勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 韓国経済ニュース時評

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    韓国は、最も恐れていた貿易赤字がいよいよ現実化する気配を見せてきた。4月1~10日までの実績では、貿易赤字が約24億ドルとなったことが判明した。月間レベルでは72億ドルとなる。経常赤字は避けられないであろう。ウォン相場には、大きなマイナス材料になる。13日12時12分のドル・ウォン相場は、1ドル1218.85ドルである。7ドルのウォン安である。

     

    『中央日報』(4月13日付)は、「4月初めの韓国の輸出18.6%、新型コロナの影響か」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「4月1日から10日までの韓国の輸出額が前年同期比18.6%減った。輸出減少傾向は世界的な新型コロナウイルス感染拡大の影響とみられる。関税庁が13日に明らかにしたところによると、今月1~10日の輸出額は122億ドルで前年同期比18.6%(28億ドル)減少した。この期間の操業日数は8.5日で昨年と同じである。主要輸出品目のほとんどが振るわなかった。

     

    半導体     1.5%減

    乗用車     7.1%減

    石油製品   47.7%減

    無線通信機器 23.1%減

    自動車部品  31.8%減

    石油製品の落込みは、原油価格の急落を受けて石油製品が、いち早く値下がりした影響が強くでている。スマホや自動車部品も不振であった。

     

    輸出相手国別でも主要市場で一斉に輸出が減少した。

    中国   10.2%減

    米国    3.4%減

    EU   20.1%減

    ベトナム 25.1%減

    日本    7.0%減

    中南米  51.2%減

    中東    1.2%減
    中南米が51%強と半減した。資源価格の急落で輸入能力が落ちた結果であろう。中国が10%減であるのは、新型コロナウイルスによる生産減で、中間財輸入が減ったものと見られる。一方、輸入も146億ドルで前年同期比13%(21億8000万ドル)減少した。これに伴い、今月に入り10日までの韓国の貿易赤字規模は、約24億ドルとなった」

     

    以上のように、1~10日までで貿易赤字がすでに約24億ドルとなっている。月間ベースにすれば、約72億ドルとなる。韓国の経常収支は、貿易収支に「10~20億ドルのプラス」となるので、4月の経常赤字は不可避と見られる。ウォン相場は下落の方向であろう。

     

    こうなると、外国人投資家が韓国株の売却に拍車をかけるとみられる。

     

    『中央日報』(4月13日付)は、「13兆ウォン売って469兆ウォン残った、外国人投資家の韓国株式保有『急減』」と題する記事を掲載した。

     

    (2)「3月外国人投資家らが韓国市場で売った株式の規模が13兆ウォンに達することが明らかになった。金融監督院は13日、報道資料を通じ「3月中に外国人投資家は上場株式13兆4500億ウォン相当を売り越した」と発表した。投資家の国籍別では米国が5兆5000億ウォンを売り越し、英国は1兆9000億ウォンなど欧州が5兆ウォン相当を売り越した」

     

    欧米投資家の売却が、圧倒的である。国際的な視点で韓国株を見ている証拠である。韓国経済の脆弱性を知り抜いているのであろう。

     

    (4)「外国人の売り攻勢は、新型コロナウイルスの感染拡大傾向が本格化した2月から始まったが、2月はこれほど多くは売っていない。2月の外国人投資家の売り越し額は3兆2250億ウォンだった。3月はこの金額の4倍を超える株式を売った形だ。外国人投資家が、保有する韓国上場株式の総額は500兆ウォンに満たない。外国人株式保有額は、次のような推移である。

    昨年12月  593兆2000億ウォン

    今年 1月  581兆5000億ウォン

       2月  545兆1000億ウォン

       3月  468兆7000億ウォン(2016年以降4年来の低水準)」

     

    外国人株式保有額が、昨年12月と比べ3月は21%も減少していることが分かる。これが、さらに売り込まれるのであろう。

     

    (5)「外国人投資家は、韓国の時価総額の3分の1ほどを支える重要な投資家だ。ところが彼らが占める割合も減った。全時価総額のうち外国人投資家の保有金額は、昨年12月から今年2月までの3カ月間に33.3~33.8%水準を維持してきたが、この割合は3月32.4%に落ちた」

