勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 韓国経済ニュース時評

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    世界の半導体競争は、日米韓台4ヶ国が互いにシェアを高める厳しい時代を迎えている。台湾は、すでに日本と一体化することで国際競争を乗切る姿勢だが、韓国は協力すべき相手国もなく孤軍奮闘せざるを得ない状態である。「サムスン一強」が、台湾のTSMCの飛躍によって首位を奪われ挙げ句に孤軍奮闘とは、めまぐるしい国際競争の変化を反映している。 

    『ハンギョレ新聞』(3月3日付)は、「冷酷な半導体戦争、超格差をリードする人材はどこに」と題する記事を掲載した。 

    米国の半導体企業インテルの最高経営者であるパット・ゲルシンガーが最近、「過去50年間は石油埋蔵地が地政学的覇権を決定した。これからは半導体生産基地がどこにあるかがさらに重要だろう」言った。彼の言葉通り、半導体をめぐる最近の競争は経済論理を超える。韓国の半導体産業は国際分業構造に乗って成功の機会をつかんだが、今は風が逆に吹いている。

     

    (1)「米国は、最先端半導体の研究・開発、設計、生産が自国で行われる圧倒的な地位に戻ろうとしている。1980年代、日本の半導体を崩壊させても米国は独走せず、国際分業の枠組みを作ったが、今回は違う。これまでうまくいっていたシステム半導体だけでなく、最先端のメモリー半導体も生産し、人工知能の発達で重要性がさらに大きくなったファウンドリ(委託生産)でも強者になるという」 

    米国商務長官は、10年後に戦略物資半導体の自国生産(非メモリー)で世界シェア20%へ引上げる意向を表明した。米国自身が、先端半導体の囲い込みに出ている。 

    (2)「インテルが先月末、ファウンドリで1.4ナノ(ナノは10億分の1メートル)工程を2027年までに達成するという計画を打ち出したのは、ファウンドリ2位のサムスン電子を追い抜くという宣言だ。市場占有率1%の後発走者であるにもかかわらず、マイクロソフトのような米国企業は150億ドルの注文を集中させ、米政府は100億ドルの補助金を近く出す計画だ。DRAM3位の米マイクロンの動きも尋常ではない。マイクロンは、韓国のSKハイニックスとサムスン電子が開発し未来の食べ物として育てているHBM(高帯域幅メモリー)市場に韓国に近接した技術水準の製品で挑戦状を出した。マイクロンが脅威なのは、補助金と自国企業への支援を背負って出てくるためだ」 

    米国インテルは、米国政府の支援を受けて27年までに先端半導体でサムスンを抜いて世界2位を目指すと宣言した。本格的な競争を挑む体制である。

     

    (3)「日本も官民が総力戦を繰り広げている。先月末に竣工した熊本県のTSMCファウンドリ工場が象徴的だ。日本政府が投資額の半分近くを補助金として支給し、50年間縛っていたグリーンベルトまで規制解除する行政便宜を提供し、5年かかる工場をその半分で建設した。自国が持つ半導体素材・部品・装備の強みをTSMCの製造能力と結合し、国内生産能力を拡大し、半導体強国復帰のエンジンをかけようとするのが日本の夢だ。その過程で日本と台湾の密着が目立ち、韓国は相対的に疎外されている」 

    日本は、TSMCの熊本進出を契機に国策企業ラピダスの起業化など積極的に失地回復策に出ている。ラピダスは、受託半導体の製造工程で設計部門を取り込む従来になかった手法で、「短納期」実現を目指している。これによって、一挙に市場開拓へ挑戦する。現在は、先端半導体製造の「黎明期」に当る。ラピダスは、ここ数年で急成長の可能性を秘めているのだ。 

    (4)「各国が積極的に乗り出しているため、競争へのプレッシャーは日増しに大きくなる。韓国が最近、火がついたAI(人工知能)半導体競争で遅れを取っているのは、連日新高値を更新する米国、日本と対比される韓国の株価が示している。何より、サムスン電子が揺らいでいるようで残念だ。サムスンはメモリーでHBM市場の展望を過小評価した結果、SKハイニックスに先手を奪われた。先端工程を微細化するには優れた能力を見せたが、パッケージングのような後工程は疎かにし、NVIDIAやアップルのような大型取引先をTSMCへ渡してしまった」 

