勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 米国経済ニュース時評

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    文大統領は先の大統領府会議において、日米豪印の「インド太平洋戦略」への参加に前向き姿勢を示した。米ワイトハウス高官も、これを既定事実として受取とっており、韓国はもはや引き下がれない局面に向かっている。

     

    昨年までは、中国に気配りして「米中曖昧戦略」を取ってきた。中には、韓国が米中関係のバランサー役になるとまで、理想論を語ってきたものだ。米中対立の長期化必至の状況下で、韓国がバランサー役とはおこがましい話である。米韓同盟によって、米国に守られている韓国が、米中の仲裁役とは自惚れも甚だしいこと。韓国の反日は、こういう自惚れが生んでいる産物とも言える。

     


    『東亜日報』(1月25日付)は、「米大統領補佐官『韓米同盟はインド太平洋地域の核心軸』」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「徐薫(ソ・フン)大統領府国家安保室長は23日、バイデン米政権のジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)と初めての電話会談を行い、北朝鮮核問題の解決策と韓米間の協力について協議した。サリバン氏は、「韓米同盟はインド太平洋域内の平和と繁栄の核心軸」と表現したことをめぐって、バイデン政権が文在寅(ムン・ジェイン)政府に中国牽制の必要性を強調したという観測が流れている。ホワイトハウスは、「サリバン氏が、北朝鮮核問題に対する韓米間の調整の重要性を強調した」と明らかにした」

     

    米バイデン政権のサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は、米韓同盟が「インド太平洋域内の平和と繁栄の核心軸」と発言した。これは、韓国が「インド太平洋戦略」のクワッド(日米豪印)に加わることを意味する。米前政権時にも、韓国へ「クワッド+α」のαとして参加するように求めていた。米国の上げた「α」候補国は、韓国・ベトナム・ニュージーランドの3ヶ国である。

     

    トランプ政権時の「勧誘」に対しては、曖昧戦術で通してきたが、バイデン政権ではもはや曖昧戦術は通用しない雰囲気になってきたに違いない。ここで宙ぶらりんな立場であれば、北朝鮮問題も棚上げされることを懸念してきたからだろう。

     


    (2)「康珉碩(カン・ミンソク)大統領府報道官は同日、書面で、「両者は最近の韓半島情勢に対する評価を共有し、韓半島の非核化と平和定着という目標達成に向けて協議し、努力していくことで意見が一致した」と明らかにした。また、「サリバン氏は『韓米同盟はインド太平洋域内の平和と繁栄の核心軸だ。民主主義、法治の価値を共有する同盟として、今後韓国と様々な懸案について緊密に協議していく』と話した」と伝えた。これに先立ち、バイデン大統領も就任前の昨年11月、文大統領との電話協議で、韓国を「インド太平洋地域の安全保障と繁栄の核心軸」と強調した」

     

    バイデン政権は、北朝鮮問題をインド太平洋戦略の中で捉えている。北朝鮮の核問題は、東北アジアの安全保障と深く関わっている。仮に、北朝鮮に核保有が認められるならば、自動的に日韓の核開発問題に繋がるはずだ。米国にとって、日本が核保有国になることは絶対に阻止しなければならない命題である。太平洋戦争で死闘を繰り広げた相手の日本が、核武装することは米国の安全保障上において、最大のリスクであるのだ。

     

    日本がなぜ核兵器禁止条約に加盟しないか。これは、日本の曖昧戦術で米国をけん制している結果だ。米国が、日本の核開発を止めたいならば、北朝鮮に核保有を許すなという示唆であろう。こういう解釈が成り立つとすれば、北朝鮮の核問題は短期間に解決せず、文政権が意図する南北交流開始は相当先のことになろう。

     


    (3)「サリバン氏が、「民主主義、法治を共有する同盟」とまで強調したのは、韓米は中国とは違って「民主主義価値同盟」であるため、中国への圧力に韓国が参加しなければならないという考えを繰り返し表わしたとみられる。オースティン米国防長官も24日、徐旭(ソ・ウク)国防部長官との電話会談で、「韓米同盟は北東アジアの平和安定の核心軸であり、最も模範的な同盟と評価する。同盟関係をさらに堅固に発展させるよう緊密に協力する」と述べた」

     

