勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 米国経済ニュース時評

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    韓国自動車業界トップの現代自は、7~9月期に営業赤字へ転落した。理由は、品質管理問題という。具体的には、米国でのエンジン・トラブル解決費用の発生である。EV(電気自動車)でも相次ぎ発火事件を起こしている。こちらは、蓄電池の問題であるが、現代自にとってはこの分野が鬼門のようだ。

     

    『聯合ニュース』(10月26日付)は、「現代自が営業赤字転落、品質関連費用の増加響く 7~9月」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「韓国の現代自動車が26日に発表した7~9月期の連結決算によると、営業損失が3138億ウォン(約290億円)となり、赤字に転落した。新型コロナウイルス感染拡大による販売減と、品質管理に関するコスト増が影響した。エンジンの品質管理に関し、2兆1352億ウォン(約1973億円)のコストが発生したことが原因である。7~9月期の売上高は2.3%増の27兆5758億ウォン(約2兆5480億円)、純損失は1888億ウォン(約175億円)だった

     

    現代・起亜自動車が9月3日(現地時間)、火災を引き起こす危険のあるブレーキのオイル漏れを修理するため米国で59万1000台をリコールすると発表した。リコール対象は起亜自動車の2013年~2015年の中型セダンオプティマと2014年~2015年のSUVソレント44万台、現代自動車の2013年~2015年のSUVサンタフェ15万1000台。米安全規制当局の発表では、ブレーキオイル漏れによる火災は現代自動車で15件、起亜自動車で8件報告されている。以上は、『レコードチャイナ』(9月4日付)が伝えた。

     


    エンジンといえば、人間の心臓に当る。ここで、発火事故が米国で起こっている。いずれも、5年以上も前の製品である。部分的な改修に止まらず、新品のエンジンに交換すれば、その費用は莫大となろう。

     

    世界的な自動車企業は、売上高営業利益率が5%を割ると「危険ライン」とされている。税金や人件費を払った残りで、十分な研究開発費が捻出できないというのが理由である。現代自の営業利益が、7~9月期に損失であるのは由々しき事態である。

     

    EVでの発火事故も気になる。これまで発生したコナEVの火災について、現代自が事故の原因を明らかにしていないことだ。これまでの事故から火災の原因となるだけの共通点を見いだすのも容易ではない。以下は、『朝鮮日報』(6月14日付)が報じた。

     

    充電器をつないであったかどうか、充電が終わっていたかどうかなど、状況がそれぞれ異なっているためだ。このため、コナEVのオーナーたちは不安な日々を送っている。原因が解明されないため対策を講じることができず、自分の車がいつ燃えだすか分からないといった不安で胸がいっぱいなのだ。幸い、これまでの事故による人命被害はなかったものの、もし車の中に人が乗っていたり、隣の車に火が燃え移ったりしていたら、どうなっていただろうか。

     

    コナEVのオーナーたちの間では「車両火災は致命的な事故なのに、現代自は車を販売したらしっ放しで、何も対策を講じようとしない」といった不満の声が上がっている。特に2018年にはコナEVを生産する蔚山工場でコナEVによる火災が2度も発生した。こうしたことが明るみに出たことで、「現代自は事故原因を内部的にすでに把握しておきながらも、実は隠しているのではないか」「車両が危険だということを知っていながらも、発売し続けているのではないか」と疑問視する声が上がっている。


    こういう事故について、現代自が詳細な情報を発表しないことが、現代自製品の販売にブレーキを掛けて当然であろう。



    (2)「現代の関係者は、「品質管理に関する費用を除けば、7~9月期の営業利益は市場の予想値(9458億ウォン=約874億円)を大きく上回る水準」と話した。7~9月期の世界販売台数(卸売りベース)は99万7842台で、前年同期比9.6%減少した。国内販売は同21.9%増の19万9051台、海外販売は15.0%減の79万8791台だった」

     

    現代自は、品質管理に関する費用を除けば、7~9月期の営業利益は市場の予想値(9458億ウォン=約874億円)を大きく上回ったという。7~9月期の売上高は27兆5758億ウォン(約2兆5480億円)である。会社側の言い分をそのまま受入れて、品質管理費用2兆1352億ウォン(約1973億円)をゼロとすれば、営業利益は2兆4491億ウォン(2263億円)となろう。売上高営業利益率が8.9%になる。現代自の営業利益率は危機ライン5%を上回る。内部留保がたっぷりあれば、7~9月期の純損失1888億ウォン(約175億円)を避けられたはずだ。その意味で、経営基盤は脆弱である。

