勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    テイカカズラ
       


    米議会が、在韓米軍の駐留規模を現行2万8500人で維持する内容が含まれた国防授権法(NDAA)の処理に合意したと、米政府系放送局のボイス・オブ・アメリカ(VOA)が4日、報じた。

     

    これまで、トランプ政権は在韓米軍の規模縮小を臭わせる発言を繰返してきた。米韓両国は10月14日(現地時間)、米国防総省で開かれた第52回米韓安保協議会(SCM)において防衛費分担金問題などを巡って衝突した。共同声明からは、昨年とは異なり「在韓米軍の現水準を維持」という表現が取り除かれ、予定されていた両国国防トップの記者会見も取り消されるほど険悪化していた。

     

    こういう経緯があるだけに、今回の在韓米軍の規模を維持する米議会の決定は、韓国側をホットさせている。これまで韓国大統領府では、将来の南北宥和のためには在韓米軍の存在が障害になるという「邪魔者」扱いする議論も見られ、米国側をいらつかせてきた。だが、現実に在韓米軍の縮小論が出ると、早速ワシントン詣でするという矛楯した行動を取ってきた。今回の米議会の決定は、韓国側を安心させている。

     


    『東亜日報』(12月5日付)は、「
    米議会『在韓米軍の規模維持』に合意、バイデン氏の意向を反映か」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「米議会が、在韓米軍の駐留規模を現行2万8500人で維持する内容が含まれた国防授権法(NDAA)の処理に合意したと、米政府系放送局のボイス・オブ・アメリカ(VOA)が4日、報じた。バイデン氏の大統領選勝利後、初めて処理されるNDAAで、同盟を重視するバイデン政権の意向が反映されたとみられる。バイデン氏は、在韓米軍を縮小する可能性を示唆してきたトランプ政権に反対し、同盟重視を強調してきた」

     

    国防授権法は、米国の国防予算の大枠を決めるために議会が毎年通す法律である。ここへ、在韓米軍の駐留規模まで明記したことは、大統領が勝手に変更できないという意味でもある。その意味で、極めて重い意味を持っている。しかし、韓国側はこれで今後も安心とはいかない悩みもある。22年予算では、どのような扱いになるか不明であるからだ。



    (2)「合意案には、在韓米軍の規模削減に予算を使用できないようにする条項が含まれた。ただし、次の条件が満たされれば縮小が可能となる。

    1)米国の安全保障の利益に合致

    2)域内の同盟の安全保障を深刻に傷つけず

    3)韓国と日本を含む同盟と適切に協議したことを議会に立証した場合」

     

    在韓米軍は、陸軍が主体である。最近、米軍における陸軍の役割が変っており、南シナ海防衛という点で陸軍を重視するようになっている。そこで、韓国へ2万8500人もの兵員を固定させることのデメリットが議論されている。

     

    前記の3項目による縮小可能性が上げられている。1)「米国の安全保障の利益に合致」は、微妙である。インド太平洋構想で「クアッド」(日本・米国・豪州・インド)が、一体的に中国へ対応する時代に、米同盟国の韓国が協力しないとなれば、これは、韓国の在韓米軍縮小論と結びつき易いであろう。米国の安全保障に韓国が協力しないならば、在韓米軍縮小論と結びつくだろう。

     

    3)「韓国と日本を含む同盟と適切に協議したこと」も韓国には気になる項目であろう。日本が、在韓米軍の問題について協議できる場を与えられたとも読める。これは、在日米軍が、在韓米軍の後方基地として機能している点を加味している。この点について、韓国の認識は極めて希薄である。韓国防衛には、日本も米国に基地を提供しているという意味で間接的に寄与しているのだ。それにも関わらず、「反日運動」である。心得違いというべきだろう。

     


    (3)「トランプ氏が昨年任命したマーク・ミリー統合参謀本部議長は3日、オンラインフォーラムで、「米軍の海外駐留方式は選択的でなければならない」とし、韓国と中東湾岸地域の米軍駐留方式を「永久駐留」から「循環駐留」に変える必要性を指摘した。ミリー氏は、韓国で北朝鮮との武力衝突が発生すれば、非戦闘員である米軍の家族が被害を受ける恐れがあるとし、このように主張した」

     

    ミリー統合参謀本部議長は、在韓米軍の「循環駐留」という考え方を提示している。日本は、「永久駐留」だが、韓国と中東湾岸地域については、腰掛け的なものにするとしている。韓国は、身勝手なことばかり言わず、米側の要請にも答えるべきだろう。



