勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 米国経済ニュース時評

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    韓国文政権は、中国へ高い信頼を寄せている。中国の言い分を額面通りに受け取っている証拠だ。秦の始皇帝が、敵対する同盟国6ヶ国を打ち破ったのは、個別に交渉して安心感を持たせて征服した結果である。この手法は、現代も変らず、だ。

     

    中国が、執拗なまでに韓国へ甘い顔をして米韓同盟をひび割れさせる振る舞いは、前記の始皇帝作戦の応用版である。文政権は、この分かりきったことが分からないで、中国へ秋波を送っている。自分から征服してくれと言っているようなものである。

     

    在韓米軍は、2万8500人の定員を守るように決まったが、これで安心できるのではない。米中対立の長期化は、アジアにおける米中両軍の衝突をもたらす危険性を高める。その場合、韓国はどう対応するのか。米韓同盟の立場から言えば、米軍と同一歩調を迫られる。その決意があるのか。

     


    在韓米軍が、他のアジア地域へ移動した場合、手薄になった朝鮮半島で北朝鮮はどう動くのか。38度線を突破されれば、北朝鮮の意のままになって占領されるのか。こういう現実的な問題が、これから発生しかねないのだ。

     

    『東亜日報』(12月29日付)は、「バイデン時代の在韓米軍『高次方程式』」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「21年1月にバイデン政権が発足すれば、韓米同盟が本来の位置に戻るという見方が多い。「米国第一」を掲げて「同盟請求書」を乱発したトランプ政権と同盟を重視するバイデン政権は明確に異なると期待されている。12月初め、米議会が在韓米軍の駐留規模を現行(2万8500人)で維持する内容の国防権限法案(NDAA)を処理したのも、バイデン氏の同盟重視の意向が反映されたものとの評価がある。要するに、バイデン政権で在韓米軍の問題は「同盟問題」に飛び火しないよう管理され、伝統的血盟関係が修復されると楽観するムードも感知される」

     

    トランプ政権時代、米韓は軍事費負担を巡って大揺れであった。バイデン政権になれば、そういう騒ぎから解放され、韓国は一息入れられると見ているかも知れない。それは、嵐の前の静けさである。米中対立が、在韓米軍の存在に大きな影を及ぼすからだ。

     

    (2)「現実は、それとは正反対に流れるかも知れない。中国と北朝鮮の脅威と域内安保の挑戦が強くなればなるほど、米国は政権と政派を越えて自国に最も有利な方向で海外駐留米軍を運用する可能性が高いためだ。この場合、在韓米軍の問題は、韓米同盟の「最大の難題」になる可能性がある。すでにその兆候は捉えられている。先日、米議会が海外に米軍兵力や軍事装備を配備する際、駐留国が華為技術(ファーウェイ)など中国企業の第5世代(5G)移動通信技術を使っているかどうかを考慮すると宣言したことを「信号弾」と見ることができる。ドイツと日本の次に多くの米地上軍と高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD)のような戦略兵器が配備された韓国に及ぼす影響は小さくない」

     

    米中対立が軍事紛争に発展した場合、韓国の米陸軍部隊が第一線の戦闘に配置される。在韓米軍の主力は陸軍であるからだ。当然、在韓米軍は手薄になる。この場合、韓国は独力で北朝鮮軍と対峙しなければならない。北朝鮮は、中国の要請によって38度線を脅かし、米陸軍を釘付けにする戦術に出るだろう。だが、米軍はアジア地域の対中戦線へ移動するはずだ。

     

    こういう最悪事態を想定すれば、米韓軍は事前に戦術の打合せが必要であることは言うまでもない。つまり、米韓軍は一体になって中国と対峙することを求められるのだ。韓国が、中国に秋波を送る二股外交では、この高等戦術は不可能であろう。北朝鮮は、中国の「手先」という認識をしっかりと持つべきなのだ。

     

    (3)「中国の軍事力拡大の加速化も、在韓米軍の地位と役割に主要変数として作用することが予想される。南シナ海の軍事化など中国の覇権を阻止することは、バイデン政権でも超党派の核心安保課題として推進されるだろう。その過程で、米国は対中牽制に韓国の参加を要請し、在韓米軍の「戦略的柔軟性」を積極的に活用する可能性がある。米中が域内で軍事的に衝突する場合、在韓米軍の介入や支援案を講じる可能性があるということだ。米国防総省が今年から進めている在韓米軍を含むインド太平洋司令部の見直し作業もその一環と見ることができる」

