勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 米国経済ニュース時評

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    習近平氏が、侠気を出して米国と貿易戦争を始めたばかりに、大きい代償を払うことが確実になってきた。中国での集中生産を各国へ分散させる傾向が強まっているからだ。アップルは、すでにインドでスマホの組み立てを始めているが、下請け各社に「脱中国」の検討を要請している。この流れは、次第に大きくなっていくはずだ。

     

    習近平氏は、中国史においてどのような評価を受けるか興味深い。中国経済衰退の引き金を引いたのは習氏と記されるはずだ。不動産バブルを煽ってGDPを押し上げた責任。米国の要求する不公正貿易慣行是正を拒否して、関税戦争になって中国から外資系企業の撤退を招いた責任。この二つは、中国経済衰退の決定的なトリガーとなる。

     

    『ロイター』(6月19日付)は、「アップルが序章、生産の『脱・中国』は止められない」と題するコラムを掲載した。

     

    (1)「米アップルが模索を始めた生産の脱・中国は、「長征」さながらの長い道のりながら、避けられない動きだ。日本経済新聞によると、アップルはサプライヤーに対し、同社向けに中国で生産している分の最大3割を、海外に分散するよう検討を促した。米中が通商交渉で対立する中でのこうした動きは、各方面で様々な反応を引き起こすかもしれない。すぐに実行に移されることはなくても、いずれ現実になることはほぼ間違いない。トランプ米大統領が次の対中関税措置の対象としている3000億ドル相当の輸入品のうち、1670億ドル相当がテクノロジー製品だと、全米民生技術協会は分析している」

     

    アップルが、サプライヤーに対して中国で生産している分の3割を海外に移転するように要請した。これは、初めて表面化した大掛かりサプライチェーンの再編成である。こうして、他社へもこの動きが広がって行く。

     

    昨年12月、米国のIT大手5社のCEOが北京で、関税戦争を続けていれば中国から移転する旨を警告していた。中国政府は無視して「最後まで戦う」などと言うピンボケな対応をしてきた。自業自得の側面が強い。

     


    (2)「サプライチェーンを動かすには時間がかかる。今月に入って米議会に呼ばれたHPインク、マイクロソフト、インテル、そしてデル・テクノロジーズの4社は、例えばノートパソコンの製造には、現在中国にしかない特殊な機材が用いられていると証言した。サプライチェーンを移管するには新たな取引先を選定し、工場を建設して、予定通り必要な量の部品が確実に届くようにしなくてはならない。それができたとしても、中国からの「自立」は簡単ではない。例えば、最先端のチップの一部に使われている精製ゲルマニウムのほとんどは中国で生産されている」

     

    すぐに、中国から大挙して移転することはないが、その方向に向かっていることは事実だ。米中貿易戦争が、米中覇権戦争という色彩を帯び始めたことが、工場移転を促進させている。実際のところ、中国が覇権狙いは不可能のはずだが、中国の大胆な軍事行動を見れば、何を始めるか分らない不気味さがつきまとう。ならば、そういう「火薬庫」の中国から離れた方が安全、という意識に変わるとしても不思議はない。

     

    (3)「サプライヤー群は突如崩壊することはないが、すり減っていく。米国ではデトロイトが依然として米自動車産業の中心地だが、この20年で安い労働力を武器にした南部の工場がその力を奪っている。米国のテクノロジー企業は、すでに製造拠点を移す検討を終えた。少しずつ行動に移し始めている企業もある。例えばアップルは、インドでアイフォーンを生産している。また、ベトナムに拠点を構えた企業も多い。産業化が中国の賃金を押し上げ、労働力依存型の企業は次のフロンティアを求めての移動を促された。アップルは、移転が難しいことを知るだろう。だが米中交渉の結果にかかわらず、移転を検討すること自体が、いったん出て行ったら恐らく戻ってくることはないそのプロセスを後押しすることになる」

     

