勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 米国経済ニュース時評

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    中国は、台湾海峡で前後の見境もなく空軍による軍事威嚇を続けている。これが、米国へ危機感を持たせ不退転の決意をさせた。米国は、「一つの中国論」に風穴を開け、堂々と米台間の政府高官交流を始める意思を示す準備を始めているのだ。中国は、とんだやぶ蛇になってきた。米国と台湾接近の口実を与えているからだ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(4月14日付)は、「アーミテージ氏ら米要人が訪台、蔡総統と会談へ」と題する記事を掲載した。

     

    バイデン米大統領は13日、アーミテージ元国務副長官ら米要人3人を非公式代表団として台湾に派遣した。滞在中は蔡英文(ツァイ・インウェン)総統ら台湾高官と15日に会談する見通し。トランプ前政権から続く米台接近に中国は強く反発している。

     

    (1)「訪台したのはアーミテージ氏とスタインバーグ元国務副長官、ドッド元上院議員。今回の派遣は米国による台湾支援を定めた台湾関係法の制定から42周年にあわせたもので、米政府高官は「長らく続く超党派の伝統」と説明した。アーミテージ氏は共和党のブッシュ政権、スタインバーグ氏は民主党のオバマ政権でそれぞれ国務副長官を務め、東アジア情勢に精通する。ドッド氏は先の大統領選でバイデン氏陣営に参画した同氏の盟友の一人だ。米政府高官は、「米国の台湾と民主主義への関与を示す重要なシグナル」である今回の派遣を通じ、インド太平洋地域の繁栄について台湾を交えて同盟国や友好国とともに促進する狙いがあると強調した」

     


    アーミテージ氏ら米国要人の4氏が訪台したのは4月14日、米上院で審議を開始した「2021年の戦略的競争法」と関係がある。この法案については、後で取り上げるが、米台の交流促進が一つの目玉である。バイデン政権は、この法案が成立する前提で、今回の要人4氏を台湾へ送って準備を始めていると見られる。

     

    米国は、インド太平洋戦略のキーとして台湾防衛に当る決意を内外に示す狙いだ。16日には、日米首脳会談がワシントンで開催される。日米が、揃って台湾防衛の必要性を世界に示すことになろう。

     

    (2)「米国は3月末、パラオのウィップス大統領の台湾訪問に駐パラオ米国大使を同行させたばかり。2020年9月には当時のクラック米国務次官が李登輝・元総統の告別式に合わせて台湾を訪問した。台湾の総統府は14日、同日から台湾を訪問するアーミテージ元国務副長官ら代表団について「心から歓迎し、バイデン大統領と米政府の台湾への支援に、心から感謝する」との声明を発表した」

     

    台湾防衛は、日米の安全保障にとって重要な役割を果たす。台湾が中国の手に渡れば、沖縄の地位が危うくなる。米国にとっては、中国海軍が太平洋から米国本土を攻撃する機会を与えることになる。その意味では、日米は共通の利害関係を持つことになる。

     


    (3)「バイデン政権の矢継ぎ早の動きの背景には、台湾への威嚇を繰り返す中国に対する危機感がある。米国家情報長官室は米上院情報特別委員会に提出した米国の脅威に関する年次報告書で「中国が台湾を国際的に孤立させ、軍事活動の増強を続けることで中台摩擦は広がる」との見通しを示した」

     

    習近平氏の歴史的レガシーつくりには、台湾侵攻がかかっている。また、習氏が長期政権を構える条件でも台湾侵攻は不可欠である。つまり、中国は習氏が健在でいる限り、必ず台湾を侵攻するはずだ。米国が、早手回しに防衛体制を取るのは「先手必勝」を目指している。

     

    『ロイター』(4月9日付)は、「米上院外交委が中国対抗法案、人権促進や安保で他国支援」と題する記事を掲載した。

     

    米上院外交委員会の指導者らは4月8日、中国が世界的に影響力を拡大していることに対抗するため、人権保護促進や安全保障支援などを柱とした超党派による法案を公表した。14日に審議を行う。「2021年の戦略的競争法」と題した法案は、中国に対抗するための一連の外交的、戦略的対策の権限を付与。議会の両党における中国に対する強硬姿勢を反映している。

