勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 米国経済ニュース時評

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    7~9月期GDPが発表された。前年同期比6.5%増である。リーマンショック後の2009年1~3月期の同6.4%増以来の低調な経済成長率にとどまった。GDPの詳細が不明の段階だが、発表された概略から浮かび上がる姿は、中国経済の迎える前途多難な構図である。

     

    具体的には、次のような点である。

     

    中国のGDPで約30%の関係性を持つとされる住宅販売の問題である。1~9月の床面積ベースの販売では前年比2.9%増に落込んでいる。1~8月では4.0%増であった。一方、1~9月の新築着工(床面積べ-ス)は、16.4%増で、1~8月期の15.9%増を上回っている。明らかに販売面では落込んでいるのに対し、着工では販売を大幅に上回る着工体制だ。ここから過剰在庫の発生が懸念される。

     

    これは、地方政府が依然として景気の主柱として、住宅建設に依存している状況を示している。住宅販売は鈍化しているのに住宅建設を促進すれば今後、住宅の需給が大幅に崩れることは確実である。地方政府レベルでは、中国全体の住宅販売の趨勢を把握できない。だが、確実に来年以降に過剰な住宅ストックを抱えることになろう。

     

    過剰な住宅ストックを抱えることになる不動産会社は、値引き販売に踏み出すはずで、すでに10月から始っている。今後ますます熾烈化するのだろう。住宅の値引き販売が始っているのは、住宅需要が鈍化している結果だ。価格が高騰し過ぎて手が出なくなっているのが主因である。この状況が改善されなければ、住宅販売が再び勢いを増すことはあり得ない。地方政府は、こういう販売面の制約を忘れて、GDP押上げだけに注目している。最早、地方政府の思惑通りに進む保証はゼロだ。この矛楯が、これからのGDP凋落に鮮明に現れるであろう。

     

    これから住宅の過剰供給問題が再び、大きな社会問題となる。住宅需要は最早、家計債務の視点から見ても限界点に来ている。住宅が大量に竣工しても、大量の売れ残りが出るだけであろう。これが一層、新規住宅需要の顕在化を抑えて、模様眺めにさせることは確実である。この初歩的なミスを地方政府と不動産企業が犯している。GDP押上げ効果だけに目がくらんでいるからだ。

     

    次の問題は、名目GDP成長率とマネーサプライ(M2)増加率である。7~9月期の名目GDP成長率は、前年同期比9.6%で、4~6月期の9.8%から低下している。実は、マネーサプライ(M2)の伸び率が、この名目GDP成長率を下回っる珍現象が起こっている。通常のマネーサプライ(M2)増加率=名目GDP成長率+αである。αとは、各国の経済事情によって異なる。マネーサプライ(M2)が、名目GDP成長率を下回る状況は、一言で表わせば「異常現象」である。

     

    マネーサプライ(M2)の伸び率が、名目GDP成長率を下回る状況は、「信用収縮」が起っている結果と見られる。銀行が貸出先の信用状態に不信の念を持ち、貸出を抑制しているのだ。「信用創造機能低下」である。この裏には、銀行預金残高の増加率が鈍化しているので、貸出が減るという側面もある。ともかく、中国で現在起っていることは正常でないことを認識すべきである。

     

    中国のマネーサプライ(M2)の伸び率が、前年比で10%を割り込んだのは、昨年5月以降である。最近の2四半期を見ると次のようになっている。

    4~6月期は8.2%増(名目GDP成長率は9.8%)

    7~9月期は8.3%増(同9.6%)

     

    このM2増加率の低下にもかかわらず、名目GDP成長率はこれを上回っている。この差を埋めたのが「影の銀行」の存在である。影の銀行は、このブログでもたびたび取り上げてきたが、正規金融機関でない単なる資金の仲介機能しか果たさない不安定な存在である。貸出金利が高く、これを利用せざるを得ない企業にとって「必要悪」である。中国の金融制度がしっかりと確立していれば、この影の銀行が正規の銀行と同列の存在になるはずがない。「影の銀行」の存在を許しているところに、中国経済の前近代性が現れている理由だ。

     

    こういう脆弱な金融システムの中国が、バブル崩壊に見舞われればどういう混乱が起るか。株式のバブルは崩壊した。不動産バブルも実質的には崩壊しつつある。住宅販売の不振が面積レベルで起っており、次の段階である建設に波及するのは必至だ。来年にはそれが明確になろう。そうなると、不動産業界は倒産の連鎖に落込む。マネーサプライ(M2)が、名目GDP成長率を下回っていることの恐怖が、現実問題として不動産業界を襲うだろう。これまで、この現象が見られずに来たのは唯一、地方政府という後ろ盾があったからである。この後ろ盾によって、無意識のうちに過剰な住宅を建設し、不動産バブルの禍根を増殖しているはずである。

