝鮮は、金支配体制の保障に関心を持っているだけだ。こういう相手と、なぜそこまで大慌てして交流を急ぐのか。不思議といえばこれ以上、不思議な話もない。韓国の安全保障が第一であり、南北交流はその次の課題であろう。韓国の安全保障を犠牲にした南北交流はあり得ない。現状は、その危険性が高いのだ。

     

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    韓国の国民性は、「感情8割:理性2割」とされる。極めて感情的に動く国民性だ。古代の風水説(占い)が、現在の韓国で生き続けている理由は、この感情過多の国民性によるものであろう。科学的な事実が受入れられず、噂話やお涙頂戴式の涙腺を誘う話になると、いくら正統な理由で否定しても、どうにも真実が受入れられないもどかしさが残る社会である。

     

    旧慰安婦問は、強制連行説が広く罷り通っている。これは、韓国の国民感情を鋭く揺さぶる事件だ。日本による植民地被害という感情に重なって、人権侵害という許しがたい行為への反発という「鉄壁の構図」ができあがっている。

     

    韓国では、この「鉄壁の構図」を悪用する集団(市民団体)が、政府の補助金を貰いながら、幅広い募金活動を行い、その募金を横領する事件を生んだ。責任者(与党議員)は現在、在宅起訴され裁判中の身である。日本であれば、議員辞職に相当するが、韓国与党はこの議員を庇っている。仲間内の犯罪には寛容であり、反対陣営の犯罪には舌鋒鋭く切り込む社会なのだ。

     


    韓国市民運動について、韓国人評論家が鋭い分析を加えているので、それを取り上げたい。

     

    『中央日報』(1月22日付)は、「慰安婦活動がまるで巨大な産業、正義連は解決を望んでいない」と題する記事を掲載した。

     

    この記事は、韓国の女性問題に関わる市民団体が、政治家へ出世する手段として、市民運動を利用していることを告発している。儒教社会の韓国では、女性蔑視の観念が強く、それを払拭する運動が活発である。だが、地道な運動でない点が問題なのだ。政治と結びついた「運動家」が、国会議員として「政治家」になってゆく矛楯を批判しているものであある。

     

    (1)「自らをヒューマニストでありアンチフェミニストと称するオ・セラビ(実名イ・ヨンヒ)氏は最近、共著者として参加して出版した本『フェミニズムはどのようにして怪物になったのか』で、「進歩であっても保守であっても、フェミニズムは触れないのが不文律」と話した。与野党を問わず政治家が、フェミニズムの話を概して取り出さないということだ」

     

    ソウル市長(進歩派)が昨年、セクハラ事件を起こして告発されるや自殺する事件を引き起した。だが、進歩派に属する女性運動の市民団体や与党(進歩派)議員は、ソウル市長に同情して被害者を批判するという、極めて「党派的」な振舞をして批判を浴びた。韓国の女性運動とは何であるか。普遍的正義の実現でなく、政治運動という党派的なものに過ぎないのかという疑念を広く呼び起こしたのである。



    (2)「586運動圏(「86世代」のこと:80年代の民主化に関わった世代)権力と女性団体運動は出発が同じだ。同志的関係にあって、双生児だと考える。上層部の女性運動家のほとんどが『韓国女性団体連合』から活動を始めた。この団体が設立されたのは民主化運動が始まった1987年だ。民主化運動と女性運動が同時にスタートしたのだ。この時から『韓国女性団体連合』関連団体が女性運動の主導権を握った。今までこの団体出身の11人が首相・長官・国会議員になった」

    文政権は、「86世代」による政権である。民主化運動と女性運動が同時にスタートした関係で、両者は双子関係である。女性運動のリーダーは政治家になり、すでに11人が首相・長官(大臣)・国会議員になった。権力密着型である。

     

    (3)「韓国女性運動と『日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯(正議連)』の前身である韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)運動は、同じ幹から出たものだ。1987年に韓国女性団体連合ができ、その3年後の1990年に韓国の進歩左派女性団体36団体が集まって挺対協を作った。尹美香(ユン・ミヒャン)議員(在宅起訴されている)が下っ端活動家だった時から見守ってきた。女性運動と尹美香議員、挺対協と正義連は同じ延長線にある。批判を受けるとしても一緒に受けざるをえない」