    バイデン氏は、同盟国の結束を呼び掛けている。米韓同盟が、一枚岩になることが不可欠なのだ。この前提に立てば、韓国の二股外交はあり得ない。韓国が、インド太平洋戦略に参加するのは当然という結論になろう。

     

    (4)「ホワイトハウスは、両者が電話会談を行ったことを明らかにし、「サリバン氏が、韓米同盟をさらに強化するというバイデン政権の公約を強調した」とし、「新型コロナウイルスや気候変動の対処など地域やグローバルな問題だけでなく、北朝鮮問題に対する緊密な調整の重要性を強調した」と述べた。文大統領は早ければ今週にもバイデン氏と電話会談を行うとみられる。大統領府関係者は、「国防部に続き外交部長官など韓米の外交安保トップ間の電話会談の後、近く首脳間の電話会談があるだろう」と述べた」

    米韓首脳会談で、韓国の「将来コース」が決められる。米国から、米韓同盟の精神に則った行動が要求されるだろう。

     

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    2021-01-22

    韓国、「一大決心」文大統領、バイデン氏の歓心買うべく初めてインド太平洋戦略に「言及」


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    米バイデン大統領就任式で、台湾の駐米代表に相当する蕭美琴氏(駐米台北経済文化代表処代表)が、公式招待客として出席した。1979年の米台断交以来、初めてのことだ。これまでは、米議員の招待状で出席してきたという。それが、今回は堂々とホワイトハウスの招待である。米国政府が、台湾をいかに重視しているかを内外に示す絶好の機会になった。

     

    蕭氏は現地から、ツイッターに「台湾を代表して米大統領の就任式に参加できることを光栄に思う。次期米政権と協力し、共通の価値と利益を高めていくことを楽しみにしている」と投稿した。これに反発したのが中国である。「一つの中国」が、米中国交回復の条件の一つであったからだ。だが、トランプ政権高官によって昨年9月、「一つの中国」を放棄すると発表済みである。

     

    中国は、政権交代後に頻りとトランプ政権を批判して、バイデン政権に阿(おもね)るような姿勢を見せている。米国は、政権交代しても外交政策不変が不文律である。バイデン政権は、トランプ政権の悪口をいくら聞かされても喜ばないのだ。むしろ、警戒するのが普通である。中国は、こういう微妙な心理を読めないのだろう。

     


    『日本経済新聞 電子版』(1月25日付)は、「中国外務省、米の台湾支援方針に反発」と題する記事を掲載した。

     

    中国外務省の趙立堅副報道局長は25日の記者会見で、米国務省が台湾との緊密な関係を維持すると表明したことに「中国は国家の主権と完全な領土を守り抜く」と述べた。「外部勢力の干渉に断固として反対する決心はぶれない」とも強調した。

     

    (1)「趙氏の発言は米国務省をけん制した形だが、米国が台湾への介入を強めた際に出す従来の答弁ラインの域は出ていない。習近平(シー・ジンピン)指導部はバイデン米政権の出方を見極めようと必死に情報収集しているとみられる。米台関係を研究するある大学教授は「トランプ米前政権に比べバイデン氏が台湾問題で介入をさらに強める可能性は低い」との見方を示す」

     

    中国外交部の発言は、従来のような過激なものではない。ごく普通の形式に止まっている。これは、今後の米国との交渉を控えているため自制しているのであろう。中国は、早急な米中交渉をしたいが、米国にその気がないことだ。バイデン政権は、同盟国との結束を固めてから、中国に対応する考えである。

     

    下線部では、バイデン政権の台湾政策を甘く見ているが間違いである。蕭美琴氏(駐米台北経済文化代表処代表)が、公式招待客となった意味をはき違えているのだ。

     


    (2)「一方で台湾の国防部によると、23日に中国軍の戦闘機「殲16」4機、爆撃機「轟6K」8機、対潜哨戒機「運8」の計13機が防空識別圏(ADIZ)に侵入した。24日には計15機の中国軍機が侵入した。中国外務省と軍の間で対応に温度差があると見る向きもある」

     

    中国軍は、士気を高めるべく防空識別圏に侵入する「野蛮行為」を行っている。米国にとっては、これが好都合なのだ。台湾の安全を脅かしたという理由で、米国から台湾への兵器売却の理由になる。まさに、「飛んで火に入る夏の虫」という格好である。