     

    米中貿易戦争は、これまで顕在化させなかった中国経済の「宿痾」を一挙に噴出させるきっかけになるであろう。それは、中国国内にこれまで流れてきた、理由もない先行き楽観論が一掃されるからだ。米国という世界経済の頂点が、冷戦覚悟で中国包囲網を作りつつある現実を理解すれば、中国が世界の孤児になる事実を知るはずだ。そうなれば、ビジネスマインドも消費マインドも一変する。中国が、自由主義諸国から敵視されている状況において、今後の経済的な発展が覚束ないことを知るであろう。これまで、中国経済で隠れてきた問題が顕在化して、企業と国民を「正気」に戻すと見られる。

     

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    米中貿易戦争は、1840年の阿片戦争の再現である。英国は、清朝と交渉しようと中国へ艦隊を差し向けた。清朝は、問答無用と夜襲を掛けたが逆襲され、ついに英国の条件を一方的に飲まされる形になった。中国が欧米列強の植民地になったきっかけは、無謀は清朝の対話拒否である。

     

    現在の中国も、清朝と同じ高姿勢で臨んだ。「徹底抗戦」と言葉は勇ましいが、「焼土作戦」である。この無謀な言葉を吐いて、米国の主張する貿易の不公正慣行には、一度もまともに答えず黙殺。米国の怒りを倍加させてきた。米中の経済力の差をまざまざと見せつけて、中国は米国に緒戦で大敗を喫している。

     

    『日本経済新聞 電子版』(10月18日付)は、「中国市場、動揺止まらず、上海株、4年ぶり安値と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国金融市場で動揺が続いている。代表的な株価指数である上海総合指数は18日、ほぼ4年ぶりの安値になった。人民元も対ドルで10年ぶりの安値が視野に入る。米金利上昇で中国との金利差が縮小し、マネーが中国から流出するとの懸念が出ている。米国との貿易戦争や景気減速などマイナス材料が増えており、中国発の市場変調が世界に波及するリスクもある」

     

    中国人民銀行総裁は、「万一に備えて万全の体制を取っている」と発言した。この言葉を聞いて、問わず語りに、中国も「万一」を想定していると気付いた。人民元の大幅安と外貨流出を意味するのだろうが、「万全の策」とは何か。それは日中通貨スワップ協定であろう。「日本頼み」なのだ。尖閣諸島問題では、日本に向けて憎悪の限りを見せたが、今はその日本にすがってきた。「一帯一路」も同じである。日本のクリーンなイメージと資金を狙っている。この体たらくで、世界覇権を狙うと言う。どこか、心棒が一本抜けている振る舞いに映る。

     

    (2)「18日の上海総合指数は前日比2.9%安と、201411月以来311カ月ぶりの安値を付けた。「外国人の売りがどうにも止まらないようだ」。中国の中堅証券、国都証券の営業担当者は肩を落とす。香港を経由して本土株を売買する「株式相互取引」では10月に入り、大半の日で外国人とみられる投資家層の売り越しが続く」

     

    私は、幸いにも中国株について弱気論だけを紹介してきた。中国政府は、外国資金を中国株式市場に導入する道をつくったが、今はこれが仇になっている。外資が徹底的に売り崩している。その利益を海外に吸い取られているのだ。阿片戦争と同じ過ちを冒している。

     

    (3)「米長期金利は3.%まで上がり、3.%弱の中国との金利差は0.%にみたなくなった。金利差が約1.%あった1月当時と比べて風景は一変した。米国が年内に追加利上げをするとの観測がある一方で、中国は預金準備率の引き下げなど緩和姿勢を迫られている。中国国内でも『今後はドル資産の選好が強まりそうだ』(地場証券)との声が上がる」

     

    FRB(米連邦準備制度理事会)は、トランプ大統領の非難にもかかわらず、金利引上げに進む。年内はあと一回。来年は3回で打ち止めになる。つまり、後4回=1%の利上げだ。米国の10年物国債利回りは3.5%まで上昇する前に、米の株価崩落という見方が増えている。となると、米国で国債売り株式買いの動きが鈍るであろう。「大型台風」の停滞と同じで、中国株は息を抜けない場面であろう。絶えず、米国の長期金利に煽られ「突風」が吹くリスクと同居する。これほど、中国経済の脆さを示す場面も珍しいだろう。米中の経済的な格差を証明する話だ。