    日米の株価が急騰しているのは、半導体株が買われている結果だ。日本半導体株が急伸するのは、半導体が日本経済を牽引するという見方を裏付けている。

     

    (5)「(韓国半導体が)挽回する時間は残っている。その道は、技術力をつけることだ。他国のように数兆ウォン(数千億円)の補助金を財政で支援することも、行政便宜を果敢に提供することも難しいのが韓国の現実だ。2位を遠くへ蹴落とす「超格差」戦略は、サムスン電子が30余年間にわたりメモリー1位を維持した方法でもある。注文を受ける立場でも侮れない技術があれば「スーパー乙(劣者)」扱いされる」 

    韓国半導体が現在の地位を守るには、技術力を磨くことが最上の方法である。政府からの支援は受けにくい。 

    (6)「超格差を作り出すためには、人材が基礎科学と工学分野で成長しなければならない。半導体覇権の回復を宣言した米国は、10年間で半導体関連専攻者を3倍に増やすとし、これを1960年代に月に行く計画だった「ムーンショットプロジェクト」に例える。しかし、韓国は依然として優秀な理工系人材の医学部偏重が続いている。今年の韓国の入試で、上位圏大学の自然系列や半導体関連学科の未入学学生の割合が昨年よりさらに高くなったという。彼らは大半が重複して合格した医薬学系列に入ったと見られる。医学部の定員が拡大されれば、今後数年間、医学部への偏りはさらに激しくなるだろう」 

    韓国半導体が技術力を磨くには、優秀な人材をいかに確保するかだ。この点で、韓国は最優秀者が医学部へ進学しており、半導体部門で人材を集めることが困難になっている。こうした韓国特有の「人材の偏り」が、半導体産業発展に障害である。

     

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    韓国は2年に1回、韓国を含む主要5カ国の11大分野136種類のコアテクノロジーを比較評価している。「2022年度技術水準評価結果案」が報告された。今回の評価では、最高の技術保有国である米国を100%とした場合、欧州連合(EU)94.7%、日本84.6%、中国82.6%、韓国81.5%の順となった。

     

    前回の2020年調査で、韓国は80.1%と評価され、中国(80%)にかろうじて先行していた。今回調査で、中国に逆転されたとしてショックをうけている。

     

    『東亜日報』(3月1日付)は、「国家重要科学技術、中国に初めて追い抜かれる」と題する記事を掲載した。

     

    国家的に重要な11大分野136の核心科学技術で、韓国の水準が初めて中国に逆転された。10年間、韓国が米国との技術格差を4.7年から3.2年に1年半縮める間に、中国は6.6年から3.0年に大幅に短縮し、韓国を追い抜いた。50の国家戦略技術だけを見れば、中国がはるかに先に進んでいる状況だ。中国が韓国を追いかけていた時代はすでに終わったということだ。

     

    (1)「科学技術情報通信部(省)が、2年ごとに主要5ヵ国(韓国・米国・欧州連合(EU)・日本・中国)を比較して発表する技術水準評価を見ると、2022年基準で1位の米国の水準を100%とした場合、中国は82.6%、韓国は81.5%だった。2020年には0.1ポイント差でかろうじて韓国が先行していたが、初めて逆転された。中国が走る間、韓国は這っていたのだ。情報通信技術分野の場合、2012年に米国の67.5%水準だった中国は10年後に87.9%まで追いついた。同期間、韓国は82.2%から82.6%で横ばいだった」

     

    11大分野の136種類のコアテクノロジーを対象に、2年ごとに実施される。対象となる5カ国の論文と特許を分析する定量評価と、技術ごとに10人ずつ1360人の専門家を対象とする定性評価を総合して行われる。かなり、大掛かりな技術調査である。

     

    中国は、「質の高い成長」として具体的に、EV(電気自動車)・電池・太陽光発電パネルの3種類を戦略産業に指定している。これら3業種で大いに輸出振興図ろうという狙いだ。だが、今回の韓国調査によると、技術格差を縮めているとされるが、具体的な例が出ていないのだ。中国の技術水準が、それほど高いものであれば輸出はもっと伸びるはずである。この点で、説得力が今ひとつ足りないのだ。

     

