肩で風を切って歩いた中国が、突然の「反中国」という突風に見舞われている。米国覇権に挑戦すると威勢は良かったが、コロナ禍ですっかりその勢いが止まった感じだ。それどころか、世界の至る所で「反中ムード」が起こっている。パンデミックに対する中国の不遜な態度が反感を買い、香港問題がそれを増幅したようだ。習近平、最大の危機到来である。
『中央日報』(8月9日付)は、「『よろしい、借りた金は返さない』中国はなぜ各国からこんな扱いを受けるのか」と題する記事を掲載した。
(1)「『代価を払うことになるだろう』。7月30日の劉暁明駐英中国大使の話だ。劉大使はツイッター動画記者会見で「中国をパートナーや友人扱いしなければ英国は代価を払うことになるだろう」と述べた。脅迫ではなく「結果を教えるもの」ともした。5G通信網構築事業から英国がファーウェイを排除したことを受けた話だ。駐英大使が脅すほど英国の反ファーウェイ戦線合流はそれだけ中国には衝撃だ」
英中蜜月時代は、とっくに消えていた。香港の「一国二制度」を破棄された英国は、怒り心頭である。これまで中国と交わしてきた「5G導入問題」を白紙にしてしまった。香港の「一国二制度」破棄があった以上、当然の話だ。駐英中国大使が、英国は「代価を払うことになるだろう」と捨て台詞を吐いているが、代価を払うのは中国なのだ。
(2)「『よろしい、金は返さない!』。5月にタンザニアのマグフリ大統領がした爆弾宣言だ。中国から借りた100億ドルを返さないということだ。前任の大統領が結んだ契約が話にならない条件だった。借りた資金でタンザニアに港を作るが、使用権は中国が99年間持つ。中国の港内活動に何の条件もつけていない。マグフリ大統領は「酒に酔ってなければできない契約」と話した」
タンザニアのマグフリ大統領は、中国に100億ドルの建設費を払わないと激怒している。借りた資金でタンザニアに港を作るが、その使用権は中国が99年間持つという契約だ。こんな不平等契約はない。タンザニアの前大統領が騙されたのだ。
(3)「英国とタンザニアの両国だけがそうなのではない。欧州ではフランスも、中国に友好的だったイタリアもファーウェイ排除に出ている。他のアフリカ諸国も中国との建設プロジェクト中止に乗り出している。習近平主席が6月の中国・アフリカ特別首脳会議で債務償還期限を延期することにしたが不満は相変わらずだ。習主席の一帯一路外交の野望に亀裂が入っているという評価が出ている理由だ」
中国への不満が一挙に出てきた。欧州ではフランスとイタリアもファーウェイ排除に乗出してきた。「一帯一路」では高金利(平均3.5%)で建設資金を貸付けてきたことがばれてしまった。親切ごかしに「一帯一路」プロジェクトを勧めてきたが、その利益はすべて中国が吸い取るシステムであった。「酷い中国」という評価が生まれてしまったのだ。
(4)「中国はなぜこうした扱いを受けるのだろうか。これまで中国が国際社会で影響力を広げた秘訣は2つだ。▽安価な技術力・労働力▽莫大な資金力。英国がファーウェイに友好的だった理由が前者だ。アフリカが中国と緊密な理由は後者だ。だがそれだけだ。「金で影響力は買えても、心は得られなかった」。英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)のエリザベス・ブラウ専任研究員の一喝だ。彼女は「中国の国際地位急落はこれまで中国がグローバル商業ネットワークだけ構築し友情を育まなかったため」とみる」
中国は、「金で影響力は買えても、心は得られなかった」ことが、急速な離反国を生んでいる理由である。やはり、パンデミックと香港問題が中国への見方を180度変えたのだ。さらに「戦狼外交」が、決定的な中国離れを起こしたのであろう。
(5)「前記のブラウ専任研究員の分析を見よう。ブラウ氏は米『フォーリン・ポリシー』誌への寄稿で、「中国は米国が数十年にわたりさまざまな国に作ったソフトパワーが皆無だ」と批判する。「率直に中国は米国ほど魅力的ではない。世界でだれが自発的に中国の歌、中国のテレビ番組、中国のファッションを見てまねるだろうか」ということだ。中国の影響力の「元手」は今年明らかになった。新型コロナウイルスで多く国の経済が冷え込んだ。ここに米国の反中戦線参加の圧力はますます大きくなる。中国が掲げた利点だけでは中国と一緒にやる理由が足りなくなった。むしろ中国に対し抱えていた不満が水面上に出てきた。英国とタンザニアの反中行動はこうした背景で出た」
中国文化に魅力がないことも、中国離反を急速に起こさせた理由と指摘している。中国政治は権威主義で人権弾圧。胡散臭さがいつもつきまとっているのだ。こういう中国と深く交わりたいと思う国は少ないはず。因果応報とはいえ、習近平路線が失敗したのである。「愛される中国」にならなければダメなのだ。それには、習氏が引退することが前提になろう。