     


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    米国による中国への圧力は、スケジュール通りという印象を与える。長年、米国が中国に対して抱いてきた不満が、一挙に炸裂している感じだ。それは、中国がGDPで世界2位になり、米国のGDPの6割に達しながら、「発展途上国」の恩典を利用し続けていることにある。都合のいいときには、「世界の大国」と言いながら、不都合な場面では「発展途上国」を言い募るご都合主義への怒りである。

     

    『ブルームバーグ』(10月18日付)は、「トランプ政権が郵便条約脱退を計画、中国への圧力強める」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「米紙ニューヨーク・タイムズは先に、トランプ大統領が同条約から離脱する意向だと報じていた。万国郵便連合の枠組みでは、加盟国の脱退には1年を要し、その1年間に郵送料金の再交渉が可能となっている。関係者によれば、少なくとも6カ月は郵送料金の変更はない見通しで、米国としてはできる限り郵便連合にとどまりたい考え」

     

    万国郵便連合の枠組みでは、加盟国の脱退には1年を要し、その1年間に郵送料金の再交渉が可能となっている。米国の本音は、これからの1年間で話合いをして、現行の中国に有利な国際郵便料金体系を変えて、値上げさせたいもの。

     

    この間の事情は、次の記事が説明している。

     

    『日本経済新聞 電子版』(10月18日付)は、「米中貿易戦争、国際郵便にも飛び火」と題する記事を掲載した。

     

    (2)「米中の貿易戦争が国際郵便にも飛び火した。トランプ米政権は17日、国連専門機関の万国郵便連合(UPU)からの離脱手続きを始めると発表した。同連合が定めた郵便料金制度により、中国が割安な料金で輸出を伸ばす一方、米国の消費者や企業が高い料金で損失を被っているとの不満が背景にある。あらゆる武器を総動員して中国への圧力を強めるトランプ政権の姿勢が鮮明だ」

     

    (3)「『米国の製造業や労働者は巨額のコストを払わされており、中国と公平な土壌で競争できな』。米政府高官は17日の電話記者会見でUPUの現行制度への不満をぶちまけた。中国だけが制度を悪用しているわけではないと断りつつも『サンフランシスコからニューヨークに送るより、北京から送った方が安い』『中国から偽造品や違法薬物が流れ込んでいる』などと問題点を並べ立てた」

     

    郵便を使い、サンフランシスコからニューヨークに送るより、北京から送った方が安いというのは、矛楯している。中国が正当な料金を払うべき時期であろう。中国には、既得権益を絶対に手放さないという執念深さがある。

     

    日本が小泉政権末期のころ、ODA(政府開発援助)の無償援助打ち切りを通告した時の騒ぎはすごかった。中国は発展途上国である。日中関係が悪化するなどの屁理屈を付けて反対した。その一方では、アフリカへ無料援助するという矛楯した行動を取る国である。日本から得た援助をアフリカに渡していた構図だ。こういう点で、実に要領がいいというか、図々しい振る舞いをする。

     

    (4)「米国が抱える不満の根源はUPUが定める国際郵便の料金制度だ。郵便事業者が郵便物の重さや量に応じて相手国の事業者に支払う「到着料」が発展途上国については割安に設定されている。特に軽量の小包は格差が大きい。中国が世界2位の経済大国となるなか、米国は現行制度を不公正だとみる」

     

    米国が負うコストは年3億ドル(約338億円)に上る。一方、中国では国際便でも配達無料をうたうネット通販業者が存在するという。こうなると、米国のコスト負担で、中国のネットビジネスを支援しているようなものだ。米国が、この不公平を是正させたいのは当然の要求であろう。

     

     


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    中露関係は、表面的に言えば密月のように見える。だが、ロシア側からの中国分析は厳しいものがある。一帯一路計画によって、中国はロシアの裏庭である中央アジアへ触手を延ばしている。そのことが、ロシア側の反発を呼んでいる面もあろう。

     

    今回の米中貿易戦争は、中国経済の実力のほどを試している。ロシア側は、そういう冷めた目で中国を分析する点に注目したい。中露は、共産主義国家として密接な関係を維持したが、しだいに関係が悪化。1970年代には、「一触即発」状態になっていた。その後、ソ連共産党政権は崩壊し、ロシアとして再出発した経緯がある。かつての中ソ対立のしこりが、いまなお残っているという見方ができる。だが、ロシアの「中国評」には、頷ける点が多々ある。