    (2)「50の国家戦略技術を抽出して評価すると、中国の技術水準は86.5%で、韓国(81.7%)はもとより、日本(85.2%)まで上回った。量子コンピューティング、宇宙航空、人工知能(AI)などを中心に急速に米国を追い上げている。一方、韓国は二次電池分野でのみ最高水準を見せているだけだ。宇宙航空・海洋分野の場合、2020年に8.6年だった米国との技術格差が2年間で11.8年に大きく広がった。

     

    中国が、50の国家戦略技術で長足の進歩をしたと評価されている。だが、先進国からの技術窃取も相当数に達しているはずだ。これまで、中国は他国技術の窃取を国家政策として行ってきた。それだけに、米国は完全遮断の方向をとっている。これが、どれだけ中国技術開発に影響するか「見物」であろう。現段階で、「中国強し」とは言い切れないのだ。

     

    (3)「中国は、2015年に「中国製造2025」政策を打ち出して以来、先端産業に人材と予算支援を集中して技術水準を高めてきた。その結果、昨年、中国は電気自動車を先頭に世界自動車輸出1位を達成し、AI、ロボットなど未来の核心産業では米国と競っている。今年初め、世界最大のIT・家電展示会「CES2024」に続き、昨日閉幕した世界最大の移動通信博覧会「モバイルワールドコングレス(MWC)」でも中国企業が多数参加して技術力を誇示し、世界の注目を集めた」

     

    「中国製造2025」政策(2015年)は、中国が組織的技術窃取していることを米国に感づかせた点で大失敗であった。トランプ政権が、対中抑止策に転じるきっかけになったのだ。以後、中国はこの「中国製造2025」政策をお蔵入りさせて米国を刺激しないように低姿勢になっている。米国の技術窃取あっての中国技術発展という側面もある。手放しでの「中国礼賛」は危険である。

     

    (4)かつて、研究開発(R&D)の模範生だった韓国の技術競争力はますます後退している。革新より安定を追求し、簡単な課題に集中し、民間R&D投資を活性化する規制緩和と金融支援は不十分だった。昨年、政府は十分な準備なしに今年のR&D予算を大幅に削減し、科学界と対立した。今からでも挑戦的な研究を積極的に支援し、人材育成に力を注いで技術競争力を回復しなければ、ますます激化するグローバル先端技術戦争で生き残ることはできない」

     

    韓国のR&Dが、停滞している裏には日韓関係悪化が影を落としていると見られる。文政権5年間は、日韓技術交流も止めたからだ。

     

     

     

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    台湾の半導体企業TSMCの熊本工場は、2月24日に開所式を行った。工場竣工まで20ヶ月という超スピードの建設であった。これには、日本半導体「再興」という大きな希望を担っており、政府・自民党の積極支援があった。韓国の政治状況と大きく異なっており、韓国メディアは「羨望」の眼差しを送っている。

     

    『東亜日報』(3月2日付)は、「日本のTSMC工場は国会議員が建てた」と題するコラムを掲載した。

     

    先月24日、日本の熊本県で開かれた台湾TSMC工場の開所式の演壇の真ん中に、TSMCのモリス・チャン創業者が立っていた。その左側には、与党自民党の甘利明議員と萩生田光一議員が並んで、一緒にテープを切った。

     

    (1)「意味のある工場の起工式や完成式に国会議員が出席するのは、韓国でもよくあることだ。普通は選挙区の国会議員が登場して、写真がよく撮れるところに立つ。しかし、半導体工場の行事に登場する韓国の国会議員が、意味のある政策を推進したという話は聞いたことがない。華城の起工式に出席した野党(当時与党)議員はその後、中小ベンチャー企業部長官になって三星電子を訪れ、中小企業への支援協力を要請したという記事は出ている。平沢の起工式に出席した与党議員は、今、国会先端戦略産業特別委員会の委員長を務めている。同特別委員会は、発足後10ヵ月間、4回会議を行い、それさえも2回は委員長や幹事選任のための会議だった」

     

    韓国の国会議員は、民間工場の起工式などで写真を撮られて満足している。政策のフォローをしていないのだ。

     

