勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 米国経済ニュース時評

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    身の程知らずと言えば、中国から叱られようが、欧州分断を狙って工作しても無駄となろう。欧州と米国とのつながりが深いのだ。トランプ氏という「破壊型大統領」が米国に登場したとは言え、米国のルーツは欧州だ。中国は、世界的な謀略網を張巡らして優位性を狙うが、「米欧」は最後に一体になる。「血は水よりも濃し」なのだ。欧州のプライドには、アジアの成金国・中国が逆さになっても敵わないであろう。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(12月9日付)は、「中国より米国を選ぶしかない欧州」と題する記事を掲載した。

     

    NATO(北大西洋条約機構)の公式声明には、新たに重要な要素が盛り込まれた。中国について初めて言及し、中国政府の影響力拡大がもたらす課題に「同盟として協力して対処する必要がある」と明言した。文言は平凡だが、この声明は中国政府では警戒感、米政府では喜びをもって受け止められるだろう。米中の対立が激しさを増すなか、今回の会議ではそろりと遠慮がちに、欧州の米同盟国が米国側に傾き始めたことが明らかになった。

     

    (1)「目下の焦点は、中国通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)が世界各地で次世代通信規格「5G」網整備の入札に参加していることだ。米国はファーウェイをブラックリストに加え、米企業からの部品購入を禁じる制裁を科している。トランプ米政権の高官はファーウェイ機器にはスパイ活動に悪用されるリスクがあると熱心に説いて回っている。ファーウェイの技術を採用するのは「中国政府を自分の寝室に招き入れるようなものだ」とある高官が言うのを筆者は聞いたことがある。この高官はさらに、自国の5G網にファーウェイ機器の採用を認める欧州各国の政府を「ばかげている」とも評した」

     

    ファーウェイ製品にバックドアがついていることは、もはや疑う余地のない事実となった。米国の危機感は異常なまでに高まっている。米国はNATOに対して、ファーウェイの「5G」導入を見送るように説得を重ねてきた。もし、導入すれば機密情報を流さないと牽制している。

     

    (2)「目下の焦点は、中国通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)が世界各地で次世代通信規格「5G」網整備の入札に参加していることだ。米国はファーウェイをブラックリストに加え、米企業からの部品購入を禁じる制裁を科している。トランプ米政権の高官はファーウェイ機器にはスパイ活動に悪用されるリスクがあると熱心に説いて回っている。ファーウェイの技術を採用するのは「中国政府を自分の寝室に招き入れるようなものだ」とある高官が言うのを筆者は聞いたことがある。この高官はさらに、自国の5G網にファーウェイ機器の採用を認める欧州各国の政府を「ばかげている」とも評した」

     

    通信の専門家は、ファーウェイ「5G」の危険性を熟知しているが、政治家は無頓着である。ファーウェイ「5G」が低コストであるので、予算面での制約もあり、ファーウェイに傾いている。「4G」がファーウェイ製品である場合、自動的に「5Gもファーウェイで」となりがち。これを、ひっくり返すのは大変なエネルギーを必要とする。

     

    (3)「欧州の態度はここにきて変化しつつある。トランプ米大統領は今回の首脳会議でも熱心に働きかけ、イタリアからファーウェイ排除の合意を取り付けたと主張した。ジョンソン英首相はこの問題のせいで米国と機密情報を共有する「ファイブアイズ」が危険にさらされるのなら、英国は自国の5G網へのファーウェイ参入を認めないと明言した。この誓約は米国にとって強力な武器となった。米議会では、英国がファーウェイ機器を採用するのなら、米英の自由貿易協定(FTA)を締結すべきではないとの声もある」

     

    米議会は、中国への警戒感が強くなっている。仮に、英国がファーウェイ製品を導入するなら、米英FTAを結ぶなというほど強硬だ。これは、他の国にも当てはまる話だ。トランプ氏だけが、ファーウェイ製品警戒論でなく、米議会を巻き込んでいるところに大きな特色がある。

     