    尹美香議員は、韓国女性運動の初めから関わってきた人間である。それだけに、女性運動が政治的出世と金銭的欲望を達成する近道であることを肌で知っていたはずである。



    (4)「正義連は挺対協と統合したが、まだそれぞれ違った法人資格で女性家族部から補助金を別途受けているではないか。こうしたことは非常に間違っている。補助金問題だけではなく、彼女たちにとっては慰安婦活動がまるで巨大な産業になってしまった。慰安婦問題が本当に解決されたら、正義連の存在価値は消えるから…慰安婦問題を本当に解決するつもりがあるのか疑問を感じるのだ。慰安婦問題を一日でもはやく解決するためには、正義連のような市民団体に任せるのではなく、最初から最後まで政府が直接責任を取ってやらなくてはならない」

     

    旧慰安婦支援運動は、人道的配慮という仮面をつけて募金集めの手段に利用してきた。冒頭に上げた韓国の国民性から見ても、同情心を呼び起こし永遠に廃れない「産業」になっているのである。慰安婦支援団体は、公益を装いながら私益を満たす装置に化したのである。

     

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    文大統領は、北朝鮮が「母国」のような存在である。米韓合同軍事演習について、事前に北朝鮮へ連絡して了解を求めるというのだ。ここまで北朝鮮へ気配りするのは、金正恩氏の機嫌を損ねないようにして、南北交流の話し合いを持ちたいという目的からであろう。これによって、文大統領の業績づくりにしたい狙いであろう。

     

    これが慣例になって、米韓合同軍事演習の際、北朝鮮の了解を得るという事態になったらどうするのか。北朝鮮は、韓国に無断で核開発を行っている。北朝鮮のこうした行動を棚上げして、韓国が事前通報することが「不公平」であるという認識にならないのだろうか。文在寅氏が、自分の業績になるかも知れないと見たときの突飛な行動は常軌を逸する。

     


    『朝鮮日報』(1月20日付)は、「文大統領『韓米訓練も北と協議』敵に了解を求めて訓練するのか」と題する社説を掲載した。

     

    文在寅(ムン・ジェイン)大統領は新年記者会見の際、韓米連合訓練中断問題について「必要であれば、南北軍事共同委員会を通じて北朝鮮と協議できる」と述べた。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長が労働党大会で「米国との合同軍事訓練を中止すべきだ」と圧力を加えたことへの回答だ。韓国軍統帥権者が敵の脅威に対抗するための防衛訓練について「敵と協議する」というのだ。

     

    (1)「北朝鮮が核兵器だけでなく核関連施設の全てを申告し、誠意を持って非核化を進め、韓半島に平和体制が定着していけば、韓米連合訓練の実施についても当然協議の対象になるかもしれない。しかし金正恩氏は今回の党大会で36回も核に言及した。純然と韓国を狙った戦術核を開発中であることも明らかにした。原子力潜水艦、極超音速兵器の開発についても公言し、武力を使った統一を宣言したのだ

     

    北朝鮮は、韓国を武力で統一するために戦術核、原子力潜水艦、極超音速兵器などの開発を広言している。こういう相手に、米韓合同軍事演習について通報するとは、信じがたい行動である。あるいは、将来の南北統一を見込んで、日本へ対抗する事前準備程度に軽く見ているのか。決して、傍観すべきことではないのだ。

     

    (2)「現在、韓国独自で北朝鮮による核ミサイル攻撃を阻止する方法はない。そのため金正恩氏の言葉は単なる虚勢には聞こえない。米軍との連合訓練を強化することだけが北朝鮮の脅威に対抗できる手段だ。ところが文大統領は米国ではなく北朝鮮と「訓練についての協議」を行う考えを示したのだ」

     

    北朝鮮の核脅威を防ぐには、米韓合同訓練しかない。その肝心の合同訓練について、北朝鮮に事前通報するとは、手の内を明かすようなものだ。

     

    (3)は、「2018年の南北合意には「軍事訓練および武力増強問題は『南北軍事共同委員会』を稼働して協議する」と明記されている。ところが「敵対行為の全面中断」を約束した軍事合意そのものが、今や北朝鮮の挑発によって意味がなくなった。金正恩氏は「南への警告」として新型ミサイルを相次いで発射し、軍事合意で禁じられた前方での海岸砲訓練も行った

