勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 韓国経済ニュース時評

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    米国による文政権への信頼度は、地に墜ちていることが分った。国益のためには、米中二股外交を行うと明言する文政権が、米国から信頼を受けるはずがない。

     

    韓国は、戦時作戦統制権の移管を在韓米軍に求めている。現状では、米軍が作戦統制権(作戦指揮権)を持っており、韓国軍は米軍の指揮下で行動する義務を負っている。これを是正して、韓国軍が作戦指揮権を持ちたいとしている。だが、米軍は文政権在任中、移管しないと示唆した。

     

    『朝鮮日報』(9月12日付)は、「在韓米軍司令官、文大統領任期中の戦時作戦統制権移管不可を示唆」と題する記事を掲載した。

     

    在韓米軍のロバート・エイブラムス司令官は9月10日(現地時間)、「われわれが(戦時作戦統制権移管のプロセスにおいて)約束したことは、ゴールポストを動かさないということだ」と発言した。

     

    (1)「エイブラムス司令官はこの日、米戦略国際問題研究所(CSIS)主催の画像会議に出席し、「2015年11月、韓米国防相の間で条件付きの戦時作戦統制権移管計画がとりまとめられ、26項目の具体的かつ重要な軍事的能力について規定したが、この条件に合わせるには率直にやるべきことがさらに多くある」とした上で、上記のように述べた。韓国の現政権が任期中(2022年)の統制権移管を急ぐ過程で、「基準の緩和」など条件を見直そうとする動きに懸念を示したと解釈されている。任期中の統制権移管は、現政権が掲げる主要な国政課題の一つだ」

     

    朴政権時代は、作戦指揮権の韓国移管を延期するように求めた。文政権になると民族主義が先立ち、韓国軍が作戦指揮権を握って軍事行動を起こさせない、という政治的意図が浮かび上がっている。北朝鮮軍が侵略行為を始めても、韓国軍が指揮権を握れば在韓米軍を動かせないようにする危険性も考えられるのだろう。文政権は、それだけ信頼を失っている。

     


    (2)「エイブラムス司令官は「メディアは初期作戦能力(IOC)、完全作戦能力(FOC)、完全任務遂行能力(FMC)を統制権移管の3つの条件と報じているが、それはリンゴとオレンジと同じくらい違う話だ」「未来連合軍司令部の三段階検証は、備えるべき複数の軍事的能力の一つに過ぎない」と説明した。韓国では、未来連合軍司令部が三段階作戦能力の検証を受ければ、統制権移管が完遂されるかのように解釈されているが、実際はこれ以上に多くの軍事的能力の検証が必要という意味だ」

     

    (3)「そのためエイブラムス司令官の発言は、「(韓国における現政権)任期内の統制権移管は難しい」という意味に解釈されている。エイブラムス司令官はさらに「非常に重要な能力ではあるが、われわれは残りの25項目についても、韓国軍が獲得できるように神経を使っている」と発言した」

     

    メディアは、初期作戦能力(IOC)、完全作戦能力(FOC)、完全任務遂行能力(FMC)ば、統制権移管の3つの条件と報じている。現実は、そういう簡単なものでない。実際は、これ以上に多くの軍事的能力の検証が必要としている。つまり、戦闘能力の問題だけでなく、総合的な軍事能力の検証を必要としている。その、具体的事項が、次のパラグラフに出てくる。

     

    (4)「エイブラムス司令官は、「機密計画なので公開の場で話すのは難しいが、三段階の簡単な条件がある」として「韓国軍が連合軍を指揮する能力を示すこと、韓半島を防衛する統合対空ミサイル防御システムを獲得・開発すること、韓半島情勢が好転しなければならないこと」と説明した。その一方でエイブラムス司令官は「われわれが直面する挑戦の一つは、他の政府や他の指導者たちが『あ、それは正しくない。われわれはこれをすべきだ。あのようにすべきだ』と言ってくることだ」とした上で「問題の一つは、統制権移管の条件が機密であり、数多く変更されたため、大衆がよくわからなくなった点だ」とも指摘した」

     

    下線部分が、極めて重要である。文政権は、2017年10月に中国に対して、次のような安全保障上の重大問題(三不政策)を中国に約束させられた。

     

    1.米国のミサイル防衛(MD)体制に加わらない。

    2.韓米日安保協力が三カ国軍事同盟に発展することはない。

    3.THAAD(サード)の追加配備は検討しない。

     