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    中国企業にとって、米国証券市場は金のなる木である。今年8月時点で、中国からナスダック株式市場またはニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場した企業は20社を超えた。調達総額は40億ドルにも上っている。大半はソフトウエアや電気自動車(EV)などハイテク業界の企業だ。2019年、中国企業25社がIPOで35億ドルを調達した。

     

    12月2日、米下院は米国の監査基準を順守しない限り一部の中国企業の米上場を阻止できる法案(「外国企業説明責任法案」)を全会一致で可決した。同法案は今年すでに上院で可決されており、トランプ大統領の署名を経て成立する見通し。同法案の下、3年連続で米公開会社会計監視委員会(PCAOB)の監査基準を順守できなければ、米国内の証券取引所での上場が禁じられる。対象企業は、主として中国企業である。

     

    中国企業にとって米国市場は、資金調達面でありがたい場所だが、肝心の中国企業に相次ぎ不正会計疑惑が持ち上がっている。最近の動きを見ておきたい。

     

    『日本経済新聞 電子版』(12月4日付)は、「米上場の中国企業続く不正会計疑惑」と題する記事を掲載した。

     

    米国市場に上場する中国企業の不正会計疑惑が相次いでいる。11月にはライブ配信大手や電気自動車(EV)メーカーで新たな疑惑が浮上した。カフェチェーン大手、ラッキンコーヒーも不正会計が発覚し、6月にナスダック市場の上場廃止に追い込まれている。米当局は新たな規制を導入し、中国企業に対する監視を強める方針を決めた。

     

    (1)「EVメーカーの康迪科技集団は米調査会社から「売上高を偽っている」と指摘された(同社のサイトから)。「売上高の約55%を占める最大顧客の連絡先がグループ会社と共通だ」。米調査会社のヒンデンブルグ・リサーチは11月30日、中国のEVメーカー、康迪科技集団についてリポートでこう指摘した。最高財務責任者(CFO)や監査人らが頻繁に交代していることなども偽装の兆候とし、「売上高を偽っている」と記した。中国や米国でのEVの販売実績・計画にも疑いの目を向けている」

     

    いかにも中国企業らしい粉飾決算である。米国で株式公開(IPO)して資金調達した後は、「野となれ山となれ」という無責任さである。詐欺行為である。

     

    (2)「前記のヒンデンブルグは9月にも米新興EVメーカー、ニコラが「技術力を偽って宣伝している」と指摘した。その後、ニコラと資本・業務提携で合意していた米ゼネラル・モーターズ(GM)は出資計画を撤回するに至った。ナスダックに上場する康迪科技の株価は30日に3割近く下落。康迪科技は「指摘には多くの間違いや不正確な結論が含まれている」と反論する」

     

    米GMも危ないところでダマされるところだった。こういう中国企業に対して、中国政府は米国の監査を認めないという悪質さである。中国企業の情報が漏れることを警戒したもの。多分、政府の補助金がばれることを恐れているのであろう。WTO(世界貿易機関)違反であるからだ。中国が、TPP(環太平洋経済連携協定)に参加したいと言っているが、国有企業の情報公開がネックで不可能である。

     

    (3)「中国のインターネット検索最大手、百度(バイドゥ)が36億ドル(約3800億円)の巨額を投じて買収すると発表してから、わずか数日後。中国ライブ配信サービス大手、歓聚集団(JOYY)にも11月18日、不正会計疑惑が持ち上がった。米投資会社のマディー・ウォーターズは、リポートで「中国の主要ライブ配信事業の90%に詐欺行為の不正があり、蜃気楼(しんきろう)だ」と断じた。JOYYは否定するが、ラッキンコーヒーやネット教育大手の北京世紀好未来教育科技(TAL)はマディーの指摘の後、不正会計の事実を公表した経緯がある」

     

    中国の主要ライブ配信事業は、90%に詐欺行為が見られるという。歓聚集団(JOYY)にもその疑いが掛っている。

     


    (4)「こうした状況に米当局も対応を急いでいる。政権内や議会で中国企業への不信感が高まっており、米証券取引委員会(SEC)は新たな規制導入の準備を進めている。米上場の中国企業は自国の監査法人に加え、米国の上場企業会計監視委員会(PCAOB)に登録する監査法人による監査も義務付けることが柱だ。中国の法律が立ちはだかり、現在はPCAOBは監査状況を検査することができない。米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(WSJ)によると、年内にも新規制案が公表される見通しだ」