     


    (4)「中国との経済的な競争だけでなく、ウイグル族などイスラム系少数民族に対する扱いや香港での反政府デモの抑圧、南シナ海での挑発的行為を含む、人道的、民主的価値観を推進する。法案では「インド太平洋地域における米国の政治的目的を達成するために必要な軍事的投資を優先する」重要性を主張。米議会が連邦予算を中国と対抗するための戦略的責務に「沿ったもの」にする必要があると訴えた。2022~26年の会計年度に、同地域に軍事援助として計6億5500万ドル、インド太平洋海上安全保障構想と関連プログラムに計4億5000万ドルを拠出するよう推奨している」

     

    インド太平洋地域の自由と民主主義を守るべく、軍事的投資を優先するとしている。この中には、日本の軍事施設への支援も含まれている。

     

    (5)「また、台湾が「インド太平洋地域における米国の戦略に必須」であり、協力関係を強化する必要があると指摘。米当局が規制なく台湾当局と交流できるようにすべきだとした」

     

    ここでは、台湾防衛が米国の戦略に必須としている。「米当局が規制なく台湾当局と交流できるようにすべきだ」としている。今回、米要人4氏が訪台しているのは、この準備作業である。

     

    (6)「中国は、台湾を自国の領土と見なしている。米国は同盟国に対して、中国の「攻撃的で積極的な態度」を抑制するように促すべきだと主張。米政府の各行政組織と機関に、中国との戦略的競争に関する政策を担当する高官を設けることを提唱し、「全ての連邦行政組織と機関は、中国との戦略的競争が米国の外交政策の優先事項であることを反映する構造にしなければならない」とした。その他、中国の軍事設備を置く国に対する支援を制限するとし、中国の広域経済圏構想「一帯一路」が、中国の安全保障を推進し軍事アクセスを拡大するためのものであると指摘した」

     

    下線のように、米国の行政組織は全て中国との戦略的競争に打勝つように再編しなければならないとしている。米国の決意のほどが窺えるのだ。米中冷戦の開始を告げている。

     

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    パンデミックがもたらした世界的デジタル化によって、半導体需給は一挙に急迫化している。米国もその影響を受けていることから、12日(現地時間)ホワイトハウスで世界主要半導体メーカー19社を集め「半導体増産会議」を行なった。これに対して、中国メディアが一斉に反発している。

     

    『朝鮮日報』(4月14日付)は、「中国、『米国、半導体を武器に政治工作』」と題する記事を掲載した。

     

    バイデン米大統領が出席し、ホワイトハウスが12日開いた半導体対策会議について、中国は「中国の成長を阻もうとするもう一つの政治工作だ」として、激しく反発した。

     

    (1)「中国紙の環球時報とその英語版グローバルタイムズは同日、「米国が世界の半導体関連企業19社を呼び集めた会議を通じ、中国企業を排除し、米議会も中国を狙った制裁計画を推し進めている」とし、「米国は半導体を中国の技術発展を抑える武器と見なしている」と批判した。グローバルタイムズは「米国が半導体分野で同盟国に中国と対立するよう圧迫するのも、結局は米国に(中国と競争する)自信がないからだ」とし、「中国企業に対する制裁に効果がなかったことから、米国企業ではない台湾積体電路製造(TSMC)やサムスン電子などに無理に中国とのデカップリング(分離)を要求したものだ」と主張した」

     


    半導体が、「21世紀の石油」とされる戦略物資である以上、米国が囲い込みを始めたのはやむを得ない措置である。中国が、露骨な海洋進出によって世界地図を塗り替えようと狙っている以上、米国の自衛措置である。

     

    戦前の日本が、米国覇権に対抗して太平洋戦争を準備したことで、米国は対日経済制裁で石油と鉄くずの禁輸措置を取った。米国の半導体増産計画は、これと同じ主旨だ。

     

    (2)「グローバルタイムズはまた、「バイデン政権は多国間主義に復帰すると言いながら、実際には(トランプ政権時代の)一方主義、孤立主義の政策を続けている」とし、「中国を孤立させることは結局米国自体を孤立させることだ」と述べた。米国の半導体覇権確保の動きが結果的に世界の半導体サプライチェーンを崩壊させ、世界経済に逆効果を生むと主張した格好だ」