     

    (3)「米国務省は23日の声明で、「中国に対して台湾への軍事・外交・経済的圧力を停止し、台湾の民主的に選ばれた代表者と有意義な対話を行うよう促す」と表明した。「十分な自衛能力を維持するよう台湾を支援していく」とし、台湾との緊密な関係を維持する意向を鮮明にした」

     

    中国による台湾への威嚇行動は、米国からこういう形で逆襲されるのだ。専制主義が、民主主義を圧迫しているという構図で、西側は中国批判に回るのである。

     


    (4)「
    声明は、台湾を国交のある国と同等に扱ったり、台湾への武器売却を定めたりした1979年の台湾関係法や、台湾への武器売却について中国と事前協議しないことなどを定めた1982年の「6項目保証」などをあげて「米国は長年にわたる約束を維持していく」と説明した。「台湾との約束は安定したものであり、台湾海峡や地域の平和や安定の維持に貢献する」とも強調した」

     

    1982年の「6項目保証」とは、次のような内容である。

    1)台湾への武器販売の終了日を設定することに合意しない。

    2)台湾と中国の間で、米国は仲介する役割はないとの認識がある。

    3)また、台湾に圧力をかけて中国との交渉をさせようともしない。

    )台湾の主権問題に関する我々の長年の立場に変化はない。

    5)台湾関係法の改正を「求める予定はない」。

    6)第二次上海コミュニケは、「我々が台湾への武器販売について北京と事前協議を行うことに合意したと意味するように読まれるべきではない」

     

    以上の項目によって、米国の台湾への武器供与を継続し、台湾の自立を保証する内容だ。中国軍機の威嚇飛行は、「6項目保証」によって中国にマイナスとなる。

     

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    「溺れる者は藁をもつかむ」という言葉通り、文大統領は南北対話再開の糸口を探るため、米国バイデン政権の外交戦略に100%乗るという方向を明らかにした。インド太平洋戦略の「クアッド」(日米豪印)にも参加し、日韓問題も日本の主張に接近するという、これまでなかった方針を打ち出している。ここまで変身してでも、南北対話再開にこぎつけたいという執念を見せているのだ。

     

    『中央日報』(1月25日付)は、「文政府の対日基調が変わった 『日本に追加請求しない』」と題する記事を掲載した。

     

    韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の外交戦略が急旋回している。中国を牽制(けんせい)するために韓日米同盟の強化が必要だと主張する米国バイデン政府の要求を受け入れると同時に、南北問題まで考慮した流れだ。


    (1)「文大統領は、今月21日に自ら主宰した国家安全保障会議(NSC)で、「韓半島(朝鮮半島)を含めたインド太平洋地域の秩序が急激な転換期に入りつつある」と話した。この発言は、米国が主導し、日本・インド・オーストラリアなどが参加する中国封鎖戦略である「日米豪印戦略対話」(QUAD=クアッド)を念頭に置いたものだ。文大統領任期序盤の2017年11月には当時の金顯哲(キム・ヒョンチョル)経済補佐官がインド太平洋戦略に対して「(韓国は)そこに編入される必要がない」と話し、外交的な波紋を呼ぶほどだった。だが、青瓦台(チョンワデ、大統領府)の雰囲気は大きく変わった」

     

    文政権はこれまで、中国重視の外交を進めてきた。南北対話を軌道に乗せるには、中国のご機嫌取りをすることが第一という判断からだった。だが、中国重視の軌道から離れて、米国と一体化する外交戦略の中で、南北対話再開のチャンスを握る方向へ切り替わる。そのためには、インド太平洋戦略の「クアッド+α」に参加する意思さへ見せる、大胆な方向転換をするのだ。

     


    (2)「これは、バイデン大統領の強力な要求に伴う変化だ。バイデン大統領は選挙に当選したばかりの昨年11月、文大統領との最初の電話会談で「韓国はインド太平洋地域の安保と繁栄において核心軸(リンチピン)」と規定した。米国主導の東アジア戦略を受け入れろという圧迫であり、米中のうちどちらかを選べという最後通告だと解釈された」

     

    韓国が、「クワッド」入りを決意したのは、バイデン氏の圧力が大きかったと指摘している。

     