     

    中国企業の不正行為に対処するため、米上場の中国企業は自国の監査法人に加え、米国の上場企業会計監視委員会に登録する監査法人監査も義務付ける。こういう二重監査体制を取らなければ、とても安心できないほど中国企業の信頼性は地に墜ちている。 

     

     

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    米国は、中国へのハイテク技術漏出に強い警戒をしている。中国政府系投資ファンドは、その警戒網をくぐって米ハイテク企業へ出資して技術窃取を試みている。ワシントンでは国家安全保障への影響を懸念する声が党派を超えて広がっているという。

     

    一方、米司法省が、今年1000人超の中国のスパイを出国させたと明らかにした。中国のスパイたちは研究員になりすまし、バイデン次期米政権を標的としたスパイ活動を繰り広げていたことが分かった。米国政府が30の都市で捜査を繰り広げ、ヒューストンの中国総領事館を閉鎖するなど厳しい取り締まりを続けるうちに、スパイたちは自ら出国したという。『朝鮮日報』(12月3日付)が伝えた。

     

    産業スパイと異なって、ハイテク企業への投資は形式的には合法的である。ただ、技術窃取という点では同じだ。共和党のクルーズ上院議員は、「中国企業による米企業・政府への傍若無人なスパイ活動がまかり通っている」と警鐘を鳴らしている。

     


    『フィナンシャル・タイムズ』(12月2日付)は、「
    御してもやまぬ中国の対米ハイテク投資」と題する記事を掲載した。

     

    米国が外国企業の投資規制を強化する中で、中国政府系ファンドによる重要技術分野への対米投資が依然続いている。

     

    (1)「重要品目の半導体分野ではピクセルワークス、ブラック・セサミ・テクノロジーズ、ライトICテクノロジーズの米3社が最近、中国の政府系ファンドの出資を受けた。中国のコンサルティング会社、清科集団によると、重要産業に重点投資する中国の戦略投資ファンドは1600社を超え、資産総額は推計4兆元(約64兆円)に達する」

     

    米国は、中国への半導体技術の漏出を警戒している。中国の政府系ファンドは、米国の半導体企業へ合法的に出資して、技術を手に入れようとしており、まんまと虚を突かれた形だ。中国の戦略投資ファンドは1600社を超え、資産総額は推計4兆元(約64兆円)に達するという。これが、世界中の最先端技術を狙っている。

     


    (2)「中国の政府系ファンドは経済政策の司令塔である国家発展改革委員会の指導の下で投資先を決定している。投資対象となるのは戦略的な新産業や、米国と肩を並べる産業育成を目指す半導体をはじめとする先端製造分野だ。米国の半導体3社への投資のうち、2社には国家集成電路産業投資基金(CICF)が関与している。CICFは14年、中国政府主導で200億ドル(約2兆1000億円)を集めて組成した半導体産業育成ファンドで、中国財務省が筆頭株主として名を連ねている」

     

    中国には、国家集成電路産業投資基金(CICF)が存在する。200億ドルの資金を擁する半導体産業育成ファンドである。中国は、自国で半導体技術の開発をするよりも、世界中からめぼしい技術を買い集める方式をとっている。促成栽培方式だが、基礎技術の不足している結果、手に入れた技術の実用化に手間取っている。中国半導体の自給率が、2019年でも15%台に止まっている理由だ。

     

    (3)「中国による対米ベンチャー投資は2年前にトランプ大統領が対米外国投資委員会(CFIUS)の企業審査を厳格化してから急減した。CFIUSは米政府の複数の省庁でつくる組織で、安全保障上の観点から外国企業による投資を審査・規制している。新たな規制により、バイオテクノロジーや半導体など「重要技術」に関わる投資案件をすべて審査するようになった。それまで審査対象は米企業への支配権を握る案件に限られていた。

     

    (4)「米調査会社ロジウム・グループによると、中国のベンチャーキャピタルによる19年の対米投資額は25億ドルと前年比ほぼ半減した。20年1~6月期は8億3000万ドルだった。ロジウムのアナリスト、アダム・ルイセンコ氏は重要産業とされる分野への投資がなお続いている理由について不明だと話す

     