    いずれも、韓国防衛の骨格に関わる問題である。こういう重大事項を易々と約束する文政権への「戦時作戦統制権移管」は、在韓米軍の安全すら脅かされるはずだ。文政権の安保政策の未熟さを考えれば、在韓米軍が懸念を深めて当然である。前記の三不を撤廃して、韓国が主権国家として「自立」しない限り、在韓米軍は戦時作戦統制権」の移管をしないだろう。

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    文政権は、世論調査の結果に大きく揺さぶられている。秋美愛(チュ・ミエ)法務部長官の息子による韓国軍での休暇請託疑惑が、20代男性の支持率をこれ以上、下がらないほどの低下を引き起しているからだ。法務部長官の息子が徴兵中、入院休暇明けに帰隊せず、後から4日間の休暇が認められたという軍規にない処理をされたことが判明している。一般隊員では、「17分」の帰隊遅れが懲役刑に処せられる韓国軍だ。

     

    法務部長官の息子の件は、秋氏が与党「共に民主党」代表時代に起こったものである。与党代表としての権力を使い、韓国軍の軍規を曲げさせ「息子を溺愛した母親」として社会の批判を浴びている。

     

    『中央日報』(9月11日付)は、「20代に異変、文大統領の支持率、1週間で10ポイント下落」と題する記事を掲載した。

     

    最近、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領に対する20代の支持率が30~60代とは違った流れを示している。秋美愛法務部長官息子の軍服務特恵問題に最も敏感に反応しながらだ。

     


    (1)「20代支持率は9月第1週調査で大幅に下落した。8月第4週40%から10%ポイント下落した30%を記録した。他の年齢帯では2~4%ポイントの小幅下落か反騰を示していた。韓国ギャラップのホ・ジンジェ取締役は、「正直言うと、これ以上低くなる余力があるのかと思うほど20代支持率が落ち込んでいる」とし、「チョ・グク前長官事態以後、下落した支持率がコロナで回復するかと思われると、『公正』という話題が再びイシューになって下落している」と話した。秋氏の息子の兵役イシューが影響を及ぼしたという指摘だ」

     

    20代男子にとって、徴兵は逃げられない問題である。厳しい軍隊生活を送る訳だ。だが、親が有名政治家であれば特権を受けて休暇も自由であれば、バカバカしくなるのは当然。そういう国民感情を無視して、政府・与党が秋法務部長官を庇っていると、さらに、支持率低下を招くであろう。

     

    (2)「20代は全年齢帯をあわせて男女支持率の違いが最も目立つ集団でもある。5月は20代男性(45%)と20代女性(72%)の支持率の違いは27%ポイントまで広がった。ソウル大学社会学科のチャン・ドクジン教授は「ジェンダーイシューの場合、20代男性は公正を、20代女性は正義を重要視する傾向を示す」とし、「世代や階層間の対立になれば、20代女性も公正を重要視する」と話した。秋氏の息子の兵役疑惑が解明されない場合、20代女性の支持率も下落を示す可能性が高いということだ」

     

    20代男性は公正を、20代女性は正義を、それぞれ重視するという。ただ、20代女性もいずれ公正を重視するようになれば、トータルの20代支持率はさらに下落する。政権にとって看過できない問題である。政府も対応を迫られている。

     


    『中央日報』(9月11日付)は、「韓国首相『国務委員の子女問題でご心配おかけして心苦しい』」と題する記事を掲載した。

     

    韓国の丁世均(チョン・セギュン)首相は10日、秋美愛法務部長官の息子の休暇請託疑惑と関連して「私のような国務委員の子女問題で国民にご心配をかけている点について本当に心苦しく思っている」と述べた。

     

    (3)「丁首相は、秋長官事件に関連して「国民がいま新型コロナやさまざまな経済のせいで苦しい思いをしているが、(この問題は早期に落ち着き)このような問題でさらなるご心配をおかけしないようにすることが当然の道理ではないかと考える」と話した。秋長官を擁護する発言を繰り返す与党「共に民主党」の雰囲気とはやや異なる丁首相の発言に、政界では秋長官の去就をめぐり与党の雰囲気が変わったのではないかという解釈が出てきた」

     

    丁首相は、秋長官問題で国民に動揺を招いていることに陳謝している。これは、何らかの政治的決着を意味する。陳謝しながら何もしないでは、さらに国民の不満を招く。法務長官辞任が、その回答であろう。