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    中国の海洋進出が活発化するとともに、アジアでの安全保障問題が議論を呼んでいる。中国は、どこの国を侵略するかという仮定に立って、米国が最も防衛価値のある国を調査した。それによると、日本が1位であり以下、豪州、韓国、台湾という順位になった。

     

    米国の有力シンクタンク・戦略国際問題研究所(CSIS)は対中国政策について、米国や日本、欧州のオピニオンリーダー840人あまりからの意見を集約化した。回答したオピニオンリーダーたちは、経済、安全保障、人権、民主主義、教育などさまざまな分野の専門家である。リーダーたちは、国際情勢およびアジア情勢の議論に影響力のある有識者でCSISが選んだ。米国内で440人、欧州とアジアで409人から回答を得た。8月3~31日まで実施され、日本からは59人が参加した。

     

    『大紀元』(10月25日付)は、「防衛価値が最も高いのは日本、中国の軍事脅威巡りー米CSISが各国有識者に調査」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「調査によると、400人あまりの米国のオピニオンリーダーたちは、中国の軍事的脅威から同盟国や友好国を守るためにかなりのリスクを冒す用意があると考えている。中国からの軍事脅威にさらされた同盟国を防衛する価値を10段階で評価した場合、米オピニオンリーダーの間では次のような結果が出た。日本(8.86点)が最も高い。次にオーストラリア (8.71点) 、韓国 (8.60点) 、台湾 (7.93点) 、そして南シナ海における同盟国・パートナー国 (7.12点) が続いた。また、アジアと欧州のオピニオンリーダーたちの74%は、中国と関係を損なっても、米国とのパートナー協力関係を優先にしたいと答えた」

     

    米国の有識者400人は、中国の軍事的脅威から同盟国を防衛する価値を10段階で示したところ、日本が(8.86点)で1位になった。後は、豪州・韓国・台湾の順位である。韓国は、米韓同盟がありながらガタガタしているのは、決して好結果を生まないということを示唆している。

     

    (2)「米中間で軍事衝突に発展する可能性は「あり得るが、低い」と考える割合は、米オピニオンリーダー(83%)、欧州・アジアのオピニオンリーダー(74%)、米世論(60%)といずれも6割以上だった。また、国家安全保障の専門家のうち、79%が太平洋での中国との紛争では、今は米国が勝利すると考えているが、10年後の場合、勝利の確信は54%まで減っている」

     

    米中の軍事紛争を予想するのが60%以上もあるのは要注意である。ただ、「79%が太平洋での中国との紛争では、今は米国が勝利すると考えているが、10年後の場合、勝利の確信は54%まで減る」のは、中国経済を過大評価している結果だ。そのようなことになる可能性は小さい。これが、私の一貫した見方だ。中国経済の構造的な弱点を知って欲しいと思う。きょう発行のメルマガ202号をぜひ一読していただきたい。

     

    (3)「中国の人権問題については、米国、欧州、アジアのオピニオンリーダー、そして米世論ともに人権問題への促進を重視するとの意見が7割を占める。彼らは、香港、チベット、新疆ウイグル自治区に関する人権問題を優先的に取り組むべきだと考えており、具体策として、中国政府に対する非難声明と関与者への経済制裁の組み合わせが適切だとした」

     

    中国の人権弾圧は、世界への挑戦である。放置してはならない問題だ。

     


    (4)「経済政策では、オピニオンリーダーのわずか14%が、米国は中国が自由市場経済になることを奨励すべきだと信じている。また、米国のリーダーの71%は、中国共産党政権で米国の経済的利益は損なわれたとみている。CSISの報告執筆者は、10年前と比較して、考え方が著しく変化したとみている。「米国および米国のリーダーたちは、もはや中国が自由市場経済に変わることがゴールだとはみていない」とCSISのスコット・ケネディ中国経済主席は香港英字紙『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』に語っている」

     

    自由世界の識者は、中国が市場経済へ戻ることはないと見ている。習近平という独裁者の出現が、中国社会の脆弱性を雄弁に物語っている。アジア型共産主義の最大欠陥であろう。

     

    (5)「中国人民解放軍と深い繋がりのある通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)の第5世代移動通信システム(5G)の排除について、米国では71%、アジアと欧州のオピニオンリーダーの67%が支持を示した。さらに、半導体事業や部品の大手メーカーを持つ国の回答者である日本(85%)、台湾(82%)、韓国(76%)は、ファーウェイの5G市場への参入禁止に強く支持を示している」