    韓国株の時価総額に占める外国人投資家の比率は、3分の1も占めている。それだけに、外国人売りの影響が大きく出てくる構造だ。マクロ経済指標に敏感な反応を見せるであろう。

     

     

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    コロナ恐怖は、消費者に深い傷を残していることが分かった。感染症による恐怖感が、その影を消すのはかなり先という見通しだ。米コンサルティング企業、マッキンゼー・アンド・カンパニーの報告書によると、韓国消費者の61%が、コロナ不況は最低、半年以上続くという予想である。この、調査は日本にも参考になろう。

     

    韓国でコロナ恐怖が収まらないのは、感染者が退院した後に再陽性になる者が続出していることも影響しているだろう。韓国の中央防疫対策本部は、12日の記者会見で、新型コロナウイルスによる感染症が完治し隔離が解除された後、再び陽性判定を受けた人が計111人になったと明らかにした。

     

    それによると、再陽性の原因がウイルスの再活性化なのか、再感染なのかなどを調べているという。また、再陽性は海外でも報告があり、国内の調査結果を世界保健機関(WHO)などと共有するという。再び陽性が確認されるケースが続いていることを受け、防疫当局は感染者の自主隔離解除後の管理を強化する方向で指針を補完する方針だ。以上は、『聯合ニュース』(4月12日付)が報じた。

     

    原因不明で、再陽性になるとは「コロナ恐怖」を生むに十分な内容である。防疫当局は、感染者の自主隔離解除後の管理を強化するとしている。一度、感染したならば、なかなか元の健康体に戻れない「業病」だ。

     

    『聯合ニュース』(4月12日付)は、「新型コロナによる経済ショック、韓国消費者の61%『半年以上続く』」と題する記事を掲載した。

     

    韓国で新型コロナウイルス感染者の増加ペースが鈍化しているが、同ウイルスの感染拡大による経済への衝撃が半年以上続くとみている消費者が4人中3人に上り、経済的不安が大きいことが12日、分かった。

     


    (1)「米コンサルティング企業、マッキンゼー・アンド・カンパニーの報告書によると、3月28~29日に18歳以上の韓国人消費者600人を対象にアンケートを実施した結果、「経済が2~3カ月以内に上向き、新型コロナウイルスの感染拡大前の水準を回復する」との回答は25%にとどまった。61%は「経済への衝撃が6~12カ月、またはそれ以上続き景気低迷や低成長に陥る」、14%は「経済に恒久的な衝撃が加えられ長期の景気低迷に陥る」と答えた」

     

    下線部分は消費回復までに、61%が半年以上1年、あるいはそれ以上の期間を予測する。また、14%は恒久的な長期の景気低迷を予想している。両方を合せれば、75%がきわめて悲観的な見方をしている。これでは、韓国経済が活力を取り戻すのは随分、先のこととなろう。

     

    (2)「回答者の多くは、既に所得や消費など個人的な経済生活が影響を受けていることが分かった。過去2週間の個人所得が「減った」との回答は46%だったが、「増えた」との回答は2%にすぎなかった。残る52%は変動がなかったと答えた。消費も「減った」との回答が47%で最も多く、「増えた」が28%、「変動なし」が25%だった。特に、「現在の状況に照らし、消費支出に注意すべきだ」との答えが51%に達したのに対し「そうではない」との答えは9%にとどまり、不安を感じる消費者が圧倒的に多かった。

     

    下線部のように52%は、個人所得に変動がなかったという。給与所得者であれば当然のこと。46%は、個人所得が減ったとしている。仮に、所得が減らなくても、社会のムードが暗ければ、消費を減らしても増やすことにはあるまい。

     

    (3)「新型コロナウイルスの感染拡大が、回答者本人や家族の家計に2カ月以上にわたり悪影響を与えると予想する回答者も91%に達した。マッキンゼー・アンド・カンパニーは、韓国内の新型コロナウイルスに関する状況が安定化したが、消費者心理の回復にはつながっていないとの見方を示した」

