勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 韓国経済ニュース時評

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    韓国が、新型コロナウイルス感染症での「勝利宣言」を出した。結構なことである。ただ、香港風邪のように、二次感染の揺り戻しが起こらないように祈るのみだ。韓国が、ここまで押さえ込んだ裏には、医療陣の「秒殺」という短時間で診療する神業が効果を上げたようである。普段からゆっくりと患者を診察せず、「3分診療」というベルトコンベア方式の診断システムが、コロナ防疫システムに生かされたというのだ。何か、医療側の寒々とした光景が目に見えるようで、今後の高齢者医療は大丈夫だろうか、という懸念を抱かせるのだ。

     

    『中央日報』(5月3日付)は、「国格大きく高めた『K防疫』いまは新型コロナ2次流行に備えなくては」と題するコラムを掲載した。筆者は、ファン・セヒ/国立中央医療院健康増進予防センター長である。

     

    2020年1月20日、米国と韓国はともに最初の新型コロナウイルス患者発生を報告した。それから100日が過ぎた4月28日、米国の感染者は100万人を超え5万7000人の死亡者が発生した。これに対し韓国は感染者1万752人、死亡者244人だ。韓米間の人口差を補正しても米国は韓国より感染者が14倍、死亡者は35倍も多い。

    (1)「新型コロナウイルスのパンデミック状況で「K防疫」(韓国型防疫)が韓国医療の先進性を広め国格をさらに高めている。事実、韓国ほど良質の医療サービスを安く利用できる国はない。数十年間持続した優秀人材の医療界偏重現象、3分診療を量産した低酬価政策、全国民医療保険制度定着、社会貢献目的の大企業先端病院設立など韓国特有の社会文化的要素が絶妙に同時多発的に交わって現れた結果だ」

     

    「3分診療」は、かつて日本でも問題になった。大学病院で半日待たされ、診療時間は「3分」という批判である。日本では、今やこういう状況が改善されているが、韓国は今でも続いている現象である。この状態で、高齢者医療は可能なはずがない。時間をかけて患者に接することが基本である。コロナ検診では、「3分診療」でも問題なかろうが、診療体制としてみれば、肌寒い話だ。決して自慢に値しない。

     

    (2)「韓国医療陣は低酬価政策を突破するために長い年月にわたり診療時に集中力を発揮し患者を数分以内で診療するよう訓練された集団だ。これに対し米国や西欧各国の医療陣は患者の相談も1日に10人、多くても20人を超えない。こうした余裕がある状況になじんだ医療陣が突然押し寄せる患者を速やかに分類し診療するのは容易でないはずだ。その上韓国は5年前にMERSを体験し、感染症の流行に備える防疫体系も備わった状態だ。もちろん先進的な「K防疫」が優秀な医療陣の献身的努力と全国民医療保険制度、MERS経験だけでなされたのではない。防疫指針をしっかりと実践できる水準の高い国民がいたので可能だったことだ」

     

    下線部分も肌寒い話である。「低酬価政策を突破するために長い年月にわたり診療時に集中力を発揮し患者を数分以内で診療するよう訓練されている」という。この状態では、診断技術を上げることは困難であろう。人間を診断する医師が、動物を診断する医師のように振る舞うのでは、大量の誤診がつきまとうはず。韓国の美容整形は、こういう調子で「大量診療・大量手術」で採算を取っているのであろう。空恐ろしい韓国医療の現実が伝わってくる感じだ。

     

    (3)「実際に韓国は世界最高の教育水準、情報通信技術、スマートフォン利用率、防犯カメラ設置率、効率的な宅配システムなどにより国家防疫指針を順守できるインフラと国民的能力が備わった国だ。マスク着用だけでも先進国は少し前から実施しているのに対し韓国は多くの国民が感染初期から実践してきた。また、大衆利用施設の各所に消毒液を備えつけいつでも使えるようにし、公共スペースで他人と2メートルの距離を維持することもしっかり守る。おかげでまだ韓国は爆発的な患者発生がなく、市民が比較的自由に各種施設を利用しながら暮らす。先進国で自己隔離命令を受け暮らす人たちは生活必需品の購入や病院訪問のような必須状況だけ外出が許される状況を「看守のいない監獄」と表現する」

     