    (4)「メルケル独首相はファーウェイに門戸を開いてきた。だが、ドイツ議会では連邦議会(下院)外交委員会のノルベルト・ロットゲン委員長を筆頭に反発の声が広がっている。ロットゲン氏はこれを「欧州の主権」に関わる問題の一つと位置付けている。こうした突き上げを受け、メルケル政権は立場を変え始めた。ドイツのアルトマイヤー経済相は最近のインタビューで、ファーウェイに対抗するために欧州の5Gサプライヤーを奨励する必要があると語った。欧州が態度を変えたのは米国の圧力に屈したのも一因だ。だが欧州では既に偏見の目で中国を見る傾向が強くなっている。欧州委員会が3月に発表した文書で、中国を「構造的なライバル」と位置付けたのが大きな節目となった

     

    ドイツは、米国に対して距離を置く。ドイツ議会が、ファーウェイ製品を警戒している。中国が、強引にEU分断を策した高度を取っていることが、反感と警戒を強めている。中国外交は、決してスマートと言えず、功を焦っている感じが強い。

     

    (5)「欧州連合(EU)は、中国が単なる大きな市場ではないことにようやく気付いた。中国は欧州で影響力を強めつつある強権国家でもある。中国政府が定例の首脳会議「17プラス1」を通じて欧州17カ国に接近を図っているのは、影響力をカネで買い、EUの足並みを乱そうとする行為ではないかとEUは疑念を強めている。欧州の産業界も中国に懐疑的な立場をとるようになり、市場アクセスや知的財産権の侵害に対する米国の多くの不満に同調している」

     

    中国外交の欠陥は、札束で相手の頬を叩くような強引な振る舞いをすることだ。こういう不作法をもっとも嫌うのが欧州である。中国国内でのやり方を、外交戦略に応用することは間違いなのだ。発展途上国で効果を上げても、欧州は反感を買うだけである。こう見ると、中国外交はお世辞にもスマートと言えないのだ。

     

     

     

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    結局、北朝鮮に時間稼ぎされてICBM(大陸間弾道ミサイル)の開発時間を与えてだけになったのか。25日の北朝鮮による「クリスマス・イブ」は、予想もしなかった事態へ進んでいるようだ。米国は、この瀬戸際政策をどうさばくのか注目が集まっている。

     

    米空軍は、高高度無人偵察機「グローバルホーク(RQ-4)まで朝鮮半島上空に出撃させている。北朝鮮の武力挑発を事前に遮断しようとする圧力と分析されている。グローバルホークは、20キロメートル上空からレーダーと赤外線探知装備などにより、地上の30センチメートルの大きさの物体まで識別できるという。作戦半径は、3000キロメートルに達する「空飛ぶ怪物」である。北朝鮮全域を監視できるように、休戦ライン近くを飛行したのも、普段とは異なると指摘されている。

    米国が、ここで一部なりと見返りを与えると、従来の「失敗コース」の再現にある。過去二回も先に見返りを与えて「食い逃げ」にあった。今回は、その轍を踏まないと強硬策に出ているが、北朝鮮の「粘り作戦」で米国が忌避してきたICBMに火がついてしまった。トランプ大統領の「甘さ」も指摘できる。

     

    『中央日報』(12月12日付)は、「再燃される厳重な韓半島の安保危機 韓国政府は現実を直視せよ」と題する社説を掲載した。

     

    (1)「北朝鮮は燃焼実験に続いて今月クリスマスの前に大陸間弾道ミサイル(ICBM)、またはミサイルを偽装した人工衛星を発射する可能性がある。このような挑発行為に米国は北朝鮮をさらに締め付け、あるいは軍事オプションを再び選ぶ可能性があるという。その結果はひたすら戦争に飛び火する恐れがあった2017年の悪夢の再燃だ。過去2年間北朝鮮の非核化のために注いだ努力がすべて水の泡になるかもしれない。非核化の交渉期間がそれまでむしろ北朝鮮に核武装とICBM開発の時間だけを稼いだ格好になった。それでも手をこまぬいているような政府の雰囲気に懸念が大きい」