     

    世界経済の理想図は、グローバル化である。だが、中国は正統な理由もなく他国へ経済制裁を行なっている。豪州では、石炭・牛肉・ワイン・小麦などを輸入禁止にした。韓国ヘは、「限韓令」と称して、文化・芸能の交流禁止である。自らが、こうした不当措置を行いながら、他国を非難する資格はない。

     


    『朝鮮日報』(4月14日付)は、「バイデン大統領『米国の競争力、あなたがたの投資次第』…サムスンに事実上の投資圧力」と題する記事を掲載した。

     

    米ホワイトハウスが12日、非公開で開いた半導体対策会議は1時間半にわたり続いた。会議の最後に登場したバイデン米大統領は約10分間発言し、「アメリカ」を19回、「投資(インベスト)」を18回も口にし、世界的企業に米国へと投資を促した。会議の目的が米国への投資を迫ることだという本音を隠さなかった格好だ。

     

    (3)「世界的な半導体供給不足は米国の主力産業である自動車の工場をストップさせ、スマートフォン、生活家電などIT産業へと被害が拡大している。海外メディアや半導体メーカーは今回の会議について、サプライチェーン再編を通じた半導体自立、中国のテクノロジー崛起(くっき)けん制、米国内での雇用創出などさまざまな目的があったとみている」

     

    米国が、国内での半導体自給化を目指しているのは明らかである。安全保障という視点から見れば、当然の措置であろう。もはや、米中は冷戦状態に入っている。

     


    (4)「バイデン大統領は同日、「(半導体)インフラを修正するのではなく、新たに構築すべきだ」と述べた。輸入に依存してきた半導体を米国内で生産する方式に改めるという意味だ。米国は半導体設計分野で世界最強だが、生産は台湾、韓国に大部分を任せている。ボストン・コンサルティング・グループによると、世界の半導体市場で米国内での生産割合は1990年の37%から昨年には12%にまで低下した。半導体ファウンドリー(受託生産)企業のうち、米国企業はシェア7%のグローバルファウンドリーズが唯一だ」

     

    1980年代後半から、日米は半導体をめぐる厳しい対立状態に入った。これが、急速な円高への伏線にされ日本は「敗北」した。米国は、戦略物資となれば同盟国でも容赦しない「冷酷」な面がある。米国が、その素顔を再び覗かせてきたと見るべきだろう。

     


    (5)「こうした状況で台湾積体電路製造(TSMC)やサムスン電子など東アジアの企業が半導体をタイムリーに供給できなければ、米国のテクノロジー産業全体がストップしかねない。日本経済新聞は「仮に中国が台湾を自国の影響下に置けば、世界の半導体サプライチェーンが根底から揺らぐ」とし、「そうしたリスクを解消すべきというのがバイデン政権の考えだ」と指摘した。ホワイトハウスのサキ報道官は会議に先立ち開かれた定例会見で、「大統領は半導体を安全保障の問題ととらえているのか」との質問に対し、「そうだ」と答えた」

     

    このパラグラフにはっきりと、米国の意図が安全保障であると明確にされている。「準戦時」という認識である。米国の「怖さ」は、ここにあるのだ。

     

    (6)「今回の会議を契機として、サムスン電子の対米半導体投資が近く決定される可能性が高まった。崔時栄ファウンドリー事業部長(社長)が会議に出席したサムスン電子は、現在稼働しているテキサス州オースティンのファウンドリーのそばに20兆ウォン(約1兆9400億円)規模の生産ライン増設を検討している。半導体業界関係者は、「米大統領が直接投資を要求しただけに、サムスン電子がそれに応える形で、近く決定される可能性が高い」と指摘した」

     

    韓国政府は、対中関係ではのらりくらりとしているが、企業になれば死活問題である。米国の要請に応えて、サムスンは半導体工場を増設する。これは、かねてからの計画であった。

     

