勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 米国経済ニュース時評

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    米中通商交渉は、月末に上海で開催される。焦点は、中国による米国技術の窃取防止だ。現実の中国による産業スパイは、想像を絶するルートで行われている。米国FBI(連邦捜査局)長官が、米上院司法委員会で公表した。表の顔は学生や研究者であるが、裏の顔は産業スパイであるという。中国政府がバックにいることは疑う余地もない。


    『大紀元』(7月26日付)は、「FBI長官、捜査中の知的財産窃盗事件1000件、ほとんど中国から」と題する記事を掲載した。

     

    米連邦捜査局(FBI)クリストファー・ライ長官は723日、米上院司法委員会に出席し、中国は広範囲にわたり対米諜報活動を展開しており、米国にとって深刻な脅威を与えていると述べた。現在、FBIが抱える1000件以上の知的財産窃盗に関する捜査は、ほとんど中国関連の事案だと明かした。

     

    (1)「ライ長官は、委員会で議員から、外的勢力による潜在的な影響への備えはあるのかを尋ねられた。「中国以外に、わが国に深刻な諜報の脅威をもたらす国はないだろう」と表現し、ロシアは「おそらく」次に並ぶと長官は述べた」

     

    中国が、米国で大規模な産業スパイを働く理由は、研究開発能力の低さを証明するものだ。その弱点を隠して世界覇権を狙うギャップが、産業スパイ活動に現れているに過ぎない。

     


    (2)「中国のスパイ活動について、長官は「中国籍や中国系米国人に限らない」とし、企業などによる組織的な動きもあるという。中国企業は国営、民営を問わず中国共産党から独立しておらず、違法なハッキング、合法的な米企業との協力といったさまざまな手段で、米国の知的財産や機密情報を収集しているとした。「米国で起きた知的財産窃盗事件に関して、全土でおよそ1000件以上の調査が進行している。経済スパイであろうが、破壊活動の拡散であろうが、ほとんどすべて中国に関連する」と述べた」

     

    下線を引いた部分は、民間企業もスパイ網の一翼を担っていることを指摘している。ファーウェイは、その代表例である。

     

    (3)「中国共産党の諜報活動について、長官は「根深く多様で、広範囲かつ厄介だ」と例えた。FBIは、中国政府関係者や学者、学生、ビジネス関係者など、従来の情報収集者とは異なる相手と闘わなければならず、「私たちはすべての協力者と懸命に取り組んでいる」と述べた。ライ長官は4月、外交問題評議会(CFR)との合同会議で、「創造の窃盗」を行う中国のスパイ手法ついて詳しく語った。「中国は諜報機関、国営企業、表向きの民間企業、大学院生や研究者、そして中国を代表して活動するさまざまな関係者を通じて諜報を行っている」「これは違法行為であり、経済安全保障への脅威であり、ひいては国家安全保障への脅威だ」

     

    中国に共産党政権が続く限り、自らの優越性を内外に誇示すべく、裏では産業スパイなど違法行為を行うはずだ。問題解決の根本は、共産党が存在できない経済環境をつくることである。米国トランプ政権が、サプライチェーン再編を目指す理由である。米国が、TPP(環太平洋経済連携協定)に復帰することは不可欠になろう。トランプ氏が、この単純な事実に気付けば効果を上げるはずだが。


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    韓国が、軽空母建艦に乗り出すことを決めた。この決定は、日本がすでに護衛艦「かが」を軽空母に改修すること受けたものと見られている。米国の要望に添い、「インド太平洋戦略」に参加する前兆か。

     

    韓国軍が決定した軽空母は、次のような装備となる。垂直離着陸(VTOL)型のF35Bステルス戦闘機およそ10機を搭載できる3万トン級の軽空母の建造を推進する。今回の決定は、このところ韓日関係が最悪へと向かう中、日本の軽空母保有の動きに対応しており、注目される。ただ、それゆえに韓国は一層、米国へ接近しなければならなくなっている。

     

    韓国メディアは、これまで日本の軽空母改修を巡って「軍事大国化」への第一歩として批判してきた。韓国の軽空母建艦決定で、日本への批判は和らぐであろう。

     