     

    コロナ感染症の終息宣言が出ない限りは、国民の警戒感が続くはずだ。前述のように、再陽性者が増えていることが、依然として警戒感を高めている。新型コロナウイルスの業病ぶりが窺える。


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    韓国企業を襲う二大疾患

    3月の大企業貸出が急増

    企業格付け引下げ予告へ

    ソロス氏の投資戦略失敗

     

    韓国政府は、自らの経済政策失敗をカムフラージュし続けている。4月11日の大韓民国独立記念日では、文大統領が「親日ではなく独立運動がわれわれの歴史の主流」と反日宣言を繰返した。目的は、目前に迫った15日の総選挙で与党勝利へ向けてのテコ入れである。

     

    韓国は、親日とか反日とかいう75年前の日韓併合時代の話をしている段階でない。新型コロナウイルスの急襲で、経済がガタガタ状態に陥っていることへの対策を問われている。それを棚上げし、あえて「反日」で煙幕を張っている積もりであろう。

     

    韓国経済は、文政権の登場でその骨格が大きく傾いている。反企業政策によって、法人税率を引上げる。労働組合向けには、性急な最低賃金の大幅引上げと週労働最大52時間制を実施する。こうして、経済構造に大きな軋みが発生した。企業は、海外へ脱出しており製造業での解雇が進み、30~40代の壮年層失業率が高まる逆立ち政策を取っている。

     


    韓国企業を襲う二大疾患

    文大統領就任の2017年5月以降、韓国経済は左前に転じた。韓国企業は、遊休資産の売却をするなど自衛手段を取っている。そこへ、今回の新型コロナウイルス急襲である。韓国企業にとって最悪事態へ突入した。韓国企業は、「文大統領病」という慢性疾患を抱えた上に、コロナ禍による営業中断で「キャッシュフロー」の流れが、急激に細っている。

     

    韓国企業にとっては、二大病根に悩まされるわけで、にわかに先行き懸念が深まってきた。とりわけ、キャッシュフローの中断されかねない状況では、企業成長に重大な後遺症を残すはずだ。まさに、「勘定あってゼニ足らず」の状況になれば、韓国企業は首根っこを押さえられる事態を迎える。現状では、そのリスクがきわめて大きくなってきた。

     

    韓国大企業は、2年前から流動性確保のために、資産売却措置に出ていた。その経緯から見ておきたい。ここから、病める韓国企業のひ弱な実態が掴めるだろう。

     

    2018年上半期の時点で、大企業が手持ち資産を現金化していた。例えば、サムスン、現代(ヒョンデ)自動車、GS、新世界(シンセゲ)、富栄(プヨン)、錦湖(クムホ)アシアナなど大企業が、相次いで社屋など保有不動産を処分したのである。同年上半期、ソウルの大型オフィスビル(延べ面積3300平方メートル以上)の取引金額は、4兆6151億ウォン(約4107億円)に上った。前年同期の3兆5017億ウォン(約3116億円)より31.8%も増えた。サムスン、現代自動車、錦湖など資産5兆ウォン以上(約4450億円)の大企業が、上半期だけで1兆1319億ウォン(約1007億円)相当の建物を売却していた。以上は、『韓国経済新聞 電子版』(2018年9月4日付)が報じた。

     

    韓国を代表する大企業が、2018年上半期に手持ち資産の23%を売却し、手持ち現金を増やしていた。それだけに、現在すでに売却する固定資産が枯渇していることは疑いない。こういう状況下で遭遇したコロナ禍による売上急減は、経営存続を不可能にするほどの危機と背中合わせになっていることを示唆する。もはや、「後がない」状況だ。

     

    3月の大企業貸出が急増

    大企業の資金繰りは現在、切迫化している。金融界によると、4大銀行による3月の大企業向け新規貸出は、前月比7兆9780億ウォン(約7100億円)増加し、貸出残高は71兆3388億ウォン(約6兆3491億円)を記録した。2008年の金融危機以降で最高水準である。前月比の増加幅でも過去最大であった。

     