     

    日本・台湾・韓国の有識者が、ファーウェイ排除に8割前後が賛成している。ファーウェイの危険性を認識している結果だ。

     


    (6)「欧州とアジアのリーダーは、中国経済とのデカップリングには消極的な数字を示しているが、米国が主導する5Gファーウェイ排除は支持する傾向にある。ファーウェイを禁止したいと考えるオピニオンリーダーのなかで、ハイテク企業を有する台湾(54%)と日本(44%)の回答者はより強硬な立場を示しており、中国のハイテク企業との取引禁止を支持している

     

    中国経済とのデカップリングに賛成する国は、台湾と日本で40~50%台に達している。日本はTTP(環太平洋経済連携協定)への期待が強いから、中国とのデカップリングを切望する比率を高めているのであろう。TPPは本来、中国排除の目的で結成されている。中国デカップリングそのものだ。


     

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    韓国は不思議な国である。国民は、安全保障の相手国として圧倒的に米国へ依存している。だが、文政権はその米国と隙間風をつくり、中朝へ親愛感を示すという「ねじれ現象」である。国民と文政権の間で、米国への親近感が異なるのは、文政権に根本的な問題がある。

     

    「インド太平洋構想」でも、文政権は距離を置いている。思想的に「親中朝派」の文政権では、インド太平洋構想に加わることが、中朝に対する大変な「裏切り」という自責の念を持っているのであろう。米韓同盟がありながら、米国と敵対する中国へ秋波を送る。戦国時代であれば、韓国は裏切り国として「成敗」を受ける立場だ。

     

    『朝鮮日報』(10月24日付)は、「バイデンが当選しても韓国の安全保障は危うい」と題する寄稿を掲載した。筆者は、チェ・ガン・アサン政策研究院副院長である。

     

    米大統領選挙は、韓国の生存に大きな影響を与える。米国は、中国や日本と比較して、道徳的価値と韓半島(朝鮮半島)に対する領土的野心という面で「韓国が頼れる同盟国」といった意識が韓国には存在する。米世論調査機関のピュー・リサーチ・センターによると、トランプ大統領に対する韓国人の好感度は17%にとどまっているが、米国への好感度は59%に上るなど、調査対象となった13カ国のうち最も高かった。

     


    (1)「韓国の安保を巡る状況は、構造的に改善が困難な局面へと突入した。5000万人の国民の生存が韓国の意志とは関係なく、米国や中国、そして北朝鮮の決定によって決着が着くのではないかといった不安は拭えない。次の大統領がトランプ大統領であれバイデン候補であれ、「米国優先主義」がさらに強化された米国外交政策と向き合うようになる恐れがある。トランプ大統領の中国政策が手荒いと非難されてはいるが、中国の浮上が米国にとって最大の脅威だという見方は、共和党と民主党の間で了解済みの案件だ。米国社会内で悪化した中国に対する世論を考慮すると、「経済は中国、安保は米国」といった立場を維持するのは容易でない」

     

    日本では、日米安全保障条約を完全に信頼しているので、安全保障問題で孤立感を持つことはない。韓国ではそれが逆である。米国依存でなく、中国依存という政治グループ(文政権支持派)がいるから驚かされる。国論が統一されていない、バラバラの国である。韓国では、「経済は中国、安保は米国」という。だが、「安保も中国」という特殊グループが文政権には入り込んで、「獅子身中の虫」の悪さをしているのだ。

     


    (2)「トランプ大統領のアプローチが、南北の和解と協力に重点を置いている韓国政府と互いに通じてはいる。しかし、この裏にはトランプ大統領が韓米同盟を取引対象としかねないという変数が存在する。トランプ大統領にとって重要なのは米朝間の対話が与える宣伝効果であるため、北朝鮮から一部の非核化措置を引き出すために軍事演習の縮小、あるいは中断、さらには在韓米軍の削減を選択する可能性もある」

     

    韓国が、米国から見放されるという危機感を持っているのは、芯から米国と一体化するという意識が欠如しているからだ。「親中朝」という思いが、いつも頭の隅にあるから、米国も韓国を「外様」扱いしている。

     