     

    金正恩氏は、韓国への警告として新型ミサイル発射を行っている。こういう約束違反の北朝鮮へ、韓国は律儀に軍事訓練を通報するというから驚く。

     


    (4)「そのたびに文在寅政権は軍事共同委員会を通じて抗議するどころか、「合意違反ではない」として北朝鮮を擁護した。また金正恩氏が「韓米訓練の中断」を要求すると、「軍事共同委員会での協議」に言及した。金与正(キム・ヨジョン)氏の一言で「対北ビラ禁止法」を制定したのと全く同じパターンだ」

     

    北朝鮮のやりたい放題なことについて、韓国は一切抗議をしないのだ。一方、北朝鮮が韓国に要求することは即刻、対応するという北の「属国」同様に振る舞っている。文氏が、こうしたことに何らの矛楯も感じないとすれば、すでに北朝鮮を「母国」と見なしているのであろう。

     

    (5)「2007年に国連で北朝鮮人権決議案が採決された際、「文在寅秘書室長を中心に北朝鮮に問い合わせてから棄権を決めた」とされる疑惑が前回の大統領選挙で大きな問題になった。これに対して文大統領は、「棄権を決めてから、北朝鮮の考えを尋ねる電子通信文を送った」として疑惑を否定した。「先に問い合わせたのではない」ということだ。今や韓米訓練についても「北朝鮮と事前に協議できる」との考えを示した文大統領の言葉を聞くと、この人権決議案の採決についても「北朝鮮に聞いてから決めることくらい大した問題ではない」とも思えてくる」

     

    文氏は、盧武鉉政権時に北朝鮮人権決議案について、北朝鮮へ事前通報した「前科」がある。今回も米韓合同軍事演習を事前通報するのは、ごく当り前の振舞と考えているのであろう。となると、完全に常識を外れた行動になんらの違和感もない性格である。早く、こういう大統領時代が終わることを願うほかない。

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    文在寅大統領は、バイデン米国大統領の同盟国主義に呼応し、これまで口にしなかった「インド太平洋戦略」について初めて言及した。文氏のライフワークである南北接近には、バイデン氏の歓心を買わなければならないと覚悟を決めたようである。これほど、文氏にとっては「南北問題」が最優先課題であることを示している。

     

    『中央日報』(1月22日付)は、「バイデン氏が就任するや、文大統領『インド太平洋秩序』に言及」と題する記事を掲載した。

     

    文在寅(ムン・ジェイン)大統領は21日、「韓半島(朝鮮半島)を含めたインド太平洋地域の秩序が急激な転換期に入っている。堅固な韓米同盟と共に周辺国との協力関係を一層発展させて、今の転換期をわれわれの時間にしていく時」と述べた。文大統領はこの日、主宰した国家安全保障会議(NSC)全体会議で、「韓米両国政府が共通で志向している国際連帯と多国主義に基づいた、包容的かつ開放的な国際秩序を作るために緊密に協力していってほしい」と明らかにした。

     

    (1)「文大統領が主宰した今回のNSC全体会議は、2019年3月米朝首脳会談「ハノイノーディール以降22カ月ぶりとなる。この日の会議は米国バイデン政府の発足に合わせて外交部・国防部・統一部など外交・安保部署の業務報告を兼ねて開催された。目を引いた部分は、文大統領が就任後初めて「インド太平洋体制」を国際情勢判断の新たな枠組みとして提示した部分だ。「インド太平洋戦略」という言葉の中には、米国を中心に同盟国が参加して中国の勢力拡大を牽制(けんせい)する概念が含まれている。文大統領は、これまで韓中関係などを考慮してこの用語を自制してきた」

     

    文氏が、NSC全体会議を主宰して基本方針を指示するスタイルに驚く。文氏の方針が変らない限り、事態の進展しないシステムは、極めて硬直的なのだ。バイデン米国大統領はボトムアップ方式であるが、文氏は相変わらずのトップダウン方式である。韓国は、衆知を集めるべき時期なのだ。

     

