勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    待ちに待ったワクチン接種のメドがついた。河野担当相は、現在接種対象とされている16歳以上の全員分が9月末までに調達できるとの見通しを示した。これは、米国が4月からワクチン輸出を解禁する結果でもある。日本は、昨年2月から始まったパンデミック・トンネルから、約1年半ぶりに開放される見通しがついたもの。

     

    『ロイター』(4月18日付)は、「ワクチン、9月末までに全員分 ファイザーが追加供給―河野担当相」と題する記事を掲載した。

     

    河野太郎行革担当相は18日、民放のテレビ番組で、新型コロナウイルスワクチンの追加供給で米ファイザー社と実質合意したと述べ、現在接種対象とされている16歳以上の全員分が9月末までに調達できるとの見通しを示した。

     


    (1)「
    訪米した菅義偉首相は現地でファイザー社のブーラ最高経営責任者(CEO)と電話会談を行った。河野担当相は「9月末までに日本が入手できるすべてのワクチンで、今の接種対象者がワクチンの接種を完了できる。そういうペースでワクチンを供給してもらう」と発言。「それに足りる分だけファイザー社にも追加供給をお願いし、首相とCEOの間で実質的に合意がなされた」と説明した。「9月までのスケジュールの調整はこちらで行う」と述べた」

     

    菅首相が、訪米中にファイザー社CEOと電話会談を行い合意したもの。

     

    (2)「追加供給量に関し「回数の詳細は申し上げることができないが、現時点で16歳以上に接種していただくことになっており、16歳以上はカバーできる」と説明した。これまで政府はファイザー社と7200万人が2回接種可能な1億4400万分の供給で合意。6月末までに高齢者は接種可能としていた」

     

    これまでは、6月末までに高齢者に接種可能な1億4400万分の供給が約束されていた。それが、さらに積み増されて9月末までに16歳以上の全員に接種可能なワクチンが供給されることになった。

     


    このように、ファイザー社が輸出量の上乗せに合意した背景には、米国の接種が順調に進んでおり早晩、過剰供給が問題になるところであった。

     

    『日本経済新聞 電子版』(4月18日付)は、「米も『ワクチン外交』参戦へ、中・ロをけん制と題する記事を掲載した。

     

    米国が新型コロナウイルスワクチンの輸出に乗り出す。国内での接種が進み、最大数億回分が余剰になる見通しとなったためだ。海外援助を担う米国際開発局(USAID)の元幹部を輸出の調整役に指名し、まずメキシコなどに供給する。自国民向けの確保を最優先してきた政策を転換し、「ワクチン外交」を展開する中国やロシアをけん制する。

     

    (1)「ブリンケン国務長官は5日、「自らの責務として引き受ける必要がある」と、米国が諸外国の感染抑制に向けて取り組むことを表明。ワクチン供給支援を含む国際コロナ対応・保健安全保障の調整役に、USAID幹部を務めたゲイル・スミス氏を指名した。これに先立ち、バイデン政権は初の輸出事例としてカナダとメキシコに英アストラゼネカのワクチン400万回分を供給すると発表していた。一連の動きは、従来の内向き姿勢からの転換を印象づけた」

     

    米国のワクチン接種は、英国に次いで世界2位の実績を上げている。早晩、米国のワクチン生産が過剰になると見られていたので、早手回しに輸出解禁に出たものと見られる。

     


    (2)「バイデン大統領は、「自国民向け供給が確保されない限り、国外輸出はしない」と公約するなど慎重な姿勢を崩さなかった。ヘルスケア関連調査の英エアフィニティによると、コロナワクチンの国内生産規模で米国は世界最大規模にもかかわらず、3月中旬まで輸出はゼロだった。積極的なワクチン外交を展開する中ロも念頭にあるようだ。中国製を承認・契約した国・地域は70以上に上り、ロシアの「スプートニクV」は約60カ国が承認した。中国が国内生産の5割近くを輸出に振り向けるなど、両国は中南米や中東、アフリカのほか、欧州連合(EU)加盟国でもハンガリーなどに売り込みをかける」