    (3)「バイデン候補はトランプ大統領が掲げた「米国優先主義」から脱し、同盟関係を復元、米国の国際的リーダーシップを回復すると約束した。対話による北核問題の解決を強調している点は、「戦略的忍耐」と表現しつつも、北朝鮮の非核化に手をこまねいていた「オバマ2.0」の前轍(ぜんてつ)を踏む恐れもあり、懸念される。民主党政権の内部分裂で政策に混乱が生じる恐れがあり、バイデン陣営内の軍縮専門家らは北朝鮮を核国家として受け入れる軍縮会談の開催を主張しているが、これこそまさに北朝鮮がこれまで要求してきたことであり、韓国の安全保障をさらに危うくするだろう」

     

    米軍が、日本から撤退するとか兵員削減という話は聞かない。だが、韓国の場合、しょっちゅうそういう議論が出るのは、米韓同盟の親密さが掛けているからであろう。中国への秋波は、韓国の安全保障を危険に追い込むことを知るべきだろう。米台関係と米韓関係を比べて、米韓同盟の関係性が希薄化しているのは、韓国文政権の「中国秋波」が原因であろう。

     


    (4)「韓国は、北朝鮮の非核化が放棄できない目標であるという点を明確にしなければならない。北朝鮮を核国家として受け入れる「スモール・ディール」が持つ危険性を指摘するとともに、北朝鮮が非核化の意志を明確に示す場合は制裁を緩和し、関係改善も進めていくという原則を固守していかなければならない。日本との関係改善を模索し、中国に対しては自由民主主義と市場経済の価値と規範に忠実な姿勢で対応していかなければならない」

     

    日韓関係が、喧嘩別れ状態である。米韓同盟も隙間風。こういう状況で、韓国の安全保障が完璧を期せるはずがない。中国からすれば、この迷える韓国を「射止める」べく動くのは当然である。「僚友」のない国が、安全であるはずがないのだ。

     

     

    テイカカズラ
       

    中国の習近平国家主席が下した外交戦略は、ことごとく失敗している。香港への安全維持法導入、ヒマラヤ山中でのインド軍急襲、戦狼外交で他国を侮辱した発言がもたらすブーメランなど、すべて中国を危機に追い込んでいる。中国の外交判断の誤りがもたらした「オーバーラン」である。

     

    これら強硬手段は、習氏の民族主義によって発動されたものだ。習氏の国内での位置を高める狙いで使われたのである。これらが、中国の世界的評価を引下げており、「嫌中派」を増やす結果になった。先進国による「反中国意識」は、1989年の天安門事件以来の高さである。

     

    問題は、中国がこういう事態を深刻に受け止めていないことだ。それだけに、暴走に歯止めがかからなくなっている。懸念されるのは、台湾への軍事行動である。米大統領選後の混乱に乗じて台湾所有の島嶼占領に出るのでは、と危惧されている。米軍は、すでにこの点を織りこんで警戒体制を敷いている。

     


    『フィナンシャル・タイムズ』(10月20日付)は、「高まる台湾巡る米中衝突リスク」と題する記事を掲載した。

     

    米大統領選では、投票直前の10月に選挙戦に重大な影響を与える「オクトーバー・サプライズ」が起きるというのは言い古されてきた指摘だ。それに比べてあまり言われないのは、中国が米国の今の政治的混乱に乗じて11月か12月に台湾に対し何らかの行動を起こし、国際情勢が深刻な事態に陥るリスクがあるという点だ。米選挙戦を巡る騒ぎで見えづらくなっているが、中国の台湾に対する言動は攻撃性を高めている。台湾は事実上の独立国家だが、中国政府は自国の領土の一部だと主張しており、容認し難いこの「分離主義」と闘うためには軍事力の行使も辞さないとしている。

     

    (1)「中国軍機はここへきて頻繁に台湾と中国を隔てる台湾海峡の「中間線」を何度も定期的に越えて台湾側に侵入し、台湾は軍用機を緊急発進させる対応を迫られている。15日には、南シナ海の北部に位置し台湾が実効支配する東沙諸島(プラタス諸島)へ向かう台湾の民間チャーター機が、フライトの途中で引き返さざるを得なくなった。香港の航空管制官が詳細不明の危険があるために同空域は閉鎖されていると通告したためだ」

     

    台湾が実効支配する東沙諸島(プラタス諸島)が、中国に狙われている島嶼とされる。習近平氏は、ここを抑えて「勝利」を宣伝し、台湾の士気を挫く戦術に出ると見られているのだ。

     

    (2)「何十年にもわたり、中国による台湾侵略の脅威は米国のにらみによって阻止されてきた。米政府は台湾の安全を保障するとまでは明言していない。だが、その代わり戦略的に曖昧さを残す政策を貫いてきた。つまり、台湾に武器を売却しつつも、いざとなれば米国が台湾防衛のために動くかどうかについては明確にしてこなかった」