    (2)「萩生田氏は東京都、甘利氏は神奈川県が選挙区だ。TSMC工場のある熊本県まで1200キロ以上離れた「他人の町」だ。日本も韓国のように当選するためには、中央政治より裾野の選挙区活動が重要だ。「なぜ私たちの町に半導体工場を誘致しなかったのか」と批判される余地もなくはない。それなら、一体彼らはなぜ演壇に立ったのだろうか。朝日新聞が先月27日に報じた「TSMC誘致の真相」の記事に、興味深い部分がある。2021年4月、当時の菅義偉首相が米国のバイデン大統領と行った日米首脳会談後に発表した共同声明には、52年ぶりに初めて「台湾海峡の平和と安定の重要性」が取り上げられた。当時は、中国を牽制するための日米同盟の強化程度と解釈した」

     

    TSMC熊本工場開所式では、自分の選挙区でもない萩生田氏と甘利氏が出席している。選挙と無関係に、両氏は国家の政策遂行という目的で出席した。TSMCが、熊本県へ進出した裏には、日米によって中国の半導体台頭を阻止するという目的が込められている。日本の国策半導体企業ラピダスは、米国IBMの技術を導入しての起業化である。日米政府が、承認している合作事業である。この事業にも、甘利議員はサポート役として協力している。TSMCとラピダスは、甘利議員を介して日本の半導体政策遂行の「両輪」になっている。

     

    (3)「日本政府の狙いは少し違った。単純な軍事的牽制を越え、中国が台頭する半導体で日米が協力しようというポイントをつかんだ。自民党もすぐに動いた。産業政策通の甘利議員は、「(単なる)産業育成ではなく、国家戦略として引き受ける」とし、半導体戦略推進議員連盟を立ち上げた。安倍晋三前首相も発足メンバーに名を連ねた。経済産業相だった萩生田議員は国会で、「世界的な流れを読むことができず、適切な政策をまとめることができなかった」と頭を下げた後、半導体戦略作りを指示した」

     

    日本の半導体政策の裏には、日米共同で中国の半導体(成熟品)台頭へ対抗する狙いが込められている。中国は、この分野で3割のシェアを狙っているとされる。日本が、TSMCの協力を得ながら中国野望阻止という国策遂行に立ち上がっている。

     

    (4)「韓国はどうか。浅はかな政治工学的計算で京畿(キョンギ)南部を「半導体ベルト」と名付けた選挙戦略だけがある。勝者だけが生き残る「半導体戦争」で、どのように対応するという国家戦略は与野党総選挙戦略のどこにも見当たらない。半導体事業所で働く20代や30代の票を狙って、大企業の役員出身をあたふたと迎え入れ、戦略公認することと、グローバルサプライチェーンの再編で韓国の生きる道を真剣に模索することは全く別の問題だ」

     

    韓国の国会議員は、国策遂行という問題意識が希薄である。総選挙で議席を得たいといった目先の利益で動いている。

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    韓国の合計特殊出生率が、低下記録を更新し続けている。23年は「0.72」と世界ワースト記録を塗り替えた。韓国統計局によると、24年は「0.68」へさらなる低下が見込まれるという。23年12月の記者会見で公表した。

     

    韓国は、世界で最初に「消える国」とまで酷評されている。若い女性に「結婚願望」がないことが、大きな問題として指摘されている。さらに、結婚しても「子どもは要らない」という認識が広く共有されるという事態だ。韓国の未来が閉塞状態であるも影響している。

     

    こうした結果、働き手の中心となる15〜64歳の生産年齢人口は、72年に1658万人となる。22年から約55%減少する。人口を年齢順に並べた中央値を示す中位数年齢は、22年の44.9歳から72年には63.4歳と超高齢化が進む。韓国が、世界で最初に「消える国」と言われるのは、決して誇張したものではない。

     

    韓国の合計特殊出生率は、15年まで1.1〜1.3の間で横ばいを保った。それが、16年になって底が割れたように急落が始まった。18年に1を下回り、23年の0.72まで8年連続で低下している。生まれてくる子供の数は、8年間でほぼ半減状態である。この経緯をみると、日本も他人事ではなくなる。現在の日本の合計特殊出生率は1.26(22年)である。だが、韓国と同様にこの段階から「底割れ状態」が起こらないとは限らないのだ。日本は、韓国のケースを深く研究しなければならない。

     

    『中央日報』(2月28日付)は、「出生率0.72人で最下位の韓国、人口減少スピードさらに速まる」と題する記事を掲載した。

     

