勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 米国経済ニュース時評

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    中国が、GDPで日本を抜き世界2位の座についたのは2010年である。あれから8年経た現在、習近平氏という国粋主義者がリーダーとなって、米国と全面的貿易戦争に突入する構えを見せている。中国は、経済的な合理計算を捨てており、民族主義を掲げて米国と戦う決意のように見える。

     

    中国は、昨年秋の党大会で2050年をメドに、米国覇権へ挑戦する姿勢まで見せている。1978年の改革開放以来40年間、怒濤の経済成長を続けてきた。いよいよ、世界覇権へとホップ・ステップ・アンド・ジャンプの三段飛びを目指すというのだ。こういう強行軍で進軍を続け、米国覇権へ挑戦したいという背景に、実は日本の明治維新がモデルとして存在する。

     

    日本は1868年の明治維新以降、1894年の日清戦争、1904年の日露戦争を経て世界列強の座を掴んだ。そして、1941年の太平洋戦争で全てを失うが、中国は、日本が短時日のうちに「世界の強国」へ上り詰めた背後を研究した結果、軍備増強があったと結論づけている。中国も日本同様に、軍事力をテコに米国覇権へ挑戦する計画をまとめたもの。習氏は、昨年の国内会議で「米国衰退・中国発展」が、歴史の法則とまで訓示し鼓舞しているのだ。

     

    中国は、米中の基礎的な能力を冷静に把握することなく、「中国製造2025」を手がかりにしていけば、米国と対抗できると信じている様子だ。しかし、他国の技術を窃取するという極めて大雑把な計画である。半導体を例にとれば大半の研究者を海外から引き抜くという荒っぽい計画である。基礎技術まで他国の技術者に依存した、急ごしらえの技術開発計画である。この程度の粗雑なプランが成功して、世界覇権を手に入れるという発想法自体が、余りにも陳腐に見える。そこまでやって世界覇権へ挑戦しても、中国を真に支援する国家があるだろうか。中国の同盟国が存在しなければ、世界覇権を握ることは不可能であるからだ。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(9月14日付)は、「中国が強国となった2008年」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「2000年から08年にかけ、中国経済は3倍以上に拡大した。五輪の開催はこれを祝うものであり、ひとつの意思表明でもあった。中国は改革開放を始めた1970年代後半からの計算ずくの外交戦略『韜光養晦(とうこうようかい=爪を隠し力を蓄える)』を振り捨てた。ほどなく、控えめだった南シナ海と東シナ海の島々に対する領有権の主張を強めるようになる。習近平(シー・ジンピン)国家主席が提唱する広域経済圏構想『一帯一路』は、経済進出を加速するうえで地政学的な最重要目標となった。2008年9月に欧米の金融システムが自壊したのは、中国には非常に幸運だったといえる」

     

    2008年9月のリーマンショックは、中国に自信を植え付けるまたとない機会になった。欧米の経済システムが破綻したので、従来の計画経済路線を継続する正当な理由を手にしたと錯覚した。その後、習近平政権になってからは、「脱市場経済」を明確に打ち出した。しかし、これが裏目に出ている。不動産バブルを生み出して、もはや手に負えない事態になっているからだ。

     

    (2)「中国指導部は金融危機以前、経済成長を続けるにはどれだけ自由資本主義に近づく必要があるか確信を持てずにいた。民主化圧力の高まりに対し、国家統制を維持できるか否かも自信がなかった。欧米が逆境に陥ったことでそうした自己不信は消え去った。習氏は国家主導の経済運営について、もはや悪びれる様子はない。北京五輪から10年で経済規模はさらに3倍近くに拡大した。一帯一路は東西の距離を縮め、中国をユーラシア大陸の比類なき大国として位置づける戦略となった」

     

    中国は、2000~08年でGDPを3倍にした。その後の10年間でGDPはさらに3倍になった。問題は、成長が質の向上をもたらさず量の膨張であることだ。この間の成長が、人口動態要因(生産年齢人口比率の上昇=人口ボーナス期)という幸運が働いたもの。この認識がないので、今後とも高い経済成長率が可能という前提で国防費の拡大や、一帯一路に伴う資金バラマキを行なっている。これが、経済危機を招く大きな要因となろう。

     