     

    下線部分は、米韓にとって不可欠な戦術であることを示している。「米国は対中牽制に韓国の参加を要請し、在韓米軍の『戦略的柔軟性』を積極的に活用する可能性がある」という指摘を玩味すべきである。日本が、米国と一体になった「インド太平洋戦略」に参加したのは、究極的に日本の安全保障政策に寄与するからだ。

     

    将来、「アジア版NATO」が結成されると見るべきだ。これに、NATO(北大西洋条約機構)が加われば、中国はもはや「袋の中のネズミ」となる。他国領土を「一寸」たりとも奪えない体制が出来上がる。こういう将来を見据えれば、韓国にとって、中国は怖い相手でなくなるのだ。同盟の力が発揮され、守られるのである。

     


    (4)「軍内外では、在韓米軍問題がトランプ政権では駐留経費負担問題を媒介とした「一次方程式」だったなら、バイデン政権では国内外の変数が複合的に作用する「高次方程式」になると懸念されている。在韓米軍は、韓米連合防衛の主軸であり、域内のバランサーということに異論の余地はないだろう。北朝鮮の挑発への抑止と中国牽制という米国の戦略的構図で韓国の安保国益を最大化するには、在韓米軍の安定的な駐留が欠かせない。このためにより精巧で慎重な同盟戦略を講じなければならない」

     

    韓国の安全保障は、米軍の世界戦略の一環として組み込むべきである。欧州が、NATOで結束して旧ソ連と対抗したように、アジアでは「アジア版NATO」として結束することである。だが、文政権ではこういう世界戦略が理解不能であろう。韓国で進歩派政権が続く限り、米韓関係はがたつくはずだ。それは、韓国の運命に大きく関わる。

     

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    今日は元旦である。世界問題を考えるには、中国の動向が最大のポイントであろう。中国を巡る問題は、目先の経済成長率が高いか低いかを超えている。この地球上で、過半は民主主義国である。自由と人権を尊重する政治体制だ。片や中国は、それを真っ向から否定する。この両体制が共存できるか。中国が孤塁を守っていれば問題ないが、世界覇権へ挑戦すると宣言した以上、前途は荒波を予測せざるを得ない。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(12月31日付)は、「急回復の中国経済、21年は順風満帆か」と題する記事を掲載した。

     

    世界貿易が回復を続け、20年前半にロックダウン(都市封鎖)で大きな打撃を受けた中国の消費者が自信を取り戻す中、同国の強さは21年も続くように思われる。20年下半期に不動産やインフラへの投資縮小が逆風になっていた可能性はあるが、それでも中国経済は大半の主要国より好調だった公算が大きい。

     


    (1)「
    長期的には、民主主義諸国との関係悪化にどう対処するか、また習近平国家主席が推進する官民連携戦略が効率化と技術発展をもたらすかどうかに同国の前途がかかっていることに変わりはない」

     

    中国の将来は、習近平氏が決めると言っても過言でない。「国内大循環」という個人消費を中心とする経済運営は、「国進民退」という官民連携戦略が効率化と技術発展をもたらすか試されている。常識では、「民進国退」が軸である。これは、効率化と技術発展を生むものだ。習氏は、この常識と真逆のことを行おうとしている。

     

    中国は、グローバル経済に組み込まれている。それだけに、西側諸国と対立することは、自らの生存基盤を破壊することだ。この矛楯に気付かずに、領土拡張に余念がない。これが、西側との最大の対立点になろう。はっきり言えば、西側が生殺与奪の権を握っている。旧冷戦時代、西側とソ連は経済的に没交渉であった。それが、ソ連の強みであった。中国は、西側と深い交流をしているので、それを絶たれれば経済的に生きていけないのだ。

     

    (2)「中国経済の主要部分を占め、世界の商品(コモディティー)市場のけん引役ともなる不動産投資を抑制する理由は分かりやすい。小売売上高と民間投資がすでにプラス成長に戻り、輸出も好調な今、建設を促進するために住宅ローン金利を低く維持する政策は説得力に欠ける。短期借入金利は6月以降大きく上昇し、現在は19年後半の水準近辺にある。今年初頭に短期借入金利ほど大きく下がらなかった住宅ローン金利も、遠からず上昇する可能性が高い。一方で住宅価格の上昇幅が小さく、起債による資金調達が割高なことは、開発業者にとって圧迫要因になるだろう」