    (4)「丁首相はこの日、公正の問題についても断固たる姿を示した。丁首相は「今、その問題を若者たちが心配しているという」としながら「そのため(インタビュー冒頭に)この問題のせいで若者たちにご心配をおかけしてもよいのか、そのような言葉も申し上げた」と話した。続いて「検察捜査をしないでいるなら、他の方法で状況を整理することもできるかもしれないが、この問題は検察が迅速に捜査を終結して終了するのが現実的な方法だと考える」と話した。「他の方法」についてアンカーが追加で質問をすると丁首相は、「それは政治的な方法であるかもしれず…」と述べて言葉を濁した」

     

    丁首相は、他の方法の解決として政治的方法と示唆している。法務長官辞任であろう。

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    文政権は、支持層の離反を恐れて2回目のコロナ生活支援金方針を大きく変えた。当初案では、自営業や飲食業などコロナの打撃が大きい層へ集中的に支給予定であった。ところが、この支給案から漏れる30~40代が不満を見せて中止。そこで、13歳以上の全員に1800円を「通信費」名目で支給するという。

     

    10代の子どもでも、1800円支給されて有り難がるとは思えない。こういう「死に金」が、すべて国債発行で賄われるのだ。韓国社会の既得権益主義は、ここまではびこっている。韓国社会は、ただで貰えるものならば「なんでもいい」。こういう乞食根性に成り下がっている。

     

    『朝鮮日報』(9月10日付)は、「全国民2万ウォン給付するため借金して9000億ウォン使う」と題する記事を掲載した。

     

    第2次緊急災難支援金がおかしな方向に進んでいる。「ターゲット型災難支援」(文在寅大統領、7日の首席秘書官・補佐官会議)という趣旨は色あせた。秋夕(チュソク、中秋)連休の小遣いでも与えるように2万ウォン(約1800円)ずつ通信費を給付するのに1兆ウォン近い金額を投じるという。「通信費ポピュリズム」だ。財政赤字は100兆ウォンを超えようとしている。



    (1)「政府・青瓦台(チョンワデ、韓国大統領府)は9日、共に民主党指導部懇談会を開き、13歳以上に2万ウォンずつ通信費を支援すると明らかにした。民主党の崔仁昊(チェ・インホ)首席報道官は、「李洛淵(イ・ナギョン)代表は金額が大きくなくても新型コロナで疲れている国民に通信費を支援するのが慰労になると述べ、一括支援を要請した」と伝えた。続いて「(李代表の発言に)文大統領は『同じ考えだ。コロナのために国民の非対面活動が急増しただけに通信費は区分なく一律支援するのがよい』と答えた」と明らかにした」

    13歳以上の全国民に、1人1300円支給する。財政の無駄遣いの典型例である。このために国債を発行する。文大統領の頭脳構造はどうなっているのか。ただ、人気を高めれば良いという短慮であろう。

     

    (2)「これを受け、35~49歳を除いて17~34歳と50歳以上に給付しようとしていた当初の案は白紙になった。選別給付に対して現政権の核心支持層に分類される30~40歳代の反発が強まる状況だった。政治的な計算が作用したという指摘が出ている。野党・国民の力のペ・ジュンヨン報道官は「苦痛を感じている個人事業主・自営業者への集中支援だと思っていたが、一括給付とはどういうことなのか」とし「2万ウォンの通信費をすべて給付するのは民心をなだめるための抱き合わせ販売、ポピュリズムではないのか問いたい」と述べた。

    当初支給案では、30~40歳代が対象外になる。だが、この世代は「1銭でも欲しい」という乞食根性そのもので不満を漏らしたのだ。政権にとっては、貴重な支持層である。ご機嫌伺いで1人1800円配ることになった。

     


    (3)「8月の住民登録人口統計によると、満13歳以上(46460万人)は全体人口の89.5%を占める。支援対象が40%以上増え、予算の負担は大きく増える。人口に支援額を単純に掛けた場合、6500億ウォンから9300億ウォン水準に増える。全額を借金で調達する7兆ウォン台の災難支援金補正予算の10%を上回る金額だ」

     

    改正支給案では、6500億ウォン(約585億円)から9300億ウォンへ(約837億円)増えるという。ドブへ捨てる金である。


    (4)「このため集中支援が必要な階層に渡る金額が減る可能性もある。政府は当初、小商工人新希望資金に約3兆ウォン、緊急雇用安定支援金に約2兆ウォンを投入し、残りを低所得層の生計費、第2次児童保育クーポン予算などに配分する方針だった。文大統領も7日、「被害が最も大きい業種と階層に対して集中的に最大限の支援をする」と約束した。他の部門を減らさなければ借金をさらに増やして第4次補正予算規模を拡大しなければいけない。第4次補正予算で今年末には国内総生産(GDP)に対する国家債務比率は44%に迫る。