    (3)「中国には政治的、文化的価値観を共有する生来の同盟国がほとんどない。カンボジアやミャンマーぐらいだ。一方、米国は理論上、何十もの同盟国を持ち、主要な国際機関で主導的役割を担ってきた。ところがその米国の大統領が今、戦後秩序を次々と攻撃している。中国政府は米国が否定する制度に忠誠を示す必要がなくなった。もっとも、中国がこれまで通りの道を歩み続けられるかはわからない。中国も高齢化や格差拡大など問題を抱える。経済支援を受ける途上国では、政治や外交の手足を縛られることに反発が広がる。ただ、習氏が万一、途中でつまずき、西側諸国が救いの手を差し伸べなかったとしても、西側を非難はできないはずだ」

     

    中国には、同盟国が存在しない。今後、予想される米中貿易戦争によって、過剰債務に端を発する経済的な混乱が起こっても、中国を支援する国家はいないことは確実である。自由・人権・民主主義を公然と否定してきた中国を経済支援する理由がないのだ。この「世界の一匹オオカミ」が、米国と貿易戦争へ突入することは、裸で戦うにひとしい危険なものである。


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    米国トランプ大統領は、中国へ第3弾2000億ドル関税発動の準備を進めている。これに対して、中国も対抗手段をとるとほのめかしてきた。輸出規制である。これは、諸刃の剣であり、中国にとって致命的な深傷を負う危険性があろう。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(9月17日付)は、「米中の貿易威嚇合戦、一段とエスカレートの様相」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「米国と中国の貿易摩擦は今週、一段とエスカレートしそうだ。トランプ政権は中国からの輸入品2000億ドル相当に新たな関税を表明する予定である一方、中国政府は同国で事業展開する米国企業に対する新たな報復措置を検討している。指導部に助言している中国当局者の一部は、米製造業にとって重要な中国の材料や部品などの輸出を制限し、貿易摩擦を激化させることを提案している」

     

    中国が、自らの冒しているWTOルール違反を棚に上げて、正統性を装うような行為をすれば、米国は激昂するであろう。ZTE(中興通訊)への部品やソフトの輸出を禁じる措置に出るなど広範な対抗措置があり得る。金融面での制裁を加える事態までにエスカレートすれば、人民元相場が急落するなど、収拾困難な局面もありうる。中国の感情的な反発は危険だ。

     

    (2)「当局者は詳細には触れなかったが、こうした輸出制限が中国本土で組み立てられているアップルの『iPhone(アイフォーン)』にも適用される可能性があると述べた。16日に開かれた米中の学者や企業トップが集まった会合で中国の楼継偉前財務相は、米国に対する反撃の手段として、中国はすでに実施されている報復関税に加えて『輸出制限』を導入することができると主張した」

     

    IT関連製品への輸出規制を行なえば、台湾大手IT5社も中国を脱出する時期を早める。また、米国のIT大手も中国からの脱出を予告している。こうなれば、中国の外資系IT企業はガラガラになるだろう。重ねて指摘したいが、中国の輸出規制は命取りになろう。

     


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    米連邦捜査局(FBI)のクリストファー・レイ長官が12日、米テレビ局のインタビュー取材に応じて「中国はFBIにとって、対諜報活動の最優先問題だ」などと述べた。これは、米中関係が、すでに破綻していることを示唆するものだろう。中国が、ここまで米国を怒らせたことで深刻な後遺症が出るはずだ。

     

    中国が、米国に喧嘩を売るのは少なくも10年早かった。高度産業構造の基礎も固まらないうちに、「米国覇権へ挑戦する」広言したことは、どう見ても失策である。ドイツの鉄血宰相と謳われたビスマルクは、周辺国から誤解を受けぬように慎重に国内統一を進めていた。鄧小平にもそういう一面があった。ビスマルクの努力は、ドイツ皇帝の対外的な拡張主義で水泡に帰した。鄧小平の努力も習近平によって踏みにじられようとしている。先人の苦悩が分らない後継者の暴走である。

     

    米国が、本気で「中国潰し」にかかっている。先ずは、中国スパイの取締強化である。中国は、専門のスパイ以外に、その道の「素人」をスパイに引き込んでいる。トランプ大統領が、「中国留学生はみんなスパイダ」と放言して、ホワイトハウスは打ち消しに躍起となった。今回のFBI長官の発言は、それに輪を掛けるものだ。それだけ、米中関係が悪化している証拠なのだろう。

     

    『レコードチャイナ』(9月16日付)は、「FBI長官、中国スパイへの対策が最優先任務」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国メディア『中国新聞網』(15日付)は、クリストファー・レイ長官の発言について「中国の台頭に強く焦っている」などの論評を紹介する記事を掲載した。記事はレイ長官がインタビューに応じたことを『珍しい』と紹介。レイ長官は、『われわれは、ロシアに対応するために多くの時間を費やしてきた。しかし全面的に見れば、われわれの対諜報活動において、中国への対応こそが、この分野では最も優先される任務だ。われわれが調査した事件は極めて広い範囲だ。ニューヨーク州のターボエンジンの問題から、アイオワ州のトウモロコシの種の問題にまでわたっている』などと述べた」