    このコラムでは、不思議に日本の話が出てこない。日本を相当に意識しているのであろう。「日本よりも優秀」という言葉がないのだ。

     

    (4)「残った方法はワクチンだが、現在では新型コロナウイルスワクチン開発に必要な基本的なプラットフォームを備えた研究所がない。そのためワクチン発売よりは新型コロナウイルスが世界各地に広がる過程で毒性が徐々に低くなることを待つ方が早そうだ。新型ウイルスが致死率を低くするのは人間と長い歳月を共存するための戦略だが、通常は1~2年が必要とされる」

    韓国は、新型コロナウイルスワクチン開発に必要な基本的な研究所がない、と告白している。そういう点では、韓国が欧米の総合科学力で、足元にも及ばないことを認めているようだ。韓国医学界は、日本の「アビガン」をフェークニュース扱いして完全黙殺した。この際、「3分医療」から脱して、高度医療に取り組まれることを希望したい。


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    米中コロナ戦争が始まる

    世界供給網に点検の動き

    韓国貿易に赤字の津波?

    輸出依存度の高さ泣き所

     

    世界は現在、コロナによって大混乱の坩堝と化している。各国とも、目前の感染拡大を防ぐことに懸命だ。それも5月を過ぎれば様相は変わる。事態が峠を越して一息入れれば、コロナによる賠償請求問題が浮上するに違いない。それは、「火元」である中国とWHO(世界保健機関)による情報隠蔽への追及となるだろう。

     

    中国は、武漢での新型コロナウイルスを把握しながら発表せず、医師らを処罰するなどの隠蔽工作を行なった。さらに、WHOを抱き込んで事態が軽症であることを印象づけ、各国への警戒心を緩ませた。これが、パンダミックへの戸口を広げる要因となった。中国とWHOの初動ミスが、現在のような深刻な事態を招いた要因なのだ。

     

    米中コロナ戦争が始まる

    米国は、コロナによる最大の犠牲者を出した被害国である。それだけに、事態究明への意思は極めて強い。ホワイトハウスは、CIAなど情報3機関に対し中国とWHOとの癒着関係の究明まで調査させる徹底ぶりである。米国の強硬姿勢で、何が起こるのか。今回の新型コロナウイルスは、防疫問題を超えて政治問題化するだろう。安全保障問題やサプライチェーン問題にまで飛び火することを示唆するのだ。

     

    中国は、事態が意外な展開をし始めている様子に、欧州への「マスク外交」を中断させている。中国は、米国よりも被害が少ないと装っていた。米国から、「そんなはずはない」と批判を受けて、死亡者数を増やすなど「手直し」を余儀なくされている。このように、中国は4月中旬から守勢に転じている。中国が、「マスク外交」を中断させざるを得なくなった背景だ。

     

    米国は、中国へ不信の念を強めている。中国外交部報道官が、SNSを使って「コロナは、米国兵が中国へ持込んだ」というフェイクニュースを世界に向けて発信したことが出発点である。中国は、自国の責任を逃れて米国へ被せるという、極めて卑劣な手段に出たのである。後に、駐米中国大使が「馬鹿げた話である」とSNS記事を打ち消した。米中対立の沈静化を図っている。

     

    この稚拙な行動こそ、中国がコロナ禍を外交的に逆利用する陰謀を企んでいたことを証明した。公平な目で見て、米国の怒りとその対応は当然というべきだろう。米国には、非難されるべき点はないからだ。

     

    米国は今や、米中貿易戦争に次いで、「米中コロナ戦争」に突き進む意向をはっきりと固めている。米中貿易戦争は、関税率引上げによって中国の保護主義撤廃と非公正貿易慣行の是正を目的とした。米中コロナ戦争は、さらに事態を深刻化させている。中国にサプライチェーンのハブを置くリスクを確認させられたからだ。

     

    中国政府の発したロックダウン(都市封鎖)は、生産機能を強制的に停止させた。米国にとっては改めて、中国が抱える感染症を引き起す風土条件を考慮しなければならなくなっている。それは、公衆衛生思想面で未成熟であることだ。感染症の6割は、野生動物が介在している。中国には、今なお野生動物を食する習慣が残る。いわゆる、「下手物(げてものくい)食い」だ。これが、「食通」とされるから手に負えないのである。こうした食文化によって、中国発感染症の抑制がいかんともし難いことを示している。