    トランプ政権が、対中で急ブレーキを踏んだので重要技術の中国への漏出に待ったが掛っている。19年の中国による対米投資額は25億ドル、前年比ほぼ半減した。20年1~6月期は8億3000万ドル。年率換算では、約17億ドルになろう。18年を50億ドルとすれば、20年はその3分の1へ縮小する計算だ。

     


    (5)「前述のルイセンコ氏は、「中国の国策ファンドの多くは国家目標を達成するためならば世界中のどんな資産にでも投資する使命を担っている」と説明する。「CICFは数百社に上る巨大な国内ネットワークを持ち、複数の投資を経由して海外企業ともつながっている」という」

     

    中国は、米国だけに網を張っている訳でない。世界中へ鵜の目鷹の目である。特に、イスラエルに注目している。半導体技術で先端を走っているからだ。米国務長官がわざわざイスラエルへ飛び、「中国に警戒せよ」と促すほどである。米国がバイデン政権になれば、同盟国を対中警戒で結束させるであろう。

      


     

     

     

     


    日本人は、「自虐国民」と言われている。中韓などからは、今なお戦争責任や植民地責任を問われている。すべて、法的には解決済みだが、それでも「間欠泉」のように吹き出てくる。自信喪失感に襲われるが、世界の日本を見る目は全く別である。

     

    「課題先進国」としての日本が、いかに高齢化に取り組み克服しつつあるか。世界の模範国とさえ評価する、世界の一流メディアが論陣を張っている。また、世界101ヶ国の中で、移住したい国として検索された実績から、日本はカナダに次いで2位にランクされた。米国、英国、カナダ、豪州など主要国では、日本が1位である。また、南・東南・東アジアでも日本がもっとも人気が高く1位になった。

     


    英紙『フィナンシャル・タイムズ』(11月29日付)は、「豊かな高齢ニッポン『世界のお手本に』」と題する社説を掲載した。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(FT)は先月、「日本からの教訓」のタイトルで特集記事を連載した。金融危機に対処し、その後、金融・経済の再建に取り組むなかで、日本が経験した成功と失敗には、他の先進国が学ぶべき点が多々ある。日本の経験は、豊かな高齢化社会を実現する手本と捉えるべきだ。

     

    (1)「1990年代初めの不動産バブル崩壊から30年間、日本では国内総生産(GDP)も物価もほぼ横ばいが続いた。日本の経験はしばしば「停滞」と受け止められる。しかし、これは見当違いだ。90年代のバブル崩壊後、経済全体は低成長に甘んじたが、国民一人一人の生活水準の向上という面では、他の先進諸国に見劣りしないどころか、しばしばより良い成果を上げてきた。経済の規模が伸び悩んでも、人口が減少したため、一人あたり国民所得は他国に引けを取らない。失業や貧富の格差も、欧米諸国からみればうらやましいほど低水準だ」

     

    日本経済の躓きは、バブル経済の崩壊である。不動産と株価の同時暴落という事態に直面した。ただ、製造業が健在であったことが、日本経済の骨格を守ることができた。雇用確保で大きな受け皿になったからだ。識者の中には、製造業を放棄してサービス業一本で成長すべしという「没論理」を主張する向きもいたが、製造業こそ日本経済の宝である。製造業を基盤に、新たな知的サービス業が生まれるのである。

     


    (2)「日本は他の先進国の多くと同様に人口の高齢化に直面している。出生率は世界でも最低水準にあり、人口が減少している。過剰貯蓄の構造もあり、所得の増加が内需につながらず、実際の成長率は潜在成長率を下回っている。若者は親の世代が得た機会にも恵まれず、不満を募らせている。女性と高齢者の就業促進の効果もあって、労働力人口は比較的安定しており、民間企業の投資と技術革新によって生産性も改善している」

     

    日本の合計特殊出生率は、1.42(2018年)である。世界で183位だ。日本より低い国は、ギリシャ、イタリア、韓国、台湾がある。中国は、出生データを偽造して1.63と称しているが、現実は1前後に悪化しているはず。FTが、日本を高く評価しているのは、失業率の低さであろう。日本経済が、堅実である何よりの証拠である。

     

    (3)「日本に比べると、欧米の人口動態は経済全体の成長に有利だ。勤労世帯に手厚い公的支援を提供するフランスやスウェーデンをはじめ、大方の国で日本よりも出生率が高い。移民の流入も以前から活発だ。ただ、移民も高齢化するため、流入ペースが落ちれば人口の伸びにもマイナスになる。欧米で移民排斥の動きが強まれば、日本に状況が近づく可能性がある」