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    中国外交を取り仕切る楊潔篪(ヤン・ジエチー)共産党政治局員の妻子が、10年以上も米国に滞在していると報じられた。先のアラスカでの米中外交トップ会談冒頭で、楊氏は痛烈な米国批判を行なった。だが、私的には妻子を米国に滞在させている「二つの顔」を持っている。

     

    米国では、巨額な資産を保有していることが判明した。娘は、米国の中学・高校・イェール大学の全てで奨学金を支給されるという「厚遇」を受けてきたという。楊氏は私的には、米国の「悪口」を言えない立場である。

     

    『大紀元』(4月13日付)は、「中国外交トップ楊潔篪氏も『裸官』か、妻娘が10年以上滞米 脱税疑惑も」と題する記事を掲載した。

     

    3月、アラスカで行われた米中外交トップ会談の冒頭で、中国の外交担当トップ、楊潔篪(ヤン・ジエチー)共産党政治局員は、「アメリカには上から目線で中国にものを言う資格はない」「中国はその手(アメリカのやり方)は食わない」などとまくし立て、16分間にわたって過激な言葉で米国を批判した。その好戦的な姿勢は世界に衝撃を与えた。しかし会談を終え、楊氏はその足で米国滞在中の娘を訪ねていたと暴露された。同氏は妻子を米国に住まわせる「裸官」のようだ。

     


    (1)「あるツイッターユーザーがネット上で、「楊氏の戦狼ぶりは、国内向けのショーだった。会議の後、楊氏はイェール大学に留学中の娘を訪ねていた」などと投稿した。このツイートには、楊氏の妻と娘の住所の詳細も書かれている。ワシントンD.C.にある1200万ドル(約13億円)の豪邸と、マンハッタンにある210万ドル(約2.3億円)のリバービューマンションである」

     

    (2)「47日付のセルフメディア「ジェニファーの世界」の独占報道によると、同メディアを主宰する曾錚(ジェニファー・ゼン)氏はこのツイートの情報を元に、米プロ調査員であるブライアン・オシェア氏に調査を依頼した。2つの邸宅が、10年以上米国に住んでいる楊潔篪氏の妻と娘の米国での住所であることを確認したという。曾氏は記事の中で、中国の外交担当トップである楊潔篪氏が、10年前に妻と娘を米国に移住させ、共産党の政治舞台で一人「反米愛国」を叫んでいる典型的な「裸官」であると指摘した」

     

    (3)「楊氏の妻である楽愛妹(ルー・アイメイ)氏は、中国の在外公館に派遣される職員の思想や汚職を監督する、中国外務省の機関党委員会(部党委国外工作局ともいう)で参事官を務めている。楽愛妹氏が2001年から住んでいるワシントンD.C.の豪邸は、中国政府の所有物として登録されており、資産価値は813万ドル(約8.9億円)相当。楽氏は、1998年にメリーランド州で発行された米国の社会保障番号(ソーシャル・セキュリティ・ナンバー、SSN)を持っている。しかし、調査の結果、このSSNはルーベン・ラミレスという人物も保有していることが判明した」

     


    (4)「
    楊潔篪氏の娘、楊家楽(アリス・ヤン)氏は現在、イェール大学に通っている。ニューヨーク州政府の公開資料によると、アリス・ヤン氏は2010年9月以来、イェール大学から130キロ離れたニューヨーク市マンハッタンの2つの住所に居住していた。いずれもニューヨーク中国総領事館から数百メートルしか離れていない一等地にある」

     

    (5)「一つは、リバービュー高層マンションの一室で、購入日は2011年9月1日、購入価格は178万ドル(約2億円)。2015年8月から入居しているもう一つの高級タワーマンションは、2014年11月7日に166万ドル(約1.8億円)で購入したもの。2つの邸宅の所有者はそれぞれYan JingboHe Zheとなっている。共産党高官の個人情報を晒すウェブサイト「孤児展覧館」によると、Yan Jingboはアリス・ヤン氏の夫だという」

     