    韓国は、GDPに対する国家債務比率の限界として45%説が指摘されている。通貨危機に弱い韓国経済は、健全財政が唯一の拠り所である。そのマジノ線が崩されればどうなるか。文政権によって、従来の効率的財政運営という「タガ」は完全に外れている。危ない橋を渡っている。

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    米中対立の長期化を見越して、日本企業は「脱中国」で国内帰還(リショアリング)に積極的である。生産コスト面で国内生産が遜色ないことも後押ししている。片や、韓国企業の「脱中国」は消極的である。「労働貴族」と言われる戦闘的労組と、週52時間労働制がもたらす賃金コスト増を恐れている結果だ。

     

    この日韓企業の象徴的な動きは、それぞれの国内事情を表わしている。日本は、規制撤廃で柔軟な生産構造に転換している。韓国は、文政権になって一層硬直化しており、世界の動きと逆である。これでは、海外へ出た企業の国内帰還は難しいであろう。

     

    『韓国経済新聞』(9月10日付)は、「リショアリング補助金競争率11倍、日本企業『中国エクソダス』加速」と題する記事を掲載した。

     

    中国の生産工場を自国に移転しようとする日本企業が急増し、政府補助金を得るための競争率が11倍まで急増した。政府がインセンティブを強化しリショアリング(海外に進出した企業を自国に戻るよう誘導)政策を展開しても企業がなかなか呼応しない韓国とは対照的だ。



    (1)「9月9日の『日本経済新聞』によると、日本政府が7月末まで生産拠点移転費用の支援対象を公募した結果、1670件・1兆7650億円規模の申請が集まった。これは1600億円の支援予算の11倍に達する。日本政府は新型コロナウイルス流行を契機に中国依存度を低くするため、中国に集中する生産工場を自国に戻すサプライチェーン再編政策を施行している。中国の生産工場の稼動が止まると、日本では深刻なマスクと医療装備の不足が起き、高い中国依存度の問題点が浮上したためだ」

     

    日本政府によるリショアリング事業で、支援予算の11倍もの規模の申し込みがあった。日本企業は、米中対立の長期化という国際情勢の変化を的確に見抜いて行動していることが分る。1990年代からの急速な円高で、国内企業は一斉に生産拠点の海外移転を図った。今回は20年ぶりの情勢変化で敏感に動いている。一波が万波を呼ぶで、日本企業のリショアリングは進むであろう。

     

    (2)「日本政府は4月に発表した新型コロナウイルス経済対策にサプライチェーン再編政策を盛り込み2200億円の予算を配分した。中国依存度が特に高いマスクと医療用手袋、医薬品生産工場を中心に150億円を限度に移転費用の一部を支援している。上半期に574億円規模で実施した1次公募の時だけでも申請件数は90件、申請金額は996億円で競争率は2倍水準にとどまった。下半期に入り企業のリショアリング需要が急増したのは新型コロナウイルスの長期化と米中対立激化で安定したサプライチェーン確保の重要性が大きくなったためだと同紙は分析した。支援対象に選ばれたある中小企業は、「補助金がなくても国内生産は決めていた」とした」

     

    生産コスト面だけで中国へ進出した日本企業は、生産システムの合理化で、日中の差が縮小していることもリショアリングの背中を押している。「メード・イン・ジャパン」の持つ国際的な高い評価も魅力であろう。

     

    (3)「日本の雰囲気はサプライチェーン再編政策がこれといった成果を出すことができない韓国とは対照的だ。『フィナンシャル・タイムズ』はこの日、中国とベトナムに生産工場を持つ韓国の中小企業200社のうち韓国に復帰する意向がある企業は8%にすぎないという中小企業中央会の最近の調査結果を引用し、「多くの韓国企業は高い賃金格差と輸出市場へのアクセス性、韓国の労働者保護規制を理由に生産拠点移転に消極的」と指摘した」

     

    韓国中小企業で、中国とベトナムに生産工場を持つ200社のうち、韓国へ帰還したい企業は8%しかなかったという。韓国政府は、リショアリングを呼びかけているが、反応はこのようにいたって鈍い。理由は、文政権の高い労働者保護規制である。

     

    この高い労働規制が、韓国の若者の失業率を高めるという皮肉な結果をもたらしている。韓国における若年層(15~29歳)の失業率は昨年8.9%で、2009年の8.0%に比べて0.9ポイント上昇している。この期間におけるOECD平均は、14.9%から10.5%へと4.4ポイントも下落していた。韓国の動きは、世界と逆行している。文政権が労組の言うままに動き、最低賃金の大幅引き上げを行った反作用の結果である。最低賃金引き上げも、労働市場の需給実態を見ながら行うべきことを教えている。

     

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    安倍後も変わらない日本を認識

    韓国の生きる道は妥協しかない

    国際感覚に疎い86世代の限界

    文正仁特別補佐官は転向した?