    習近平氏が、国家主席に就任したマイナスは、今後ますます大きくなって行くとみる。李克強首相が国家主席であれば、民主化への軟着陸が可能であったと見る。ここが、歴史の皮肉な場面だ。李首相の難点は、「気が弱い」ところとされている。これが、国家主席になれなかった理由だ。歴史の女神は、采配を間違えたと思う。

     


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    英国の歴史家アーノルド・トインビ-は、古い文明が新しい文明に遭遇したとき、二つのパターンの存在を指摘した。

     

    新しい文明へ敢然として挑戦する「ヘロデ派」。逆に逃げ帰って、自らの伝統的文明へ閉じ籠もる「狂信派(ゼロット派)」である。中国文明は、後者の「ゼロット派」である。中国4000年の歴史は専制政治である。民主政治という新文明を、恐ろしくて採用できないという臆病文明なのだ。

     

    中国が、米中貿易戦争とファーウェイという中国にとって永遠のエース企業が、米国から「核爆弾」を落とされて、大きな衝撃を受けておりパニック状態という。ここで、習氏が取った行動が興味深い。ゼロット派そのものだ。

     

    ロシアのプーチン氏に6月4回も会談して相談したこと。さらに、大阪G20の直前に北朝鮮を訪問する。狙いは、米中首脳会談でトランプ氏の気を引くためだ。「北朝鮮に米国の方針をよく話してきたから」と言いつつ、トランプ氏の歓心を買う戦略と見る。中国は、米国との「冷戦」をぜひとも回避したいのが本音だ。

     

    ここで、米国がサプライチェーンの再編成に手を付けられたら、中国にとっては「死の宣告」を受けたも同然なのだ。中国は、強いようで脆い。トランプ大統領のような「直撃弾」を投げ込むタイプには、対応マニュアルがないに違いない。つまり、中国の歴史上の人物にはいないキャラなのだろう。

     


    『大紀元』(6月18日付)は、「
    貿易摩擦にファーウェイ禁輸措置、中国当局がパニック状態」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国問題専門家は、米中貿易戦の激化と米政府の華為技術(ファーウェイ)禁輸措置によって、中国当局が混乱に陥っていると指摘した。米ITニュースサイト「ザ・ヴァージ(The Verge)」は529日、米中関係について中国問題専門家2人を取材した記事を掲載した。記事は、トランプ米政権の中国通信機器大手のファーウェイ禁輸措置は、科学技術歴史上の大事件にたとえた。米政府の制裁で、次世代通信規格(5G)通信網構築の有力なサプライヤーとされたファーウェイは現在、八方塞がりになった」

     

    ファーウェイは、中国政府の懐刀の役割を担っている。技術窃取の大役もフファーウェイが果たしている。そこへ撃ち込まれた直撃弾である。中国の衝撃が大きいのは当然である。

     

    (2)「欧州シンクタンク、欧州国際政治経済研究所(ECIPE)のディレクターを務めるホスク・リーマキヤマ氏は、中国当局が先に「貿易戦を仕掛けた」と指摘した。中国当局は国内企業保護のため、数年前から米製品の一部に対して関税を課し、米グーグルやフェイスブックなどのIT企業を中国市場から排除した。豪シンクタンク、ローウィー研究所のエリオット・ザーグマン氏は中国に10年間滞在したことがある。同氏は、中国経済は表面的には繁栄しているように見えるが、実際には脆弱だと強調した。「中国の経済成長は、生産活動ではなく、完全に投資に頼っている」ため、中国当局が成長率目標を達成するには、より多くの融資が必要だという。「ザ・ヴァージ」は、中国経済がネズミ講に近いと指摘した

     

    中国経済がネズミ講に近いという指摘は、まさに正鵠を得たものだ。具体的には、自転車シェアリング事業を指している。大衆から15~20元の申込金を受け取り、爆発的な人気を呼んだが、その内に飽きられて破綻した事業である。不動産バブルという「投機経済」もネズミ講に近いだろう。市場経済による地味ながら堅実に積み上げてきた経済成長ではない。「一か八か」というバブルに依存した不健全経済である。この点について、私も全く同感である。この程度の経済が、世界覇権挑戦と言い出したところに不遜さを感じる。