     

    日本は、移民という「人口増加」の便法を生かし切れずにいる。その代わり、現役を引退した高齢者が、「健康保持」を理由に勤労に励むという他国に見られない「勤労観」が幸いしている。労働を「苦役」とするのでない。「悦び」に変える独特の勤労観が、日本経済を支えている。世界の長寿国となっている背景でもあるのだ。

     

    (4)「人口動態が大きく変わるなかで、日本が諸外国に比べても、社会の安定性を保ち、生活水準を改善してきたことは称賛に値する。最大の教訓は、人口が増えなくても、国民の物質的な豊かさを高めることができるということだ。他国が高齢化の問題に対処する際の道しるべとなるだろう。その失敗も含め、日本が来た道を検証することは、他の国にも大いに参考になる。全体に目を向ければ、「日本化」は必ずしも最悪のシナリオではなかったと分かるだろう」

     

    日本が、下線のような結果を実現できたのは、製造業の健在と前向きな勤労観の存在であろう。中国では、退職年齢引上げ(現在、男子60歳、女子55歳)引上げ案を発表したところ、国民から不満が殺到している。働きたくないという労働忌避と、退職年齢引上げによる新規雇用減少を懸念するためだ。日本とは別世界である。

     

    『ニューズウィーク』(11月30日付)は、「世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位 1位は...」と題する記事を掲載した。

     

    世界の人たちはどの国に憧れを抱き、暮らしたいと思っているのだろうか?グーグルの検索データからはじき出されたのは、カナダがもっとも人気が高く、続いて日本という結果だった。米誌フォーブスなどが伝えた。

     

    調査を行ったのは、米フィンテック・スタートアップ企業のレミトリーだ。同社によると、「海外移住するには」というフレーズが検索された回数は、2020年1月から10月の間に29%増加したという。そこで同社は、世界101カ国の月ごとの検索データをもとに、海外移住に関連したフレーズと目的地となる国を分析。各国ごとにもっとも検索された国をはじき出し、ランク付けした。

     


    (5)「移住したい国として世界でもっとも検索されたのは、カナダだった。移住先としてカナダを検索した人が多かった国は30カ国に上ったという。レミトリーは、世界平和指数で上位に入るほど安全な国であること、失業率が低いこと、移住の際にビザ取得の選択肢が多いこと、地元の人たちがフレンドリーであること、景色が美しいことなどが理由だとしている

     

    日本を検索した人が多かった国は13ヶ国である。下線を引いた条件である

    1)世界平和指数で上位に入るほど安全な国である

    2)失業率が低い

    3)移住の際にビザ取得の選択肢が多い

    4)地元の人たちがフレンドリーである

    5)景色が美しい

     

    これら5項目は、ほぼ日本に当てはまる。日本は、特に移住ビザの条件を緩和しており、高度技術者はフリーパスといってもよいほど。安倍政権下で緩和されている。

     

     


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    FRB(米連邦準備制度理事会)は、2023年まで実質ゼロ金利政策を続けると発表

    して以来、ドル安がはっきりしてきた。これを受けて、円高が進んでいる。すでに1ドル=103円も珍しくない状況になっている。さらに、来年は静かに1ドル=100円突破になりそうだという。

     

    日本では、「円高不況論」が根強い。だが、日米企業物価に基づく購買力平価を見れば、1ドル=93円見当である。つまり、実勢相場が93円を突破する円高になれば、企業の輸出採算は悪化する。現状では、そこまでの円高を予想していない。心配ご無用、というところだ。

     

    『ロイター』(11月26日付)は、「来年のドル・円、静かに100円割れかー佐々木融氏」と題する記事を掲載した。

     

    J.P.モルガンは今週、来年末までの為替相場予想を公表した。その中でドル/円相場に関しては100円を割り込み、98円まで下落するとの予想を示した。米国の追加経済対策は来年1~3月期の終わり頃まで合意が得られないとみているため、米国の1~3月期の実質国内総生産(GDP)成長率はマイナスとなる見通しだ。

     


    (1)「想定される経済環境の中でも、米FRBが利上げを必要と感じるところまでインフレ率が上昇しなければ、利上げ期待も高まらないだろう。その結果、「経常赤字国の米国が名目政策金利をゼロ、実質金利はマイナス」という状況は続くので、米ドルが少なくとも対円で下落するトレンドは、来年も続くと予想される。しかし、1兆ドル程度と予想される追加経済対策は46月期以降の成長を高めることになり、また、来年後半はワクチンが広く配布され、経済活動も次第に回復の度合いを強めていくことになるだろう」