     

    中ロのワクチンは、ワクチン情報が公表されないなど信頼度において劣っていた。そこへ、米国が本格的に情報開示100%のワクチンを輸出して、ワクチン外交でトップに立とうという狙いである。

     

    (3)「米国はカナダなどに続き、今後は中ロが攻勢をかける中南米に供給するとみられる。効果や安全性への信用を強みに、供給先への影響力を高めたい中ロに対抗する。またバイデン政権は2月、新型コロナワクチンを共同購入し途上国などに分配する国際的な枠組み「COVAX(コバックス)」に40億ドル(約4400億円)の拠出を表明している。日本、米国、オーストラリア、インドの4カ国が連携する「Quad(クアッド)」を通した途上国向けワクチン増産も支援する。ワクチン分野で国際的リーダーシップを強めることで、間接的に中ロをけん制する狙いがあるようだ」

     

    米国は、クアッドによってインドでワクチンを生産し、途上国への供給も目指している。こうして一斉にワクチン輸出を盛上げる体制が整ってきた。日本が、ファイザー社のワクチンで数量未定だが9月までの接種可能量の供給を受けられる背景には、こうした「世界ワクチン事情」がある。

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    菅義偉首相とバイデン米大統領の首脳会談で台湾問題や人権問題に触れたことに、中国が反発を強めている。同国の在米国大使館の報道官は4月17日、日米の共同声明に「強く不満を表明し、断固として反対する」とのコメントを発表した。

     

    報道官は、台湾や香港などについて「中国の内政問題だ」と反発した。東シナ海や南シナ海問題は、中国の主権に関わるとも主張した。そのうえで「中国側は必ず国家主権、安全、発展の利益を断固として守る」と強調した。

     

    以上のコメントを聞くと、中国は国際法を無視した行動を今後も続ける意思であることを表明したのも同然である。こういう無法国家の中国に、国際法の存在を認識させる方法はあるのか。深刻な問題である。

     


    中国の十八番は、相手国への経済制裁である。日本へはその可能性はあるのか。中国の2020年の上位貿易相手国は次のようになっている。

     

        輸出国           輸入国

    米国   4297億ドル   韓国   1775億ドル

    香港   2793億ドル   日本   1656億ドル

    日本   1373億ドル   台湾   1553億ドル

    韓国   1027億ドル   米国   1539億ドル

    ドイツ   711億ドル   ドイツ   969億ドル

                   豪州    948億ドル

    (出所:JETRO)

     

    上記データを見ると、中国にとって日本は輸出先で3位、香港を除けば実質2位である。輸入では日本が2位である。日本が、中国にとって重要貿易相手国である。日本から素材や中間製品を輸入して加工し、輸出する加工型貿易であることが分かる。この日本へ経済制裁すれば、中国が損失を被る構造になっている。

     

    中国が、デカップリングになればどれだけの痛手を受けるか。改めて指摘するまでもない。こうした貿易構造ができあがっている中国が、国際法を無視した行動を取れば、確実に制裁を受けるはずだ。いくら習近平氏が、民族主義に酔っているとは言え、霞で生きている訳でない。正常な感覚の持ち主であれば、「冷戦」から「熱戦」へと舞台を回す度量はないと見られるが、どうなるかである。

     

    『大紀元』(4月17日付)は、「中国、日本を『特別扱い』する理由とは」と題する記事を掲載した。

     

    日中間の強い経済的な繋がりは日本の対中政策の足枷になっている。しかし、両国の経済が依存関係にあっても、それは双方向なものである。強いて言えば、中国の日本に対する依存度は、日本の中国に対する依存度よりも大きい。日本はこの問題を戦略的な観点から理解することができれば、対中政策を大胆に転換させることが可能になる。

     

    (1)「「日本の衰退」、「失われた30年」、「『日本は技術的には成功したが市場では失敗した』という呪縛から抜け出すには、日本は中国と協力するしかない」といった説が中国のメディアやネット上に氾濫しており、多くの人がそれを信じている。しかし、これらは中国が意図的に仕組んだ精巧な嘘に過ぎない。中国当局の対日政策は、これとは違うものだ」