    (6)「2012年7月付の米国の華字ニュースサイト「明鏡新聞網」によると、楊氏の娘は2011年、イェール大学に全額支給奨学金で入学した。また、中学・高校もワシントンD.C.にある私立の名門校、シドウェル・フレンズ・スクールに全額支給奨学金で通っていた。在米華僑が運営するニュースサイト「チャイナ・ニュース・センター」は3月19日、楊潔篪氏の娘が米国の名門校に全額支給奨学金で通うことができたのは、米国の名門校が中国共産党幹部との利権取引のために、「紅二代」「紅三代」(高級幹部子弟)の入学基準を下げたことを示唆している」

     

    (7)「中国共産党には、妻や子供、資産を海外に送り、一人で国内に残って役人を務める「裸官」が多くいる。中国当局は、共産党幹部の財産や裸官に関する内部統計を持っているが、それを内部の権力闘争の駆け引きの材料にしており、国民には開示していない。2010年の全国人民代表大会(全人代)で、全人代代表で中央党校教授の林喆(リン・ゼー)氏が、1995~2005年までの10年間で、中国に118万人の「裸官」がいたことを漏らした。中国では裸官を「反米は仕事、妻子をアメリカに行かせるのは生活だ」と揶揄している」

     

    楊氏の家族に関する詳細な情報である。習近平氏も一人娘を米国へ留学させていたが、数年前に帰国させている。政府高官の子弟は原則、米国留学先から帰国させたはずだが、楊氏の場合は特権で米国滞在が許されたのであろう。こういう「米国依存」で米国批判をしても、中国国内では迫力が減殺されよう。

     

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    習近平氏は、側近に民族主義者を抱えており、「中華再興論」で燃えている。民族主義の落し穴は、非合理性にある。不可能を可能と信じ込むところが、最大の危険な点だ。戦前の日本がそうであった。あの無謀な太平洋戦争を始めた裏には、「神州不滅」という大きな盲信があった。経済力の差を考えれば、どんなことがあっても回避すべき開戦であった。

     

    現在の中国が、かつての日本と同じ状況に置かれている。「米国衰退・中国繁栄」という全く根拠のない理屈で、西側諸国へ対抗している。これが、開戦のリスクを高める要因になる。

     

    これを回避するには、西側諸国の結束しかない。具体的には、インド太平洋戦略「クアッド」(日米豪印)が軍事的に対抗する姿勢を固めることだ。「クアッド」は軍事同盟でないが、親密国であることは間違いない。このクアッドが軍事同盟化するとき、中国は「米国衰退・中国繁栄」という誤りを覚るはずだ。

     


    4月16日の日米首脳会談が、どのような共同声明を発表するか。これによって、日米の決意のほどを世界に示すであろう。菅首相は、5月の連休中にインドとフィリピンを訪問して、それぞれ首脳会談を行なう。日米の決意をこれら両国に伝えて「クアッド」強化へつなげるのであろう。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(4月13日付)は、「『米国と対等』意識する中国、秩序打破目指す」と題する記事を掲載した。

     

    米アラスカ州アンカレジで先月行われた米中高官会談で、すぐに明らかになったことがある。中国の習近平国家主席の外交使節団が会談の場に持ち込んだものが、和解の象徴であるオリーブの枝ではなく、新たな世界観だったということだ。米バイデン政権の当局者らが予想していたように、外交政策トップとして習氏を支える楊潔篪(よう・けつち)共産党政治局員と王毅外相という中国側カウンターパートはこの初会談で、トランプ政権時代の中国を標的とした政策の転換を求めた。

     


    (1)「楊氏は予想外の行動も見せた。同氏は16分間にわたって、米国の人種差別問題や民主主義の失敗について説教したのだ。中国側当局者らによると、そこには、中国政府が自らを米国と対等の存在とみなしていることを明確に示す狙いがあった。同氏はまた、中国政府が主権にかかわる不可侵の問題ととらえる台湾との最終的な統一について、米政府が干渉すべきではないと警告した。これは中国指導者の姿勢が大きく変化したことを示すものだ。中国の歴代指導者らは長い間、世界のリーダーとしての米国に盾突かないよう気を配り、鄧小平が数十年前に示した「韜光養晦(とうこうようかい)=力を隠して内に蓄える」の教えに従ってきた」

     

    中国は、米国と対等であると思い込み始めた。これは、中国に軽挙妄動させる大きなリスクを抱えさせる。このリスクを、いかにして顕在化させないかが問われている。

     