    (3)「文大統領の外交戦略の変化は、残った任期の間になんとか南北問題解決に向けた糸口を見つけるという切迫さのためというのが与党関係者の分析だ。政府組織「民主平和統一諮問会議」の丁世鉉(チョン・セヒョン)首席副議長はメディアとのインタビューで「米国は、北東アジア政策で中国問題が一番大きく、中国問題の付属問題として北朝鮮を考えている」と話した」

     

    文大統領は、南北問題がライフワークである。学生時代からの夢なのだろう。両親が北朝鮮出身であることから、祖先墳墓の地は北朝鮮である。文氏は、自分の魂も北朝鮮へ帰るという深い思いがあるに違いない。こういう信念がなければ、ここまで外交基軸を一挙に変える決心はつくまい。

     

    (4)「文大統領が、短期間内に韓半島政策の成果を出すには、米国の要求に応じるよりほかはないという状況認識だ。特に文大統領は、このため韓日関係改善にも速度を出し始めた。米国は中国封鎖戦略の基本条件として韓日米同盟の強化が不可欠だと判断している。文大統領は今月18日の記者会見で「慰安婦判決は2015年度の合意が両国政府間の公式的な合意だったという事実を認める」とした。2018年2月、安倍晋三前首相との首脳会談で「政府間の交換式交渉で解決できるものではない」としていた言葉を、事実上、翻したことになる」

     

    文氏の思い通り、早期の南北対話再開にこぎつける情勢が生まれるだろうか。率直に言ってその可能性は、極めて小さいと言うほかない。バイデン氏が同盟国の意思統一をするには時間もかかる。中国の思惑封じという外交戦略は、思いつきではできないからだ。こうして対中戦略を確立したうえで、北朝鮮問題に取りかかるであろう。となれば、文氏の希望が叶うのは先の話になる。

     

    文氏が、日韓関係改善に動いているのは、米国の心証を良くするためだ。特に日韓慰安婦合意では、バイデン氏が副大統領時代にバックアップした事案である。それを、文氏がぶち壊したのだから、元通りにする「義務」がある。

     


    (5)「文大統領の立場変化は政府の公式対応にもそのまま反映された。韓国政府は23日のコメントを通じて、改めて「慰安婦合意が公式合意であることを認める」とし「政府レベルでは日本に追加請求しない方針」」と表明した。日本に対しては、外交的論争が避けられない法的賠償の代わりに「自ら表明した責任痛感と謝罪・反省の精神に立脚して被害者らの名誉・尊厳回復と心の傷の治癒に向けた真の努力を見せるべきだろう」と要請した。また、姜昌一(カン・チャンイル)駐日大使が日本赴任直後に記者団と会った席で、日王を「天皇陛下」と呼称したことも日本側の世論を刺激しないというジェスチャーだ」

     

    文氏は、自ら振った「反日の旗」を取り下げるのである。韓国国内の反日派には、納得のいかない方向転換に映るに違いない。文氏の支持率低下に影響するだろう。こういう副作用を覚悟しても、文大統領は南北対話再開を図りたいというのが本音なのだ。


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    前政権の悪口三昧の中国外交

    民主党政権はチーム力で対抗

    新国務長官は外交路線を踏襲

    ふらつく中国追撃の組織作戦

     

    米国バイデン大統領が就任した。これまで4年間、トランプ前大統領に攻められっぱなしであっただけに、さぞかし鬱憤が溜まっていたと見られる。中国外務省は1月21日、トランプ前政権で国務長官を務めたポンペオ氏ら28人に制裁を科すと発表した。鬱憤ばらしをしたのだ。

     

    制裁内容は、中国本土や香港、マカオへの入境を禁じる。また、関係企業・団体の中国での経済活動を制限するというもの。この発表は、バイデン氏の大統領就任直後に行われたのである。トランプ政権中に制裁しなかったのは、報復を恐れた結果だろう。現役でなくなった人間へ制裁を科しても意味はない。遠吠えなのだ。中国、弱さの証明である。

     

    トランプ米大統領の任期が切れる数時間前、中国国営の新華社通信は20日、英語のツイッターアカウントから「いなくなってせいせいする、ドナルド・トランプ!」と投稿した。投稿には「厄介払い、トランプ政権と政権末期の狂気」と題した16日掲載の論説のリンクが貼られていたという。その論説では、任期切れ間近にトランプ政権が打ち出した中国を標的とする措置を「ばかげた見せ物」と断じ、新政権の米政策担当者に対し、米中関係が「一握りの過激派によって間違った方向に」導かれないよう求めた。