     

    『大紀元』(10月17日付)は、「超大国の要素ほぼない、ロシアメディア中国共産党政権を酷評」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアの軍事情報ウェブサイトは10月16日、「中国は超大国だと証明できるのか?」と題する記事で、大国となる要素が欠如していると批判する評論を掲載した。ウェブサイト「トップ・ウォー」は評論記事で、中国を超大国と論じる風潮を疑問視する。なぜなら、米国と西側諸国が多額投資し、中国に「世界の工場」が建設されたことで、急速な経済発展を遂げたに過ぎないからだと指摘した。

     

    (1)「『世界の工場』は中国産製品を全世界に輸出し、中国の貿易黒字は同国の軍事開発や科学技術を発展させるための豊富な資金源となった。しかし、米国トランプ政権が中国に関税策を実施してルールに基づく公正な貿易を強く求めたことで貿易戦が勃発。同記事に、これで『中国は元の姿に返ることになる』と書いた。(米国から)実力を伴う本物の強さを見せつけられた中国政府は、『偉大な大国』とのプロパガンダから、『我が国は被害者だ』と同情を乞う宣伝に切り替えた」

     

    米中貿易戦争によって、中国は大きな痛手を負い、「中国は元の姿に返る」とまで言い切っている。貿易戦争の兆候がハッキリしてきたのは3月ころからである。だが、今年に入ってから貿易黒字は減っている。2018年1~3月期の貿易黒字は517億ドル(前年同期823億ドル)、4~6月期の貿易黒字は1042億ドル(同1321億ドル)である。いずれも前年比38%減、22%減になっている。この調子で推移すれば、米中貿易戦争が激化すれば、中国の貿易黒字は先細りであろう。

     

    このパラグラフでいみじくも指摘しているように、中国政府は、「偉大な大国」とのプロパガンダから、「我が国は被害者だ」と同情を乞う宣伝に切り替えた。それは、中国の国際競争力が未だ十分でない。それを自覚している結果であろう。

     

    (2)「ロシアの経済学者アリエ・ブリスキー氏は、中国超大国化論は、その発展スピードによると説明されているが、急速な発展力が未来に継続するとも限らない。つまり、世界の工場だった国が世界の大国になるとは限らないと説いた。ブリスキー氏は日本を例に挙げた。高度経済成長期の日本の経済成長率は、いまの中国のように勢いがあり、米国を上回るとの見方もあった」

     

    ここでの指摘も正しい。過去の経済成長率を、単純に将来へ引き延ばして予測する。これは誤りである。過去を将来へ引き延ばすのは、「人間の性」と言ってよいほど各方面で見られる錯覚である。潜在成長力は、人口動態の変化によって変わるという事実を知らないからだ。中国の経済成長率を将来へ引き延ばすのは極めて危険である。

     

    (3)「1989年、日本人は、米国の象徴とも言われるロックフェラーセンターやエンパイヤステートビルを買っていった。これについて、ロシア側は経済的な強さが米国を打ち負かしたとみた。しかし、バブル崩壊後の日本経済は非常に緩やかになった。『中国の発展が日本の軌跡に一致するとは考えていないが、急激な過去の発展から未来を予測することは難しい』と述べた」

     

    日本のバブル経済はなやかりしころ、GDPで米国を抜くという議論が真面目にされていた。結局、バブル崩壊でその夢は消えた。中国が、GDPで米国を抜くだろうという話は、中国のバブル崩壊で消える話だ。中国の国際競争力が、先の貿易黒字縮小によって分るように、低下に向かっている。人件費高騰と非効率投資(限界資本係数の上昇)という壁が、中国経済に大きく立ちはだかっている。

     

    (4)「超大国としての米国の地位は、その経済力だけでなく、軍事力、国際的な地位、国際同盟国など、あらゆる要素が含まれている。ロシアメディア『トップ・ウォー』は、中国が超大国になることは非常に難しく、米国に迫る軍事投資という要素を除けば、世界に真の同盟国はほとんどいない。さらに、近隣諸国との関係は良好とは言えず、米国と欧州の同盟国による包囲網が出来上がりつつある。また、チベットと新疆ウイグル自治区などにおける信仰弾圧と人権問題は依然として社会を揺るがしかねない敏感問題と捉えており、厳しい抑制を続けている。さらに、経済発展もまた、米国の制裁関税などにより減速している」