     

    下線をつけた、「小売売上高と民間投資がすでにプラス成長に戻り」は、いささか現実と異なる。プラス成長に戻っているが、力は弱いのだ。中国経済のエンジンは、不動産投資と輸出である。不動産投資は、金融の超緩和を背景にして起こった不動産バブルの延長。輸出は、パンデミック下で、欧米の生産活動が低調の一方、在宅勤務でパソコンなどの重要が増えた「パンデミック特需」である。恒常的な需要ではない。

     

    (3)「幸い、中国の消費者は健全な状態にある。オックスフォード・エコノミクスによると、7~9月期の家計の貯蓄率は、コロナ流行前の19年後半より約3ポイント高い。これは支出の伸びを加速させる余地がまだあることを意味する。一方で対外的には、他の先進国が回復するにつれ21年後半には中国が輸出市場でいくらかシェアを失う可能性がある。それでも、世界経済の規模拡大が加速することで、おそらく中国は輸出量を維持できるだろう」

     

    下線のように家計貯蓄率が約3ポイント上昇している。だが、家計債務残高は絶対額で世界一の状態である。米国をはるかに上回っているのだ。これは、住宅ローンの増加による結果である。となると、家計貯蓄率の上昇と家計債務残高の上昇によって、中国の家計支出は減少せざるを得ない局面だ。決して、中国の消費が高い貯蓄率をテコに、下支えされると見るべきでない。逆である。

     


    (4)「その先の見通しは一層不透明だ。長らくこう着状態にあった中国と欧州連合(EU)の二国間投資協定は署名に近づいており(注:署名した)、中国の孤立化を狙うバイデン米次期政権の取り組みは前途多難なスタートとなるかもしれない。だが長期的には、欧州の政府や企業は、中国が新疆ウイグル自治区などで行っている人権侵害をあれほど積極的に見過ごそうとする理由について、国民や顧客に説明するのが難しくなるかもしれない」

     

    中国とEUの投資協定が署名したが、楽観すべきでない。EU各国の中国への反発が大きく、警戒姿勢を強めていることだ。表面的な事柄だけを見ていると間違う。中国の人権弾圧が、欧州の強い批判材料になっている。これが、大きな変数になっている。

     

    (5)「一方、中国の人口動態上の優位性は急速に低下しており、これは生産性の向上が不可欠であることを意味する。ハイテク分野の経済戦略を輸入代替型にシフトさせる政策には大きなリスクがあり、必要性が高まっている財政改革なしでは特にそうだ。中国は21年の海がより穏やかになることを期待して20年に別れを告げることができる。22年以降の海は、まだかなり濁っているようだ」

     

    下線部分の人口動態の悪化は、その通りである。これが、生産性を低下させる要因である。生産年齢人口比の低下が、潜在成長率を引き下げているのだ。中国政府は、この事実をどこまで認識しているか疑問である。高い経済成長率目標を掲げていることが、それを示唆しているのだ。不動産投資(不動産バブル)に依存する経済が、堅実であるはずがない。

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    笛や太鼓で騒いだ中国製コロナワクチンは、未だに最終治験の結果すら発表できない「代物」である。米国が、ファイザーやモデルナの両社が有効性90%台という脅威的データを明らかにしたことで、中国は余りにも見劣りすることで萎縮してしまった印象である。

    中国は、新興国へワクチン外交を展開した。その見返りが、ファーウェイの「5G」導入であった。だが、中国製ワクチンの風向きが悪くなっており、ブラジルでは半分の人は「中国製ワクチン」拒否というほど、嫌われた存在になっている。中国で接種されている中国製ワクチンの箱には、接種後のマスク着用と手洗い励行を勧めている。こうなると、何の目的でワクチンを接種したか分からないほどだ。



    『ブルンバーグ』(12月31日付)は、「中国のワクチン外交 見返り要求で逆効果にもー信頼得るデータ不可欠」と題する記事を掲載した。

    (1)「パキスタン最大の都市カラチで配車アプリ「バイケア」の二輪車運転手として働くファルマン・アリ・シャーさんは、中国製ワクチンの接種を「受けるつもりはない。信用していない」と言う。パキスタンなど中国製ワクチンの臨床試験が進む国々で重ねたインタビューや調査などで示されたのは、中国製ワクチンが十分な信頼性を得ていないということだ。こうした不信感に加え、ワクチン供給を中国に依存せざるを得ない貧しい数十の国々で国民が質の劣ったワクチンを与えられたと感じれば、世界的に大きな政治問題になる可能性もある」