     


    前政権の悪口三昧の中国外交

    中国はここまで前米政権を批判・罵倒している。バイデン政権が、これをどのように受け止めているかといえば、何ら臆することなく米中対立の長期化を予告するのだ。米新政権は、人権擁護や民主主義防衛という普遍的な価値を前面に打ち出しており、前政権以上の対決姿勢を取る構えである。特に注目すべきは、新政権が同盟国重視を掲げている点である。前政権は、欧州同盟国とギクシャクしていたが、これを修復して一丸となって中国に対抗する姿勢を取っている。この点は、中国にとって気懸りであろう。

     

    新華社通信は、英語のツイッターで「いなくなってせいせいする、ドナルド・トランプ!」と投稿するほど感情的になっている。米国バイデン政権が、これを喜ぶとでも思っているのだろうか。もしそうだとすれば、とんだ見当違いの「発信」と言うほかない。

     

    トランプ政権も米国政権である。外国から悪口を言われて、喜ぶ後継政権はいない。中国への警戒姿勢は、前政権と変らないからだ。中国は、そういうデリケートな気持ちが分からないのだろう。

     

    中国は、米国とのこじれた関係を立て直すため、外交担当トップを派遣してバイデン大統領側近らとの高官級会合にこぎつけ、首脳会談を実現させたい考えを持っていると指摘されている。中国当局者はこれまで水面下で会談を要請していたが、バイデン政権の国家安全保障チームや他の政府機関へ正式な要請を行っていない。

     

    米国『ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)』(1月23日付)によれば、中国は、米中間の亀裂が深まっていることや、対面での会談申し出が拒否されることへの警戒感で、バイデン政権との交渉に慎重になっている、と報じている。

     

    中国は、それでもなお水面下で米国へ働きかけを行っている理由は、次の点にある。

     

    1)中国の貿易や技術への制裁。

    2)中国の領土権主張への拒否。

    3)中国の人権抑圧問題による摩擦。

     

    民主党政権はチーム力で対抗

    以下、私のコメントを付したい。

     

    1)貿易や技術への制裁で、中国は深刻な影響を受けている。バイデン政権は、前政権の課した制裁を継続する方針だ。イエレン財務長官は、「中国の悪質な慣行にはあらゆる手段」を積極的に使うとし、対中関税は同盟国と協議するまで変更するつもりはないと言明した。また、「中国に実際に意味のある圧力をかける違ったアプローチが必要だ」とも指摘。バイデン大統領と共に各国の為替操作をやめさせるよう取り組んでいくと表明した。

     

    技術は、高級半導体と技術ノウハウの輸出禁止措置が取られている。すでに、中国にとって致命的打撃を受けている。中国自動車業界では、半導体不足によってEV(電気自動車)開発に重大な支障が生じる見通しである。中国の国家新能源汽車技術創新中心(NEVC)の原城寅ゼネラルマネジャーは、「数十年前の状態に戻る」とまで発言する始末だ。EVで、高級半導体が入手できなければ、開発はお手上げになる。

     

    2)中国の領土権問題も深刻である。南シナ海での島嶼占領と軍事基地化は、抜き差しならぬ事態を招いている。米国のほかに、英国・ドイツ・フランスが海軍を派遣してけん制する状況にまでなってきた。これは、中国一国で主要国を相手にした軍事対決へ陥りかねないという危機に繋がっている。(つづく)

     

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    2021-01-18

    メルマガ224号 西側の技術封鎖! 中国は間違いなく「巣ごもり破綻」

     

     

     

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    米国の前トランプ政権によるファーウェイ排除が、EU(欧州連合)全体で定着してきたことが判明した。欧州は、4G基地局までファーウェイが建設してきた。それだけに、5Gからはファーウェイを排除するという米国の言い分が、なかなか理解されなかった。だが、中国が香港へ強引に「国家安全法」を導入し、「一国二制度」を破棄したことから、中国政府に不審の念を強め、結果として5G基地局建設でファーウェイ排除の流れが固まった。

     