     

    最近の米軍当局者は、台湾を防衛すると明言している。曖昧にはしていない。

     

    (3)「1996年の「台湾海峡危機」では、台湾周辺にミサイルを発射した中国に対し、米国は空母を派遣してけん制した。しかし、中国は以来、軍事力を飛躍的に増強させてきた。一方、米国は今、大統領選を巡ってかつてないほど国の分断が深まり、全く余裕を失っている。こうした状況下で米国が従来のように台湾を守り続けるかどうかについて中国政府が懐疑的になっている可能性はある」

     

    政治と国防は別である。この点の区別が、この記事ではできていない。同様の誤解を習近平氏がすれば悲劇である。大統領選後の混乱(票数の未確認問題)は、最終的には最高裁へ持込まれるだろう。その時点で台湾問題が起これば、混乱回避で現職の再任という形になろう。

     

    (4)「今回の危機の背景には、習近平(シー・ジンピン)氏が中国共産党総書記に就任した2012年以降、中国政府が台湾に対して、より強気な立場を取るようになってきたことがある。習氏は、台湾との「再統一」は自らが最も実現したいと考えている「中華民族の偉大な復興」に不可欠と明言している。また、台湾問題はもはや「世代から世代へ」先送りすればよい問題ではないとも述べている。習氏は台湾を併合することが、自らが毛沢東に並ぶ中国の偉大な指導者となる一歩と考えているかもしれない」

     

    習氏のこの「思い上がり」が、台湾攻撃に踏み切らせる。これが、結果的に習氏の政治的寿命を縮めるリスクを含んでいる。自惚れほど恐ろしいものはない。

     

    (5)「むしろ中国政府は、小規模な軍事的、経済的、心理的な介入を何度も繰り返して、台湾の士気と自治能力をくじいていく戦略に出る可能性の方が高そうだ。東沙島には台湾が建設した空港や台湾当局関係の建物は複数あるが、一般住民はいない。まさにこの東沙島へのアクセスを遮断するといった措置を取る可能性はある。これに台湾が武力で応じれば、中国政府に反撃する口実を与えることになりかねない。一方、何の対抗措置も取らなければ弱腰と見られ、象徴的な敗北を期すことになる」

     

    インド太平洋戦略の4ヶ国「クワッド」(日米豪印戦略会議)が、アジア版NATOへ発展するチャンスを早めるだけだ。これが、NATO(北大西洋条約機構)と連携すれば、中国は台湾へ手も足も出せなくなる。

     

    (6)「これ以外に禁輸措置を取ったり、領土を少しずつ奪ったりして、台湾への圧力を段階的に強めていく方法もある。しかし、その場合、危険なのは中国政府が米政府の反応を読み違える可能性だ。米国は確かに政治的混乱にあるが、太平洋地域における覇権国としての地位を守り、仲間の民主主義国に危機が及べば立ち上がって守るというのは党を超えた合意となっている」

     

    インド太平洋戦略は、中国の横暴を抑止する目的でクワッド4ヶ国によって推進されている。中国が、これを見誤ると危険である。

     

    (7)「第1次世界大戦、第2次世界大戦を含め、覇権国間の戦争というのは、往々にして一方の政府が他方の政府の出方を読み誤って勃発している。歴史学者のマーガレット・マクミラン氏(編集注、英首相だった故ロイド・ジョージのひ孫)は「危険が現実のものとなるのは、人々が相手の意図を読み取ろうとして、その意図を間違って解釈しだすときだ」と指摘する。台湾についても同じことが容易に起こり得る」

     

    日本が、この最適例である。太平洋戦争を始めて1~2年で米国と講和を結ぶ計画であった。それが、ついに原爆2発を浴びる結末となった。中国が米国の出方を見誤れば、習氏の政治生命はそこで終わり、中国解体(民主化)という大きな分岐点が口を開けて待っているはずだ。

     

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    韓国は、自らの力を過信している。米中対立の中で、「外交バランサー」になるという夢を捨てきれないようだ。2017年11月、文政権発足から半年後の米韓首脳会談で、インド太平洋構想の重要性を説明したトランプ大統領に対し、文大統領は最後まで同意しなかった。会談後の共同発表文はトランプ氏の発言だけを紹介し、軍事同盟国間の会談としては異例の形をとったのである。

     