     

    過去に発生した感染症のうち、香港風邪(1968~1970年)やSARS(2003年)は、中国が発祥地である。そして、今回の新型コロナウイルスも同じだ。中国は、ここ約50年間で3回も世界的感染症を引き起しているのである。こういう「危険地帯」の中国が、世界のサプライチェーンのハブを形成している。危険極まりないことなのだ。米国政府は、野生動物の食用禁止を中国へ要求しているほどである。

     

    世界供給網に点検の動き

    感染症危険地帯の中国が、世界サプライチェーンのハブであることは、断層帯の上に建造物を建てるようなリスクを伴っている。そこで、米国は「ハブ」の移転先として、自国か同盟国を安全地帯として選択すべきである、という提案が行なわれている。中国で感染症が発症した場合、今回のように隠蔽されてしまえば手遅れになって甚大な被害を受ける。そこで、同盟国であれば、情報の隠蔽も行なわれず「共同対処」が可能になる、という理屈付である。

    (つづく)

     

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    韓国は、輸出依存度が4割という不安定経済である。世界経済が激動期に入れば、最初にその洗礼を受ける体質である。過去2回の通貨危機がそれを物語っている。今回の新型コロナウイルスによるパンダミックは、1930年代の世界恐慌再来と恐れられている超大型の不況である。韓国経済が、この大波に翻弄されるのは不可避であろう。

     

    定期的に襲われる通貨危機であれば、韓国にその備えがあるはずである。不思議にもそれがないのだ。通貨危機を回避するには、日本との通貨スワップ協定の締結が不可欠である。過去2回の通貨危機では、日本がウォン相場安定に協力してきた。現在は、日韓不和によって通貨スワップ協定は自然消滅したまま。韓国は、頻りと復活を求める動きを見せている。日本が、これに取り合わないのである。普段、「反日一筋」の韓国である。さあ、これからどうする?

     

    『朝鮮日報』(5月2日付)は、「韓国、4月貿易赤字94600万ドル、20大輸出品目のうち17品目が減少」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「4月の韓国の貿易収支(商品の輸出入差)が99カ月(83カ月)ぶりに赤字に転じた。4月の輸出入動向によると、新型コロナウイルス問題で世界経済が冷え込んでいるため、4月の輸出(3692300万ドル=約39482億円)は前年同月比で24.3%減少した。国内消費・生産も振るわず、輸入(3786900万ドル=約4493億円)も前年同期比で15.9%減少した。しかし、輸出の減少幅があまりにも大きいため、94600万ドル(約1011億円)の貿易赤字が出た。輸出を支えていた半導体(72億ドル=約7700億円)が14.9%減、自動車(部品を含め34億ドル=3636億円)が40.9%減だった。韓国の20大輸出品目のうち17品目が減少だった」

     

    韓国の輸出を支えてきた半導体と自動車が、4月は揃って大きく落込む事態になった。これで4月の貿易収支は、9億4600万ドルと99カ月(8年3ヵ月)ぶりに赤字に転落した。しかも、今後の視界はゼロである。悪化することはあっても改善見込みはない。この結果、経常赤字は避けられなってくる。ウォン安を招く通貨危機である。

     

    (2)「6月発表される4月の経常収支(貿易収支にサービス・所得収支を加えたもの)も大規模な赤字になるものと見られている。外国人配当が4月、海外に一斉に流出したためだ。輸出が短期間に回復する可能性は低い。中国・米国・欧州などの主要輸出市場の状況はますます悪化しており、4月30日(現地時間)、欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は「今年のユーロ圏(ユーロ通貨使用19カ国)の経済は最大で12%縮小する可能性がある」と述べた」

     

    6月に発表になる4月の経常収支は、すでに赤字転落が避けられなくなった。5月以降の経常収支についても状況に変化はない。

     

    (3)「韓国はアジア通貨危機に見舞われた1998年から貿易黒字基調を維持してきた。過去20年間に貿易赤字を記録した年は世界金融危機の2008年だけだった。月別で見ても、2008年の世界金融危機以降、20101月と20121月を除いてずっと黒字だった。このように当然視されてきた貿易黒字も、今となっては昔話になるかもしれないという危機感が高まっている。米国や欧州などでの大量失業、中国のマイナス成長(13月期)などが続けば、国内総生産(GDP)における輸出比率が44%(2018年基準)という韓国経済は落ち込むほかない」