    韓国はようやく、米国のインド太平洋戦略に同調する動きを見せ始めた。そうしなければ、南北問題も解決しないという思いであろう。文氏の外交基軸は、相変わらず北朝鮮である。

     


    (2)「文大統領のこの日の発言は、バイデン政府発足を意識したという分析が出ている。宋旻淳(ソン・ミンスン)元外交部長官はラジオのインタビューで「新たに組織される『バイデンチーム』は、中国に対応するにあたり、韓日米3カ国を一つにして力を合わせることに非常に比重を置くだろう」と話した。ただし、文大統領がインド太平洋体制に言及したことに対して「韓国政府の北朝鮮戦略はそのまま置いた状態で米国にコードを合わせようと外側だけ取り繕っても、米国がこれをそのまま受け入れるかは疑問だ」と話した」

     

    下線部は、文氏の思惑を突いている。韓国の北朝鮮接近という命題をそのままにして、米国の歓心を買うべくインド太平洋戦略を持ち出しても、見抜かれると懸念している。南北問題は、米中対立という大枠の中で捉えるべき問題である。韓国が、インド太平洋戦略に加担することは、中国と離れる意味である。二股外交を諦めることだ。韓国が、中朝問題を曖昧にしたままで、インド太平洋戦略を口にしても、バイデン政権は信用しまい。

     

    (3)「文大統領はまた、「変化する国際秩序と安保環境にさらに能動的かつ主導的に対応していき、韓米同盟をさらに包括的かつ互恵的な『責任同盟』に発展させていくだろう」と話した。あわせて中国に対して「最大の貿易国であり、韓半島(朝鮮半島)平和増進の主要パートナー」と規定した後、「来年修交30周年を迎え、一層発展した関係に進んでいく基盤を作らなければならない」と話した」

     

    米韓同盟が、「責任同盟」と言い切ったことは、二股外交を諦めることを意味するのか。一方では、中韓修交30周年を持ち出している。韓国が、中国とあえて敵対する必要はない。ただ、本籍地は米韓同盟であることを片時も忘れてはならない。

     

    日中関係を見れば分かるように、日本は日米関係が基本と態度を鮮明にしているが、中国と経済的にギクシャクした関係にない。韓国も、日本方式を踏襲すればいいのだ。米韓同盟を蜜にすれば、中朝は韓国に対して絶対に横暴な態度を取りにくくなるであろう。それは、背後の米国の存在が、有効なブレーキを掛けさせるからだ。同盟のメリットはここにある。

     

     

    (4)「対日関係に関連しては、「過去に留まらないで、共に知恵を集めて建設的で未来志向的な関係に発展させていかなければならない」と強調した。また「特に今年東京オリンピック(五輪)を成功裏に行えるように協力し、韓日関係改善と北東アジア平和進展の機会にしなければならない」という目標も提示した」

     

    文氏は、東京五輪を舞台に日本・米国・北朝鮮との首脳会談を狙っている。「一発逆転」で外交的行き詰まりの打開を狙うが、実現の可能性は極めて低い。米国は会談に乗らないだろう。北の金正恩氏の来日には大きな疑問符が付く。韓国へも行かない金氏が、「仇敵」日本へ来ることなど夢のまた夢である。外交的な下交渉が何ら進んでいない段階で、儀礼的会談を期待しても無駄だ。文氏は、トップ会談に拘っている。トップダウン方式という悪例に染まり過ぎている結果だろう。

     



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    韓国文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、新外交部長官に鄭義溶(チョン・ウィヨン)大統領外交安保特別補佐官を指名した。この人事は、対米国関係では失敗でないかという見方が出ている。

     

    米国の対北朝鮮外交は今後、トランプ時代のトップダウン方式を捨てて積み上げ方式に戻る。トップダウン方式は、今回の韓国新外交部長官に内定した鄭氏が推進したもので、米韓の外交トップの組み合わせは、はなはだチグハグなものになる。

     

    現在の康京和(カン・ギョンファ)外交部長官を続投させた方が無難であったという指摘もある。康氏は、国連時代にバイデン事務所のスタッフと良好な関係であったというのである。

     


    『中央日報』(1月21日付)は、「韓国の新任外交部長官、バイデン時代の外交に適合しているか」と題する社説を掲載した。

     