    金融業界によると、「昨年まで大企業向け貸付は増えてもせいぜい1兆ウォン(約900億円)水準だった。1カ月で8兆ウォン近く(約7200億円)増加したのは極めて異例」としている。この2~3年間、銀行の大企業向け貸付増加傾向は鈍化していた。昨年は、大企業向け貸付が前月比で減少したケースが多かったほどである。(つづく)


     

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    韓国与党は、15日の総選挙を前に反日を高らかに訴え、「韓日戦」と称して票集めに奔走している。韓国国民に訴えるべきことは外にあるはずだが、「感情国民」には格好の標語になっている。

     

    これに呼応して文大統領も反日宣言を発した。11日、ソウルの西大門独立公園で開かれた大韓民国臨時政府樹立101周年の記念式と国立大韓民国臨時政府記念館の起工式に出席した。その挨拶で、「親日ではなく独立運動がわれわれの歴史の主流であったことを確認することになる」と述べたのである。

     

    朝鮮近代化は、この独立運動が成し遂げたものではない。日本の教育政策が、儒教一辺倒であった専制国家を欧米流の近代化へのレールに乗せたのである。近代化の歴史を冷静に分析できず、戦後から75年経っても反日を売り物にしているのだ。このことが、今後の韓国経済にいかなる暗雲を呼込むかも認識していないのである。まさに「売国発言」というべきだ。こういう批判を的確に言い表す寄稿が現れた。

     

    『朝鮮日報』(4月12日付)は、「21世紀の親中事大主義が屈辱的な理由」と題する寄稿を掲載した。筆者は、チョン・ヨンウ韓半島未来フォーラム理事長・元外交安保首席である。

     

    文在寅(ムン・ジェイン)政権の外交安保政策は道を迷っており、類を見ない乱調ぶりを見せている。その結果、大韓民国は四面楚歌に追い込まれており、世界第12位の経済大国の国際的存在感は消え失せた。

     

    (1)「高高度防衛ミサイル(THAAD)の配備に対する中国の反発を鎮めるため、国民の生命と安全を守る主権国家の基本権利を制限する「3不合意」を受け入れる、という屈辱を自ら招き入れた。こうした中国の覇権的な横暴に対抗するために手を取り合って協力していかなければならない日本とは、名分も実利も勝算もない血みどろの戦いを繰り広げている。韓米同盟は不通と不信で根幹が揺さぶられている。3度の南北首脳会談で、国民が平和の幻想に酔いしれている間、北朝鮮は平和を破壊する能力の強化に向け取り組んできた。このような北朝鮮のために制裁を解除しようと躍起になり、南北軍事合意書で北朝鮮軍の動向に対する監視・偵察までも放棄したにもかかわらず、北朝鮮は感謝するどころか露骨な軽蔑と嘲笑で報いている」

     

    中国は、韓国の安全保障にとって真の脅威である。THAADを巡る韓国に対する無理難題な要求が、それを表わしているのだ。中国にとってTHAADは事実上、無益な存在である。それを知っている中国は、韓国を徹底的に揺さぶって「属国化」させる意図である。文政権は、それを認識できずに迷走している。対中国戦略で協同すべき日本と、血みどろの争いを続けるという、敵と味方を混同している。

     

    (2)「大韓民国の外交安保がこのように没落するようになった原因は多々あるが、脅威の認識に対する誤りが最も大きな原因とされている。脅威の認識とは、われわれの生存と安全に対する脅威がどこからやって来るのかを「認識」することだが、これに過ちが生じると敵と同志を混同し、警戒すべき国と親しくすべき国の区別が付かなくなる。外交安保政策を決めるのは実際の脅威ではなく、脅威に対する認識だ。そのため、実存する脅威と認識する脅威の間の開きが拡大すればするほど、政策は安保の利害関係と懸け離れた場所で決定されるようになる」

     

    文政権が、日本を敵視する一方で中国は味方を見ている。その錯覚は、真の脅威がどこから来るかを「認識」できない外交音痴の結果だ。こういう政権が、5000万韓国国民を率いている不幸は、なんとも気の毒としか言えないのだ。

     