     

    米国は、ロシアよりも中国諜報活動の捜査に最重点を置くと言明している。中国は、社会的に影響力の大きい人物へ接近して、「中国寄り発言」をさせて金品を渡している。「中国絶賛」のごとき発言の裏には、金品が動いていると見るべきだ。客観的に見て、中国に褒めるべき点が滅多にあるわけがない。人権弾圧・汚職・不道徳・技術窃取などマイナス部分ならゴマンとある国だ。

     

    孔子学院も捜査対象に入っている。学生を使ってスパイ活動をさせている。米国内では孔子学院が、学問の自由を隠れ蓑にスパイ活動をしていると睨んでいる。中国は、自国内での外国人活動を大幅に制限しながら、海外では自由自在に振る舞っている。だが、相互主義で海外での活動を制限して当然である。

     

    (2)「レイ長官によると、56カ所にあるFBIの事務所のほぼすべてが、中国の産業スパイ対策を担当する部署を設けている。レイ長官は、中国の情報活動は多様化していると指摘。インターネットの攻撃による知的財産権を盗む、対外宣伝などさまざまなで、携わる人物も伝統的な政府が派遣するスパイから、教授、ビジネスマン、大学院生などにも広がっていると論じ、華為(ファーウェイ)、中興(ZTE)などもスパイ活動をしていると主張した」

    FBIの全米56カ所の事務所では、中国の産業スパイに目を光らせている。「中国製造2025」は、こういうスパイ活動による「戦果」を織りこんでいるのだろう。なんと情けない国だろうか。この泥棒根性はたたき直してやらねばなるまい。


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    米国トランプ大統領は、中国に対して徹底的な攻撃姿勢である。中国経済が過剰債務を抱えて体力を消耗しており、この「好機」を捉えて不公正貿易慣行を是正させるという意気込みを見せている。

     

    『ブルームバーグ』(9月15日付)は、「トランプ米大統領、2000億ドルの対中関税を依然として希望―関係者」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「トランプ米大統領は13日、約2000億ドル(約22兆4000億円)相当の中国製品への関税手続きを進めるよう側近らに指示した。事情に詳しい関係者4人が明らかにした。ムニューシン米財務長官は貿易摩擦を解決するため、中国との協議再開に向け取り組んでいる。関係者によれば、トランプ大統領は13日、対中関税について協議するため、ムニューシン長官やロス米商務長官、ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表ら貿易関連閣僚と協議した。ムニューシン長官は通商交渉再開に向けた最近の中国への働き掛けを主導している」

     

    トランプ大統領は、ムニューシン財務長官に中国との交渉を探らせる一方で、第3弾の関税引き上げもちらつかせるなど、かなりの高等戦術を駆使している。先に、米企業代表団が訪中して、中国の感触を掴んでいるので、一気に圧力(第3弾)と交渉を絡ませて攻め込む態勢のよう見える。

     

    『日本経済新聞 電子版』(9月16日付)は、「米、対中関税第3弾の正式表明17日にも、米報道」と題する記事を掲載した。

     

    (2)「トランプ米政権が準備する中国への制裁関税の第3弾について早ければ17日にも正式表明する方針だ。ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)など米紙と英ロイター通信が15日報じた。輸入品2000億ドル(約22兆円)分に関税を上乗せする方向で対象品目など詳細を詰めている。トランプ米大統領は関税の早期発動に意欲を示しており、近く最終判断する。発動日は数週間後に設定する見通し。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、関税の税率は経済への影響を抑えるため10%に設定し、中国が譲歩する姿勢をみせなければ25%に引き上げるという。米通商代表部(USTR)は7月に10%と公表したが、トランプ氏が8月に25%に引き上げるよう指示していた」

     

    トランプ氏は、中国の弱点を見抜いているようだ。「7月に関税を上乗せされた産業用ロボットは5月まで3割超も伸びていたが、6月からは6~9%増に失速した。国産化を進める集積回路も、8月に関税対象になると生産の伸びは5.8%と7月から半分に縮んだ」(『日本経済新聞』9月14日付)

     

    7月の関税上乗せで、ロボットと集積回路に大きなダメージを受けている。「中国製造2025」の意欲的な計画を立てても、目玉になる初歩的製品の輸出が落込めば、採算悪化で新たな研究開発資金にも事欠く。中国は、その出鼻を叩かれたのだ。痛手であることは当然である。