     

    (3)「リーマキヤマ氏は、米中貿易戦の激化で、米GDP成長率が3%水準から2%水準に低下し、米経済は減速すると予測されるが、その影響は限定的だとした。一方、中国GDP成長率が同じく1%下落すれば、中国経済にとっては「壊滅的な影響を受ける」とリーマキヤマ氏とザーグマン氏が口を揃えた。ザーグマン氏によれば、米中貿易摩擦などの問題で「疾風迅雷の進撃」をしてきたトランプ大統領について、中国当局は「常に不意を突かれている」「予想もつかない」ために困り果てているという。両専門家は、中国当局が完全にパニック状態に陥っていると指摘した」

     

    米国経済が、3%から2%成長に低下しても問題は起こらない。中国では同じ1%ポイントの成長率低下でも大きな打撃を受ける。理由は、中国の対GDP比の債務総額が300%前後と格段に高いことだ。それだけ「固定費」の高い経済である。換言すれば、損益分岐点の高い経済体質になっている。付加価値が消えてしまうのだ。この状況は今後、永続化するはずである。中国は、金利もまともに払えなくなる経済体質に落込んでいる。不動産バブルを利用した経済成長の結末が、こういう形で襲って来たものだ。


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    米中の貿易戦争は、覇権戦争へシフトしているという向きが出てきた。もっとも、中国が自力の技術開発力を保持していればという前提つきであろう。現実には、国を挙げて技術窃取をするほど脆弱な技術開発力の国家だ。この中国が、イノベーションの権化である米国に勝てるはずがない。この見解をさらに補強するデータとして、国連の最新人口推計が発表された。

     

    人口は、経済活動の基本である。生産だけでなく消費の両面において一国経済を支えるものだ。かつて日本の『経済白書』で、人口が減っても機械化でカバーするから問題ない、という「珍解答」が出たことがある。ロボットは生産するが消費をしないのだ。生産と消費のバランスを必要とする経済成長には、人口増加が不可欠である。

     

    中国は現在、世界一の人口を擁しているのでGDPでも世界一になって当然、という迷信がある。これは、中国最高指導部も捉えており、民族派はそう固く信じている。科学技術の発展を伴わない人口増加では、生産性が低くGDPを押し上げる力は弱いのだ。中国は、この科学技術面での発展余力がなく、他国からの技術窃取に依存する「犯罪国家」の一面を持っている。ファーウェイが、その先兵を務めてきた。

     

    米国政府が、ファーウェイへのソフトと技術の輸出規制を始めたことで、中国の「技術窃取」戦略は蹉跌状態である。そこへ追い打ちをかけたのが今後の人口減少推計である。技術窃取はできない。人口が減るのでは中国経済がどうなるのか。急減速状態に陥ることは不可避だ。一方、中国を迎え撃つ側である米国の将来人口推計は増加する。ここに、「勝負あり」である。中国は、覇権戦争に費やす無駄な軍事費を削減して、国民生活第一の内政重視に舵を切り替えるべき時がきたのだ。

     

    『ブルームバーグ』(6月18日付)は、「中国1位は終焉へ インドが27年ごろ人口世界一に-大変化到来」と題する記事を掲載した。

     

    国連人口部は17日、世界人口推計を発表した。注目すべき米中の推計結果を示したい。

     

    2020年      2100年    増減率

    中国 14億3900万人  10億6500万人 -26%

    米国  3億3100万人   4億4500万人 +34%

     

    人口動態において、米中の置かれている状況は天と地もの差が出た。米国は移民国家である。世界の憧れの地として移民希望は増加の一途だ。若者の移民だから出生率は高く、米国経済発展に不可欠の存在である。

     