    中央日報の軍事記事は、確度の高いものが多い。それだけに、下線を引いた部分の米軍による軍事オプションの行使ないし締め付けが行なわれる公算も捨てきれなくなってきた。米国高官は、すでにそういうニュアンスを漏らしてきた。北朝鮮がさらにICBMに関連した実験へ踏み切れば、完全に米国の指定する「デッドライン」を超えてしまう。

     

    (2)「今月7日、北朝鮮が平安北道鉄山郡(ピョンアンブクド・チョルサングン)東倉里の西海(ソヘ)衛星発射場で実施したミサイルエンジン燃焼試験は思ったよりはるかに深刻な意味を持つ。北朝鮮はこれまで発射場でほとんどのICBM用エンジンをテストした。北朝鮮は2017年にも3月18日、エンジン燃焼試験の4日後にミサイルを発射した。今回もそのような可能性があるという。北朝鮮は試験翌日である8日、国防科学院報道官名の発表で「非常に重大な試験」とし「遠からず朝鮮人民民主主義共和国(北朝鮮)の戦略的地位(核とICBM能力)をもう一度変化させる重要なきっかけになるだろう」と明らかにした。その言葉通りに発射場の周辺には試験の痕跡が明らかに見えた。米国のミサイル専門家、ミドルベリー国際問題研究所のジェフリー・ルイス所長が公開した東倉里試験場の映像には発射場周辺の広い地域の草木が火炎に焦がれた」

     

    北朝鮮はICBM用のエンジンの実験を済ませている。後は、ICBMの発射実験を行なうかどうかである。国防科学院報道官名の発表では、それを臭わせている。米国が、強襲攻撃に出るか。米国が、既成事実を積み重ねさせて傍観していれば、「張り子の虎」と蔑まされる恐れが強い。トランプ大統領としては、苦しい決断が求められよう。

     

    (3)「米国はこのような北朝鮮の挑発をあらかじめ感知したようだ。北朝鮮の挑発の兆しと高まっている声のためだ。北朝鮮の口調がまずますます荒くなっている。「年末の時限付きが近づいている。クリスマスのプレゼントを何に選ぶのかは全的に米国の決心にかかっている」「米国が武力を使用するなら私たちも迅速な相応の行動を取るだろう」「私たちはこれ以上失うものがない」「トランプ、年老いた亡霊」などだ。これに備えて米国は普段韓半島に送ったことのない特殊偵察機を最近連日飛行させている。トランプ米大統領は安保理理事会を招集した。今日開かれる理事会では当初予定された北朝鮮の人権問題の代わりに、ミサイル(ICBM)挑発の可能性と韓半島状況を協議する予定だ。会議の結果によっては北朝鮮の反発で挑発がさらに露骨になる可能性が大きい

    猛り狂う北朝鮮だ。言葉尻を捉えて、何を始めるか分からない不気味さがある。

     

    (4)「年末の安保危機が拡大しているが、韓国政府は反応がない。最近北朝鮮の度重なるミサイル発射にも息を殺し、今でも同じだ。米国特殊偵察機の韓半島飛行に国民の不安が高まるにもかかわらず、青瓦台(チョンワデ、大統領府)安保室や軍と情報当局の説明はない。北朝鮮の今回のミサイルエンジン燃焼実験に対する鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防部長官の控え目の発言だけだった」

     

    韓国政府は、米朝間の緊迫した雰囲気に対して傍観している。何らの対策もないようだ。北朝鮮を信じてしまったことで、今は金縛りに遭ったような状況だろう。無闇に北朝鮮を信じた報いが襲ってくるのか。全体主義国とは、予測しがたい行動を取るのだ。

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    文大統領は、北朝鮮の核放棄が「すぐにでも合意か」と言った楽観論を唱えてきた。これは、国内向けで支持率を引上げる目的であった。ところが、その楽観論が米朝のトップにも伝わっており、現在は「文を信用できない」と警戒されているのだ。

     

    『朝鮮日報』(12月11日付)は、「米朝双方から『透明人間』扱いされる文大統領」と題する社説を掲載した。

     

