世界の半導体競争は、日米韓台4ヶ国が互いにシェアを高める厳しい時代を迎えている。台湾は、すでに日本と一体化することで国際競争を乗切る姿勢だが、韓国は協力すべき相手国もなく孤軍奮闘せざるを得ない状態である。「サムスン一強」が、台湾のTSMCの飛躍によって首位を奪われ挙げ句に孤軍奮闘とは、めまぐるしい国際競争の変化を反映している。
『ハンギョレ新聞』(3月3日付)は、「冷酷な半導体戦争、超格差をリードする人材はどこに」と題する記事を掲載した。
米国の半導体企業インテルの最高経営者であるパット・ゲルシンガーが最近、「過去50年間は石油埋蔵地が地政学的覇権を決定した。これからは半導体生産基地がどこにあるかがさらに重要だろう」言った。彼の言葉通り、半導体をめぐる最近の競争は経済論理を超える。韓国の半導体産業は国際分業構造に乗って成功の機会をつかんだが、今は風が逆に吹いている。
(1)「米国は、最先端半導体の研究・開発、設計、生産が自国で行われる圧倒的な地位に戻ろうとしている。1980年代、日本の半導体を崩壊させても米国は独走せず、国際分業の枠組みを作ったが、今回は違う。これまでうまくいっていたシステム半導体だけでなく、最先端のメモリー半導体も生産し、人工知能の発達で重要性がさらに大きくなったファウンドリ(委託生産)でも強者になるという」
米国商務長官は、10年後に戦略物資半導体の自国生産(非メモリー)で世界シェア20%へ引上げる意向を表明した。米国自身が、先端半導体の囲い込みに出ている。
(2)「インテルが先月末、ファウンドリで1.4ナノ(ナノは10億分の1メートル)工程を2027年までに達成するという計画を打ち出したのは、ファウンドリ2位のサムスン電子を追い抜くという宣言だ。市場占有率1%の後発走者であるにもかかわらず、マイクロソフトのような米国企業は150億ドルの注文を集中させ、米政府は100億ドルの補助金を近く出す計画だ。DRAM3位の米マイクロンの動きも尋常ではない。マイクロンは、韓国のSKハイニックスとサムスン電子が開発し未来の食べ物として育てているHBM(高帯域幅メモリー)市場に韓国に近接した技術水準の製品で挑戦状を出した。マイクロンが脅威なのは、補助金と自国企業への支援を背負って出てくるためだ」
米国インテルは、米国政府の支援を受けて27年までに先端半導体でサムスンを抜いて世界2位を目指すと宣言した。本格的な競争を挑む体制である。
(3)「日本も官民が総力戦を繰り広げている。先月末に竣工した熊本県のTSMCファウンドリ工場が象徴的だ。日本政府が投資額の半分近くを補助金として支給し、50年間縛っていたグリーンベルトまで規制解除する行政便宜を提供し、5年かかる工場をその半分で建設した。自国が持つ半導体素材・部品・装備の強みをTSMCの製造能力と結合し、国内生産能力を拡大し、半導体強国復帰のエンジンをかけようとするのが日本の夢だ。その過程で日本と台湾の密着が目立ち、韓国は相対的に疎外されている」
日本は、TSMCの熊本進出を契機に国策企業ラピダスの起業化など積極的に失地回復策に出ている。ラピダスは、受託半導体の製造工程で設計部門を取り込む従来になかった手法で、「短納期」実現を目指している。これによって、一挙に市場開拓へ挑戦する。現在は、先端半導体製造の「黎明期」に当る。ラピダスは、ここ数年で急成長の可能性を秘めているのだ。
(4)「各国が積極的に乗り出しているため、競争へのプレッシャーは日増しに大きくなる。韓国が最近、火がついたAI(人工知能)半導体競争で遅れを取っているのは、連日新高値を更新する米国、日本と対比される韓国の株価が示している。何より、サムスン電子が揺らいでいるようで残念だ。サムスンはメモリーでHBM市場の展望を過小評価した結果、SKハイニックスに先手を奪われた。先端工程を微細化するには優れた能力を見せたが、パッケージングのような後工程は疎かにし、NVIDIAやアップルのような大型取引先をTSMCへ渡してしまった」
日米の株価が急騰しているのは、半導体株が買われている結果だ。日本半導体株が急伸するのは、半導体が日本経済を牽引するという見方を裏付けている。
(5)「(韓国半導体が)挽回する時間は残っている。その道は、技術力をつけることだ。他国のように数兆ウォン(数千億円)の補助金を財政で支援することも、行政便宜を果敢に提供することも難しいのが韓国の現実だ。2位を遠くへ蹴落とす「超格差」戦略は、サムスン電子が30余年間にわたりメモリー1位を維持した方法でもある。注文を受ける立場でも侮れない技術があれば「スーパー乙(劣者)」扱いされる」
韓国半導体が現在の地位を守るには、技術力を磨くことが最上の方法である。政府からの支援は受けにくい。
(6)「超格差を作り出すためには、人材が基礎科学と工学分野で成長しなければならない。半導体覇権の回復を宣言した米国は、10年間で半導体関連専攻者を3倍に増やすとし、これを1960年代に月に行く計画だった「ムーンショットプロジェクト」に例える。しかし、韓国は依然として優秀な理工系人材の医学部偏重が続いている。今年の韓国の入試で、上位圏大学の自然系列や半導体関連学科の未入学学生の割合が昨年よりさらに高くなったという。彼らは大半が重複して合格した医薬学系列に入ったと見られる。医学部の定員が拡大されれば、今後数年間、医学部への偏りはさらに激しくなるだろう」
韓国半導体が技術力を磨くには、優秀な人材をいかに確保するかだ。この点で、韓国は最優秀者が医学部へ進学しており、半導体部門で人材を集めることが困難になっている。こうした韓国特有の「人材の偏り」が、半導体産業発展に障害である。