    (3)「韓国に対する当面の脅威は北朝鮮からやって来るが、韓半島(朝鮮半島)を飛び越えて東アジア全体に視野を広げれば、歴史的に韓国の自主独立をじゅうりんしてきた勢力は、例外なく圏内にある新興覇権国家だった。現在の東アジアの覇権国家は中国で、21世紀中に日本が覇権を掌握する可能性はない。韓国の安保利害関係は、構造的に中国とは対立せざるを得ず、この点では日本と一致するという意味だ」

     

    東アジアの覇権国家は中国である、としている。20世紀前半は日本であった。現在の日本は、韓国と協力して中国に対抗する立場にある。現実は、日本が依然として韓国を侵略するという錯覚で空騒ぎしているのだ。日本が、韓国を侵略するメリットがあるのか。第一、米国が米韓同盟でそれを阻止する一方、日米同盟によって自衛隊は米軍に縛られている。こういう客観的条件を理解せずに反日を唱えるのは、滑稽というしか言えないのだ。

     

    (4)「中国の勢いにおびえ、親中屈従を追求することは、明治時代に親日を選択することと「大勢便乗」という点では同じだが、決定的な違いがある。一つは、朝鮮が開放と開化の道を進む上で、明治の日本からは学ぶことがあったものの、現在の中国からは見習うべきことが一つもないという点だ。もう一つは、これからは同盟という強固な保険があり、中国の覇権に脅威を感じる他の国家と手を握ることもできるという点だ」

     

    下線部分は、痛烈な中国批判である。日韓併合時代は、日本から学ぶものがあった。現在の中国から学ぶものはない、と言い切っている。民主主義国は、独裁国家に対して政治的な先輩国であるからだ。

     


    (5)「(韓国)政府の外交安保政策が反対の方向に向かって進んでいるのは、日本に対する憎悪と復讐(ふくしゅう)心が、中国の脅威を直視する能力をまひさせ、韓国の認識の中では、日本に対する警戒心の方が中国の現実的脅威よりも高い地位を占めているためだ。これは、日本の略奪が残したトラウマが依然として韓国の精神世界を支配している上、朝鮮王朝時代の衛正斥邪思想(朱子学を正統として守り、西欧や日本の侵略を排除しようとする思想)の残骸が反日感情をあおる作用を引き起こしているためだ」。

     

    このパラグラフは、正確に文政権の本質を突いている。75年前の日韓併合を憎悪と復讐対象にしている。ならば、2000年以上も属国化された中国は、日本以上に対決しなければならない国である。その中国へは尻尾を振って、一緒になって日本に向かって吠えている構図である。ここまで時代錯誤な文政権の存在は、韓国の選ぶべき将来の道を誤らせるであろう。


    ムシトリナデシコ   
       

    文大統領は、口先で改革を叫んでいる。現実は、全く逆であることを証明した。韓国で利用者数170万人の配車サービス「タダ」が、4月10日を最後にして事業停止させられたからである。

     

    韓国経済を活性化させるには、新ビジネスを育てなければならない。それが、叫ばれてはいるものの、配車サービスで競争相手になるタクシー会社の反対で、与党は総選挙の票欲しさに配車サービス事業の禁止を立法化した。国民の利益よりも、当該業界の利益を優先させる。韓国進歩派の「党派性政治」ぶりを露骨に表わしている。これでまた一つ、韓国産業の活性化はいかに困難かを示した。

     

    『日本経済新聞 電子版』(4月10日付)は、「『韓国のウーバ』に立ちはだかった文政権の分厚い壁」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「韓国で利用者数170万人の配車サービス「タダ」が10日を最後に事業を停止する。旅客自動車運輸事業法の改正案、通称「タダ禁止法」が国会を通過し、運営会社が事業存続は難しいと判断した。新産業育成を掲げる文在寅(ムン・ジェイン)政権が総選挙を前にタクシー業界の意向をくんだことが背景だ。政権の"二枚舌"が有力スタートアップを死地に追いやったと批判する声もある」

     