    韓国は代替策として東南アジア諸国連合(ASEAN)との経済協力を深める独自の「新南方政策」を打ち出した。その後も米国からインド太平洋戦略への参加を求められと、『新南方政策』と『インド太平洋構想』との間の調和と協力を推進する」とかわした。以上は、『日本経済新聞 電子版』(10月23日付)が報じた。

     

    こういう韓国の「ヌエ的」行動に米国が、決断を下した。米国防長官は、「中国けん制14ヶ国」に韓国を加えなかったのだ。米韓同盟がありながら、インド太平洋構想に韓国を加えないという、異常な姿が浮かび上がった。

     


    『東亜日報』(10月22日付)は、「国防長官、『中国牽制協力14ヵ国』で韓国を除く」と題する記事を掲載した。

     

    エスパー米国防長官が、米国の対中政策に協力する国家として「クアッド(米国、日本、オーストラリア、インドの4ヵ国協力体)」とともにアジア10ヵ国の名前を読み上げたが、韓国には触れなかった。米中の間で明確な立場を示さない韓国に対する迂迴的な圧力という観測が流れている。

    (1)「エスパー氏は10月20日(現地時間)、ワシントンのシンクタンク「大西洋評議会」が開いたテレビ会議で、「クアッド」関連の質問を受け、「非常に重要で能力のある4ヵ国の民主国家が域内で直面する挑戦について議論している」と答えた。米政府系放送局「ボイス・オブ・アメリカ」(VOA)によると、エスパー氏は、クアッドを今後、北大西洋条約機構(NATO)のような集団安全保障機構にするのかと問われ、「まずは共通の価値を守る力を増進させ、関係を発展させる必要がある」と述べた。インドや日本などとの軍事協力強化の必要性も言及した」

     

    「インド太平洋構想」は、中国を牽制する防衛網である。クワッド4ヶ国として、日米豪印が戦略会議を開き意思疎通を図るものだ。今後、年1回の定例会議を開催する。

     


    (2)「クアッド国家のほかに中国の脅威に対処する協力国としてニュージーランド、ベトナム、インドネシア、シンガポール、タイ、モンゴル、台湾、パラオ、東ティモール、マルタの10ヵ国を挙げた。「米国が中国およびロシアとの競争時代に対処するために、国の大きさに関係なくすべての域内国家と関与する必要がある」と強調した」

     

    クアッド国家のほかに、ニュージーランド、ベトナム、インドネシア、シンガポール、タイ、モンゴル、台湾、パラオ、東ティモール、マルタの10ヵ国が協力するという。この中に、台湾が入っていることに注目したい。

     

    「インド太平洋構想」に、台湾が加わっていることは、中国が台湾攻撃を仕掛ければ、先ず米国が共同防衛で立ち上がるという意味である。中国は、こういう連携関係を無視していると、大きな落し穴に嵌り込むであろう。

     

    (3)「しかし、エスパー氏は、北東アジアの核心同盟国と明らかにしてきた韓国については一切言及しなかった。韓国が中国との関係を意識して米国の反中戦線への参加を躊躇する状況を考慮したものとみられるが、米国を中心にアジア地域の国家を結束する構図から韓国だけ外されるのではないかという分析もある。これに先立ち19日、ビーガン国務副長官は、「クアッドの拡大は時期尚早」とし、韓国を含む「クアッドプラス」拡大をすぐには推進しない考えを示した」

     

    前記の14ヶ国に韓国の名前がないことだ。韓国が外れていることは、中国へ秋波を送っている国であるからだ。韓国が入っていたのでは、中国けん制効果を台無しにする恐れが強い。

     


    (4)「また、エスパー氏は、同盟国の防衛費の増額を再び迫った。エスパー氏は、「すべての同盟が国防にさらに投資することを期待する」とし、国内総生産(GDP)比2%以上に引き上げるよう要請した。また、「ますます複雑になる脅威を克服し、共通の価値を防衛するために、共通の安全保障へのただ乗りは認めない」と強調した」

     

    各国が、米国から防衛費引上げを求められている。単独で防衛するよりも、軍事効果は大きい。中国は、こういう動きを見てさらに強気になるのだろうか。多勢に無勢であり、同盟の力には及ばないはずだ。中国が、最も恐れるのは「合従」(同盟)である。韓国は、ここから外れて中国と「連衡」(一対一の関係)になれば、簡単に飲み込まれる。韓国は、この歴史の現実を理解できないのだ。気の毒である。

     

     

     

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