    中国が何年にもわたり道路・鉄道・発電所に700億ドル(約7兆2600億円)近い融資をしたパキスタンでは、2つの中国製ワクチン臨床試験が進行中だ。このパキスタンでさえ中国製ワクチンの接種に二の足を踏んでいるという。下線部のように、未だに治験データを発表できない、有効性の劣る中国製ワクチンを無理矢理、接種させられたとなれば、大きな政治問題に発展する。中国は、そういう岐路に立たされている。

    (2)「中国政府が、打ち出した各国へのワクチン供給計画の意図していたのは、明確な外交的勝利だ。これまでのところ緊急使用を認めているのは中国を除けばアラブ首長国連邦(UAE)だけだ。メキシコの元駐中国大使で現在はマクラーティー・アソシエーツのシニアディレクターを務めるホルヘ・グアハルド氏は、「中国にはワクチン外交を行い、人々の命を救う製品を配布する絶好の機会がある」と指摘。その上で、 「私の経験では中国は外交を持ち出すたびに大失敗する。支援を受けた国々を怒らせてしまうのだ」と話す。

    中国は、粗悪な「マスク外交」によって各国で反感を買った。今度は「ワクチン外交」である。現状では「粗悪品」の印象の域を出ていない。ワクチン接種後、マスク着用と手洗い励行を勧めるようなワクチンでは、予防接種の役割を果たさないからだ。



    (3)「同氏によれば、ワクチン供給と引き換えに中国が相手国に求めているのは、米政府が制裁を発動している華為技術(ファーウェイ)の第5世代(5G)移動通信技術を利用するという約束、あるいは重要セクターに中国が投資することを認めることだ。「こうした言動の歴史を踏まえれば、また繰り返されても驚くことではない」と語る」

    中国のワクチンは、ファーウェイ製「5G」を導入させる「景品」のような役割である。これでは、発展途上国から横を向かれる危険性が高いだろう。

    (4)「米外交問題評議会(CFR)のグローバルヘルス担当シニアフェロー、 ヤンジョン・ホアン氏は、「中国製ワクチンが唯一の選択肢である国では接種を受けるか拒否するかのどちらかだ。だが異なるワクチンの中から選べるとすれば人々は合理的になり、確実に欧米企業のワクチンが選ばれるだろう。すでにデータが公表され安全だ。中国は今のところ系統立ったデータを一切持っていない」と述べる」

    米国や英国の最先端ワクチンが出そろった現在、中国ワクチンの影は薄くなるばかりだ。



    (5)「同氏はまた、自国民14億人に一斉にワクチン接種し、人口の多い幾つかの新興国の需要をまかなうことができるとする中国は、能力を過大評価している可能性があるともみている。中国製ワクチンを入手できなければ、新興国は他の供給国に目を向け「中国はテコを失うことになる。経済的損失だけでなく、外交および戦略上の利益も損なわれるだろう」と予想する」

    中国は先ず、自国民に自国ワクチンを接種して効果をアピールすべきである。幸い、2月に旧正月を迎える。PCRに頼って陽性患者を早期発見するより、自国製ワクチンで実証すべき絶好の機会を迎えるのだ。しかし、怖くてそれができないのだろう。



    (6)「各国の指導者は、使用を認めた全てのワクチンが等しく安全だと自国民を説得できなかった場合、二流品を与えられたと感じる人々は反発するかもしれない。中国が今年統制を強めた香港でさえ、林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は今月23日、米ファイザーとドイツのビオンテックが共同開発したワクチンと英アストラゼネカのワクチン、中国の科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)のワクチンの3種類から選択できると住民に伝えた」

    香港は、市民に対してワクチン接種で米英のワクチン2種類と中国製ワクチンの1種類から選択させるという。後からの苦情を恐れている結果だ。香港当局は、すでに中国製ワクチンの劣悪なデータを知っているに違いない。