    文在寅大統領が20日、3部署の改閣に踏み切った。今回の人事では、現政権で最長期間在任した康京和(カン・ギョンファ)外交部長官が、鄭義溶(チョン・ウィヨン)大統領外交安保特別補佐官と交替する。鄭氏は、この政府初代の国家安保室長を3年間務めた。


    (1)「康京和長官は在任の期間に「無能論」に苦しめられた。自分の声を出すことができず「目に見えない長官」「人形」という汚名まで着せられた。韓米同盟、韓日関係が危機に処したという懸念の声があがった。それでも文大統領は3年7カ月もかたくなに康氏に外交部長官を任せた。その間、韓国外交は孤立無援の立場に置かれた」

     

    康京和長官については、これまで内閣改造のたびに「更迭候補」に上げられてきた。それでも、文政権発足時の閣僚では唯一の「生き残り」として閣内に止まってきた。文大統領夫妻から強い信頼を得てきた結果という。外交手腕ではなかったのだ。

     


    (2)「文大統領が事実上、自身と任期をともにする外交首長として鄭氏を選んだ。これを受け、文大統領が残りの任期の外交の傍点を「韓半島(朝鮮半島)の平和プロセス」の再稼働に置いたという解釈がある。文大統領は18日新年記者会見で2018年シンガポール米朝会談に言及して、「シンガポール宣言から再び始めよう」とも述べた。鄭氏は、国家安保室長としてドナルド・トランプ米大統領と金正恩(キム・ジョンウン)北朝鮮国務委員長の会談を仲裁した

     

    鄭氏は、トランプ氏と金正恩氏の会談を仲裁した。文氏は、この実力を高く買っており、来たるべき「バイデン・金」米朝関係にも生かそうという狙いである。だが、バイデン米国政権では、トップダウン方式を嫌っており、鄭氏の出番がない。むしろ、米国側からは無益な「米朝会談」をお膳立てした張本人として、戦犯扱いされかねないのだ。文氏の目論見は、完全に外れた。

     

    (3)「問題は、鄭氏の人事と重なって20日(現地時間)発足するジョー・バイデン米国行政府の考えは違うということだ。バイデンは鄭氏が仲裁した米朝会談を、「成果のないリアリティーショー」として失敗作だと評価する。金正恩委員長の政治的地位を高めただけで、実質的に得たのはないという見方だ。米国務長官指名者アントニー・ブリンケン氏は19日、上院承認聴聞会で北核問題に対して「良くならず、さらに悪くなった」として「われわれが試みる最初のことは全般的な接近法を見直すこと」と明らかにした」

     

    このパラグラフで、鄭氏の出番は非常に狭められる理由が、明らかにされている。鄭氏は、「米朝トップダウン方式」を勧める基盤を失った。

     

    (4)「これは韓国政府が、トランプ氏を通じて実現しようとしたトップダウン方式の再検討を意味する。このような見解のバイデン行政府が発足する時点に「失敗した」米朝会談の仲裁者とされる人物を外交首長として前面に出した韓国政府に対して、米国は疑問を持つほかはない。より能力があって斬新な人物が必要な時点だった

     

    米国が、鄭氏に対して反感を持つのでないかと危惧されるほどだ。文大統領は、完全に米国の動きを見誤っている。

     


    (5)「鄭氏は2019年、韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の交渉過程で維持を強く望む米国と意見の隔たりがあった。韓日強制徴用問題が浮上した時も成果をあげることができなかった。最近では慰安婦判決まで加えられ、韓日関係はさらに複雑になっている。新たな関係を築いていくべき韓米同盟、葛藤が激しくなっている韓日関係など山積した外交懸案を解決するうえで鄭氏が適任者ではないという考えを振り払い難い」

     

    鄭氏は、外交官上がりである。朴政権時では、重用されなかったので「積弊一掃」でパージの対象にならなかった人物である。となると、外交官として主流にいたのでないかも知れない。このパラグラフでは、複雑な日韓関係で能力を発揮できるか疑問視している。

     

    鄭氏は、金正恩氏を説得して東京五輪へ出席するようにできれば「大金星」となろう。ただ、米国側が首脳会談に応じるか疑問である。文大統領が描く、東京五輪を舞台にする日米韓朝4ヶ国会談の可能性は極めて低い。

     

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