    中国は、一人っ子政策(1979~2015年)の結果、生産年齢人口比率を急激に引き上げた。これが40年間で平均9.8%成長を実現させた原動力である。一方では、この「一人っ子政策」が、合計特殊出生率を劇的に引下げて、2100年の人口が2020年比で26%も減少させる「負の遺産」をもたらすことになった。

     

    中国経済は、エレベーターに乗ったように、急上昇と急降下という象徴的な動きをするが、すべて人口政策の失敗と不動産バブル経済の負の連鎖の結果というほかない。不動産バブルで家計債務が急増している。これが、2016年以降の「子ども二人制」となっても一人しか生まない経済的な要因である。習近平氏は、不動産バブルを利用してGDPを押し上げた。現在は、これらの人為的な政策がすべて失敗して、経済成長を阻害する要因へと逆転した。皮肉なものだ。習氏の表情が冴えない理由である。


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    中国は、口先では米中貿易戦争で「最後まで戦う」と強気を装っている。本心は全く違い恐れている。ファーウェイの業績に急変が起こっているからだ。

     

    中国が最近、頻りと米国務長官のポンペオ氏を名指しで批判している。それは、ポンペオ氏の中国批判が激しく、米国が「冷戦思考」に入ったのでないかと危惧しているからだ。中国が最も恐れるのは、中国経済が米国から切り離される恐怖である。

     

    習近平氏は、ロシアで「トランプ氏は友人である。米中の経済関係は相互依存である。お互いにこの関係は切るに切れない深い関係」と発言した。米国へのラブコールである。しかし、米国は、中国を切り離す大方針を立てている。サプライチェーンの再編成がそれだ。

     

    『ロイター』(6月14日付)は、「中国、ポンペオ米長官目の敵に、異例の直接非難」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国は、ポンペオ米国務長官が摩擦を激化させている元凶として「目の敵」にしている。通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)から中国の人権問題に至るまでさまざまな同国批判を展開するポンペオ氏は、中国国営メディアから繰り返したたかれているだけでなく、中国外務省さえも個人攻撃するありさまだ。同省の報道官は10日の定例会見でポンペオ氏を名指しして「うそつき」呼ばわりするという、外交慣例に反する異例の振る舞いに及んだ。ポンペオ氏が北極圏における中国の行動に警告を与えたり、習近平国家主席が打ち出した巨大経済圏構想の一帯一路政策には注意すべきだと発言していることも、中国の怒りの源だ」

     

    中国外務省の報道官が、ポンペオ氏を「うそつき」呼ばわりしているのは、中国が経済的に相当に追い込まれている証拠だ。私のブログが、詳細に追い詰められている姿を取り上げているのでご理解いただけると思う。ゆとりを失っているから、批判の言葉も厳しくなるのだ。

     

    (2)「ある中国政府高官はロイターに、外務省が世界に情報発信する主な舞台としている定例会見でポンペオ氏の個人名を挙げて非難するようなこうした行為は、非常にまれなことを認めた。別の中国政府高官は、同国がポンペオ氏を好まない理由はシンプルで同氏が「冷戦の闘士」だからだと述べた中国政府はしばしば、米国側に「冷戦思考」を捨てるよう呼び掛けている。一方、米国務省のある高官は、ポンペオ氏が名指しで批判されたことについての質問に「われわれは中国共産党の政治宣伝にはコメントしない」と突き放した」

     

    中国経済は、建国以来の危機に直面しているはずだ。不動産バブルの後遺症を乗切るだけでも20年はかかるはず。そこへ、米中貿易戦争の勃発である。米国市場を失えば、今後の中国経済はどうやって食っていくのか。そういう根本的なことも考えないで、感情論でワイワイ騒いでいるに過ぎない。幼稚な国家である。

     

    米中が、冷戦になれば中国は八方塞がりになる。先進国はすべて門を閉じるのだ。中国が、発展途上国の頭目になっても、相手国に輸出できる購買力があるわけでない。ここは、頭を下げてでも米国と融和せざるを得ない局面だ。米国は、この中国の弱点はすべて知り尽くしている。