    韓国統計庁が28日に発表した「2023年出生・死亡統計(速報値)」によると、昨年の出生数は23万人で、前年の24万9200人より7.7%の1万9200人減少した。女性1人が生涯に産むと予想される平均出生数である合計特殊出生率は2022年の0.78人から昨年は0.72人に落ち込んだ。男女100組を基準として72人だけ子どもが生まれるという意味だ。専門家らは人口を維持するのに必要な出生率を2.1人とみる。

     

    (1)「少子化にブレーキはない。むしろアクセルをさらに強く踏み込む様相だ。前年比の出生数減少率は2021年が4.3%、2022年が4.4%だった。2016~2020年に記録した年間7~11%台の減少率をより低くなり少子化速度は鈍化するようだった。しかし昨年は7.7%を記録しそうした希望までへし折られた。さらにコロナ禍も収束しただけに「コロナ禍のため」という少子化原因説明ももはや説得力を失った形だ」

     

    ここ3~4年、パンデミックを出生減の理由にしてきた。だが、現在は説明力を失っている。「子どもを産みたくない」という風潮が余りにも大きくなっているからだ。


    (2)「2017年に始まった出生数減少と出生率低下が、すでに8年にわたり続いている。今年も続く可能性が大きい。昨年10-12月期だけ見れば合計特殊出生率は0.65人だった。四半期基準で出生率が0.6人台を記録したのは初めてだ。統計庁のイム・ヨンイル人口動向課長は「昨年の将来人口推計で24年は0.68人と予想した。数年前だけでも0.6人台までは落ちないだろうみていたが四半期単位で0.6人台が出てくるなど現実に近づいているようだ」と話した」

     

    大都市での合計特殊出生率は、すでに「0.6台」というゾッとする数字が珍しくなくなっている。人々の予想を上回る速度で「出生率低下」が始まっているのだ。

     

    (3)「首都圏集中とこれによる過度な競争、不動産価格上昇などが出生数減少の主要因に挙げられる。実際に大都市の出生率が低かった。昨年、ソウルの出生率は0.55人で、前年の0.59人より0.04人下落した。釜山(プサン)が0.66人、仁川(インチョン)が0.69人などと続いた。合計特殊出生率が1人を超えていた世宗(セジョン)まで0.97人に落ちた。もう全国の市・道のうち出生率が1人を超える所は1カ所もなくなった」

     

    ソウル一極集中の是正もテーマになる。尹大統領は2月13日、韓国の現状を「コート全体をまともに使えないサッカー」と例えた。首都圏への人口集中が少子化の原因だと断じ、税制支援などを通じて地方に企業を移転し、社会インフラを整える戦略を示した。政府の直接支援だけでなく、企業を通じた社会づくりも重視する。出産支援や育休取得に積極的な企業への税制優遇を検討する。従業員の子育てを支援する企業を評価する社会の雰囲気を醸成することを狙う。

     

    (4)「人口ショック」は避けられない現実として近づいた。昨年末の韓国の人口は5132万5000人だ。昨年1年間に生まれた子どもは全人口の0.4%水準にすぎない。年間100万人ずつ生まれたベビーブーマー世代が、高齢層に入るなど高齢化の速度は速い。少子化が続いたため、新たに生まれる世代の扶養義務が急速に高まっている」

     

    韓国は、「国が消える」騒ぎまで起こっている以上、あらゆるタブーに挑戦する気構えで対応するほかない。地方経済を立直し、人口最適配置の構図が不可欠になっている。

     

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    世界の半導体業界は、AI(人工知能)の実用化にともない、半導体需要が急増している。この好影響を最も受けているのは、エヌピディアとTSMCである。いずれも「台湾系」である。米国ではこれに対抗して、インテルとMS(マイクロソフト)が組んでAI半導体で地盤を築くと宣言。6年以内にサムスンを抜いて、世界2位を奪回するというのだ。 

    『東亜日報』(2月23日付)は、「『6年以内に三星を追いつく』インテルの半導体宣戦布告」と題する社説を掲載した。 

    米半導体企業のインテルが一昨日、2030年までファウンドリ(半導体受託生産)市場で2位になると公式宣言した。会社名については言及しなかったが、現在2位の三星(サムスン)電子を直接狙ったものだ。直ちにマイクロソフト(MS)と提携し、今年末までに1.8ナノチップの量産に乗り出すと明らかにした。

     

