中国は、先進国からの技術窃取で工業化を進めてきた。米国が、これに対して拒否反応を示して、今回の米中貿易戦争が始まったもの。中国は、技術窃取について知らぬ存ぜぬ、で通している。あたかも、中国が被害者のごとく振舞う辺りは「千両役者」である。
今回、中国が米国製品に対して600億ドル相当の製品に最大25%の関税をかけるという報復に、米国は「許しがたい」気持ちだ。西部劇流に言えば、保安官が盗賊集団に襲われたようなものであろう。米国家経済会議(NEC)のカドロー委員長が8月3日、中国政府はトランプ米大統領の通商を巡る問題に対処していく決意を過小評価してはならないと述べたのは、まさに襲撃で傷ついた保安官の心理だ。
NECのカドロー委員長が、前記のような発言をした裏に、次のような計画が進んでいる。
『ロイター』(8月3日付)は、「EUとの貿易協議、1カ月以内に合意の可能性」と題する記事を掲載した。
(1)「米国家経済会議(NEC)のカドロー委員長は、米国と欧州連合(EU)との貿易協議はかなり進展しており、来月中にも合意を発表する可能性があるとの見方を示した。ブルームバーグTVとのインタビューで、協議が進んでいるとした上で、『EUとの相互取引や市場開放、投資拡大に関して、多くの発表があるだろう。今後30日程度のうちにできるよう望んでいる』と述べた」
これだけの短い記事であるが、今後30日以内というと、8月中に発表になるだろか。世界最強の米欧から相互市場開放という「吉報」が出れば、米中貿易戦争はかすんでしまい兼ねない。米国の1人当たり名目GDPは5万9000ドル(2017年)。EUは同3万4000ドルである。この高所得国同士が市場開放すれば大きな力になる。EUでGDP首位のドイツも、一人当たり名目GDPでは12位(4万4000ドル)に過ぎないという高所得国がズラリと並んでいる。このEUと米国が握手すれば、質的に見た中国の存在は薄れる感じだ。このEUと日本との「日欧EPA」は来年発効する。日本にとっても米欧協定の発表に期待がかかる。