勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    無知ほど恐ろしいものはない。今回、中国の空母「遼寧」が、台湾を一周して米国をけん制したという。米海軍は世界一の質と規模を誇る。中国の「遼寧」がごとき旧式空母は、束になっても適わない相手である。そういう客観的な認識に欠ける点が、中国政治の最大の欠陥だ。

     

    米中貿易戦争もその類いである。中国メディアは、最後まで戦うと粋がっているが無意味である。紛争が長引けば長引くほど、中国に不利になることが理解できない頭脳構造だ。中国4000年の歴史が、米国を圧倒できると誤解させている要因である。歴史の長さは、国家の質と無縁である。

     

    『日本経済新聞 電子版』(6月25日付)は、「中国空母が台湾一周、首脳会談前に米けん制か」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国軍の空母「遼寧」が25日、中国大陸と台湾の間の台湾海峡を北に向かって航行した。遼寧は6月中旬から台湾東側の西太平洋を南下して南シナ海に入ったとみられており、台湾を一周したことになる。年明けから台湾海峡では米軍艦が頻繁に航行している。米中首脳会談を控え、米側をけん制した可能性がある」

     

    戦闘能力が低い「遼寧」は、艦上戦闘機の発着訓練に使われている。もう一つ、周辺国を威嚇する目的もあるが、米海軍にとってはただの空母にすぎない。この遼寧が出張ってくると、日米海軍が潜水艦で性能を調査していることも忘れて得意になっている。お笑いである。

     


    (2)「台湾の国防部(国防省)が25日に発表した。遼寧を核とする艦隊が南方の南シナ海から台湾海峡に入り、北上しているのを確認した。北上を続け、中国山東省・青島の基地に戻るとみられる。遼寧は11日に沖縄本島と宮古島の間を通過し、西太平洋に出た。台湾メディアでは米グアム島に近い海域を通過して南シナ海に入ったとの見方が出ていた。遼寧は2016年末に米大統領就任前のトランプ氏が台湾の蔡英文総統と電話会談した直後にも、遠洋演習で台湾を一周する航路をとっていた

     

    下線をつけた部分を読むと、中国の子どもじみた行為を哀れに感じるのだ。「遼寧」は、スクラップにするという名目で、ウクライナから買付けた空母である。前身を知っている者から言えば、あの「スクラップ空母か」という程度の認識である。「威嚇用の空母」であるが、台湾を脅すには力不足の空母である。


    (3)「今年に入り、米海軍の軍艦が5カ月連続で台湾海峡を通過し、中国側は神経をとがらせていた。2829日に開かれる20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)に合わせて米中首脳が会談し貿易問題などを協議する見通しで、中国側は会談前に空母の運用能力を誇示し米側をけん制した可能性がある

     

    下線部分の記事は納得できない部分だ。米海軍が、「遼寧」にけん制されるほど弱体な海軍でないからだ。

     


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    1950年6月25日、北朝鮮軍が38度線を突破して韓国へ侵略した日である。あの日の衝撃は世界を震撼とさせ、第3次世界大戦の始りかという恐怖感に襲われた。

     

    最大の被害国は韓国であるが、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」面も濃厚だ。韓国の文政権は、侵略当事国の北朝鮮へ異常なまでの気配りをする、逆立ちした関係を演じている。北朝鮮の「主体(チュチェ)思想」に染まっている韓国大統領府による、いかんともし難い倒錯現象である。

     

    この韓国が、中国ファーウェイ問題で揺れている。米国政府が、安全保障リスクを理由にして、ファーウェイへのソフトと技術の輸出を禁じた問題が、韓国へ飛び火しているからだ。米国によれば、ファーウェイの「5G」にはバックドアを仕掛けており、中国が機密情報を抜き取り悪用する危険性が指摘されている。

     

    発端は、豪州政府のハッカーチームが検出したものだ。米豪が中心になって、世界の機密情報共有国「ファイブアイズ」(米・英・豪・カナダ・ニュージーランド)の情報当局が確認した。韓国情報では、この「ファイブアイズ」に日本も正式加盟したという。

     

    これだけ、ファーウェイの5Gの危険性が指摘されているにもかかわらず、韓国は「のらりくらり」している。中国が、輸出依存度1位であることを理由にしている。だが、豪州やニュージーランドも輸出での中国依存度は高い。それでも、安全保障リスクの回避に代えがたい措置として、ファーウェイの「5G」を阻止している。韓国の甘さは、「事大主義」に尽きる。

