中国は、国内経済不振を打開すべく、EV(電気自動車)・電池・太陽光発電パネルの3点を重点輸出品目として売り込む姿勢を鮮明にしている。中国は、国内の過剰生産を輸出で切り抜けようという戦略である。米国は強い警戒姿勢をみせている。
『レコードチャイナ』(3月17日付)は、「駐中国米国大使『中国が不当廉売で過剰生産能力を輸出すれば世界の貿易体系にダメージ』」と題する記事を掲載した。
(1)「シンガポール華字メディア『聯合早報』によると、米国のニコラス・バーンズ駐中国大使は15日、米シンクタンク、イースト・ウエスト・センターが開催したオンラインセミナーで、「中国がダンピング(不当廉売)という形で過剰生産能力を輸出すれば、世界の貿易体系にダメージを与えることになり、他の国々もそれに反応するだろう」と語り、製造業の奮い起こしに力を入れる中国の取り組みに懸念を示した」
EU(欧州連合)は、中国がEV(電気自動車)のダンピング輸出を行っているという疑惑を強めている。すでに関連調査を進めており、間もなく結論を出す予定だ。現在の様子では、「ダンピング濃厚」で、EUはすでに取締りの準備に入っている。米国も、中国EVがメキシコへ工場進出して、「無関税」での輸出を狙っていると関心が集まっている。
(2)「中国政府は今年の政府活動報告で、政府活動任務における最初の項目として「現代化産業体系の建設を大いに推進し、新たな質の生産力発展を加速させる」ことを挙げ、現代製造業の発展に全力を尽くすというシグナルを発した。バーンズ氏は「終わったばかりの全人代と全国政協会議の年次総会から判断すると、中国は、経済の減速に対処し、より一層の成長を達成し、より多くの雇用機会を創出するため、製造能力を大幅に引き上げる方針だ」とし、「もしそうなれば、生産能力が過剰になり、太陽電池パネルや電気自動車などの製品が増えることになる。中国がこれらの製品を人為的な低価格やさらに進んでダンピングという形で世界の他の国に輸出すれば、世界的な貿易システムの破壊につながる」と懸念を示した」
駐中国の米国大使は、中国が国内景気テコ入れ目的で世界中へダンピングによってEVや太陽光発電パネルの輸出を行えば、世界貿易システムを破壊すると警告している。バイデン大統領は、この問題について表だった発言をしていないが、中国EVのメキシコへ進出には、政府高官が警戒観を滲ませている。一方、次期米大統領への返り咲きを目指すトランプ氏は、過激な発言をして牽制している。
『ブルームバーグ』(3月17日付)は、「トランプ氏、100%関税の意向ー中国企業がメキシコで製造の自動車」と題する記事を掲載した。
トランプ前大統領は3月16日、11月の米大統領選でホワイトハウス返り咲きを果たした場合、中国メーカーがメキシコで製造した自動車に100%の関税を課す意向を示した。トランプ氏が先に表明していた関税率の倍となる。
(3)「トランプ氏はオハイオ州デイトンの選挙集会で演説し、中国の習近平国家主席に直接言及。その上で、中国自動車メーカーがメキシコに大規模な工場を建設し、米国の労働者を雇用せずに対米輸出することを考えているのなら、そうはさせないとの考えを示した。「国境を越えて来る全ての自動車に100%の関税を課す」と語った」
中国が、メキシコへの工場進出を狙っているのは、米国・カナダ・メキシコ3ヶ国の貿易協定で無税になっていることを利用するものだ。この件で、中国BYDはメキシコへEV工場を作っても米国へ輸出しないと発言している。中国にとっても、「もしトラ」(トランプ氏当選)の場合、大変な損害になるので慎重になろう。
(4)「トランプ氏は今月早い時点で、中国企業がメキシコで製造する自動車への50%の関税賦課も辞さない考えを表明していた。同氏はこれまでに、中国からの全ての輸入品に最大60%の関税を課す考えなどを示すとともに、(中国の)対抗措置を懸念していないと話している」
トランプ氏は、中国EVへ100%関税率を科すとしている。十分に根拠があるわけでないが、米国自動車労働者向けの発言であることは間違いない。大統領選を有利に運ぶレトリックである。