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    日本は、ワクチン購入について控え目な発表をしてきた。韓国の文大統領は逆である。交渉中を「合意」と発表して先方との食い違いが表面化している。韓国が、このように大統領自らが交渉するという異例の形を取っているのは、ワクチン購入が出遅れたからだ。それを挽回すべく「パフォーマンス」に転じている。とんだ、ピエロとなった。

     

    昨日(12月30日)、文大統領は米モデルナから来年第2四半期に2000万人分のワクチン購入で合意と発表したが、モデルナによると「交渉中」である、としたのだ。

     


    『朝鮮日報』(12月31日付)は、「青瓦台が『合意』発表した翌日、モデルナ社『韓国政府と協議中』」と題する記事を掲載した。

     

    米国の製薬会社モデルナ社と2000万人分のコロナ・ワクチン供給で「合意した」とする青瓦台(韓国大統領府)の発表とは異なり、モデルナ側は「韓国政府と協議中」と説明した。そのため「青瓦台はワクチン供給契約についてやや先走ったのではないか」との指摘が出ている。

     

    (1)「モデルナは29日(現地時間)「韓国に4000万回接種分のコロナ・ワクチン供給に向けた韓国政府との協議を確認する」という見出しのプレスリリースを公表した。その中でモデルナは「韓国政府と潜在的に4000万回接種分あるいはそれ以上のモデルナ・ワクチンを供給するため協議中であることを確認する」として「提案された合意内容によると、配布は2021年の第2四半期に始まるかもしれない」と伝えた」

     

    供給側のモデルナが、下線のような発表をしている以上、契約として確定したものではない。文大統領は、それを「確定」のようなイメージで発表したもの。韓国の慌てている事情が透けて見えるのだ。

     

    (2)「モデルナが米国、英国、シンガポールなどとワクチン供給で合意した際に発表した内容と比較しても明確な違いがある。モデルナは今年8月11日「米国政府と早期に1億回分供給で合意」という題目のプレスリリースを出した。これによるとモデルナは「米国政府は1億回分を確保したと発表する」という表現を使った。これに対して韓国に関する発表には「確保」という言葉がない」

     

    モデルナ発表の文書には「確保」という文言がない。

     

    (3)「11月17日、英国政府とワクチン供給で合意した際にもモデルナは「英国政府との供給合意を発表する」と伝えた。英国の規制当局が使用を承認すれば、2021年3月から供給を開始する」という具体的な文言もその内容に含まれていた。12月14日にシンガポールとワクチン供給で合意した際には「シンガポール保健省と契約を結んだ」と説明した。モデルナが韓国について使用した「協議を確認する」という表現は、通常であれば交渉中であることを正式に認める際に使う言葉のようだ」

     

    モデルナは、韓国と協議中であることを認めたに過ぎないのだ。

     

    (4)「モデルナは8月24日「欧州に8億回分を供給するため、欧州連合執行機関との協議が進展していることを確認する」と発表した。それから3カ月後の11月25日「欧州連合が早期に8億回分の事前購入契約を承認したことを発表する」と説明した。協議から契約まで3カ月以上の時間を要したのだ

     

    下線のように、協議から契約まで3ヶ月以上の時間がかかっている。韓国もこの例から言えば、4月以降の契約となりそうだ。

     

    (5)「モデルナは日本と交渉を行っていた今年8月28日「4000万回分を日本に供給するため、日本の厚生労働省と協議中であることを確認する」と発表した。それから2カ月後の10月29日、最終契約が結ばれた後に厚生労働省は「契約を締結した」と発表した。青瓦台がモデルナとの協議について「合意した」という断定的な言葉を使ったこととは対照的だ」

     

    日本の場合、協議から最終契約まで2ヶ月間を要している。こういう状況を見れば、韓国大統領府の発表は「オーバーラン」したことは否めない。韓国国内は、ワクチン確保遅延で焦っている。31日発表の大統領不支持率は、59.8%で就任後最高を更新した。次第に、「藁をつかむ」心境になってきたのだろう。4月の総選挙で与党が、6割の議席を得た「勢い」は消えかかっている。

     

     

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    来年1月20日、米国はバイデン次期政権が発足する。秒読み段階に入った。バイデン氏は、次期外交スタッフと話合いの機会を持った。同盟国を結束して対中国外交を進めるという基本方針の確認であろうが、韓国文政権は「二股外交」の将来について危惧し始めている。

     