     

    中国の貿易構造を見れば、日本の存在の大きさが分かるはずだ。その日本へ悪口雑言を言い放つことは理解に苦しむことだ。ましてや、輸出先トップの米国覇権へ軍事的に挑戦するとは、米国が反発して当然である。

     


    (2)「例えば、2016年に米国は最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD、サード)」を韓国に配備することを決めた。その際、反発する中国は米国には何もしなかったが、韓国に経済的制裁を科した。中国は、限韓令(韓流コンテンツ禁止令)、ロッテ グループボイコット、旅行禁令などの制裁と通じて、文在寅(ムン・ジェイン)政権にサードの追加配備をしないなど約束させ、妥協を引き出すことに成功した」

     

    韓国は、中国のご機嫌うかがいするから舐められる。韓国が、中国へ抵抗したことがないから、それを良いことに圧迫を加えている。甘く見られているのだ。

     

    (3)「このケースと対照的な、別の物語もある。2017年12月、日本政府はミサイル攻撃への防衛のため陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」2基の導入を決定した。(2020年6月25日に配備計画の停止が正式に発表された)ただ、韓国のサード配備と違って、日本は自主的に導入を決めた。中国は日本の動きを東アジアの戦略的バランスへの破壊だと批判しているが、経済的制裁を日本に課していない。なぜだろうか?」

     

    日本へ経済制裁すれば、中国の輸出産業がストップする。中国は、これを熟知しているから、日本への嫌がらせを控えているに過ぎない。

     


    (4)「なぜ中国は日本だけを「特別扱い」するのだろうか。実際、中国は何も日本だけを特別視しているわけではない。中国はただ単に弱者には苦しみを与え、強者には媚びへつらっているだけである。つまり、日本に対する特別扱いは、熟考の末にそう選択せざるを得なかっただけである」 

     

    日本への経済制裁を控えているのは、日本企業が中国へ進出しており、100万人単位の雇用を確保している面もあろう。

     

    (5)「実際、1995年以降、日中関係は常に摩擦が絶えなかった。中国の対日政策の基本措置の一つは「政治と経済の分離」であり、政治的理由で両国間の経済協力を干渉しないことを常に強調してきた。その主な原因の一つは、中国が経済的に日本に依存しているからだ。これはある意味、日本経済の強さを証明している。つまり、中国経済は共産党が宣伝しているほど強くないこと、そして日本経済は決して衰退しているわけではない、ということだ」

     

    中国のやり口は、あくどいという一言である。日本を衰退と蔑み、米国は没落して中国が世界覇権を握ると宣伝している。世の中は、そんなに上手く回るものでない。中国は、習近平の身辺に変化が起これば、それで全て終わる脆弱な構造なのだ。専制主義国家は、一夜にして崩れる運命である。それが、歴史の教訓である。

     

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    韓国は、日米首脳会談が先行して北朝鮮問題の大枠がこの会談で決められたことに焦りの色を見せている。文大統領の存在を掛けた北朝鮮問題が、日米首脳会談で方向性が決められたからだ。日米首脳会談では、北朝鮮の非核化方針が再確認されている。韓国の主張している「朝鮮戦争終結宣言」とは、全く異なる外交路線が選択されているのだ。

     

    日米首脳会談行なわれた一方、米韓首脳会談の日程は決まらないままだ。韓国大統領府は15日夜半、5月下旬の開催予定をメディアに流した。1ヶ月先で会談内容も決まらないままで、夜半に「緊急情報」のような形の情報提供に対して、メディアから疑念を持たれるほど。日本が動くと、韓国はその何倍もの「衝撃」を受けるようである。

     

    『中央日報』(4月17日付)は、「日米首脳が共同声明、「北朝鮮の完全な非核化約束を再確認」と題する記事を掲載した。

     