    新ビジネスが起きれば、旧ビジネスに影響が及ぶのは不可避である。ただ、新ビジネスがどれだけの雇用を生むかがポイントになる。文政権は、掛け声だけ新産業育成のポーズを取ったが、現実は旧ビジネスに肩入れする結果となった。これで、韓国のスタートアップは育てられないことを証明したのも同然である。

     


    (2)「『何をしてもダメだった。私は負けた』――。タダ運営のVCNCを傘下に持つソーカーの李在雄(イ・ジェウン、51)社長は313日、自身のフェイスブックに長文のコメントを投稿し社長を辞任すると表明した。同社は410日を最後の営業日として配車サービスを停止することも決めた。タダは韓国語で「乗る」を意味する。201810月に配車サービスを開始し、現在までソウル市を中心に車両1500台を運用しドライバー12000人を雇用する。料金は通常のタクシーと比べて23割高いものの利用者の支持は厚く、サービス開始1年半で会員170万人を獲得していた。海外大手ファンドから出資を受けソフトバンクグループも出資交渉していたとされる」

     

    2018年10月に配車サービスを開始し、現在までソウル市を中心に車両1500台を運用。ドライバー1万2000人を雇用するという有望ビジネスに育ってきた。政治が、その芽を摘んでしまった。総選挙を前に票欲しさに、タクシー会社の要望を聞いたからだ。

     

    (3)「そのタダが禁止された経緯は複雑だ。韓国も日本同様にタクシー免許なしに有償で乗客を運ぶことは禁止されている。ただ、旅客自動車運輸事業法には例外規定があり、1115人乗りの車であれば免許のない運転手を派遣して対価を得るサービスが認められている。タダはこの例外規定を根拠に最大11人乗りの起亜自動車のミニバン「カーニバル」で配車サービスを始めたのだ。これに乗客を奪われると判断したタクシー業界が猛反発。「例外規定は観光目的のマイクロバスなどを想定したもの」と主張し、李在雄社長らを同法違反で告発し国会前でデモを実施するなど反対運動を展開してきた。ただ同法には配車サービスが合法か違法かの明確な条文はなく、専門家の見解も割れていた」

     

    新ビジネスは、いつも「隙間産業」から始まるものだ。配車サービスは、世界の潮流になっている。韓国は、それに背を向けて旧ビジネス保護策に出た。およそ、改革とは無縁の社会である。

     


    (4)「告発を受けた検察は1910月に同社長らを起訴したものの、ソウル中央地裁は219日に無罪判決を下した。つまり、この時点で韓国司法は「タダは合法」と認めたことになる。しかし、わずか2週間で状況は暗転した。今度は国会が「法がないなら作ってしまえ」とばかりに、36日に同法の改正案を通過させてしまった。415日の総選挙を控えて票田となるタクシー業界の意向を受けて与党議員中心に法案通過を急いだとされる。

    タダ運営側は「大統領権限で拒否権を行使してほしい」と、新法の公布権限を持つ文大統領に懇願した。しかし思いは届かず。これまで「規制の壁を取り払い新産業育成に尽力する」、「タダのような革新的なサービスのため最善を尽くす」と明言してきた文大統領は沈黙したまま」

     

    新ビジネスに理解のあるごときポーズを取った文大統領。規制の壁を取り払い新産業育成に尽力する、という主張はウソだったのだ。

     

    (5)「李氏は辞任表明のコメントの中で、「扉を開く自分の役割を全うできなかった」、「私の辞任で問題は解決しないだろうが、逆に私がいても問題を解決できないことを痛感した」と自責の念を吐き出した。最後は「次の世代に問題解決を任せる時だ」と表舞台を去る意向を示した。雇用を生み税金を納める企業、その企業をゼロから育てる起業家は国の経済を根底で支える存在のはずだ。その意向を無視して既得権益を守った韓国政治。消費者の支持を集めた有力サービス停止は、文政権の経済政策ひいては韓国経済の行き詰まりを示している」

     

    韓国はこれで、いよいよ袋小路に入っていく。消費者は1年余で170万人が会員となって、歓迎意思を示した。その新ビジネスを政治的思惑で潰してしまった。なんとも後味の悪い結果である。韓国経済は、潰れるべくして潰れる感じだ。

     

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