     

    韓国には、ファーウェイに代われるサムスンが存在している。米国では、ASEANの「5G」でサムスンを推奨しているほど。この重要なビジネスチャンスを忘れて、韓国大統領府は右往左往している。「親中朝・反日米」の歪んだ思想が生んだ「誤診」である。

     


    『中央日報』(6月25日付)は、「米中対立の中での韓国の生存法」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のナム・ジョンホ論説委員である。

     

    ファーウェイ(華為技術)紛争で米中双方から圧力を受けている韓国。まさにクジラの争いの中で打撃を受けるエビの姿だ。ファーウェイの製品を絶対に使用するなという米国と、使用禁止にすればただでは置かないという中国の間に挟まれ、どうすることもできない。

     

    (1)「韓国にとって米国は同盟国であり、中国は最大の市場だ。どちらも簡単にあきらめることはできない。ではどうすればよいのか。短期的にはこれという解決策はない。ただ、状況を眺めながら対応するのが答えだ。ファーウェイの場合、米国が全世界に圧力を加えているが、参加国は4、5カ国にすぎない。日本、オーストラリア、ニュージーランド、カナダほどだ。アフリカや東南アジアはもちろん、ドイツやイタリアなど欧州の国も「確実な証拠がない」としてファーウェイ禁止を拒否した。米国の伝統的友邦の英国さえも論争中だ。したがって韓国も他国の事例を挙げながら「ファーウェイが機密を盗んだという証拠が出てくれば使用を禁止する」と約束するレベルで済ませるのはどうだろうか」

     

    米国のファーウェイ禁止の呼びかけに、同盟国でも即答しない 理由は、コストの問題である。「4G」までファーウェイ機器に委ねているので、それをすべて他社品に置換えるとコストが6割高程度になるという。また、「ファーウェイが機密を盗んだという証拠が出てくれば使用を禁止する」という提案も欧州で出ている。米国は、これに対して「証拠が出たときは遅い」と反論している。

     

    ファーウェイの「5G」ソフトは、すべてファーウェイが変更する権利を持っている。導入時と違った「情報抜き取りソフト」に変えられれば、導入国は対応不可能である。強盗に玄関のカギを預けておくようなものなのだ。米国は、同盟国でファーウェイ「5G」導入を主張しているドイツに対し、「最高機密情報」を教えないと通告した。ドイツは過去、米国からテロ活動に関する重要情報を得て、未然に防いだケースがある。加盟国は、導入コストばかり主張しないで、トータルの安全コストに目を向けるべきであろう。

    (2)「韓米同盟も立て直す必要があるのは同じだ。ファーウェイを使用すれば軍事情報を共有しないと米国が脅迫するのは決して健全な同盟関係ではない。国力の差が大きい非対称的な関係では力が強い国が弱い同盟国に無理な要求をしたりする。弱い国は同盟から捨てられるのを恐れて無理な要求も聞き入れるしかない」

     

    同盟は、対等の条件であるべきだ。相手国の庇護に預かってはならない。韓国はなぜ、ファーウェイにこだわるのか。自国には、サムスンが代替企業として存在している。サムスンよりもファーウェイを大切にしたい信条は、経済面での影響を懸念しているに違いない。

     

    だが、ここで米国の意向をくみ入れれば、名実ともに米韓同盟強化を実現できるのだ。中国経済は、もはや昔日の力はなくなっている。これは、私の長年の分析結果によるものだ。不動産バブルが崩壊した中国の辿る道は、「第二の日本」である。さらに中国は、米中貿易戦争で米国のサプライチェーンから切り離されようとしている。この危機的な現実を見つめるべきだろう。中央日報論説委員として、迫り来る世界情勢の激変を把握することだ。


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    米国政府による中国スパイ網への警戒は一段と厳しくなる。次世代通信網「5G」では、機器の製造・設計まで中国外を義務づける検討が進んでいる。ファーウェイ製品の購入禁止だけでなく、「5G」の機器・部品も中国外での製造を条件にするもの。中国が部品や機器に「バックドア」を忍ばせれば、まんまと米国でスパイ活動が可能になるからだ。

     

    「米国の中国への信頼関係は、完全にゼロとなっている。中国が、監視・分析ツールをひそかに米国に配置しようとしている証拠がある。中国政府の後ろ盾を受けた杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)などの中国メーカーが生産する監視カメラ数万台の存在を考えるといい。それらはセキュリティー上のリスクになり得ると米中経済安全保障調査委員会(USCC)のキャロライン・バーソロミュー委員長は指摘している。懸念されているのは、そうしたカメラを中国政府が遠隔で監視している可能性があることだ」(『ウォール・ストリート・ジャーナル』6月21日付寄稿「中国の監視網、米国への拡大許すな」)