     

    FRBが、2023年まで実質ゼロ金利を継続すると発表していることから、ドル安基調が続く見通しが強くなった。米国経済は、来年後半にはワクチン投与が行われるので様相は変ってくる。

     

    (2)「このように想定される経済環境の中でも、米連邦準備理事会(FRB)が利上げを必要と感じるところまでインフレ率が上昇しなければ、利上げ期待も高まらないだろう。その結果、「経常赤字国の米国が名目政策金利をゼロ、実質金利はマイナス」という状況は続くので、米ドルが少なくとも対円で下落するトレンドは、来年も続くと予想される。国際金融危機(GFC、リーマンショック)からの回復過程では、FRBは約7年間政策金利をゼロ%に据え置いた。その最初の約2年半程度(2009年3月2011年7月)の間に、米ドルは名目実効レートベースで約18%程度下落した。今年は4月以降、まだ10%程度しか下落していない。しかも、GFC後の回復過程に比べ、現状の米10年金利は現在3分の1程度の水準しかない」

     

    ドルに関する見方はそれぞれ異なる。例えばゴールドマン・サックスのアナリストは、今後12カ月にドルが6%下落すると予想している。一方、INGのアナリストは最大で10%の下げを見込んでいる。シティは、ドルが2021年にさらに20%下落すると予測するなど多様である。以上は、『ウォール・ストリート・ジャーナル』(11月27日付)が報じた。

     


    (3)「一方で、円は現状の割安度合いを維持できないだろう。円は実質実効レートベースでは、依然として過去30年間の平均に比べ20%程度割安となっている。今年の年初までは積極的な対外直接投資と対外証券投資により、円の割安度合いは維持されてきた。だが、新型コロナウィルス感染が世界的に拡大している中で、日本企業の対外直接投資は、過去最大を記録した昨年のペースに比べて、既に半分以下に落ち込んでいる」

     

    日本企業の対外直接投資は、今年に入って昨年の半分以下のペースに落ちている。これは、パンデミックによる世界経済の混乱が原因である。こうして、日本企業のドル需要は低下しているので、ドル安基調に拍車をかける。

     

    (4)「各国の金利差が無くなり、先行き不透明感から対外投資が以前に比べれば手控えられる状況の下で、来年の円相場は、これまでのようにリスクセンチメントによる影響より、ファンダメンタルズから受ける影響の方が大きくなるだろう。日本は、依然として高水準の経常黒字、これまでの旺盛な対外投資によって維持されてきた割安な円水準、実質金利の上昇などの観点からすると、2021年に円が上昇する可能性は比較的高いと考えられる」

     

    日本が、これまで取ってきた特異な金融政策は、欧米の追随によって突飛なものではなくなってきた。円が、上昇する局面にあることを認めるほかない。21年は、そういう年となろう。

     


    (5)「世界的な株価上昇が続く中で、ドル/円相場と日経平均株価の相関は今後も崩れたままの状態となるだろう。J.P.モルガンは、来年もドル/円相場の下落トレンドと日経平均株価の上昇トレンドは並立すると予想している」

     

    ここでの指摘は、極めて重要である。円高になっても日経平均株価は上昇するというのである。私が、この「謎解き」をしたい。

     

    日本の輸出に直接関わるのは「企業物価・購買力平価」であること。円の実勢相場が、これを上回っている限り輸出業者は損にならない。円高になっても、日経平均株価が上がるのは、日本の「企業物価・購買力平価」が低位維持である結果だ。

     


    そこで、「企業物価・購買力平価」を見ると、日本は2013年5月以来、円の実勢相場を一貫して下回っていることがわかる。つまり、円の実勢相場の変動にも関わらず、日本の企業物価の購買力平価は、ドル=円相場を下回っているのだ。日本の製造業が、米国よりも高い生産性を上げているので、企業物価が安定していることを意味する。

     

    企業物価・購買力平価(国際通貨研究所調べ)は、11月19日現在で94円58銭である。円相場との差は、11月19日現在で9円25銭となる。円相場で輸出成約しても、9円余の「差益」が出ている計算である。今後、円が100円を突破しても、企業物価・購買力平価94円台へ急迫しない限り、「静かな円高」と言えそうだ。

     

     

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