韓国が、新型コロナウイルス感染症での「勝利宣言」を出した。結構なことである。ただ、香港風邪のように、二次感染の揺り戻しが起こらないように祈るのみだ。韓国が、ここまで押さえ込んだ裏には、医療陣の「秒殺」という短時間で診療する神業が効果を上げたようである。普段からゆっくりと患者を診察せず、「3分診療」というベルトコンベア方式の診断システムが、コロナ防疫システムに生かされたというのだ。何か、医療側の寒々とした光景が目に見えるようで、今後の高齢者医療は大丈夫だろうか、という懸念を抱かせるのだ。
『中央日報』(5月3日付)は、「国格大きく高めた『K防疫』いまは新型コロナ2次流行に備えなくては」と題するコラムを掲載した。筆者は、ファン・セヒ/国立中央医療院健康増進予防センター長である。
2020年1月20日、米国と韓国はともに最初の新型コロナウイルス患者発生を報告した。それから100日が過ぎた4月28日、米国の感染者は100万人を超え5万7000人の死亡者が発生した。これに対し韓国は感染者1万752人、死亡者244人だ。韓米間の人口差を補正しても米国は韓国より感染者が14倍、死亡者は35倍も多い。
(1)「新型コロナウイルスのパンデミック状況で「K防疫」(韓国型防疫)が韓国医療の先進性を広め国格をさらに高めている。事実、韓国ほど良質の医療サービスを安く利用できる国はない。数十年間持続した優秀人材の医療界偏重現象、3分診療を量産した低酬価政策、全国民医療保険制度定着、社会貢献目的の大企業先端病院設立など韓国特有の社会文化的要素が絶妙に同時多発的に交わって現れた結果だ」
「3分診療」は、かつて日本でも問題になった。大学病院で半日待たされ、診療時間は「3分」という批判である。日本では、今やこういう状況が改善されているが、韓国は今でも続いている現象である。この状態で、高齢者医療は可能なはずがない。時間をかけて患者に接することが基本である。コロナ検診では、「3分診療」でも問題なかろうが、診療体制としてみれば、肌寒い話だ。決して自慢に値しない。
(2)「韓国医療陣は低酬価政策を突破するために長い年月にわたり診療時に集中力を発揮し患者を数分以内で診療するよう訓練された集団だ。これに対し米国や西欧各国の医療陣は患者の相談も1日に10人、多くても20人を超えない。こうした余裕がある状況になじんだ医療陣が突然押し寄せる患者を速やかに分類し診療するのは容易でないはずだ。その上韓国は5年前にMERSを体験し、感染症の流行に備える防疫体系も備わった状態だ。もちろん先進的な「K防疫」が優秀な医療陣の献身的努力と全国民医療保険制度、MERS経験だけでなされたのではない。防疫指針をしっかりと実践できる水準の高い国民がいたので可能だったことだ」
下線部分も肌寒い話である。「低酬価政策を突破するために長い年月にわたり診療時に集中力を発揮し患者を数分以内で診療するよう訓練されている」という。この状態では、診断技術を上げることは困難であろう。人間を診断する医師が、動物を診断する医師のように振る舞うのでは、大量の誤診がつきまとうはず。韓国の美容整形は、こういう調子で「大量診療・大量手術」で採算を取っているのであろう。空恐ろしい韓国医療の現実が伝わってくる感じだ。
(3)「実際に韓国は世界最高の教育水準、情報通信技術、スマートフォン利用率、防犯カメラ設置率、効率的な宅配システムなどにより国家防疫指針を順守できるインフラと国民的能力が備わった国だ。マスク着用だけでも先進国は少し前から実施しているのに対し韓国は多くの国民が感染初期から実践してきた。また、大衆利用施設の各所に消毒液を備えつけいつでも使えるようにし、公共スペースで他人と2メートルの距離を維持することもしっかり守る。おかげでまだ韓国は爆発的な患者発生がなく、市民が比較的自由に各種施設を利用しながら暮らす。先進国で自己隔離命令を受け暮らす人たちは生活必需品の購入や病院訪問のような必須状況だけ外出が許される状況を「看守のいない監獄」と表現する」
このコラムでは、不思議に日本の話が出てこない。日本を相当に意識しているのであろう。「日本よりも優秀」という言葉がないのだ。
(4)「残った方法はワクチンだが、現在では新型コロナウイルスワクチン開発に必要な基本的なプラットフォームを備えた研究所がない。そのためワクチン発売よりは新型コロナウイルスが世界各地に広がる過程で毒性が徐々に低くなることを待つ方が早そうだ。新型ウイルスが致死率を低くするのは人間と長い歳月を共存するための戦略だが、通常は1~2年が必要とされる」
韓国は、新型コロナウイルスワクチン開発に必要な基本的な研究所がない、と告白している。そういう点では、韓国が欧米の総合科学力で、足元にも及ばないことを認めているようだ。韓国医学界は、日本の「アビガン」をフェークニュース扱いして完全黙殺した。この際、「3分医療」から脱して、高度医療に取り組まれることを希望したい。