    日本の「技術属国」に変わらず

     

    韓国が外交面で揺れている。行き詰まった日韓関係打開の手がかりがないからだ。一方で、米中対立は冷戦と呼んで差し支えない状況である。韓国は、これまでの二股外交で「経済は中国、安保は米国」という、二刀流がしだいに難しくなってきた。中国か、米国かと二者択一を迫られる時期は、刻々と迫っている。この認識が、韓国大統領府の一部に出始めた印象である。それは、韓国報道を細大漏らさずチェックしていると、微妙な「化学変化」に気付くのである。

     

    安倍晋三首相が突然、健康を理由に辞意を表明した。韓国では、安倍首相が退陣すれば日韓関係に雪解けが始まる。そういう期待報道が現れた。以下の記事が、その典型例である。

     

    「病気で退く安倍首相には申し訳ないことですが、我々には良い機会です。日本との外交関係を改善できる糸口になるかもしれないからです。安倍首相は実際、わが国には最悪の首相でした。(だから)日本との外交関係を改善できる糸口になるかもしれないからです」

     

    「安倍首相は、日本国内の保守世論と新冷戦という国際情勢の変化を背負っていました。それでも後任の首相は、安倍首相のように強硬派ではないでしょう。今から準備して先に手を差し出さなければいけません。日本は、失われた20年といわれますが、まだ経済大国です。経済から解決すればよいはずです。歴史は最後に解決しても…」 以上は、『中央日報』(8月29日付コラム)だ。



    安倍後も変わらない日本を認識

    この安倍辞任後への期待論は、間もなく大きく変わった。「第二、第三の安倍が登場する」との認識になってきた。

     

    「何よりも日本社会全般の雰囲気が変化した点をわれわれは冷静に認識しなければならない。そのため安倍氏が退いても、第2、第3の安倍氏が登場するよりほかはない。それが今の日本政界の現実で、社会全般の雰囲気だ。いわゆる、『主流の交代』が不動のものとして実現する。日本と戦って最後までいこうが、話し合いで問題を解決して和解しようが、一応このような日本国内の事情を正確に把握しておくことが必要だ」

    「もう一つ深刻な問題は、日本国内で親韓派が消滅直前になった点だ。たとえ残っていたとしても、自分の主張をするのが難しい雰囲気だ。これは日本のせいばかりにするのはなく、韓国側にも問題がないかどうか振り返らなくてはならないことだ。親韓でも反韓でもなかったが、最近になり確実な反韓に立場を固めた人も珍しくない。次期首相として有力な菅義偉官房長官もそのような部類に属すると考える。昨年、東京で会った政界消息筋によると、菅氏は自身の作品といえる慰安婦合意を文在寅政府が、事実上覆したことに対して反感と失望を私席で表したことがあるという」 以上は、『中央日報』(9月8日付コラム)が報じた。

     

    韓国の論調が、短期間にこれまでの日本批判一点張りから、「韓国原因論」に触れるようになっている。日本が、絶対に韓国と妥協しないと考えるようになった結果だ。日本全体で、嫌韓ムードが高まっているのである。

     


    日本経済新聞が昨年10~11月に実施した全国18歳以上の男女を対象にした郵便アンケート調査で、国・地域に対する友好意識を確認した結果、韓国に対しては回答者の66%が「嫌い」と答えた。前年調査では、61%であったから1年間で5%ポイントも増えた計算である。

     

    前記調査で昨年の「嫌い」国のトップは、北朝鮮(82%)、中国(71%)が1位と2位を占めている。韓国が、これら諸国に次いで「嫌いな国・地域」で3位だ。北方領土問題を抱えるロシアは、嫌いな国・地域で53%になり4位に下がった。韓国が、「嫌いな国トップ3」であることは、安倍首相の存在に原因があるという感情論を超えている。日本人全体が、強い「嫌韓」意識を抱いていることを示めしているのだ。

    一方で、日本に深く染み込んでいる「韓流」が、両国国民の文化的距離を縮めてくれるのでは、という楽観論も聞かれる。だが、「韓流」で日本社会が融和に向かうとの期待は過剰であろう。日本にとって韓国が、物珍しかったのは20年前の話である。(つづく)

     

     

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