    バイデン米大統領と菅義偉首相が16日(現地時間)、北朝鮮の完全な非核化に専念するという立場を再確認した。

     

    (1)「バイデン大統領と菅首相はこの日、米ホワイトハウスで首脳会談を行った後、ホワイトハウスが配布した共同声明でこのように明らかにした。両首脳は「我々はこの地域の平和と安定を維持するための抑止力を強化しようとする」とし「核拡散の危険性を含め、北朝鮮に関連する危険に対応するために協力する」と述べた。バイデン大統領は日本人拉致問題の早期解決のための米国の約束を再確認した。両首脳はインド太平洋地域の問題に言及しながら「我々は韓国との3カ国協力が共同の安全保障と繁栄に必須ということに同意する」と伝えた」

     

    この短い記事の中に、韓国外交が置かれている厳しい状況がつぶさに浮かび上がっている。

    1)北朝鮮の非核化

    2)インド太平洋戦略への韓国の貢献

     

    文大統領の目指す外交戦略とは異なっているからだ。北朝鮮の非核化が日米間で先に大枠が決められ、韓国はこれに従わざるを得なくなっている。文氏はこれまで、朝鮮半島問題の運転席に韓国が座ると主張してきた。現実は、憎き日本が米国と一緒に座るという事態を招いているのだ。韓国の面目丸潰れである。

     

    しかも、韓国がインド太平洋戦略への貢献が期待されるとなれば、中国へ秋波を送ることは次第に不可能になろう。旗幟を鮮明にしないことで、外濠を埋められているのだ。クアッドも参加する素振りを見せながら、公式発言では曖昧にしている。米国が、米韓首脳会談を遅らせたい気持ちも分かるのだ。文大統領と会談するときは、クアッドの公式発言を迫られるに違いない。

     


    『朝鮮日報』(4月16日付)は、「米国『対北朝鮮政策は米日首脳会談で結論』」と題する記事を掲載した。

     

    青瓦台(韓国大統領府)は米日首脳会談前日の15日夜10時35分頃、それまで予定になかった書面でのブリーフィングを行った。米国のバイデン大統領が就任後最初に行う韓米首脳会談が「5月後半」に行われるという内容だった。日時が最終決定していない首脳会談について、これを1カ月以上も前に発表するのは外交的観点から考えると非常に珍しい。青瓦台のある幹部は16日、韓米首脳会談に関するこのブリーフィングで「韓米間の重要な懸案について深くかつ戦略的な意思疎通と協力のきっかけになるだろう」との考えを示す一方で、「会談の議題は現時点で一切協議が行われていない」と明かした。首脳会談で最も基本となる日程や議題の調整も終わっていない段階で、とりあえず「我々も米国と会談する」と先に発表したということだ。

     

    このような青瓦台による異例の動きは、韓国よりも1カ月以上も前に開催される米日首脳会談を意識したためとみられている。米国と日本の関係は最近になって「新たな蜜月」とも言える段階に引き上げられているが、韓国は米中の間で今も綱渡りを続け、その影響もあって米国の政府や民間から「本当に味方なのか」と疑われているような状況だ。

     

    (2)「この日、ワシントンから聞こえてくるニュースはこのような懸念が現実であることを示すものだった。米国政府のある幹部は15日(現地時間)、米日首脳会談に関するブリーフィングで、「日本と韓国の関係が現在のレベルにまで悪化したのを目の当たりにしたことは懸念材料であり苦痛でもある」とした上で「(韓日)対立は東北アジアにおいて我々の全ての力量が効果的に発揮されることを妨害している」と指摘した」

     

    日韓関係は、水と油の関係である。民族性の違いが、文化の違いを生んでいる。永遠に日韓は揉め続けるに違いない。不幸なことである。

     

    (3)「外交関係者の間では、一時は小康状態にあった韓日対立が福島原子力発電所からの汚染水放流問題をきっかけに再び表面化した今のこの時期に、米国でこのような発言が出たことに注目しているようだ。これに先立ち米国は日本政府の放流決定について「国際的な安全基準に従ったもの」「透明な対応に感謝する」として事実上支持する姿勢を明確にした」