    『中央日報』(7月23日付)は、「韓国軍、垂直離着陸機を搭載する軽空母建造へ」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「今月12日、韓国軍の朴漢基(パク・ハンギ)合同参謀本部議長および陸海空軍の参謀総長、海兵隊司令官などが出席した合同参謀会議で、「大型輸送艦II」事業を長期需要として推進すると決定した。この事業は、VTOL戦闘機を搭載できる事実上の軽空母推進事業だという。韓国政府の消息筋が22日に明らかにした。今回決定された「大型輸送艦II」事業は、排水量3万トン級以上の艦艇といわれている。これは、従来の「独島」および「馬羅島」(1万9000トン級)の1.5倍近い大きさだ。この消息筋は「国防中期計画に反映された後、およそ10年経てば艦が建造されるだろう」と伝えた」

     

    日本の「かが」は全長248メートル、全幅38メートル、満載排水量2万7000トンで、日本が保有するヘリ搭載護衛艦(DDH)4隻のうちの1隻だ。安倍内閣は昨年、一部の反発を押し切り、DDH「かが」および同型の「いずも」を全長300メートル以上の軽空母に改造すると決定した。日本は、「いずも」と「かが」の甲板を大幅に改造し、米国で配備が進んでいる垂直離着陸型のステルス戦闘機F35Bを運用する計画だ。

     

    韓国が軽空母を保有する意味は、韓国軍内部からの反対論に見られるように、北朝鮮か日本と戦争する目的以外には考えにくい。ただ将来、米国主導の「インド太平洋戦略」に参加する目的であれば頷ける措置であろう。

     

    韓国は最近、悪化している日韓関係の調整を米国に依頼した。これが、希薄であった米韓同盟の立て直しに寄与することは明らかだ。韓国はまた、これまで米国から「インド太平洋戦略」に参加するよう打診を受けてきたが、曖昧に応えてきた。今回、はっきりと「インド太平洋戦略」に参加する意思を裏付けるものとして、軽空母建艦を決めたという解釈も可能であろう。

     


    (2)「これまで韓国軍は、国防部の宋永武(ソン・ヨンム)前長官がまだ在職していた2017年末にF35B搭載大型輸送艦の建造研究に入り、昨年8月に防衛事業庁が「LPH(大型輸送艦)未来航空機(F35B)搭載運用のための改造・改装研究」という題目の外部委託研究の入札公告を出した。なお韓国軍の一角からは「大洋海軍を志向するのでないなら、軽空母をなぜ導入するのか分からない」という声が上がっている」

     

    下線をつけた部分の疑問は、その通りであろう。これまでの領海を防衛する上では不必要であろう。韓国も、米国の圧力と日本との関係が不安定であることから、一層の米韓緊密化を図る必要性に気付いたに違いない。

    この背後には、従来の「親中朝・反日米」という文政権の限界が明らかになってきた事実がある。中朝は一層、緊密化している。韓国を外交的に受入れる姿勢はなくなっているのだ。一方、日本との関係が悪化しているので、このままでは北東アジアで孤立する危険性を覚ったと見られる。そうなると、頼りは米国しかない。米国との関係を密にして、日本と間接的に関係改善を図る戦略かも知れない。



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    中国のファーウェイ(華為技術)のニュースが途切れてきたところへ、ビッグニュースが飛び出てきた。ファーウェイが、秘密裏に北朝鮮の通信網を建設してきたという内部文章が明らかになった。

     

    米国政府は最近、ファーウェイへの禁輸措置で若干の手心を加えて、難航する米中貿易協議の潤滑油に利用する意向も見られた。今回の情報発覚が事実とすれば、一段とファーウェイへの圧力を加えざるを得なくなるであろう。

     

    『中央日報』(7月23日付)は、「ファーウェイ、『北に秘密裏に通信網を支援した』内部文献暴露」と題する記事を掲載した。

     

    米国との貿易紛争で大きな困難に陥っている中国最大のICT企業ファーウェイ(華為)が北朝鮮の移動通信網構築を秘密裏に支援していた情況が確認された。通信装備部品の相当量を米国企業から調達しているファーウェイが広範囲にわたる制裁を受けている北朝鮮に装備を供給した可能性もあり、国際的に波紋を広げそうだ