     

    過去20年間で貿易赤字を記録した年は、世界金融危機の2008年だけである。今後、この基調に変化が起これば、韓国経済は、成長の支えを失う事態になる。まさに、新事態の出現である。

     

    (4)「もう一つの重要な経済指標である「経常収支」も大幅に悪化するとの見通しが出ている。4月は企業配当が集中する時期で、配当を受けた外国人が配当金をドルに変えて海外に一斉に持ち出す。このため、本源所得収支(韓国人が海外で受け取った所得と外国人が韓国で受け取った所得の差額)が主に赤字となる場合が多い。今年4月も前年同月(マイナス418000万ドル=約4470億円)とほぼ同額の赤字が出ると見られている。このように、経常収支の赤字幅がさらに広がれば、為替などにも影響を与えることになる

     

    今年4月の経常収支は、昨年4月と同様に約40億ドルの赤字予想になった。5月以降もこの赤字基調が続けば、事態は本格的な通貨危機に向けて暗転する。その判断は、データが出てくる7月以降に持ち越されるであろう。

     

    (5)「産業通商資源部は同日、「今回の危機は、世界金融危機(20082009年)、ウイルス危機(2003年の重症急性呼吸器症候群〈SARS〉、2009年の新型インフルエンザ、2015年の中東呼吸器症候群〈MERS〉)、原油価格急落危機(20152016年)を合わせたような複合危機」と述べた。その一方で、「民間消費による消費財輸入、国内生産に貢献する資本財・中間財輸入は引き続き維持されている」として、「これは韓国が新型コロナウイルス防疫模範国として認められている中で、国内製造業が正常に稼動し、主要国に比べ内需条件も比較的良好であることを傍証するものだ」と言った。しかし、専門家らは「政府の認識はあまりにも安易だ」と指摘する

     

    政府当局の危機意識は、次のようなものを複合化したものという。

     

        世界金融危機(2008から2009年)、

        ウイルス危機(2003年の重症急性呼吸器症候群〈SARS〉、

        2009年の新型インフルエンザ、

        2015年の中東呼吸器症候群〈MERS〉)、原油価格急落危機(2015~2016年)を合わせたような複合危機

     

    これだけの危機が、一度に韓国へ到来すればどうなるのか。まさに「国難」である。その備えはゼロである。日韓関係は最悪の状態だ。結論は、すでに出たようなものであろう。


    あじさいのたまご
       

    薫風香る5月だ。日韓関係は凍結したままである。世界は、新型コロナウイルスのパンダミックに襲われているが、日韓で連絡し合うこともない。韓国では、先にコロナ禍が下火になって余裕も出てきた。日本が、要請してくればマスクを寄付するという姿勢がみえみえである。これを見透かしている日本は、孤塁を守って頑張っている感じだ。

     

    安倍首相が4月29日の参議院予算委員会で、「韓国は隣国であり重要な国だ。新型コロナ対応で協力したい」という趣旨の発言をした。韓国側は、この発言を重視しているが、実際には「リップサービス」であり、何の動きもない。国会でのやり取りである。「韓国と協力しない」と、発言できるはずがないのだ。

     

    『中央日報』(5月2日付)は、「安倍首相・茂木外相『コロナで韓国と協力したい』 韓国外交部『要請ない』」と題する記事を掲載した。

     

    新型コロナウイルス感染症に関連し、安倍晋三首相が4月29日の参議院予算委員会で「韓国は隣国であり重要な国だ。新型コロナ対応で協力したい」という趣旨で発言したことを受け、韓国外交部が1日、「必要な分野で日本と協力する」という立場を明らかにした。

    (1)「外交部当局者はこの日、「安倍首相の国会での発言については認知している」とし、「日本は我々の近い隣国であり、韓国政府は新型コロナ対応など必要な分野で日本と協力していこうとしている」と述べた。最近、国内外のメディアでは、韓国側が日本にマスクや遺伝子増幅(PCR)方式診断キット支援を検討しているという内容が報道された。しかしこの当局者は「国内の事情に余裕ができしだい、要請国(日本)の状況を勘案しながら防疫物品の輸出、人道的支援など海外搬出を積極的に検討していく」とし「日本政府に対する政府レベルの支援を打診したことはなく、要請を受けたこともない」と述べた。日本政府が要請してこない限り、先に支援はしないということでもある」