     

    韓国は、福島原発トリチウムで科学知識を無視して感情論丸出しで騒いでいる。米国も呆れて匙を投げた形だ。

     


    (4)「
    この米国政府幹部はさらに「対北朝鮮政策の再検討作業は近く完了する」として「(これまで)日本側の意見を聞いて来たが、両首脳が最終的な調整を行う機会はなかった」と述べた。およそ3カ月にわたり続いてきたバイデン政権による対北朝鮮政策の再検討作業について、その結論を今回の米日首脳会談を通じて引き出すという意味に解釈できる発言だ。韓国のある外交官OBは、「韓国の運命と直結した米国の対北朝鮮政策が、日本との会談後に最終決定するとすれば、これは韓国による外交政策の失敗を意味する」と指摘した」

     

    下線の通りである。我を張っている文政権が招いた事態である。争わなくても済む日韓問題を、あえて政治化して自身の人気を高める手段に使った。このブーメランが、現在の「空白外交」を生んでいるのだ。

     

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    韓国歴代政権は、任期末の支持率低下へのテコ入れとして「反日」へ力を入れてきた。文在寅氏も同じ手法を使い始めた。「反日」は、それほど魅力があるテーマなのだろう。

     

    世論調査会社の韓国ギャラップが4月16日に発表した文在寅(ムン・ジェイン)大統領の支持率は30%で、同社の調査で過去最低だった前週からさらに2ポイント下落した。3月第1週(40%)以降、じりじり下がっている。一方、不支持率は4ポイント上がり62%と、過去最高だった。

     

    支持率30%、不支持率62%である。これは、韓国世論調査の定石の「35%対55%」によれば、文政権支持層も離間して不支持に回っていることを示している。「岩盤支持層40%」のレッドラインを切って、戦線の後退が続いているのだ。目下、「敗走中」である。

     


    ここへ降って湧いたように、福島原発のトリチウム放出問題が飛び出て来た。韓国政府の専門家による作業班は、昨年10月に「無害で問題ない」と結論を出していた。ところが、韓国二大市長選の敗北で文政権の不人気が決定的になった。ここで、「反日」にすがって人気回復に打って出ようという戦術を展開し始めたのだ。トリチウム放出という科学問題が、反日という政治問題化へ鞍替えされ始めたところに、文氏の悩みの深さが表われている。

     

    『聯合ニュース』(4月16日付)は、「海洋放出巡り関係次官会議 『あらゆる措置検討』=韓国政府」と題する記事を掲載した。


    日本政府が東京電力福島第1原発の処理済み汚染水を海洋放出する方針を決めたことを巡り、韓国政府は16日、関係官庁の次官らが参加する会議を開いて対応策を議論した。

     


    (1)「会議は国務調整室の具潤哲(ク・ユンチョル)室長(次官級)が主宰し、外交部や海洋水産部、原子力安全委員会など9機関の次官らが出席した。会議では海洋放出決定に対する米国や中国、ロシアなどの反応を確認・共有。国民の懸念が強まっていることを受け、水産物の放射能検査や原産地取り締まりの強化策を議論した。また、文在寅大統領が検討を指示した国際海洋法裁判所への提訴と国際原子力機関(IAEA)国際調査団への参加問題について協議した。具氏は「国民の生命と安全を守るため、可能な限りのあらゆる措置を検討する」と強調した」

     

    韓国外交部や海洋水産部、原子力安全委員会など9機関の次官らが出席して、対応策を検討したという。この中には、下記の昨年10月に発表した福島原発トリチウム問題の関係部署が含まれている。自ら発表した見解を否定するような矛楯した立場に置かれているのだ。

     


    昨年10月、韓国海洋水産部をはじめ政府部署合同タスクフォース(TF、作業部会)は、「福島原発汚染水関連現況」という題名の対策報告書を作成した。当時の状況を「日本が福島原子力発電所内に保管中の汚染水処分方案の決定を完了し、発表時期の決定だけが残っている」と評価した報告書で、韓国政府は日本が放出する汚染水が国民と環境に及ぼす影響を分析したのである。