    (1)「 米紙ワシントン・ポスト(WP)は22日(現地時間)、匿名を求めたファーウェイの元職員から、北朝鮮移動通信網構築に関連したファーウェイの内部文献を入手したと報じた。  WPが公開した内部文献によると、ファーウェイは中国の国有企業「熊猫国際信息技術(Panda International Information Technology)」と協力して2008年から少なくとも8年間にわたり北朝鮮内部の商業移動通信網構築に関与および装備の維持・補修を助けていたものとみられている」

    ファーウェイは、米国による経済制裁を破って北朝鮮内部の商業移動通信網構築に関与してきたと報じられた。これは、米国の法律に違反する事態で、ファーウェイの立場はさらに苦しくなってきた。

     


    (2)「 特に、WPが入手した資料のうち、2008年3月17日という日付が明記された「UMTS価格決定計画」という題名の契約書には過去の作業注文書や契約内容などが含まれている。UMTSは欧州の3世代(3G)移動通信技術を意味する。 この契約書には、北朝鮮がエジプト企業と合作して設立した通信会社「CHEO(チェオ)」という名前も登場する。CHEOは2008年、北朝鮮逓信省傘下の朝鮮逓信会社とエジプト通信社オラスコムが共同で設立した会社だ。北朝鮮で「Koryolink」という名前の携帯電話事業を展開したことがある。CHEO合作会社設立当時、朝鮮逓信会社とオラスコムの持株比率はそれぞれ25%と75%であることが分かった。契約書には熊猫国際信息技術会長とオラスコムの最高経営責任者(CEO)の署名も含まれている

    暴露された文書には、契約書の署名まで含まれている。ニセ物と言って事態を切り抜けることが困難になろう。

     

    (3)「 ファーウェイと北朝鮮の関連性はファーウェイおよび中国に対する制裁を緩和しようとする動きを見せる米国に影響を及ぼすおそれがあるとWPは展望した。エバンズ・リビア元国務副次官補(アジア太平洋担当)は「ファーウェイと北朝鮮が関連しているという事実だけでもワシントンの政治・外交的な怒りを呼込みかねない」と指摘した」

     

    ファーウェイが、北朝鮮政府と関係する事業に参加していたことは、ファーウェイの「民間企業」という触れ込みに疑念を持たせることになった。ファーウェイが、実質的に中国国有企業であることは、「社員株主制」の欺瞞性によって立証されている。株式登記簿で、大株主は中国共産党であることが突き止められている。ファーウェイは、民間企業の殻を被ってスパイ活動にも手を広げてきたのだ。


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    けさ、下記の目次で発行しました。よろしくお願い申し上げます。

     

    バブルの宴の後で

    PPI低迷リスク

    GDP3倍の債務

    保守が改革派圧迫

     

    中国の4~6月期のGDP統計が発表されました。事前予想の通り前年同期比で実質6.2%成長でした。リーマン・ショック直後の09年13月期を下回り、四半期ベースで統計を遡れる1992年以降で最低でした。

     

    前期の実質成長率は6.4%。今期は、0.2ポイント低下しました。ここで注目されるのは、中国共産党が2012年の党大会で2020年までにGDP倍増という長期目標を決めていました。それによると、19~20年に平均6.%の成長が必要になります。今後の米中貿易摩擦の結果しだいでは、6%割れの局面を迎えます。固く見れば、「GDP倍増計画」に警戒信号が灯った感じです。

     

    バブルの宴の後で

    GDP倍増計画には、「中所得国のワナ」を突破する目的もありました。「中所得国のワナ」とは、国民1人当たりのGDPが1万2000ドル前後で停滞して、高所得国グループに手が届かず、経済が停滞局面に陥る現象を指しています。多くの発展途上国が、「中所得国のワナ」にはまってきたのです。共通した理由は、豊富な労働力を使い果たせば、そこで生産性の上昇が止るというものです。

     

    中国は2010年、総人口に占める生産年齢人口比率がピークでした。それまでの急速な経済成長は、生産年齢人口比率の上昇がもたらしたものです。2011年以降は、生産年齢人口比率が下降に向かっています。経済成長率が鈍化するのは不可避でした。

     

    グライダーに喩えれば、飛行機(生産年齢人口比率の上昇)が牽引した経済は、2011年以降に推進力を失い滑降状態へ移行しています。経済成長率は、減速局面入りしたのです。中国経済は、このいかんともし難い人口動態変化の中に巻き込まれています。