    米国が、北朝鮮の挑発拡大の兆しと関連して国連安保理の召集を要求した。米国の召集要求は2017年北朝鮮がICBM(大陸間弾道ミサイル)を発射して以来、2年ぶりだ。このところ米朝は「金正恩(キム・ジョンウン)が敵対行動をしたら全てを失うだろう」(トランプ大統領)、「われわれは失うものはない」(金英哲〈キム・ヨンチョル〉)など、既に「舌戦」を始めている。

     

    (1)「トランプ大統領はツイッター上で「北が非核化の約束を守るべき」と強調しつつ、意見の一致を見たところとしてNATO(北大西洋条約機構)・中国・ロシア・日本・世界」とだけ列挙した。「韓国」は言及しなかった。非核化を語りながらも、北朝鮮の最大の被害国にして直接の当事者である韓国を省いたのだ。しかも韓国は同盟国だ。北朝鮮も、韓国と文在寅(ムン・ジェイン)大統領を「目に見えない」存在として扱っている。今年9月の北朝鮮政権樹立日の動画を見ると、金正恩委員長がトランプ大統領、習近平国家主席、プーチン大統領と会っている姿しか出てこない。文大統領と3度会談した場面は一つもない。「全部削除」して無視したのだ。北は「おびえた犬」「ゆでた牛の頭」といった悪口を言うときを除くと、韓国政府の方を見もしない。米朝双方が、文大統領を「透明人間」扱いしている」

     

    下線をつけた部分は、韓国メディアとしても残念であろう。普段は批判している文氏でも、海外からあからさまに軽視されると腹立たしく思うもの。その無念の気持ちはよく分かる。文氏が、トランプ氏から軽んじられたのはもっともな理由がある。GSOMIA(日韓軍事情報包括的保護協定)で、あれだけ米国を手こずらせたのだから当然のこと。身から出たサビである。

     

    (2)「これは文大統領が自ら招いたことだ。米国は、韓国が金正恩委員長の非核化の約束を誇張して伝えたと疑っている。トランプ大統領は「文大統領から伝え聞いたことと北の態度がなぜ違うのか」と不満だったという。金正恩は金正恩で、ハノイ米朝首脳会談が壊れた後、文大統領の話を聞いて物事がおかしくなったかのように言い訳をしているという」

     

    ベトナムの米朝会談では、金正恩氏はすっかり話がまとまると思い込み出かけた。事前の文氏の甘い情報に騙されたのだ。トランプ氏は、最初から話をまとめる積もりはなく「決裂」を決めていた。この事前情報は、日本だけに伝えられ、韓国は除外した。多分、文を甘いと見限って、相手にしなかったのだろう。

     

    文氏は、米朝双方から無視されて、「透明人間」扱いだ。気の毒に思うが、文氏の最大の欠陥は「思い込み」が強烈に強いこと。反日もこれである。学生時代から、筋金入りの「反日主義」であったに違いない。今さら、方向転換できないだ。

     

    (3)「金正恩がこういう形の交渉を通して核を放棄するはずがないという現実から目を背け、希望的な思考と国内政治上の欲から、全く考えが違う米朝双方をあえて対面させたものの、結局は面倒なことが起きた。トランプと金正恩は、韓国の大統領を最初から抜きにして、二者の間で韓半島の運命を決定しようという構えだ。無謀な衝突が起こりかねず、見せかけの合意で北朝鮮を核保有国にしてしまうこともあり得る。それなのに、青瓦台(韓国大統領府)は、政権が発足してから一番うまくいったことは何かという質問に「韓半島に平和を定着させた」と答えている。大変なことだ」

     

    韓国大統領府の秘書官は、元学生運動家である。文大統領と同じような経歴の持ち主が集まってきた。各省庁には優秀な官僚がいても、彼らを排除して意見を聞こうとしないのだ。こういう偏屈な集団が、生兵法で施策を決めて韓国政治を動かしている。成功するはずがない。

     

    テイカカズラ
       

    中国は、大法螺を吹くことが特技である。2016年10月、SDR(特別引出権)への昇格時には、IMF(国際通貨基金)を抱き込んで、おいおい資本勘定の規制撤廃と自由変動相場制にすると約束した。今になっても実現せず、空手形のままだ。IMFも「共同正犯」である。当欄は、人民元のSDR化は時期尚早と反対論を打った。当然だが、誰も聞く人はいなかった。