    (1)「公言どおりなら、25年に2ナノの量産を計画する三星電子や台湾TSMCより速いスピードだ。1.4ナノの超微細工程も、三星・TSMCと同様に2027年に量産する計画を明らかにした。一昨日、インテルが開催した初のファウンドリ行事は、米国がアジアに奪われたファウンドリの主導権を取り戻すという宣戦布告の場だった。現在、アジアに80%を依存する世界半導体生産の半分を欧米に持ってくるという 

    インテルは、半導体草分け企業としてメンツに賭けてもランクアップを図りたいところだ。減産時に、後発のサムスンに振り回されるという屈辱を味わって来た。それだけに、リーディングカンパニーとしての矜持を保ちたいところだろう。下線部には、米国のプライドが現れている。米国経済復活へのテコにしたいのだ。 

    (2)「レモンド米商務長官が第2の半導体法を予告し、破格の支援を約束し、MSやオープンAIなど米人工知能(AI)代表企業の最高経営者らも総出動して支援射撃を行った。「半導体は未来の石油」「インテルは米国のチャンピオン」「米国のサプライチェーンの再建」などの発言も出た。2021年3月、ファウンドリ産業に再挑戦した後発走者のインテルが、一気に先頭圏に躍り出ることはできないだろうという見方もある」 

    非メモリー半導体(ファウンドリ産業)は、高度の技術を持ちあらゆるユーザーの動向に合わせて技術蓄積している。TSMCは、研究開発部門も24時間3交代制という突貫態勢である。このTSMCを技術でキャッチアップするのは、極めて困難であろう。しかも、日本との連携強化によって設備・素材で最高の供給を受けられる体制を作りあげている。「アメリカンワンチーム」になれば、「日台ワンチーム」もこれに対抗して強化するとみられる。サムスンは、このいずれにも加わらず、どうするのか。

     

    (3)「インテルは過去、7ナノ工程でも苦労しており、現在、ファウンドリの市場シェアは1%前後に過ぎない。だが、往年に「半導体帝国」と呼ばれたインテルの底力に、米政府と企業が一丸となった「アメリカワンチーム」の全面的な支援まで考慮すれば、無視できない事態だ。インテルの参戦により、韓国の半導体に赤信号が灯っている。主力メモリー半導体の業況回復がまだ遅い状況で、ファウンドリ市場でややもするとTSMCとインテルの狭間になる危機に直面している」 

    サムスンは、国内の「反企業ムード」と戦わねばならない。左派の地方自治体は「反企業ムード」が高く、企業の設備投資へ協力的でない。 

    (4)「インテルは、米政府を味方につけている。三星電子の前は茨の道だ。インテルは、米政府から13兆ウォン台の補助金を受け取ることになるという観測が出ているが、三星電子は現在、米国投資に対する補助金の規模などが不透明な状態だ。韓国国内投資に対する税額控除も、やはり競争国に比べて高い法人税率などでその効果は微々たるものだ」 

    サムスン電子の監査報告書によると、昨年7~9月期まで保有していたオランダ先端半導体製造設備授業のASML株式158万407株(持ち分比率0.4%)を10~12月期中に全て売却した。ASMLの株価から推計すると、売却により1兆2000億ウォン(約1350億円)前後の資金を手にしたとみられる。サムスン電子は2012年、次世代露光装置の開発協力のためにASMLの持ち分3.0%を約7000億ウォンで取得した経緯がある。それにもかかわらず、ASML株を全株手放したのは設備投資資金調達目的である。『聯合ニュース』(2月21日付)が報じた。できれば、売却したくなかったであろう。苦衷の決断だ。

     

    (5)「半導体市場は、急成長が予想されるAI半導体を先取りするための先端技術競争が真っ最中だ。オープンAIを皮切りに投資競争が激しく繰り広げられ、NVIDIAへの依存度を下げようとする多様な合従連衡が進められている。三星電子など国内半導体企業にとって、危機は新たなチャンスになり得る。結局、生きる道は超格差技術の競争力を確保することだけだ。政府も破格の支援と精巧な外交・産業政策で後押ししなければならないだろう。 

    エヌピディアが画像処理半導体(GPU)で培った技術は圧倒的である。ライバルが存在しなかったからだ。それだけに、エヌピディアとTSMCの台湾系連合軍を抜くのは困難である。となると、インテルはサムスンを標的にすることになろう。

     

     

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