米議会が、在韓米軍の駐留規模を現行2万8500人で維持する内容が含まれた国防授権法(NDAA)の処理に合意したと、米政府系放送局のボイス・オブ・アメリカ(VOA)が4日、報じた。
これまで、トランプ政権は在韓米軍の規模縮小を臭わせる発言を繰返してきた。米韓両国は10月14日(現地時間)、米国防総省で開かれた第52回米韓安保協議会(SCM)において防衛費分担金問題などを巡って衝突した。共同声明からは、昨年とは異なり「在韓米軍の現水準を維持」という表現が取り除かれ、予定されていた両国国防トップの記者会見も取り消されるほど険悪化していた。
こういう経緯があるだけに、今回の在韓米軍の規模を維持する米議会の決定は、韓国側をホットさせている。これまで韓国大統領府では、将来の南北宥和のためには在韓米軍の存在が障害になるという「邪魔者」扱いする議論も見られ、米国側をいらつかせてきた。だが、現実に在韓米軍の縮小論が出ると、早速ワシントン詣でするという矛楯した行動を取ってきた。今回の米議会の決定は、韓国側を安心させている。
『東亜日報』(12月5日付)は、「米議会『在韓米軍の規模維持』に合意、バイデン氏の意向を反映か」と題する記事を掲載した。
(1)「米議会が、在韓米軍の駐留規模を現行2万8500人で維持する内容が含まれた国防授権法(NDAA)の処理に合意したと、米政府系放送局のボイス・オブ・アメリカ(VOA)が4日、報じた。バイデン氏の大統領選勝利後、初めて処理されるNDAAで、同盟を重視するバイデン政権の意向が反映されたとみられる。バイデン氏は、在韓米軍を縮小する可能性を示唆してきたトランプ政権に反対し、同盟重視を強調してきた」
国防授権法は、米国の国防予算の大枠を決めるために議会が毎年通す法律である。ここへ、在韓米軍の駐留規模まで明記したことは、大統領が勝手に変更できないという意味でもある。その意味で、極めて重い意味を持っている。しかし、韓国側はこれで今後も安心とはいかない悩みもある。22年予算では、どのような扱いになるか不明であるからだ。
(2)「合意案には、在韓米軍の規模削減に予算を使用できないようにする条項が含まれた。ただし、次の条件が満たされれば縮小が可能となる。
1)米国の安全保障の利益に合致
2)域内の同盟の安全保障を深刻に傷つけず
3)韓国と日本を含む同盟と適切に協議したことを議会に立証した場合」
在韓米軍は、陸軍が主体である。最近、米軍における陸軍の役割が変っており、南シナ海防衛という点で陸軍を重視するようになっている。そこで、韓国へ2万8500人もの兵員を固定させることのデメリットが議論されている。
前記の3項目による縮小可能性が上げられている。1)「米国の安全保障の利益に合致」は、微妙である。インド太平洋構想で「クアッド」(日本・米国・豪州・インド)が、一体的に中国へ対応する時代に、米同盟国の韓国が協力しないとなれば、これは、韓国の在韓米軍縮小論と結びつき易いであろう。米国の安全保障に韓国が協力しないならば、在韓米軍縮小論と結びつくだろう。
3)「韓国と日本を含む同盟と適切に協議したこと」も韓国には気になる項目であろう。日本が、在韓米軍の問題について協議できる場を与えられたとも読める。これは、在日米軍が、在韓米軍の後方基地として機能している点を加味している。この点について、韓国の認識は極めて希薄である。韓国防衛には、日本も米国に基地を提供しているという意味で間接的に寄与しているのだ。それにも関わらず、「反日運動」である。心得違いというべきだろう。
(3)「トランプ氏が昨年任命したマーク・ミリー統合参謀本部議長は3日、オンラインフォーラムで、「米軍の海外駐留方式は選択的でなければならない」とし、韓国と中東湾岸地域の米軍駐留方式を「永久駐留」から「循環駐留」に変える必要性を指摘した。ミリー氏は、韓国で北朝鮮との武力衝突が発生すれば、非戦闘員である米軍の家族が被害を受ける恐れがあるとし、このように主張した」
ミリー統合参謀本部議長は、在韓米軍の「循環駐留」という考え方を提示している。日本は、「永久駐留」だが、韓国と中東湾岸地域については、腰掛け的なものにするとしている。韓国は、身勝手なことばかり言わず、米側の要請にも答えるべきだろう。