     

    GDP世界2位の国家が、資本勘定自由化も自由変動相場制にも移行できないのは、本質的に経済構造が脆弱な結果だ。中国は実体的に、GDP2位の力量を伴っていないことを示している。無理に無理を重ね、延びきった経済である。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(12月11日付)は、「人民元の国際化 データから見る厳しい現実 」と題する記事を掲載した。 

     

    中国人民元の影響力は拡大していると言われてきた。人民元はいずれ、世界の基軸通貨としてドルの地位を脅かす存在になるか、最低でも、複数の基軸通貨が存在する新たなシステムの到来を告げると言われてきた。しかし、実際の国際的取引での人民元の利用に関するデータや、過去10年の極めて遅々とした進展状況からは、厳しい現実が見えてくる。

     

    (1)「国際決済銀行銀行(BIS)が今週公表したデータは、人民元の国際的役割について悲観的な印象を与える新たな一例となった。世界最大の貿易国としての中国の規模に比して、人民元の影響力は極めて期待外れの状況にある。人民元の外為取引の総額は、中国の貿易総額の約14倍になっている。この倍率はユーロ、円、ドルに比べて小さい。ユーロの同倍率は約40倍となっている。ユーロ圏の貿易の多くがユーロ圏内で行われているにもかかわらずだ。円は160倍、ドルは273倍だ」

     

    世界最大貿易国の中国は、人民元の外為取引が貿易総額の14倍と少なく驚きである。これは、中国輸出の半分が外資系企業によるので、外資系企業の通貨で決済していると見られる。円は貿易総額の160倍。ドルは273倍と人民元と格が違うことを見せつけている。これが、国際社会における「実力番付」であろう。

     

    (2)「国際通貨基金(IMF)が今年作成したデータによると、ドル建てで行われた貿易の比率で見ると、中国は他の全ての調査対象国を上回った。ブラジルやインドネシアといった新興国でさえ、より多様な通貨が貿易決済に使われている」

     

     

    中国では、圧倒的にドル決済が多い。中国は、対米輸出が首位であるから当然の結果であろう。中国は、米国と経済的な結びつきがもっとも強いことを示している。米中貿易戦争が、中国にとって大きな負担であることを物語る。

     

    (3)「人民元の熱狂的な信者たちは、まだ影響力は小さいものの、大きくなりつつあると主張するかもしれない。しかし、データはそれについても裏付けをほとんど示していない。人民元のオフショア取引は20164月から20194月の間に25.3%増加した。金額は大きいものの、伸び律はインドルピー、ブラジルレアル、韓国ウォン、ロシアルーブルを下回っている

     

    人民元のオフショア取引(外―外)は、2016年4月~19年4月の間で25.3%増に過ぎなかった。この増加率は、ルピー・レアル・ウォン・ルーブルなどを下回った。中国政府が、オフショア取引を抑制してオンショア取引(内―内)への影響を防ぐという意図に他ならない。こうやって人民元相場の投機による急落を回避しているのだ。毎日、薄氷を踏む思いで日々を過ごしているに違いない。

     

    (4)「人民元の国際化に関する話は当初こそ熱狂的に報じられたが、その後の続報が少ないため、順調に前進しているかのような印象を受ける。しかし、現実には、多くの取り組みが縮小したり、計画倒れになったりしている。国際的に利用される通貨の強さは、保有者がその通貨で何をできるかにかかっている。人民元の場合、資本勘定は総じて閉鎖的で、資産市場は「超」がつくほど投機的であり、他の通貨と比べて魅力的とは言えない。 そうした状況に変化がないのであれば、人民元の国際的役割をめぐる論議は、絵空事ばかりで実際の進展を伴わない内容と心得ておくべきだ。国際金融での新たな役割に関する人民元の発表があるとしても、話半分で聞いておくべきだろう」

     

    中国は、外貨準備高3兆ドル保有に国威をかけている。経済的な意味はゼロだが、発展途上国に対して、「こけおどし」の意味を持たせている。中国が経済的に豊かであるかを見せつける「ショーウインドー」的な役割を担わせているのだ。そのために、資本勘定に規制をかけて自由な移動を抑えている。こう見ると、人民元は「木偶坊」になっていることが分かる。