     

    中国の諜報網は、監視カメラの輸出に際してバックドアを忍ばせている懸念が強まっている。こういう切迫した事情を背景に、米国は「5G」で厳しい制約を課す案を検討中である。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(6月24日付)は、「米国向け5G機器、中国製以外の使用義務づけを検討ー関係筋」と題する記事を掲載した。

     

    トランプ米政権は、米国内で使用する第5世代(5G)移動通信システムの機器について、中国以外での設計・製造を義務づけることを検討している。関係筋が明らかにした。実現すれば世界の製造業の構造を変化させ、米中の緊張がさらに高まる恐れがある

     


    (1)「5月の大統領令は、サイバーセキュリティー面の懸念から一部の外国製の通信機器・サービスを禁じるというもので、150日間にわたる米通信業界サプライチェーンの見直しが始まっている。関係筋によると、この一環として米当局者は通信機器メーカーに、基地局向け電子機器、ルーター、スイッチ(経路制御装置)などの米国向けハードウエアやソフトウエアを中国以外で製造・開発できるか尋ねている。この聞き取りは初期段階で非公式なものだという。大統領令は、150日以内に具体的な規則案のリストを作成するよう求めているだけで、期限は10月。このため、規則案が実際に導入されるまでは数カ月あるいは数年かかる可能性がある」

     

    米国は、中国企業の通信機器製品の輸入を規制する以外、中国国内で生産された製品・部品を組み込んだ中国以外の企業製品にまで規制の網を張る検討を行っている。

     

    (2)「米国のワイヤレス通信サービス会社向けに通信機器を販売している大手企業には、フィンランドの ノキア 、スウェーデンのエリクソンなどがある。新たな規則案はこうした企業に、主要事業の中国以外への移管を強いることになる可能性がある。世界の通信機器および関連サービス・インフラ業界の年間売上高は2500億ドル(約268000億円)で、米国は最大の市場。米国にはワイヤレス通信機器の主要メーカーがない」

     

    米国が、世界の通信機器や関連サービスの最大市場であるゆえ、米国政府が独自の規制を実現可能という背景がある。中国が、こういう形で米国市場から完全に閉出されることは、大きな痛手だ。習近平氏が、「世界覇権を握る」と野望を剥き出しにした報いである。

     


    テイカカズラ
       

    けさ発行しました。よろしくお願い申し上げます。

     

    対米で貿易黒字の6割

    経常黒字減少の不気味

    少子高齢化の影響深刻

    米中合意が経済再建策

     

    米中首脳会談は、今週末の大阪G20サミットで開催される運びとなりました。ここで、米中通商交渉は合意がなるのか。あるいは、「休戦状態」として、さらに交渉を続けるのか、関心を集めています。米中ともに決裂は避けたいところだけに歩み寄りが期待されます。仮に決裂するような状況であれば、会談を開催しないと見られます。

     

    中国共産党機関紙『人民日報』は22日の論説で、中国には貿易戦争に持ちこたえる力と忍耐があり、米政権がそれを続けようとするなら、最後まで闘う用意があると表明しました。相変わらずの戦闘モードです。これまでも強気発言を連ねていますが、「実力行使」は抑止しています。米国債の売却やレアアース(希土類)の輸出禁止措置など取り沙汰されたものの、噂の域を出ていません。

     

    これは、米国に対して打撃を与えられないということと、米国のさらなる報復を招くという危機感が先立ったからです。米国は目下、第4弾の関税攻勢として3000億ドルの輸入に特別関税を掛ける準備をしています。これに対して、中国が対抗できるのは100億ドル相当とされています。これでは、勝負になりません。中国は完全に守勢に立たされたのです。

     


    対米で貿易黒字の6割

    中国は、貿易黒字全体の約6割が対米貿易によって生み出されています。下世話風に言えば、中国は上得意さんの米国と喧嘩を始めた訳です。米国が強気に振る舞うのは、「米国市場」の強味を十分に活用して、関税戦略を立てているからです。

     

    中国の1~5月までの輸出は、前年比.4%増。輸入は3.7%減でした。輸出が意外と堅調な感じを与えますが、これには裏があります。米国が第4弾の関税引上げの準備を始めているので出荷を早めたのではないか、というものです。下半期になれば輸出減少がはっきりすると見られています。