     

    中国は2010年以降、経済政策として不動産バブルを利用しました。土地国有制という「土地供給独占」によって地価を釣り上げ、空前の住宅投資を引き出したのです。中国経済が、セメントや鉄鋼という素材産業に結びついた歪な構造になった大きな理由です。目先のGDPを引き上げる目的で、不動産バブルを利用した「咎め」は現在、中国経済に大きな禍根を残しています。GDP規模に比べた過剰な債務を置き土産にしたのです。この問題に付いては、後で触れます。

     


    今年上半期の経済データをまとめました。

     

    公表された主要経済指標(前年比増減率)

               1~6月    1~3月     差し引き

    工業生産       6.%増    6.5%増      0.5ポイント減

    固定資産投資     5.%増    6.%増    0. 5ポイント減 

    社会消費品小売総額  8.%増       .%増      0.1ポイント増

    家計調査の消費額実質 5.%増    5.4%増   0.2ポイント減

    輸出                       .%減    1.%増    2.7ポイント減   

     

    これらの項目を見て気付くことは、1~6月の増加率が1~3月に比べて軒並み、低下しています。4~6月の落勢を示しているもので、とりわけ輸出の急減ぶりが目を引きます。米中貿易戦争の影響が強く出ていることを示しています。

     

    PPI低迷リスク

    米国の関税率引上の多くは、中国企業が負担しています。これは、生産者物価指数(PPI)の推移に現れています。次に、その推移(前年増加率)をマネーサプライ(M2)と比較します。(つづく)

     

     


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    中国の4~6月期の実質GDP成長率は、前年比6.2%へ減速した。前期よりも0.2ポイントの減速である。投資と消費の2大エンジンが、景気循環における在庫循環と設備投資循環が、ともにボトムにあるという構造上の重石のほかに、米中貿易戦争の影響が加わった形である。

     

    『日本経済新聞 電子版』(7月15日付)は、「中国成長率6.2%に減速 1992年以降で最低 46月」と題する記事を掲載した。

     

    中国国家統計局が15日発表した201946月の国内総生産(GDP)は、物価の変動を除いた実質で前年同期より6.2%増えた。13月期から0.2ポイント縮小した。リーマン・ショック直後の0913月期を下回り、四半期ベースで統計を遡れる1992年以降で最低だった。長引く米国との貿易戦争が重荷となり、輸出や投資が振るわなかった。

     
    中国の成長率は19年13月期に6.%1年ぶりに減速が止まったものの、46月はまた減速傾向に戻った。成長率は19年の政府目標「66.5%」の範囲内に収まった。46月の成長率を前期比でみると1.%と19年13月(1.%)より加速した。先進国のように前期比の伸びを年率換算した成長率は6%台半ばになる。景気の実感に近い名目成長率は8.%13月(7.%)から加速した。

     

    15日はGDP以外の経済指標も公表した。数値は前年比

               1~6月    1~3月

    工業生産       6.%増    6.5%増

    固定資産投資     5.%増    6.%

    社会消費品小売総額  8.%増       .%

    家計調査の消費額実質 5.%増    5.4%増

    輸出                                  .%減    1.%

     

    下半期の回復も見通せていない。不動産の販売が低迷しており、いまは堅調な不動産投資も伸びが鈍る恐れがある。政府も財政出動を前倒ししており、下半期は息切れする恐れがある。政府は6月からインフラ投資の拡大へ地方政府の資金調達を後押ししており、投資がどれだけ伸びるかが下期の景気を左右する。

     

    以上が、日経記事の要約である。表は私が記事から抜粋して整理したもの。以下は、私のコメントである。

     

    冒頭に記したように、景気循環における在庫循環と設備投資循環が、ともにボトムにあるという構造上の重石が鮮明に出ている。工業生産と固定資産投資の増加率が減速しているからだ。このデータには金融統計がないが、社会融資総量は前年比10~11%増と圧縮されている。名目成長率8%前後に比べて、いかにも小幅な増加率である。信用不安を顕著に表しているのだ。中国経済を襲っているのは信用不安である。「影の銀行」が追い詰められている。この問題は、18日発行の「メルマガ」で取り上げる。

     


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