     

    第3弾では、家具など中小企業製品まで幅広く網を張っている。輸出企業への影響は格段に広がる見込みである。中国は、不毛で出血の多い貿易戦争を繰り広げるのか。習氏が腹を固めることだ。

     

     


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    日中外交の推移を見て気付くのは、これまでの合意や協定を都合良く一方的に解釈することだ。それを根拠にして、日本を徹底的に追求し批判する。その強引さには辟易させられる。自らは、絶対に正しいというポーズを取るから始末が悪い。次の言葉がその典型である。

     

    「政治面では、日本側は中日共同声明など中日間の4つの重要文書を順守し、歴史を真摯に直視、反省し『1つの中国』政策を順守すべきだ。これは両国関係の重要な政治的基礎であり、みじんも曖昧にしてはならず、どう揺るがしてもならない」(『人民網』2016年5月3日付「王毅外交部長が中日関係の改善について4つの要求を提示」)

     

    中国は、こういう傲慢不遜なことを言う。日本がここから学ぶべきは、中国と安易に文書や協定を交わすと後々、それを種にしていかなる「難癖」を付けてくるか分らない点である。抽象的な修辞法は、中国共産党だけでなく、ソ連のスターリン、北朝鮮の金正恩氏も共通しているという記事が登場した。

     

    『朝鮮日報』(9月16日付)は、「スターリンと毛沢東の交渉術、そして金正恩」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のアン・ヨンヒョン論説委員である。

     

    (1)「台湾の中国専門家、林文程教授が書いた『中国共産党の交渉理論と実務』という本がある。『あいまいな言葉遣いで義務を回避する』『合意内容を一方的に解釈する』などを共産党の交渉術の特徴として挙げた。与える事柄はあいまいに、受け取る事柄は明確に規定すると分析した。1972年の米中上海コミュニケで米国は『台湾は中国の一部であることを認識(acknowledge)する』と表現したが、中国はそれを『承認する(recognize)』と解釈した」

     

    米国が、「一つの中国論」にこだわらない背景がよく分かる。米国は「認識」するが、中国は「承認」と解釈する。中国共産党はこういう手品を使うから、滅多に文書を交換できない恐ろしさがある。

     

    (2)「625戦争(朝鮮戦争)の停戦交渉で国連軍の初代首席代表だったターナー・ジョイ提督は、『共産側は検証を忌避し、不利な合意は都合よく解釈して否定するといった手法を使った』とし、『対話中に圧力を弱めず、会談の進展のために一方的譲歩はするな』と忠告した」

     

    朝鮮戦争時の経験談である。曖昧な点を残すとそれを悪用する。もともと、約束を守る意思がないのだから当然とは言え、油断ならない相手である。対話中も、圧力を掛ける必要性を強調している。トランプ米大統領が、中朝に圧力を掛け続けている背景には、この経験談が生かされていることが分る。

     

    (3)「文在寅(ムン・ジェイン)政権の対北朝鮮交渉は、現代史の教訓に逆行している。金正恩(キム・ジョンウン)に会ってくるたびに『非核化の意志は明確だ』と言うが、どんな風に明確なのかを具体的に説明したことはない。非核化の核心である申告・検証方法と期限などは全て霧の中だ。申告・検証どころか、金正恩が肉声で『完全な非核化』と発言したことは一度もない。北朝鮮が言う非核化と韓国が考える非核化が同じなのか疑わしい」

     

    文氏は、完全に北朝鮮ペースにはまっている。核放棄の申告・検証という重大問題を確認せずに口約束を信じ切っている。今後の南北交渉では、北朝鮮に多額の支援を約束させられて、韓国財政を食いつぶすことにならなければよいが、どうなるか。

     

    (4)「ソ連の民族問題人民委員長出身のスターリンは、地域によって理念よりも民族が強い訴求力を持つという事実を知った。民族対立をあおり、ソ連の衛星国を次々とつくった。中国共産党も同じだ。抗日戦争で大きな人命被害を受けたのは国民党軍だったが、抗日民族軍隊というイメージは共産党軍が独占した。国共内戦で世論は共産党側に傾いた」

     

    共産党は、どこもかしこも「口舌の徒」である。噓八百を並べ立てて、自らの立場を美化して成果を横取りする天才だ。換言すれば、不誠実である。ソ連は崩壊したが、中国と北朝鮮の共産党は、表面的に「盛業」状態にある。天は、今のところ「裁き」を下さずに猶予を与えている形だが。

     


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