     

    台湾は、日本へ200万枚のマスクを寄付してくれた。日本が、要請したものではない。寄付とは本来、相手の置かれた立場を思いやってするものだろう。要請があったから、「寄付する」というレベルの話ではないのだ。韓国は、日本が要請しないから「マスクを送らない」という態度である。これで、日韓関係は修復されることなく、永遠に切れた感じである。

     

    日本にとっての韓国の位置と、韓国にとっての日本の位置は全く異なっているはず。韓国は、これを錯覚して「同等」と見ている。ならば、安保や就職の問題でも日本へ依存してはならないのだ。こういう日韓関係におけるウエイトの置き方の見誤りが、日韓関係を解決不能な問題として追い込んでいるのである。



    (2)「同日、茂木敏充外相も韓国に協力を要請するのかという質問に対し、「韓国は隣国であり、さまざまな対応をするうえで連携が重要だと考える」と答えた。続いて「韓国だけでなく各国のコロナ関連の経験と知識が国際社会で共有されるのは感染の拡大を防止するうえで意味がある」とし「PCR検査キットの報道を見たが、韓国政府と具体的な相互協議はしていない」と述べた」

     

    下線部分に、日本の本音が見え隠れしている。韓国だけでなく、多角的に各国とコロナ対策で協力していく。茂木外相は、こういう「原則論」を述べたに過ぎない。

    (3)「昨年、韓日関係が悪化した後、両国外交当局が同じ日に「近い隣国」などと表現するのは珍しい。外交関係者の間では、対北朝鮮問題と共に新型コロナ対応協力で両国政府が接点を見いだすことが可能という見方が出ている。ただ、どれ一つとして簡単に解決する問題でないため、今回の安倍首相と外交当局の発言は儀礼上の発言とも考えられ、本格的な雪解けムードとは見なしがたいという分析も出ている。両国政府は強制徴用・輸出規制問題、韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)など敏感な問題で正面衝突し、新型コロナ事態では入国制限問題で感情の溝が深まった状態だ」

     

    コロナを巡る日本側の発言は、外交上の儀礼に過ぎない。国会での質疑で、韓国との交流を否定するような発言ができるはずがないからだ。率直に言えば、「マスクごとき」で日本の対韓外交の基本姿勢を変えられるはずがない。

    (4)「ひとまず青瓦台(チョンワデ、韓国大統領府)と外交部は「国内の世論を勘案すると、日本が先に要請しない限り韓国が先に支援する雰囲気ではない」という立場だ。これに先立ち安倍首相や茂木外相の発言も「韓国と協力するのか」という質問に対して原則的なレベルの返答をしたという解釈もある。韓国・日本は現在、米国を通じて「間接協力」をしている」

     

    韓国は、日本側の固い態度を認識すべきだろう。日韓問題の全ては、韓国の条約不履行や破棄によって引き起されているからだ。日本が、韓国へ妥協するという必要性はゼロである。

     

    ムシトリナデシコ
       

    北朝鮮最高指導者・金正恩氏の消息が途絶えて以来、西側では種々の情報が流れている。ほぼ重体説であるが、その中で韓国だけは「健康説」を主張している。乗馬姿が目撃されたとか、あえて重体説を否定している。

     

    こういう「異説」を主張している背景は何か。一つは、米国から極秘情報が伝えられていないことだ。安倍首相は、国会の質疑で次のように答えている。「北朝鮮に関しても米国と情報交換しているが、その内容は申し上げられない」という。米国とは、正恩氏情報も交換済みという認識だ。

     

    もう一つは、あくまでも北朝鮮との「友誼」を大事にしていくという姿勢である。世界が、どんな情報を流そうとも、北朝鮮当局の発表を信じるというもの。だが、これも程度問題である。韓国国民にとって、北朝鮮の極秘情報も掴めない韓国政府では、安全保障で大きな抜かりがあり得るというリスクである。

     

    台湾情報当局も、北朝鮮に関し次のような分析が報じられている。

     