     


    『ロイター』(6月17日付)は、「ファーウェイ業績見通し下方修正、米制裁が予想以上に打撃」と題する記事を掲載した。

     

    (3)「中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の任正非最高経営責任者(CEO)は17日、米国による制裁が予想以上に効いていると認めた上で、今年と来年の売上高見通しを約1000億ドルに下方修正した。これまでは今年の売上高が1250億ー1300億ドルと約20%増加すると見込んでおり、米制裁による売り上げへの影響が300億ドル相当に達すると判断した。昨年の実績は19.5%増の約1040億ドル(7212億元)だった」

     

    (4)「任氏は深センにある華為の本社で、米テクノロジー専門家のジョージ・ギルダー氏とニコラス・ネグロポンテ氏と共にイベントに出席。「米制裁がこれほど多岐にわたり打撃になるとは想定していなかった」とした上で「部品供給を受けることもできなければ、多数の国際機関にも参加できず、数多くの大学の協力も得られない。米国製部品を一切使うことができず、米国製部品を使う通信網とも関係を築けない」と語った」

     

    下線を付した部分が、本音であろう。まさに「完敗」である。任氏はこれまで、米国を茶化して小馬鹿にしてきた。ところが、米国の輸出禁止措置に出会って、手も足も出ない事態に追い込まれたのだ。これこそ、中国経済の苦悩である。


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    中国経済を支えたのは、不動産バブルと技術窃取である。この二つが、中国の存在を過大評価させた理由だ。中国を評価する場合、GDPの規模だけに目を向けて、いずれ米国を抜くと錯覚している。中国経済について心血を注いで研究をしたこともなく、他人の主張を鵜呑みにした「中国論」ほど、害毒を流すものはない。

     

    中国に本当の潜在成長力があるならば、不動産バブルを意図的に長引かせ、あぶく銭を必要とする「短期戦略」をするはずがない。また、基礎技術力があれば、先進国から技術を盗み出す卑劣な行為を重ねるはずがない。経済倫理感欠如の中国ではある。だが、国家先導によって技術窃取して来た例は、人類史上初めてである。

     

    こういう中国が、ついに墓穴を掘った。柄にもなく、世界覇権に挑戦すると「竹馬」に乗った結果、米国がその竹馬の足を払ったのである。その上、不動産バブルで補給線は伸びきっている。新たな物資(成長率プッシュ)を届けられない状況に追い込まれている。米国が貿易戦争を仕掛ければ、もんどり打って竹馬から落ちる局面だ。

     

    中国の超高度成長を実現させた「一人っ子政策」が、人口面の潜在成長力を極限まで破壊した事実を無視している。この点については、最後に触れる。戦時中の日本が、大東亜共栄圏の夢に酔った以上の夢を持ち始めた中国だ。客観的な分析もないままに世界覇権論を口外して、米国の逆鱗に触れたのが現在の状況である。

     

    『中央日報』(6月17日付)は、「米中貿易戦争で片方に寄るのは致命的敗着」と題するコラムを掲載した。筆者は、李熙玉(イ・ヒオク)/成均館大政治外交学科教授/成均中国研究所長/リセットコリア外交安保分科委員である。

     

    (1)「今回の(貿易)戦争は米国が中国の浮上ペースを落として覇権を強化する時間を確保するためのものだった。中国もここで引けば「中華民族の偉大な復興」の夢が水の泡になると判断して背水の陣を敷いたのだ。 したがって米中貿易戦争は今後、通貨、エネルギーと資源、標準と規範、体制と制度などあらゆる領域に拡大する可能性が高い。特に米国は同盟国にも中国の新たな脅威に共同対処することを要求する一方、戦線から離脱すれば友邦と見なさないという脅迫もしている」。