    『日本経済新聞』(1月24日付)は、「バイデン政権と『技術同盟』期待、欧州連合がファーウェイ対策強化」と題する記事を掲載した。

     

    2020年は中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)に対する欧州の政策が大きく変化した年だ。米国のトランプ前大統領が、重要情報が中国当局の手に渡るといった安全保障上のリスクがあるとして、同社を高速通信規格「5G」のネットワークから排除するよう圧力をかけた。その結果、欧州連合(EU)加盟国のほとんどで、5Gインフラの対策が強化される見通しになった。


    (1)「英国は欧州でファーウェイに対して最初に断固とした行動を取った国の一つだ。英政府は当初、中核部分からのみの排除という対応だったが、20年7月に全面的に禁止すると決め、通信会社に対し27年までに通信ネットワークからファーウェイ製品を排除するよう求めた」

     

    ファーウェイは、4Gまで欧州最大のシェアを誇ってきた。当然、5Gでも過去の投資が生きるので有利な立場にあった。そこへ、ファーウェイ5Gに「バックドア」疑惑が持ち上がり、北京で情報操作可能という技術的脆弱性を突きつけられ、脱ファーウェイへ舵を切り替えた。その先頭を切ったのが英国である。

     

    (2)「一方、欧州最大の通信市場を持つドイツは、全面禁止に慎重な態度を示してきた。メルケル首相は当初、ファーウェイ排除の可能性を否定していたが、米国から圧力を受け、連立政権内でこの問題を巡る論争を収拾しなければならなくなった。そして、国内ネットワークの中核部分で安全性の審査を厳格化する法案の審議を始めた。新型コロナウイルス感染症の拡大でデジタルインフラへ注目が集まったことも、政策決定に影響を及ぼしている」

     

    ドイツは、「嫌米ムード」が強いこともあり、米国の反ファーウェイ要請を撥ね付けてきた。だが、メルケル首相の権力が落ちるとともに、脱ファーウェイへとムードが切り替わった。中国政府の人権弾圧という事態を見せつけられ、ドイツとしては最も敏感な問題(ナチス関連)ゆえに、脱ファーウェイを鮮明にし「人権擁護国」という立場にならざるを得なかったのであろう。

     


    (3)「デンマークに本拠を置くITコンサルタント、ストランド・コンサルタントのジョン・ストランド氏は、「新型コロナの流行が始まってから、欧米の政治家の多くは通信が、電気や水道と同様に現代社会の基本的なインフラだと認識した」とし、「香港で起きたように、中国の攻撃的な行動が激化していることを考慮し、欧州は中国企業との取引の安全保障上のリスクを理解するようになった」と述べている」

     

    香港に見せつけられた中国の強権体質に、欧州は改めて中国企業と取引する安全保障上のリスクを認識するようになった。これは、事実であろう。価値観の異なる中国の企業が、普遍的価値観に裏付けられた自由世界の企業と異質であることを知ったことはプラスである。その意味では、トランプ政権の指摘がなければ将来、いかなる損失を受けたかもしれないという恐怖感に襲われているに違いない。

     


    (4)「欧州委員会は20年12月、米国との協力を望む分野を発表した。新型コロナと気候変動に加え、5Gも含まれていた。その中で「EUは米国に対し、安全な5Gインフラを世界中に構築する際、欧州の技術的指導力に基づいて進めるよう提案する」としている。CSIS(米戦略国際問題研究所)のルイス氏は、「米国は日本、欧州とともに、安全な5Gサプライチェーンに向けた政策を決めた。その取り組みがEUとの『技術同盟』の可能性を生み出す。バイデン政権にとって大西洋の両岸関係の再建が優先課題だ」と述べた」

     

    話も変れば変るものだ。欧州委員会(EUの執行委員会)は、米国に対して世界中へ5Gを普及する際、欧州の技術的指導力に基づいて進めるようと要請するまでになっている。北欧の有力通信機メーカーの技術を使えと言うのである。CSISのルイス氏は、日本・米国・欧州の「技術同盟」を提案している。5Gが生んだ連帯意識を発展させようというものだ。いよいよ、中国は仲間外れという色彩が濃くなってきた。

     

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    2020-12-07

    インド、「5G導入」日本企業へ協力求め、ファーウェイ拒否に中国メディア「嫌み」

     

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