     

    中国が、超大国になることは非常に難しいとして、次の点を上げている。

        世界に真の同盟国はほとんどいない。

        近隣諸国との関係は良好と言えない。

        米国と欧州の同盟国による包囲網が出来上がりつつある。

        チベットと新疆ウイグル自治区の信仰弾圧と人権問題は社会を揺るがしかねない敏感問題である。

     

    中国が、これから経済的に行き詰まることは、過剰債務の重圧から見ても決定的である。習近平氏は、何か秘策でも考えているのかも知れない。だが、GDPの250%を上回る債務の償却には超長期の時間を必要とする。その間に、中国経済の潜在成長率は、合計特殊出生率の急低下に見られるように2~3%へ落込む。この現実を認識することが重要だ。

     

     


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    米国は、貿易協定による対中包囲網の完成に向けて動き出す。この貿易協定は、新NAFTA(USMCAと改称)をひな型にしている。米国は、先にカナダ・メキシコと貿易協定を結んだが、これまでにない項目が入っている。「加盟国が、非市場経済国と貿易協定を結べば、この協定から脱退すると見なす」がこれだ。非市場経済国とは、WTO(世界貿易機関)が、加盟国を市場経済国と非市場経済国に分けている。後者に分類されると、ダンピング提訴が簡単に行えるので、日米欧は中国を非市場経済国に分類している。

     

    つまり、USMCAは中国と貿易協定を結べない取り決めになっている。米国は、この条項をこれから交渉する日本、EU、英国に認めさせる意向だ。米国は、これらの国々が中国排除の項目を渋れば、自動車関税25%をちらつかせる。となると、日・EU・英は飲まざるを得ないだろう。米国は、なかなか巧妙な戦術を立てている。

     

    日・EU・英は、こういう条件で迫られた方が、中国に対して言い訳ができる「メリット」もある。米国は、中国を通商面で孤立させる戦略だ。中国は、ここまで米国を怒らせた戦術の拙さが責められる。世界覇権を狙うという「大言壮語」は、中国の実力から見て、度が過ぎたものなのだ。

     

    『ブルームバーグ』(10月17日付)は、「米、対日通商交渉入りを議会通知ー早ければ来年1月に交渉開始」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「トランプ米政権は16日、日本と欧州連合(EU)、英国と新たな通商交渉に入ると議会に正式に通知した。交渉開始は早ければ3カ月後の来年1月になる。ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表は声明で、『われわれは日本やEU、英国との貿易協定交渉により、引き続き米国の貿易と投資を拡大するだろう』と述べた。米通商法は、米国政府が諸外国と交渉入りする際は90日前までに議会に通知するよう義務付けている。交渉開始後も、通商法に定められている目的に沿うよう、政府は議会と緊密に連携する必要がある」

     

    米国の通商交渉が、綿密に練られた計画に基づいて行なわれていることに注目すべきである。米国は、世界経済の核となって再編成する強い意志を示している。具体的には、世界のサプライチェーンの中心に米国を置こうとしている。現在のグローバリズムが、米国の手から離れた場所(中国)で進んできたことに危機感を強めている。世界経済の中心軸は、米国市場である。この量的にも質的にも優れた米国市場にアクセスできるのは、一種の特権である。米国と通商協定を結び、米国市場にアクセスできる特権を得るには、それなりのコスト(中国と貿易協定を結ばない)を払え。これが、米国政府の基本的な立場である。米中と通商協定を結び、「良いところ取りすることは」認めないのだ。貿易問題を安全保障問題とリンクさせている証拠である。米国が考える新冷戦時代の通商協定の追求である。

     

    (2)「ライトハイザー代表は、16日から90日経過後『実行可能になり次第』、日本およびEUとの通商協議を開始したいと述べた。また英国との交渉は「2019年3月29日に英国がEUから離脱した後、英国の準備が整い次第」始める意向を示した。日本とEUは当初、米国との通商交渉入りに消極的だった。しかし、トランプ大統領がちらつかせる自動車・自動車部品への輸入関税を避けるため、現在は前向きになっている。ライトハイザー代表は将来の通商交渉の範囲を定めるため非公式に日欧当局者と会談してきた」

     

    英国との交渉は、英国がEU離脱後でなければ法的に難しいという制約がある。英国はTPP11にも加盟意思を示した。TPP11は、11月中には6ヶ国の批准が済む見通しで、来年には発効が確実となってきた。

     

     

     

     

     


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