     

     

     

     

     

    あじさいのたまご
       

    中国は、大国と発展途上国の二つの顔を使い分けている。外交は、「大国づら」して他国を圧迫する。経済面では、1人当りGDPが1万ドル以下であることを理由に、「発展途上国」として特恵を求める。国家としてのプライドを投げ捨て、経済的な実利を求める姿はみっともない限りである。

     

    中国が、世界銀行(世銀)から今なお低利資金を借りている。12月7日の本欄でもすでに取り上げたが、米国財務長官が、米議会で反対論を公表した。今度は、トランプ大統領による「ツイッター砲」で厳しく非難した。

     

    『ロイター』(12月9日付)は、「トランプ氏、中国への融資止めるよう世銀に要求」と題する記事を掲載した。

     

    トランプ米大統領は6日、世界銀行が既に承認した中国への融資計画について、止めるよう求めた。

     

    (1)「世界銀行は5日、中国に対し2025年6月まで、年間10億15億ドルの低利融資計画を認めた。世銀は、向こう5年の融資規模について、それまでの5年の年間平均18億ドルから段階的に縮小させる計画だと説明している。これに対してトランプ氏はツイッターに「なぜ中国に融資するのか?こんなことは可能なのか?中国には十分金がある。なければ中国は作り出すことができる。(融資計画を)止めろ!」と投稿した」

     

    日本もかつて世銀融資を受けて、高速道路を建設した。世銀関係者が日本を視察しての感想は、「日本に道路予定地はあるが、道路はない」と酷評された時代である。前回の東京オリンピック開催前の話である。こういう状況で初めて、世銀融資を活用できるのだ。

     

    現在の中国は、空母を3隻も建艦する国である。AIIB(アジア・インフラ投資銀行)をつくって他国へ融資する国だ。そういう経済的に豊かになりながら、なお「低利のドル資金」に魅力を感じて世銀融資を受ける。何とも、けちくさい「金に汚い国」というイメージを世界中にばらまいている。

     

    これを恥ずかしいと思わない精神構造はどこから来るか。「恥は一時(いっとき)」という中国人特有の心理が働いている。

     

    「韓信の股くぐり」という言葉がある。韓信とは、中国秦末から前漢初期にかけての武将。劉邦の元で数々の戦いに勝利し、劉邦の覇権を決定付けた。張良・蕭何と共に漢の三傑である。その韓信が若い頃、町で無頼の青年に辱められ相手の股をくぐったが、のちに大をなしたという故事。大志のある者は目前の小事には忍耐して争わないというたとえである。

     

    中国は、世銀から今後、年間10~15億ドルの融資を受けて、苦しい外貨資金繰りの一助にする計画であろう。今は恥をかいても、世界覇権獲得のためには恥を我慢する。こういう心理状態に読める。すべては、「世界覇権への道」と大真面目に考えている結果だ。

     

    トランプ氏が、ツイッターで「融資を止めろ」と叫ぶのは当然である。世銀融資は「小国」を助ける道である。中国は普段、自らの大国を強調して、他国を「小国」とあざける国だ。そこまで「身分」を落としてまで、低利のドル資金を借りたい。よほど、切羽詰まった外貨事情にあるのだろう。

     

    (2)「世界銀行はロイターへのメールで「中国への融資は速いペースで減っており、米国を含めた全ての出資国との合意の一環として今後も縮小する」とし、「国が豊かになれば融資も打ち切る」と説明した」

     

    中国は、世銀へ副総裁を送っている。「お手盛り」で中国融資をさせる工作をして、世銀を丸め込んでいるのだろう。世銀は、なぜこういう不条理な融資を続けているのか。中国の「一帯一路」融資で、多くの国が債務漬けにされて、担保を取り上げられる「国際高利貸し」の中国である。世銀で借りた資金が、こういう「一帯一路」の債務漬けに利用されている事態も十分にありうる。世銀は甘いと思う。トランプ氏の怒りは当然である。

     

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