    ここでの認識は、米中が互角の勝負と見ている。現実は、互角どころか大きな格差がある。この筆者は、米国が覇権国であることを忘れた議論をしている。ここに間違いの原点がある。米国ドルは基軸通貨である。世界中で通用する通貨だ。人民元は、ローカル・カレンシーに過ぎない。世界の金融情報は、すべてワシントンに集まるシステムである。

     

    米国の市場は世界一の厚みを持っている。この米国市場へアクセスできるのは、「特恵である」とトランプ氏が自慢するほど。要するに、米国市場の持つ絶対的な力が、米国経済の力をさらに大きく押上げている。米中問題を議論するならば、この程度の認識を持つべきである。米中が、互角という前提は完全な誤りである。

     

    (2)「両国は相手を完全に屈服できず、相互依存が深まった状態で休戦を模索するはずだ。そのきっかけは6月末に大阪で開催されるG20(20カ国・地域)首脳会議になるかもしれず、次期米大統領選挙を控えた特定の時点になるかもしれない。このように見ると、現在の局面は休戦を控えて経済領土を拡大するための最後の戦闘と見ることもできる」

    米国は、米中貿易戦争が長引けば長引くほど、サプライチェーンの再編成に乗り出す。中国にある製造機能を、外国へシフトさせることだ。産業の空洞化現象が始まる。これは、米中の相互依存が「分解」することで、「相互依存」とは逆方向である。米国政府は、中国との関係を希薄化させる方向へ進んでいる。米国が、TPP(環太平洋経済連携協定)へ復帰するようなことがあれば、中国を完全に米国市場から切り離しできるのだ。この現実を知るべきである。


      
    (3)「中国もこの戦争を復碁して、次のような未来戦略を準備するだろう。

        技術の自主化を高度化し、バリューチェーン体系の国内化を模索する一方、レアアース(希土類)のような供給リスク指数が高い鉱物資源の戦略的価値を再点検する。

        「供給側構造改革」を通じて製品と企業の競争力を改善し、内需中心の発展戦略を通じて経済体質を変える国家主導型の構造調整を本格化する。

        創業と教育革新を通じて科学技術人材養成に総力を挙げ、世界が中国に知識財産権の使用料を支払うようにする。

        中国系通信ネットワークに対する米国の報復措置に対して「国家技術安全保障リスト」を作成するなど正面対抗カードを準備する。

        ロシア・中央アジアに続いてアフリカ連合(AU)55カ国にもファーウェイ5G網を構築しながら戦略的友軍を確保する」

    中国は、前記5項目によって米国に対抗するだろうと指摘している。この実現性はあるだろうか。

        自主技術の育成は、これまで不可能であったから技術窃取してきたもの。米国から技術制裁を受ければ、ますます困難になる。レアアースは無意味であることを、私は繰り返し指摘してきた。

        供給構造の合理化は、市場経済において初めて可能である。国有企業中心の中国経済では不可能である。

        中国は、これまでに技術窃取してきた特許料を支払うことが前提になる。

        ファーウェイの「G5」に仕掛けられている「バックドア」問題は、安全保障の基盤を破壊するだけに米中それぞれの陣営が分かれるべきである

        中国陣営は、発展途上国グループだ。米国陣営と別々になる場合、中国陣営は世界最大市場の米国市場へのアクセス権を失うことを意味する。中国が自陣営で経済支援することは不可能になる。中国自体が米国市場へのアクセス権を失った状態で、慢性的な経常赤字が不可避になるからだ。

     

    ここに列記されていることは、中国側の情報であろう。総論として言えることは、実現不可能である。中国の劣勢は明白である。米中の100年覇権戦争など考えられない。中国が、それに耐えられる潜在成長力を欠くからだ。合計特殊出生率は現在、余りの悪化で公表を抑えているほど。「1」を割っていると見られる。米国の合計特殊出生率は、「1.77」(2017年)である。合計特殊出生率は、端的に潜在経済成長率を示す指標である。この米中比較だけでも、「100年覇権戦争」はあり得ないのだ。


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