    (2)「習氏は現在、こうした関係を変えようとしている。中国の時代が到来したというのが、彼の見方だ。彼は3月初めに開かれた全国人民代表大会(全人代)で「中国は既に、対等な立場で世界を眺められるようになった」と語った。中国メディアの間ではこの発言は、中国がもはや米国を目上の存在とみなしていないという宣言だと広く受け止められている。中国国務院参事で、北京のシンクタンク、中国グローバル化研究センター(CCG)の代表でもある王輝耀氏は「中国側の態度の変化の中で特に目立つものの一つは、今や競争状態が存在していると認識していることだ。これまでは、そうした認識を表明することは全くなかった」と語る。

     

    中国は、これまでなかった対米意識として、米中が「競争状態」という認識を持ち始めている。手を伸せば、米国へ届くという考えになっていることだ。そういう意味では、これからが軍事的に危険ゾーンに入る。

     

    (3)「楊氏がアラスカで発した台湾統一に関する警告は、世界の大国間の競争関係が、紛争につながりかねないという不吉な状況を示唆するものだ。米国は、1979年の台湾関係法を含む合意の下で、台湾の自治の擁護に努めることを約束している。そしてジョー・バイデン大統領のチームは、台湾政府と経済的・政治的関係を強化する計画を盛んに宣伝している。中国政府は台湾を離れた場所にある中国の1地方とみなしており、習氏は台湾との統一を、中国復興を目指す「中国の夢」の主要要素ととらえている」

     

    習氏の「中国の夢」実現には、台湾侵攻が不可欠である。習氏が存命中=国家主席在任中は、必ず、台湾をめぐる軍事紛争が起こることだ。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(3月30日付)は、「バイデン氏の対中戦略『米国弱体化』認識に対抗」と題する記事を掲載した。

     

    米中関係は、爆発しかねない危険な問題が埋め込まれた地雷原のようだ。しかし、その中でも最大のリスクは、気付きにくい内容である。それは、中国が米国の力の衰退を過信し、その認識に従って行動することだ。

     


    (4)「米国と西側諸国のリベラルな秩序全体が長期的衰退の初期段階にあると中国が確信した場合、自信過剰になった中国の指導部が一線を越えて余りにも挑発的になり、米国に強硬な反応を強いる恐れがある。中国のこうした認識は、同国の代表者やメディア組織によって表明されている。南シナ海、通商、とりわけ香港と台湾など、多くの地域や分野でそのリスクが表面化している」

     

    中国が、その気になればいつでも戦火は交わるであろう。アジアが、世界最大の危険地帯になっている。

     

    (5)「実際このリスクを念頭に置くと、バイデン米政権が取り始めた対中政策の多くを説明することが容易になる。バイデン政権の戦略は、中国政府との本格交渉に臨む前に、米国の経済・外交・軍事面の底力を明確に示そうと努めることで、米国が政治的に分断され衰退しつつあるとの中国の主張に対抗するというものである。そのメッセージは「米国の力を見くびるな」という単純明快なものだ」

     

    戦争抑止には、米国が絶対的な強者であることを示し続けられることが条件である。中国が米国を舐めてきた時、最も危険な時になる。

     

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    王毅外相の日本威嚇発言

    習氏の対応に二つの見方

    中国は海洋国家へ楯突く

    半導体後進国が対抗する

    米は同盟国巻き込み防衛

     

    米中首脳会談が4月16日、ワシントンで開催される。米バイデン大統領が、対面で初めて臨む海外首脳会談相手が菅首相である。日米会談は、インド太平洋の平和維持構想でさらに踏込んだ合意に達するか、世界が関心を持っている理由だ。

     

    バイデン大統領は、これまでオンラインによる「クアッド」(日米豪印)の合意で日米協調の大枠ができあがっている。これを基礎にして、3月16日の日米外務・防衛「2+2会議」で台湾や尖閣諸島の防衛で協力する旨を確認している。こうした実績の上に、菅・バイデン首脳会談が行なわれる。

     