     

    こうして輸出減少基調が鮮明になれば、貿易黒字が減ることから経常収支が赤字に振れるのではないかという懸念が強まります。中国の貿易黒字はすでに年々、減少過程にあります。

     

    中国の貿易黒字の推移

    2014年 3830億ドル

    15年 5939億ドル

      16年 5097億ドル

      17年 4195億ドル

      18年 3518億ドル

     

    貿易黒字の減少は、国内の労働力・土地・資金の各コストが上がったためです。以上の3点におけるコスト上昇の背景を見ておきます。

    1)労働力コスト上昇は、生産性を上回る賃金上昇によります。

    2)土地コスト上昇は、不動産バブルによる地価(土地利用権)上昇によります。

    3)資金コスト上昇は、不動産バブルによる信用崩壊に伴う信用リスク上昇を反映しています。

     

    以上の3要因のうち、土地コスト上昇と資金コスト上昇は不動産バブルによって発生したことが分かります。GDPを押し上げる目的で、人為的に不動産バブルを利用してきた「ツケ」が、貿易黒字の減少を招いたことは確実です。

     

    中央政府が、短兵急にGDPを押し上げるべく行ったインフラ投資の資金は、地方政府の負担となりました。地方政府には財源がありません。土地国有制を利用して土地利用権(地価)の価格を引き上げたのです。経済学の用語で、「供給独占」があります。土地国有制は、土地供給の独占になります。こうして地方政府は、土地価格を一方的に引き上げる形で「供給独占」を行い極大利潤を獲得しました。これが回り回って、貿易収支を減らす要因となったのです。経済は、循環するという言葉の意味がよく分かると思います。

     

    経常黒字減少の不気味

    貿易黒字減少は、経常黒字減少の大きな要因です。国際収支の構造を簡単に申し上げると、次のようになります。(つづく)

     

     


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    昨年10月、ペンス米副大統領が行った中国批判演説は、「米中冷戦」を告げる厳しい内容であった。以来、ペンス氏の中国批判演説は磨きがかかっている。中国の受けたショックは相当なものだった。それだけに、破壊力十分なペンス演説が、今週末の大阪G20サミット中に炸裂したら、まとまる話も壊れるリスクが高くなる。そこで急遽、日程を再調整することになった。

     

    『ロイター』(6月21日付)は、「ペンス副大統領が中国演説中止、米中会談控え緊張回避か」と題する記事を掲載した。

     

    ペンス米副大統領が中国政策に関する演説を中止したことが、米政府当局者の話で分かった。米中首脳会談を目前に控え、緊張激化を回避したいとの思惑が働いたようだ。演説予定は、29日であった。この当初日程では、大阪G20サミットが開会中である。そこへ、演説のスケジュールを合わせたことは、米中首脳会談開催が危ぶまれていたことを窺わせている。こういうギリギリの線に合わせた「精巧爆弾」が準備されていたとは、米国の執念を示している。

     

    (1)「この当局者は、「今週のトランプ大統領と習近平国家主席との電話会談が順調だったことから、ペンス氏の演説を来週の大阪20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)以降にずらすことがより適切であるとトランプ氏やペンス氏は判断した」と指摘した。さらに「米中協議には進展の余地があり、たとえそれが漸進的であっても、可能性の芽をつむことは望ましくない」と語った」

     

    ペンス氏の演説内容は、トランプ氏と協議して決められている。その意味で、ペンス演説は、トランプ演説の代読という性格を帯びている。それだけに、注目度が高い。

     


    (2)「中止決定は、完全な驚きをもって受け止められた訳ではない。米政界ではここ数週間、ペンス氏が演説のトーンを和らげるか中止に踏み切るといううわさが飛び交っていた。ペンス氏側近は当初、5月29日に中国に関する演説を行うと公表、人権などの問題で強硬な発言をすれば貿易摩擦緩和に水を差す可能性を懸念する声が中国や米経済界から上がっていた。香港でのデモ運動や天安門事件記念日で、敏感な時期に差し掛かってもいた。

    ペンス氏は昨年10月の講演で中国の政策を手厳しく批判した経緯がある」

     

    米国は、対中問題で通商の次に人権問題というスケジュールを決めている。これまで米国は、新疆ウイグル族問題に対して、本格的に追求する姿勢を見せずにきた。これから本番を迎える方針だ。


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