    『中央日報』(12月29日付)は、「バイデン氏『中国との競争で同盟と連合』、韓国への選択要求予告」と題する記事を掲載した。

     

    バイデン次期米大統領が28日、次期政権の外交・安保チームとテレビ会議を行い、対中圧迫原則を再確認した。

    バイデン氏はテレビ会議後の記者会見で、中国政府が貿易悪習と技術、人権に責任を負うようにし、中国と競争する中で考えが似たパートナー・同盟と連合を構築する時にわれわれの立場はさらに強くなるだろう」と話した。続けて、「われわれは国際経済でほぼ25%を占めているが民主的なパートナーらと一緒なら経済的レバレッジは倍以上になるだろう」とした」



    (1)「これは、来月発足するバイデン政権が中国牽制に向け同盟を糾合するという事前予告だ。韓国は米国と中国の間で選択を明確にするようにとの圧迫がバイデン政権でさらにはっきりとする見通しだ。これに先立ち行われたテレビ会議には、国務長官に指名されたアントニー・ブリンケン氏、国防長官に指名されたロイド・オースティン氏、国家安全保障担当大統領補佐官に指名されたジェイク・サリバン氏ら対外政策の核心となる参謀陣が参加した。バイデン政権発足に先立ちあらかじめ開かれた国家安全保障会議(NSC)のようだった」

     

    米中関係は、中期的な目で見れば一段と緊迫化する見通しである。中国が、習近平氏の国家主席「永久化」を狙って、米中対立をバックに自己の権力基盤を固めると見られるからだ。敵(米国)に背中を見せる訳にいかない状況に変ったからだ。

     

    米国は、同盟国の力を結集させる方針である。幸い、EU(欧州連合)の核である、ドイツとフランスが、軍艦を西大平洋へ派遣する方針を決定した。英国は、新鋭空母『クイーン・エリザベス』について日本を母港にして派遣するという大胆な決定までしている。こういう状況下で、韓国だけが「二股外交」で中国と誼を通じることが許されるはずがない。中国について、白黒をはっきりするように迫られるであろう。もはや、曖昧な姿勢は認められない状況になってきたのだ。

     


    (2)「米国は、すでに日本、オーストラリア、インドと4カ国の安保協議体であるQUADを構成して中国包囲戦略を現実化している。先月インド洋で4カ国が参加した大規模海上合同軍事演習を実施して中国を軍事的に牽制した。米国は、QUADを「QUADプラス」に拡張し参加国を増やそうとしている。トランプ政権に続き、バイデン政権でもQUADプラスに韓国も参加するよう要請するものと観測される」

    韓国が、具体的に白黒を迫られるのは、「QUADプラス」としての参加であろう。韓国は前述のように、中国と経済的に密接な関係にあるドイツが、戦艦を西太平洋へ派遣することの意味を覚るべきである。経済は経済、安全保障は別という割り切り方を学ぶべきなのだ。

     

    文政権が、中国に「未練」を見せるのは、中国に思想的な親近感を持っている結果だ。これは、韓国世論と大きくかけ離れている。韓国の世論調査では8割が「親米派」である。「親中派」は数%に過ぎないのだ。

     


    (3)「バイデン氏は記者会見で、米中会談が開かれれば人権問題も取り上げると言及した。中国が内政問題で敏感に反応する香港民主化と新疆ウイグルの人権問題を提起するものと示唆した。バイデン氏はこの日北朝鮮には言及しなかったが、就任後には人権問題で北朝鮮を圧迫する可能性が大きいという見方が多い。また「対北朝鮮ビラ散布禁止法」を強行した韓国政府に向けても基本権侵害議論を取り上げるのではないかとの懸念が続いている」

     

    自由主義諸国と中国との対立点の一つは、中国の人権無視である。EUが、中国を対立軸に据えたのは、香港問題に端を発する人権弾圧である。これが、EUを急速に「反中」へ向かわせている。共産主義=人権弾圧という構図ができあがっており、EUは黙認しないという強い姿勢で統一したのだ。中国による東欧への「一帯一路」支援の空約束も、中国離れを強めている。金の切れ目が縁の切れ目になった。

     

    韓国は、こういうEUの対中認識の変化も知るべきである。中国経済と縁の深いEUが、中国へ背中を見せ始めたのである。韓国の「二股外交」が、許される状況でなくなったことを事実として受入れるべきである。

     

     

     

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