     

    (2)「報告書によると、原子力安全委員会は専門家懇談会を7回開き、「汚染水を浄化する日本の多核種除去設備(ALPS)の性能に問題がない」との判断を下した。また、国際標準と認められる原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)の手法を使い、日本海岸近隣地域の放射線影響を評価した結果、放射線数値が「妥当だ」とも評価した」

     

    (3)「韓国沿岸海域を対象にした放射能濃度調査では、2019年基準0.892~1.88ミリベクレル毎キログラムが検出されたが、これは福島事故以前の平均値(2006~2010年0.864~4.04ミリベクレル毎キログラム)と類似していると分析した。三重水素(トリチウム)露出の可能性に対しては、「生体で濃縮・蓄積されにくく、水産物摂取などによる有意味な被ばくの可能性は非常に低い」とし、汚染水の韓国海域拡散の可能性に対しては「海洋放出から数年後、国内海域に到達しても海流により移動して拡散・希釈されて有意味な影響はないだろう」とした」

     

    下線を引いた部分は、韓国国内で現在見られる反対論を事前に否定する内容である。トリチウムは、体内で濃縮・蓄積されにくく、水産物摂取で問題を起こさないとまで言いきっている。また、数年後に韓国海域へ福島原発トリチウムが到達しても、約1000キロの長距離の海流で拡散・希釈されていると指摘している。

     


    文政権は現在、この科学的な分析を真っ向から否定して、「反日」への道具に仕立てる魂胆である。韓国社会における「白を黒にする」エネルギーの凄さに驚くばかりだ。文氏は、7月の東京五輪で南北会談を目指してきたが、現状では不可能になっている。北朝鮮が選手団を送らないからだ。そこで文氏は、もはや「親日的ポーズ」を取る必要がなくなったと踏んでいる。元の「反日チャンピン」へ戻る決意であろう。

     

    ただ、福島原発でトリチウムを日本標準の40分の1にまで希釈し、海洋放出するのは2年後である。それまで放出を実行しないから、「反日」を煽っても効果はないだろう。文氏の支持率テコ入れに、役立たないのだ。

     

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    テイカカズラ
       

    福島原発トリチウムの海洋放出問題で、韓国は国を挙げての騒ぎである。「一握りの砂も汚染させない」という、非科学的なことを言って煽る団体まで現れている。こういう中で、原子力専門家は、韓国が感情論で騒げば日本に負けると指摘している。感情論で騒ぐよりも、放出後に日本との共同調査に加わって、事態の推移を見る方が得策と諭している。

     

    『中央日報』(4月16日付)は、「韓国教授、汚染水の危険だけを強調すれば負け試合に『放出後は共同監視を』」と題する記事を掲載した。

     

    韓国科学技術院(KAIST)原子力および量子工学科のチョン・ヨンフン教授(46)は14日、「福島原発から出た放射能汚染水の危険性だけを強調するよりも、日本に共同監視を提案しなければならない」とフェイスブックで指摘した。さらに、「(韓国)政府も汚染水の影響は大きくないと結論を出していることから、危険性だけを強調すれば日本に対して負け試合になる」と主張した。日本政府が13日、福島原発の汚染水を海に放出する方針を発表して以降、韓国や中国など隣接国が反発する中で、冷静な対応を助言した。



    (1)「チョン教授は、「汚染水(汚染処理水)が実際に危険ではないため、放出以降、常時監視と情報公開、検証が最善の方案」としながら「本当に日本が公開した情報が事実と符合するかどうかをしっかりと確認すればよい」と主張した。チョン教授は「共同監視を提案すれば日本も拒否しにくく、仮に拒否すれば日本は国際社会で窮地に追い込まれる」とした」

     