    王毅外相の日本威嚇発言

    中国は、この会談の行方に最大の関心を寄せている。日中外相電話協議が4月5日、中国側からの要請で行なわれた。この日は、中国が先祖を弔うため墓に参る大切な清明節の連休最終日に当たっていた。1時間半もの長時間会談になったが、中国の王毅外相は茂木外相を次のように威嚇した。

     

    「複雑な国際情勢に対し、中国と日本は長い間隣国であり、世界第2、3位の経済大国として時代の流れと国際情勢に順応しなければならず、日本は大国の対決に干渉するな」と、極めて無礼な発言をした。これは、中国外交部発表の中にあった文言である。

     


    中国の漢族は、黄河の中原から現在の広大な版図へ拡大するまで、周辺弱小国を統合してきた歴史を持つ。秦の始皇帝以来、連衡を組んで相手を恫喝して震え上がらせてきた。中国は、この悪しき恫喝の歴史を踏み台にして、今や外国まで恫喝するようになった。「田舎大国」という誹りを受ける理由である。欧州でも、すこぶる評判が悪いのだ。日本が、中国の威嚇に屈するはずがない。中国は、日本が対抗姿勢をさらに強めるという逆効果を計算できないのであろう。気の毒な国である。

     

    こういう経緯からも、日米首脳会談の成果に関心が向けられている。一説では、米国が日本へ大量のワクチン供給を約束するだろうという見方もある。米国は、ワクチンの大増産体制を敷いており、いずれ過剰生産に陥る。そこで、日本への供給体制を築き、日米一体化を世界に向けて発信するというのである。

     


    中国は、「ワクチン外交」を展開し新興国の協力を取り付ける戦術に出ている。だが、ワクチン生産能力が限られ、国内のワクチン接種すら大幅に遅延している。
    1回目と2回目の接種間隔を最大8週間に延ばせるとのガイドラインを出しているほどだ。欧米のワクチンでは、メッセンジャーRNA(mRNA)ベースの接種間隔が3~4週間である。中国は、いかにワクチン供給が遅れているかを示している。

     

    中国が、「ワクチン外交」で失敗すれば、国威発揚は空念仏に終わる。習近平氏は、パンデミックの汚名をそそぐべく、「マスク外交」を始めて大失敗した。不良品が多く、各国から返品騒ぎが起こったのである。今度は、名誉回復で「ワクチン外交」に力を入れた。これも供給体制が整わず、価格はロシア製の2倍。かつ、ワクチン医療情報を開示しないことで、疑念を持たれる始末だ。現状では、ワクチン外交も失敗の烙印を押されている。

     


    習氏の対応に二つの見方

    以上のように、習氏にとっては対外政策で深みにはまった感じが強い。日米首脳会談で、日米が一段と結束する体制が出来上がれば、インド太平洋戦略の「コア」が不動という印象を中国に与えるであろう。習氏が、これを冷静に受入れるのか。さらに凶暴化して、尖閣諸島と台湾へ軍事威嚇を強めるのか。現状では、判断不可能である。

     

    二つの相対立する見方がある。

    1)中国国内で、元老から習近平の猪突盲進に危険信号が出ている。いずれ、習氏の行動は沈静化するという合理性を強調する見方である。

     

    2)最近のEU(欧州連合)と中国が、新疆ウイグル族の人権弾圧をめぐり、互いに報復し合っている。EUは怒って、昨年12月末に署名した対中国の総括投資協定について、EU議会が審議棚上げで対抗している。習氏は、経済的な損失でも躊躇なく決断する、どう猛性を強調する見方だ。

     

    上記二つの見方がある。新興国が覇権国へ対抗する際、1)のような合理的判断に基づく行動を期待できない。日本が、米国と太平洋戦争を始めた状況は、現在の中国の置かれた状況と寸分違わないことに注目すべきである。

     

    日本は、満州撤兵をめぐり米国と対立した。米国は、経済制裁として対日輸出禁止(石油・鉄くず)を科した。山本五十六連合艦隊司令長官は当初、「米国から石油を買いながら戦争できるか」と対米戦争を否定していた。だが、陸軍は満州撤兵を拒否して、開戦を急がせた事実がある。

     

    中国へ上記の事情を当てはめれば、日中の置かれている事情は瓜二つである。

    (つづく)

     

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