    「台湾政府の情報機関、国家安全局の邱国正局長は4月30日、重体に陥っているなどと一部で報じられている北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長について、病気だとの見方を示した。公開された情報に基づき、このように推察されるとした。立法院(国会)外交および国防委員会の答弁で述べた。北朝鮮での権力交代や力の真空状態の出現で、東アジアに混乱が生じた際の対応について与党・民進党の立法委員(国会議員)から問われると、邱氏は準備ができているとの姿勢を示した」(『フォーカス台湾』4月30日付)

    台湾の情報機関、国家安全局長は、公開情報からこのように解釈しているという。こうなると、韓国情報当局の認識がますます謎に包まれるのだ。多分、韓国大統領府が「健在説」に固執して、情報当局の口封じをしていると見られる。この程度の認識で、仮に北朝鮮軍に不穏な動きがあってもそれを認めず、韓国軍に出動命令を出さず、あえて敗北の道を選ばせるのでないか。そんな危惧の念さえ浮かぶのである。

     


    『朝鮮日報』(4月30日付)は、「米CIA元分析官、文政権『金正恩を敵から同業者に変える努力』」と題する記事を掲載した。

     

    文在寅政権が韓半島の平和・統一政策を推進しながら、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長を「敵」から「同業者」変容させようと努力している、という主張が提起された。これは、米中央情報局(CIA)の北朝鮮関連アナリストだったジョン・パク博士が4月28日(現地時間)に出版した著書『北朝鮮の謎の若い独裁者に関するある元CIA要員の洞察』で、このように主張したものだ。

     

    (1)「EBSメディアは2018年、金正恩委員長を「韓半島の平和時代を切り開く指導者」「世界最年少の国家元首」と紹介、ほほ笑む金正恩委員長の顔と胴体を組み立てる「立体パズル」を子ども向け教具として製作・発売して物議を醸した。パク博士は「(このような現象は)金正恩委員長が外交やあいまいな非核化宣言によって「残酷な独裁者」という評判から脱しようという努力が効果を上げていることを示唆している」と述べた。そして、「事実、このようにして子ども向けに作られた小さな金正恩立体パズルを見ると、2019年にダン・コーツ米国家情報長官(DNI)が米議会で北朝鮮の相次ぐ核兵器開発、深刻なサイバー攻撃、殺傷用化学兵器保有状況を挙げ、『北朝鮮は依然として脅威となる存在だ』と証言したことを簡単に忘れてしまうかもしれない」と言った。

     

    元CIA北朝鮮分析官が、文政権は北朝鮮・金正恩氏のイメージを「敵」から「同業者」(仲間)へ変えさせる戦略を取っていると分析。米国が韓国に不信感を持っている最大の理由は、ここにあることが分かる。北朝鮮が、共産主義国でなく平和愛好国というレールに乗せて、韓国の「同業者」に仕立て上げているのだ。

     

    文政権の目的は何か。それは、韓国国民に対して「共産主義は怖くない」というイメージを植え付けることだ。このイメチェン作戦が成功すれば、韓国も共産化できるという狙いである。文政権の経済政策は、「反市場・反企業」主義である。決して資本主義経済のルールにしたがってはいない。「反日主義」も、朝鮮半島の共産化にとって不可欠のツールとして用いようとしている。北朝鮮と韓国は、「反日」で共同戦線を組める得がたい手段であるからだ。

     


    (2)「金正恩委員長のイメージがソフトになることで、彼の本性や戦略的目標をきちんと把握できず、彼の戦術に過剰に、あるいは消極的に対応するという問題が発生する可能性もあるという。また、パク博士は「こうした問題は、金正恩委員長が韓半島で引き続き何かをすることができる空間を提供するだろう」と指摘した。パク博士は、金正恩委員長に対する間違った認識ががん細胞のように広がっている、という博士の問題意識が、この著書の結論に反映されているようだ」

     

    文政権が、金正恩氏のイメ-ジを「平和の使徒」に変えて、その偽りのイメージで北朝鮮と韓国を一体感させる。こういう壮大な夢を描いていたのであろう。正恩氏は37歳である。80歳まで北朝鮮の最高指導者に止まっている間に、韓国は北朝鮮と統一する計画であったに違いない。その目玉になる正恩氏が、突然の「重体説」である。韓国は、絶対に受け入れ難いニュースである。藁をも掴む気持ちで、「健在説」に固執しているのであろう。正恩氏が消えてしまったならば、文政権の提携相手がいなくなるからだ。

     

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