    日本政府は、過去100回も各国の外交団にトリチウム放出問題で説明会をしてきた。IAEA(国際原子力機関)とも4回、打ち合わせをしている。その結果、海洋放出が無害という結論を得たものである。科学者であれば誰でも、データを見れば無害という結論になるのだろう。


    (2)「チョン教授は、15日に受けた中央日報の電話取材に対しても「濃度と被ばく量に対する定量的な危険性の論証もなく日本政府を信じることはできないと言う人もいるが、(この主張は)それほど役に立たない」とし、「何が国益を守る道なのか、冷静に考えなければならない」と付け加えた」

     

    韓国人の「感情8割・理性2割」という国民性には、科学的問題は理解できないのだろう。未だに風水(中国伝来の占いの一種)を信じている国民だ。科学的常識は通じないのかも知れない。

     

    (3)「チョン教授は、「普段、海水の三重水素(トリチウム)濃度は1リットルあたり0.1ベクレル(Bq、1秒あたり放出される放射能の量)であり、淡水は1リットルあたり1ベクレル、自然で生成される三重水素が雨に混ざるが、その濃度が1リットルあたり1ベクレル」と説明した。続いて、「放出地点の汚染処理水の三重水素濃度は基準値である1リットルあたり6万ベクレル以内であり、毎日2リットルずつ一年中服用すれば0.8ミリシーベルト(人体に影響を及ぼす放射線の量)程度被ばくする」とした。一般人の年間被ばく線量基準値である1ミリシーベルトを下回る水準という趣旨だ。放出によって福島近隣で受ける被ばく量が年間1マイクロシーベルト水準で、韓国は1ナノシーベルトにも及ばないことが予想される」

    日本は、6万ベクレルを40分の1にまで希釈して海洋放出する計画である。下線のように、6万ベクレルの水を毎日飲用しても、体外へ尿で排出されるので体内に残留しない。ましてや、実際は40分の1まで薄められるのだ。

     

    (4)「あわせてチョン教授は、「放出地点から数十キロメートル離れた地点の三重水素濃度は1リットルあたり1ベクレル水準」としながら「この程度なら淡水と区分できない三重水素濃度なので危険性議論は意味ない」とした。福島海域と韓国とは1000キロメートル程度離れている」

     

    放出地点の福島から韓国海域まで1000キロも離れている。その間に、一段と希釈される。こういう科学的常識論が通じない韓国社会の硬直性に呆れるのだ。

     

    (5)「チョン教授は、「地上から6メートル程度高いところは地上より年間1マイクロミリシーベルト程度さらに被ばくを受け、バナナ1個の摂取で0.1マイクロシーベルト程度の被ばくを受ける」とし「年間食品から受ける被ばく量が約300マイクロシーベルト」と話した。チョン教授は「三重水素が有機三重水素に変わって人体に蓄積されて特に危険だという主張等は根拠がない」とし「すでに英国の健康保護局とカナダの原子力規制委員会が相当以前に結論を出した事案」と話した」

     

    人間は、自然界の放射性によって常時囲まれて生きている存在である。下線のような科学的な検証をなぜ信じられないのか。

     

    文政権支持メディア『ハンギョレ新聞』は、IAEAが無害を証明している裏には、日本とIAEAがグルになっているとまで書き連ねている。これが、進歩性を売にしている韓国の「朝日新聞」の実態である。

     


    (6)「一方、韓国政府は昨年、福島原発汚染水放出に関連して「科学的に問題がない」という趣旨の結論を出していたことが確認された。野党「国民の力」の安炳吉(アン・ビョンギル)議員によると、海洋水産部をはじめ政府部署合同タスクフォース(TF、作業部会)は昨年10月、「福島原発汚染水関連現況」という題名の対策報告書を作成した。この報告書で、韓国政府は日本が放出する汚染水が韓国の国民と環境に及ぼす影響が大きくないという趣旨で分析していた」

     

    昨年10月、韓国政府の作業チームは、無害論を発表している。だが、文政権は「一部の見方に過ぎない」と科学的分析を否定しているのだ。文政権の頭も、民衆の「風水信仰」と変わらないのである。


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